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IPEの風 10/5/09
先週の国際通貨問題(ドルの退位とSDRs、人民元増価、プラザ合意U)を十分に検討しておけば、東アジアの安全保障問題が解決されるような大きな歴史的転換が訪れたとき、現実を一気に動かせるかもしれません。日本が中国と一緒に共同市場や共通通貨を模索し、イギリスがユーロを採用して共通の安全保障や外交政策を形成するとき、アメリカもその通貨であるドルについて決定的な戦略の転換を行うでしょう(あるいは、混乱と向き合う)。
英書講読で、学生たちと、マイケル・マンデルバウム『ゴリアテ支持論:アメリカはいかに21世紀の世界政府として行動するか』(Michael Mandelbaum, The Case for Goliath)を読むことにしました。いろいろ迷った末に、自分が読みたい本に決めたわけです。主張は明快で、アメリカの国際戦略を考える重要な研究だと思います。
たまたま外交問題評議会のHPから、この本に関するマンデルバウムの講演記録を読みました。
・・・なぜアメリカは(弱い正当性を得た)世界政府か? その理由は、アメリカが世界各地の安全保障、市場システムの基礎、世界中で使用できる通貨・ドル(それゆえ「最後の貸手」や「最後の消費者」ともなる)、工業生産システムを動かす化石燃料・石油、を供給するシステムを維持し、他国の利用も許しているからです。アメリカが動かなければ、他国はこれを独自に獲得しなければなりません。
・・・もし彼らがアメリカの役割を引き下げたいと思うなら、自分でそれらを供給することです。もっと軍備に金をかける。もっと充実した軍事力を保有する(中国がそうしているように)。アメリカとの同盟がいやなら、それを止めればよいのです。しかし、彼らはそれを望みません。
・・・アメリカが東アジアに軍を駐留させているから、中国人と日本人は安心して眠れるし、また、日本にまで安全保障を拡大しているから、共産党の支配する、これまで決して友好的とな言えない歴史もある核武装した国家、すなわち、中国の隣で、日本人がもっと強硬な軍事政策を採用する必要はないと感じていられるのです。
安倍・麻生・中川のような自民党の保守派が日本の安全保障や外交を大きく転換する機会を持つことなく、むしろ、今の民主党政権にその機会が巡ってきたことを私は歓迎します。ダム建設や年金問題だけでなく、安全保障に関しても、核持ち込みの密約や普天間基地移転を取り上げる中で、大いに議論してほしいと思うのです。
また、The Economist, September 26th, 2009を読むと、アフリカに携帯電話が普及して、それが情報を容易に伝達し、アフリカの輸送インフラの障害を克服するのに役立っている、というにとどまらず、何と「モバイル・マネー」を普及させている、という記事に驚きました。電子マネーです。世界には40億台の携帯電話が普及しており、その4分の3が発展途上諸国にある。アフリカでも、10人に4人が携帯電話を利用している、と伝えています。
貧しいアフリカの農民たちが、電子マネーを手に入れて、もちろん支払いや振り替え、送金に使い、これまで利用できなかった様々な基本的金融サービス(貯蓄・融資・保険)を得るのです。それは、家畜や金で貯蓄し、あるいは、毛布の下に(しばしば価値を急速に失う)現金を隠した暮らしが革命的に変わるでしょう。
亀井大臣が、中小・零細企業の返済猶予(モラトリアム)を実行する、と断言しています。その実効性や政治的な介入への批判があるのは当然だと思います。しかし、正しい議論が含まれているはずです。雇用問題や地方経済の問題、金融システムの融資が大企業に偏って行われていないか、新興企業や中小・零細企業の経営改善に政府はどのように取り組むのか、大いに議論して、新しい政策を示してほしいです。
ケニヤやチリが改革に成功したように、多くの人の熱意と創意を汲み上げ、日本も都市や農村の貧困・雇用問題に、豊かさへの新しい参加メカニズムを構築してください。
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