IPEの果樹園2009

今週のReview

9/28-10/3

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

ミサイル防衛網、 小沢・藤井・亀井、 ピッツバーグG20、 グローバル・パズル、 中国の不均衡人民元、 貿易戦争、 壁:グルジアベルリン、 国連安保理と核廃絶、 財政監視体制

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


The Guardian, Thursday 17 September 2009

US on target with missile decision

Robert Farley

FT September 17 2009

Missiles realism

The Times, September 18, 2009

Forward Defence

(コメント) これでブッシュ政権の唱えた「宇宙戦争」やロシアが対抗する意志を示した「第二次冷戦」へのコースが回避できたのでしょうか?

ポーランドやチェコなど東欧諸国は、ロシアに対抗してアメリカがミサイル防衛システムを構築する提案を歓迎していました。ブッシュ政権は東欧諸国を「新しいヨーロッパ」と呼んで同盟関係を許可し、イラク戦争に反対した独仏などの西欧諸諸国を「旧いヨーロッパ」として同盟の再編を示唆したのです。当然、オバマのミサイル防衛計画廃止は、東欧諸国の反発を生じています。

イランの核武装やミサイル開発に対する防衛を唱えたわけですが、飛行するミサイルを確実に撃ち落とせる技術は、最初から信用されていませんでした。そのコスト負担は大きく、今や、イランのミサイルが現実的な脅威ではない、という分析から、ロシアの強い反対を宥和することに傾いた、というのです。

Robert Farleyは、ミサイル防衛計画が軍需産業の利益とレーガン以来の共和党の信念が結び付いたイデオロギーであった、と考えます。また、ポーランドやチェコでも、政府は計画を支持しましたが、国民はそれほど支持していなかった、ということです。「正気の外交政策」、「責任ある防衛政策」を回復できる、と歓迎します。そして、米ロ関係が改善することで、イランとの交渉やアフガニスタンのゲリラ戦でも有利になるでしょう。

しかし、FTは注意します。もしロシアが自分たちの強い要求がアメリカの方針を転換させた、と考えれば、また、東欧へのアメリカの関与は弱まり、ロシアが影響圏“sphere of influence”を回復できる、とみなせば、オバマの方針転換は後で間違った決断となってしまうでしょう。・・・短距離ミサイルではなく、長距離ミサイルには有効かもしれない。オバマが依存するイランのミサイル技術に関する秘密情報は正しいのか? ・・・アメリカは方針転換を関係諸国に説明し、適切に扱う必要があります。

安全保障問題がアメリカの関与を強める、というロジックは、繰り返し言及されてきました。たとえば、インドネシア(冷戦後の独裁体制をクリントン政権は見放した)やアルゼンチンの通貨危機でも言及されたわけです。(ミサイル防衛網を築いていたら救済融資を受けられたかもしれない。あるいは、核大国ロシアの金融危機を放置できない。など。)

NYT September 20, 2009

A Better Missile Defense for a Safer Europe

By ROBERT M. GATES

FT September 20 2009

Reassuring Europe over security

(コメント) ブッシュ政権下でミサイル防衛計画を立てたROBERT M. GATES国防長官が、方針転換はヨーロッパの防衛を損なわない、と説明しています。ミサイル防衛システムの完成は2015年、さらに批准の過程で2017年に遅れ、完成はそれ以後になったでしょう。オバマの提案は、海上から発射するミサイル(SM-3 interceptor missiles)で、2011年までに防衛システムを改善する内容です。改良されたSM3ミサイルは、東欧の地上基地を10か所に建設するよりも、防衛能力を高めるものだ、と。

FTは、オバマ政権が優先順位を変えた点を指摘して、東欧の疑念を説明します。オバマが重視するのは、イラク、アフガニスタン、核不拡散・廃絶です。こうした問題では、ロシアとの協調が欠かせません。他方、ロシアの近隣諸国は安全保障上の不安を常に持っています。アメリカがロシアと協力するとき、彼らが不安を強めるのは当然です。特に、グルジアやウクライナは。それは、EUがロシアからの石油・天然ガス供給に依存することが、不安を高めるのと同じです。

・・・東アジアではどうでしょうか? 日米(韓)が北朝鮮に対するミサイル防衛網を築けば、それは中国からのミサイルも撃ち落とせるでしょう。あるいは、有事の際に、台湾を防衛できる可能性もあるのではないか? 日本政府がアフガニスタン戦争への協力や普天間基地移転でアメリカと交渉する際にも、何か影響するでしょう。

FTは末尾に書いています。「反ロシアが必要なのではない。地域の安全保障を高めることが重要なのだ。ポーランドなどの諸国が安全保障を確信できればできるほど、ロシアとの幅広い協力関係を彼らも支持できるだろう。」


FT September 18 2009

Is the dismal science ready to grow up and get happy?

By Saamah Abdallah

SPIEGEL ONLINE 09/22/2009

The Cult of GDP

By Alexander Jung

(コメント) <経済学>に対する不満はいろいろあります。金融危機がそれを刺激するのは当然です。ここでは、GDPが批判されています。

「希少な資源を最も効率的に利用する」というのは、それで人々の暮らしや満足を高めるものなのか? 市場の取引額を総計すれば、その正しい基準が得られるのか? ・・・とんでもない!

最初から、GDPは社会進歩を測定するものではありませんでした。しかし、政府はGDPや成長率を誇示し、競い合い、政策選択の理由にします。・・・無駄な公共工事でも、環境を破壊し、その除去を繰り返すことも、GDPを増やします。

生産額を競い合うのではなく、将来の世代も含めた厚生の改善を目的にするべきだ、と考える経済学者も増えるわけです。

経済成長は人々を幸せにするのか? という問題に答えられる、ドイツでもっともふさわしい研究者(連邦統計局)がNorbert Räthである、とAlexander Jungは紹介しています。

成長は雇用をもたらす、という正当化を疑います。IMFの勧めに反して、むしろ今は、停滞や縮小の方が社会を住みやすく、人々を幸せにする、と。むしろ、技術革新や環境保護を実現する社会の方が素晴らしい。


WSJ SEPTEMBER 19, 2009

Irving Kristol

The Times, September 21, 2009

Biography of an Idea

LAT, September 22, 2009

Irving Kristol's clear thinking

Jonah Goldberg

NYT September 22, 2009

Three Cheers for Irving

By DAVID BROOKS

(コメント) ネオコンの元祖と言われたIrving Kristolが亡くなりました。1950年代も、マルクス主義には未来がないとして西側の理想を守り、民主党員になって1960年代の社会政策が失敗した後、共和党員になって、(ケインズ主義の)経済概念が失敗してかた、レーガン政権に向けて「サプライ・サイド」革命による成長を唱えた、とWSJは称えています。

特に、ブッシュ政権の失敗によってネオコンを葬り去ることは間違いだ、と主張します。それは雑誌The Public Interestの編集者として、政策に関する多くの論争を指導してきたことを高く評価するからです。論争には著名な参加者がそろいました。Daniel Bell, Nathan Glazer, Daniel Patrick Moynihan, Charles Murray, Thomas Sowell, James Q. Wilson, Glenn Loury, Abigail Thernstrom, Michael Novak, Aaron Wildavsky, Samuel Huntington, Seymour Martin Lipset, James C. Coleman, ・・・

内政においても外交において、広く左派の思想を批判して、強い影響力を持ち続けたのです。

The Timesは書きます。「彼は権力を求めず、小さな定期刊行物を出した。しかし、この元トロツキストで、ネオコンザーバティズムの創設者は、戦後アメリカ政治において最も強い影響力を持つ人物になった。」

彼はイデオロギーの戦争に従いました。「1930年代に若い社会主義者としてスターリニズムと戦い、1940年代に戦場でファシストと戦い、その後は、作家にして編集者になって、マッカーシズム、冷戦、偉大な社会、ウッドストック世代と戦い、1970年代の文化戦争、レーガン革命などを戦った。」とDAVID BROOKSは書いています。

資本主義、中産階級の価値観、民主主義を強く支持しましたが、その欠陥も厳しく考察しました。その態度をBROOKSは、“detached attachment”(距離を置いた献身・愛着)と呼んでいます。


The Guardian, Sunday 20 September 2009

Such drastic climate therapy could make things worse

James Lovelock

WP Sunday, September 20, 2009

On Energy, We're Finally Walking the Walk

By Lester R. Brown

China Daily 2009-09-21

A climate smart future

By Robert B. Zoellick

The Guardian, Wednesday 23 September 2009

China and India are leading the way. Yes, I'm optimistic

Nicholas Stern

(コメント) 地球が温暖化するのを防ぐには、単に温室効果ガスを減らすのではなく、むしろ地球を冷却する処置(治療)を施すべきである、という"Geoengineering the Climate"が議論されています。しかし、James Lovelockは、人間が理解しているのは地球生態系のごく一部でしかなく、人工的に改良することは危険すぎる、と反対します。

世界の貧困層が地球温暖化のコストを支払う、とRobert B. Zoellickは強調します。なぜなら不作や農業生産性の低下が起きるからです。飢餓や栄養不良、病気がはやり、干ばつ、洪水、山火事も多発するでしょう。海外近くに多数の人が居住しており、島々も水没します。そして、温暖化防止のための行動を促します。そして、それが、持続可能なグローバリゼーションなのです。


The Guardian, Sunday 20 September 2009

Brixton's community cash

Zoe Jewell

(コメント) かつて人種暴動もあったロンドンの地区、ブリックストンが、独自の地域通貨Brixton poundを発行したようです。コミュニティーのビジネスを励ますために、あるいは、環境保護のために、人びとは参加します。もっと地域の取引を活発にしよう。

麻薬取引やギャングの発砲事件より、すっと素晴らしいニュースです。


WP Sunday, September 20, 2009

Bosnia's Lesson

By George F. Will

(コメント) 19958月後半から9月初めにかけて、イスラム教徒住民を守るため、コソボへの11日間の空爆と、その後の独立政府の樹立は、欧米による人道的国際軍事介入を象徴する重要事件でした。その和平協定はデイトン合意としてR.ホルブルックが仲介しましたが、彼は今、オバマ政権のアフガニスタンやパキスタンの安定化を担っています。その後、平和は持続せず、ボスニアの現状は彼による国際合意や仲裁能力を批判する材料になっています。

国際社会がボスニアの安定化に費やした援助と労力として、1996年−2007年、17カ国の政府や18の国連機関、27の国際機関、約200のNGOsから140億ドルの援助が与えられ、また、36カ国から60000人の兵士が派遣されました。Patrice C. McMahon and Jon Westernは、史上空前の費用を要した民主化の実験、と呼んでいます。

それは第二次世界大戦後のドイツや日本の復興よりも大規模であり、国民一人当たり、300ドル、に達したそうです。アフガニスタンでさえ、2002年以来、国際的な援助の約束が一人当たり65ドルです。ところが、再びエスニック集団間の抗争、ナショナリズムが悪化し、経済改革は放棄されている、というのです。失業、貧困、政府部門の肥大化・・・ 国際機関は引き揚げつつあり、再びイスラム教徒たちは孤立し、弱い立場に落ち込み、カオスが広がっている、と報告されます。

ボスニアが不安定化すれば、それは他の地域に波及するでしょう。人は憎しみによって団結することのできる生き物だ、と言われます。アメリカの軍事力が関与しなければなりません。


WP Sunday, September 20, 2009

So, If an Economist Falls in the Forest . . .

By Carlos Lozada

WSJ SEPTEMBER 21, 2009

Back In Demand

By N. GREGORY MANKIW

(コメント) Robert Skidelsky, KEYNES: The Return of the Master の書評です。Carlos Lozadaは、経済思想が政治や社会を作り変える力について議論し、N. GREGORY MANKIWは、Skidelskyが歴史家であって、経済学を正しく理解していない、と批判します。


The Japan Times: Sunday, Sept. 20, 2009

Divining Japan's new leadership amid the expectations of change

By HUGH CORTAZZI

Sept. 21 (Bloomberg)

No Country for Young Men as Real ‘Change’ Begins

William Pesek

(コメント) 日本は本当に変わるのか? 世界における役割を高めるのか? という質問に、I had to hedge my replies with "ifs" and "buts."HUGH CORTAZZIは書いています。そうでしょう。どの政策転換も実行できるとは思えない、という判断です。小沢、亀井、旧社会党、アメリカ、国際競争の圧力、中国、景気、官僚、その他。

財務大臣が77歳、金融大臣が72歳、こんな高齢閣僚(しかも元自民党議員)に「改革」はできない、とWilliam Pesekは考えます。藤井は財務官僚の経済支配を実行していた人物であり、財政均衡論者です。亀井はさらに旧式の発想しかない改革反対派であり、この閣僚指名にはまったく失望した、という書きぶりです。外国投資家にとって、亀井はいくらかヒューゴー・チャベスに似た響きである、と。

この組み合わせは、鳩山流の「チーム・オブ・ライヴァル」なのか? 日本の新政権に一刻の猶予もないとき、経済閣僚の指名には大きな不安があるようです。

WSJ SEPTEMBER 22, 2009

Hatoyama's Bad Economic Start

FT September 23 2009

Japan’s poodle strains at the American leash

By David Pilling

(コメント) WSJは、当然、亀井金融担当大臣の中小企業に対する返済猶予という発言に憤慨しています。「亀井の考える金融おとぎの国では、銀行が人びとや企業の融資するのは、収益のためではなく、その善意・自己満足によるものらしい。このように政府が浪費を強いることは、銀行が倒産するはずのゾンビ企業を10年も生き延びさせ、日本の貯蓄者にリターンを与えなかったのと同じだ。」

しかも、いろいろなアイデアをもてあそんでいるけれど、日本には債務に財政的な補助を与える余裕はないだろう、と指摘します。政府の借金をもっと心配したらどうか・・・?

鳩山首相とヴェネズエラの反米指導者Hugo Chávezと同一視する政治家がワシントンに多いようです(政府にも)。David Pillingはその誤解を正します。日本政府は反米になりません。

では、日本の「プードル政策」は変わらないのか? しばしばアメリカ軍と核の傘によって守られている日本は、いつでも尻尾を振って主人を喜ばせる「プードル」と言われますが、むしろ主人を無視して気分の変わりやすい「猫」だった、とDavid Pillingは考えます。

日本政府は、アメリカの求めに応えないまま、平和憲法を維持し、防衛費をGDP1%以下に抑えていました。日米双方が安全保障上の必要を認めているので、同盟関係は変えず、その費用をめぐる分担が争われたのです。普天間基地問題では交渉の余地を与えたし、オバマは鳩山との会談で「対等な関係」を称賛し、「日本と近隣諸国との友好」を歓迎しました。実際、アメリカがそれらを要請していたわけです。

温暖化ガスの25%削減目標も、輸出企業よりも消費者を重視し、アメリカの環境政策が転換することも踏まえて、世界的なバランスを促しています。鳩山政権は、政策転換を目指すけれど、現実的な立場を採っているのです。

The Japan Times: Wednesday, Sept. 23, 2009

Time to boost Japan-EU ties

By GLYN FORD

Asia Times Online, Sep 24, 2009

Cautious welcome for Japan's Asia drive

By Jian Junbo

The Japan Times: Thursday, Sept. 24, 2009

Challenges for the Hatoyama government

By CHARLES E. MORRISON

(コメント) GLYN FORDは、熱心に、日本がEUとFTAを結ぶように求めています。韓国とのFTAで日本の生産者は大きな不利益を強いられるだろうし、アメリカとのFTA交渉は農産物で難しい。EUとFTAを結んで貿易を多角化せよ、というわけです。

中国から見れば、日本政府が「東アジア共同体」に言及すれば、即座に「大東亜共栄圏」と結びつくのでしょうか?  Jian Junboには、アメリカと中国をどちらか選択する、という発想が強すぎます。


NYT September 20, 2009 The Financial Crisis and America’s Casino Culture By PETER S. GOODMAN

(コメント) 投資家の楽観がなければバブルは続きません。・・・しかし、アメリカ人が(そもそも)過度に楽天的な人びとだから金融危機が起きる、というのは変な話です。やはり制度を問題にするべきでしょう。

BBC 2009/09/21 Who runs the global economy? By Steve Schifferes

(コメント) 誰が世界経済を動かすのか? 世界経済の問題を解く明確な公式はないのです。G20は事後的な主要経済であり、IMFが合意の形成と協調に重要な役割を引き受けます。

しかし、IMFの決定は世界の政治経済バランスを正しく反映していません。特に、ヨーロッパは過大で、中国やインドは軽視されています。EU加盟諸国は、全体として、世界経済の25%を占めますが、IMFの投票権の40%を保有します。アメリカは世界経済の25%で、投票権の17%です。IMFの重要な決定には85%の賛成票が必要ですから、アメリカだけは単独で拒否権を持ちます。

アメリカと中国はEUの投票権を57%放棄させて、新興諸国に配分しようとします。しかし、EUのオランダやスウェーデンは、その場合、IMFの24カ国が組織する理事会の席を失うので、この提案を受け入れません。また、EUが新しい融資の資金をIMFに提供したことでも、今は変更すべきでない、とイギリスも主張します。

また、アメリカやEUは危機後の消費が回復しないでしょう。むしろ輸出を伸ばそうとしています。その場合、中国は輸出に依存した成長モデルを変えなければなりません。中国は巨額の外貨準備を保有しており、アメリカに代わって世界の輸出を引き受け、内需主導の成長を維持しなければなりません。こうした条件を合意するためにも、中国がIMFの主要な決定国として参加することが望ましいのです。

G20により、国際機関は融資を増やすでしょう。SDRsの発行も増やす約束です。そして、G20の約束を各国が守るように、IMFが監視します。このような仕組みで、G20が世界経済の主要な運営機関になるかどうか?

FT September 23 2009 G20 must not let unity unravel

FT September 23 2009 Markets are the best judge of bank capital By Andrew Kuritzkes and Hal Scott

(コメント) 金融規制によって金融システムが安定化する、という考えをAndrew Kuritzkes and Hal Scottは批判します。正しい自己資本比率をだれにも決められないからです。BISの規制は20年以上も行われている(the Basel I, the Basel II)が、その具体的な根拠はない。ましてや、金融システム全体が安定性を保つ比率を個々の銀行に反映できるだろうか?

またより多くの自己資本を求めれば、銀行はより大きな利益を上げようとして危険な融資を行うか、あるいは、規制のない分野(保険やヘッジ・ファンド)に融資を増やすだろう。今回の金融危機を準備する過程で起きたことだ、と。

むしろ、市場の規律を強化するように主張します。実際には、連銀の行ったストレス・テストをその例に挙げます。自己資本を準備しても、危機は避けられない。むしろ情報を得て、定期的にストレス・テストを行うのがよい、と考えます。

FT September 23 2009 Pittsburgh should be a turning point for the poor By Robert Zoellick

LAT September 23, 2009 The G-20's new world By Luiz Inácio Lula da Silva

(コメント) G20は単に金融危機や不況を回避する会議で終わらせるのでなく、成長の「新しい基準」、「責任あるグローバリゼーション」を実現する基礎を据えなければなりません。

指導者たちは、莫大な安定化資金を使うだけでなく、それをどのように使うか、が問題です。1.発展途上諸国の成長を解決策に取り込む。2.均衡の取れた、包括的な世界経済のために、成長極は多い方がよい。3.気候変動なども考慮し、持続可能な成長を目指す。4.世界の最も弱い立場にある人々を助けるメカニズムを築く。5.世界経済を政府による刺激策から離れて、民間需要や投資、貿易によって回復させる。

ピッツバーグ・サミットは、発展途上諸国が参加する重要な機会になります。一緒に行動することで、多くの成長極を持つ、責任あるグローバリゼーションに、世界経済を向かわせるだろう、と。

同様の趣旨は、ブラジルのダ・シルバ大統領が書いた論説にも顕著です。より民主的で、より公正なグローバル・ガバナンス、を要請します。今や発展途上諸国は問題であるより解決策の一部なのです。なぜなら、今後、世界市場に何千万人もの新しい消費者が加わってくるからです。豊かな国の金融・経済危機による厳しい影響を受けた、世界の最も貧しい者たちにも、希望が回復されるべきだ、と主張します。

むしろブラジルこそモデルなのだ。平等な分配は成長のエンジンである。IMFを改革し、世銀を改革してほしい。世界経済の運営をもっと透明にしてほしい、とダ・シルバは求めています。

BBC, Wednesday, 23 September 2009 G20: Pledge by pledge

(コメント) BBC4月の約束がどの程度守られたかを検証しています。IMF融資枠を増やしたり(EUと日本が多い)、タックス・ヘイブンを取り締まったり、さまざまな実行を伴ったことは危機の認識が深かった証拠であり、危機における政府の力を示すものでもあります。

NYT September 23, 2009 All Together Now By GORDON BROWN

(コメント) イギリスのゴードン・ブラウン首相も訴えます。・・・国際政治において高い評価を受けながら、国内政治では支持を失い、政権を失うと予想されていますが。

この数カ月が第二次世界大戦後の国際秩序再建の時期に等しい重要性を持つ、とゴードン・ブラウンは主張します。新しい協力の時代に向けて、5つの課題が待っています。気候変動、景気回復、テロ撲滅、核拡散防止、貧困解消。

これらは互いに関係しています。たとえば、もし気候変動の枠組みが確立されれば、エネルギー効率の改善や低炭素エネルギーの開発は、今後の投資を牽引するでしょう。数百万の雇用が創出され、現在の軍需産業や航空機産業を超える部門が誕生します。そのためにも途上諸国の支持が必要です。

ロンドン・サミットで約束した政府の刺激策は成果をもたらしましたが、このまま拡大し続けることはできません。ゴードン・ブラウンは、新しいグローバルな成長に向けた<雇用・成長・安定>の枠組みに合意するべきだ、と主張します。それは、EU諸国が財政安定と雇用・成長の枠組みを約束したことに似ています。

テロ撲滅の国際協力は今やアフガニスタンが焦点となっています。ゴードン・ブラウンは明確にアフガニスタンの治安をアフガニスタン人自身によって回復する政策を支持します。また、核兵器の拡散を完全に協力して防止できなければ、気候変動の対策として重要な核エネルギーの平和利用も拡大できません。

国連の決めたミレニアム開発目標は実現から遠く、最貧の土地で、特に妊婦や子供たちに、必要な医療サービスを無料で提供することも指導者たちの責任だ、とゴードン・ブラウンは考えます。

1945年と同じように、われわれは試されている。

NYT September 23, 2009 U.S. Looks to World Financial Reform By EDMUND L. ANDREWS

(コメント) G20ピッツバーグ・サミットに向けて、アメリカ財務省のスタッフは合意形成に自信を示しています。銀行の自己資本規制、ボーナスなどの報酬体制の規制、そして、アジア諸国との世界的な不均衡、が主要テーマであり、合意形成は可能である、と考えます。

・・・しかし、中国はどう考えているでしょうか?

NYT September 24, 2009 White House Pares Its Financial Reform Plan By STEPHEN LABATON

LAT September 24, 2009 Obama and free trade: What's the deal?

The Guardian, Thursday 24 September 2009 The G20 must wake America up Kevin Gallagher

(コメント) オバマの通商政策における一貫性の欠如は、G20での指導力を損なう、と批判されています。また、Kevin Gallagherは、アメリカが行動しなければ問題は解決できない、と国際会議におけるアメリカの不決断を責めています。もっと世界の貧困解消のために、もっと国際金融制度の改革のために、もっと地球規模の気候変動を防ぐために、アメリカは行動できるはずだ、と。

The Guardian, Thursday 24 September 2009 Think again, G20 sceptics Kofi Annan, Amartya Sen, Michel Camdessus

(コメント) Kofi Annan前国連事務総長, Amartya Senノーベル経済学賞受賞者, Michel Camdessus元IMF専務理事は、G20を常設の世界経済運営組織として制度化するべきだ、と主張しています。そして、

1.グローバルな景気回復と構造改革に向けたプランを示す。融資は発展途上諸国にも供給される。2.国際金融機関における最貧諸国や途上諸国の発言を認める。また、地域の金融機関を強化する。マクロ政策の監視を超える、高度な金融・規制問題については、ハイレベルの政治協議を設ける。3.貿易、補助金、知的所有権など、多くの市場の歪みが発展途上諸国に与える不利益を除去する。こうしてドーハ・ラウンドを再開し、特に最低開発諸国には関税や割り当てを引き下げる。4.情報や技術を共有して、気候変動の国際枠組みを支援する。

各国の利害は大きく異なっているが、緊急性と危機感を共有して、懐疑論者が間違っていることを示すべきだ。

The Guardian, Thursday 24 September 2009 Risky business at the G20 Thomas Noyes

FT September 24 2009 We need to rationalise the rules on capital By Howard Davies

(コメント) 国際資本市場の規模は膨張し、複雑な金融商品が取り引きされている以上、金融機関の自己資本は以前よりも増やすべきだ、という合意が成立するだろう。自己資本規制を強めることも、マクロ政策によって金融システムの安定性を保つ(たとえば、住宅バブルに対して金融引き締めを行う)ことも、正しいことだが国による違いが大きい。もし各国が独自に行えば、それらが重なり、競合して、金融機関の資本供給を大幅に減らすかもしれない。

主要国の指導者たちは、各国が合意して改革を進めるとき、the Financial Stability Board(金融安定理事会)やBISが各国の政策を事前に調整するべきだ。

FT September 24 2009 Four things you must know about the global puzzle By Philip Stephens

(コメント) G20の地政学的な意味を解釈するには、Philip Stephensの論説が参考になります。中国の関与、中東の挑戦、オバマの「新しいゲームのルール」、そして、ヨーロッパの地位、です。

中国は国際的な責任を(ひとまず)認めたようです。自国の政策を実行する際に、強い相互依存関係を考慮しなければならない、という認識は西側主要国が受け入れています。今回の金融・経済危機で、中国もこれ(認識共同体)に参加しました。ただし、国際協調の責任を受け入れたわけではなく、独自に、多角的な外交交渉やソフト・パワーを追求しています。

中東の挑戦では、アフマディネジャド大統領が注目されます。しかしオバマは、アメリカが強い同盟関係を維持してきたイスラエルの首相に、その提案(入植地拡大の停止・凍結)を拒否されました。それどころか、ネタニヤフ首相はアメリカの影響力衰退を指摘したのです。確かに、アメリカはイラクとアフガニスタンで苦境にあります。中東における力を示すには、イスラエルとパレスチナをアメリカの示す和解案で合意させることです。

他の多くの問題でも、アメリカは世界で唯一の超大国として、各国が解決のための仲介を求めています。オバマがそのリスクを取るかどうか、が問題です。オバマ政権は相対的なパワーの低下を認めて、国益を追求する上で外交や国際機関を重視するようになりました。アメリカの最大のカードは、国際合意に制裁や軍事介入の強制力を与えるというより、より重要なことは、合意の正当性を与えることです。オバマは国際政治に「新しいゲームのルール」を示します。それは、核拡散防止条約(NPT)をアメリカが承認し、国際安全保障体制として再生する方針に表れている、とPhilip Stephensは指摘します。

オバマの政策転換は世界中で多くの支持を得ています。しかし、容易に実現しないのは、各国が超大国の優越を認めたくないからです。特に、衰退するヨーロッパ諸国のように。独自のサミットを目指すサルコジ、金融危機で脚光を浴びたけれど危機の鎮静化とともに無視されるゴードン・ブラウン、ちっとも目立たないメルケル。気候変動の枠組みでも、コペンハーゲンで主役になるのはアメリカと中国でしょう。

Philip Stephensは、私たちが今後も「グローバル・パズル」に住む、と考えます。論説の挿絵が、巨大なルービックキューブを回す多くの手であるのは、正直なイメージです。・・・鳩山首相の手はあるでしょうか?


The Times, September 21, 2009

Time to stop being chicken and talk about China

Bill Emmott

(コメント) 世界経済危機はドラマであり、悲劇でしたが、次第に、道化芝居になっています。特に、米中がタイヤとチキンで戦争し始めた今では。

G20は、銀行家のボーナスで論争するために集まるだけでよいのか? サルコジやゴードン・ブラウンの長い演説を聞かされて、世界の首脳たちは夕食を食べ、朝食を食べ、5分おきに相手を変えて話す。こんな喜劇を演じながら、彼らが決して触れない本当の問題が一つあります。シャーロック・ホームズを知らなくても、それこそが犯人の証拠です。

それは、 ・・・中国の通貨。人民元。

Bill Emmottは、世界(アジア)過剰貯蓄説を採用しています。アジア通貨危機以後、アジア諸国、特に中国は為替レートをドルに対して過度の安価な水準で固定した。輸出を伸ばして外貨準備を増やし続けたが、為替レートを調整せず、その貯蓄は世界の金融市場にチープ・マネーの洪水を生じさせた。それが投機的な金融取引に大きな利益をもたらし、バブルを膨張させたわけです。

Thanks to Western self-flagellation” こうして被虐的な、あるいは自己破滅的な、米英など、西側諸国のバブルと消費が、今回の危機の背景であり、その真の原因は人民元であって、ドルではない、とBill Emmottは断言します。国際準備通貨としてドルは適当でない、という中国人民銀行の主張を喜ぶのは、チャベスかプーチンだけであろう、と。

ガイトナー財務長官が上院の公聴会で人民元の「操作」を批判したとき、中国が強く反発して、それ以来、この話題は封印されました。2兆ドルの外貨準備を保有する中国に対して、アメリカからは言いにくいのでしょう。しかし、G20こそ発言しなければなりません。中国は資本取引を自由化し、変動レートに移行するべきだ、と。

しかも、Bill Emmottはそれが(中国の関係者が言う)20年先ではなく、せいぜい3年で実現する、と予言します。なぜなら、中国政府自身が、1.外貨準備の為替リスクを無視できない、2.刺激策によるインフレのリスクに対応を迫られる、3.産業構造を高度化する必要を感じているからです。

だから、G20は人民元の問題を避けることはできないのです。

FT September 22 2009

Why China must do more to rebalance its economy

By Martin Wolf

(コメント) Martin Wolfも、中国の短期的な不況回避が成功したとしても、それを持続できない、と考えます。なぜならそれは政府の支配する融資や投資の急激な増加によって実現したからです。将来の収益悪化や不良債権、過剰生産力、急激な減速を予想させます。

中国の通貨・人民元は増価することが望ましいでしょう。為替リスクを避けるには、外貨準備を減らすしかありません。また、中国経済の歪みは大きく、温家宝首相自身が、経済の再構築、もっと国内消費に依拠した成長を指導しています。Morris Goldstein and Nicholas Lardyの研究を引いて、中国の均衡回復が世界経済にも有益であることを指摘します。

人民元の増価は、企業や消費者に多くの富をもたらすでしょう。すでに中国国民自身が、今の通貨体制に不満を持っています。


WP Monday, September 21, 2009 Obama's Tire Tariff: Bad Policy, Right Message By Robert J. Samuelson

NYT September 21, 2009 Present at the Trade Wars By DAVID ROCKEFELLER

(コメント) オバマ政権は、中国からの輸入が今後も様々な分野で急増することを避けたいが、米中間で貿易戦争が始まることも避けたい。だから、関税率を抑制しながら設定するのだ、とRobert J. Samuelsonは考えます。

しかも、中国の輸出は低賃金を反映しているだけでなく、人為的な為替レート水準の過小評価、輸出を促す土地やエネルギーの提供など、国内政策によるものだ、と批判します。こうした重商主義政策は世界不況によって害悪を増し、アメリカだけでなく世界の政策運営に悪影響を及ぼしている。中国自身も、輸出に依存した成長を転換する必要に気付いている。

中国の姿勢を正すには、オバマの間違った、効果のない関税こそが、正しいシグナルである、と。

他方、DAVID ROCKEFELLERのオバマ批判は強烈です。まるで政権を強化するためにチェチェン紛争を利用した、とプーチンを批判しているように見えます。

オバマは、国内で医療保険制度の改革に行き詰まったことを隠すために、中国との貿易戦争に火をつけた、というわけです。労働組合、環境保護運動、ケーブルテレビ局、などが保護主義を求める声は無視しなければなりません。それを政治的に利用することは、貿易相手国に間違ったメッセージを与え、回復しつつある景気や株価を破壊するでしょう。

アメリカの通商政策の失敗Smoot-Hawley Tariff Actこそ、1929年の株価暴落を世界不況と第二次世界大戦にまで拡大したのだ、とDAVID ROCKEFELLER強調します。

IHT September 23, 2009 Chinese Exceptionalism By PHILIP BOWRING

WSJ SEPTEMBER 22, 2009 Taxes, Depression, and Our Current Troubles By ARTHUR B. LAFFER


WP Monday, September 21, 2009

Why the U.S. Needs Africa

By Paul Kagame

(コメント) ルワンダの虐殺を反政府軍によって鎮静化した、現在のルワンダの指導者です。アフリカから、アメリカとの対等な国際関係を求めています。オバマの演説に応えるように、カガメは書いています。「アフリカはガバナンスを強化する政策を採用し、強力で革新に富む民間部門が求める条件を創り出すように、経済成長を促進する。」


FT September 21 2009 No easy choices left in Afghanistan

FP SEPTEMBER 21, 2009 Is Afghanistan the New Africa? BY ELLEN KNICKMEYER

WP Tuesday, September 22, 2009 More Than a Numbers Game in Afghanistan By Eugene Robinson

WP Tuesday, September 22, 2009 Wavering on Afghanistan?

FT September 22 2009 Obama has few Afghan options Max Hastings

WSJ SEPTEMBER 22, 2009 Obama's Befuddling Afghan Policy By LESLIE H. GELB

(コメント) アフガニスタン情勢です。首都に新空港やホテルができても、かつてのアフリカがそうであったように、経済が再建しているとか、市民生活が繁栄するとは限りません。同じようなアフリカの多くの国も、独裁者のパラダイスでしかなかったのです。

オバマ大統領はMcChrystal将軍の増派要求を実行するでしょうか? まるでブッシュ政権のイラク政策です。その混乱と無能さを外交評議会の会長であるLESLIE H. GELBが強く批判していることに注目します。

イラクから撤退し、アフガニスタンでアルカイダを追い詰める。これは「必要な戦争だ」と主張したオバマが、今では増派を躊躇しています。言うまでもなく、オバマは国内政治に制約されているのです。アフガニスタンはアメリカの安全保障に重要ではないけれど、オバマ政権にとってアメリカが敗北することも許されません。民主党はそのことを理解し、共和党は強硬策を唱えるばかりでなく、2年ないし3年でアフガニスタンが自衛できる状態に移行するよう、アメリカなどが治安を維持し、アフガニスタン政府を援助するしかない、と合意することです。


The Guardian, Tuesday 22 September 2009

Europe must stand up for Georgia

(コメント) グルジアはどうなったのか? 20世紀を振り返って、ヨーロッパに築かれた多くの壁を思えば、それが民衆によって打ち壊されたことは素晴らしい成果であり、21世紀に残された壁を打ち壊すことを支持しよう、と呼びかけています。それはグルジアです。

ロシアがたとえ軍事力によって境界を設けても、人びとはそれを超える権利があり、世界の秩序がそれを支持しているのです。EU27カ国の民主的な政治指導者は、それを要求するべきです。

・・・1.大国は常に、その存在が目障りな隣国を侵略する口実を見つける。2.友好国の領土分割に対して西側の民主主義諸国が反対することを怠れば、たとえそれが小国であっても、グローバルな規模で重大な結果をもたらす。

グルジアのソ連軍は、ヨーロッパの人々が掲げる、平和で民主的なヨーロッパ統一、という理想を失わせるものだ。

SPIEGEL ONLINE 09/23/2009

James Baker on the Fall of the Wall

(コメント) 20年前のベルリンの壁崩壊と東西ドイツの再統一について、アメリカの当時の国務長官、ジェームズ・ベーカーが質問に応えています。

この事件を可能にしたのは誰か? ・・・ゴルバチョフ書記長とシュワルナゼ外相とが、ソ連の帝国を維持するために軍事力を使用しない、と決めた。

なぜ彼らはその決断をしたか? ・・・ソ連はこれ以上、西側と経済的にも軍事的にも競争できない、と考えたからだろう。

・・・アメリカの指導力がなければ、ドイツの統一はなかった。ゴルバチョフはそれを望まなかったし、フランスとイギリスも歴史は繰り返すと考えていた(ドイツとの戦争)。実際、ドイツは極めて短期間に2度も戦争した。

そして、コール首相が議会に提出した10カ条の再統一計画案よりも、コールとブッシュ、ベイカーがキャンプ・デイビッドで行った階段の方が重要だった、と述べます。すなわち、そこでコール首相は再統一したドイツが、中立ではなく、NATOに加盟する、と約束したのです。

ゴルバチョフが、いかなる国も同盟国を選ぶ権利がある、と認めたとき、統一ドイツは国際秩序においても可能になったわけです。

・・・ドイツ統一の文書が調印されたとき、私はゲンシャー外相に冗談で、「次は、ドイツと中国との国境問題で交渉しよう」と言った。しかし、ドイツは拡大しなかった。冗談は冗談でしかなく、歴史は繰り返さなかった。(つまり、ドイツがヨーロッパ全土を征服して、中国に隣接する帝国になる・・・)


FP SEPTEMBER 23, 2009

Think Again: The U.N. Security Council

BY DAVID BOSCO

NYT September 23, 2009

'Do as I Do' Diplomacy

By WILLIAM J. McDONOUGH, THOMAS R. PICKERING, and THOMAS J. MILLER

(コメント) FPにDAVID BOSCOが書いた回答は的確だと思います。

「しゃべるばかりで行動しない?」 ・・・安全保障理事会U.N. Security Council (UNSC)15カ国は、国際平和と安全保障の維持に責任を持ちます。平和維持活動、制裁や武器輸出の禁止、戦争犯罪を裁く法廷、を動かしています。

5カ国の常任理事国と、10カ国の非常任理事国のうちの4カ国が賛成しなければ、決議は通りません。そのために、毎日、主要国の大使は話し合うのです。それが大国の協議と妥協の文化を形成します。

「拒否権をなくすべきか?」 ・・・拒否権は大国が国連を解体する危機を回避しました。拒否権なしには安保理は存在しないでしょう。また、初期に比べて、拒否権は頻繁に行使されなくなりました。国連大使は秘密裏に交渉し、相手の選択肢や限界を探ります。拒否権を行使することなく、合意文書を工夫します。

「常任理事国を増やすべきか?」 ・・・日本。インド。ブラジル。また、EUを一つにして、ドイツ、フランス、イギリスは拒否権を失う。そのような改革は難しいでしょう。国連総会の3分の2が支持しなければなりません。各国はグループを形成して補償を求めるので、非常任理事国が増えます。その結果、たとえば、安保理は25カ国とか、それ以上に膨れ上がります。そのような安保理に、大国間の緊密な交渉で合意を探る文化は生じません。

そして、NYTの論説は、オバマがアメリカ大統領としては最初の国連安保理議長になることを歓迎し、アメリカの外交がルールに依拠した国際システムを追求するものであった、と主張します。そして第二次世界大戦後の積極的な貢献から、最近のブッシュ政権下で最悪の状態に落ち込んだことを批判します。

FT September 23 2009

Obama strives for a nuclear bargain

The Guardian, Thursday 24 September 2009

Building a world without nukes

Joe Cirincione

NYT September 24, 2009

Nuclear-Free Seas

By THOMAS LEHRMAN and JUSTIN MUZINICH

(コメント) オバマが安保理の議長として取り上げた課題は、核兵器の拡散を防止することでした。核武装が世界中に広がり、核戦争の可能性が高まるかもしれません。オバマは現在の核保有諸国も削減するように求めています。他方で、温暖化防止のための原子力発電が普及するでしょう。そこで、核燃料の供給に関する国際管理システムと、核の平和利用を保証するIAEAによる査察が重要になります。

「ブッシュ政権の官僚たちは、前任者たちが打ち立てた安全保障の制度を壊すことに、ほとんどサディスティックな喜びを示した。彼らの政策は災厄であり、アメリカを一層孤立させ、史上かつてないほど深刻な対立と危機をもたらした。」と、Joe Cirincioneは書いています。

オバマは議長として述べました。「われわれがたった今採択した歴史的決議は、核兵器のない世界を実現するという約束を述べたものである。」・・・「安全保障理事会は、その目標に至る過程で、核の脅威を減らす行動に役立つ幅広い枠組みに合意した。」・・・

もちろん、オバマの反対派たちはさっそく批判するでしょう。このような合意は弱く、ナイーブで、むしろ危険だ、と。「宥和策」として攻撃し、ただの紙切れだ、と侮辱する。こうした反応をオバマは承知しています。それでもオバマは時代を変えるために仕組み(平和利用と核技術や燃料の供給とを結び付ける)を模索します。・・・イギリスのゴードン・ブラウン首相は核兵器の25%削減を約束し、ロシアのメドヴェージェフ大統領はイランへの制裁に加わり、日本の鳩山首相はオバマとともに核のない世界を目指す、と約束しました。

また、NYTの論説は、核廃絶や核拡散防止のためにも、公海の自由を制限する国際法の制定(アメリカの批准)を求めています。


FT September 24 2009

The dragon stirs

By Geoff Dyer in Beijing

Asia Times Online, Sep 25, 2009

Beijing faces a fresh legitimacy test

By Verna Yu

(コメント) 建国60周年を記念する軍事パレードが北京で行われました。中国の対外政策は、特にアメリカに対して、慎重なものでした。ケ小平が指示したように、わざと曖昧にして、力を蓄えたのです。何より、アメリカは貴重な輸出市場でした。

しかし、中国がますますアメリカの衰退を意識する過程で、独自の国際秩序を主張し始めたわけです。たとえば、陰謀論を満載したCurrency Wars 2 by Song Hongbingがベストセラーになりました。・・・軍備を拡大し、慎重に、時機をうかがう。不況や金融危機、ドル安は、離反を強めます。他方、国内のアメリカ化も進んでいます。


FT September 24 2009

Healthcare can get America working

By Michael Lind

(コメント) 未来の雇用がどこで生まれるのか? ハイテク技術であるとか、環境保護だ、というユートピアに代わって、現実が意味することは、医療、教育、地方公共部門、です。これらが最も有望な雇用創出のエンジンなのです。

それは必ずしも莫大な補助金や公共部門の肥大化、民間部門の負担増と成長の限界、を意味していないようですが、どのようなメカニズムが働くのか、言及されていません。

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The Economist September 12th 2009

Indonesia’s future: A golden opportunity

Election in Afghanistan: Re-rigging Hamid Karzai

Bagehot: The end of the age of war

(コメント) なるほど、考えてみれば、2億人を超す人口のインドネシア経済が成長したことは祝福されるべきでしょう。アジア通貨危機の中でも特に象徴的なスハルト独裁政権の崩壊、クローニー・キャピタリズムや暴動を思えば、その後の政府崩壊も懸念されました。世界最大のイスラム教徒を抱える国が、経済危機の中で難民流出や軍事クーデタを生じ、世界最大の海上輸送路が海賊の海に変質することを世界は恐れていました。

しかし、インドネシアはカオスに落ち込むことなく、民主化され、再建されたのです。他方、NATO軍に守られたアフガニスタンの選挙は不正に満ち、カルザイ再選も国際社会の信認をむしろ損なう結果になりました。選挙のやり直し、即時撤退、増派と長期的なアフガニスタン自衛力育成、ロヤ・ジルカ(部族会)による政治同盟と代表選出、首相を置いてカルザイの大統領を名目化する、などが検討されています。

イギリスがこれほど世界中の紛争で戦死者を出す国であるのは、常にそうであったわけではなく、イギリス国民が望んだわけでもない、と。


The Economist September 12th 2009

Unnatural selection

Fiscal policy: The other exit strategy

Making fiscal policy credible: Bind games

Buttonwood: Too big for its Gucci boots

Economics focus: What if?

(コメント) 金融機関は政府と中央銀行の大規模な介入によって生き延びています。それどころか、国民が財政赤字の負担を議論し始めたころ、早くも金融取引は再生しつつあるのです。財政政策を金融政策と同じように、政治から独立した評価機関に委ね、透明な目標を示すべきだ、という議論と制度化が、世界各国で実現しつつあるようです。

欧米各国で金融規制や制度改革は実行され、金融ビジネスの姿が変わるでしょう。しかし、GDPの180%を超える公的債務を抱えながら、雇用創出や高齢化・少子化対策を迫られている日本政府が、なぜ率先して、財政赤字と国債の独立監視・評価機関を設けないのか? 予算配分や公共事業で、投票を促す政治家や天下る官僚が日本から消滅するためにも、一石3鳥の改革です。

リーマン・ブラザーズの倒産を回避できたか、すべきだったか、という論争が続いています。