IPEの果樹園2009

今週のReview

8/24-8/29

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

安全保障:アメリカEU・アジア・アフリカ、 医療保険制度改革、 ドイツのハイパーインフレ、 ガバナンス:G20からGleco石油の呪い、 選挙:アフガニスタン1・日本、 鳩山・友愛社会と金大中・民主主義、 

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


The Guardian, Thursday 13 August 2009

What does security mean to you?

Hugo Rosemont

FT August 13 2009

Soldiers of fortune cannot remain outside the law

By Max Hastings

(コメント) 「21世紀において安全保障とは何か?」 ・・・国民的な議論が必要です。ところが、国民は安全保障に関心がない。あるとしても、それはインターネットを介して預金が奪われるとか、取引が妨げられるようなサイバーテロだ。しかし、インターネット上の攻撃だけが脅威ではない。新しい安全保障の考え方を示す必要がある。

また、それをどのような実現するか? どの程度の財政負担を引き受けるか? そして、民間軍事請負会社にさまざまな軍事サービスが委託されることを認めるべきか? アメリカのブラックウォーター社(今はXe社)や、イギリスのG4S社、イージス社、など。イギリスでは、もっとも繁栄する民間サービス部門となっています。

軍事請負会社に犯罪歴や望ましくない軍歴がある疑念を払しょくしなければなりません。実際、最悪の事件として、2007年、ブラックウォーター社の社員が民間人17名を殺害しましたが、その後、罪に問われませんでした。1990年代には、Dyncorp社の社員が現地の売春人身売買組織に加わっていました。しかし、企業は責任を問われませんでした。

多くの政府は軍事関連分野の民間委託を事実として受け入れています。需要は減らず、さまざまな官僚たちの天下り先となっています。それゆえ、彼らを裁く仕事を、政府は避けてはなりません。

FT August 16 2009

How to make Europe’s military work

By Charles Grant

(コメント) 通貨統合で外貨準備が減るのと同じように、政治統合はEU諸国の軍備も縮小するでしょう。しかし対外的には、EUが安全保障にも重要な役割を引き受ける合意が必要です。それはドイツの平和主義によって阻まれている、と考えます。

ソフト・パワーによって国際政治に重要な影響を及ぼしたい、とEUは願ってきました。しかし、さらに進んで、外交と防衛に関するEUの合意を形成し、発言しようとしています。それが10年前にできたthe European Security and Defence Policy (ESDP)です。もし軍事力を積極的に国際展開することができなければ、アメリカやロシア、中国、などと並んで、国際政治に重要な影響を及ぼすことはできません。

ESDPによるチャドへの軍事展開は、輸送用ヘリコプターの調達ができずに遅滞し、結局、ロシアが提供したヘリコプターによって展開するしかありませんでした。GDPの2%以上を防衛予算に充てている国は5つ(英仏と、ポーランド、ギリシャ、ブルガリア)しかありません。「緊急展開部隊」の構想も、紙の上でしか存在しません。

EUはその隣接する「不安定性の孤」を放置できません。すなわち、東欧、バルカン西部、コーカサス、中東、北アフリカ、です。それらの地域で生じる危機は、たとえば難民の流出として、直接にEUの利害に関係します。アメリカはEUがその裏庭、すなわち、バルカン半島で軍事展開することを求めますし、国連はEUがアフリカの内戦地帯に介入することを望んでいます。

しかし、外交・防衛における共通政策が必要であることを認めても、EU内部には大きな差があります。3大国を観ても、フランスは長年、NATOに対抗してヨーロッパの軍事力を求めてきましたし、イギリスで保守党が政権を執れば、EUからの離脱さえ試みるでしょう。

しかし、今、重要なのは、軍事力行使に対するドイツの反対です。ドイツも、コソボ、コンゴ、アフガニスタンで兵士を展開しましたが、その装備は制限しています。EU最大のドイツが平和主義を強調すれば、EUの防衛政策全体が縮小されます。それは、まるで「巨大なスイス」(他の地域の問題には関心がなく、介入もしない)を目指しているように見える、とCharles Grantは指摘します。

それゆえ、EUがユーロを導入したのと同様に、防衛政策でも、軍事力の整備とその行使について、加盟諸国は一定の基準に合意するべきだ、とGrant主張します。防衛政策から排除するという圧力を受けて、その厳しい参加基準を満たすために、各国は装備と戦争に関する考え方を問い直すでしょう。

IHT August 20, 2009

NATO and World Security

By ZBIGNIEW BRZEZINSKI

(コメント) ブレジンスキーはNATOについて、その拡大を考えます。一方では、NATOが三つの歴史的使命を終えて必要なくなりました。すなわち、@西欧を東の脅威から守る。Aソ連崩壊後の移行、B冷戦終結後の世界とEUの拡大。

まだ主要な政治家たちは、21世紀の安全保障の危機を正しくとらえていません。緊密に統合化し、相互依存する世界で、民衆レベルの政治意識が先鋭化しています。中国やインドの台頭で、西から東へのパワーの移転が進みます。

だから、この時代の安全を確保するには、NATOを拡大し、まだ敵対意識の強いロシアとも協力するために、SCOとの関係を深める。さまざまな地域の安全保障に関する協力を促し、NATOはその結び付きを確保するのがよい。


FP AUGUST 13, 2009

Think Again: A Marshall Plan for Africa

BY GLENN HUBBARD

WP Friday, August 14, 2009

U.S. Boots On Congo Ground

By Michael O'Hanlon

(コメント) オバマ大統領は、ルーズベルトに匹敵する国際秩序の再編を望んでいます。そしてクリントン国務長官が訪問したアフリカにおいて、マーシャル援助計画を再現する機会をつかむでしょう。かつてヨーロッパも戦争によって分断されていたのです。

マーシャル・プランは単なる援助ではありませんでした。アメリカからの融資がヨーロッパのビジネスに対して行われ、その返済が各地の政府に対して支払われて通商のインフラ整備に利用されました。

アフリカでは市場が機能しない、という意見にGLENN HUBBARDは反対です。世界貿易が繁栄する中でも、アフリカは取り残されています。アフリカ諸国にも、市場を受け入れる政策転換を条件として、大規模に融資するべきです。

それは企業による植民地主義ではないか? という疑問に対して、植民地主義はアフリカを豊かにする、と考えます。しかも、今や自分たちの政府があるのだから、農民たちも世界市場を利用して豊かになり、政治を動かせばよいのです。外国企業とエリートたちだけの富を許す必要はありません。

制度や民主主義も重要ですが、それは市場によって支持されなければ成立しないでしょう、と。

Michael O'Hanlonは、特に東コンゴにおいて安全保障を確立することを求めます。しかし、今はアフガニスタン以上に軍事介入の規模が不足し、分散しています。

オバマは、コンゴやダルフールに、新しい軍事介入の方式を提唱しています。すなわち、現地で兵士を採用するのです。そして、12週間のキャンプ、12週間の専門訓練を経て、彼らを展開させます。彼らの任務は監視などの単純な内容に限ります。軍事介入に敵対する勢力は高度に組織されておらず、装備も粗末なものであれば、こうした治安回復が十分に効果的です。

YaleGlobal, 20 August 2009

Lessons of Failed States: Rebuilding Sierra Leone and Liberia

Humphrey Hawksley

(コメント) シエラレオネやリベリアへの軍事介入は、秩序回復のために障害となる武装集団を排除しました。そして、一時的に統治を外国の軍隊が担ったのです。

9・11の重要な教訓とは、どこであれ破綻国家を許せば、最悪の武装集団がそこを世界中の標的に向けた攻撃拠点にする、ということでした。西側の民主主義諸国は、この教訓をどうやって実践するべきか、迷っています。イラク、パキスタン、アフガニスタン、ソマリア、北朝鮮、ビルマ、その他、多くの拠点からテロリストたちが核物質を利用した「ダーティー・ボム」で攻撃してくる危険があります。

その長期的な解決策は、彼らの生活水準を引き上げること、そして、社会を破壊するのではなく、再建に向けた希望を与えることでしょう。しかし、1990年代の経験は、ソマリア、ルワンダ、ボスニアにおいて、失敗に終わりました。

リベリアでは、再建された政府に腐敗が蔓延するのを防ぐために、リベリアと国際機関が合意して、Governance and Economic Management Assistance Program (GEMAP)、すなわち、独自の統治機関を設けて、外国の官僚たちが予算を決めています。リベリアの法律家や政府職員は西側の最高の大学を卒業しており、底辺の人民から要望を聞いています。三つの最優先課題として、道路、教育、衛生、をあげました。他方、シエラレオネにはGEMAPが認められていません。病院では医薬品は横領されて失われ、かつての少年兵たちには仕事がなく、内戦が復活しています。

社会を再建し、経済活動を回復するためには、短期の軍事介入だけでなく、戦後の復興を現地の政治エリートに委ねず、長期に及ぶガバナンスの改善を代替し、監視し、支援しなければなりません。


WSJ AUGUST 13, 2009

Bernanke in the Cross-Hairs

By KIMBERLEY A. STRASSEL.

(コメント) 金融システムの再建は進みません。オバマ政権は、それでもバーナンキの連銀に金融監督の強化された権限を与えるのでしょうか? 政治家たちは、右派も左派も、金融危機が連銀をフランケンシュタインのような怪物(そして、財務省の手足)にしてしまったことを悔いています。

バーナンキだけでなく、彼を支持してきたオバマにも、容易な「出口戦略」はありません。その再任は議会の強い反対にあうかもしれません。

FT August 18 2009

Why we need to regulate the banks sooner, not later

By Kenneth Rogoff

NYT August 19, 2009

The Greenback Effect

By WARREN E. BUFFETT

(コメント) 金融危機回避について、その手法に反対する声が強まっています。すなわち、金融救済は行き過ぎだ。銀行の規制強化は大きなコストになる。リーマン救済に失敗したことが悪かっただけだ。・・・こうした意見にKenneth Rogoff反論します。

WARREN E. BUFFETTは、気候変動とドル暴落の類似性を考えます。それは「バタフライl効果」です。アメリカ政府・連銀の危機回避策がもたらす思わぬ副作用を懸念します。公的債務の累積に対して、外国の貯蓄も、国内の貯蓄(増税)も期待できない以上、インフレが進むでしょう。すなわち、「バナナ共和国」のような通貨秩序の混乱と資本逃避、弱体化に向かうのです。

氷河が崩れて溶け出すように、ドルの価値も溶け始めている、と。

FT August 20 2009

The Fed’s independence is at risk

By Glenn Hubbard, Hal Scott and John Thornton

(コメント) Glenn Hubbard, Hal Scott and John Thorntonは、連銀の現状を強く懸念しています。300億ドルのノンリコース・ローン、850億ドルの信用枠設定、4240億ドルの不良資産に損失が発生した場合の保証。こうして、連銀のバランス・シートは大きく変化し、財務省証券を中心とした資産が、信用の怪しい民間資産によって膨張してしまいました。多額の緊急融資を民間のCPにも行いました。「最後の貸手」という原理を逸脱して、モラル・ハザードを招きます。損失は財務省によって補填されるしかなく、中央銀行の独立性をも脅かします。

このような救済を続けることは、連銀の信用を大きく損なう、と。


CSM August 14, 2009

Confucius could help relations between US, China

By Anne Wu

(コメント) 双方のリアリストたちは、米中協力を、孔子の「中庸」の教えによって理解することが望ましい、と指摘します。悲観でも楽観でもなく、一極支配でも多極支配でもない。米中は永久に敵ではないし、友でもない。しかし、その利益のつながりは、双方を満足させ、世界の利益にもなる。

WP Wednesday, August 19, 2009

Rebalancing Relations With China

By Henry A. Kissinger

Asia Times Online, Aug 20, 2009

China leads an Asian charge

By Francesco Sisci

(コメント) 中国が台頭する中でアジアの秩序を構想するとき、Henry A. Kissingerは、ドイツが台頭したときのイギリスの歴史を考えています。そして、中国・アメリカ双方の運命を共通させるようなメカニズム、アジアに根強いナショナリズムを緩和する制度、を求めています。

Francesco Sisciの記事は、西側による陰謀説に近い、金融秩序と戦争を同一視したリアリスト的な解釈です。


LAT August 14, 2009 President Barack Obama could learn from Franklin D. Roosevelt By Nancy J. Altman

(コメント) フランクリン・D・ルーズベルトが批判されたように、オバマの医療保険制度改革も「社会主義だ」と批判されています。ルーズベルトはその批判をどのように抑えたか?

たとえば、ニューヨーク選出の共和党議員は批判しました。「独裁者を目指すものだ。2500万人のアメリカ市民が初めて指紋押捺を強いられる。」・・・「アメリカの制度は失われ、・・・偉大な国家は、ヨーロッパの当たり前の国になる。」

今も共和党員は、民間ビジネスを締め出す、とか、官僚制度が市場に立ちふさがる、と批判します。FDRと同じように、オバマも海外に厳しい戦争を抱え、経済崩壊に直面しています。オバマはルーズベルトを継ぐものです。

FT August 14 2009 Healthcare paranoia is part of America’s culture war By Edward Luce

The Guardian, Sunday 16 August 2009 Healthcare reform needs the grassroots Ben Trott

(コメント) 反対派は、オバマを社会主義者、そしてヒトラー、と呼びます。もちろん、これはハイエクの『隷属への道』が示したイメージです。ケインズ主義やリベラルへの批判は、モンペルラン協会、ミルトン・フリードマン、サッチャー、レーガンが引き継ぎました。

こうした政治勢力に対抗するには、オバマを支持する新しい社会運動が必要です。

NYT August 16, 2009

Why We Need Health Care Reform

By BARACK OBAMA

(コメント) アメリカのヘルス・ケアをどうするべきか大論争が起きています。オバマ自身の訴えを聞きましょう。・・・

この数週間、大きな声の意見ばかり聞かされたが、保険会社に有利で、契約者には不利な医療保険システムに苦しんでいる多くの人々の声を聞くべきだ。C型肝炎であるために保険に加入できない人、5歳の時の事故で障害を負って保険に加入できない人、加入時の検査で胆石が見つかり、治療が遅れて亡くなった人、など。

アメリカ人のおよそ4600万人が医療保険に入っていない。しかも、保険に加入しているアメリカ人にとっても、医療保険制度の改革は重要な意味がある。すべてのアメリカ人にとって、医療サービスの安定性と確実性を4つの点で改善するからだ。

1.医療保険を選べる。2.保険料を引き下げる。3.財政資金による補助を、保険会社ではなく、直接に高齢者に支払える。4.保険会社に医療サービスの保険負担を説明させる。

保険会社は支払いを拒んだり、特別な病気を対象外にしたり、条件を付けたり、追加の支払いを求めたりして利益を上げてきた。そのようなことはさせない。保険会社がしているような事前検査や加入拒否、選別テストをしない。

ほとんどの人が、このままではいけない、と考えている。政府は合意を形成するために委員会を設けた。政治的な目的で国民の不安や懸念を煽る者が出てくるだろう。しかし、本当に恐れるべきは、このまま何もしないことだ。

FT August 16 2009 Obama took wrong turn on health By Clive Crook

FT August 17 2009 Home truths about rationing healthcare By Philip Stephens

(コメント) 専門的な論争のように見えるが、共和党と民主党の論争は、もっと異なる偏見、あるいは、陰謀論に由来している、とClive Crookは考えます。すなわち、共和党員の3分の1は、オバマがアメリカ生まれではない(大統領になれない)と信じています。また、民主党員の3分の1以上が、ブッシュ政権は9・11テロ攻撃を事前に知っていた、と考えています。

しかし、こうした文化的な聖戦主義者は一握りに過ぎず、声は大きくても論争を決定する力はない、と指摘します。オバマが苦しむのは、共和党議員の穏健派も反対し、また、穏健派の民主党議員の多くも疑っていることです。すべての者に良い話をする姿勢は信用されないのです。

Philip Stephensも、アメリカとは逆に、イギリスで医療保険制度の民営化を示唆することが、そのコストを考えれば、政治的な暴挙と考えます。英米では政治イデオロギーの流れが逆であり、医療サービスはどの国でも割当制度になっています。アメリカの政治家たちがイギリスのNHSを「国営の安楽死システム」と非難することは間違っています。

ヨーロッパの人々はアメリカの医療サービスを不平等と批判しますが、一層の問題は非効率であることです。保険料が高く、高度な医療もカバーする保険は富裕層しか加入できないし、多くの労働者は未加入で、それでも国民所得の16%(OECD諸国の平均の約2倍)も医療に費やしています。世界一の富裕国が平均寿命や幼児死亡率で平均以下です。

WP Monday, August 17, 2009 More Crises Needed? By Fareed Zakaria

真珠湾攻撃や9・11に対する行動が示すように、アメリカは危機に対して強いが、今回の医療保険制度改革が示すように、徐々に、緩やかに悪化していく問題に対しては合意が形成できない、とFareed Zakariaは指摘します。アメリカ政治システムの長所と短所です

改革のためには、もうひとつの危機を願うしかない?

LAT August 18, 2009 Why 'Obama-care' is failing Jonah Goldberg

WSJ AUGUST 18, 2009 Obama Care Is All About Rationing By MARTIN FELDSTEIN

(コメント) オバマの戦略は医療サービスの割り当てだ。それによってコストを下げようとしている。高額の医療サービスを保険から外すことだ。それは生命を救える治療を妨げることだし、「高額」として政府が排除するのが心配で、医療サービスの研究者は減ってしまうだろう。

間違っているのは、医療保険の支払いを雇用主が課税から免除される税制である。それが医療費の支払いを過大にしてしまう。この点を改善すれば、オバマの案は平等主義を唱える政府の割り当てを導入することに尽きる。人によって健康への評価や関与はいろいろであるから、政府が割り当てることは間違いだ。

The Guardian, Wednesday 19 August 2009 Obama versus the angry white men Michael Jeffries

FT August 19 2009 Cost control not coverage is the key to health reform Mort Zuckerman

FT August 19 2009 Obama should shift on heathcare

(コメント) 医療保険制度の改革は、何が目的か? すべての人に医療サービスを提供したのか? 医療コストの節約か? 改革の目的について、オバマは選択しなければなりません。


NYT August 14, 2009

Republican Death Trip

By PAUL KRUGMAN

(コメント) まるで、虐殺行為に参加するよう呼びかけたルワンダの「虐殺ラジオ」です。

党派の対立を超えて「新しい政治」を目指す、というオバマの演説に感動して、民主党員はオバマを大統領候補に選びました。しかし、オバマが当選してからも共和党の右派は攻撃をやめません。右派のメディアは共謀して汚れた噂を流し続けています。すなわち、オバマは極端にリベラルな計画を示してアメリカを分断している、と。・・・彼らこそ、それを求めているのに。

医療保険制度の改革は、右派の待ち望んだオバマ政権破壊計画なのです。保守派の政治家がこぞってオバマの医療保険=安楽死案を非難します。オバマは今も、党派政治の超越、という理想を掲げていますが、現実の政治はクリントン政権時よりも悪化している、とKRUGMANは考えます。ブッシュ政権が崩壊して、共和党には指導者がいないからです。

それでもオバマが改革を成し遂げようとするなら、欺瞞をまき散らし、国民の不安をあおる連中への激しい怒り、本物の情熱が必要です。


China Daily 2009-08-14

What makes a global financial center

By Andrew Sheng

(コメント) 香港の証券・先物委員会委員長であったAndrew Shengの、国際通貨、金融センター、をめぐる考察です。その利益は、シニョレッジと金融取引の集中です。金融センターの条件としては、所有権、取引の低コスト、透明性、を主張します。アメリカはその地位を維持するか、日本はなぜ失敗したか、中国は成功するか?

SPIEGEL ONLINE 08/14/2009

MILLIONS, BILLIONS, TRILLIONS

Germany in the Era of Hyperinflation

By Alexander Jung

(コメント) ドイツは再びハイパーインフレーションになるでしょうか? ヒトラーの登場に結びつく1920年代の歴史は有名です。

「市電の運賃、肉、劇場のチケット、学校、新聞、散髪代、砂糖、ベーコンの値段も毎週上がった。」・・・「その結果、誰も貨幣の価値がいつまであるか分からなくなった。人々は慢性的な恐怖の中を生きて、食べて、飲んで、買って、売って、他には何も考えられなくなった。ベルリンでだれもが話すことは一つしかなかった。すなわち、ドル、マルク、物価。・・・」

1次大戦がはじまった1914年、1ドルは4.20マルクでした。1922年には価値が暴落し、192311月までに、1ドルは4.2兆マルクに達しました。そして、レンテンマルクが導入され、元の1ドル=4.20マルクに戻ったのです。

人びとは何も信用できなくなりました。ワイマール共和国も、民主主義も、窓から投げ捨てたのです。そして過激な主張に頼ったのです。今も、ハイパーインフレーションの記憶はドイツ人の心理的な自我を形成しています。経済的な安定性を何よりも重視します。

1914年、ドイツがロシアに宣戦布告したとき、必要な戦費を貨幣の印刷で支払うことができるように法律を変えました。国家はますます多くの国債を発行しました。生産は減り、貨幣は増え、政府は価格を統制しましたが、貨幣の洪水の中では無意味でした。

しかし、最初の頃、インフレーションと為替レートの急騰(対ドル価値の急落)は生産を刺激しました。第1次大戦後、英米は通貨価値を安定化するために労働者の5分の1を失業させていましたが、ドイツは逆に景気と完全雇用を維持するために通貨価値を捨てました。

1320億金マルク(1913年のマルクの価値に固定した)の賠償金は、ドイツ国民に協力する意思を失わせ、ワイマール経済を不安定化しました。フランスは1871年の軍事的敗北に対して報復することに熱心でした。それでもドイツは1932年までに260金マルクを現金や商品などで支払いました。それは年間国民所得の10%にあたります。

材木や石炭の輸送がわずかに遅れたことから対立が過熱し、フランスは10万人の兵士をルール渓谷に送って、炭鉱を占領しました。それがドイツの工業生産を断ったのです。政府の税収も枯渇しました。ドイツは高価な外国の石炭を購入するために外貨準備を消尽しました。他方で、多くのドイツ人が極貧や病気に苦しんでいたのです。

この苦しみはフランス人が課した賠償金やルール占領によって起きた、とドイツ人は考えました。そしてルール占領のころからインフレーションは加速します。ハイパーインフレーションは貨幣供給の料だけで説明できません。それは貨幣への信頼が失われたこと、内外の貨幣価値やドイツ経済の将来に対する不安が急激に高まったことによるのです。たとえば、外国からの信用供与は失われ、ドイツ国債が大量に売られました。

1922622日、ヴァルター・ラテナウ外相が右翼によって暗殺されたことで、経済を安定させるという希望が失われました。夏の初め、為替レートが急落します。貯蓄にはもちろん、支払いにもマルクは使えなくなります。・・・国営の印刷所に加えて、130社が銀行券を印刷した。労働者たちは給料日にリュックサックを負って給料を運び、即座に使った。

医者たちへの支払いは、ソーセージや卵、ベーコンで求められました。石炭価格の高騰で、火葬もされなくなった。食べ物や暖房の燃料を得るために、毎日、人びとは争ったのです。商品はもはや不足していませんが、信用のある支払える貨幣はなく、倉庫が一杯になっても人々は飢え死にしつつあったのです。

ダイヤモンド、骨董、ピアノ、絵画、などが真の価値を持ちました。外貨を持っていれば、あなたは王様だったでしょう。犯罪が増え、ジャガイモ畑が荒らされ、パン屋は襲撃され、商店の窓ガラスが壊されました。ダンス・ホールやストリップ・バーが街中に現れ、コカインの取引が急増しました。通貨価値の破壊的効果は、国民の性格、モラル、文化生活のすべてを侵す、とJ.A.シュンペーターは書きました。マルクが信用できないので、都市や企業が独自に通貨を発行しました。南ドイツのある企業が発行した5万マルクの紙幣には賢明な注意書きがあったそうです。「もし石炭の価格がもっと高騰すれば、この紙幣は燃料としても使えます。」

ドイツ人は安定した貨幣を熱望していました。何らかの貨幣改革が必要だったのです。政府は192311月半ばから、ドイツ産業と農業の土地を担保に、レンテンマルクを発行し始めます。この約束はもちろん虚構でした。マルクの価値が下がっても土地はもらえません。しかし、人びとは新しい貨幣を信用しました。

ハイパーインフレーションは、年金生活者や利子生活者の収入を失わせました。中産階級の大部分が資産を失いました。貯蓄銀行や保険会社も同じです。他方、利益を受けた者もいました。何よりも国家は債務を免れ、個人でも住宅や宅地・農地を購入していた者が、そのローンはレンテンマルクに換え、利益だけを得ました。債務に依拠して企業帝国を築いた個人もいます。一般に、実物に投資していた商人や投資家は利益を得ました。そして、ほとんどの農民が勝者です。都市から農村へと、富が再分配されました。

1914年から1924年まで、ドイツ政府は全く異なった政策を採り得たでしょう。もっと制度を強化し、国民の信頼を得て慎重な予算を組み、連合諸国と交渉するべきでした。フランスは賠償金についてドイツで起きることを考えるべきでした。連合諸国は賠償金の削減を認めて、ドイツが財政的な無秩序に陥るのを回避できたはずです。

ヒトラーが権力を握るきっかけは192311月の」ミュンヘンにおけるビアホールの集会でした。当時、ヒトラーはインタビューに答えて、ドイツにとって最大に問題は生活費の高騰である、と述べ、自分がそれを安くする、と約束しました。そのために、多くはユダヤ人が経営している商店を国家管理にする、と。


LAT August 16, 2009

The hawkish case for nuclear disarmament

By J. Peter Scoblic

WSJ AUGUST 17, 2009

Talking to the Enemy

By BRET STEPHENS

(コメント) 核兵器の廃絶を唱えることは、左派にも右派にも支持される方針です。もちろん、左派は「軍縮による平和」を望み、右派は「軍拡(力)による平和」を望むでしょう。

しかし、J. Peter Scoblicは、核武装してテロ攻撃を防げるか? 核によって威嚇すれば、他国が自分たちに有利な選択を受け入れるのか? と問います。戦後の例が示しているように、アメリカが核武装してもソ連は東欧を支配し続けました。朝鮮でも、ベトナムでも、戦争に勝利することはできなかった。イラクやアフガニスタンを安定化する役にも立っていない。

逆に、もしテロ組織が核兵器を手に入れたら、アメリカの核によっても抑止することなどできないのです。北朝鮮やイランの核武装を阻止できないのであれば、ますますテロ組織が核兵器を手に入れる可能性が高まります。核廃絶、核のない世界、それはアメリカが望む世界なのです。

BRET STEPHENSは、オバマの「敵とも対話する」という政策を考えます。なぜアルカイダとも対話しないのか? あるいは、イランや北朝鮮とも対話しないのか?

確かに、誰であれ交渉を拒むことは間違いです。しかし、それが「ゆすり」であるなら、応じるべきではありません。


FT August 16 2009

Global economic council should oversee all

By Timothy Adams and Arrigo Sadun

(コメント) 主要諸国の力でIMF改革を進める提案です。いや、それを超えて、21世紀のグローバル・ガバナンスを提唱します。そのカギは、a global economic council (Gleco)です。

G8もG20も含めて、Glecoは世界経済の正しい機能、国際金融システムの安定性を監視します。IMFの監視と違って、Glecoは政治的な支持を前提に、国際金融制度に方針を示します。IMFが金融危機を見逃した、という批判がある一方で、危機救済や今後の金融制度改革にとって国際協調がますます重要になる、と理解されました。より大きな改革を行うためには、主要国がIMFの中ではなく、それを超えて政治的に合意しなければなりません。それは世界銀行や金融安定委員会、WTO、も含みます。

Glecoは、財務大臣クラスの会合を年に2・3回開き、年1回は政治指導者も集まります。そして、問題に応じてブレトン・ウッズ体制をどのように改革するか、というだけでなく、常時、必要なルールや制度の更新を行います。


NYT August 16, 2009

Off the Shelf: The Little Economy That Couldn’t

By HARRY HURT III

FT August 16 2009

Iceland’s debt repayment limits will spread

By Michael Hudson

(コメント) アイスランドの金融破たんを扱った“Why Iceland? How One of the World’s Smallest Countries Became the Meltdown’s Biggest Casualty” (McGraw-Hill, $22.95).の紹介です。私のセミナー記録も読んでほしいですね。

Michael Hudsonの論説は興味深いです。アイスランドやラトビアは債務を返済するべきか? できるのか? Michael Hudsonは、支払えないような債務を強制してはならない、と考えます。ケインズがドイツ賠償金について述べたように?

・・・この比較は間違いではないでしょうか? なぜなら、敗戦後のドイツと違って、アイスランドには海洋資源や地熱エネルギーが豊富です。通貨価値が安定すれば、長期の返済は可能だろう、と思うのです。インターネット預金をなぜイギリスの金融監督局は認めたのか、なぜEEAは統一した預金保険を強制しなかったのか。他方、ラトビアは返済能力を超えているかもしれません。不動産融資などは銀行の不良債権処理を促すしかないでしょう。そして、国際投資銀行ビジネスは、資産管理会社を設立して回収する必要があるのでは?

もちろん、支払えないような債務の処理を不況期の増税によって行うのは、政治的に受け入れがたいことでしょう。他方で、債務不履行と切下げを行うことが、アルゼンチン式の選択肢でした。その結果は成功であった、と言われましたが、今や、再評価されつつあるでしょう。ドイツの賠償金は、簡単に、支払いを拒む理由として持ち出すケースではないでしょう。


NYT August 16, 2009

The Land of ‘No Service’

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) THOMAS L. FRIEDMANは、アフリカ、オカヴァンゴ・デルタの奥地まで、南アフリカ共和国の運営する野性基金の活動を見に行って、a “Land of No Service”にたどりつきます。インターネットも携帯電話もつながらない世界です。

自然を残すとしても、ビジネスのためには「結び付き・コネクト」が重要です。アフリカの新しい発展は、この世界からの孤絶と、世界との結び付きとを、組み合わせることです。

「ボツワナは、テキサスほどの面積ですが、国土の40%を自然保護のために残すことができる十分な、ダイヤモンドの埋蔵量があります。世界のダイヤモンド取引と都市とが結び付くことで、野性の自然に「No Service」を実現します。対照的に、ロバート・ムガベが何十年も独裁を続けるジンバブエは、事実上、その国が「No Service」となりました。そして、人間も野性の自然も、ともに絶滅が危惧されています。」

宿命としてではなく選択として、No Serviceをみなす国では、エコ・ツーリズムなど、新しい機会が得られ、自然と人間の両方が栄えます。


WP Sunday, August 16, 2009

Breathing More Easily

(コメント) 大恐慌の再来は防げたかもしれません。しかしアメリカ政府は、アイスランドやアルゼンチン、さらに、かつてのドイツとはまた違う形で、債務に苦しんでいます。すなわち、金融救済と財政刺激策のために赤字を出し、連銀は金融緩和してバランス・シートを劇的に膨張させ、悪化させたのです。外国(中国や日本)からの資本流入に依存するのは愚かです。

WP Monday, August 17, 2009

Will U.S. Recovery Go Global?

By Robert J. Samuelson

BBC 2009/08/18

Turnaround 'will not be simple'

(コメント) 危機を回避できたとしても、次の問題は世界経済の均衡回復です。短期的調整策はないでしょう。各国が、たとえ困難でも、国内政策の変更を受け入れることです。


The Times, August 17, 2009

The Demands of Democracy

LAT August 17, 2009

Democracy in action and the obnoxious

Gregory Rodriguez

(コメント) 民主主義とは、単なる投票箱ではない。それは、有能な政府と、変わらぬ法の支配を必要とする。民主主義とは生活の過程であり、日常的な文化によって測られるべきであり、定期的な投票結果や政府代表の見かけではない。2004年にハミド・カルザイが大統領になったとき、テロ、貧困、汚職、そして麻薬取引を撲滅する、と約束した。

アフガニスタンの選挙には手続きにおいて問題がある。契約は守られず、汚職が蔓延している。女性の権利は守られていない。治安状態も悪化している。カルザイの統治は、有能な政府も法の支配も損なってきました。

では、医療制度改革について醜悪な論争が過熱しているアメリカや、何十年も政権交代しなかった日本は、民主主義がうまく機能しているのでしょうか? トクヴィルの書いた『アメリカの民主主義』は、平等のイデオロギーが示すアメリカ政治社会の全体像を発見します。・・・誰も知的な権威をもっていない、誰でも専門家になれる、誰の意見も退けられない。

アメリカ人は革新や新しい意見を好む。他方で、考えることを放棄してしまう。アメリカ人は権威に従わない。そして、その民主主義は愚者に迷う。


BBC 2009/08/17

New tricks as Japan election looms

By Philippa Fogarty

FT August 17 2009

Japan’s recovery: not all it seems

WSJ AUGUST 20, 2009

The DPJ's Domestic Challenge

By NAOMI FINK AND TOBIAS HARRIS

(コメント) 小選挙区制で、日本が二大政党間の政権交代をどのように生かすか、将来に向けて注意深く見守りたい、と世界のメディアは考えているようです。自民党も、民主党も、日本の政治や経済を、間違いなく、変えるつもりです。変えることでしか政権を取れないでしょう。

小泉人気は政治のスタイルと印象を変えました。日本を変えるのは、この選挙です。

FTは、自民党が支持率を失う理由として、経済状況を指摘します。急激な輸出の落ち込みと財政刺激策による回復は、麻生首相が自慢するほど自民党の政権担当能力とは言えません。失業率は高く、国債の累積は桁外れ、中国の景気回復に助けられただけでなく、国民所得がいまだに1993年の水準でしかないのはなぜか? すべて自民党が責任を問われるわけです。

では、民主党の政策は頼りになるか? いろいろな約束をして、その実行を支える財政基盤は3.8%の成長にかかっている、というのでは、現実というより幻想だ、と批判します。このような政策しか示せない民主党政権では、早々に市場の信頼を失って、債券価格や金利に異常が生じ、来年の参院選挙で激しい揺り戻しが起きる、と警告しています。

Aug. 19 (Bloomberg)

Two Reasons to Be Skeptical About 3.7% Growth

William Pesek

(コメント) 麻生首相は、デフレの進む日本経済の中で一時的なバブルに狂喜しているのではないか、とWilliam Pesekは考えます。日本の家計は消費を抑制しており、ますますデフレとの悪循環をなすでしょう。解決策は見当たりません。

日本の優良企業が終身雇用をやめ、工場を海外移転している中で、ホームレスが増え、自殺者が増え、人口の高齢化が進み、自民党は消費税を上げることが政府の責任だ、と主張します。

William Pesekは、政府ではなく、企業家に期待します。もっと企業家が活躍できる条件と自由を与えるように、と。

The Times August 19, 2009

The six numbers you need to know Japan

Leo Lewis

(コメント) 日本人は数字が好きだから・・・ 100年以上の歴史を持つ会社が日本には21066社もある。それは日本の企業文化や、長生きに対する日本人の感覚を示す。・・・49歳の息子が、テレビのリモコンを隠した76歳の母親を殺害した。日本人は丁寧で、犯罪率も低い。しかし、その外観の下で、怒りが沸騰しつつある。・・・1200台の新車が、毎日、北京の道路に追加される。たとえ渋滞で運転手たちが座っているだけでも。この数字を日本人をおびえさせる。・・・

CSM August 19, 2009 edition

Japan must shake off US-style globalization

By Yukio Hatoyama

(コメント) 鳩山由紀夫の投稿記事です。英文の記事として載せたのは、外国メディアを意識した内容でしょうか? ・・・

アメリカ主導の「市場原理主義」が金融危機によって終わり、次の時代を展望しなければなりません。それは「友愛社会の原理」です。内外において、「友愛」がもっと重視されるでしょう。国内において、それは小泉構造改革への批判を意味します。民主党は、セーフティー・ネットを充実させ、伝統的な経済活動を守る、と鳩山氏は強調します。

「人間の命にかかわる分野、すなわち、農業、環境、医薬品」はグローバリゼーションに委ねない、と書いていますが、それで良いのでしょうか? 貿易自由化交渉や、気候変動の国際会議、環境技術・医薬品業界の国際競争が、日本を抜きにして進んでしまうわけですか? 鳩山氏の原理は、グローバルにも追求されるべきでしょう。

日米安保と東アジア共同体、が併記してあります。しかし、その関係は不明です。これでは、アメリカの後ろ盾を得て、東アジアで発言している印象をぬぐえません。また金融危機について、アメリカのユニラテラリズムを批判し、ドル体制を批判するのは、やはり勇み足の印象があります。多極化する世界の方が日本にとって住みよいのでしょうか?

アメリカの軍事力で平和を維持し、中国の軍事的な野心を牽制できる。中国の経済力が増大する過程で、一緒に成長したい。だから、米中を含む東アジア共同体が望ましい。それはアジアの総意であり、日本が目指す基本方針でもある、というわけです。鳩山氏は、その障害になるのがナショナリズムの復活だ、と考えます。明確なルールに依拠した経済協力と安全保障を実現して、ナショナリズムを克服する、と。

それは日本国憲法の平和主義を実現する道でもある。

FEER August 2009

Change the U.S. Can Believe In

by Abraham M. Denmark

(コメント) 民主党政権は、自民党を倒すために、自民党の関わった過去の政策を否定する党派が集まりました。彼らは過去の主張(日米関係の見直し)を簡単に否定できません。アジアと同じく、日本の国内政治も、冷戦時代の対立軸を継承します。アメリカはそれを懸念しています。

国際関係を見直し、より積極的に関与し行動する国として、日本はアメリカの新しい強力な同盟国となります。


NYT August 17, 2009 Afghanistan’s Tyranny of the Minority By SELIG S. HARRISON

NYT August 17, 2009 The Land of 10,000 Wars By GANESH SITARAMAN

FT August 17 2009 We must face reality in Afghanistan By Gilles Dorronsoro

The Guardian, Tuesday 18 August 2009 The game changes again in Afghanistan Robert Fox

LAT August 19, 2009 Afghanistan's elections By Vanda Felbab-Brown

WP Wednesday, August 19, 2009 Why Afghans Need a Vote By Anne Applebaum

(コメント) タリバンはビラをまきました。それは何かを主張するのではなく、「投票するな」というメッセージです。・・・投票した者は鼻と耳をそぎ落とすぞ。投票したことを示すインクの付いた指は切り落とすぞ。投票した者の村は襲撃するぞ。投票すれば、お前たちを爆破するぞ。・・・

この脅迫にも意味はあった、とAnne Applebaumは考えます。われわれは誰と戦っているのか、われわれは何のために戦っているのか、それを明確にしてくれた。アフガニスタンの住民は多様で、言語、宗教、政治システムなど、容易に区別できません。また、「民主主義」を助け、テロ組織の巣窟にしたくない、という願いもあいまいです。兵士たちには迷いが生じたでしょう。その迷いが、こうしたビラによって一掃されたのです。民主的な選挙によって、正当なアフガニスタン政府を樹立する、そのために国際介入は行われているのです。

The Times August 20, 2009 Kick out Karzai. We deserve a second chance Ashraf Ghani

(コメント) 元財務大臣の対立候補Ashraf Ghaniが書いています。自分には一貫した再建計画を実行する強い意志がある。まず、タリバンと和解する。次に、治安を自力で回復する。さらに、失業率53%、人口の71%が30歳以下の国に、もっと雇用を与える。簡潔で、力強い、明確な主張です。・・・汚職や麻薬、犯罪者と共謀するカルザイを政府から叩き出せ!

CSM August 20, 2009 Democracy in Afghanistan is wishful thinking By Thomas H. Johnson and M. Chris Mason

(コメント) ベトナムの教訓を思い出す方がよい。ベトナム戦争でも、アメリカ軍はゲリラに負けたのではなく、国民が正当と認める政府を樹立することに失敗したのだ。政府の正当性は、選挙ではなく、伝統的な部族や宗教の支配によって与えられる。アフガニスタンの部族長や国王を政治システムから排除したことは、致命的な誤りだった。


FT August 18 2009

Oil can be a curse on poor nations

By Moisés Naím

(コメント) 「石油の呪い」に関する考察です。石油や天然ガスなど、資源が豊富な国は、むしろ他の分野の開発が進まず、貧しくなる、というものです。もちろん、ノルウェーやアメリカは例外です。なぜ資源が豊富でも貧しくならないのか、その例から指摘できることは、民主主義、透明性、市民に対して責任を負う効果的な公共機関、があることです。

さらに、経済全体が発展するための条件として、マクロ経済の安定性、財政の健全性、石油価格上昇などの予想外の利益を海外に投資すること、逆に、価格の下落に対する衝撃吸収基金を準備すること、経済の多様化、為替レートが強くなりすぎないような介入、などが指摘できます。

ブラジルやガーナのように、これから資源輸出大国になるケースでは、こうした条件を重視するべきでしょう。しかし、発展途上諸国の多くにおいて、これらの条件が非現実的・ユートピアであるのは明らかです。すでにこうした条件を備えている国でさえ、資源輸出が始まればその防壁が破られます。権力が集中し、腐敗がはびこって、国民の声を無視し始めるからです。

「石油は悪魔のクソだ」という名言を吐いたのは、ヴェネズエラの石油大臣Juan Pablo Pérez AlfonzoはOPECの創立者の一人です。その後、経済学者や政治学者は、実際に資源輸出国が資源のない国よりも貧しく、成長にもかかわらず社会的な便益が不十分である、と実証しました。

その原因は、たとえば、為替レートです。通貨価値が大きくなって、資源以外は輸出できなくなり、輸入は増えて国内生産が減少します。指導者たちは経済の多様化を目指すこともなく、石油部門だけに投資を集中します。実際、他の分野に投資しても、(強い為替レートで)国際競争によって失敗するのです。

さらに、資源の国際価格は大きく乱高下します。ブーム・アンド・バストは、リスクを無視して投資を膨張させ、その後、投資は失敗して銀行を倒産させます。また、それは貧しい者が依拠する政府の財政支出にも破壊的な影響を及ぼします。資源に投資しても、十分な雇用は生まれず、経済的な不平等が拡大します。

その結果、政治も「石油の呪い」に冒されます。財政は徴税に頼らないため、国民に対する責任を感じず、支配者が独断で決定します。政府は腐敗し、反対派を買収し、民主主義に関心を締めさず、軍事費を増やして、資源のない国よりも頻繁に戦争を起こします。支配者は資源の国際価格が下落するのを恐れて、政府系投資信託や石油基金などを好みます。

それでも、資源がありながら「石油の呪い」から逃れ出たケースとして、チリとボツワナがあります。彼らの成功の謎を解くことができたら、世界の貧困は大幅に減るでしょう。

The Times August 20, 2009

Opec’s greed will herald the end of the oil age

Bill Emmott

(コメント) 他方、そのような困難な課題を達成する前に、消費国の技術革新によって、石油の時代が終わるかもしれません。その条件は、OPECが石油価格を長期的に高く維持することです。

今度はサウジアラビアの石油大臣、Sheikh Zaki Yamaniが言ったことです。「石器時代は石がなくなったから終わったのではない。石油時代も石油が枯渇するから終わるのではない。」・・・サウジアラビアが中心となってOPECの石油カルテルを維持し、ロシアも協力して高価格を要求します。価格が上昇するのは、重要ではなく、その供給が、すなわち油田開発に投資が行われないからです。

もっと高価格が続けば、日本が石油ショックに応じて経済を転換したように、世界が効率的なエンジンや石油に代わるエネルギーに向けて転換するでしょう。特に、中国の無数の科学者たちが次世代エネルギーを研究しています。コペンハーゲンの気候変動に関する国際会議も、予想を裏切って、中国やインドも参加した画期的な規制を合意するかもしれません。


FT August 18 2009

Flimsier footings

By Victor Mallet

(コメント) 日本では「地方分権」が注目を集めていますが、世界各地にある分離独立派とどのような意味で共通し、どの点で異なるのか、考える材料として読んでみました。つまり、私たちはどこまでチェコスロヴァキアなのか? あるいは、バスクか?

経済危機になれば、分離独立主義など吹き飛んでしまう面もあるのでしょう。小国の徴税能力や独自通貨による債券発行、為替レート安定化、金融政策、通商政策、などは、大国の一部であるより劣るからです。スペインやイギリスも、好景気で地方財政が不動産投資のバブルによって黒字を累積したころは分権の主張が強まった、と言います。

あるいは、中央政府が政治的に弱体化すれば、地方分権派の支持を得るために財政移転する、と指摘しています。中央政府と地方政府の協力関係をどのように描くのか、イギリスもスペインも、ヨーロッパ各地で議論が続いています。

YaleGlobal, 18 August 2009

Fortress Europe: Solving Immigration by Outsourced Bouncers

Shada Islam

(コメント) そして、移民・難民流入に対しては共通の防壁を設けているわけです。しかも、人権擁護の姿勢が欠けているリビア政府に、難民の収容を「アウトソーシング」するというイタリアの選択に、批判が集まります。同時に、高齢化に伴う介護サービス需要には、イタリアの老人たちが移民労働者を必要としているのです。

まるで・・・日本の話か、と思います。


WSJ AUGUST 18, 2009 What Kim Dae-jung Knew

WSJ AUGUST 19, 2009 The Legacies of Kim Dae-jung By CHUNG MIN LEE

Asia Times Online, Aug 20, 2009 Kim Dae-jung fought for an elusive dream By Donald Kirk

LAT August 20, 2009 The sunset of South Korea's 'sunshine policy' By Donald Kirk

(コメント) 「金大中が生まれたとき、朝鮮半島は日本に占領されていた。彼が青年期に達したとき、韓国は軍事独裁政権であった。今、韓国は世界で13番目の大国であり、民主主義を熱烈に支持している。・・・83歳で亡くなった金大中元大統領ほど、この大きな社会変化を誇りに思う人はないだろう。」

金大中は民主化を求めて、何度も投獄され、何度も亡命し、5度も暗殺されかけたのです。1980年には、反逆罪で死刑判決を受けました。

1997年に3度目の大統領選挙で当選しましたが、アジア通貨危機の真っ最中でした。WSJは、金大中がそのポピュリスト的な政治思想にもかかわらず、危機を収拾するために外国資本にも市場を開放したことを称賛しています。

「太陽政策」によって南北対話を実現し、ノーベル平和賞を受賞します。しかし、他のWSJの記事は、独裁者に協力する姿勢を採ることがいかに危険か、という「金大中の教訓」を強調します。

困難な時代を生きたからこそ、「アジアの価値」とは、単に文化ではなく、民主主義だ、と金大中は主張しました。「太陽政策」を壊したのは、金正日と北側の支配戦略だけでなく、ブッシュの強硬策(北風)であり、日本の保守政治ではなかったでしょうか?


FT August 19 2009

America cannot resolve global imbalances on its own

By Fred Bergsten and Arvind Subramanian

(コメント) アメリカは輸出主導型の成長に向かう、とサマーズが語りました。Fred Bergsten and Arvind Subramanianは、それがドル安、特にアジア諸通貨に対するドル安を意味する、と理解します。他方、景気刺激のためには、財務省証券が低金利で市場に吸収されることを望んでいます。すなわちドル価値の安定化です。結局、アメリカは景気が回復するにつれてドル安に向かう、ということでしょう。

そして、アメリカが中国のように行動するなら、中国はもはや中国のままでは成長できない、とサマーズは語りました。


FT August 19 2009

Democracy from above will not work this time

By David Pilling

(コメント) ジョン・ダワーによる考察から、イラク、そして、現在のアフガニスタンと、日本の占領における民主化の比較、を紹介しています。

なぜマッカーサーは、帰国するとき、日本の民主化を実現した人物として日本人にも称賛されたのか? その理由は、まず、日本が完全に敗北していたこと。日本人は、軍部の計画が失敗し、アメリカによる占領が行われることに正当性を認めていた。また、日本では戦闘が停止され、政治的統一を維持していた。国民の多くはエスニックの同質性を信じ、占領軍は天皇制を残した。また、地理的に、海が国土を囲んでいるため防衛しやすかった。すべて、アフガニスタンにはない条件だ。

J.ダワーが指摘した最も大きな違いは、当時のアメリカ政府が理想主義的なニューディーラーと十分な経済援助を日本に提供したのに対して、ブッシュ政権は国家の再建よりテロ討伐に向かった。そこにはマーシャル・プランがなかった。せめてオバマ政権は、この違いを改めてほしい、と。

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The Economist August 8th 2009

Unbalanced Germany

Germany’s political fragmentation: People’s parties without the people

Germany’s flawed corporate governance: Boards behaving badly

Rebalancing the world economy: Germany - The lives of others

(コメント) 金融危機の後,世界経済が均衡を回復するためには,大幅な黒字国が国内の貯蓄と投資・消費のバランスを回復しなければなりません.今回はドイツです.

The Economistは,英米の自由主義的な資本主義を,ドイツの「社会的市場モデル」よりも優れていると考えています.ですから,ドイツが過剰に貯蓄し,消費をしない,たがい貿易黒字を出し続ける,対外資産を増大させて,自分たちで消費せずに海外のバブルに利用される,といった事態を批判します.

規制が多すぎる,企業を起こしにくい,国内の再編よりも輸出の拡大に向かう,といった主張はドイツ自身が改善策を発見すれば良いと思います.しかし,コーポレート・ガバナンスを企業の腐敗や失敗の理由にしたり,ドイツの賃金が平等すぎる,という議論を紹介しているのは,私には到底納得できません.

共通通貨を採用すれば,不均衡は為替レートではなく,市場競争と要素の再配分,不況を緩和する財政政策に頼る必要があるのを政治家たちも理解しています.それが十分でない点は,ドイツと言うより,ヨーロッパの問題です.


The Economist August 8th 2009

Regulating executive compensation: Pay and politics

Taiwan and China: Reunification by trade?

Economics focus: In defence of the dismal science, by Robert Lucas

(コメント) いずれも面白い記事でした.アメリカ政府は銀行の報酬体系を監視できるでしょうか? 台湾政府は中国との自由貿易協定を結んで政治的独立を失わないのでしょうか? そして,Robert LucasによるThe Economist「マクロ経済学の暗黒時代」)への反論は,考えさせられます.先々週紹介したSkidelskyの批判(How to rebuild a shamed subject)とともに,読んでみてください.