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IPEの風 8/24/09

にわかに秋のような涼しい風が吹き、なんとなく焦っています。

摂津峡が近くて涼しいらしい、と知って、昨日、散策に出かけました。しかし、都市の埃をかぶった、さびれた裏街道に迷い込んだだけで、期待したような状態ではありませんでした。少しがっかりして、そのまま足を伸ばし、大山崎山荘美術館を訪れました。これは正解です。緑は深く、山荘の雰囲気も損なわれていません。英国の田舎のような、欧州貴族のような、あるいは、中国のような、不思議な折衷様式です。

いつ、また、なぜ、日本の企業・銀行が、日本政府と同じように低迷するようになったのか? 自民党と民主党を選択するだけでは、日本経済の活力を回復するという問題を解決できない、と思いました。

政党間の政策論争は深まっていない、と思う反面、政治家たちの議論を聞いて、彼らが政策の中身に精通し、対案を実行できる力を持っている、と期待するようになりました。政治家たちはその知識や経験を尊重され(コネや金でなく)、再び国民から尊敬を集める指導者としての役割を担うようになったのです(嫌われる支配者ではなく)。鳩山代表の「政権交代」という訴えが国民の心に共鳴し始めたようです。

私がニュースを見ながら感じた争点は、次の四つです。1.高齢化と少子化対策。2.派遣労働者、女性、外国人。3.環境ビジネスやハイテク国家。4.安全保障とナショナリズム。

もし予想されているように「風」が吹いて、民主党が圧勝するなら、日本の政治経済制度を作り変える大きな機会が訪れます。それは、若者や高齢者に、意欲を持って働ける、さまざまな機会を示すものでしょう。「派遣」や「パート」という差別された職業がなくなって、労働者が納得できるような就労と報酬の基準を企業と合意できる、交渉や契約のシステムを示すものでしょう。女性も外国人も、日本で働くことが大きな可能性であると称賛してくれる制度を築くことです。

成長と雇用、投資をどうするのか? 「郵政民営化」、「構造改革」、「不良債権処理」、などで解決できると主張していたのは何だったのか、まじめに再検討してほしいです。正しい部分を継承する方が、最初から積み直すよりも良いでしょう。そして、デフレや国債など、マクロ経済を管理する権限を特定の機関に集中し、責任も明確にする一方、個々の革新を促し、助けるために、説得し、自由化し、救済・補償するという、その社会としての在り方を掘り下げて示してほしいです。それこそが、リベラルな「友愛社会」の実体です。

自民党と民主党が互いの政策を取り合うようにして論争を続ける一方で、安全保障面、特に、ナショナリズムの点で、大きな違いを残しています。しかし、日米安保体制の意義を何万回繰り返しても、その答えにはなりません。政治家たちが靖国神社に並んで参拝し、中国脅威論や核武装を議論する姿をこの先も続けることこそ、日本国民をアジアで委縮させ、国際政治から見放される一つの理由になるでしょう。経済改革と違って、安全保障やアジア共同体の建設は50年、100年の歴史的な構想です。率直で、深みのある論争を積み重ねることです。

日本企業が外国で活動する際に、もっと日本人の雇用を増やせないのでしょうか? 現地のインフラ整備や住宅建設において、日本企業と現地企業の合弁資本を活用した開発が進み、たとえば、日本の派遣労働者がもっと良い条件で就労できる道を見つけられたら良いのに、と思います。

あるいは、日本の中小・零細企業が外国で販売し、生産もできるように、政府が支援していると思います。その限界が何であるか、新しい視点で改善できないでしょうか? そして、逆に、外国企業と日本企業との連携を進めているはずですし、外国人労働者も日本で働いて技術を習得できる、という制度があると思います。それが正しく機能せず、低賃金労働者の搾取に利用されている、という批判を真剣に受け止めて、新政権が関係者の意見を聞いて改善するべきです。

民主党政権ができたら、必ず長期政権を維持する姿勢を示してほしいです。10年どころか、20年間は、(これまでの)自民党に政権を戻すことがないように、有権者との関係、産業界や官僚、雇用、医療・年金の在り方を変えることです。その意義を国民に詳しく説明し、問題を積極的に解決する能力を示すことで、日本の政治から、制度そのものを変えてください。

20年後の日本では、市民たちが声を上げれば、都市の真ん中にでも濃い緑の茂る森が残せるでしょう。また、革新の意欲に富む若者たちが政界や実業界に入って活躍し、社会の調和や文化についても貢献する姿勢を共有しています。

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