IPEの果樹園2009

今週のReview

8/3-8/8

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

金融制度改革、 日本衆議院選挙1,2、 アジアの不況対策、 米中経済戦略会議、 北朝鮮の核、 SDRs体制の問題、 マクロ経済学の暗黒時代

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


FT July 23 2009

Why the Bank might not be the right regulator

By Andrew Large

(コメント) 政治家たちは成長に夢中で、中央銀行はインフレばかり気にして、金融監督庁は個々の金融機関を検査するだけで、金融システムの不安定化にはだれも十分な注意を払いませんでした。過大な債務やレバレッジを見逃さないように、責任ある機関が監視し、強制しなければなりません。しかし、そのような介入政策(たとえば自己資本比率の引き上げ)は不人気で、責任が重いでしょう。

Andrew Largeは、独立した制度を作ればよい、という保守党の提案に、一部は賛成しますが、反対しています。この制度が、金融政策委員会のように、イングランド銀行の中に位置づけられた強い関係(アンカー)を必要とするでしょう。大蔵省とイングランド銀行と金融監督庁とが分離独立した現行のシステムは、基本的に維持して、この課題に取り組む方がよいでしょう。

金融システムの安定性を考慮した金融監督が、十分に透明で、明確な説明責任を求められています。

NYT July 24, 2009

A Retreat From Global Banking

By FLOYD NORRIS

(コメント) 金融に先導されたグローバリゼーションの時代は終わるのかもしれません。

金融ビジネスは最も緊密に統合された世界市場で利益を追求しています。それゆえ、世界景気の回復は、世界金融や世界流動性を必要としています。ところが、一旦、危機が起きると、その救済や再生は各地の法律や政治姿勢によって異なり、基本的に、どこかの国に属さなければ支援を受けられません。

世界のどこで危機が起きても、それは急速に他の地域の危機に至ります。東欧諸国やアイスランドが示しているように、銀行システムは国家を超えており、その救済負担は政府にとっても大きすぎるのです。外国の銀行に依存する国は、その銀行の本国政府が外国支店に対しても、救済融資を続けること(そして損失処理と資本増強)には否定的であることを心配します。

銀行システムは、再び、各国民国家内のシステムに退避するのでしょうか? IIF(Institute of International Finance)のダラーラは、そんなことが起きれば、世界の効率や成長を大きく損なう、と警告します。

世界的な金融監督機関と「最後の貸手」が必要である、という合意が形成されつつあります。しかし、現実に行動するのは各国政府です。また、銀行の規制を嫌い、金融革新が妨げられるのを嫌います。この点では、ヨーロッパとアメリカの意見が対立します。各国の銀行家は、激しいロビー活動で会計基準の緩和を求めています。

実際、銀行ビジネスは大幅な政治介入と保証によって生き延びています。

WSJ JULY 24, 2009

The Fed Can Lead on Financial Supervision

By R. GLENN HUBBARD, HAL SCOTT, AND JOHN THORNTON

NYT July 26, 2009

An Early-Warning System, Run by the Fed

By ALAN BLINDER

(コメント) R. GLENN HUBBARDらは、下院やオバマ政権の金融改革案のいくつかを批判しています。それは、ますます多くの金融規制当局を作る、という理由です。

他方、ALAN BLINDERは、さまざまな役割を兼ねた組織を集めて、「ヒドラのような」制度を作ることに反対します。そもそも連銀には、監視の範囲や課題をもっと拡大するべきだ、という意見と、巨大な権力を持ちすぎている、という意見があります。

ALAN BLINDERは三つの問題に整理します。1.システム・リスクを監視するべきか? 2.その役割は連銀が担うべきか? 3.権限の集中を避けるために、連銀から他の権限を取り去るべきか? そして、すべてに Yes と答えます。

システム・リスクを監視する機関があれば、アメリカは金融危機をもっと抑制した形で経験したのではないか、と考えます。たとえば、AIGがあれほどCDSを買い続けることは、警告を受けたはずで、できなかったでしょう。

この役割を担うとしたら、そして「最後の貸手」として金融秩序の安定性をすでに監視している連銀でなければなりません。その代わりに、たとえば金融商品の消費者保護については、別の機関が設置されます。

NYT July 26, 2009

Man Without a Plan

By ANNA JACOBSON SCHWARTZ

FT July 26 2009

There is no easy way out for central banks

By Wolfgang Münchau

(コメント) ANNA JACOBSON SCHWARTZは、バーナンキの再任に反対します。金融危機をめぐる過ちの責任と見過ごしについて、再任される資格はないと考えるからです。

バーナンキと言えば、ゼロ金利と、何兆ドルもの中銀による民間(不良?)資産購入です。どちらの政策も、市場に対して十分な説明がなく、誰もが予測していないことでした。金融危機に際して、中銀は金融を急速に緩和しますが、危機が終われば元に戻さねばなりません。さもないと、インフレやバブルが生じます。ところが、バーナンキはそれを放置しています。

中央銀行は市場の管理者ですから、バーナンキの意思決定が不透明であるのは致命的な問題です。市場参加者は、こうした新しい手法についても、ベアスターンズ救済とリーマンブラザーズ倒産との違いも、まったく理解できません。バーナンキは連銀が市場を改善する計画を持っている、と市場を安心させることに失敗しました。

Wolfgang Münchauは、バーナンキなど、欧米の中央銀行家たちが指摘する「出口戦略」について批判します。出口戦略を発動する時期は、誰にもわかりません。ヨーロッパは財政がばらばらですから、不良債権処理ができません。他方、アメリカは財政赤字が持続可能ではない? 特に、ドルの暴落が心配です。

事前に「出口戦略」を明快に示すことは不可能です。中央銀行は流動性の極端な供給がハイパー・インフレーションに向かう危険性を知っています。しかし、銀行システムを再建しなければ、景気が回復しないことも知っています。

NYT July 26, 2009

The Great Preventer

By NOURIEL ROUBINI

(コメント) NOURIEL ROUBINIも、再任に批判的です。バーナンキは、グリーンスパンの間違った金融緩和の長期化を支持しました。規制緩和によるサブプライムーンの増大も放置しました。

特に、危機が始まってから、バーナンキが犯した三つの判断ミスを重視します。1.住宅価格の下落はすぐに終わる、と主張した。2.サブプライム問題は封じ込めることができる、と主張した。3.住宅市場の崩壊は経済不況に至らない、と考えた。ほかにも、資産価格のバブルを無視すること、金融緩和の原因を中国の過剰貯蓄に結びつけたこと、など。

バーナンキは危機を防ぐために非正統的な政策を採用しました。金融機関を救済し、コマーシャル・ペーパーなどを購入し、連銀の資産を今まで考えたこともないような内容と規模で拡大しました。さらに、財務省証券を1兆7000億ドルも購入しました。

こうして救済融資した機関が、結局、倒産したら連銀はどうなるのか? 過剰な流動性を管理できるのか? インフレの加速やドル暴落を回避できるのか? 政府・財務省からの独立性を失わないか? こうした困難な状況を管理する人物として、バーナンキがふさわしいか?

The Guardian, Monday 27 July 2009

How to solve the housing crisis

Dean Baker

(コメント) 住宅の差し押さえを防ぐ方法はないか? アメリカ政府はいろいろな政策を試みましたが、先のブッシュ政権が提出した案では、モーゲージの複雑な組み換えに対して応募者は少なく、適用例はわずか52件でした。むしろ、住宅の所有者をそのまま住み続けることを許して、市場で決めた賃貸料だけ支払わせればよい、という修正を一時的に(10年間)認めるのです。

住宅が債権者の手に渡って売却されると、住宅価格が暴落し、近隣地区が荒れて、地域の財政破綻も招いてしまいます。住み続けて維持するほうがよいのです。

Robert G. Wilmersは、過去30年間で、アメリカ金融情勢に関する基本的な考え方が転換した、と指摘します。

WP Monday, July 27, 2009

Where The Crisis Came From

By Robert G. Wilmers

(コメント) 「危機はどこから来たのか?」 ゴールドマンサックスなど、投資銀行が、商業銀行に代わって、資金を調達してさまざまな取引に供給するようになったからです。銀行が融資することではなく、その規制や預金保険でもなく、それらを顧みない「影の銀行システム」が資金を供給し続けました。

1980年から2000年までに、債務の証券化は50倍に増えました。銀行融資は3.7倍に増えただけです。

NYT July 27, 2009

Of Banks and Bonuses

SPIEGEL ONLINE 07/28/2009

THE RETURN OF GREED: Banks Reopen Global Casino

By Frank Hornig, Christoph Pauly and Wolfgang Reuter

(コメント) リーマンブラザーズが倒産するまで、企業は証券を発行することで多くの資金を得ていました。救済によって、投資銀行は早くも利益を得ています。

投資銀行は民間企業の債券発行を請け負い、その後、自分たちのレバレッジを高めて利益を増やしました。今や、納税者のお金にも手をつけ始めたのです。

WSJ JULY 28, 2009

Let’s Break up the Fed

By AMAR BHIDé

Asia Times Online, Jul 29, 2009

No exit for Ben

By Peter Schiff

(コメント) オバマ政権は、金融改革の方針としてシステム・リスクの監視を連銀に追加しようとしています。しかし連銀の権限はすでに大き過ぎるし、議長は銀行や会社を経営した経験もない。むしろ連銀の機能を分割して、金融政策の決定と金融監督とを分けるほうがよい、とAMAR BHIDé主張します。

バーナンキは、インフレを起こさずにゼロ金利を続けることを確認しましたが、それは難しい、と批判されています。インフレという魔女は簡単にビンには戻りません。「出口戦略」は決して明確ではないのです。

世界景気の回復も、それがバーナンキの仕事を容易にするとは限りません。すなわち、石油価格や金利の上昇が、アメリカのインフレなき景気回復とゼロ金利終息を難しくします。

NYT July 29, 2009

The Financial Truth Commission

NYT July 29, 2009

Hurrying Into the Next Panic?

By PAUL WILMOTT

(コメント) 南アフリカ、アルゼンチン、イラク、・・・真実究明委員会は、深刻な内戦や独裁政権の後に、政治犯罪の追及や国民の和解を目指して組織されました。アメリカの金融危機にも必要でしょうか? すなわち、Financial Crisis Inquiry Commissionです。

金融危機にかかわった金融機関だけでなく、政治家や役人、学者、などが呼ばれるでしょう。銀行業界に対して、政府に対して、委員会は対抗しなければなりません。

PAUL WILMOTTによれば、危機をもたらすのは人々の変化する投資行動です。株の購入は長期の業績を期待して行うものでしたが、今は違います。特別なオプションやコンピューターによって決めます。それは市場の動きを変えてしまいました。

The Japan Times: Wednesday, July 29, 2009

Balance sheets key to an economic recovery

By MICHAEL J. BOSKIN

FT July 29 2009

Smaller banks will not make us safer

By Josef Ackermann

Asia Times Online, Jul 31, 2009

No escape for Fed

By Hossein Askari and Noureddine Krichene

(コメント) Boskinは不良債権処理を考察します。ドイチェ・バンクのJosef Ackermannは、銀行の規模を小さくすることや、国際取引を減らすことは、金融危機の解決策にならない、と主張します。大銀行はビジネスにとって有益である。国による規制の違いをなくすべきだ、と。


FP JULY 24, 2009

Gray Menace

BY BRAD GLOSSERMAN, TOMOKO TSUNODA

July 24 (Bloomberg)

Bernanke Isn’t Only Central Banker Drawing Kudos

William Pesek

China Daily 2009-07-28

Japan paper adds to worries

By Wu Huaizhong

July 29 (Bloomberg)

Let Us Work Naked or Crank Up Air Conditioning

William Pesek

(コメント) 日本の危機は、金融よりも人口減少にある、という保守派の感覚が広まっているのかもしれません。「子育て支援」によって、自民党と公明党だけでなく、野党も一致してしまいました。社会経済全体が再編される機会になるなら、良いことかもしれません。

William Pesekは日銀について称賛し、Wu Huaizhongは日本の防衛政策について警戒しています。

またWilliam Pesekは、2005年、小泉首相が衆議院を解散し、「郵政民営化」選挙を行った頃を思い出し、「クール・ビズ」でノー・ネクタイの街頭演説や、GDPの減少、なぜ日本の成長は失われるのか、という論争を振り返ります。

労働生産性が低い(アメリカより30%も)。デフレに入って停滞する(低賃金と消費不足)。人口減少と財政赤字を考えれば、「失われた10年」ではなく、「失われた数十年」んいなる、とルービニは言いました。

ネクタイをはずして冷房を我慢する(そして、労働生産性を下げる)より、日本人は、もっとほかで温暖化防止に励むべきでしょう。William Pesekから見れば、あれほどビルの照明をふんだんに施す必要はないし、町中に自動販売機を並べる必要もないのです(売店の雇用も失っています)。いたるところに24時間のコンビニが照明や冷房を無駄遣いしているように見えます。

温暖化防止の商品や生活スタイルに転換し、社会制度や契約を変えて、労働者の生産性を高める工夫に投資すること、それは少ない労働時間で職場の冷房や照明のエネルギー消費を減らし、家族で消費に支出する時間を増やすでしょう。


WP Friday, July 24, 2009 Why Obamacare Is Sinking By Charles Krauthammer

NYT July 24, 2009 Costs and Compassion By PAUL KRUGMAN

BG July 24, 2009 Healthcare blinders By David Osborne

(コメント) 莫大なコストとその削減、分担の合意形成、価格メカニズムと効率、薬品開発や先端医療、などが関係してくるでしょう。もちろん、保険・医薬品・病院など、民間部門の利益を脅かします。コストを減らしながら、国民全体に医療保険を拡大できるでしょうか?

「オバマ・ケア」の前途は多難です。・・・あるいは、ブッシュのように、何もしない? アメリカにもすべての者にセーフティー・ネットはある。結局、誰でも救急車の世話になれるから。

NYT July 26, 2009

Health Care Reform and You

(コメント) いちばん良さそうでした。まとめる時間がありません。医療保険制度が変わることについての基本問題を整理しています。

FT July 26 2009

Obama is failing on health reform

By Clive Crook

SPIEGEL ONLINE 07/27/2009

AMERICA'S REFORM OF THE CENTURY: Will Health Care Be Obama's Legacy or Waterloo?

By Gabor Steingart in Washington

(コメント) しかも、不況と財政赤字が制約します。多くの論説が、オバマ提案の欠点を指摘します。問題は、オバマが目指す改革と議会の方針とが一致していないことです。

オバマは常に、政治的危機において、市民を味方にしようとします。200人のジャーナリストをホワイト・ハウスに招きました。古い政治を打倒するのです。しかし、演説は見かけだけのようだ、と疑う声が大勢です。

毎日、失業者が増えています。高齢化による医療コストの増大が深刻です。資本主義の本居地、アメリカでも、社会保障の考え方は私的利益を(それゆえアメリカ的であることを)克服しなければなりません。

オバマは期限を決めて、議会と改革派の社会運動に論争をゆだねようとしました。しかし、改革には、民主党だけでなく、超党派の支持を求めています。ドイツよりも多くの費用(GDP比)をかけて、医療サービスに国民の多くは不満です。

共和党は、オバマの社会保障制度を「社会主義」と批判します。(他方、ガイトナーの金融機関救済も、バーナンキのゼロ金利も、「社会主義」と批判します。) 医療保険制度の改革は、オバマにとってのワーテルロー(イギリス軍がナポレオンを破った)になる、と見ています。

WP Monday, July 27, 2009

Obama's Misleading Medicine

By Robert J. Samuelson

WP Tuesday, July 28, 2009

Obama's Plan Isn't the Answer

By Martin Feldstein

WP Wednesday, July 29, 2009

A Market for Health Reform

By Ezra Klein

(コメント) 「改革」と叫ぶのは、小泉首相だけではありません。Robert J. Samuelsonも、「改革」はもっともしばしば誤用される言葉である、と指摘します。

「オバマはいつも青空ばかり見ている。」 理想的な改革の条件を並べるだけで、そのコストや制約を見ようとしない。一人ひとりの満足を訴えることが赤字を増やし、アメリカ社会を損なうのです。「改革」は魔法ではない、と。

Martin Feldsteinの論説を読めば、オバマの医療保険制度には反対するでしょう。

「すでに医療保険を得ているアメリカ人の85%にとって、オバマの計画は悪いニュースだ。それは税負担を増やし、医療サービスを減らし、失業や早期退職で現在の医療保険を失った際の保護がない。」

その理由は、オバマの改革が、現在、医療保険を得ていない低所得者を制度に組み込むことを目的としているからだ。効率アップの特別なアイデアはない。

「改革」が政治的に行き詰る(なぜなら人びとは政治家たちを信用しない)と、「市場」が導入されます。Ezra Kleinは、既存の医療保険制度を補助して延命すると同時に、より効率的で魅力的な新しい制度を設けて、各人が二つの保険制度を交換することを認めればよい、と考えます。

その場合、個人の動機が何であれ、社会制度の選択が結果的に旧制度の崩壊を加速して、もっと危険な状態が生まれるかもしれません。為替や通貨の制度について、実際に、しばしば起きていることです。


WP Friday, July 24, 2009

A Humane Trade Reform

By Michael Gerson

(コメント) 世界不況によって保護主義が強まることは予想されていました。G20で主要国が反対を表明してからも、中国やアメリカは国内政策とのかかわりで輸入財に不利な政策を検討(導入)しました。

しかし、この論説は、第二次世界大戦後の成長が貿易自由化に大きく依存したことを重視し、さらに、保護主義は経済的・外交的に自己破壊的であり、時代遅れ(企業や生産の多国籍化)であり、不正義である(そのコストは貧しい諸国に集中する)、と主張します。

しかし、論説が指摘する後半の問題は議論の余地があるでしょう。すなわち、オバマ政権が二国間自由貿易協定を相次いで合意したこと。貿易自由化交渉で、インドや中国に工業製品の、欧米日諸国に農産物の、貿易自由化を要求すること、です。


NYT July 24, 2009

The Cold War’s Hot Kitchen

By WILLIAM SAFIRE

(コメント) 1959年、ソ連のフルシチョフ書記長とアメリカのニクソン副大統領による「キッチン・サミット」における議論の応酬を振り返っています。アメリカは、核兵器ではなく、ソ連にアメリカの消費生活を展示して、フルシチョフの敵愾心をあおったのです。冷戦からサミットへ、国際政治は変化したことを考えます。


FT July 26 2009

Too early to declare a V-shaped victory

July 27 (Bloomberg)

Call for Rapid Recovery Is Bubble All Its Own

William Pesek

(コメント) アジアの景気刺激策は成功しているのか? しだいに不安が表面化します。アメリカやヨーロッパが不況であれば、輸出は回復しません。中国がその代わりに輸入を増やしてくれるか、と言えば、実際、逆に輸入が減っています。アジア各国は財政刺激策で補いますが、いつまでも続けられません。もう一度、バブルを期待するような政策で、過剰となった生産力を破壊しつくすまで回復しないかもしれません。

中国の住宅価格と株価(今年になって85%の上昇)、韓国の輸出が注目されます。

金融危機と世界不況はいずれ終わり、アジアは再び経済構造の多様化と生活水準の向上に向けて投資しなければなりません。今の「回復」は、そのような長期の課題ではなく、短期的な不況の緩和策に過ぎません。

Asia Times Online, Jul 26, 2009

Iran, China and the New Silk Road

By Pepe Escobar

The Japan Times: Wednesday, July 29, 2009

Old problem festers on China's new frontier

By KONSTANTY GEBERT

(コメント) シルクロードの再建。何度か目にする言葉です。アジアからヨーロッパに向けて、内陸部の開発や地域間の格差と優位を活用する可能性は、多くの人々に希望をもたらします。そして、政治的な境界線を越える試みが成功する機会は、その条件が大きく変わった、と見えるときがあるのです。

それは、「北京=テヘラン枢軸」なのか? あるいは、ここでも反米・反政府運動に対抗する政治同盟かPepe Escobarは問います。これは明らかに、貿易や投資だけでなく、エネルギーやパイプライン、安全保障の問題です。ペルシャ湾とカスピ海とをつなぐ安全保障の回廊ができれば、また、中国とイランやロシアの経済発展が結び付けば、それは国際政治を書きかえるでしょう。

The Japan Times: Wednesday, July 29, 2009

All stimulus roads lead to China

By BARRY EICHENGREEN

(コメント) やはり、米中協力の時代なのでしょうか?  EICHENGREENの論説は、期待したほど秀逸と思いませんが、本筋を伝えています。

すなわち、世界不況から脱出するには、中国が景気刺激策を採って輸入を増やし、アメリカは景気を回復したら財政赤字を減らしてドルの価値を維持する、という国際協調を成功させることです。新しい点は、アメリカ自身が追加の財政赤字を行うには、議会に強い反対がある、ということです。それは、中国政府がアメリカの財政再建を求め、ドル暴落を牽制することと重なります。

EICHENGREENは、それを実現するには、アメリカが増税や貯蓄する、というより(なぜなら、それは世界不況を深刻にします)、中国が景気刺激とアメリカからの輸入を増やして、アメリカの景気刺激策を助けてやるしかない、と認めている点です。

しかし、中国にもバブルのリスクがあります。なぜ中国はアメリカを助けるのでしょうか? 何の見返りがあるのでしょうか? 1.世界的な覇権国としてアメリカに並ぶ。2.世界不況を深刻化して中国の成長率を下げるリスクを回避する。3.景気回復後に有益な生産力の近代化を進める。などです。直接には、ドル暴落を避けることが重要です。

アメリカは何をするべきでしょうか? アメリカ国民と中国政府とが納得するような、景気回復後の財政再建策を具体化することです。

これと同じような議論は、1980年代のレーガノミクスと双子の赤字、日米協調において、求められました。その経過と比較して、今後の展開が興味深いです。


The Observer, Sunday 26 July 2009

At last, Brown is getting it right. His tragedy is that no one can see it

Will Hutton

(コメント) ゴードン・ブラウンは金融市場の優秀さを前提に、国民にブームと金融危機、市場介入と財政赤字を招き寄せました。今やブラウン首相の支持率は低水準で推移していますが、Will Huttonは民主主義と選挙を信じ、政府の責任と行動を求めます。

次の政府は、誰であれ、不況を緩和し、金融危機の第二幕を回避し、経済を再生しなければなりません。保守党が政権を執れば、イギリスはEUから離脱するのでしょうか? 重要問題に民主主義が答えを出すためには、労働党を支持する有権者を増やして保守党を破る、新しい指導者が必要です。


The Guardian, Sunday 26 July 2009

Utopia isn't a dirty word

Theo Hobson

(コメント) 「幸福実現党」が「ユートピアを実現します」とホームページに書くのは、読む側に一抹の不安(あるいは底なしの不安)を感じさせます。しかし、確かに「ユートピア」は、政治を超えて、宗教的な領域に結びつきます。すなわち、神の王国を予言したユダヤ教・キリスト教の伝統です。もちろん、ほかにも多くの宗教がこれを示しました。

キリスト教はユートピアニズムの発達した形態であり、我々が邪悪になる潜在的可能性についてのリアルな感覚とそれを克服する歴史的な希望とが示されています。そして、ユートピアニズムは、現実世界において宗教に代わるものとなります。


The Japan Times: Sunday, July 26, 2009

40 years of dialogue with Poland's Socrates

By ANDRZEJ RAPACZYNSKI

(コメント) 永遠の目標を掲げた思想家の死が扱われています。ポーランドに生まれ、オックスフォード、イェール、シカゴで教えた哲学者です。「技術の」思想家ですが、"Main Currents of Marxism"という研究もあります。ソクラテスにたとえられます。


BBC 2009/07/27 China-US economic talks kick off

FT July 27 2009 US seeks closer China ties By Daniel Dombey and Sarah O’Connor in Washington

(コメント) 米中サミット、G2、世界の二極化、などと言われます。新冷戦や封じ込めではなく。北朝鮮やイランの問題でも話し合い、地球温暖化の防止についても話し合ったようです。しかし、最重要テーマは景気回復です。

アメリカの財務省証券を大量に保有している中国が、アメリカの財政刺激策を支持しなければ、ドル暴落や金利高騰、世界恐慌が再発しかねません。他方、アメリカにしてみれば、中国の輸出依存型成長は危機の一部です。人民元の増加や貿易不均衡の是正が具体化しなければ、景気回復は難しく、将来、米中関係の悪化も懸念されます。

米中で21世紀を築こう、と呼びかけるオバマは、対話だけでは解決できない、とも指摘します。

FTの論説を見れば、人民元の切り上げを要求しなくなったことに注目します。すなわち、米中対話の性格を決めるのは、中国が保有する財務省証券の意味です。今のアメリカ政府は、それを重視しなければ国内経済の再建が進まないことを知っているわけです。

アメリカとしては、チベットやウィグルの人権問題を意識し、中国自身が内需を刺激して消費を増やすように求めるので、精一杯です。

China Daily 2009-07-27 Talks beyond the crisis

China Daily 2009-07-27 China, US should find common ground in strategic dialogue By Yuan Peng

WSJ JULY 27, 2009 A New Strategic and Economic Dialogue with China By HILLARY CLINTON AND TIMOTHY GEITHNER

(コメント) オバマ、ヒラリー、ガイトナー、バーナンキ、サマーズ、といった最高権力者と政策決定者たちが一斉に並ぶということが、今までにあったでしょうか? 米中協議が、あたかも覇権の異常に関する直接交渉、ニュー・ブレトン・ウッズ(あるいは、占領軍の引き上げ交渉)のように見えるのは仕方ないと思います。・・・

二人の論説は、中国の劇的な変貌を称えます。1979年、30年前、中国経済はわずか1760億ドルしかなかったのです。アメリカは25000億ドルでした。電話もつながらず、米中間に直行便はなかったのです。今や、中国経済の規模は4兆ドルを超え、太平洋をまたいで毎日e-mailや携帯電話が利用され、来年までには、249の直行便が米中間で飛ぶ予定です。

アメリカ国民にとって、米中戦略対話の意味は何か? それは、アメリカや中国が単独で解決できるグローバルな問題はないし、他方、アメリカと中国が参加しなければ、いかなる解決策も見いだせないからです。世界経済、地球環境、破綻国家、・・・

二人で同じ船に乗って川を渡るときは、静かにしなければならない。この中国のことわざを使って、アメリカが中国に黙ってろ、と言うのか、中国がアメリカに黙ってろ、と言うのか? 強風と大波が襲っています。

WSJ JULY 27, 2009 The Currency of Trade Balances By MICHAEL PETTIS

(コメント) MICHAEL PETTISは、まさに今の中国をプラザ合意後の日本やドイツと比較します。

為替レートの増価は、ドイツの貿易黒字を減らしましたが、日本の黒字は増えたのです。その理由は、消費が減る中で、日本政府や銀行が製造業にふんだんに融資や保証を与えて、生産能力を高めさせたからです。中国は失業を恐れて、それと同じことをしている、と。数年後、アメリカの消費が回復する過程で、中国のアメリカ向け輸出は再び急増するかもしれません。

アメリカも中国も、それぞれが最善の調整過程を描いているでしょう。それが互いの調整を損なう時、さらに保護主義的な対応が重なれば、経済は急速に悪化します。だから、戦略対話が重要になるのです。

BBC 2009/07/27 US-China ties 'to shape century'

FT July 28 2009 Stress behind the US-China dialogue

(コメント) 米中関係に「戦略的」という言葉を使うのは、強すぎるだろう、とFTは考えます。クリントン政権も、中国との関係を過大評価しました。

アメリカが人民元を非難するより、中国がアメリカのドル暴落や保護主義を非難するときのほうが、対立は悪化するでしょう。中国政府が協調の呼び掛けに応えるか、その時に分かるでしょう。

NYT July 28, 2009 Obama Opens Policy Talks With China By MARK LANDLER

The Times July 28, 2009 The West can’t spend. China won’t spend Carl Mortished

(コメント) 世界中を旅行して、恥と傲慢さを嫌われ、外貨を落とすことを歓迎されたのは、かつてイギリス人であり、今まではアメリカ人でした。しかし、不況とドル安で、アメリカ人旅行者が減ったとき、それに代わって恥と外貨を広めているのは、中国人旅行者です。

主要貿易相手国や発展途上諸国も、アメリカやヨーロッパではなく、一斉に中国政府に注目しています。しかし、自由な交換性がない人民元で、他国は何を買うのか? 封鎖マルク勘定やソ連のルーブルを思い出します。

パソコンや口紅など、中国の消費が、投資ほど増えていません。マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンが主要都市の繁華街にできています。しかし、成長はわずか、あるいは、マイナスです。社会保障制度が不十分で、国民は貨幣を保蔵してしまいます。

世界は、個人の自由や法の支配を信用しない、専制支配の国家が指導する時代に向かいます。

FP JULY 28, 2009 An Insider's Guide to Washington's China War BY JOHN LEE

FP JULY 28, 2009 If China's So Powerful, Why Isn't It More Powerful? BY WEN LIAO

(コメント) 米中関係について、ワシントンには「機能主義者」と「戦略家」との間に対立があります。機能主義者は、エコノミストなどを中心に、経済関係を重視します。ヒラリーとガイトナーが述べたように、中国は「戦略的な」「パートナー」なのです。

他方、戦略家にとって、米中関係は基本的に戦略的な競争関係にあります。その対抗は不可避です。相互の理解によって摩擦を避けるべきですが、それは「戦術的な」問題であって、米中は基本的な利害や価値観で異なっています。北京がそれを変えることは望めないでしょう。

中国がアメリカの財務省証券を大量に保有しており、アメリカの金融危機と不況への対策が重要な局面であることから、機能主義者が優位を得るのは当然でした。しかし、この「同盟関係」はアメリカの基本的価値を脅かします。中国政府の景気刺激策は、政府系企業を強化するものであり、中国経済の成長は、その大部分が共産党のエリートに支配されています。上海とシンセンの株式市場でも、純粋な民間企業は約1500社の中で50社もない、とJOHN LEEは考えます。

中国の戦略家が主張していることの8割において、アメリカのパワーやアイデアが批判されています。中国はアメリカの支持する戦後の国際秩序に(このまま)参加することを拒むでしょう。それを受け入れてきたアジア諸国とも、基本的な摩擦を生じるはずです。アメリカは、中国の台頭を、アジア太平洋の同盟諸国(日本、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピン、シンガポール、そして、インド)と形成する地域協力の中に吸収したいと考えます。

G2協議が重視されるなら、こうした地域協力は形骸化し、アジア諸国は中国からの影響を重視するようになります。

WEN LIAOは、米中協議を、中国側から見た成功の条件に注意します。アメリカ政府は中国を「国際社会の責任あるステークホルダー」になってほしいと願いました。中国は、それを実行しつつあります。特に、アメリカの金融危機が始まったとき、政府系投資ファンドがアメリカの金融機関に資本注入したことは、中国側から見て、大きな支援であったはずです。その後も危機は悪化し続けて、中国の協力は無視されました。

地球温暖化では、中国がその国際社会への責任を注目されるようになっています。それは国内目標と対立し、国際秩序の設計にかかわらねばならない問題です。WEN LIAOは、同様に、中国の利害やその役割が十分に考慮されなければ、米中協議も成果につながらない、と考えます。

FT July 29 2009 Washington risks taking China too seriously By David Pilling

(コメント) アメリカの官庁政治で言えば、ガイトナーの財務省が進めてきた米中協議に、ヒラリーの国務省が参加したことで、その重要性が高まったわけです。

しかし、中国を重視し過ぎることも危険である、とDavid Pillingは考えます。米中G2は、さまざまな政策フォーラムの一つに過ぎず、強制力のない、情報交換です。米中枢軸で21世紀の国際秩序を描く、というのは間違いです。

確かに中国は莫大な財務省証券を保有していますが、それは中国の成長モデルが輸出に偏っている結果であり、国民の消費を抑圧しているからです。中国政府はドルの暴落を望みませんし、他方で、アメリカ製品を大量に輸入することも望みません。米中両国が新しい妥協点を見出すことに、世界経済の回復は依存しています。

中国は急速に成長していますが、今も比較的貧しい途上国です。軍事費も、国内の民族対立も、通貨問題も、中国がまだ国際的な指導力を発揮するには程遠い状態であることを示しています。

Asia Times Online, Jul 30, 2009 THE BEAR'S LAIR: The return of Thomas Mun By Martin Hutchinson

Asia Times Online, Jul 31, 2009 Wilhelmine China? By Sebastian Bruck

(コメント) 中国の台頭は、ヨーロッパにおけるドイツ帝国の台頭[1871-1918]と似ています。新しい国際秩序を担う力はなくても、既存の秩序を不安定化し、倒す力はあるわけです。

国際システムにおける中国の力を評価するために、Sebastian Bruckは一般的な分析を行います。三つのレベル、すなわち、国際システム、国内システム、個人、について、中国とドイツ帝国を比較します。たとえば、国際システムははるかに緊密に組織され、国際機関や国際協定、国際法が重視されるようになっています。そして、核兵器が主要国に独占されており、相互確証破壊の過程によって核抑止体制が強力な規制となっています。

中国とドイツ帝国は、国内官僚制と軍隊の強固な支配という点で共通していますが、それが直面する国際システムの性格が大きく異なっています。これを理解したうえで、米中の優れた指導者たちが国際関係を安定的に調整することが求められます。


FT July 27 2009

China warns banks over asset bubbles

By Jamil Anderlini in Beijing

BBC 2009/07/29

China stocks fall on bubble fears

(コメント) 中国の金融当局も有志の急激な増大に注意を求めています。昨年の40%増であり、融資基準が甘く、株式市場や不動産への投機に利用されている、と懸念します。同様に、韓国やベトナムでも、融資が増えています。

「中国の政策は、長期的に見て持続不可能なものから、1年程度で持続不可能なものに変わった。」という、Derek Scissorsの評価を引用します。金融引き締め政策が求められています。

投機への不安は、建設会社などを中心に、株価を下げました。


NRC Handelsblad, 27 July 2009

'Outsourcing' asylum seekers the Italian way

By Mark Schenkel

(コメント) イタリアやスペインでも、(経済)難民を外国において拘束・抑留することが、政府間で合意されています。たとえば、イタリア政府はリビアに送還します。しかし、それは移民規制をアフリカに「アウトソーシングする」として批判されています。


NYT July 28, 2009

European Union Puts Out Welcome Mat for Iceland

By STEPHEN CASTLE

The Guardian, Wednesday 29 July 2009

Yes, Iceland can talk fish to Europe

David Cronin

(コメント) 東欧の経験を見れば、EU加盟が金融危機回避の特効薬でないことが分かります。しかし、アイスランドはEU加盟によって経済再建の長期的条件を安定化させたいのです。また、EUにとっても、さまざまな違いを超えて拡大し続けることは支持されなくなっています。

漁獲量の管理についても、EUとの難しい交渉があります。


CSM July 28, 2009

Should Obama sign a peace treaty with North Korea?

By Zhiqun Zhu

(コメント) Zhiqun Zhuは、北朝鮮の核兵器を放棄させることはできない、と考えます。それゆえ、アメリカ政府は北朝鮮の核保有と核能力を認めて交渉し、それを管理する方がよい(改善できる)、と。・・・日本の世論には受け入れがたいでしょうが、ある意味では、合理的です。

クリントン政権は様々な支援を約束して、ソフトな外交戦略を採り、ブッシュ政権は「悪の枢軸」と名指しし、制裁を強化しました。そのどちらも成果はなかったのです。Zhiqun Zhuは、オバマ政権が交渉の機会を逃さぬように求めます。

北朝鮮は核を放棄しません。なぜなら、冷戦構造の続く朝鮮半島で、北にとって決定的な期入り札である核兵器を失うことは、体制の終わりを意味する(と確信している)からです。中国でも、それを強いることはできません。

むしろ改善の機会とは、(健康問題のある)金正日からKim Jong-unへの権力継承です。論説は、毛沢東とケ小平を比較して、フランスに暮らしたことがあったケ小平は、毛沢東没後、権力を掌握し、西側への市場を拡大する方針に転換しました。Kim Jong-unも、スイスの学校で教育を受けています。

オバマは、核の存在を容認し、北朝鮮を承認して(なぜなら、すでにロシアも中国も20年前に韓国を承認している)、外交関係を樹立するべきなのです。そのうえで、北朝鮮の核を一定の合意によって監視するべきです。


The Guardian, Tuesday 28 July 2009

We're outsourcing the future, to be built by Thatcher and Philip K Dick

John Harris

(コメント) 金融危機後、民営化論の熱狂は少し冷めたように見えますが、今でも「倹約」「節約」「財政緊縮」を合言葉に、公共部門が民営化されています。イギリスで最近注目されたのは、刑務所の民営化でした。

民間企業に管理させた方が、安価に、すぐれた刑務所を建設・管理するのでしょうか? ・・・刑務所、病院、学校、軍隊。マーガレット・サッチャーとフィリップ・K・ディックの間のどこかに位置する世界が待っています。


FT July 28 2009

Asia rises, one economic giant at a time

By Shankar Acharya

FT July 28 2009

Asian monetary policy

YaleGlobal, 28 July 2009

China to the Rescue: Growing Out of the Financial Crisis

Joergen Oerstroem Moeller

(コメント) 中国とインドは、アジアの成長について、10億人を超える人口をもって、1980年代から成長を続ける大国です。しかし、類似性ではなく、その相違にも重要な意味があります。

まず、中国とインドの発展段階(そして産業構造)が異なります。特に、絶対的貧困(1日、1.25ドル以下)がインドには多いのです(人口の40%)。中国は16%に減りました。世界貿易に与える影響も中国の方が大きいです。

二つの大国が制御不能になれば、世界経済は方向を見失います。アジアが成長することで、国際秩序も変わります。


FT July 29 2009

Chatter about a new global currency is overblown

By Robert Pozen

(コメント) この論説は的確な指摘です。中国人民銀行総裁が、アメリカドルに依拠した国際通貨制度を批判して、各国の中央銀行がドルではなく、SDRsを保有すればよい、と述べました。

良く理解されている点は、SDRsの発行量が少なすぎる(外貨準備の5%)こと、SDRsが貿易や投資に利用されていないこと。それゆえ、今は世界通貨に程遠いことです。

それでもSDRsを中央銀行が保有することのメリットは、ドルだけで保有する時の為替リスクを(SDRsは4つの主要通貨のバスケットですから)他の主要通貨に分散できることです。

そして、最後に、それでも問題がある、と指摘します。もしドルの外貨準備をIMFの発行するSDRsに交換すれば、逆に、IMFがドルの為替リスクを引き受けることになります。最後は、アメリカがドルの価値下落に対して何らかの責任を負うしかないのです。

中米対立ではなく、IMFによるアメリカの政策指導と監視、として要求する方がよいでしょう。

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The Economist July 18th 2009

What went wrong with economics?

The state of economics: The other-worldly philosophers

Financial Economics: Efficiency and beyond

China’s recovery: A fine balancing act

(コメント) マクロ経済学の「暗黒時代」について、どれほど革命的な議論があるのか、と期待しましたが、どうもその専門領域内で嵐が吹きまくった、という印象です。金融政策の過信が改められて、政府や財政政策が見直されている、というのはもちろんです。しかし、ケインズの考察に復帰する、とはならないで、まだ一貫した説明はつかないようです。

投資家と消費者の流動性選好によって、投資と貯蓄の不確実さを説明する、というのは、それでよいのでしょうか? アイスランドでもレポートの著者として重視したミシュキンが、アメリカの連銀理事として登場し、金融危機の初期に、それがいかに小規模にとどまり、金融政策(1%の引き下げ)で容易に緩和できるか、と主張した(それが多間違いでした)のは興味深いです。

「効率的市場仮説」は決して葬られておらず、まだ論争の過程にある、というのは驚きです。それに対抗するのが、制度だけでなく、行動科学や心理学だ、というのは納得いきません。

中国の余りにも効果的な財政刺激策が、その優秀さというより、経済のゆがみを示すものかもしれません。


The Economist July 18th 2009

A general election called in Japan: Time’s up for the LDP

Banyan: End of the line for the LDP

The war in Afghanistan: Hold your nerve

Latino and religion: Separated brothers

Barak Obama and Africa: How different is his policy?

Energy and climate change: Show us the money

(コメント) 自民党が、いかに日本の戦後政治を支配する構造の一部であったか、を強調し、その構造が失われたのに、度はずれた汚職や腐敗、小泉ヒューバー、などで延命してきたことは、ようやく終わるだろう。やれやれ、これで日本人も、普通の民主主義による政治選択を利用できるかな、・・・という記事です。

アフガニスタンで多くのイギリス人兵士が命を落としても、イギリスの国際政治力を維持するべきだ、と主張しています。日本でも主張できるでしょうか?

ラティーノ(南米からの移民)の増大が、アメリカの宗教活動やコミュニティー。政治経済勢力の分布を変えつつある、というのも非常に興味深いです。ここでも宗教は、より直接的な信仰行為、死者や聖者との対話、といった強い意識を植え付けます。アフリカの諸政府に、強い指導者より強い制度を、<ガバナンス>を求めるオバマ演説は素晴らしいのですが、アメリカ外交におけるアフリカの位置は低い、というのも確かでしょう。

エネルギーの節約や再生可能エネルギーへの転換が、イギリスの政権交代を決める要因の一つとなっています。そして、オバマ政権やイギリスにおける財政の再配分、環境保護政策の効果は?