IPEの果樹園2009

今週のReview

7/27-8/1

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

アジア外交・安保, ヨーロッパ民主主義将来1,, 金融と富, 気候変動を止めるには, アフガニスタンのアメリカ兵, アイスランド, 日本, 中国のバブル, マクロ経済学の危機, ウィグル1,

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


The Guardian, Thursday 16 July 2009

Ecotowns and turbines are a political slap in the face of the landscape

Simon Jenkins

The Guardian, Friday 17 July 2009

Can ecotowns be truly green?

Stephen Joseph

(コメント) 「気候変動は、冷戦時代の防衛問題と同じだ。羨望、階級、強欲、商業利益、そういったヒステリーが重なって現れる。」

さまざまな計画に、莫大な公的資金がつぎ込まれ、すべてが失敗しても、理性的な論争は無視されて、むき出しの政治論争に陥る。地域の声は無視され、民主主義などどこにもない。・・・これが防衛問題であり、温暖化問題です。

4つのエコタウンが指定されましたが、それは環境保護とは何の関係もなく、もっぱら政治の問題である、とSimon Jenkinsは批判します。例えば、開発業者が住宅を売りやすくなるような宣伝なのです。

かつて安全保障が国防関係者の切り札として用いられたように、今では、地球の救済が政策交渉の切り札なのです。せめて、自動車に依存することを減らした、公共輸送システムを重視した街づくりをするべきではないか?


WSJ JULY 17, 2009

Asia's Military Balance at a Tipping Point

By PAUL S. GIARRA and MICHAEL J. GREEN

(コメント) アジアの軍事的なバランスが急速に変化しているとき、日米安保条約見直しの議論を始めるのは重要なことです。中国軍の増強、北朝鮮と核兵器拡散問題を真剣に議論するでしょう。地域安全保障を目指すには、米軍基地の問題で各国がばらばらに論争するだけでなく、相互の信頼と保護が重要です。すなわち、自国が攻められたとき、他の同盟諸国が一緒に戦ってくれるのか、という問題です。

オバマはどこまで本気に、(中東だけでなく)この危険なアジア地域にも、関与するのでしょうか?

FT July 21 2009

Asia keeps the west’s betrayed faith

By Kishore Mahbubani and William Weld

(コメント) Kishore Mahbubani and William Weldは考えます。金融危機から不況が広がるにつれて、アジアは西側の経済運営に対する信頼を失ってきました。自由市場経済学が最も素晴らしいと信じられなくなったのです。しかも欧米諸国は自由貿易を疑い始めています。

アジア経済はアメリカの需要で輸出を伸ばし、成長できたのだ、と言われてきました。しかし今やアジア域内の貿易が成長の一部を支えており、明らかに、彼らは貿易の自由化を望んでいます。アジア太平洋圏でFTAが最も増えているのです。

皮肉なことに、欧米が進めたグローバリゼーションは逆転しつつあり、その成果を味わったアジアが、グローバリゼーションのアジア化を進めているのです。

YaleGlobal, 21 July 2009

New Configuration of Obama’s Asia – Part I

Harsh V. Pant

(コメント) ヒラリー・クリントン国務長官のインド訪問も注目されました。アメリカは、日本、中国、インドの併存するアジア経済統合を推進する覚悟でしょうか? それとも・・・

インドを国際秩序の安定化勢力として取り込むブッシュ政権以来の方針を継承するヒラリー・クリントンは、それにもかかわらず、多くの障害を乗り越えなければなりません。すなわち、米中接近に偏れば、インド洋において中国の進出を警戒しているインドを憤慨させるでしょう。オバマ政権が重視する、核拡散防止体制に正式に参加していないインドの姿勢にも、何らかの変更が求められます。また、インドとパキスタンの対立が進行であれば、安全保障上の理由でパキスタン政府を見捨てることはできないアメリカは、インドとの関係拡大を抑えるしかなくなります。

それでも、核不拡散と貿易自由化交渉を、長期的視点では最も重要な目標とみなすオバマ政権にとって、インドとの関係改善が重要であることは明らかです。そのことを伝えることこそ、さまざまな障害を乗り越えるクリントン国務長官の使命なのです。

(China Daily) 2009-07-23

Shared vision of peace, from EU to Asia

By Javier Solana

(コメント) こうしたアジアの外交課題について、ヨーロッパの経験は何を示すでしょうか? EU外交政策の委員長であるJavier Solanの説明は説得的です。

ASEANはEUの経験に学んで、恒久的な機関として地域統合へ向かいつつある、とSolanは歓迎します。EUは世界の平和と繁栄を確立するために地域的な統合が制度化されることを支持し、協力関係を構築したいと考えているのです。一層の統合化を示す目標を掲げて、ASEANは加盟諸国の合意で法的な基礎を得ました。

ヨーロッパもアジアも、グローバルな課題に直面しています。それは、播基文国連事務総長の表現で、「4つのF」(Food, fuel, flu and finance:食糧、燃料、インフルエンザ、金融)と示されました。しかも、ASEANの最大の貿易相手国は、アメリカではなく、EUになりました。双方の協力は一層重要になった、と考えます。

安全保障を扱う地域制度として、唯一、ARFが強化されてきたことも重要です。EUの経験に学ぶなら、安全保障とは早期の紛争解決が決定的です。グローバリゼーションがもたらす利益だけでなく、社会対立の激化に対して、EUもASEANも積極的に対応しなければなりません。

平和を築くのは、信頼醸成だけでなく、紛争解決のための介入や秩序回復のための一致した行動です。ヨーロッパ、アフリカ、アジアで、the European Security and Defence Policy (ESDP)20以上の介入を行ってきました。平和のための共通の使命に従うことで、地域の参加諸国は結び付きを強めます。


NYT July 17, 2009

The Joy of Sachs

By PAUL KRUGMAN

FT July 17 2009

A tale of two banking systems

(コメント) アメリカの労働者の6人に1人が失業もしくは低雇用である、とクルーグマンは厳しい経済状況を指摘します。ところがゴールドマン・サックスは空前の利益をあげ、ボーナスの支給を計画しています。これは何なのか?

ゴールドマン・サックスにとって良いことはアメリカにとって悪いことなのか? ウォール街の悪習は全く改まることなどなかった? 改革を伴わない金融機関の救済は、次の危機を準備しただけではないか?

金融部門の急速な拡大は、もしそれが資本を生産的な用途に向け、リスクを分散する革新的な方法であったなら、経済に富をもたらすことで正当化されたでしょう。しかし実際のところ、ゴールドマン・サックスも先頭を走った経済の「金融化(financialization)」とは、莫大な資本を売れない住宅や空っぽのショッピング・モールに費やしました。リスクを分散するよりも集中させ、騙されやすい消費者に危険な商品を売り付ける商売でした。

金融救済を大不況の回避によって正当化するものは、1930年代の救済が、金融機関の特権を濫用させない厳しい規制を伴っていたことを忘れてはなりません。

FTは利益を当然とみなします。金融危機によって膨張した資産と債務が圧縮された後、金融機関に債務超過の恐れがあれば政府が救済して、事実上、リスクも競争もなくなった中で、融資が大きな利益を上げるようになったのは当然です。しかし、たとえそれが金融機関の不良債権処理や資本増強を(公的資金ではなく)実行させる過程であったとしても、不況に苦しむ納税者から支持され続けるとは思えません。

パニックが終われば公的資金は引き揚げられ、弱小な金融機関が整理されるのでしょう。

FT July 17 2009

Why the bonus culture needs to be defended

By David Blake

(コメント) David Blakeによれば、すべてのボーナスを禁止するべきだ、という主張は間違いです。金融業は、他の産業と異なって、利益が変動しやすく、ボーナスとして支払うことで、悪化した時には大幅に給与の支払いを減らす必要があるのです。また、所得の絶対額が大きすぎるという批判には、参加した者がその成果を分かち合うのは長い伝統である、と考えます。

しかし、金融部門が経済にとって、どのような役割を果たすのか、は正当な疑問だ、と認めています。特に、他の部門を犠牲にして高所得を得ている、と疑われるなら、政府は介入するでしょう。


SPIEGEL ONLINE 07/17/2009

The Future of European Democracy

By Thomas Darnstädt

(コメント) ヨーロッパの民主主義はどこへ向かっているのか? ドイツの憲法裁判所がリスボン条約を認めた、ということで喜ぶよりも、EUの中で機能する民主主義の姿が具体的に描けないことをThomas Darnstädt心配します。

リスボン条約はEUの政治を「代表制民主主義」と定めていますが、ドイツの憲法裁判所はストラスブールのヨーロッパ議会はそれに適合しない、と判断しました。ドイツの法律や憲法は、まだそれを超えるEUの政治権力を認めないのです。

EUが目指す超国家的な民主的政治とは何か? 各国の代表が選出されるヨーロッパ議会は、ヨーロッパ市民の代表制民主主義ではありません。あるいは、超国家機関の権力が民主的であると、どうやって正当化するのか? WTO、国際刑事裁判所、BIS、国連安保理、・・・

ヨーロッパ諸国にとって、内政と外交は切り離せない、という理解がこれまで統合を支持させたのです。では、真のヨーロッパ議会が誕生するまで、民主主義はどのようにすれば可能でしょうか? 民主的政府は、国民国家の市民たちが及ばないところで、国際条約や国際規制、企業やNGOsが形成した権利や規範のネットワークに依拠しています。ある研究者はそれを「国際社会の覚醒(wake of the global community)」と呼びます。政府や権力の正統性は、もはや民主的制度や決定過程によってだけでなく、その結果によって得られるのです。

すなわち、「成果優先の民主主義」です。ヨーロッパ規模で旧式の民主政治を行うことは、絶望的に非効率でしょう。市民たちは何を求めているのか? ブラッセルの官僚たちは、直接、答えなければなりません。しかし、それは政治を地元利益優先の成果によって有権者の支持を得ます。この場合、民主主義は下からではなく、上から来ます。ブラッセルは各国政治とヨーロッパ政治を同時に実践するわけです。

ドイツの憲法裁判所は、従来の議会に新しい役割を求めました。EU加盟26カ国にとって内政と外交とが重なっているならば、その政策決定にはEU全体の利益や連帯が考慮されなければなりません。ドイツ議会はヨーロッパ議会の一部となり、ヨーロッパ政治に責任を負うのです。ドイツ議会ではなく、ヨーロッパ議会で多数派を形成するため、政策を決定します。

それはヨーロッパ連邦、ヨーロッパ合衆国なのでしょうか? それが実際、円滑に機能するなら、そうでしょう。しかし、そのためには各国に存在する異なった政治文化、「競争」と「連帯」、そして、イマニュエル・カントが願ったような、世界市民として万国法に従う意識が必要です。

The Guardian, Wednesday 22 July 2009

It's time for a united Europe

Dominique Moisi

(コメント) 現在の金融危機と世界不況は、新しいバランスに応じた国際秩序・国際機関の調整を実現するでしょうか?  Dominique Moisiは、国際秩序については確かなことはまだ言えないが、EUの秩序に占める役割は変わる、と主張します。

加盟国が増えたことで、EU内の秩序は解体したのも同然です。国際機関は、あまりにも多くのヨーロッパの意見を代表しており、あるいは、アメリカにばらばらなヨーロッパの意見を示して影響力を失っています。すでに1980年代初めに、フランスの外務大臣は、国連安保理のフランスとイギリスの席を放棄してヨーロッパに換えることで、ドイツは安保理への参加を要求せず、イタリアは取り残された不満を感じなくなる、と指摘していました。

理性的になるべきです。G8にイタリアが参加して、中国もインドもブラジルも参加していないのは、愚かなことです。EUの指導者たちは、官僚制に依存せずに、一つの声、一つの代表を出すことで、国際経済だけでなく、国際政治においても重要な役割を担うべきです。

SPIEGEL ONLINE 07/23/2009

VISIONS OF EUROPE IN 2030

A Postmodern Middle Ages

By Parag Khannathe Global Governance Program at the New America Foundation in Washington

(コメント) EUの統合を支えてきたのは政治的想像力でした。Parag Khanna興味深い論説は、それを刺激的に表現しています。・・・2030年のヨーロッパはどうなっているでしょうか?

グローバル・ガバナンスの形成に向かう歴史において、中世ヨーロッパのように、世界は不安と危険を増すでしょう。その中でもヨーロッパは、国民国家の次の地域統合、近代の次のガバナンスのモデルとして、他の地域が学ぶべき先駆者となるでしょう。金融危機を経て、アメリカ型の資本主義と国家管理型の開発主義を反省し、その中間的なヨーロッパ社会民主主義が求められています。

そしてParag Khannaは想像します。・・・中世都市のように、国家の管理を離れた<世界都市>が通商・金融の核となり、世界企業に拠点を提供します。・・・21世紀のハンザ同盟が生まれ、安全保障も富豪たちの寄付によって都市貴族と傭兵が担います。・・・ゲイツ、ブランソン、アンバニ、など、脱近代のメディチ家が栄えるでしょう。・・・

多極化する世界で、EUは神聖ローマ帝国を再建する試みです。・・・バルチック海からバルカン半島まで、アナトリアからコーカサスまで。・・・ウクライナ、トルコもEUに加盟し、ロシアも加盟するでしょう。中央アジアと近東にも貿易と投資の回廊が築かれます。・・・シリア、イラン、イラクにも伸びて、原油とハイテク商品が貿易されます。・・・北アフリカのイスラム諸国を含む地球海同盟が築かれます。・・・

ロシアは、トルコと同じ経路をたどるでしょう。すなわち、外交政策の自由を重視しているが、次第に、協力のメリットを理解し、ヨーロッパからの技術移転や援助を求めるようになる。エネルギーに関しても、より安定した価格で供給を続けることがヨーロッパの消費者の信頼を得られる、と気づくだろう。

中国は、その人口と工業生産力、そして華僑の影響力を加えて、世界の中枢に復帰する。アメリカは、中東の紛争にかかわるよりも、工業化する南米との関係を深めることがアジアに対抗する競争力を得る道だと理解する。大陸に閉じ込められたアフリカ諸国にとって、ヨーロッパ型の統合化こそが市場の形成と世界へのアクセス、秩序の安定化につながる。

ヨーロッパのモデルは、外交や安全保障でも(軍事力を行使して長期の占領を続けるアメリカより)優れている。ヨーロッパはその周辺地域に対して、ガバナンスの改革と投資によって安定化を促した。全欧懇話会を基礎にした警察力の改善と事後的な安定化介入の方が、新しい中世にふさわしい。アメリカよりも、中国に対する道徳的・イデオロギー的な影響力を及ぼせるだろう。ヨーロッパの試みは、マルクス主義に代わる政治社会モデルを中国が見出す助けとなる。

FT July 23 2009

Lack of ambition leaves Europe in the slow lane

By Philip Stephens

(コメント) イギリスから見れば、EUというのは旧来のヨーロッパ合衆国という政治的悪夢、EU官僚による怪物(ビヒモス)です。その懐疑論に加えて、金融危機に対しては国民国家の首都だけが積極的に行動し、しかもナショナリスティックな主張を行いました。

ヨーロッパは21世紀のスイスになる、とPhilip Stephensは考えます。すなわち、住むのに快適で、自己満足に浸り、海外では冒険を嫌う。「分裂し、行動が鈍く、組織されていない」ヨーロッパは、その理想に反して、世界の大国から沈み始めている、というわけです。

Charles Grant “Is Europe doomed to fail as a power?”)や Robert Cooperの主張を紹介しつつ、21世紀のEUを悲観します。しかし私は、これが日本について書かれた論説のように感じました。


FEER July 2009

Fear Grips Shaoguan's Uighurs

by Kathleen E. McLaughlin

The Japan Times: Sunday, July 19, 2009

Like it or not, China is not about to go away

By TOM PLATE

(コメント) 不信感、情報統制と情報操作、インターネットによる噂の流布、人種偏見、・・・ 好景気の沿岸部に不足し始めた安価な労働力を、内陸部から採用するケースが増えていたそうです。彼らは中国語が理解できず、文化的にも誤解され、差別されました。広東のおもちゃ工場で、二人のウィグル人労働者が殺された事件が、今回の騒乱のきっかけです。ウィグル人労働者が漢民族の女性をレイプした、という噂が流れています。

中国政府の少数民族に対する隔離や、労働力の移動を妨げてきた政策が、成長によって、ゆがめられた意識や摩擦を生じているわけです。

TOM PLATEも、中国のイスラム圏を重視します。ただし、西側がそれを受け入れるしかない、という意味で。9・11の後、アメリカが「テロとの戦い」に協力を求めたとき、中国はそれを受け入れました。それを予想していたかのように。

Mahathir Mohamadが露骨に述べたように、中国の歴史は皇帝によって支配されてきた。民主的な中国が意味するものとは、内戦である。アメリカや西側は、中国の民族主義に手を貸してはならない。中国の分裂を恐れるべきだ。それはユーゴスラビアの解体である。

しかし、アメリカの指導的な国際関係のジャーナル、Foreign PolicyForeign Affairs、は、中国に対する外交政策について、中国の台頭を否定したり、対抗する姿勢を捨てていません。TOM PLATEは憂慮します。それが何であれ、21世紀は中国の台頭が避けられず、それによって決定的な影響を受ける。否定することに意味はない、と。


July 17 (Bloomberg)

Keynes Arouses Fed as ECB Looks for Monetary Exit

Mark Gilbert

FT July 19 2009

Planning for exit

(コメント) 金融危機は、アメリカとヨーロッパとの金融政策をめぐるイデオロギー対立に影響します。すなわち、アメリカの連銀は恐慌を回避することに失敗した1930年代の経験を重視し、ECBはハイパーインフレーションを招いた財政赤字や金融緩和が行き過ぎると容易に戻れないことを重視します。

アメリカはケインズに、ヨーロッパはフリードマンに、傾いているわけですが、アメリカ財務省は金融緩和や財政赤字をあまりにも早く逆転させないように警告し、ECBは「脱出戦略」を議論します。

もしECBのデフレ政策がユーロ圏の不況を悪化させると思うなら、あなたはドルを買うべきです。もしアメリカがドル暴落やバブルの再生に向かうと思うなら、あなたはユーロを買うべきです。

バーナンキも、必要になれば「脱出」は容易に実行できる、と説明しました。

The Guardian, Monday 20 July 2009

Seance on Wall Street

Dean Baker

FT July 20 2009

America is for now still blowing bubbles

Richard Bernstein

(コメント) 安価な資本が急激な投資の膨張とバブルをもたらした後には、資産の膨張だけでなく、過剰な生産力も残ります。アメリカ政府は、ますます、この過剰生産設備と雇用をそのまま維持するために公的な支援を拡大する方針を明確にしています。

しかし、Richard Bernsteinは、それが賢明な政策ではなく、長期に及ぶデフレや停滞につながる、と批判します。1990年代に、バブル破裂後の日本でもそうであったように、政治家たちはそれ(過剰生産力の維持)を好む傾向があります。アメリカ企業や経済も、政府による支援を得るほど、日本と同じ硬直的で活力のない経済構造を長期化させる恐れがある、と。

BBC 2009/07/20

Bernanke's future - and the Fed's

By Steve Schifferes

WSJ JULY 21, 2009

Why Toxic Assets Are So Hard to Clean Up

By KENNETH E. SCOTT and JOHN B. TAYLOR

FT July 21 2009

Too big to fail? Wall Street, we have a problem

By John Kay

WSJ JULY 21, 2009

The Fed’s Exit Strategy

ByBEN BERNANKE

(コメント) バーナンキ自身の説明です。

激しい金融危機の影響を緩和するために、例外的な金融緩和を行った。出口戦略が可能であることを示します。


BG July 18, 2009

A future for public unions?

By Barry Bluestone

The Guardian, Monday 20 July 2009

Making society work for all of us

Billy Bragg

(コメント) 労働組合について。なぜ、左派の政党を支持するか?


NYT July 19, 2009

Financial Invention vs. Consumer Protection

By ROBERT J. SHILLER

The Japan Times: Wednesday, July 22, 2009

Are the finance sector's halcyon days over?

By HOWARD DAVIES

BG July 23, 2009

A word for sponsors of financial mess

By Garry Emmons

(コメント) ジェームズ・ワットが蒸気機関を発明したとき、爆発を恐れて効率を犠牲にしたように、金融革新もそれが十分に使いこなせるまでには試行錯誤が必要だ、とROBERT J. SHILLERは主張します。金融システムは爆発し、経済の多くの分野で破壊的な影響を及ぼしました。

金融商品の開発が一般消費者に害悪を及ぼさないように、簡素な商品の普及を促すべきでしょう。オバマ政権が作る消費者金融保護局(Consumer Financial Protection Agency)は、そのために作られたわけです。しかし、社会に必要な金融技術の革新が複雑であるからと言って、それを禁止するべきではありません。

金融部門や債務の規模はどこまで拡大もしくは縮小するべきか? 私は歴史的な傾向と、金融技術の革新、そして政治的なバランスで考えるべきだ、と思いました。HOWARD DAVIESの論説は、GDPに比べた金融資産の比率が増大したことを指摘しています。1980年から2006年に、イギリスの比率は約100%から440%に上昇した。中国では、事実上存在しなかった水準から330%以上に増えた、と。

金融部門の異常な拡大は、金融緩和とレバレッジによるもので、過去25年間の金融部門の利回りは歴史的傾向を大きく超えていました。危機を経験したことで、準備率やリスク商品の売買、レバレッジの規制が強化されるでしょう。

アメリカの金融部門が創り出した富とは何であったか? ・・・裕福な者たちは罰せられない。第3世界から見れば、裕福なアメリカ人は危機を免れてきたのです。ようこそグローバリゼーション、ようこそアメリカ以外の世界へ。


The Guardian, Sunday 19 July 2009

Taking control of nuclear

Mohamed ElBaradei

(コメント) 1970年の核拡散防止条約(NPT)を再発見して、世界から核兵器をなくすために、オバマ政権は何をするべきか? IAEAのエルバラダイ前委員長が提案しています。

既存のNPT体制には顕著な欠陥があります。1.核保有国が核廃棄を拒否し、制度を悪用した。2.NPTを脱退して核武装する国を止められない。3.IAEAの運営資金が不足した。4.核兵器や核技術の輸出を管理できなかった。核武装の条件を持つ諸国が増えた。5.核保有国が安保理常任理事国でもあったために、効果的な強制力がなかった。

エルバラダイはそれぞれに改善策を考えますが、特に、すべての核燃料供給を管理するため、低濃度ウラニウム(LEU)のIAEAによる貯蔵と安定供給を行うべきだ、と主張します。それは政治的介入から独立した、信頼できる国際組織にします。LEUバンクを設立することで、各国は核兵器への懸念なく核エネルギーを開発できるからです。


WP Sunday, July 19, 2009

Return to the Heavens, for the Sake of the Earth

By Kim Stanley Robinson

NYT July 19, 2009

Trade and Climate

(コメント) 気候変動を解決するのは、科学か、市場か? たとえば、宇宙空間に太陽エネルギーの取得と貯蔵・移転ができる装置を建設するとか? あるいは、地球人の環境破壊を他の惑星にまで拡大するとか? ・・・

NYTの論説は的確です。アメリカ議会は温暖化ガスの排出に課税する代わりに排出権を売買できる仕組みを作りました。当然、排出量の多い企業や産業界は購入しなければなりません。同時に、外国の生産者と競争上の不利益を生じないよう、排出規制のない国に対して税金を課すと決めたわけです。

このような一方的な課徴金は、保護主義である、とインドや中国など、発展途上諸国に批判されています。オバマ大統領もWTOも反対しています。

NYTは、地球温暖化を防ぐ国際会議に解決策を求めます。アメリカが排出量を減らしても、それによって石油が安くなり、他国で消費量が増えれば意味がありません。アメリカから排出量の多い企業が海外に移転したり、外国企業との競争に負けても、同じように温暖化は防げません。国際条約が必要なのです。

オゾン層の破壊を防ぐためにできたモントリオール議定書は、その先例であり、WTOも不利益な扱いでなければ、排出権にかかわる輸入品への課税を認めています。国際協定が成立するように、インドや中国など、発展途上諸国への技術や資本の移転が起きる(しかも、民間部門の利益になる)経済条件を創り出せるかどうか、グローバルな排出権取引が注目されているわけです。


NYT July 19, 2009

Teacher, Can We Leave Now? No.

By THOMAS L. FRIEDMAN

NYT July 22, 2009

The Class Too Dumb to Quit

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) なぜアメリカ兵たちはアフガニスタンにいるのか? イギリスやドイツなど、NATO軍もアフガニスタンにいるのか?

THOMAS L. FRIEDMANは、アフガニスタンやパキスタンに、少女たちのための学校を建設し続けている登山家・社会事業家Greg Mortensonを紹介します。・・・教育を受けられない人々がイスラム過激派の勧誘に応じてしまう。特に女性は社会生活から排除されている。もし少女たちが学校で学べば、母親になって、子供たちにも教育の機会を求めるだろう。子供の数を減らす、買い物の包み紙になっている新聞紙から、子供たちに教えてやれるだろう。文字や、政治、そして搾取されている女性について!

タリバンは支配地域で多くの学校を破壊し、燃やしました。特に女子学校です。イスラム圏に新しい情報やアイデアを伝え、男たちだけでなく、女性の社会参加や権利を拡大することは、「テロとの戦い」がその課題としてきたことの本質です。イスラム圏の新しい世代が育ち、武器ではなく、教育や産業によって、世界に挑戦してほしい、と。

FRIEDMANは少女たちに尋ねました。大きくなったら何になりたいか? ・・・「先生!」 「お医者さん!」 彼女たちは大きな声で答えます。

アメリカ軍も、大きな曲線を描いて、急速に学び、その戦略を変えたのです。土地の人々に支持されなければ勝利できない。アフガニスタンの人々の声を多く聞き、彼らのために尽くすことです。・・・戦略的な意味で、アフガニスタンにアメリカ兵がとどまり続けることが、どれほどの勝利をもたらすのか、Friedmanにはわかりません。しかし、学校の前でノートを持った少女たちの姿を見ると、アメリカはまだこの地を去るべきでない、と考えます。

もうひとつの記事は、Mike Mullenの話です。イラクとアフガニスタンで多くの失敗や間違いをけんけんさせられたアメリカ兵たちには、その経験を生かす機会がある、と。


FT July 19 2009

Iceland in key step to restructure banks

By Andrew Ward in Stockholm

FT July 20 2009

Iceland’s rehabilitation

NYT July 21, 2009

Iceland Puts $2 Billion Into Collapsed Banks

By DAVID JOLLY

SPIEGEL ONLINE 07/22/2009

LOST SAVINGS WARNING

Netherlands Threatens Iceland's EU Bid

By NRC Handelsblad Staff

(コメント) アイスランド金融危機の処理が、Johanna Sigurdardottir政権の下で進められています。EU加盟交渉が開始されました。イギリスとオランダの預金者に対する返済を認めると政府間で合意しました。そして、破綻した主要3行の処理について、国内銀行業務を再開する新銀行への資本増強策が決まりました。政府が15億ユーロ(21億ドル)の債券を発行し、IMF融資の利用を期待します。

FTは三つの問題点を示しています。1.イギリス・オランダの預金者に対する支払いを議会が認めていない。2.国際投資銀行ビジネスの600億ドルについて、外国の債権者と交渉が進んでいない。3.景気悪化は新銀行の不良債権を増やし、一層の処理を必要とする。

他方、交渉を助言しているイギリスの事務所は、債権者がアイスランドの新銀行の株式を補償として受け取ることを歓迎しました。交渉はビジネスの基本に従い、建設的に行われた、と。

アイスランド政府が保証していた2万ユーロの支払いを、イギリス政府とオランダ政府は自国の預金者に行いました。その返済を求めていますが、政府間合意では融資が決まったものの、アイスランド議会が反対しています。オランダの外相は、もし議会が拒むなら、アイスランドのEU加盟交渉を妨げると発言しています。


CSM July 20, 2009

Are summits of rich Western nations obsolete?

By Ira Straus

(コメント) G8(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、イギリス、アメリカ)を擁護する論説です。

各大陸から代表を選んでG14にする? しかし、その程度で、G8よりも民主的な世界政府に近付く、とは言えません。国連などの、多数の加盟諸国が集まる会議は、国際連盟が失敗し、イラク戦争でも国連が分裂したように、コアになる諸国の合意がなければうまく行きません。

G8は(ロシアを除く)G7蔵相・中央銀行総裁の会議を重要な一部としており、世界経済に政策として協力する上でもっとも重要な会議です。G8として、西側の価値観・政治体制を共有することは、国際秩序の統一を維持するために必要です。

FT July 20 2009

Why the world need a United Nations army

By Gideon Rachman

(コメント) 他の惑星から人類を攻撃する種族が現れたら、われわれは地域間の小さな違いを忘れて、ただちに地球連邦軍を組織するだろう、とレーガンはゴルバチョフに語ったそうです。しかし、残念ながら、火星人の襲撃はまだありません。

そのせいで、アメリカ、中国、イラン、日本など、互いを信じられず、ソマリアの海賊にも対処できません。ソマリアの対策も、国連軍を組織して地上を制圧し、新しい民主的な政権を樹立しなければなりません。しかし、国連に常備軍はないのです。

平和維持軍は、いくつかの失敗も経験しましたが、カンボジア、シエラレオネ、ネパール、など、多くの成果を上げています。現在も世界に展開する任務は17におよび、116000人の兵士が従事しています。これは、アメリカを除けば、いずれの国にも勝る安全保障への支援です。しかも、アメリカ軍が1ドルで行う同じ作戦を、国連軍は12セントで行います。

もっと成功例に注目し、緊急事態に即応できる常備軍を組織するべきだ、と主張します。


FT July 20 2009

Not made in Japan

By Robin Harding and Jonathan Soble in Tokyo

FT July 21 2009

New dawn in land of the rising sun

FT July 22 2009

Japan shrinks from the American embrace

By David Pilling

(コメント) FTは、日本の輸出激減、激しい不況、その原因である製造業への過度の依存、を考察しています。しかし、それほど説得的ではありません。日本の製造業、特に、家電産業が苦しんでいるのは、韓国や台湾、中国からの追い上げがあるからでしょう。日本企業が、もっと柔軟に比較優位のある製品を絞り込み、世界的なサプライ・チェーンを利用するスタイルを学ぶべきでした。工場の海外移転、労働コストの切り詰め、外国人労働者の利用、そして高齢化、などにより、国内需要が減少する中で、輸出に依存したことは間違いでした。

しかし、論説の冒頭に批判されるような、製造業への期待、すなわち、平等な所得分配、失業率の低い社会を目指すことは、金融やサービスの生産性向上と並行して、目指すことができるでしょう。家電産業の再編や海外移転は、それを否定しません。

自民党政権が終わることには、内外から大きな期待があります。政権が変わることで重要な改革に国民の決断を求めることができます。しかし、民主党は重要な政策が不明確です。特に3点をFTは注意します。子供や家族への給付を増やすときの財源を説明していない、官僚を批判するだけでは改革が進まない、外交政策において新方針を示す、特に、日米関係を見直すのであれば、もっと明確に説明しなければならない。

David Pillingの論説は、日米関係について警告します。戦後の日本を再建した二つの権力構造が失われつつあるのです。一つはアメリカとの同盟関係。もうひとつは自由民主党に集まる国内権力。自民党が権力を失う一方で、日米関係にも動揺が生じ始めています。

しかし、私は恐れるべきではないと思います。政権交代は、国際関係を積極的に構築するうえでも重要な機会を提供するわけです。クリントン国務長官が中国を重視する姿勢を採るとしても、日本政府はアメリカに依存し続ける姿勢を修正して行くでしょう。地域安全保障や貿易・通貨面の協力を制度化して、アメリカとの2国間に限らない外交を展開する時期なのです。


 (China Daily) 2009-07-21

Financial crisis handled well

By Yi Xianrong

WSJ JULY 21, 2009

Rich China, Poor Peasants

By WILLY LAM

(コメント) 中国が世界金融危機から最も早く回復したことについて、考察しています。危機の(唯一ではないが)最大の商社であった、と自信を示します。しかし、GDPに占める給与の割合が低下し、特に農村部の貧困を考えるなら、成長の基礎は過剰な投資であり、脆弱です。最大の富の分け前は政府系企業(それゆえ共産党幹部・権力層)が得ています。

WSJ JULY 22, 2009

China Takes the Brakes Off

By VICTOR SHIH

FP JULY 23, 2009

The China Bubble's Coming -- But Not the One You Think

BY VITALIY KATSENELSON

(コメント) 次は中国のバブルが破裂する番だ、と思う人が多くいるはずです。・・・私もそう思ったので、VITALIY KATSENELSONの主張をとても興味深く読みました。

なぜ中国経済の回復はこれほど早いのか? 中国政府には、アメリカのバーナンキにはない強い力があるからです。バーナンキは通貨を発行できますが、銀行がそれを融資するかどうかは決められません。しかし、中国では銀行に融資させ、企業にも投資させることができます。消費を命令することはできませんが、そもそも消費は抑圧されていたのです。

中国経済は、1990年代、ITバブルの時期のLucent Technology社と同じです。通信機器を販売して急速に成長しましたが、次第に資金のある企業から資金のない新興企業にも融資して販売するようになりました。その成長は人工的に膨張させた成果であり、株価上昇を維持するためでした。中国も同じです。

中国の場合、膨張させたのはアメリカの消費でした。生産設備に投資し、アメリカ市場向けに輸出して、中国経済は急速に成長しました。巨額の貿易黒字を得るようになっても、人民元の増価を嫌って、中国はドルを人民元に交換せず、アメリカに投資しました。それが2兆ドルにも達して、アメリカの金融緩和とバブル、消費過剰を助けてきたわけです。

しかし、住宅バブルが破裂し、金融危機が深刻になってから、失業者が増えてアメリカの消費は減っています。それに代わって中国政府は公共投資や融資を増やしましたが、こうした資金需要をアメリカ向けの投資を減らし、あるいは引き上げることで賄えません。それがドル暴落・人民元高につながり、アメリカの金利高騰・不況拡大を招くからです。

中国にはセーフティー・ネットがなく、農村からの出稼ぎ労働者たちが都市で大量に失業すると食べることもできず、暴動を起こします。中国国内の過剰投資とアメリカへの融資を続けながら、工業投資や融資を増やせるのは、世界景気が回復するまでの期間が短いことを前提しています。もしそうでなければ、中国の過剰投資バブルが破裂し、銀行には不良債権が、工場には過剰設備が、アメリカには高金利とドル暴落が、中国年には暴動が起きます。

The Guardian, Thursday 23 July 2009

China's economics lesson to the US

Mark Weisbrot

(コメント) この論説は、アメリカ政府に比べて、中国の景気回復を称賛しています。


LAT July 21, 2009

'Never again' in North Korea? Think again

Jonah Goldberg

Asia Times Online, Jul 22, 2009

Conflicts in China's North Korea policy

By Cynthia Lee

(コメント) アメリカ政府には、たとえそれがどれほど憎むべきものでも、強制収容所を必要とする独裁国家とも交渉するしかありません。

Cynthia Leeの整理は、多くの点を示して、適切なバランスを得ていると思いました。


Sahil Kapur Obama joins the healthcare battle The Guardian, Tuesday 21 July 2009

Pat Garofalo Tax the rich for healthcare The Guardian, Tuesday 21 July 2009

(コメント) 過去数10年間の成長や資産市場のバブルによって多くの富を得てきた階層が、アメリカの社会保障制度を創るために課税されるとしたら、これ以上に、金融システムの過誤を是正するという目的に道義的にかなう政治・社会的手段はないでしょう。

BBC 2009/07/22 Q&A: US healthcare reform

Jonathan Oberlander Stitching together healthcare reform The Guardian, Wednesday 22 July 2009

WP Wednesday, July 22, 2009 The F-22 Model for Medicare By Ruth Marcus

NYT July 22, 2009 Health Insurance No One Needs By MATT MILLER

NYT July 22, 2009 Challenge to Health Bill: Selling Reform By DAVID LEONHARDT

WP Wednesday, July 22, 2009 Why Health Care Will Pass By E.J. Dionne Jr.

NYT July 23, 2009 The Health Care Sausage By GAIL COLLINS

(コメント) あるいは、社会保障制度を導入するために、高額の戦闘爆撃機の購入を中止することは、これまでの軍事介入と軍事予算の膨張、同時に、国内政治・社会対立を深めてきた流れと断絶することを示すうえで、これ以上にない選択肢でしょう。

FT July 23 2009 Healthcare reform needs bolder action

(コメント) それがまるでアメリカの階級闘争か民族主義者の分離独立、内戦前夜のように、大統領の指導力と打開策への国民的な説得が期待されています。

中国が積極的な財政刺激策で8%成長を維持しなければならないように、アメリカは金融部門と製造業・サービス業などの低賃金労働者との再分配を制度化しなければなりません。


WP Tuesday, July 21, 2009

Immigration Pitfall

By Jorge G. Castaneda and Tamar Jacoby

FT July 23 2009

Great Britain’s valuable visitors

(コメント) 非合法移民を合法化して、市場の需要と供給に従わせることが、たとえ金融危機によって市場への信頼が低下しているときでさえ、移民をめぐる社会対立に最低限の公平性と合意を形成する基礎のようです。

イギリスでは不況によって、市場による労働力移動の自由化が後退しつつあります。


FT July 21 2009

Insight: The perils of de-globalisation

By Joe Quinlan

(コメント) 金融システムが債務の膨張からその縮小に転じた(De-leverage)ことで、莫大な救済資金と景気刺激策を擁しています。しかし、皮肉なことに、それらを国民に支持してもらうために、世界中で保護主義が唱えられています。保護主義は最大の成長産業だ、と言われます。

もしこの傾向が強まれば、いよいよグローバリゼーションの逆転(De-globalization)が起きるでしょう。グローバルなサプライ・チェーンが分割、解体して、有力企業が(政府の保護を得るために)地域内や国内に退避するのです。資本市場でさえ、この動きに巻き込まれるでしょう。


FT July 21 2009

Economics is in crisis: it is time for a profound revamp

By Paul De Grauwe

(コメント) ド・グローブは尊敬される経済学者です。通貨統合をめぐるマクロ経済学を解明してきた第一人者ですが、マクロ経済学の危機を整理しています。 “The science of macroeconomics is in deep trouble.”・・・

たとえば、財政赤字をどう見るか? 一方の理解では、それは金利を上昇させ、景気を刺激するよりも民間投資を減らす。財政赤字は、インフレを伴った不況しか残さない。他方の理解では、インフレは起きない。むしろデフレを回避するために財政赤字を増やすべきだ。今、あわてて財政を均衡化すれば、本格的な不況に落ち込んで、むしろ財政赤字を大きくする。

たとえば、金融政策をどう見るか? 一方の理解では、膨大な通貨供給を行うことでハイパーインフレーションがやってくる。中央銀行は「出口戦略」を示すべきだ。他方の理解では、資金はバランス・シートの改善に使用されるだけで融資されないし、それゆえ、支出を増やさない。景気が回復すれば、速やかに回収すればよい。

こうして、経済モデルが全く異なると、市場参加者の予想も、その各人が依拠するモデルによって全く異なってしまう。彼らは自信を持てないから、その日の状況によってモデルを変えるかもしれない。すると、重要な経済指標さえも大きく変動するようになる。事実を解釈し、将来を予測するために必要な、知的なアンカーが失われる。その結果、市場の浮動性が高まる。

乗数がゼロに近いと考えるリカーディアンと、乗数は1以上であるというケインジアンとは、財政政策と景気刺激、その後の歳入について、まったく異なった予想を立てる。アメリカやフランスはケインジアンに近く、財政刺激策を国際協調に求める。他方、ドイツはリカーディアンに近く、国際協調に反対する。

We need a new science of macroeconomics. 「効率的市場」や「合理的期待」という前提を捨てることだ。経済学者が合理的に扱いやすく、その操作に長けているという理由で、現実と異なるモデルに執着しているのは間違いだ。人々は「真実」を理解し、合理的に、まったく同じ反応を示す、というのは現実的でない。人間の認識には限界があるから、理解できないような複雑な現実に対して、人々は偏見や「ユーフォリア」のような集団的反応を示す。ケインズが「アニマル・スピリッツ」と呼んだものだ。

孤立した合理的な行動主体を理解するのではなく、群衆の狂気を理解すること。この狂気を推定することから始めるしかない。

 (China Daily) 2009-07-22

The strange and hypocritical world of economists

By OP Rana

(コメント) 経済学も経済予測も当てにならない。オバマ大統領でも、IMF主任エコノミストのO.ブランチャードでも、予測できない。そして、OP Ranaは、貧困や発展途上国の問題を、迷走する経済学への不信に追加します。


The Guardian, Wednesday 22 July 2009

With the passing of the last wartime Europeans, history's time has come

Timothy Garton Ash

(コメント) ヨーロッパの歴史を作った3人の思想家が最近亡くなりました。Bronislaw GeremekLeszek KolakowskiRalf Dahrendorf。なぜヨーロッパが、一つの共通の法の下で暮らしたいと願ったのか、この3人は思想と行動によって示し、個人の生き方としたのです。

ヨーロッパの狂気と自己破壊の過程で、家族や友人の多くが死んだけれど、彼らは幸運にも生き残り、ヨーロッパの価値を確立することを通じて人生を全うしました。・・・自由なヨーロッパ。

彼らはブラッセルの官僚機構を目指したのではありません。むしろ、EUの画一的な統制を嫌っていました。多様なヨーロッパの諸国民が、個人の尊厳と自由を最も重要なものとする、一つの法律や政治・経済システム、社会制度の中で生きる。

若者たちは、その理想を、彼らの経験から学ぶべきです。


FT July 23 2009

Only local business can end global poverty

By Glenn Hubbard

(コメント) 経済危機によって国連の開発計画は資金不足になっています。Glenn Hubbardは、これを好機とみなして、貧困解消の正しい処方箋を実行するべきだ、と考えます。すなわち、国際援助よりも、各地の民間ビジネス・セクターが貧困を解決する、と。

「ビッグ・プッシュ」から「セイブ・アフリカ」まで、援助の訴えは無駄でした。1948年のマーシャル援助を例に挙げて、援助を支持しますが、その理由を誤解しています。マーシャル援助は各地の民間ビジネスに融資したのであって、それが税収を増やして公共投資も行えた、とGlenn Hubbardは主張します。

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The Economist July 11th 2009

Beijing’s nightmare

The riots in Xinjiang: Is China fraying?

California v Texas: America’s future

Regulating banks: Appetite suppressant

Reforming finance: Bank capital – Target practice

Unemployment in Spain: Two-tier flexibility

China and the dollar: Yuan small step

Economics focus: Walk, don’t run

(コメント) 中国政府は少数民族の反抗を容易に弾圧できます.チベットと違って,ウィグルには国際的な指導者がおらず,西側の関心も集まりません.しかしThe Economistが結論として注意を向けるのは,少数民族を弾圧する手法が,中国の宗教団体や政治犯,民主化要求,農村の貧困層や都市の出稼ぎ労働者にも,同様に,不満を広めていることです.異なる意見や不満を政治的に表現する機会を与えない,情報を統制し,政府に都合の良い情報を流す,法律や警察は権力を守ることに忙しい.

中国の政治体制が深く損なわれるとしたら,支配を維持するために弾圧し続けて,地下に蓄積された不満が噴出するからです.

アメリカの政治を考える上で,カリフォルニアとテキサスの対比が興味深いです.金融部門,特に,銀行の自己資本規制について,スペインの二重労働市場について.

中国のドル体制批判と,SDRによる国際通貨体制,ロシアやブラジルとの連携,あるいは,人民元の国際取引や他国への「最後の貸手」,・・・結局,中国自身が貿易黒字を解消する人民元レートの増価を受け入れることが先だろう,という記事を読みました.

最後に,世界銀行の主任エコノミストが,発展途上諸国には中小の銀行が育つことこそ望ましい,と主張しています.日本や韓国の経験,中国の経験,アメリカの歴史を見ても,資本自由化や先進諸国の銀行が進出するのを歓迎してはいけないのです.自国の零細な起業家たちが必要とする融資を与えてくれる中小のローカル銀行を育成するべきでしょう.信用や担保,破産処理について,処理を確実に,迅速に行う制度を整備することです.