IPEの果樹園2009

今週のReview

7/13-7/18

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

N.チョムスキー、 WTO事務総長、 H.キッシンジャー、 A.カレツキーの示した原則、 麻生ブレアサルコジ;ダ・シルバ;ゴードン・ブラウン、 ウィグル自治区の騒乱、 金融危機を予測した人物

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


LAT July 2, 2009

The U.S. in Iraq: An economics lesson

By Linda J. Bilmes and Joseph Stiglitz

(コメント) イラクとアフガニスタンで、米兵の犠牲者は5000人を超えました。さらに8万人が負傷し、30万人が帰還後も医療を必要としています。

イラク社会の破壊や分裂も続いています。200万人が国を離れて非難し、帰国したのはわずかな数です。270万人(全人口の1割)が国内難民です。クルド、シーア、スンニーの間では亀裂が深く、石油の分配をめぐって対立が続きます。

二人の推定では、戦争による債務が1兆ドル、その後も2兆ドルの債務が追加されます。戦争による身体不自由者への支払いは何十年間も増加します。米軍内の自殺率は、その記録を取り始めて以来の最高水準に達しています。こうした財政負担は、昨年来の金融危機を生じた背景の一つです。

戦争は、十分な審査も受けずに「非常時」の財政支出を増やし、戦後にも莫大な支払い義務を生じます。軍との民間契約も多くの不正や汚職を生んでいます。イラクから撤退するアメリカ軍・政府が、まだ今後も、イラクやアフガニスタンで、多くの問題に直面するだろう、と指摘しています。


July 3 (Bloomberg)

‘Buy China’ Pesticide Withers Those Green Shoots

William Pesek

NYT July 3, 2009

Chinese Fireworks Display

By DAVID BROOKS

The Guardian, Saturday 4 July 2009

China's empty land reform

John Lee

(コメント) William Pesekは、中国の成長がアジアや世界を救うという議論に反対します。中国政府は国内の公共事業を行う点で優れた成果を示すでしょうが、アジアとの貿易を活発に行うとか、人民元の増価を許す、といった姿勢は持っていません。最終消費市場が欧米にあり、中国製品だけを優先して使用する保護主義に従う限り、中国経済の回復は、確かに日本の輸出を回復するとしても、世界経済を回復するものではない、と。

アメリカの独立を祝う花火も中国製です。「チャイメリカ」の将来を期待するより、不安視する論説が多いと思います。さまざまな不均衡と不一致のほうが、協調や共同体意識よりも先行しているからです。互いを必要としていることと、表立った不和を見せたくない点で、両国は一致します。

貿易、通貨、投資、不況、ナショナリズム、資源、安全保障、・・・中国をドイツ帝国の勃興や、1980年代の日本と比較しています。いずれにせよ、アメリカの財政赤字と対外債務が膨張することは、生じるかもしれない紛争を深刻にするでしょう。

87000件も集団抗議が起きた理由は、土地の強制収容です。中国国内の経済紛争、社会対立は、不況によってさらに深刻になるでしょう。貧困層が、共産党や法の支配を嫌うようになります。


The Guardian, Friday 3 July 2009

Can we still learn from Sweden?

Jonathan Foster

The Guardian, Wednesday 8 July 2009

Only a new duet of parliament and people can bring the change we need

imothy Garton Ash

(コメント) 社会民主主義や福祉国家、環境保護について、スウェーデンは独自に社会モデルを改造して成果を上げてきました。しかし、それは過去の話でしょうか?

イギリスは、議会制民主主義の改善を重ねて優れた成果を上げてきたはずです。今回の政治危機も、新しい時代にふさわしい改革につなぐセンスを発揮すると期待します。議会政治の正当性を失わせるほど、国民は怒っています。パッチワークの改善策ではなく、革命に近いような制度改革を示すことでしか、国民の信頼は回復しないでしょう。

大衆の不満や抗議と、政治制度改革の成果とを結ぶものとは何か?


NYT July 3, 2009

After the Crackdown

NYT July 4, 2009

I Must Go Home to Iran Again

By MARJANE SATRAPI

WP Saturday, July 4, 2009

Who Will Stand With Iranians?

By Afshin Molavi

(コメント) イランの民主化革命は終わったのか? 抗議の人びとは弾圧によって四散したのか? 勇気と自信を取り戻した人々が、弾圧によって、それを再び失うことはないだろう、とNYTは考えます。

アメリカ独立記念日の祝賀を迎えて、アメリカ大統領やアメリカ国民はイランの民主主義や、他の多くの国で、人々の政治的発言や政府を交代させる能力が損なわれていることを知ります。アメリカはこのことに憤慨し、抗議し、何か行動するべきだ、と感じます。

日本も、建国記念日ではなく、明治維新の記念日や、サンフランシスコ講和条約(独立回復)の記念日をもっと祝うべきでしょう。

IHT July 7, 2009

Let's Hear the Democracies

By ABBAS MILANI and LARRY DIAMOND

FP JULY 8, 2009

Shark Attack

BY GENEIVE ABDO

(コメント) イランだけでなく、世界中の民主化は衰退し、後退する傾向を示しつつあるのかもしれません。大衆的な抗議だけでは、独裁体制が崩壊することはないのでしょうか?

あるいは、イランの政治体制はその社会的亀裂を容易に修復できないでしょう。イラン大衆の声に、世界の民主主義諸国が耳を傾け、明確なシグナルや行動によって彼らを励ますときでしょうか?

Geneive Abdoは、イラン国内の神政体制においても、ハメネイやアフマディネジャドではなく、ラフサンジャニが勝利した、と考えます。


NYT July 3, 2009

That ’30s Show

By PAUL KRUGMAN

NYT July 6, 2009

HELP Is on the Way

By PAUL KRUGMAN

(コメント) オバマは雇用の創出に失敗し、権力を大きく損なうのでしょうか? 850万人の雇用を求める人々に対して、10万人の新規雇用では、役に立ちません。日本型のデフレになって、失われた10年を経験する、という最悪のシナリオも指摘します。

州政府の赤字、銀行の倒産。1930年代の失敗を再現しています。それを抜け出すには、まずオバマが財政刺激策の追加を認めさせることです。雇用はどこか? 税収はどこか? その答えは、刺激策によるデフレ終息です。財政赤字の悪徳や、インフレの恐怖を叫ぶ者が多すぎる、と。

また、国民すべてにおよぶ社会保障制度を整備することは、実現可能です。


WSJ JULY 3, 2009

Asian Officials Push Back Against Savings Glut Theory

By ANDREW BATSON

(コメント) アメリカの過剰消費や財政赤字・金融破綻、などを責めずに、むしろ、アジア、特に中国、などの過剰貯蓄と、アメリカ向きの投資を非難する議論である、とアジア諸国は考えています。

なぜ中国の貯蓄率は高いのか? それは家計ではなく、企業が行った貯蓄です。また、中国の貿易黒字が膨張したのは2005年からであり、アメリカの住宅価格の上昇や頂点と一致しません。


The Guardian, Saturday 4 July 2009

Fear and the Fourth of July

Frankie Martin

WP Sunday, July 5, 2009

She Was Never About Those Huddled Masses

By Roberto Suro

(コメント) Noam Chomskyがアメリカの独立記念日について述べています。Frankie Martinが尋ねました。アメリカとは? 「強い恐怖に取り憑かれた国である」と、答えます。アメリカの大衆文学や音楽、映画、その他にあふれるのは、強い恐怖のメッセージです。まさに18世紀的な。

アメリカ人は恐れてきました。インディアンを。そして、滅ぼしました。黒人奴隷を。白人女性をレイプする、など。そして、中国人を。街にやってきて、洗濯屋を始める。しかし、実は国を乗っ取り、我々を滅ぼしに来たのだ、と。それは、ヒスパニックについても、イスラム教徒についても、主張されました。

白人のプロテスタント男性が、今、何を恐れるのか? たとえば、多元主義、です。

Frankie Martin自身は、チョムスキーの主張が、彼自身のユダヤ人としての体験によって形成された、と考えます。チョムスキーのアメリカは、市民たちや他の世界を恐れさせ、搾取し、意思に従わせる、専制的な権力の怪獣(ビヒモス)です。

独立記念日に、多くのアメリカ人は、アメリカを作った建国の父たち、その後の指導者たちが、白人プロテスタントのためだけでなく、もっと普遍的な価値を唱えていた、と思いたいでしょう。

独立記念日を祝って、自由の女神(最初の名前は"Liberty Enlightening the World")を、9・11以来初めて一般公開しました。「自由の女神」の台座に刻まれたEmma Lazarus の詩"The New Colossus"には、 " Give me your tired . . . poor . . . wretched refuse . . . the homeless, tempest-tost."とあって、感動的です。

しかし、移民を間違って描いた、とこの論説は批判しています。現代のラテンアメリカから来る移民と違って、初期の移民たちは、むしろ裕福だったかもしれません。その後のアメリカの移民政策に応じて、それは無視されたり、再発見されたりしました。


The Guardian, Sunday 5 July 2009

Europe's got it right on Keynes

Kenneth Rogoff

(コメント) アメリカ(そしてイギリス)の極端に積極的な金融緩和や財政刺激策の行使について、EUとの優劣を決めるには早すぎる、とKenneth Rogoffは主張します。大幅な流動性の供給や、公的債務の累積が、今後、5年間で何をもたらすのか、見てみる必要があるのです。

EUにとって真に重要な問題は、短期的なケインズ主義的刺激策をどれほど取ることができるか、ではなく、経済改革をどれほど進めて不況を緩和できるか、ということにあるのです。

EU内の対立や政治的紛糾を重ねつつ、EUが改革を進めるなら、長期的にアメリカよりもすぐれた結果を残すでしょう。ケインズ主義的な刺激策に頼って問題を先送りするより良い、と考えます。

The Observer, Sunday 5 July 2009

Hail the man who argues Britain should stop worrying about its debt

Will Hutton

(コメント) 経済学は「ノーマル」な状態を扱います。「アブノーマル」な状態が現れると、経済学はそれを理解できず、一握りの天才たちによる経済学の革新を必要とします。工業化を描いたアダム・スミス、大恐慌を見たJ.M.ケインズ、スタグフレーションを扱ったミルトン・フリードマン。今も、経済学者たち(Paul Krugman, Robert Shiller, Larry Summers・・・?)は経済学の新しい理解を目指しています。

Huttonがここに加えたのは、リチャード・クーRichard Kooの「陰と陽の経済学」です。そして欧米諸国は、日本が苦しんだ金融逼迫を「甘く見ている」と警告します。もし経過が同様であれば、「グリーン・シュート」などでは、決して景気回復できないでしょう。

その要点は、バランス・シートが損なわれた企業は、容易に投資せず、ひたすら債務を減らすために利潤の多くを使う、ということです。この貯蓄が民間部門で終わるまで、経済の需要水準を維持するために金融緩和と財政赤字が続くのです。

金融資産市場が肥大化した経済では、企業が債務を積み上げる、それは同時に、資産の膨張する時期と、資産市場の混乱と債務の圧縮期とが、繰り返し訪れます。GDP180%という公的債務を欧米諸国は軽蔑してきたけれど、それは民間需要を補うための長期の景気維持策であり、1930年代の大恐慌を回避した成功例であった、とクーは考えます。

クーの議論が今になって再び注目されるのは、イギリス政府が大幅な財政赤字(GDP12%)を出すことを恐れているからでしょう。しかし、イギリス人が日本ほど国内貯蓄に依存していられるか、それは問題に大きく影響します。

The Times July 6, 2009

In 2009 as in 1931, debts must be repaid

William Rees-Mogg

LAT July 8, 2009

Here comes the next fiscal crisis

By Alan J. Auerbach and William G. Gale

(コメント) William Rees-Moggは、次の政権は財政赤字の削減を目指すしかない、と考えます。中国からの融資・投資に頼りたくなかったら、財政均衡化を急げ、と政治家もエコノミストも主張します。それが1931年のイギリス首相、ラムゼイ・マクドナルドの教訓です。当時は金本位制があって、財政の均衡化が必要でした。しかし、金本位制を離脱しても、資本市場の要請を無視することはできませんでした。

このままでは、第二次世界大戦以来、経験したことのない財政赤字の水準に達するでしょう。


WP Sunday, July 5, 2009

Cap-and-Pay-Off

NYT July 5, 2009

Can I Clean Your Clock?

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 炭素の排出を規制するthe Waxman-Markey energy billは、地球温暖化の効果的な対策になるでしょうか? 産業補助金や関税が本当の目的ではないか?

中国に同じような規制を求めても無駄だろう。「150年間も安い石炭やエネルギーを使って発展しておきながら、今度は規制するのか? 勝手にしろ。中国が安価なエネルギーによる成長を達成する番だ。」

しかし、THOMAS L. FRIEDMANは、中国も環境関連技術を必要としている、とい考えます。だから、温暖化規制と技術移転には交渉の余地があるわけです。

WSJ JULY 6, 2009

Developing Countries Need Trade

By PASCAL LAMY

(コメント) “Aid for Trade” に賛成です。世界的な金融危機と不況においても、G8諸国は貧しい国が世界貿易を利用できるように支援するべきでしょう。逆に保護主義に向かえば、彼らが最も成長を損なうのです。

Aid for Trade”は、貧しい国が世界貿易とのアクセス(道路、港湾、通信、電力、倉庫)を確保し、また世界消費者の要求に応じる技術や熟練、安全基準、などを満たすことを助ける支援策です。南アフリカ、サブ・サハラ・アフリカ、東南アジア、などに展開するプロジェクトが融資されています。

『グローバリゼーションを生きる』が支持した貧困への政治的な支援策の例です。

The Japan Times: Wednesday, July 8, 2009

U.S.-proposed 'green tariffs' raise Asia's ire

By MICHAEL RICHARDSON

(コメント) 炭素排出量を規制する場合、外国で環境規制を受けていない企業から輸入する場合に、関税を課すべきか? そうでなければ自国の環境破壊企業が外国に流出して、結局、破壊を続けることになります。

しかし、それは新しい保護主義である、と中国やインドに批判されます。ここでも制度的な妥協が必要です。


NYT July 5, 2009

A Plantation to Be Proud Of

By SARAH VOWELL

(コメント) ロード・アイランドの奴隷を使ったプランテーションに関する紹介です。


FT July 5 2009

Obama reaches the limit of a friendly tone

By Clive Crook

(コメント) オバマのソフト・パワーには限界がある。イランの民主化が弾圧され始めたことで、保守派は批判を強めます。保守派の権威、キッシンジャーによる理想主義の解釈とオバマ外交評価は、興味深いです。

SPIEGEL ONLINE 07/06/2009

SPIEGEL INTERVIEW WITH HENRY KISSINGER

'Obama Is Like a Chess Player'

(コメント) キッシンジャーは、オバマの外交政策を称賛したようです。第一次世界大戦の終結だけでなく、すべての戦争を終わらせるために結ばれたヴェルサイユ条約を、現代(国際不均衡と世界金融危機・不況、そして戦争)と比較します。

「いかなる国際システムにも、それが機能するには二つの要素がなければならない。一つは、パワーの均衡である。・・・2番目は、正当性の感覚である。多数の諸国が、その最終的解決案を本質において公正である、とみなすことが必要だ。」

キッシンジャーは、ヴェルサイユ体制がその両方を欠いていた、と考えます。なぜなら、会議にはドイツとロシアという二つの大国が参加しませんでした。アメリカは、母国を捨てた人々が集まって、200年しか国内政治を経ていない国であり、国家間の「正常」な状態は平和である、と前提していました。それは正しくなかったのです。

アメリカのウィルソン外交が第二次世界大戦の原因となったのか? と質問されて、キッシンジャーは、ヒトラーが原因であるが、ヴェルサイユ条約にアメリカが及ぼした理想主義の性質は、その一因である、と考えます。民族自決の理想は、ヨーロッパの大国を解体させ、二重の困難をもたらしました。すなわち、エスニシティー・民族を分離することは困難であること、そして、ドイツの地位を戦前よりも(戦略的な意味で)強めたこと、です。

ドイツは領土的には小さくされましたが、周辺諸国の分裂や反目、経済混乱によって、むしろより強い影響力を及ぼすようになったのです。ドイツに戦争を挑む国は東側に無くなりました。ドイツをヴェルサイユ体制に留めるためには、ドイツを講和会議に参加させ、その非軍事化を受け入れさせて、徹底しなければなりませんでした。アメリカなど、主要な大国はそれを怠ったのです。

キッシンジャーは、リアルポリティークを重視しますが、リアリストとアイデアリストの対立を否定し、自分はオバマと同じ、理想主義的なリアリストである、と主張します。彼は、外交政策が、理想を実現するとしても、現実の条件を無視することを許されない、社会のもつ価値を重視するけれど、それが現実に限界を持つことを理解しなければならない、と強調します。There is no realism without an element of idealism. The idea of abstract power only exists for academics, not in real life.

ドイツの敗北に際して、ソ連邦の解体に際して、中国の台頭に対して、アメリカ外交は何をなすべきか、比較のために言及しています。


FT July 5 2009

Liquidity injections alone are not enough

By Wolfgang Münchau

SPIEGEL ONLINE 07/08/2009

RESISTANCE TO BANKING REFORM

Crash Ideology Makes a Comeback in London

By Carsten Volkery in London

The Times July 9, 2009

Five golden rules for regulating the banks

Anatole Kaletsky

(コメント) 異常な金融緩和はいつまで続くのか? 銀行部門が再生するにはどうすればよいのか? このまま不況が長引いて、失業や倒産が広がり、銀行部門の不良債権は増え続けるのか? それは財政赤字がまだまだ増大し続けることを意味するのか?

Anatole Kaletskyの指摘は多いに同感です。アイスランドについて、私はセミナーで主張したかった、あるいは、示唆したことです。

原則1.銀行は経済に不可欠である。ポピュリスト的な反発は間違いだ。人々の預金を集め、融資を行う。資源を効率的に配分する。しかもそれはますます国際化している。

原則2.金融市場は不完全であり、破滅的な失敗を生じる。群集行動や景気変動にともなう心理的な変化が強められる。政府規制によってこれを抑える必要がある。好況時の利益は配当や給与にせず、不況や危機に備えて残しておくべきだ。

原則3.銀行は普通の企業ではないから、同じルールに従わない。資産を市場価格で再評価することは危機を強め、預金者のパニックを招く。銀行と金融監督局は、金融情報公開について大きな裁量の余地を持つべきだ。金融秩序の安定性が優先される。

原則4.すべての銀行は政府保証を得る。銀行は政府によって救済され、管理された秩序に従って処理される。世界化した経済では、どれほど小規模な銀行でも破局をもたらしうる。将来は、政府が銀行のすべての予期、、すべての融資を、無制限に保証するだろう。他方、それ以外の投資は100%の損失もありうる。

原則5.金融監督局は、金融機関の内部モデルではなく、独自のモデルを示して、危機のシナリオに従った資産評価(ストレス・テスト)を行う。給与体系も金融監督の項目とする。


FT July 5 2009

The world must learn to live and farm sustainably

By Taro Aso

(コメント) 麻生首相が、なぜ、G8に向けた個人名の記事をFTに載せたのか? その前例として、安倍元首相が日本の外交姿勢をFTを介して公表したことや、麻生首相が訪米する際にワシントン・ポストのインタビューを受けたことを思い出します。これも「外圧」を利用した伝統的な日本政治のスタイルの一部でしょう。

その内容については、農業(特に大規模な農地への)投資を国際的なルールに従うよう求めるものです。私はその趣旨に賛成です。食糧価格の高騰や安定した供給への不安が生じて、こうした農地の「囲い込み」が生じたわけです。それは食糧の国際市場をますます不安定化し、大国によって政治化するわけです。

しかし、具体的なルールの内容は、一般的に望ましいと思われる基準を羅列しています。投資契約の情報公開・透明性、地域住民の利益、開発戦略、環境基準、受入国の食糧事情を悪化させず、国際価格に従うこと。

これはルールというより、日本の政治家が好む倫理規定のようなものではないか? 食糧安全保障は日本の関心事ですから、もっと国内での議論を先に指導してから、国際的舞台でも主張してほしいです。

China Daily 2009-07-08

Breaking the climate change deadlock

By Tony Blair

(コメント) イギリスの元首相、トミー・ブレアもG8に向けて提案しています。主要な対立は、先進工業諸国と後発諸国です。インドや中国では、貧困を抜け出すために多くの火力発電所が建設されるでしょう。そこでは石炭や燃やされます。

先進諸国が大幅な温暖化ガスの排出削減を約束し、同時に、後発諸侯に対する技術移転や金融支援を約束することで、共通の温暖化防止協定が準備される、という見通しを語っています。

IHT July 7, 2009

Alliance for Change

By NICOLAS SARKOZY and LUIZ INÁCIO LULA DA SILVA

WSJ JULY 8, 2009

We Must Address Oil-Market Volatility

By GORDON BROWN and NICOLAS SARKOZY

(コメント) フランスのサルコジ大統領がかかわった二つの提案です。

国際機関やグローバル・ガバナンスを見直すべきだ、という提案は、ヨーロッパの占める比率を必然的に減らす内容を含むはずです。それでもサルコジ大統領がブラジルのダ・シルバ大統領と一緒に指示したのは、EUが重視されることを前提するからでしょう。逆に、アジアの民主主義国としてアメリカに特別な重要性を訴えてきた日本政府は、中国やインドに比べて、その重要性を低下させるわけです。

金融・経済危機でも、安全保障でも、環境保護でも、世界は切り離しがたく、その影響は相互に緊密に依存している、と宣言します。

イギリスのゴードン・ブラウン首相と一緒に提案したのは、石油価格の安定化です。石油価格の不安定性、あるいは、中長期的な水準の変動について、主要通貨の為替レートと同じように、介入や調整が議論されたことがありました。背景には、おそらく、景気過熱や新興諸国の需要とともに、政治や安全保障上の不安があり、金融的・投機的な膨張や圧縮がありました。

・・・逆に、彼らに何か新しい提案があるのでしょうか?

二人は語っています。サウジアラビア国王とも合意した、と。かつて、石油戦略で対立したOPECとIEAが協力し、基礎的条件を反映した長期的価格水準を研究する、というのです。そして、それにふさわしい投資計画を立てます。さらに、サウジアラビアが好んだのはこちらかもしれませんが、石油の先物市場を透明化し、IOSRを通じて国際規制します。原油価格が金融市場のデリバティブ取引に翻弄されることを防ぎたい、というわけです。

ファンダメンタルズを反映した、安定した長期的価格変動による調整過程を、生産者も消費者も望んでいる、と。We are convinced that producers and consumers alike would benefit from greater transparency, greater stability and greater consensus on the market fundamentals.


The Japan Times: Sunday, July 5, 2009

Putin's 'siloviki' move to resume command

By ANDERS ASLUND

The Guardian, Monday 6 July 2009

Russia and the US nesfed more than a deal on a doomed war

Jonathan Steele

(コメント) ロシア政府が、WTO加盟交渉を取りやめて、ベラルーシ、カザフスタンと関税同盟を形成し、参加国でWTO加盟を交渉する、と発表しました。ANDERS ASLUNDは、これがグルジア問題に関してプーチンが示したWTOや国際的な戦略の見直しであると指摘しつつも、シロビキ(秘密警察を中心としたプーチンの権力組織)の戦略を批判します。

アフガニスタン、核兵器の削減、など、オバマのロシア訪問が議論されています。

FT July 6 2009

Russian sharks are feeding on their own blood

By William Browder

BG July 7, 2009

Obama's new deal for Russia

BG July 8, 2009

Resetting Russian relations

By Marshall I. Goldman

WP Thursday, July 9, 2009

Obama Puts Medvedev Ahead of Putin

By Anne Applebaum

NYT July 9, 2009

Obama Big Missile Test

By PHILIP TAUBMAN

(コメント) Anne Applebaumによれば、オバマがモスクワでやった唯一注目すべきことは、モスクワ滞在中、オバマはメドヴェージェフとの会談を繰り返し、プーチンとは数時間話し合ったにすぎない、という点です。それは、ロシアの権力を握る者がプーチンであることを思えば、大胆なことです。

しかし、プーチンとの会談は重要な問題で生産的な進展をもたらさない以上、重要でない問題をメドヴェージェフと那覇しあうほうが良い、という計算なのかもしれません。


The Guardian, Monday 6 July 2009 Xinjiang: the jewel in China's crown

FP JULY 6, 2009 China's Latest Tibet BY JOHN LEE

Asia Times Online, Jul 7, 2009 Urumqi counts dead, awaits crackdown By Olivia Chung

NYT July 7, 2009 Toll Rises to 156 in Ethnic Clashes in Western China By EDWARD WONG

The Times July 7, 2009 Another Chinese tremor

The Guardian, Tuesday 7 July 2009 China's Uighur conundrum John Gittings

(コメント) 新疆ウィグル自治区の衝突によって150名を超える死傷者が出たことは、経済統合と漢民族の拡大について、中国内部の民族問題が深刻さを増す懸念を呼んでいます。

ナショナリズムというより、漢民族主義は、中国全体の平和を促すよりも、むしろそれを失わせる性質のものかもしれません。イスラム教徒が多いウィグルへの漢民族の大規模な移民は、少数民族の権利や文化を侵すものとなっています。それは開発やお金の問題だけではありません。

John Gittings も書いています。…As in Tibet, younger Uighurs hoped to benefit from Chinese economic reforms but became alienated as the major profits went to Han Chinese migrants. 開発は進んでも、さまざまな差別によって、漢民族が優先され、ウィグル人が追いやられている、と。

The Guardian, Tuesday 7 July 2009 Riots in China: Home truths

SPIEGEL ONLINE 07/07/2009 ETHNIC RIOTS IN CHINA: Chants of 'Death to Uighurs' Echo Around Urumqi By Andreas Lorenz in Urumqi

Asia Times Online, Jul 8, 2009 Ghost of Marx haunts China's riots By Jian Junbo

(コメント) Jian Junbo は書いています。Now, the economic and political marginalization of ethnic minorities is destroying the foundation of some ethnic groups' Chinese identity. At the same time, this marginalization is deeply misunderstood by many of the majority Han ethnic group.

さまざまな民族を含む中国人の政治的共同体、共産主義社会を担う労働者階級の共通の価値、という意識は失われ、市場競争と差別意識が拡大した、というのです。

Asia Times Online, Jul 8, 2009 Inside China's unquiet west By Sreeram Chaulia

WSJ JULY 8, 2009 China's Uighur Crackdown

WSJ JULY 8, 2009 The Real Uighur Story By REBIYA KADEER

NYT July 8, 2009 Now Xinjiang

(コメント) 中国政府は、アメリカに本拠を置く世界ウィグル会議が暴動を指導した、と非難しています。REBIYA KADEERはその議長ですが、WSJに意見を載せました。なぜ騒乱は起きたのか? それはウィグル人出稼ぎ労働者たちが工場で殺傷された事件について、中国政府が十分な捜査を行わないことに不満を表すため、仲間のウィグル人労働者たちを励まし、支援するために、ウルムチで集まったのです。平和的な集会は、警察の暴力的な介入で争乱となりました。

政府の促した漢民族主義が暴行を正当化している、と指摘します。

NYT July 8, 2009 Beijing Always Wins By RUSSELL LEIGH MOSES

The Times July 9, 2009 The Uighurs’ cry has echoed round the world Rubiya Kadeer

Asia Times Online, Jul 10, 2009 Xinjiang - China's energy gateway By Robert M Cutler

BBC 2009/07/09 China's ethnic tinderbox Dru Gladney

CSM July 09, 2009 Why China's ethnic riots help the Communist Party

SPIEGEL ONLINE 07/09/2009 UIGHUR EXILES IN MUNICH: 'The Reality is Far Worse than Television Pictures Suggest' By Sebastian Fischer in Munich

FT July 9 2009 Western awe and domestic anxiety: tale of two Chinas By Philip Stephens

FT July 9 2009 Uighur riots show need for rethink by Beijing By Minxin Pei

(コメント) 中国政府は、事件を調査し、公正な報告を行うこと。漢民族主義をあおってはいけない。少数民族に対して、政治的な和解と補償を行うこと。十分な自治権を認めること。

YaleGlobal, 9 July 2009 An Ethnic Struggle in China Goes Global Dru Gladney

IHT July 10, 2009 Behind the Violence in Xinjiang By NICHOLAS BEQUELIN


July 6 (Bloomberg)

Glut of $4.5 Trillion Will Haunt Obama’s Dollar

William Pesek

The Guardian, Monday 6 July 2009

The green shoots are dead

Dean Baker

(コメント) 45000億ドルの財政赤字を融資するのは、アジアである、とホワイト・ハウスが前提しているのは重大な間違いだ、とWilliam Pesekは指摘します。長期的に、ドルは他の通貨や資産に代わられるでしょう。

他方、Dean Bakerは、オバマ政権の財政刺激策、特に、雇用創出が失敗した、と考えます。失業率が10%、そして11%へと上昇し続ければ、オバマ政権は行き詰まる。財政刺激策を追加しなければなりません。


FT July 6 2009

Japanese elections

FT July 7 2009

Nomura’s ambitions

FT July 8 2009

Japan’s economy

(コメント) 日本の選挙は注目されているのでしょうか? 世界第二の経済規模を持つ国で、11か月を除いて、53年間も権力を握ってきた自民党が壊滅的な敗北を待っています。しかし、権力の継承者である民主党は、何を目標に政権を担当するのでしょうか? FTは、民主党が財政赤字の慎重な管理を続け、天下りの廃止などより、高齢化に見合った経済効率の改善を望んでいるようです。

野村証券や、日本の製造業に関しても、FTは悲観的です。


NYT July 7, 2009 Robert S. McNamara, Former Defense Secretary, Dies at 93 By TIM WEINER

LAT July 7, 2009 Learning from McNamara

The Guardian, Tuesday 7 July 2009 The failure of Robert McNamara Martin Woollacott

The Guardian, Tuesday 7 July 2009 A technocrat transformed by Vietnam Michael Boyle

WP Tuesday, July 7, 2009 Brightness Cloaked In Hubris By Jim Hoagland

WP Tuesday, July 7, 2009 Certainty That Hit a Wall By David Ignatius

NYT July 7, 2009 After the War Was Over By BOB HERBERT

BG July 7, 2009 McNamara’s war

WSJ JULY 7, 2009 From McNamara to Obama

WSJ JULY 9, 2009 McNamara and the Liberals' War

(コメント) ベトナム戦争を指導したマクナマラ国防長官を記憶している人は多いでしょう。彼はその前にフォード社の管理エンジニア、その後は世界銀行総裁にもなりました。


SPIEGEL ONLINE 07/08/2009

THE MAN NOBODY WANTED TO HEAR

Global Banking Economist Warned of Coming Crisis

By Beat Balzli and Michaela Schiessl

(コメント) ホワイトWilliam Whiteは、サブプライム・ローンが金融危機になることを警告していました。しかし中央銀行家たちはグリーンスパンに従ったのです。

カナダ人のホワイトは多くの中央銀行で働きましたが、当時、BISの主任エコノミストでした。ホワイトたちは、アメリカの不動産バブルを警告し、融資の危険性を指摘し、格付け会社の欠陥を質しました。金融市場の抑制の欠如は、世界にチープ・マネーの洪水をまき散らし、インベストメント・バンカーたちは革新的な、そして、危険な商品を売りまくっていました。

ホワイトは、インフレがなければ何も問題ない、という意見を採りませんでした。中央銀行はバブルを回避し、是正策を採るべきだ、と考えたのです。そのためには、インフレがなくても金利を上げるべきでした。そして好況の時に準備金を増すべきでした。

BISによって中央銀行家たちは多くの情報を得ていました。しかし、何事も成功しているときには、その行動を変えたくない、という人間心理が働きました。しかも、グリーンスパンの神業に対する市場の信頼と権威に、他の中央銀行家たちも安易に頼ったのです。グリーンスパンは、市場の調整に従うだけでよい、という立場でした。

ホワイトは、特に、20038月、ジャクソン・ホールにおけるカンザスシティ連銀の金融政策シンポジウムを利用して、公に金融引き締めを求めました。ホワイトは、BISエコノミストのClaudio Borioと一緒に、グリーンスパンに反対する金融モデルを示しました。1980年代の金融市場における規制緩和により、物価の安定ではなく、金融市場の不均衡が重要になった、と主張したのです。彼らはそれを、the "inherently procyclical" nature of the financial system(金融システムが景気変動を増幅する内在的な性質)と呼びました。

だから、バブルは生じやすく、その破壊的な影響も強まっているのです。失業、金融ひっ迫、倒産によって、実体経済は大きく破壊されるでしょう。こうしたことを二人は明確に予想しました。それゆえ、中央銀行は金融的な膨張をあらかじめ抑えるべきでした。

それはグリーンスパンの主張を真っ向から否定する内容でしたが、参加者たちはグリーンスパンの顔色をうかがい、彼らの報告を無視したのです。ホワイトはその後も、金融膨張によるコストについて情報を流し続けました。また、格付け会社の評価方法が粗雑で、信用できないことにも注意してきました。しかし、BISからの警告は真剣に受け取られなかったのです。

2004年のBIS年報で、ホワイトは明白にアメリカ連銀の金融政策を批判しました。その後も、BISの情報は無視され、グリーンスパンは称賛されていました。"Is Price Stability Enough?"というのは、ホワイトによるワーキング・ペイパーです。物価水準が安定していることは低金利を続けてよい理由にならない。なぜなら、LTCM危機も、2001年の株価暴落も、物価水準が安定した中で起きた、と。

特に、ベン・バーナンキはBISの意見に反対した、と言います。他方、すでに金融危機が始まって、G20が準備される中で、ホワイトはドイツのメルケル首相が改善策を提案するチームに助言しました。そして、資産価格の変動と信用増加について、必ず金融政策が検討するように求めています。

この記事には、「石油の呪い」に類した、「チープ・マネーの呪い(The Curse of Cheap Money)」というグラフがあります。


FT July 8 2009

Google on a cloud

(コメント) グーグルの新OSについて。マイクロソフトの独占地代が失われるのは良いことです。しかし、これまでWindowsがリナックスより強かったのは、関連するソフトへの依存があったからです。Googleはクラウド・コンピューターによって、この壁を破るつもりです。


FEER July 2009

China's Push for a New Global Monetary Order

by Ulrich Volz

FT July 9 2009

Central bankers return to gold and dollars

By Terrence Keeley

(コメント) 中国が外貨準備という形の国民の貯蓄を失いたくないのは当然です。ドルという基準で金融政策を管理することが難しいと思うようになるのも当然です。国内の貧困もまだ十分解消していない国が、金融秩序の混乱したアメリカ市場に投資し続ける理由はないのです。

ユーロに移転し、SDRに移転し、アジア通貨や人民元の自由化を進めるでしょう。外貨準備が2兆ドルを超える、というのは異常です。何かが起きないうちに、行動を起こすのは当然です。

しかし、大きな危機になればドル以外にありません。その他の資産に分散することは、結局、ドルに集中する過程で大きな損失を被るでしょう。超国家的な通貨を工夫しても、アメリカの政府債券へ向かいます。あるいは金Goldです。

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The Economist June 27th 2009

The end of retirement

A special report on aging population: A slow-burning fuse

The crisis in Iran: Is the dream already over?

Migration and climate change: A new (under) class of travelers

Consumer spending in Asia: Shopaholics wanted

Buttonwood: Tied to the mast

(コメント) 正直にいえば、面白い論説が見つかりませんでした。高齢化や年金、社会保障制度の見直しは重要でしょう。長期的には、金融危機よりも経済にとって大きなコストをもたらす、と。

イランの民主化運動や、環境破壊にともなう難民の発生、また、アジアでは消費が、欧米では財政赤字の均衡化が、話題になっています。