今週のReview
6/15-/20
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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******* 感嘆キー・ワード **********************
ポーランド<連帯>1,2、 ガイトナーとドイツの財政赤字、 ラトビアの金融危機、 27カ国のユーロ、 北朝鮮の核、 広義の保護主義、 EU議会選挙、 イラン大統領選挙、 Skidelsky
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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
FT June 5 2009
(コメント) 1989年、自主管理労組<連帯>は復活し、6月に行われた選挙で圧倒的な支持を集めて、東欧民主化とベルリンの壁崩壊を導きました。
ベルリンの壁崩壊が注目を集めるのに比べて、ポーランドの民主化がそれほど注目されないのは、その後の保守化や民族主義がEUに悪い印象を残しているからかもしれません。また、ポーランド内部では、円卓会議における共産党との合意が不十分であった、という批判が起きているようです。共産党のネットワークは勢力を温存し、政治的にも経済的にも、ポーランドの支配的な地位にとどまったのではないでしょうか?
しかしFTは、1989年の評価は歴史家たちに委ねて、政治家たちが現在の課題に応えるべきだ、と注意します。世界金融危機の中で、経済改革の真価を問われるからです。
The Australian, 5 June 2009
$24.4bn Chinalco deal with Rio Tinto is dead
Clive Mathieson
FT June 7 2009
China will learn from failed Chinalco-Rio deal
By Shujie Yao
FT June 7 2009
China’s choice
(コメント) オーストラリアの資源企業Rio Tintoに増資して、中国企業Chinalcoがその支配権を得る取引は妨げられたようです。世界経済の過熱で資源価格が高騰したとき、Rio Tintoは買収のために巨額の債務を負ってしまい、その支払いに苦しんでいたわけです。金融危機になって、潤沢な現金を持つ中国企業に救済を求めるのは当然でしょう。
しかし、中国の企業が提供する資本は、中国政府の影響と無縁ではないでしょう。そもそも、中国の経営者は共産党とどのような関係にあるのか? 経営者というより、政治家ではないか? 中国企業や国営銀行の融資は、政治的な判断で操作されるのではないか? 中国の資本市場で調達する資本は、他の国と大きく異なっているのではないか? さらに、資源の国際市場がいずれの国や企業にもオープンな取引を保障してきたはずだが、資源企業を中国資本が買収することで、不安が生じているようです。
あるいは、これもアングル・サクソン流のクローニズムでしょうか? 今後も、中国資本による外国企業の買収、中国からの直接投資、中国企業の世界化は続くでしょう。多くの摩擦を経て、新しいスタンダードが形成されて行きます。
BG June 5, 2009
The problem with bailouts
By Edward L. Glaeser
NYT June 9, 2009
Taking the Toxic Out of Assets
By CYRUS GARDNER
FT June 9 2009
(コメント) 政府は、銀行が破たんするのを防ぐべきだが、パニックが終われば早期に民営化するべきだし、税金を使って企業の倒産を防ぎ、GMの経営を行うような、リスクを冒してはならない、と主張しています。
CYRUS GARDNERは、1990年代のS&L危機後に成立したRTC(Resolution Trust Corporation)の経験から、政府と民間による不良資産の共同買取プログラム(PPIP)を考察しています。民間とのパートナーシップを機能するように契約する条件として、将来の売却に対する利益を分け合い、手続きや管理には支払わない。利益を上げる前に複雑な条件をつけない。などを指摘します。
The Japan Times: Friday, June 5, 2009
By KEVIN RAFFERTY
(コメント) アメリカの財務長官であるガイトナーは、巨額の財政赤字(1兆8500億ドル)を円滑に維持するために、中国からの対米投資が減ることを心配しなければなりません。G7の交渉よりも、その前にG2で合意しておくことが重要だ、ということかもしれません。
中国が1兆9000億ドルの外貨準備、あるいはBrad Setserの推定では、より正確に2兆5000億ドルの外貨準備を保有している目的は、国内の政策運営において自由度を高め、資源などの輸入を確保することです。そして、結果的に、あまりにも多くの融資を行って借り手に支配される銀行の苦境を味わいつつあります。
確かにドル建資産の価値は減少するでしょう。しかし中国がそれを売ることは、債券市場に破局をもたらし、人民元の大幅な増価を引き起こす可能性が高いのです。・・・ある意味で、大恐慌を引き起こした戦債のモラトリアムをめぐる国際政治の紛糾を見るようです。もちろん、あの時はアメリカがヨーロッパに対する債権国でした。あるいは、ラテンアメリカの累積債務危機を思い出すべきでしょうか?
G2がなければG7もG20も意味はない、と言及しつつ、KEVIN RAFFERTYは日本の後退を指摘します。「日本は島国で、特異な文化の同質性を維持しているから」・・・「ドル建資産を多く保有し、為替レートの変化に脆弱だから」・・・「中国と敵対するより、インドの発展を促したい」・・・
他方、中国では、アメリカの利益を譲らないG2の発想につきあうのは間違いだ、という議論も起きています。
WP Tuesday, June 9, 2009
Geithner's Last Laugh
By David M. Smick
(コメント) ガイトナーが北京大学で学生たちに講演しました。そして、あなたたち中国人のアメリカにおける資産は安全だ、と述べたとき、笑いが起きたとDavid M. Smickは伝えています。しかし、アメリカなしに、アメリカ市場を欠いた世界経済の中で、中国やヨーロッパ、日本は、うまくやっていけるのか? ・・・アメリカの債務は問題だ、しかし、それを笑うなら、あなたたちの雇用も失われる。
世界不況の解決を目指す政策は、以前から言われてきたことと同じです。赤字国政府は需要を抑制し、黒字国政府は需要を刺激する。世界がデフレか、インフレになれば、それに応じて協調して金融政策を変更するでしょう。そして、為替レートの極端な乖離に対しては主要国が介入し、相互の不均衡調整は為替レートの変動に委ねるのです。
しかし、国際政治の限界によって相互の不信感は高まり、それを難しくするでしょう。アメリカのオバマ政権は、新スムート=ホーレイ関税法案を用意してはいませんが、グローバリゼーションの逆転を進めています。税制や補助金、政府支出、そして規制において、アメリカ議会は国内優先を明確にしています。それはアメリカ企業や労働組合が望む、世界的規模のサプライ・チェ−ン、「ジャスト・イン・タイム」管理システムに打撃を与えることなのです。
またDavid M. Smickは、国連が船舶の燃料に含まれる硫黄分を規制する協定に合意したことも、世界の船舶輸送費用を上昇させる、と指摘します。それは、中国やインドに移転された工場を、部分的に、西側世界に取り戻すでしょう。その過程で、多くの出稼ぎ労働者は農村へ戻されます。
It is in Beijing’s interests to lend Geithner a hand
By Martin Wolf
(コメント) 債権国は、当然、債務国の行動に注意します。ドイツのメルケル首相はECBの金融緩和に反対しました。また、中国はガイトナーに財政赤字やドル価値に関して懸念を表明しています。それは正しいことでしょうか? 必ずしもそうではない、とMartin Wolfは考えます。
なぜなら、債務国が調整するためには、それに見合って、債権国も調整しなければならないからです。あるいは、そうでなければ、調整政策の強要は大幅な不況や保護主義を招く結果となります。ドイツや中国が既に経験しつつあるように。
Martin Wolfの考察が面白いのは、ドイツと中国がともに大幅な黒字国でありながら、その置かれた国際条件が全く異なることを重視している点です。ドイツは近隣諸国と通貨を共有しており、それゆえドイツの黒字は近隣諸国の赤字や債務です。金融危機で彼らが破産し、財政赤字と金融緩和圧力が生じていますが、ドイツはこれを制度的に共有しています。逃れることはできないでしょう。
他方、中国の黒字はまだその意味がとらえ切れていません。それは新しい覇権国の台頭を問題にするからです。ゴールドマンサックスの報告をもとに、中国が世界市場に参加して5つの重要な変化が起きた、と指摘します。1.経常収支の黒字、2.世界の金融利回り低下、3.世界の実物資産に対する利回り増加、4.株式リスク・プレミアムの増加、5.工業製品ドル価格の下落。
「世界貯蓄過剰」説は、1.2.だけを説明します。そこでさらに、労働力供給が増加したこと、黒字国となった新興諸国が国際投資に慎重であること、を指摘します。しかも、その結び目には(特に中国の)政府系企業や銀行があります。それゆえ、新興諸国、特に中国の為替レート政策が重要であったわけです。これは「強欲」でも、金融市場の規制失敗でもなく、政策によって導かれたマクロ経済の国際的不均衡である、と。
ドイツも中国も、自分たちの利益は、貨幣価値を維持し、しかも、対外資産を維持することだ、と理解しています。もし黒字を増やし続けて、しかも、それが赤字国への融資で行われているのを理解すれば、その結果は、債務不履行である、とMartin Wolfは主張します。両方の希望を満たすことはできません。
FEER June 5, 2009
Populism Erodes Thailand's Old Order
by Colum Murphy
(コメント) バンコク旧エリートの黄シャツ・デモがタクシン&農民ポピュリズムの赤シャツ・デモを粉砕した街頭行動の応酬によって、タイの政治システムはむしろ双方のポピュリズム型政治に制圧されたのかもしれません。それゆえ対抗する直接行動に訴えた戦術の結果は、王室・軍・エリート政治の終焉と、ポピュリズムによる旧成長モデルの終焉となりそうです。
何よりも、旧エリートの利益を擁護するのではなく、黄シャツ集団は独自に社会問題を取り上げ始めています。それはタクシンの経済改革を否定して、もっと伝統的な生活と価値観、文化を重視する、とも言えます。
タイの権力は、議会ではなく、エリート層が握っています。彼らは王室や軍、バンコクのビジネスと結び付いて、議会の外で重要な方針を決めるのです。こうした政治スタイルが、赤色であれ黄色であれ、民衆の求める政治とは対立するでしょう。王室を支持しながら、彼らが軍や警察を批判するとき、エリートたちはどうするのか?
王の権力はそれほど強力ではない、と言います。王の介入が武力衝突を回避して和解を演出できたのは、それがエリート層内部の利害対立であったからです。民衆が対立して衝突に至る過程で、王が介入しても、それを根本的に和解させる力はないでしょう。もはや伝統的な価値が衝突を抑制する理由にはならないのです。
政治的、経済的、社会・文化的に、ますます厳格な分断化が進む結果として、タイの政治はそれにふさわしい厳格な制度化を必要としています。すなわち、新しい憲法制定議会です。新しい選挙、新しい議会、新しい政府の下に、軍や警察が社会的な地位と忠誠心を確立し、国民の信頼を取り戻すことです。
その準備を怠るなら、エリート政治の崩壊はさらに深刻な衝突を迎えるでしょう。
FT June 5 2009
By Simon Kuper
BBC 2009/06/08
Latvia's dramatic fall from grace
By Orla Ryan
(コメント) 2008年、世界最速の住宅価格下落率を示したのがラトビアです。世界で最も急速に、興隆し、壊滅したのもラトビアである、とSimon Kuperは書きます。
1991年から2004年までに、この人口230万人の国は、ソ連の中の共和国から、EUとNATOの国に変わりました。2004年から2007年まで、EU内では最速の成長率(年10%以上)を示し、何家族かで風呂場をシェアしていたソ連型共同住宅から出て、BMWの自動車を買うようになりました。
しかし今や、ラトビアは金融危機の最悪国としてアイスランドと競い合っています。経済は18%も縮小し、2010年までに4分の1が失われ、アメリカ大恐慌の記録(マイナス30%)に近づく、という予測もあります。
ラトビアの将来に対する楽観は、ユーロに対して狭い変動幅に為替レート固定したこともあって、多くの投資を呼び込みました。投資ブームは、その生産性を高め、輸出能力を高めるのではなく、もっぱら不動産投資や消費の増大を融資することに向かいました。しかも為替レートは強すぎて、ラトビアの産業から競争力を奪ったのです。
資本流入が止まったとき、金融引き締めが始まり、土地や資産の価格が暴落し始めます。もしユーロとの為替レートが切り下げられれば、多くの債務者が破産するしかありません。そして、金融危機をエストニアとリトアニアにも輸出するでしょう。スウェーデンなど、外国の銀行も巨額の損失を強いられます。
では切り下げない代わりに何ができるのか? 大幅な賃金の引き下げ、失業者の移民です。
FT June 8 2009
How to break a currency peg
The Times, June 10, 2009
Crisis in the Baltics
(コメント) 固定レート制を維持したまま資本流出や不況に耐えられる政府はない、とFTは指摘します。2001年のアルゼンチンも政府が崩壊しました。外貨準備が失われる中で、ラトビアは金融引き締めで高金利と消費の抑制、デフレを受け入れ、固定レートを続けています。
抜け出す道がある、とFTは指摘します。ユーロ建債務をすべて現地通貨に転換させるのです。その後、通貨価値を切り下げます。例えば、40%。
スウェーデンの銀行は70億ユーロの損失をこうむります。しかし、FTによれば、たとえ固定レートを維持しても、融資先が倒産して返済はできなくなるでしょう。不良資産の処理に困るだけです。ラトビア政府は損失額の、たとえば半分を、国債で補てんしても良いだろう、と指摘します。
切下げの結果、ラトビア経済は急速に回復し、ラトビア国民は国債の負担を分かち合わねばなりませんが、もはや予想外のパニックは起きません。ラトビアで成功すれば、他の固定レート制を採る国も、このモデルに従うでしょう。
The Timesの論説も、ラトビアの救済を支持します。なぜなら、もし危機が拡大すればEU経済にとってコストが大きすぎるからです。しかし、EUの納税者を守るために、救済条件を示しています。それは、ラトビアの財政政策にEUの監視や規制を認めさせること、連邦主義の拡大です。
EUを構成する政府は独立した財政を支配し、その赤字を共通の通貨で支払います。すると、財政赤字によって高金利やインフレで苦しむはずの国が、他の加盟国にコストの一部を転嫁できるのです。
ラトビアの危機の原因は単純です。債務が多すぎるのです。それは、金利が低下し、通貨価値が安定して、容易に借り入れたからです。成長していた時期の競争的な民間融資も問題でした。もし危機が放置されれば、1992年と同じような危機の伝染が起きるでしょう。そして、EUの権力が過度の中央集権化する、とイギリスの新聞であるThe Timesは心配します。
FT June 10 2009
Latvia’s currency crisis is a rerun of Argentina’s
By Nouriel Roubini
(コメント) ルービニの診断も同じです。競争力のない水準で為替レートを固定しても、維持できません。デフレを続けるなら、IMF融資は問題を長引かせ、さらに多くの融資を必要とし、処理コストを増大させます。まず、切り下げることです。そして、債務を支払えないことを認めて、デフォルトと債務の組み換え交渉を始めます。
アルゼンチンはドル化によって事態を好転させる余地はなかったでしょう。しかし、ラトビアはユーロ化する条件があります。ユーロ圏との取り引きが大きな割合を占め、景気変動も共通しています。しかし、切り下げなしにユーロ化することは無意味です。
FT June 11 2009
Let us roll out the euro to the whole Union
By Marcin Piatkowski and Krzysztof Rybinski
(コメント) Marcin Piatkowski and Krzysztof Rybinskiは、EU加盟27カ国のすべてが、一斉に、ユーロを採用するビッグ・バン・アプローチを求めています。21世紀に入って、EUの政治プロジェクトを進める指導者たちが掲げる目標はこれである、と。
これによってユーロはドルに変わる地位を得るでしょう。また、EU内部の中心と周辺といった差別化(「鉄のカーテン」にたとえられる「ユーロのカーテン」)を生じさせず、統一ヨーロッパに活力を取り戻せるでしょう。
もちろん、ユーロが健全な通貨で、成長する経済圏を実現できることが重要です。Piatkowski and Rybinskは、現在、ユーロに加盟していないけれど、そのための条件を20年間も準備してきた諸国は、十分にそれを実現できる、と主張します。それは最初にユーロを構成した11カ国よりも優れたパフォーマンスを示しているからです。財政赤字、公的債務のGDP比率、は現在の加盟諸国平均より優秀です。インフレ率が高いのは、それだけ成長率も高かったからです。為替レートの安定性は条件を満たせません。しかし、これは世界金融危機の結果であって、現在はユーロ自身でさえ変動率が大きすぎるのです。
27カ国で単一のユーロ圏を構成すれば、貿易、金融、労働市場がさらに統合化するでしょう。景気循環はすでに同時化しており、財市場も労働市場も弾力性を高めるはずです。もちろん、新加盟諸国も財政の協調を強め、金融部門を統合し、世界最大のユーロ建債券市場に参加する条件を整備しなければなりません。
その過程で、ラトビアのような固定レートによる苦境を耐える諸国が安定化するのはよいことです。27カ国のユーロ圏を強くするでしょう。
WSJ JUNE 12, 2009
The Devaluation Idea
(コメント) WSJは、驚いたことに、IMF融資を拡大して切下げを回避するよう、IMFとラトビア政府に求めています。
なぜなら、ラトビアのユーロ建債務が大きいからです。また、EU市場が不況のときに、切下げても輸出は伸びません。さらに、ラトビアのような債務ラッシュに踊っていない隣国をパニックの心理的な伝染によって苦しめてはなりません。切下げによってスウェーデンの銀行が被る損失も甚大です。だから、ラトビア政府は緊縮財政を続けるべきなのです。
The Guardian, Sunday 7 June 2009
Poland votes for stability
Anita Prazmowska
(コメント) ヨーロッパ議会選挙におけるポーランドの結果は、極端な保守派やワレサの支持した左派を拒み、現在の中道穏健派の与党に勝利をもたらし、EU政治への復帰を支持しました。それは民主主義の成熟、有権者の判断の成熟を示している、と論説は称えます。
FP June 2009 Is North Korea a Paper Tiger? By Bruce Bechtol
The Japan Times: Sunday, June 7, 2009 Consequences of hostility on the Peninsula By SUNG CHUL YANG
(コメント) ヨーロッパが小国の金融危機で苦しむとしたら、アジアを苦しめるのは小国の核兵器です。しかし、Bruce Bechtolは、書くだけでなく、北朝鮮が通常の軍事力においても十分に大きなダメージを近隣諸国に与えられるという自信を持っている、と注意します。
SUNG CHUL YANGの「朝鮮半島の極論(過激さ)」Korean extremismという論説が面白いです。なぜ、南北いずれも、朝鮮半島はこれほど過激なのか? 北朝鮮が体制転換を恐れ、国際ルールを無視して核戦争も準備するのはなぜか? 61年間も神に仕えるように金父子に従うのはなぜか? 韓国のキリスト教会が個別に80万人もの信者を擁し、日曜日の教会に10万人も集まるのはなぜか? 一人当たり所得が1940年代にはわずか40ドルしかなかったのに、今や世界で12もしくは13番目に豊かな国であるのはなぜか?
それは朝鮮民族の過激さにある、とSUNG CHUL YANGは自認するのです。さらに、季節によって寒暖の差が激しい気候のせい、さらに、日本と中国に挟まれて、軍事侵略や征服に耐えてきた歴史のせいではないか、と。
制裁決議も効果はないだろう。朝鮮半島の過激さは抑制不可能だ。しかし、民族の内部分裂で日本に植民地化された歴史を学ぶべきだ、と。
WP Monday, June 8, 2009 Reining In Pyongyang By Henry A. Kissinger
(コメント) 戦争は政治の継続だ、というクラウゼヴィッツの洞察を思い浮かべます。
Henry A. Kissingerは、オバマ政権の大幅なオープン姿勢に対して、強烈な平手打ちを放つ金正日の意図を、息子への権力継承である、と断定します。そして、国際政治における孤立やアメリカの攻撃に耐えて、核保有国となることが、国民に3代にわたる服従を受け入れさせる代償なのです。
アメリカは非核化できるのか? 核武装した北朝鮮を中国に対する牽制として利用できないか? むしろ核武装を受け入れて、ミサイル防衛網を強化するべきではないか? 北東アジア全体の核武装と中国の困難な状況は続く? 主要国が参加できる環太平洋圏の安全保障体制を構想しなければなりません。
China Daily 06/08/2009 Peace hopes amid war threat in the Peninsula by Li Qinggong
WSJ JUNE 9, 2009 Jailed in North Korea
Asia Times Online, Jun 10, 2009 US shackled by Pyongyang's ploy By Donald Kirk
NYT June 9, 2009 North Korea’s Cruel Verdict
IHT June 9, 2009 South Koreans Should Be Worried By B.J. LEE
(コメント) J. LEEも、朝鮮戦争を知らない韓国の若い世代が、北朝鮮の軍事的な威嚇を信用しなくなっている、と懸念します。現状では、北朝鮮の軍事力が大幅に優位を示している、と。韓国はもっと北朝鮮を恐れた方がよいのです。
YaleGlobal, 9 June 2009 Tunnels, Guns and Kimchi: North Korea’s Quest for Dollars – Part I Bertil Lintner
YaleGlobal, 11 June 2009 Tunnels, Guns and Kimchi: North Korea’s Quest for Dollars – Part II Bertil Lintner
(コメント) 核兵器を作っても貿易はできない犯罪国家と、そのさまざまな外貨獲得方法に関して紹介しています。
LAT June 10, 2009 Pawns of Pyongyang
WSJ JUNE 10, 2009 Obama Discovers North Korea
WSJ JUNE 10, 2009 North Korea Deserves the Diplomacy of Silence By EDWARD N. LUTTWAK
(コメント) 近隣諸国との話し合いを拒み、国連安保理決議を無視し、朝鮮戦争の休戦合意も破棄しました。こんな国がある、というのは、異なる天体か異次元の世界を見るようです。
二人のアメリカ人ジャーナリスト(Euna Lee and Laura Ling)を連行して、強制労働12年の判決を下した北朝鮮の裁判所に、また、オバマの外交路線にもWSJの論説は憤慨します。北朝鮮の核武装をめぐる問題より、次第にアメリカ世論が過熱してくるかもしれません。二人は今やアメリカとの取引材料です。強制労働や収容所の劣悪な環境が憂慮されています。
オバマとヒラリーは、この国の代表を招待して交渉しようとしているのか?
こんな国との交渉とは、何か法則があるのでしょうか? EDWARD N. LUTTWAKは「沈黙の外交(a diplomacy of silence)」を指摘します。いかなる情報も与えない。いかなる交渉再開も許さない。
それは外交の基本を否定するものです。北朝鮮と交渉することは、彼らが援助を引き出しただけでした。話しても無駄なのです。唯一、沈黙だけが彼らの姿勢を再考させるでしょう。
Asia Times Online, Jun 11, 2009 China: Pyongyang just wants attention By Antoaneta Bezlova
Asia Times Online, Jun 12, 2009 Nuclear war is Kim Jong-il's game plan By Kim Myong Chol
NYT June 12, 2009 Why Beijing Props Up Pyongyang By ANDREI LANKOV
(コメント) 金正日は、韓国と日本を核攻撃するシナリオを準備しており、それを動かすことも始まったようです。・・・本当に? もちろん、軍人なら準備しているでしょう。アメリカもそうです。たとえば、日本や韓国の原子力発電所を攻撃することは容易であろう、とアメリカ軍も認めています。そして、チェルノブイリの何倍も破滅的な、あるいは、水爆級の被害をもたらすことができます。
ただし、Kim Myong Cholは金正日のスポークスマンと言われている人物です。
急速に悪化していく北朝鮮情勢は、どこかで新しい均衡に達するのでしょうか? 北朝鮮に圧力を行使できる唯一の国、中国について、ANDREI LANKOVが考察します。
北朝鮮は、たとえ国民生活が悪化するとしても、その方針を変えないだろう。だから、もっと厳しい措置が必要になる。それは北朝鮮の体制が崩壊するリスクを高める。中国にとって、難民など、国内の社会不安が高まるうえに、朝鮮半島情勢が管理できなくなる。つまり、朝鮮半島統一における中国の影響力を失う。また、親米的な統一政府ができるかもしれない。
つまり、北東アジア安全保障体制や国際秩序への中国の参加を促すことが、その懸念を取り除くのです。
WP Saturday, June 6, 2009
Freedom for the Uighurs
(コメント) モンゴルとウィグルの違いも理解しておらず、申し訳ありませんでした。ウィグル族の多くはイスラム教徒です。
しかし、この記事は、ブッシュ政権下でグアンタナモに収容されたままのウィグル人を解放するべきだ、とオバマに訴えたものです。
NYT June 6, 2009
Remembering Tiananmen
WP Sunday, June 7, 2009
After Tiananmen, China Wedded Force With Freedom
By John Pomfret
(コメント) ヒラリー・クリントンは、中国政府に対して、天安門事件の情報を明らかにして犠牲者たちに謝罪せよ、と求めました。
John Pomfretは、事件後20年を経て、最大の問題とは、犠牲者の数ではなく、なぜ共産党が以前よりも強くなったのか、である、と考えます。
自由貿易や経済発展は、共産党の支配体制を崩壊させることも、民主主義をもたらすこともなく、今も、体制が維持されています。しかし、同時に共産党は彼ら自身の手で多くのことを成し遂げたようです。そして、共産党自身が大きく変わったのです。
WP Sunday, June 7, 2009
We Had Our Perestroika. It's High Time for Yours.
By Mikhail Gorbachev
(コメント) ベルリンの壁を倒したのも、ソビエト連邦を解体したのも、Mikhail Gorbachevがそれを指導した、と感謝する政治家や資本家が多くいます。もちろん、多くは皮肉で、少しだけ本気に。
Mikhail Gorbachevから見ると、今、アメリカにもペレストロイカが起きている、というのです。ペレストロイカとは、変化を求めるシグナルです。ソ連はペレストロイカに応えて政治・社会モデルを放棄しました。アメリカと世界も、それに成功するでしょう。Gorbachevは、軍のクーデタと改革反対派によって失脚しました。
なぜそうなったのか、彼自身が説明しようとします。それは漸進的な改革の道を拒んだ結果、カオスへの跳躍を強いられたのだ、と。この西側に人気のある権力者・知識人が、ロシアでは嫌われているのも、わかるような気がします。
NYT June 7, 2009
The Economy Is Still at the Brink
By SANDY B. LEWIS and WILLIAM D. COHAN
(コメント) 大衆の信頼によって成立している金融システムの基礎が、危機以前、いかにいい加減なものであったか、オバマ政権はもっと根本的な改革を始めるべきだ、と主張しています。
われわれのために正しく機能する金融システムとは何か? 以前のような巨大な金融ピラミッドは必要ない。それを再建するために政府が税金を投げ込むのは間違っている。政府が税金を使うなら、それは雇用によって効果を判定するべきだ。銀行救済によってどれほどの雇用が生じたのか? 無駄な製品ばかり創り出す工場を救済するのようなものだ。・・・
The Guardian, Sunday 7 June 2009
A new people's bank
Kate Hoey
The Guardian, Monday 8 June 2009
Economy: Break up the banks
Larry Elliott
(コメント) 銀行を分割し、資産も経営も分散する。住宅貯蓄のための小規模な銀行。国境を超える巨大銀行の監督体制。
FT June 8 2009
Wall Street is a willing partner in financial reform
By Tim Ryan
(コメント) アメリカ国民が金融ビジネスに対する信頼を失ったことは重大であり、それを回復しなければなりません。金融界はオバマ政権の取り組みを支持する、とTim Ryanは表明しています。
すなわち、1.金融安定化を監視する単一の機関を設ける。それは連銀と協力して、すべての市場、すべての主要参加者を監督する。2.民間と政府の共同買取案を支持する。3.金融商品が複雑になりすぎたことを改める。透明性を高めて投資家を守る。4.デリバティブ市場の透明化や整備を支持する。5.報酬を、短期ではなく、長期のパフォーマンスによって決める。
こうした改革を、適当な国際機関・国際監視と協力して進める。
WP Sunday, June 7, 2009
Desperation Behind the Wheel
By Jim Hoagland
(コメント) 自動車と言えば、アメリカでした。アメリカの生活と言えば、高速道路と自動車です。だから、アメリカ政府が倒産するデトロイトの自動車産業に莫大な資金を注入するのも理解できるわけです。
オバマは、アメリカの社会と民主主義を再建する、と約束しました。しかし、自動車産業は失敗のシンボルです。国有化を誤魔化している場合ではない、と批判します。
WP Sunday, June 7, 2009
Woodrow Wilson's Heir
By Robert Kagan
NYT June 7, 2009
After Cairo, It’s Clinton Time
By THOMAS L. FRIEDMAN
BG June 7, 2009
Obama's missed opportunity in Cairo
By Jeff Jacoby, Globe Columnist
(コメント) オバマは自分をプラグマティストとみなしたがるが、外交政策に関する限り、彼はどうしようもないほど理想主義的なウィルソニアンだ、とRobert Kaganはカイロ演説を批判します。
アメリカを「邪悪」で「敵」だと思うから、彼らの協力や善意を得られないのだ。だから、オバマはこの嫌米主義を改めさせる、というのです。・・・中東、ロシア、北朝鮮、中国、ラテンアメリカ、アフガニスタン、イラクでさえ、嫌米から親米に変わっただろうか?
オバマは、イランやハマスとも対話を呼びかけます。そして、核兵器の廃絶を訴えますが、同じころ、北朝鮮は核実験します。オバマはグアンタナモ基地も閉鎖します。しかし、安全保障との新しいバランスがどうなるのか、オバマは示しません。
オバマはイラクから撤退し、アブグレイブを閉鎖しました。イラク戦争は悪い、アフガニスタン戦争はよい、パキスタン戦争は必要だ、と主張するのは間違いです。それらは皆、一つの戦争であり、異なる前線なのです。アラブ世界の中の穏健派と過激派、民主化と独裁が戦っています。オバマになって、アメリカも漸く、この戦いに参加します。
NYT June 7, 2009
Intolerable Rise in Soldier Suicides
(コメント) 予想されたこととはいえ、恐ろしいことです。アメリカの帰還兵たちは、ますます多くの自殺者を生んでいます。戦場の5人に一人がトラウマによって帰還します。
The Guardian, Sunday 7 June 2009
Solving America's hunger crisis
Sasha Abramsky
(コメント) アメリカに食糧が不足しているわけはない。しかし、貧しい者は飢えています。カリフォルニアで財政危機が深刻になれば、貧しい者に関わりのない危機でも、彼らへの食糧支給が止まります。そこで、州財政の共有を求めています。
また、GMが倒産しました。これによって関連する産業で多くの失業者が出ます。退職金や医療保険も削られます。・・・21世紀の社会保障ネットを作ってほしい、と求めます。
FT June 7 2009
Down and out for the long term in Germany
By Wolfgang Münchau
FT June 9 2009
Prudent Germany will reap long-term rewards
By Holger Schmieding
(コメント) Wolfgang Münchauは、世界経済・ヨーロッパ経済が長期に停滞する理由として、国際不均衡を指摘します。すなわち、赤字国で、金融資産を失った家計の貯蓄が増え、また、金融を抑制される結果として赤字を減らせば、その分、黒字国の支出を増やさなければなりません。しかし、そのような積極的な刺激策は取られないでしょう。特に、ヨーロッパでは為替レートがないために、赤字国の金融抑制が減価と輸出増加によって緩和されません。ユーロ安を求めて介入することもないでしょう。それはドイツの不出不振とユーロ圏の停滞が長期に及ぶことを意味します。
Holger Schmiedingは、アメリカ政府が批判しているけれど、ドイツの健全財政は正しい、と支持しています。なぜか? 財政赤字は当然、短期的な刺激策となりますが、長期的には負担です。増税による景気回復の挫折につながるでしょう。また、ドイツは労働者への賃金低下補償で失業者を抑え、消費を維持していますし、自動車の買換え補助金を導入して、自動車購入を回復させました。さらに、主要国による金融緩和がもたらす景気回復を維持するために、英米と違って、にわかに増税を決める必要もないのです。
The Japan Times: Sunday, June 7, 2009
Keeping the faith in globalization
By RAGHURAM RAJAN
(コメント) RAGHURAM RAJANは、保護主義とは関税の引き上げだけを意味するのではない、と主張します。世界の生産パターンを歪め、財・サービス・資本の配分を自国に有利にするための政策が、それによって世界の効率を悪化させるなら、すべて「保護主義」なのです。
しかし、世界の主要国でさえ、こうした政策を次々に採用し、自由化への交渉はまったく無視されています。政府が融資を強制することや、先進諸国の政府が財政赤字を増やして刺激策を採ると、金利が上昇して、発展途上諸国の債務に影響を及ぼすことも「保護主義」です。主要諸国の国際会議は、こうした政策について、互いを処罰することに慎重です。
RAJANは、IMFの改善を求めます。IMFの理事会を廃止し、すべての加盟国の財務大臣と中央銀行総裁が参加するthe International Monetary and Financial Committee (IMFC)を重視し、もっと頻繁に開催します。そして、IMFは会議のための情報を蓄積し、政策を検討する、中立的な、独立した事務局となります。主要国は拒否権を持たず、発展途上国の参加とグローバリゼーションへの信頼形成を歓迎します。
The Guardian, Monday 8 June 2009
For 300 years Britain has outsourced mayhem. Finally it's coming home
George Monbiot
The Guardian, Wednesday 10 June 2009
The globalisation illusion
Hugh Goodacre
The Mercury News, 11 June 2009
Globalization's Ugly Side: Sex Slavery
John Boudreau
(コメント) 社会不安や失業を外国に輸出することが帝国主義の源泉であった、とMonbiotは指摘します。300年を経て、社会不安が外国で発生し、それが自国に戻ってくる・・・「騒乱のアウトソーシング」です。それが新しい帝国拡大の条件になるのでしょうか?
ベトナムの貧しい農村からは、娘たちがカンボジアの売春宿や中国へと売られています。
The Guardian, Sunday 7 June 2009
US conservatives are fighting for the rights of a minority – white men
Gary Younge
(コメント) オバマが最高裁判事としてラテン系のSonia Sotomayorを指名したことや、他の重要人事に関する「人種差別」、「逆差別」、という攻撃を、どう考えたらよいのか。
We are all a product of our time and place. Born in the midst of a random variety of narratives over which we have no control, most of us spend our lives trying to write the best story we can with the material we have been given. Some struggle with this as a concept. Desperate to think of themselves as inspired, original and above all, self-made, they are at pains to deny that their script has been partially penned by anyone other than themselves. Their reluctance is understandable: who would voluntarily cede editorial control over their own lives?
「人種政治」はないと思っているのか? 白人のマイノリティーが黒人やヒスパニックの優遇政策を批判する? 110人の最高裁判事の内、白人の比率は98%以上、男性の比率も98%以上です。220年の歴史で、最初の178年間は全員が白人男性でした。
そして、白人男性たちからの攻撃の言葉が並べてあります。
The Guardian, Sunday 7 June 2009 Ten lessons for the left from Europe Denis MacShane
The Times, June 9, 2009 What happened to the Left's moment?
WP Tuesday, June 9, 2009 Where's the Revolution? By Anne Applebaum
NYT June 9, 2009 Economy Shows Cracks in European Union By STEVEN ERLANGER
The Times, June 11, 2009
Labour stumbles closer to historical oblivion
Anatole Kaletsky
(コメント) 金融危機、世界不況、失業、・・・左派が予言し、政治権力を奪って社会改造を要求してきたけれど、実際にヨーロッパ議会の選挙で勝利したのは右派でした。特に、政権を担ってきた社会民主主義政党は責任を取らされたのです。
Anne Applebaumが言うように、これは「資本主義の勝利」でしょうか? なぜ世界資本主義の危機が騒がれているのに、右派が勝利するのか? それは彼らが、社会改革に慎重な、財政的保守派であったからです。アメリカではオバマが支持されましたが、ヨーロッパでは負けるでしょう。
Anatole Kaletskyは、イギリスのゴードン・ブラウン首相が危機を読み間違えた、と考えます。ブラウンは、世界資本主義の危機から人々を救済するのが政府の使命であり、これによって労働党の掲げてきた旧来の社会モデルを実現する、という方針を示せば、自分が支持されると考えました。しかし、そのような政治的社会改造はとっくに絶滅したのです。有権者は保守党よりも経済運営がうまいことを期待していたのです。危機を招いたうえに、莫大な財政赤字をもたらして高金利や増税を覚悟せよ、という労働党を支持しないのは当然です。
過去においても、経済危機は政治の保守化・右傾化をもたらしました。資本主義の不正義を糾弾する声よりも、安定的な秩序を回復してほしいという声の方が大きかったからです。有権者が望むのは、新しい社会を築く試行錯誤ではなく、できるだけ早い旧秩序の再生でした。
・・・しかし、国や地域によって、選挙結果は違った意味を持っています。「資本主義の終わり」を信じた者は少なかったわけです。
FT June 7 2009
Victory for Europe’s centre-right
By Tony Barber in Brussels
FT June 8 2009
Europe’s right turn
SPIEGEL ONLINE 06/09/2009
European Voters Know What They Don't Want
By Henryk M. Broder
WSJ JUNE 9, 2009
Europe's Self-Hating Parliamentarians
By MARK LEONARD
(コメント) 良いことを選ぶのではなく、嫌なことを避けたかったのかもしれません。EU政治は、常に、エリート官僚制とポピュリズムとの対立であった、とMARK LEONARDは指摘します。官僚たちの大きな計画が成功しているときは支持されますが、それがうまくいかないとわかると、激しいナショナリズムとポピュリズム政党が現れます。
ナショナリズムが復活するより、ポピュリズムの参加を求める方がよい。
June 8 (Bloomberg)
China’s Pockets Aren’t Deep Enough During Crisis
William Pesek
Asia Times Online, Jun 10, 2009
China discovers value in the IMF
By Peter Lee
(コメント) イランでも、中国でも、インターネット情報の管理が政治の安定化に重要な課題となっています。
Rio Tinto買収がうまく行かなくても、中国からの企業買収や直接投資は続きます。不況になれば、政治家や企業は豊富な資金を持つ投資家が現れるのを望んでいます。たとえ中国でも、しかし、自国企業の買収を拒めば中国との関係が悪化し、それを認めれば国民の不安や不信を強めるでしょう。
中国は、発展途上諸国との2国間交渉で、資源や食糧を安定して購入したいと考えます。また、IMFのSDRを使って、外貨準備の為替リスクを分散したいと考えています。さらに、アメリカの財政赤字を監視するために、IMFの決定権をアメリカから切り離し、中国の発言をもっと重視させることが望ましいでしょう。
アジアでも、ラテンアメリカでも、IMF融資にともなう経済混乱を経験した諸国からは、こうした変化を歓迎する声が期待できます。
WP Monday, June 8, 2009
Deflation or Inflation?
By Robert J. Samuelson
FT June 9 2009
Economists clash on shifting sands
By Robert Skidelsky
(コメント) デフレ懸念とインフレ懸念とが高まっています。Robert J. Samuelsonは、どちらも否定しません。今すぐにデフレが起きるという者は誰もいません。しかし、将来のハイパー・インフレについては心配する者が増えています。問題は「期待」や「不確実性」だから、バーナンキの任期を次期に延長する、と今すぐに表明せよ、といいます。
しかし、ケインズとその論争を理解する点において、Robert Skidelskyに勝る論者はなかなかいません。Skidelskyは、ファーガソンとクルーグマンとの論争を、1929-30年のイギリス大蔵省とケインズとの論争を再現している、と考えます。ファーガソンは、クルーグマンの積極的な赤字拡大論を批判し、財政赤字で金利が上がった、それだけ民間投資が減ったはずだ、と主張しました。当時の大蔵省もケインズに反対し、財政赤字を増やすと民間投資を同じだけ締め出す、と考えたからです。ケインズは、もしそれが本当なら、民間投資は要らない、と応えました。
Skidelskyは、この点ではクルーグマンを支持します。しかし、大蔵省はケインズの考え方を受け入れますが、心理的な「クラウディング・アウト」を指摘しました。今も、イギリス政府が財政赤字を返済する姿勢を投資家が疑えば、資本逃避が起きるでしょう。
ケインズとフリードマンの対立は、天使と悪魔の対立でも、科学の問題でもなく、優れた判断と愚かな判断をめぐる問題である、と指摘します。その状況に応じた答えが必要です。
NYT June 8, 2009
Gordon the Unlucky
By PAUL KRUGMAN
(コメント) イギリスのゴードン・ブラウン首相は、大蔵大臣として現在の金融システムを推進しました。彼が危機の責任を負うべきか? KRUGMANは、Yesでも、Noでもある、と考えます。ブラウンは「市場原理主義」を確信していたし、それに基づく改革を実行したからです。しかし、保守党はそれに反対したのか? 彼らは間違いなく「市場原理主義」を支持していました。
他方、金融危機に直面した時のブラウン首相の決断は見事であった、とKRUGMANは称賛します。保守党の政権であったら、これほど迅速で思い切った対策は取れなかっただろう、と。それにもかかわらず、市場は財政赤字を心配して金利が上昇したのです。ブラウンが、労働党とともに選挙で敗北するとしたら、投資家たちの不安を抑制できなかったからです。
LAT June 10, 2009
A mowj of optimism sweeps Iran
By Hooman Majd
FP June 2009
Iran's New Revolution
By Cameron Abadi
NYT June 10, 2009
Ballots Over Bullets
By THOMAS L. FRIEDMAN
FT June 10 2009
Iran’s vigorous theo-democracy
NYT June 11, 2009
Iran Awakens Yet Again
By ROGER COHEN
Asia Times Online, Jun 12, 2009
Poetic justice of a green revolution
By Pepe Escobar
(コメント) すでに結果が出ています。これらの論説では、イランの選挙と政治変化について、さまざまな期待や不安、その先の予想が語られていました。最初から、これは宗教指導者が演出した選挙であって、投票は重要ではない、と批判する声がありました。
しかし、圧倒的な民衆に意思表示があれば、宗教界による専制支配を変えられる、という希望が高まっていたのです。アフマディネジャドAhmadinejad大統領の主張や政策に関して、国民には不満があるはずでした。イスラム革命とは何であったか、さまざまな理解があるようです。
息子が持った酸素ボンベを頼りに投票所を訪れた老婆もいたそうです。アラブ世界に、もう一度選挙による変革の情熱を抱かせたのは、オバマの訪問と演説であった、とTHOMAS L. FRIEDMANは指摘します。
対立候補のHussein Moussaviを支持する群衆は、「緑の津波」となってテヘランを震撼させた、と伝えられました。例えば、女性の権利を主張する団体も、強い支持を表明しています。代表の女性は大統領派のテレビで攻撃番組を流されました。
NYT June 10, 2009
Overseas, Under the Knife
By ARNOLD MILSTEIN, MARK D. SMITH and JEROME P. KASSIRER
(コメント) アメリカの医療保険制度が破たんしていることは、諸外国への「医療観光(medical tourism)」を増やす結果となっています。インドやタイなどへ、美容整形のために旅行する者も増えています。
これは喜ばしいことなのか? その答えは、何と何を比較するか、によるでしょう。保険会社が、アメリカから医師を派遣して評価させ、インドの病院で治療するツァーもあるそうです。高い評価を得るために、病院は1万ドルも評価する医師に支払います。
地球の裏側で治療を受けて、何か些細な手違いや事故があっても、その代わりは用意されません。手術の失敗も起こるでしょう。だから、禁止せよ、とは求めていません。病院や医師に関する情報を蓄積して、長期的な評価を行うこと、を求めます。
医療や保険も、金融システムの改革に似ています。
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The Economist May 30th 2009
Kim Jong Il’s bombshell
North Korea’s nuclear test: On mushroom cloud two
China, America and the yuan: Time for a Beijing bargain
Twenty years after Tiananmen: Silence on the square
Banyan: The party goes on
Chinese firms’ foreign investments: Sino-Trojan horse
Argentina’s farming in crisis: Parched earth, empty barns
Poland’s legacy of 1989: Still in the soup
Overhauling financial regulation: The regulatory rumble begins
(コメント) さすがのThe Economistも、金正日にはお手上げのようです。米中で合意して、この土地を占拠する集団を排除できるかどうか? 金父子が権力の継承には軍事的な「勝利」が必要だ、と確信している?
中国は債権者としてアメリカの破産処理ではなく、資産価値の保全と国際的に管理された再建計画を望むでしょう。他方、中国の政治経済改革は続きます。天安門事件の際に、今でも、軍の一部が政府の命令に反する動きを準備した、と言われています。共産党は、同じ時期の東欧民主化やソ連崩壊を見守り、衝撃を受けたはずです。権力を掌握し続けるために、自ら体制転換を実行します。必要な技術や資源、企業は、世界中で買い取ります。
アルゼンチンでは農作物が激減しています。ポーランドの改革を指導した連帯の分裂と、その起点となったグダニスク造船所の消滅、アメリカの金融制度改革をめぐるThe Economistの危惧。
何より、ワレサ(今や政治的に影響力を失った)の名言に、私は沈黙しました。・・・ポーランドに共産主義を押し付けたことは、水族館をフィッシュ・スープにしたようなものだ。民主的体制に転換するというのは、フィッシュ・スープを水族館に変えるよりもさらに難しい。・・・まだ、スープの中?