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IPEの風 6/15/09

・・・トヨタもホンダも消えてしまう・・・と私は書きましたが、問題は時間です。それは1000年ではないでしょうが、1年でもないからです。私たちは、せっかく世界トップの日系企業がある業界ですから、100年くらいは続いてほしいと思うでしょう。しかし、もしかすると10年かもしれません。

大学の研究室は自宅から遠く、バスから電車に乗って、地下鉄で烏丸今出川につきます。その時間がもったいないな、と思い(眠ってしまうこともよくありますが)、The Economistを読みます。これがいつも面白いのです。

気候変動が政治家たちのトップ課題になるとは思いません。しかし、国際規制は何度目かのスパートで、化石燃料への依存を大幅に減らすでしょう。石油が掘り尽くされることはないでしょうが、その前にガソリン自動車は消滅します。

GM破産処理についての記事で、これは自動車産業の終わりではない、とThe Economistは断言していました。なぜなら、世界には自動車に乗りたい人々が増え続けているからです。アメリカの富裕層ではないし、日本の老人たちでもなく、それは新興諸国で急増する中産階級の若者です。良いニュースでしょうか? むしろ、もし新興諸国の自動車市場で対抗できなければ、新興企業との競争によって、トヨタやホンダの消滅はさらに早まる、ということです。すでに生産拠点はシフトしつつあります。

ガバナンスの革新、という考え方を、私は繰り返し講義で言及します。権力の起源(そもそも、国家の成立が革新でした)から、大航海時代の富と権力の地理的な移動、世界市場統合と価格革命、それに対応する近代国家形成の様々なタイプ、いわゆる産業革命、自由貿易、・・・。同じように、企業が変化に適応し、自らを転換させる集団的な能力を、「ガバナンス」と呼ぶのも正しいと思います。

この言葉が存在するのも、私たちがそれを新しい思想として得たからです。思想によって、世界は変わります。

私が大学生の頃、本当に感動して読んだ本として今も記憶に残っている一冊は、水田洋氏の『社会思想小史』でした。先日、本棚でやっと見つけました。しかし、新しくなったものが出ている、というのです。すぐ注文してしまいました。

古代宗教であれ、啓蒙主義であれ、近代科学であれ、政治イデオロギーであれ、経済学であれ、社会と思想との関係を議論する姿勢が真剣です。社会の変化が新しい思想をもたらし、新しい思想が社会を変える、ということを教えてくれました。

たまたま本棚でこの本を探しているとき、面白い他の本も見つけました。A.G.ディーバス著『ルネサンスの自然観:理性主義と神秘主義の相克』です。どこを開けても、興味深い挿絵や、有名な科学者たちの奇妙な発想、不思議な目標、合理主義の精神、信仰と科学の共存、に驚かされます。

その時代の呪術師たちに抗して、社会思想家が奥義を描く言葉こそ、リヴァイアサン、ユートピア、ビヒモス、・・・といったガバナンスの解剖学かもしれません。天文学も、生物学も、ガバナンスの下僕であり、金融市場やインターネットでさえ、ガバナンスの魔法の絨毯です。

戦争やバブル破綻、世界不況やハイパーインフレーションが起きないとは、誰にも断言できません。ガソリン自動車が消滅するのも時間の問題です。企業が現実の変化に対応できない(あるいは社会が対応する)からです。・・・資本主義システムはどうだろうか? と、電車の中で思いました。

パソコンも、自動車も、台湾や中国、インドから輸入します。そして資本主義も。党首討論を聞いても、この土地の未来が見えません。

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