IPEの果樹園2009

今週のReview

5/25-5/30

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

米中関係、 中国とブラジル、 ガイトナーの模索、 気候変動の国際規制、 インドの民主主義、 日本とイギリス、 Wolfの資本主義、 ポーランドの無血革命

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


FEER May 13, 2009 China Must Change Its Economic Model by Colum Murphy

NYT May 17, 2009 The China Puzzle By DAVID LEONHARDT

(コメント) 金融危機の背景には、米中の貿易と金融における相互依存、共生関係があります。中国の輸出はアメリカの消費拡大によって利益を約束され、アメリカの好景気は中国の貯蓄をアメリカ資本市場が吸収することで保証されていました。その関係が崩れる兆候はありますが、両国政府とも崩壊を避ける点で関心が一致しています。

ガイトナー財務長官が中国側の人脈(特にWang Qishan副首相)といかに親密な関係を築き、重要な政策についての意見を求めているか、この記事を読んで驚きました。日本の政府関係者がアメリカとどれほど緊密な連絡を取っているのか、心配になります。中川氏や与謝野氏がガイトナー財務長官と、頻繁に、十分な情報・意見の交換を行ってきたとは思えません。

この長い記事を全部読んでもいと思うほど、内容は面白いです。ひとつ気になったのは、アメリカ政府が中国政府に政策の変更を求める圧力をかける力がない、と認めていることです。逆に、日本には、安全保障問題や為替レートへの警告発言など、多くの決定的なテコ・政治圧力を行使できたわけです。

・・・ある意味では、米中関係がうらやましいな、と思いました。

さらに、中国への圧力について、ガイトナーは1990年代のアメリカとIMFの関係に言及します。カムドシュMichel Camdessus専務理事は、通貨危機に対する対応で、アメリカ政府(ガイトナーはそのスタッフの一人でした)の求める政策を進んで受け入れました。その助言が、彼らの必要としていたものであったからです。中国に対しても、ガイトナーは同じ作戦で行く、と。

それは、ブッシュ政権下で、ガイトナーの前任者であり上司でもあったポールソン財務長官が、経済戦略会議the Strategic Economic Dialogueとして行ってきたことです。2006年の会議を主導したバーナンキの議論(重工業に投資が集中しており、資源を浪費している)が紹介されています。それは、日本や韓国がやったことですが、中国のスピードはそれを超えていました。そんなことは続かない、と言うべきでしたが、バーナンキは富を分散し、もっと広い分野でビジネスを刺激するように求めます。ある意味で、日本が構造協議で細かく「間違い」を指摘されたことです。

そして、中国政府は、いたるところに広がった高速道路の建設より、労働者のための社会保障制度を整備することに投資を転換します。

中国は、基本的に、アメリカと同じ国際秩序の一部になっている。ケ小平がそれを選択したときから、中国の成長はアメリカとともにある、とオバマやガイトナーは確信しています。唯一の合理的な選択は、米中が協力して問題を解決する、という方向になるはずだ、と。・・・もし合理的であれば。

The Guardian, Monday 18 May 2009 China goes global Linda Yueh

(コメント) 世界金融危機を解決する良い方法はないのでしょうか? 一つは、中国が欧米の企業や銀行を買収することです。輸出によってため込んだドルの外貨準備が、ドル建証券の価値の減少で大きな損失を出しているときだからこそ、優秀な欧米企業を安価に買収しておけばよい、というわけです。欧米企業や銀行は、債務の返済と経営の立て直しに必要な資本を調達できます。

昨年、中国企業による直接投資、すなわち外国企業の買収額は560億ドルで、その前年に比べて194%の増加でした。しかし、中国は長く直接投資の受け入れ国でした。外国企業による中国企業の買収額は、年平均約600億ドルであり、相互の直接投資が増大して均衡し、成熟した、とも言えます。

Linda Yuehは、中国企業の直接投資を、政府系企業による一次産品やエネルギーの確保だけでなく、企業の世界的な展開に向けて必要な技術を求めている、と考えます。1990年代半ばになって、改革開放が始まったころに比べると、生産性の上昇が鈍ってきた、と指摘します。それは中国企業が技術のフロンティアに近づいてきており、世界市場に進出する時期になったこと、また、先端的な技術を得るために企業買収を多用すること、を意味するでしょう。

ただし、中国企業・銀行の透明性を高めなければならない、とLinda Yuehは指摘します。世界的な資源企業Rio Tintoを、中国政府系の銀行によって融資されたChinalcoが買収しようとしたとき、オーストラリア政府が反対したように、中国企業の株式所有や財務、会計基準、などが国際的なスタンダードに照らして透明でなければ、世界市場で受け入れられない、と主張します。

しかも、面白いのは、この点で中国企業の拡大がよくされる、というのではなく、イギリスの金融サービスを輸出するチャンスである、と見ていることです。中国企業は、もはや香港ではなく、ロンドンの金融コンサルタントを介して、アメリカや日本など、世界中の企業を買収する条件を得ることができる、というのです。

FT May 19 2009 Asia needs to ditch its growth model By Michael Pettis

(コメント) 中国が、アメリカとの不均衡を拡大することで成長を加速したパターンは修正しなければなりません。しかし、それには時間がかかるだけでなく、中国政府の選択する政策によって、将来の消費を制約してしまう失敗の懸念があるようです。

たとえば、中国政府は国営の銀行システムを使って融資を急激に増やしています。これは、確実に投資も増やし、将来の生産能力を増加させます。また、銀行には不良債権の累積が起きるでしょう。それは将来の銀行救済を必要として、増税がもたらされます。

China Daily 2009-05-19 China and Brazil: Terms of endearment By Luiz Incio Lula da Silva

BBC 2009/05/19 Brazil and China forge closer trade links By Gary Duffy

(コメント) 世界不況への不安が広まるなかで、世界中の輸出国は中国市場に注目します。中国政府の貿易信用などによる支援策もあって、ブラジルの中国向け輸出は、2009年の4カ月間で、64.7%も増えました。

中国とブラジルの貿易や投資が増大し、緊密な友好関係を相互に称賛する時代が始まっています。特に、中国にとって重要な、食糧や資源が豊富であり、安全保障上の問題をほとんど考慮する必要がないほど離れており、貿易だけでなく、長期的な投資が増えると予想されているために、双方の政治的な友好関係は国内の諸党派に共通の利益を示すでしょう。

21世紀は中国とラテンアメリカ(そして中東産油諸国)との関係が、これまでのアメリカとヨーロッパによる国際秩序の共同統治に代わるのでしょうか? ブラジルのLuiz Incio Lula da Silva大統領は、そうだ、という趣旨の論説をChina Dailyに載せました。両国は互いを「戦略的なパートナー」として認め合います。もしかすると意外なほど早く、世界のビジネスマンたちは、英語よりも、中国語とポルトガル語を学び、ドルよりも人民元を使うようになるでしょう。

いずれの地域においても、現在の支配的な影響力を保持したいと思うアメリカ政府・企業と、どのような問題が争われるのか?

China Daily 2009-05-20 Can China reduce foreign reserve risks? By Yang Mu & Chen Shaofeng

NYT May 21, 2009 China Grows More Picky About Debt By KEITH BRADSHER

(コメント) 中国はアメリカ財務省証券への投資を続けて、ドル安による損失を恐れているから、双方とも不安が高まってしまう。それは正しいでしょうが、現状は急速に変化しているようです。

アメリカの財政赤字は、中国の外貨準備増大だけでなく、むしろアメリカ人の投資、株式市場からのシフトが支えています。また、中国もアメリカ政府系の機関の社債ではなく、短期の財務証券を購入しています。

FT May 21 2009 Chinalco’s concession

FT May 21 2009 Singapore and Taiwan

(コメント) ChinalcoRio Tintoを買収しようとして、政府の反対にあいました。その事情は?

China Daily 2009-05-21 Stop the duplicity and give China a break By Wang Wanzheng

Asia Times Online, May 22, 2009 China's farmers a poor base for growth By Walden Bello

(コメント) Walden Belloは、中国政府が、その言葉ほど、輸出指向の工業化戦略を変更していない、と考えます。輸出部門や成長に関わる既得権は大きく、その生産設備や制度は短時間に転換できません。

重要な転換は、税制の改革と土地売買によって起きるだろう、と予想します。

The Times, May 22, 2009 China's accidental empire is a growing danger Bill Emmott

(コメント) スリランカで長年の反政府運動を続けてきたタミール人の武装勢力を、政府が最終的に鎮圧しました。しかし、その重要な理由に、中国がスリランカ政府に軍事援助を行ったこと、特に、爆撃用のジェット機を供給したことがあった、とBill Emmottは考えます。その交換として、中国海軍はスリランカの二つの港に補給基地を得たのです。

中国の成長は、アフリカや中東からの資源、エネルギーの輸入を増やしています。この重要な貿易ルートの安全を確保しなければなりません。軍事費を増やして、中国海軍はインド洋に進出します。同時に、マラッカ海峡やインド洋を封鎖された場合に備えて、中国南部から陸路でパキスタン、ミャンマーを経由し、物資を輸送するルートを確保しようとしているわけです。

アジアにはNATOや、ヨーロッパの安全保障体制the Organisation for Security and Co-operation in Europe (OSCE)がありません。軍備拡大競争がすでに始まっています。日本、インド、中国、アメリカを含むものとして、全力を挙げて制度構築を急ぐべきです。


WP Thursday, May 14, 2009

Defining 'Success' Down

By Richard N. Haass

(コメント) 外交や戦争において、何が「成功」でしょうか? イラクで、北朝鮮で、アフガニスタンで、Richard N. Haassは、「成功」の定義を引き下げることが正しい場合を指摘します。それは、経済的にも、軍事的にも、そのコストを考慮して判断されるべきなのです。完全な目標はしばしば幻想でしかなく、「敗北主義者」という批判は間違いです。

朝鮮戦争の際に、アメリカは中国との戦争(あるいは、核兵器の使用)を選択するべきだったでしょうか? ブッシュ大統領(父)はクウェートを解放するだけでなく、多国籍軍を率いてバクダッドを占領し、フセインを政権から追放するべきだったでしょうか? その息子のブッシュ大統領は、バクダッドだけでなく、北朝鮮も爆撃するべきだったでしょうか? ・・・


NYT May 15, 2009

Switch Off the Aid Machine

By ANDREI LANKOV

Asia Times Online, May 21, 2009

Kim Jong-il shifts to plan B

By Kim Myong Chol

Asia Times Online, May 21, 2009

Pyongyang chokes on sweet capitalism

By Donald Kirk

(コメント) 韓国の専門家ANDREI LANKOVは、北朝鮮がアメリカおよび世界から援助や資金を引き出すためにミサイルを発射し、プルトニウムを精製し、核実験を行った、と指摘します。ミサイルの発射によってもオバマ政権が北朝鮮の脅威を重視しなかった場合、さらに危険な威嚇を始めるかもしれません。長期的には交渉によって解決するしかない、と認めるオバマ政権ですが、そのような威嚇に対しても冷静さを保つでしょうか?

Kim Myong Cholは、北朝鮮の専門家です。金正日の計画は、ミサイル発射によって、その後mどう変わったか、を説明します。もちろん、金正日の意図を開設し、広める、という内容でしょう。

むしろ、ケソン工業団地を破壊してしまうとしたら、その方が重大なメッセージかもしれません。


WSJ MAY 15, 2009 What Happened at Tiananmen By BAO PU From today's Wall Street Journal Asia.

WSJ MAY 15, 2009 Zhao Ziyang's Revenge

Asia Times Online, May 16, 2009 Tiananmen's legacy lingers By Verna Yu

FEER May 2009 Zhao Ziyang's Testament by Paul Mooney

WP Sunday, May 17, 2009 The Tiananmen Diaries By Perry Link

Asia Times Online, May 22, 2009 China and catharsis in the words of Zhao By Verna Yu

(コメント) 天安門事件の真相は分かっていません。共産党の政治体制や、それ以前とその後の改革開放政策をどのように理解するべきか、最も重要な転換点でした。しかし、公式の歴史しか示されていません。

天安門の民衆を軍隊で弾圧したのは、強硬派の意見を受け入れたケ小平の決断だった。改革開放政策を推進したのはケ小平ではなく、趙紫陽であった。・・・2005年に亡くなるまで、趙紫陽は自宅軟禁におかれました。しかし、その秘密の証言が、極秘裏に国外に持ち出され、出版されました。


The Guardian, Friday 15 May 2009 The return of the bankers' bet Dan Roberts

NYT May 15, 2009 New Rules for Derivatives

NYT May 15, 2009 Danger in Wall Street’s Shadows By FRANK PARTNOY

The Guardian, Sunday 17 May 2009 Derivatives: the supply and demand problem Tetsuya Ishikawa

FT May 18 2009 Taming derivatives

(コメント) 発展途上諸国で繰り返し起きた通貨危機に対しても、「透明性」が魔法の言葉でした。透明性を高めれば、市場の規律が働く。モラル・ハザードを避けられる。

アメリカ市場にも欠けていたわけです。複雑なデリバティブの取引、さまざまな合成された金融商品、何度も再編・転売されて、分からなくなった債権債務関係。その根幹にある、2000年の商品先物近代化法the Commodity Futures Modernization Actにさかのぼって、オバマは改革を求めました。デリバティブを清算市場で取引できるようにして、担保を付ける。証拠金を積み増す、といったことを求めるようです。公的な監視機関が詐欺や価格操作を取り締まります。

さらに、デリバティブ取引にも資本規制をかけ、取引の記録と報告とを義務付けます。規制当局はいつでもデリバティブの取引記録をさかのぼって、システム・リスクの原因を究明できます。

Tetsuya Ishikawaは、ガイトナーの提案を支持しています。FTの短いコラムも、デリバティブを擁護したうえで、その監視を強めることに賛成しています。ただし、ガイトナーの提案は不十分であり、改善しなければなりません。

NYT May 17, 2009 The Way We Live Now By NIALL FERGUSON

(コメント) NIALL FERGUSONに言わせれば、規制緩和が金融危機を引き起こした、などと主張するのは愚かなことです。むしろ、市場を無視した規制が危機の下人であった、という方が真実に近いのです。

金融危機は新しいことではなく、世界中で、繰り返し起きました。アングロサクソン型資本主義にだけ起きるわけでもありません。危機の後には、もっと規制しなければならない、という話になって、多くの法律ができます。しかし、規制緩和は多くの利益をもたらしたことを忘れています。金融ビジネスは利用しやすくなったし、アジアの貧困を大きく減らしました。規制が厳しかった時代にも、激しインフレーションが起きて人々は苦しんだのです。

規制が必要だ、という人は、誰が、どのような規制を行うのが正しいと主張するのでしょうか?

NIALL FERGUSONは、さまざまな理由から消費者物価だけに注目して金融政策を決定し、金融取引が過熱するのを無視した連銀の金融緩和が長過ぎた、という点を重視しているようです。

The Guardian, Monday 18 May 2009 Was the bank bailout necessary? Dean Baker

(コメント) 「ゾンビー・バンク」を救済し続けるガイトナーの方針は正しいか? とDean Bakerは疑問を示します。なぜなら、銀行が倒産することでパニックになる、という恐怖を振りまいている専門家たちは間違っているからです。

銀行が倒産して預金者が取り付けに来たら、もちろん、すべての預金を整然と政府の責任で払い戻せばよいのです。それをどのように調達するか迷う必要はなく、現金を供給します。預金者たちは(一部を手元に置くでしょうが)安全な銀行に預け直すでしょう。それによってインフレを心配する理由もありません。

失敗した銀行を倒産させて、経営者たちを失業させるべきです。

NYT May 18, 2009 Notes From Another Credit Card Crisis By SUKI KIM

(コメント) SUKI KIMは、韓国のクレジット・カード危機を経験したことから、アメリカを連想します。韓国でもクレジット・カードで消費者が購入する習慣が広まり、サムスン、現代、LGなど、財閥系のカード会社が道でカードを配りました。人々の貯蓄率は急落し、社会が過剰な消費によって繁栄した後、破産や自殺が増えます。カード会社を政府が救済して、規制を厳しくしました。

May 19 (Bloomberg) Lap Dancers, Cocaine Didn’t Cause Credit Crunch Matthew Lynn

(コメント) Matthew Lynnは、かつてのトレーダーたちが金融ビジネスの愚行を振り返った本が多く出版されていることに言及しています。しかし、トレーダーたちが危機の原因ではありません。金融政策や世界的な不均衡の蓄積があって、彼らの愚行が奨励されるボーナス・システムと重なりました。

FT May 19 2009 Let battle commence By Gilian Tett and Aline van Duyn

(コメント) ガイトナーのデリバティブ規制は、ニューヨークやロンドンの市場を破壊するものでしょうか? 早速、業界のロビーイング団体を代表して、銀行家のDavid Clarkが提案を批判しました。必ずしも全面対立していませんが、業界からの攻撃は強まるでしょう。

The Japan Times: Tuesday, May 19, 2009 Crony capitalism has taken root in America By SIN-MING SHAW

(コメント) アメリカは10年前にアジアを批判したような特徴(クローニー資本主義)を、ますます帯びています。それは豚インフルエンザと同じように、未発達な資本主義圏から発生した病気が発達した資本主義をも犯しつつあるのです。そうであれば、中国経済が救世主のように賞賛されているのは、話が逆転しています。

The Japan Times: Tuesday, May 19, 2009 Misguided standards of global governance By LUCIAN BEBCHUK

China Daily 2009-05-19 Facing cold realities of global hot money By Yi Xianrong

Asia Times Online, May 20, 2009 The wreck of modern finance By Martin Hutchinson

(コメント) 金融危機の対策として、グローバル・ガバナンスの改善が求められていますが、それがアメリカのスタンダードを広める結果になることを、新興市場・企業は反対します。

Martin Hutchinsonは、デリバティブ取引を批判します。それはパスカルの考えた「ランダム」から発生しますが、金融市場の結果は「ランダム」ではありません。ノーベル経済学賞受賞者たちをデリバティブの市場拡大に利用して、大きな失敗をもたらしたわけです。エンロン、AIGの失敗、また、CDSの投機的な取引を指摘して、デリバティブの前提、「効率的市場」がいかに投機業者に利用されたか、批判しています。

May 20 (Bloomberg) Obama Should Go Easy With Banking Straitjacket Roy C. Smith

(コメント) Roy C. Smithは、オバマ政権のスタッフやガイトナーは、危機の原因として金融関係者を道徳的に非難し、いかさま法廷を繰り返している、と批判します。その一方で、金融救済によって得た銀行への影響力を利用し、政府が自動車産業の再編に政治的圧力をかけています。

銀行は、当然、こうした政治家の動きを心配し、不安を強めています。

デリバティブの規制も、銀行システムに関わるリスクを抑え、安全で健全なガバナンスを維持するために必要である、と銀行家たちは同意しています。連銀はそれを指導するべきでしょう。清算市場やヘッジ・ファンドの規制、市場の透明性を高める様々な法律が、かつてのグラス=スティーガル法に代わって必要です。

しかし、当面、政府は冷静に、思慮深い行動をとるべきです。アメリカ国民が従ってきた賢明なルール、すなわち、民間部門が成長を主導し、金融部門は革新と低コスト、効率性によって世界的な競争に勝ち残る、という考えを支持するべきだ、と。

FT May 20 2009 A market solution to secure banks’ future By William Poole

FT May 21 2009 Why public private plan has bankers squirming By Gillian Tett

(コメント) “Too big to fail”を認めた銀行システムは不安定である、とWilliam Pooleは現行システムを批判します。なぜなら、銀行が存続する条件は政府の介入であり、それは予め分からないから、銀行に不合理な行動を促すでしょう。

William Pooleは、銀行が劣後債を発行して、その借り換えを介して市場の判定を受け入れることを提案します。そして、すべての銀行に、債務総額の10%を10年の劣後債で発行するよう求めます。資本増強策と、銀行システムの健全化、市場による淘汰の安定的システムを築くことが目標です。

ガイトナーのPPIP(public-private investment plan)が進捗しない理由を、Gillian Tettは、銀行が損失を強いられるからだ、と考えます。ガイトナーのPPIP(政府と民間の共同投資)は、FDIC(政府の投資保険)と一緒になって、民間銀行と投資家のオークションを促します。そして、市場による不良債権処理を軌道に乗せるはずでした。


NYT May 15, 2009

Empire of Carbon

By PAUL KRUGMAN

The Guardian, Wednesday 20 May 2009

Green technology should be shared

Mark Weisbrot

WSJ MAY 22, 2009

The Climate-Industrial Complex

By BJORN LOMBORG

(コメント) PAUL KRUGMANは、中国の成長は続かない、と断言します。なぜなら地球環境を破壊してしまうから。

中国の温暖化ガス排出量が増えているのは、1996年から2006年にかけて、石炭による火力発電所が倍増したからだ、というのに驚きます。わざわざ排出量が増えることをしてきたわけです。ところが、中国は発展途上国であるから京都議定書の排出規制に縛られていません。KRUGMANが中国にも化石燃料の使用を減らすよう求めると、裕福な諸国は無制限にこれまで温暖化ガスを排出し続けたし、今でも、一人当たりの排出量では中国よりもはるかに多いのは「不公平だ」と反撃される、と書いています。しかも、それは正しい、と。

しかし、温暖化ガスを大量の排出する製品を消費したくない、という消費者には、中国製品を規制し、あるいは、関税をかける権利があるのではないか? ・・・中国は、もちろん、これを批判し、形を変えた保護主義だ、と反発します。WTOが(そして、バグワッティが)認める「自由貿易」の原則を侵している、と。

温暖化ガスの排出規制は、厳しい制裁をともなうようになるでしょう。それは「保護主義」か?

環境保護に関しては、「知的所有権」の制度化が論争になります。温暖化の防止や新エネルギー、エイズ治療薬など、特許によって技術や製造方法を独占することが社会的に見て望ましいのか、大企業と貧しい発展途上諸国の国民の利益とは対立しています。

中国やインド、ブラジルは、WTOを通じて裕福な諸国の大企業が求める「知的所有権」は環境技術の移転を遅らせ、医薬品が高価格になるとして、国連で問題にしています。特許制度は、企業に技術革新のための利益を確保することと、社会が新しい技術を広く・安価に利用できることと、この双方の利益をバランスさせている、と指摘します。グローバルなバランスがどこにあるのか? 国際機関によって答えが異なります。

BJORN LOMBORGは、こうした環境に関連するビジネスをめぐって政府や国際機関を動かす多国籍企業の浸透を、冷戦期の軍産複合体に倣って、「気候変動・産業複合体」a "climate-industrial complex"と呼びます。それは、新技術の開発に燃える「企業家精神」の発露であるより、自分たちの得た技術からできるだけ多くの利益を求める「レント・シーキング」、不労所得に居座るグローバル貴族たちの欲望です。

ヨーロッパの排出権取引で生み出された、この所有権と市場の規模は、数百億ユーロです。The partnership among self-interested businesses, grandstanding politicians and alarmist campaigners truly is an unholy alliance.・・・この「神聖同盟」に、人類の公益は勝てるでしょうか?

The Guardian, Friday 15 May 2009

A green deal for Africa

Kofi Annan and Nicholas Stern

(コメント) アフリカについて、前国連事務総長とイギリスの著名な専門家が気候変動の影響を指摘し、国際支援を提案します。


NYT May 16, 2009

Farms and Immigrants

(コメント) アメリカにおいて、その厳しい労働条件によって労働力が得られない分野の代表は、農業です。そのために、労働力の約75%が移民であり、しかも移民の受け入れ体制が崩壊してしまい、多くの非合法移民として労働しています。そのために、労働者たちは、ますます不安定で貧しい賃金しか得られず、他方、農場主たちも安定した労働力の供給を求めています。

さまざまな妥協によって可能になった、新しいAgJobs法案が提出されます。


FT May 16 2009

Big win for Congress

By John Elliott

(コメント) 国民会議派を中心とした与党の連合は、下院で改選された543議席のうち、過半数に迫る勢いです。会議派だけで205議席を超えるでしょう。それは予想以上です。マンモハン・シン首相は、ネルー以来、初めて5年の首相人気を務めた後、再選される人物になるでしょう。

多数を得た与党、特に会議派は、1.安定した政府を組織し、2.地方政党に閣僚のポストを譲り渡すことがなくなり、3.共産党などの左派に協力してもらうために政策を後退させることもなくなる、とJohn Elliottは歓迎します。

ヒンズー至上主義のBJPや、共産主義の左派だけでなく、不可触民を代表するthe Dalitも予想を下回ったようです。

FT May 17 2009

A chance to stitch together India’s diversities

By Ashutosh Varshney

CSM May 18, 2009

India's surprise is the world's hope

FT May 18 2009

Indian democracy has an ugly side

Asia Times Online, May 19, 2009

India opts for continuity, stability

By M K Bhadrakumar

NYT May 19, 2009

India's Challenges

FEER May 2009

India Finds the Center

by Salil Tripathi

The Japan Times: Friday, May 22, 2009

Life of coalition extended

By BIDYUT CHAKRABARTY

(コメント) 有権者、42000万人。パキスタンとの対立や、国内のテロリスト対策など。さまざまな問題があります。インドの選挙で国民会議派が勝利した、ということをどう考えるべきでしょうか? 中国とインドの将来は、日本の私たちとも深くかかわっています。

Ashutosh Varshneyは、会議派の勝利を、多言語と多宗教に対して、最も意識的に支持を広げて、国民政党を目指した点で評価します。

Over time, identity politics overwhelmed law and order, governance and serious policymaking. The shock delivered to such parties in northern India represents new citizen aspirations for governance and economic development, not simply a blind embrace of caste identity.

ヒンズー教のカースト制度に依拠したアイデンティティー・ポリティクスは、9%の経済成長の機会で目覚めた市民意識に敗北した、と考えています。そして、それはアジアや世界の安定化にも大いに貢献するでしょう。

インドは、中国に集中してきた直接投資の流れを、自由化と経済改革によって、引き付けることになるでしょう。世界最大の民主主義国家が、政治的安定性を実現できることを示したからです。

FTは、アメリカとインドが同盟関係を構築する上で、注意すべき点も指摘します。1.インドの政治家のあまりに多くが犯罪者である。2.インドの民主主義はアメリカと全く違う。3.貧困や識字率で見たとき、専制の中国よりも悪い。4.テロリズムを含む国内の不安定要因がある。

内気で、穏やかに話す、優れた知性を誇るエコノミストのManmohan Singh首相がインド政府の中心に安定的位置を占めたことは、多くの論説で称賛されています。インドの民主主義が、いよいよ中道・穏健派の選択を重視する政治に変化し始めた、という意味で。


WP Sunday, May 17, 2009

Repeating A 1930s Mistake?

By Sebastian Mallaby

May 20 (Bloomberg)

Economists Stuck in 1930s Need a Decade Update

Caroline Baum

(コメント) 1930年代の教訓は学ばれました。保護主義は採用されず、金融緩和が急速に進み、財政刺激策が可決されました。しかし、とSebastian Mallabyは考えます。1930年代と言えば、為替レートの調整に失敗したことです。競争的な切り下げが起きました。今も、為替レートは調整できていません。国際的な不均衡の調整が、アメリカ以外の国でどの程度進むのか、将来の為替レートに関する不安定化も予想されます。

・・・1930年代の教訓を学んだ、と自慢するのは早すぎる。

しかも、1930年代の危機の再現を阻止したと誇るより先に、1970年代のインフレーションを恐れる局面が迫って来ます。


WP May 17, 2009

The Sky Isn't Falling

Fareed Zakaria

FP Tue, 05/19/2009

Is our policymakers learning?

Daniel W. Drezner

(コメント) 危機が長引くのは、人々が1930年代の恐慌を恐れて、新しい行動を起こさないからか? 狼少年が多すぎる? Fareed Zakariaはアメリカ経済がグローバリゼーションの中で苦しんでいると考えますが、Daniel W. Dreznerは大恐慌との比較で楽観することを拒みます。


FT May 17 2009

Middle East test of Obama’s resolve

IHT May 18, 2009

Iran and Israel

By ROGER COHEN

FP Mon, 05/18/2009

The real reason Iran wants nukes

By Francesco Bastagli

WP Thursday, May 21, 2009

Bringing Iran In From the Cold

By Nader Mousavizadeh

(コメント) イスラエルとイランでは、地域の平和を維持するためにどちらが重要でしょうか? オバマとイスラエル首相、ネタニヤフとの会談が注目を集めました。オバマ政権はイスラエルが入植地から撤退することを求めています。ネタニヤフは反対です。

オバマ政権は、最終的に、中東の包括的な和平を目指しています。イスラエルを、パレスチナ独立国家やイランとともに、この地域安全保障に参加するよう求めています。しかし、クリントン政権が試みた和平案を、当時、ネタニヤフが政権にあったとき、壊しました。

ROGER COHENは、シーア派とスンニー派との対立、サウジ・アラビアがイランのイラクへの浸透を嫌って、むしろイスラエルの軍事的な優位がイラン(そして、ハマス、ヒズボラ)の影響力を抑え込むと考えている、と解説します。アラブもイスラエルも、イランを恐れる点で一致しているのです。その意味で、宗教政治の硬直性を避ける方法が、オバマに求められているのかもしれません。

イランは何を考えているのか? イラン政府や国民の意識において、Francesco Bastagli核開発という目標を解説しています。イスラエルが、あるいは、アメリカが、イランの核武装を阻止するためには戦争するしかない、という確信を持つのは避けられるでしょうか? Nader Mousavizadeh、イランを地域の安定化に含めることを求めます。


FT May 18 2009

Europe needs to stop its pandering to China

By John Fox and François Godement

(コメント) EUと中国とのサミット・首脳会談をもっと意味のある交渉に変えるべきだ、という論説です。中国は、EUが現状では発展途上国としてあつかっているけれど、すでにグローバルな影響を持つ強国の一つだから、と。


May 18 (Bloomberg)

Silicon Valley Meets Land With No Time to Waste

William Pesek

FT May 20 2009

What do Japan’s parties think?

FP Wed, 05/20/2009

Call: Economic recovery but political gridlock in Japan

By Ian Bremmer

(コメント) 日本がそのように議論されているのを見たことがありません。日本は常に、大企業中心、東京中心の政策や補助金で、地域経済の革新的企業を育ててきませんでした。福岡からそれを変えよう、という試みを紹介しています。

日本は人口100万人当たりで優れた技術革新を実現しています。それが大企業に集中していることが問題だ、とWilliam Pesekは考えます。アメリカのシリコン・ヴァレーについて、新興企業の育成、大学・公共研究機関、海外からも優れた頭脳を集め、研究開発費を与え、弾力的な労働力供給、逆転の発想、外国企業の投資、反独占法、などを指摘します。

日本には時間がありません。公的債務のGDP比率は200%に迫っています。高齢化する人口を支えるには、技術革新や成長が必要です。政治家たちは、もっと真剣に、福岡会議から学ぶべきだ、と。

FTも、今回のGDPの落ち込みについて、日本の成長モデルが破たんした、と考えます。政治家たちは選挙の争点にしなければならない、と。中国が責められるより、世界第二の経済大国を自慢する日本が、輸出主導の成長モデルを頼ることは失敗です。為替レートに振り回されることも失敗です。なぜ円高に対して国内の需要が刺激できないのか? 高齢化する人口、貧困層の増大が、その背景にあります。

FTは、自民党にも、民主党にも、明確な構想がない、と不満です。Ian Bremmerは、自民党と民主党の内部から中道派が脱退して第三党を作る、という意見を紹介します。

The Guardian, Wednesday 20 May 2009

An awesome warning

Will Hutton

FT May 21 2009

Why Britain has to curb finance

By Martin Wolf

FT May 21 2009

Progressive austerity: an agenda to protect the poor

By Richard Reeves

(コメント) 日本に照らして、イギリスを考えます。GDPが10%も減少する、というのは桁外れのショックです。そのはずですが、日本の政府やメディアはそれほど騒いでいません。

イギリスは自国の将来を見ているかもしれません。すなわち、不動産バブルの崩壊後、日本の銀行システムは損失の処理に苦しみました。銀行も企業もバランス・シートを回復するために投資を抑え、低成長と沈滞した経済を続けています。それはイギリスがこれから迎える経済問題です。

日本モデルを踏襲したアジア全体が、その間違いに気付くべきです。貯蓄、投資、輸出の先には、市場がなければなりません。アメリカではなく、自分たちの市場を拡大しなければ、再びアメリカの経済変動に従属するのです。

ところがアジアの民衆は政府を信用せず、税金や所有権の確実性を疑っています。地域の政治不安もなくなりません。アジアがもっと透明な、自分たちの消費を重視した資本主義に変わるまで、財政的な補償によって、危機の衝撃を吸収しなければなりません。

Martin Wolfは、イギリスが日本の道をたどると考えていないようです。イギリス政府は、1.世界的な規制を求め、2.金融機関の決定がその外部コストを内部化するように促し、3.金融業界の利益ではなく、革新と安全性とのトレード・オフを公益に従ってバランスさせ、4.比較優位に従って、経済構造を金融への過度の依存から解放し、5.金融ビジネスのリスクがイギリス政府の保証・監視できる限度内に抑えられるように注意せよ、と求めています。

危機に対してイギリス政府・労働党が採用したのは、単なる緊縮政策ではなく、累進的な緊縮政策である、とRichard Reevesは考えます。


WP Monday, May 18, 2009

Obama's Risky Debt

By Robert J. Samuelson

May 21 (Bloomberg)

Dollar Is Dirt, Treasuries Are Toast, AAA Is Gone

Mark Gilbert

(コメント) アメリカの財政赤字とドル暴落、インフレ、高金利、不況、保護主義、中国批判、・・・などは悪循環をなすでしょうか?

The Guardian, Wednesday 20 May 2009

Dick Cheney defends the dark side

John McQuaid

(コメント) チェイニー元副大統領が、アメリカ本土でテロ攻撃が起きるぞ、という脅しをオバマ元大統領に向けて繰り返すのは、保守強硬派の中に、アメリカ政府の実効力や信頼性を損ない、自己実現的な危機のシナリオを動かすことも覚悟しているセクトがいる、という意味でしょう。

世界の暗黒面を強調する政治が、破壊をエスカレートする条件はそろっています。


The Guardian, Monday 18 May 2009

As the political consensus collapses, now all dissenters face suppression

George Monbiot

The Guardian, Monday 18 May 2009

Disillusion, made rage

Helena Kennedy

The Japan Times: Tuesday, May 19, 2009

Parliament under attack

By DAVID HOWELL

(コメント) 警察官による市民への暴行。政治家による不当な公費請求。イギリス政治の正当性が大きく損なわれました。

イギリスのthe Power Inquiryは、なぜ人々は投票しなくなったのか、なぜ政党に参加しなくなったのか、という問いに応えようとしました。Helena Kennedyはその議長であり、上院議員です。そして、人々の政治的な無関心や富裕化ではなく、投票によって社会を改善することはできない、と考えるようになったことが原因である、と主張します。

政治家たちは選挙前の約束を守らない。政治家たちは社会を良くするよりも、利己心や出世に執着している。たとえ政治に関心があっても、人々は政治制度から疎外されている。その結果として、最近、政治家たちが行った不正請求に対する憤慨は、大衆暴動の域に達した広範な不信感になったのです。

政治家が何人かやめたり、監視や許可制度を厳しくすることが問題ではない。議会システムの全体、根幹から変える。憲法も、比例代表も、政党の資金も、ロビー活動も変える。委員会の権限を強化し、議会の多数派工作を減らす。議員の正当な報酬を高め、参加型の民主主義を増やし、地方政治によって新しい政治家が誕生する道を開く。・・・

DAVID HOWELLは、有権者の不満と議会の変質を懸念します。

The Guardian, Wednesday 20 May 2009

A new politics: Fixing MPs' expenses is not enough

A new politics: Holding the executive to account Martin Kettle

A new politics: Rewrite lobbying rules Peter Preston

A new politics: Reinventing the party Andrew Rawnsley

A new politics: Build a constitution Timothy Garton Ash

A new politics: Ditch the monarchy Gary Younge

A new politics: Clean up party funding Seumas Milne

A new politics: The answer lies in local democracy Simon Jenkins

A new politics: Squeeze the size of the Commons Polly Toynbee

A new politics: Reorchestrating the second chamber Will Hutton

A new politics: Empower the committee system Michael White

A new politics: Earth to Planet Westminster Hugh Muir

A new politics: Quotas for candidates Madeleine Bunting

(コメント) 政治家や政治システムへの不満と不信が爆発したことに対して、改革を求める声は強まっています。個々のケースを超えて、制度を改革せよ、という要求に政治が答えるのかどうか、イギリスの政治的革新能力を注目したいです。

特に、政党システムや政治献金を変え、明確な憲法を示し、王制や上院を変え(あるいは廃止し)、地方政治を変える、というのは、日本の議論と(形式として)そっくりです。・・・日本の政治家たちも、真実委員会a truth commissionを設けて証言させ、政治活動における違法・背信行為を告白させてはどうでしょうか?

NYT May 21, 2009

Poor, Poor Parliament

FT May 21 2009

Not quite a revolution but, with luck, the end of an era

By Philip Stephens

(コメント) 公費によって政治家たちが、自分の庭の改修工事をしたとか、(女性議員が)夫の(日本発)ポルノ映像を購入したとか、・・・NYTは、情報公開が進んだことを称賛しつつ、イギリスの議員給与が低すぎる点にも同情します。

莫大な公費によって金融機関が次々に救済されたことは、それだけ一層、政治家の判断に国民の強い信頼が求められている、ということを知らねばなりません。そして民衆は、次に、王室の請求書にも詳しい監視のメスを入れるかもしれません。


FT May 19 2009

This crisis is a moment, but is it a defining one?

Martin Wolf

(コメント) 金融危機を経て、われわれは何を知り、何を知っていないか?  Martin Wolfは、危機が「市場主導のグローバリゼーション、金融資本主義、西側の支配体制から、保護や規制によって勃興するアジアへ転換する、世界の分水嶺である」という見方と、「愚行の引き起こした危機であり、重要な意味など無い」という見方の、中間的な立場を選択します。

経済について、1.アメリカ発の金融危機で世界が震撼しました。2.1930年代の世界恐慌以来、最悪の危機です。3.輸出の落ち込みを介して世界に広まりました。4.金融政策と財政政策はかつてない規模で駆使されました。5.その効果があって、危機は最悪の時期を脱し、信頼を回復しつつあります。

アメリカは回復をリードするでしょう。しかし、それ以上に、中国が世界経済の中で最優秀な成果を示すでしょう。問題は、家計や企業が債務を圧縮し、貯蓄を増やすことの影響や、財政赤字が急速に増大する影響が分からず、そして、金融政策がインフレを招かずに正常な状態に回復できるか、分からないことです。

金融に関して、完全に回復するには数年を要するでしょう。しかし、金融ビジネスが繁栄の中心にあるという黄金時代は終わりました。信用が収縮し(デレバレッジ)、バランス・シート不況が続くことの影響は分かりません。金融部門を効果的に規制する体制も分かりません。しかし、政治家たちは規制に熱心であり、その結果は、特殊な利益団体による政治的な影響が支配的であろう、というのがMartin Wolfの危惧です。

市場経済が圧倒的に重視される時代は終わりました。世界各地で、異なる資本主義が競い合うでしょう。グローバリゼーションがどうなるのかも分かりません。金融や貿易の面で、政府系資金が増大し、グローバリゼーションを後退させるのは、特に新興市場にとって大きなコストを意味します。

しかも、新興市場は間違った教訓を学ぶでしょう。赤字を抑制して、外貨準備を増やすことが成功をもたらす、という教訓です。それは世界の不均衡をさらに増幅します。しかし、この原因は、国際通貨制度の欠陥にあるでしょう。国家が注目を集めますが、それは財政刺激策が有効な時代に戻るのではなく、財政赤字を減らすために経済活動や市民生活が政治家たちに脅かされる時代になることを意味します。

世界政治、そして、国際秩序はどうなるのか? 金融システムの再建方法にもよりますが、アメリカの影響力は低下します。中国が、世界の政策決定に占める重要性はすでに高まっています。グローバル・ガバナンスの改善が注目を集めています。

アメリカの一極集中型世界は失われ、米中関係が中心となった、中国やインドの異なる資本主義をめぐる複雑な世界が現れる、とMartin Wolfは予想します。資本主義は滅びることなく、異なる局面に入るのです。


FT May 19 2009

US free trade promises must be honoured

By Gary Hufbauer and Jeffrey Schott

(コメント) オバマ大統領は、国際的なルールに従って、財政刺激策を実行する、と語りました。しかし、アメリカはその後、国際的な約束を損なっています。アメリカはクライスラーやGMの救済に補助金を与えて、世界の自動車産業再編・競争に介入しています。アメリカはWTOやNAFTAによって、差別的な扱いを禁じていますが、議会はそれを求めています。アメリカが自国産業を保護しても、報復される恐れは少ないでしょう。しかし、世界各地で、アメリカの行動が模倣されるでしょ


The Guardian, Wednesday 20 May 2009

Make your revolution at a round table, but add a truth commission

Timothy Garton Ash

(コメント) 20年前のポーランドにおける無血革命(あるいは、名誉革命!)は、軍・政府と反政府・連帯、そしてカソリック教会、という3者による妥協と合意、流血を避けたいという願いによって達成されました。1989年にポーランドが示した無血革命の可能性は、東欧諸国に広まり、1789年以来の暴力革命とは異なる、新しい政治的権威を確立したのです。それは“the new anti-Jacobin model of revolution”でした。

政府はハード・パワーを支配していたし、ソビエト連邦や他の共産主義諸国から圧力を受けていました。他方、連帯はソフト・パワーを得ていたし、軍事介入に抵抗する暴力を呼びかける正当な政治的権威を得ていたでしょう。しかし、彼らはそれを行使しませんでした。彼らは互いの言葉を信用する教会を加えて、交渉のための巨大なテーブルの席に着くことを選択したのです。

交渉による無血革命には正義がない、とTimothy Garton Ashは書きます。新政府は旧政府を激しく糾弾し、かつての権力者たちを断罪して処刑を繰り返すことはない。民主主義を勝ち得たことで、人々は厳しい政治状況に置かれた複雑な人間性にも同情を示し、むしろ国民のために罪を認め、その後の和解を促すメカニズムを示します。

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The Economist May 9th 2009

Barack Obama and the carmakers: An offer you can’t refuse

Nepal’s political crisis: Two armies into one won’t go

Banyan: A watched frog never boils

Egypt’s pigs: What a waste

(コメント) アメリカ、ネパール、台湾、エジプト。これらの論説は、市場社会に政治が強力に介入する姿を描いています。オバマは自動車産業の整理・再編を要求し、ネパールの政治勢力は軍の統合を、台湾は中国からの貿易や観光客、投資を増やすために統合化を進め、エジプト政府は少数民族のコプト人がゴミ集めと豚の飼育を行うことに強制介入しました。


The Economist May 9th 2009

The French model: Vive la différence!

Germany’s economy: The export model sputters

Fiat’s ambitions: The Italian solution

American consumers: Off their trolleys

Economics focus: Opening the floodgates

(コメント) 危機における資本主義の多様性、ということを考えさせる論説です。フランス、ドイツ、イタリア、インド。

The Economistは、フランスの国家主義やドイツ(そして日本)の製造業・輸出重視モデルが嫌いであり、インドの官僚統制経済が自由化されて成長したことを絶賛し、イタリアの企業家が世界の自動車産業を再編できるか、期待と不安をにじませます。アメリカの消費者がドルと金融緩和のテコを失った今、資本主義間の厳しい競争が長期化するのは当然だと思います。