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IPEの風 5/25/09
環境問題や地球温暖化について、ヨーロッパは規制や課税を重視し、アメリカとイギリスは排出権取引のような市場型の解決を模索していた時代がありました。
その後、何がどうなったのか・・・ EUが先に排出権取引を含む京都議定書を推進し、地球規模の排出権市場に向けた情報と取引実績を重ねつつあります。アメリカはもっと民間部門で、エンロンの倒産にもかかわらず、一層多くの市場取引を組織しているのでしょう。地代と同じかもしれませんが、温暖化ガスの排出をめぐって、所有権、市場、技術移転、投資、利潤・・・ という関係が、人間社会によって作り出されている現実に驚きます。
今週紹介したP.クルーグマンの論説は、中国の経済発展が地球の環境を破壊してしまう、と注意しています。しかし中国は、裕福な諸国の作った国際規制に従いません。勝手に地球を破壊しておきながら、貧しい諸国の成長を損なう権利など無い、というわけです。越前クラゲに劣らず、黄砂や様々な大気汚染、海洋の汚染、水産資源の枯渇、など、日本は韓国とともに、中国の成長による影響を(プラスもマイナスも)非常に強く受ける国の一つです。
温暖化ガスの排出規制は望ましいし、その除去技術を普及し、温暖化に結びつかないエネルギーの開発や供給体制に投資することも(人類にとって)望ましいでしょう。それが、国境(政治的分割)や石油価格の変動によって妨げられているなら、地球規模の制度的な枠組みを構築することが必要(そして可能)ではないか? 排出権取引に限らず、温暖化ガスを含む、環境技術革新の実現を促す市場を地球規模で組織することです。
もう一つ、金融システムの報酬体系とデリバティブの規制が議論されています。前者の焦点は、社会的に見て「正当な」報酬です。金融取引を仲介するビジネスが、それ自体は富を増やす生産活動とは思えないのに、莫大な報酬を得ることができる本当の理由とは何でしょうか? おそらく、銀行や金融部門がなくなっても、あるいは、貨幣がなくなっても、生産活動は変わることなく続けられるでしょう。
しかし、市場を介して情報を得られないなら、個々の生産者は習慣として生産規模を維持するしかないでしょう。さまざまな変動に対して、資源配分や技術的な適用を考えることが困難になります。市場では、生産活動の調整を率先して選択した人々は、それが結果として正しかった場合、より大きな利益を一時的に独占できます。こうして利潤をめぐる競争によって、社会の調整過程を促す点で、技術、広告、金融なども、富を増やすことに貢献するわけです。
後者の要点は、法的な強制による監視と「透明性」に向かいます。金融危機の元凶と非難されるデリバティブが、金融革新の普及として定着する条件は、それにふさわしい市場制度の構築や監視体制の問題なのでしょう。そこで注目されるのは、ユニタスでも、バンコール・・・あるいは、アキュー(まるで、阿Q!)でも、国家を超えた人工的通貨単位です。金融取引が果たす長期の社会的な貢献を、実物経済の生産活動や富から切り離して、正当に評価するシステムを築いてほしい、と思うのです。
そして、もう一つ、アジアの地域安全保障についても、国家を超えて、新しい政治システムが対応しなければなりません。ナショナリズムを利用して政治的権能を独占する者たちを許してはなりません。「(日本と中国は)1000年も憎しみ合ってきたのだから、いまさら変わるはずがない。」・・・などという暴言を吐く麻生氏が首相であるのは、日本やアジアにとって甚大な損失です。安倍・麻生が日本政府を組織できたのは、自由民主党という政治・政策集団が極端に右翼的なテーマとイデオロギーでしか意見を統一できなくなったからだ、と思います。
自民党を分解して、政策集団による、さまざまな政治党派の離合集散をやり直す必要があるでしょう。それは、何度も試みられて、失敗したことです。だから、もうやりたくない? 一部の政治家はそうかもしれません。しかし、国民としてはどうでしょうか? 何度も失敗して、今のような政治システムしか得られなかった国民は、政治を無視するだけで良いのでしょうか?
反貧困ネットワークが示したように、呼びかけ行動する者があれば、可能性は開くのです。イギリス人が(そして、ポーランド人が)優れて示したような、大衆抗議を組織する政治的センスを日本人も示してください。・・・そこで、せめて、デモのシュプレヒコールを考えてみました。「刷新の気概があるなら、自民党をやめろ! 無能な政府を許すな! 民主党が政権を執るなら、次の選挙を恐れよ!」 ・・・
さまざまな社会運動、市民団体、救援組織、その他の集まりをつないで、政治の刷新を求める主催者はいませんか? インターネットで募金を集めて、各地の連絡網や集会所を確保してください。ポーランドやミャンマー、そして天安門のように、国会前まで歩いて集合する政治的市民は、日本にどれくらいいるでしょうか?
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