今週のReview
5/18-5/23
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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******* 感嘆キー・ワード **********************
ストレス・テスト1,2、 香港と上海の統一、 アジアの安定化基金、 中国のバブル、 金融政策と制度の刷新、 インフレーション、 日本を革新せよ、 オバマの増税案批判、 オーストラリア、 IMFの新しい融資政策
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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
May 6 (Bloomberg)
Summers, Geithner Are Silent as IMF Loses Grip
William Pesek
(コメント) サマーズ、ガイトナーが、かつて拒んだ「アジア通貨基金」を、アメリカ発の金融危機に振り回される中で、アジアに再現される姿を、今度は、見守るしかないのも仕方ないでしょう。アジア諸国は、彼らが嫌ったように、IMFやアメリカに頼らず、互いの融資を利用して金融危機による不況を緩和しているのです。
1200億ドルという融資枠は金融危機に対して重要な意味を持たないでしょうが、その延長には日中の3兆ドルという外貨準備がアジアにあります。ただし、アジア諸国は「チェンマイ・イニシアティブ」を誇る前に、その融資条件や承認手続き、互いの調整過程をどのように促すべきか、について合意を積み重ねる必要があるはずです。そのような交渉が進んでいるでしょうか?
かつて、マレーシアのマハティールがソロスを批判しました。今では、ソロスがアメリカの保護主義的な態度を批判しています。アジアが早期に景気回復に向かうとしたら、アメリカは黙ってそれを歓迎するしかありません。
FT May 6 2009 Testing times for Geithner’s plans
FT May 6 2009 Bank stress tests
(コメント) 金融危機は21カ月に及び、アメリカの銀行の多くが支払い不能であろう、と見られています。アメリカ政府が公的資金を使って銀行を整理・強化し、景気回復に道筋を付ける、という目的で行われる「ストレス・テスト」(厳しい不況を想定した際の銀行の資産悪化と自己資本不足を査定・評価する)は、議会に反対されれば財源がないまま市場の不安を増幅することになりかねません。結局、銀行は健全だ、と繰り返すことになるわけです。
たとえばFTは、将来のシナリオに採用された失業率は楽観的すぎる、と批判します。査定モデルの前提をできるだけ公開して、透明な形にしなければ、単なる政府承認のバラマキでしかない、と。不信感が強まれば、危機は悪化するでしょう。
しかも、アメリカの金融システムは銀行による資金が全体の3分の1でしかありません。また、ヨーロッパでは銀行の健全さを審査する計画もありません。
10年前の日本とそっくりだ、とFTは書きます。自分たちで書いてきた批判を、自分たちの金融システムで確かめることになります。世界中にゾンビー・バンクの群れ、と報告し続けるのでしょうか。
BBC 2009/05/07 US banks 'safe from insolvency'
BBC 2009/05/07 Have the tests passed the test? By Greg Wood
NYT May 7, 2009 How We Tested the Big Banks By TIMOTHY GEITHNER
Banking on stress Richard Adams The Guardian, Thursday 7 May 2009
(コメント) ガイトナー財務長官の趣旨説明は明快です。細部については議論があるでしょう。しかし、トップとして方針を示す点で、アメリカ政府は優れた対応を示していると思います。
Richard Adamsは、その損失額に疑問を示します。主要19銀行の損失額が6000億ドルというのは少なすぎる、と。しかし、以前に比べて経済の最悪期は過ぎたかもしれません。その意味では、審査の時期が幸いしたのです。
銀行を破産処理するか、国有化して整理するか、その二つの極の間で、さまざまな延命策と改善策が議論されてきました。オバマ政権はその中間の道を選び、時間をかけて市場の回復もしくはリフレ政策の効き目を待つ、という姿勢です。それは日本のバブル処理と似ています。
LAT May 8, 2009 Anxiety over 'stressed' banking system
Stress Tests Forever By Sebastian Mallaby WP Friday, May 8, 2009
Stress Tests WP Friday, May 8, 2009
NYT May 8, 2009 Stressing the Positive By PAUL KRUGMAN
FT May 8 2009 Banks critical of stress-test skeptics By Francesco Guerrera and Saskia Scholtes
(コメント) Sebastian Mallabyは考えます。一時的に銀行の株価が回復したことで喜ぶよりも、「ストレス・テスト」の成功が将来の金融ビジネス拡大とバブル抑制のルールにつながることを重視するべきだ、と。しかも、現代のグローバルな金融ビジネスに対応したシステムの健全性を確保しなければなりません。
銀行(と政府)は、金融システムを超えて、更に、将来のリスクを評価した行動をとれるでしょうか? ドル暴落? 北朝鮮の崩壊? ・・・
PAUL KRUGMANは、このテスト結果で誰が安心できるか、と問います。政府には、銀行の資産を本当に査定するだけのスタッフも予算もなかったのです。銀行が示す資料を信じるしかありません。むしろ、この発表で重要なことは、オバマ政権が「マドル・スルーmuddle through」路線を選択した、ということです。
銀行は高い金利で融資しながら、実質的に無利子の資金を得ています。だから、十分に時間がたてば銀行の収益は回復するでしょう。
しかし、その路線には大きなリスクがある、と指摘します。市場は、銀行の健全性を信じていないからです。金融システムは回復せず、景気は悪化し、銀行の資産がさらに損なわれる、というリスクが存在するのです。
連銀からの融資でフレディー・マックやファニー・メイが活動しているように、他の銀行も活動するでしょう。しかし、それは日本が長期にわたる停滞を容認したのと同じ姿勢です。最後に政府が銀行を再建しなければならないとき、その公的資金投入はもっと増大する、と警告します。
さらに重要なことは、金融システムの改革が失敗に終わる、ということです。彼らは再び同じことをやるでしょう。
Geithner's stress cases BG May 8, 2009
WSJ MAY 8, 2009 Stressed for Success?
NYT May 10, 2009 Stress Tests Are Over. The Stress Isn’t. By GRETCHEN MORGENSON
NYT May 10, 2009 After the Stress Tests
The American Banana Republic and the Zombie Economy Asia Times Online, May 12, 2009 By David Goldman
Relief from the stress tests Dean Baker The Guardian, Monday 11 May 2009
WSJ MAY 13, 2009 Geithner's Revelation
FT May 6 2009
A delicate detente
By Robin Kwong
NYT May 14, 2009
Exuberance in Taiwan as Ties With China Warm
By JONATHAN ADAMS
(コメント) 中国と台湾の関係は、独立をめぐる険悪な牽制と威嚇から、世界経済危機においても潤沢な資本や市場を提供できる魅力によって台湾国民の不安を払しょくできるか、という問題に転換しました。台湾はそれに抵抗できず、中国の一部になることを認めるでしょう。
FT May 7 2009
All must play a part in fighting climate change
By James Baker
(コメント) 日本にとってはプラザ合意をまとめた人物ですが、ここでは気候変動の抑制に向けた国際協調を促す新しい合意を提案しています。
大統領と議会は国内の合意を形成し、法律にします。それは排出権取引を正しく制度化することも含みます。さらに、主要国がこの枠組みに参加するよう求めます。重要なことは、主要国が参加しなければ、この枠組みは実現しないこと、しかし、アメリカは関与を明確にして、後退させないことです。
森林や農耕地に関する国際合意も含めます。さらに、科学的な研究を推進します。
FEER May 7, 2009
Nepal’s Imperiled Democracy
by Nicholas Owen
The Japan Times: Friday, May 8, 2009
Troubling signs in Nepal
(コメント) ネパールの反政府ゲリラが選挙に参加して勝利し、王政を廃止して政府を組織した、という変化に勇気づけられましたが、その後、政権は崩壊し、民主的な変革は失敗しつつあるようです。合意の最重要部分、ゲリラと政府軍とを統合することができません。
首相となったPrachandaは将軍を解任しましたが、将軍はこれを拒んで、大統領が支持したため、首相が辞任しました。しかし野党には、新しい首相を決める力がありません。ゲリラ兵たちは、まだ、国連の管理するキャンプにいます。政府軍が兵士を募集し始めて、再び内戦への緊張が高まっています。
FT May 8 2009
US belatedly learns lesson from Japan
By Gillian Tett
FT May 8 2009
World discovers it is still breathing
FT May 14 2009
Geithner could do worse than emulate Japan
By Peter Tasker
(コメント) 「数字ではなく、信頼が足りなかった」と日本の元官僚はその経験を振り返ります。ガイトナーには信頼があるでしょうか? Gillian Tettはアメリカ政府が検査官を派遣した、と強調しますが、信頼に足る検査であったと市場は認めていないように思います。公的資本の注入も強制的に行うことが必要条件だった、とGillian Tettは考えます。・・・私の印象は少し違いますが。
最悪期は過ぎ去った、という安堵感もあるようです。非正統的な手法も使って、ストレス・テストが終わっただけでも、市場は最悪期を乗り越えたわけです。ひとまず、金融市場としては。FTは、1930年代の失敗を回避した点で、主要国政府の取り組みを称賛しています。
「すべての銀行家は嘘つきである」と、Peter Taskerは認めます。銀行は預金者に現金を用意できるはずがないのに、それを前提しているからです。つまり、銀行システムの危機とは、基本的に、信頼の問題なのです。
ガイトナーは、銀行の不安を解消する上で、スウェーデンのような透明なやり方より、日本のような不透明なやり方を選びました。なぜなら、現在の条件ではそれが好ましいからです。スウェーデンは小国で、相対的に大きな輸出部門を持っていました。だから、通貨価値が減れば輸出が伸びて、信頼を回復します。世界全体として、この選択肢は採れません。
日本は、いくつかの銀行を救済し、公的資金も注入しましたが、それで解決できたのではありません。救済を拡大し続けて、すべての金融機関が、たとえ汚れていても、決して倒産しないということを市場に信じさせたとき、ようやく危機は終わったのです。
アメリカには、この方法も採れないはずです。中国がドルを保有し続けるとは限らないからです。
The Guardian, Saturday 9 May 2009
We need a global tax plan
David McNair
(コメント) 国際的な課税の不透明性が、金融ビジネスに桁外れの所得や投機をはびこらせたのではないか? 資産家や多国籍企業は、タックス・ヘイブンを利用して富を移転しているのではないか? 国際協定を結ぶことで、課税する能力の低い貧しい国にも、経済活動に見合った税収が確保できるのではないか? 会計基準を統一し、所得や税収に関して情報の共有を進めることで、より公平な課税が行われるでしょう。
The Guardian, Saturday 9 May 2009
This expenses shame crowns Labour's failure on fairness
Polly Toynbee
(コメント) 国民の10%を占める年収4万ポンド以上の富裕層と、それ以外の人々との差が拡大しています。ますます拡大する不平等に対して無感覚であった労働党は政権を失って当然だ、と厳しく批判します。有権者たちはこの不満を、保守党やBNPへの投票にするでしょう。
The Times, May 11, 2009
Right and Wrong
(コメント) イギリス議会やヨーロッパ議会の選挙で、BNP(イギリスの極右政党)の躍進が起きるかもしれません。イギリス社会が、金融危機や不況の不安、倒産の危機に怯えているからです。失業や貧困を解消する政策論争より、人々は、移民労働者が多すぎる、イスラム教徒が多すぎる、福祉手当の不正請求、EU帝国の干渉政策が悪い、という宣伝に共鳴します。
The Guardian, Sunday 10 May 2009
Iceland warms to the EU
Gwladys Fouché
(コメント) 選挙に勝利したJohanna Sigurdardottir首相は、EU加盟に向けた国民投票を行うでしょう。彼女にとっては、EU加盟とユーロこそが経済危機を終わらせる道筋を与え、その後の長期的な繁栄の条件となるからです。問題は、EUの共通漁業政策により自国の資源が失われるのではないか、という不満です。
The Observer, Sunday 10 May 2009
Do not be fooled by green shoots in the City – our pain will continue
Will Hutton
The Japan Times: Sunday, May 10, 2009
Here comes a downsized 'norm'
By KENNETH ROGOFF
The Guardian, Tuesday 12 May 2009
Armageddon averted
Larry Elliott
(コメント) 世界の金融市場に広まった楽観的な予想に対して、Will Huttonは構造的な調整がまだ始まったばかりである、と慎重さを求めます。そして、KENNETH ROGOFFは長期的な成長の減速を指摘します。
Larry Elliottは、回復過程の判断について、中央銀行、中国、労働市場、アメリカの住宅市場、に注目します。
FT May 10 2009
Like a fish, Europe is rotting from the head
By Wolfgang Münchau
(コメント) 中国やアメリカでは、政府が積極的に危機対策や景気刺激策を行っています。しかし、欧州委員会はEU市民によって決めた政府ではありません。EUには、互いに対立する各国政府しかないのです。EUの対策を示せるのは、ECBのみです。
FT May 10 2009
Amid economic rubble, Shangkong will rise
By Jeffrey Garten
(コメント) 成長が回復すれば、世界の新しい金融センターが誕生する、とJeffrey Gartenは予想します。それは、ニューヨークでもロンドンでもなく、上海と香港が協力して築く「上港(シャンコン)“Shangkong”」です。・・・
中国は世界最大の債権国である。世界でもっとも自己資本の充実した金融機関があり、資金調達を望む新興企業の集積がある。急速に増大する中産階級が増大し、高度な金融サービスが繁栄している。もちろん、彼らに複雑なデリバティブなどはいらない。
人民元は国際取引を規制されているが、中国政府はドルを批判しており、人民元はドルに対して強くなってきた。いくつかの国が人民元を準備通貨にすることを許している。
金融センターが一気に飛躍するのは、中国政府が香港と上海を一つの金融センターとして統合するときだろう。二つの都市は750マイルしか離れていない。最新の情報・輸送システムが二つの都市を完全に統合化し、共産党政府が共通のインフラと規制を敷くだろう。
危機を経ても、英米が金融システムを再建することができれば、地政学的に見ても大きな影響力を維持できる。しかし、そのためには、すぐれた専門家や労働者を集積できるように、良質の教育や魅力的な文化を育て、規制や課税の質を高度に維持しなければならない。ところが英米の政治は、逆に、そのようなことに十分な関心を払おうとしない。
それは、将来、大きな代償を支払うことになるのだ。
China Daily 2009-05-11
Exchange reserve to boost Asian confidence
By Yang Tao
IHT May 12, 2009
The Confucian Party
By DANIEL A. BELL
WSJ MAY 12, 2009
China's Consumption Conundrum
By MICHAEL PETTIS From today's Wall Street Journal Asia.
FT May 12 2009
Chinese exports
FT May 13 2009
Mixed signals from Asia’s animal spirits
By David Pilling
(コメント) アジア諸国が危機を回避するために1200億ドルの外貨準備をプールする、と発表しました。特に、その割合が興味深いです。日本は32%ですが、中国と香港を合わせて同じ32%を占めます。韓国はその半分の16%です。東南アジア諸国は全体で20%になります。
・・・日本は中国より大きい。しかし、香港を加えるから実際は同じだ。・・・韓国は日本と中国の間に立ってバランスを取る。日本は韓国を引き寄せる(と思っている)かもしれない。しかし、中国は東南アジアの20%を動かせる。・・・こうしてEU内のバランスを考えた制度化と同じものが、アジアにも実現するでしょう。これを動かし、活発な交渉を重ねて成果を示すべきです。
DANIEL A. BELLは、中国の政治改革が、「独裁」と「民主化」をめぐって議論されることに反対します。中国はそのどちらでもないでしょう。むしろ「儒教による支配」を目指す、と考えます。中国共産党ではなく、中国儒教党です。
MICHAEL PETTISは、中国政府が強行する銀行融資の急速な拡大という刺激策が、1990年代の不良債権問題を再生しつつある、と警告しています。なぜなら、中国の30年間に及ぶインフラ投資と工業生産能力の拡大は、国内貯蓄と輸出増に依拠した成長モデルであったからです。金融危機の後に、そのような世界市場が再建されるとは思えません。中国はアメリカではなく、自国の消費者に頼るべきなのです。
輸出と設備投資による成長というアジア諸国の経済構造が変化するのかどうか、少なくとも、その痛みを味わったことは間違いありません。いわば、第二のアジア通貨危機ショックです。
NYT May 14, 2009
The Almighty Renminbi?
By NOURIEL ROUBINI
NYT May 14, 2009
China’s Heart of Gold
By VICTOR ZHIKAI GAO
(コメント) NOURIEL ROUBINIは、たとえ時間はかかるとしても、ドルに代わって人民元が国際通貨の地位に就く、と認めます。その場合、アメリカは低金利で対外債務を維持することができず、またドル安が債務の返済コストや輸入財の価格上昇という調整コストをもたらすでしょう。今のように、いくら債務が増えても負担は外国の債権者が負う、という考えを捨てねばなりません。
今のうちにアメリカは、不要な住宅や危険な金融商品の開発に投資するのではなく、インフラの整備や再生可能の資源の開発、そして人的資本の形成に、もっと投資しておかねばならない、と主張します。
ドル建て資産の価値が減少することに不満を持つ中国政府が、金保有を増やすかもしれません。それは政府よりも、民間企業や投資家の間で、アメリカ・ドルを市場取引のシンボルとして尊重する気持ちが、確実に、失われていることでも示されます。
China Daily 2009-05-14
US' China policy ought to help the region
By Dan Steinbock
May 15 (Bloomberg)
China’s Stock Bubble Passes Stiglitz Acid Test
William Pesek
(コメント) オバマ政権で、米中関係は緊密に協力を模索するでしょう。それは日米の戦略的な関係がアジア地域全体について見直されることと並行して行われます。すなわち、日米中が含まれた地域安全保障と市場統合が模索されるのです。日本の保守的政治家や官僚がこの調整を躊躇し、遅れを取るかもしれません。
William Pesekは、中国の株価は明らかにバブルである、と指摘します。中国のバブルが破裂するときはいつか? 何が起きるのか?
金融危機が去って、世界の景気が回復しても、そのとき先頭に立つ中国が見るのは1990年代や21世紀に入って数年続いた高度成長ではないようです。世界に「豚インフルエンザ」だけでなく、「日本病」が蔓延した、長期停滞の経済です。スティグリッツが太鼓判を押したように、中国政府は銀行や企業に投資を再開させ、真っ先に景気回復を実現するでしょう。
しかし、バブルは崩壊のときを待っています。
The Japan Times: Sunday, May 10, 2009
The audacity of optimism in the Middle East
By KISHORE MAHBUBANI
The Times, May 11, 2009
Time for a Deal
The Guardian, Monday 11 May 2009
For Obama and Netanyahu, it's showdown time
Simon Tisdall
The Times, May 12, 2009
A Middle East miracle might just happen
FT May 14 2009
America must deal first with the threat from Iran
By Efraim Halevy
(コメント) 世界の経済危機を克服する希望はどこにあるのか? それは、WTOの貿易自由化交渉を成功させることよりも、むしろイスラエルとパレスチナの中東和平を成功させることにある、とKISHORE MAHBUBANIは指摘します。なぜ成功すると思うのか? それはMAHBUBANIがネタニヤフとヒラリーの人物を知っているからです。歴史的な転換を可能にする組み合わせが、その環境とともに、ようやく訪れた、と。
The Timesの記事は、その周辺諸国の事情を紹介しています。
WSJ MAY 11, 2009
The Sovereign Wealth Solution
By SANG YONG PARK and LESLIE YOUNG From Today's Wall STreet Journal
(コメント) SANG YONG PARKたちは、金融危機の原因の一つは、政府による非経済的な判断に支配されたアメリカ財務省証券の購入であった、と考えます。もし民間企業であれば、ドル資産をもっと分散し、他の地域にも投資したはずです。政府系投資信託をビジネスライクに運営するとき、さまざまな投資手段やミューチュアル・ファンドが利用でき、同じような財務省証券のバブル、超低金利は再現しない、と期待します。
WP Monday, May 11, 2009
Dangerous Work in Moscow
By Fred Hiatt
NYT May 11, 2009
A Table for Tyrants
By VACLAV HAVEL
BG May 14, 2009
Global democracy over a barrel
By William J. Dobson
(コメント) 金融システムや世界経済の危機と並んで、世界政治の後退が起きているのではないか? 西側世界から自由化の圧力が弱まり、政治的な無関心が広まります。
ロシアのジャーナリスト失踪事件などについて。国連の人権委員会選挙について。
石油価格の下落は、プーチンやチャベスのような独裁者の基盤を掘り崩す、とWilliam J. Dobsonは期待します。アメリカの求める民主化とは、市民社会を育て、自由な新聞、法の支配を広めることです。
NYT May 11, 2009
Day Laborers on Long Island, Left at the Curb
By LAWRENCE DOWNES
(コメント) ロサンジェルスのロングアイランドで、日雇いの仕事を待つラティーノ労働者たちがいます。彼らはいつまでも迎えのトラックが来るのを待っています。住宅バブルの破裂で、彼らの多くは仕事がなくなりました。彼らにはセイフティー・ネットがなく、ホームレスが増えて行きます。教会には貧しい人々が集まります。犯罪や人種差別、移民政策などが、教会を動揺させます。
FT May 11 2009
Hungarian lessons for a world crisis
FT May 13 2009
A stress unconfessed
By Peter Thal Larsen
FT May 14 2009
A good time for stress in Europe
(コメント) ハンガリーの教訓とは何でしょうか? 元首相のFerenc Gyurcsányは、選挙のために(朝も昼も夜も)嘘をついた、と発言して抗議デモが起き、政権が崩壊しました。
金融危機がハンガリーの破たんを契機に世界恐慌へと拡大する、という懸念が示されています。IMFは積極的に関与する方針です。しかし、政治の麻痺が続いて、危機を解決できないかもしれません。
ヨーロッパにおける銀行の健全性について。金融機関の監督や中央銀行、政府の取り組み、特に銀行破たんの場合の救済策、はどうなっているのか?
FT May 11 2009
Central banks need to avoid fighting the last war
By John Gieve(former deputy governor of the Bank of England)
FT May 13 2009
Exit strategies
(コメント) 金融危機の反省を受けて、金融政策や制度、監督のあり方をどう変えるべきか、率直な問題提起が行われています。注目すべき点としては、
l 中央銀行は、短期金利を手段として、インフレ期待を抑えるためにインフレ目標に従う金融政策を行ったが、それは資産バブルや国際収支不均衡を考慮していなかった。
l 金融危機の破壊的な影響を軽視していた。
l 金融危機に対処する過程で、中央銀行と政府との(独立性より)協力関係が重要になった。
l 財政政策がマクロ経済管理の中心的手段として復活した。
l しかし、政府が金融部門を管理し続けることはできない。財政、金融、監督の間で、相互依存関係を考慮した、独自の政策領域と目標を見出すべきだ。
中央銀行や財政支出が景気回復を支えている状態を正常に復帰する過程に、不安を生じるかもしれません。John Gieveは、新しい政策のルールを形成して、透明性や説明責任、市場の信頼を確保しなければならない、と考えているのです。
Asia Times Online, May 13, 2009
Inflationary musketeers
By Hossein Askari and Noureddine Krichene
(コメント) 非常時の紙幣印刷が始まり、それは実質的なインフレ課税になる、それはまた投機とバブルの条件だ、とこの論説は主張します。
アイスランド国民でも、アメリカの住宅購入者・消費者でも、その債務は政府が返済してくれます。彼らは富を生産したのではなく、債務によって消費できたのです。世界の富はバブルによって再分配され、その結果、金融危機が起きると、主要国の政府や中央銀行が介入して、逆転のショックを緩和し続けています。
Hossein Askari and Noureddine Kricheneは、富を生産しない、金融膨張の社会的なコストを強調します。金融バブルはエネルギーや食糧の価格を引き上げました。それは、新の生産者から利潤や資源を奪い、生産を妨げて、ますます価格を高騰させます。貧しい人々がますます貧しくなるのに、債務によって富の再分配を強制する人々は富裕化するのです。飢餓や暴動が世界中で起きたことを忘れてはいけません。
ゼロ金利政策は、貯蓄や投資を損ない、成長を損ないます。金融危機で残された投機的な債務を誰が支払うのか? 超金融緩和と財政赤字の結果、自分たちの生活水準が悪化する人々です。世界的なインフレに苦しむ貧しい国々、対外資産を失う中国、工場を追い出された労働者や、年金を失う人々、ホームレス・・・
非正統的な金融政策は、経済の衰退、実質賃金の下落、社会的混乱、通貨からの逃避をもたらすでしょう。1920-23年のドイツ、1950年代のフランス、1850-85年のラテンアメリカ、1970-95年のザイール、最近の例ではジンバブエです。
The Times, May 14, 2009
Farewell deflation: now inflation is the fear
Anatole Kaletsky
(コメント) イングランド銀行が四半期ごとに発行するインフレーション報告では、経済が1930年代の大恐慌に向かうことも、日本の「失われた10年」に向かうこともない、と判断しています。しかし経済活動が回復し始めて石油価格も上昇に転じた今、インフレーションの加速が生じるのではないか、という警戒が生じています。
Anatole Kaletskyは、低金利が続くだろう、と予想します。その理由は、1.生産能力や労働力供給に余剰がある。2.中央銀行の通貨供給は民間銀行の融資減少を代替しているに過ぎない。3.不況が回避できたら、政府は財政赤字を減らし始める。4.企業と家計は債務依存を減らす。
それゆえ、将来は低インフレと低金利が持続したまま、生産力の伸びに対して通貨供給が兆化しないように中央銀行は注意しなければなりません。
The Japan Times: Tuesday, May 12, 2009
Northern Territories dispute lives on self-righteous deadlock
By GREGORY CLARK
WSJ MAY 13, 2009
Tokyo Power Plays
China Daily 2009-05-13
Japan uses DPRK as excuse for space plan
By Li Daguang
NYT May 15, 2009
An Alliance in Need of an Update
By JIM FOSTER and ROBERT M. ORR
(コメント) 日本をめぐる様々な考察です。たとえばGREGORY CLARKは、ロシアのプーチン首相来日と、北方領土問題の交渉経過、日本の外交、を考えています。その最悪の要素は、硬直的なことです。
中国の論説は、日本が北朝鮮の脅威を理由にミサイル防衛網を構築している、と批判します。それは、アジアにおける宇宙の軍拡競争を開始する、と。
日本政府が何年も漂流している間に、アジアの政治経済情勢は急速に変化し続けています。アメリカは日米同盟の見直しを強く求めています。JIM FOSTER and ROBERT M. ORRによれば、アメリカは日本が積極的に貢献できると期待しています。しかし、日本の国内政治はむしろ国民感情から離反し、ナショナリズムや反中国感情に振り回されているのです。
戦後60年もたって、アジアの安全保障や外交から孤立しているような日本のあり方を、オバマ政権は疑問に感じています。それゆえ、日本を積極的にアジアの秩序変化に埋め込むような行動を起こすでしょう。日本は、アジア諸国とともに、新しい地域安全保障体制の一部になります。日本は韓国との交流と信頼構築を積極的に行い、朝鮮半島の平和的統一に深く関与します。アメリカ軍は沖縄から離れて、グアムにアジア安全保障の拠点を構築し、アジアの多角化、マルチラテラリズムを支持します。
May 13 (Bloomberg)
Toyota Gets Stuck in ‘Return of the Living Dead’
William Pesek
(コメント) 小沢代表の辞任は、麻生首相の支持率を高めるのでしょうか? 多くの日本観察者がそうであると思いますが、William Pesekも、日本の革新を成し遂げる新しい政治指導者を待っています。
日本企業を「ゾンビー」と非難し続けることが正しいとは思いませんが、決して非難されたことのない世界最優良な企業であるはずのトヨタでさえ、とうとう日本の病気に侵された、と驚きます。それは政治的な旧体質によって改革を拒み、輸出に依存した成長を続けてきた、という意味です。
旧体質を守るために日本の政治権力構造が暗躍している印象を、堀江や村上だけでなく、民主党の小沢でさえ検察によって地位を追われた、という事実から推測します。
自民党が安定や保守を最優先する政治であれば、民主党は革新を目指す、若い、創造的な指導者を得なければなりません。ところが選挙の争点には、重要な問題が何一つ取り上げられていません。国債、人口、税制、生産性、・・・ 政治家たちが改革を後回しにしているから、トヨタやソニーなど、以前の優良企業も外国市場に大きく頼り、あるいは、韓国や中国など新興諸国の企業に敗退しています。
特に、東京の権力機構に創造的な気運が見られません。1億2000万人の国民を改革に向かわせる情熱と想像力にあふれる指導者だけが、日本経済や企業の前進を勇気づけるのです。小沢や麻生ではなく。
The Guardian, Tuesday 12 May 2009
We need a European foreign policy. Improbable? Yes. Impossible? No
Timothy Garton Ash
(コメント) ヨーロッパは統一した行動を採れない。だから国際秩序において重要な役割を果たせない。Timothy Garton Ashは、アメリカ、ロシア、中国からのこうした批判に応えようとします。
ヨーロッパもアメリカのように外交評議会を設置し、ヨーロッパ大統領を選出し、そのあまりにも言語によって分割されたヨーロッパの共通利益を示さなければなりません。ヨーロッパ市民の一人ひとりが、ヨーロッパ外交によって自分たちの利益を守らなければならないからです。
WSJ MAY 14, 2009
Tax Increases Could Kill the Recovery
By MARTIN FELDSTEIN
(コメント) 極端な金融緩和から、インフレを起こさずに金融秩序を回復できるのか? オバマ政権が示す増税計画は景気回復をとん挫させるだろう、とMARTIN FELDSTEINは警告します。アメリカは大恐慌から回復する過程の1930年と37年に、増税を行って雇用の回復を妨げ、日本も97年の消費税引き上げで景気回復を破壊しました。
MARTIN FELDSTEINは、オバマ政権の増税方法にも反対します。オバマの増税案は主に三つです。すなわち、1.温暖化ガスの排出権取引に課税する(燃費の悪い自動車や工場が大きなコスト増大を強いられる。生産活動を阻害し、低所得者に思い課税だ)。2.富裕層に課税する(富裕層は所得を他の形に変えてしまう)。3.海外に逃避してしまった税収を取り戻す(タックス・ヘイブンだけでなく、外国の低い税率に対しても問題を生じ、アメリカ企業は海外拠点を売却してしまう。実行は難しい)。
FT May 13 2009
This has not been a pure failure of markets
By Leszek Balcerowicz
SPIEGEL ONLINE 05/14/2009
INTERVIEW WITH LEFT PARTY LEADER OSKAR LAFONTAINE
'We Want to Overthrow Capitalism'
(コメント) 新しい歴史的条件において、資本主義の生産的な機能は破壊されてしまったのか?
ポーランドの元中央銀行総裁で副首相にもなったLeszek Balcerowiczは、資本主義が起業家の自由を通じて、民主主義の政治によって、それ自身を改善できる、と考えます。資本主義は多くの異なったタイプがあり、常に改革を実行できるシステムであるから、民主主義の下で国家管理に頼る政治家の誘惑に負けない限り、その再生は可能である、と。
他方、OSKAR LAFONTAINEは、「資本主義を転覆する(We want to overthrow capitalism.)」と主張します。そんなことができるのか? ・・・金融資本主義は、実際、すでに崩壊したし、労働者たちは経済秩序に対してもっと強い発言力を望んでいる。経済秩序を変えることはできる。
・・・すべての労働者がもっと大きな自由を享受できる。すなわち、教育システムにおいて社会的不平等を拡大しているような現状を変える。・・・緑の党は原子力発電所を支持しない。同様に、左派は高所得者に高率の課税を求める。・・・
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The Economist May 2nd 2009
Banyan: Australia’s Chinese entanglement
Latin America’s economy: Pain but no panic
The Roma in eastern Europe: Canada home and dry
Charlemagne: Those selfish Germans
(コメント) オーストラリアの立場は、台湾と似ています。中国の市場にますます統合化されて、その繁栄を享受していますが、中国の支配体制と政治的価値を共有していません。中国が外貨準備を用いてオーストラリアの資源会社を買収することに対して、政府が反対するべきか、激しい論争になっています。
ハワード前首相はブッシュの盟友であることを頼りに、中国からの投資を敵視しました。しかし、中国語を完璧に使うラッド首相の答えは違います。それは、中国もオーストラリアも、アメリカや日本を含むアジア・太平洋共同体の一部として安定した政治的秩序を共有する、という方針です。市場を介して繁栄を分かち合うとしても、地域的な合意なしに、中国の政治的価値を受け入れはしない、というわけです。
ラテンアメリカは経済の改革に成功し、財政赤字や為替レートの固定化を改め、インフレ率を抑えてきたために、今の金融危機が波及しても、過去のような債務危機を波及させることはないでしょう。ただしポピュリスト政権(ヴェネズエラ、アルゼンチン、エクアドル)は、時間とともに、中国と債務、インフレへの道をたどるかもしれません。
EU統合を支持してきたドイツの姿勢には、労働力移動の制限や、財政刺激策への消極姿勢、EU金融危機対策の欠如、といった利己主義が目立つようです。ドイツの利益ではなく、ヨーロッパにとって何が良いことか、ドイツが示さなければならない、と。
The Economist May 2nd 2009
Buttonwood: Bucking the trend
Economics focus: New fund, old fundamentals
(コメント) 金融市場と金融政策に関する考察です。低金利で借りて高金利で貸し出す、というのが、単純な「キャリー・トレード」の発想です。もちろん、理論的には為替レートの変化がそれを相殺するかもしれませんが、そうでないかもしれません。理論など関係なく、取引が膨らみました。アイスランドやアイルランドの通貨が高い価値を維持したのも、こうした取引が利益を生んだからです。少なくともある期間は。
今では世界中で金利が低下し、利益を出せなくなったでしょうか? 記事は、次々に「キャリー・トレード」のパターンが生まれることを伝えます。資本移動が何を動機としているか、その仮説がトレーダーたちを動かすのです。この資金プールが続く限り。
もう一つの記事は、IMFの新しい融資政策について。アジア通貨危機において財政支出の削減を求め、為替レートが自由に減価することを奨励したIMFは、今になって、融資を拡大しなければなりません。同じような緊縮政策を求めるなら赤字国は融資を求めませんから、異なる原理を示しています。特に、ヨーロッパ諸国の通貨・金融危機は、金融緩和と財政刺激策を支持する条件に変更されました。
しかし、IMFは危機を超えて放漫財政を奨励したいのではなく、結局、危機に対して財政刺激策をとれるのは健全な財政を長期的に維持できる国だけだ、というわけです。