IPEの果樹園2009

今週のReview

5/4-5/9

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

アイスランドの選挙、 ホームレスに見る日本、 協調による核軍縮、 イギリス政府の後退、 フランス革命は続く、 IMFの融資拡大、 豚インフルエンザ、 サッチャー時代の終焉、 都市ブルジョア反民主革命、 政治家の前職、 治療・医薬情報=工学革命

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


SPIEGEL ONLINE 04/22/2009

CLEANING UP THE MEN'S MESS: Iceland's Women Reach for Power

By Manfred Ertel in Reykjavik

(コメント) Johanna Sigurdardottir首相は、金融危機に関する独立党への批判を自分への支持基盤として、選挙に勝利しました。通商大臣であったHalla Tomasdottirが、金融危機の警鐘を鳴らし続けたけれど、誰も聞かなかった、と振り返っています。

Hallaが始めた企業は、カウプシング銀行の関わった、数少ない今も利益を出している企業です。彼女は、短期的な利益を求めて、危険な投資を行うのではなく、自分たちを"emotional capital," or "profit with principles"と考えました。長期的な、持続可能な投資を重視したのです。

金融投機とボーナスに酔った後で、アイスランド経済は急激な縮小に見舞われています。失業率は1.2%から10%に跳ね上がり、17%まで上昇すると恐れる者もいます。インフレ率は15.2%です。主要銀行と主要企業を国有化し、通貨価値はIMFの融資と資本規制で保たれています。しかし、人々の関心は、経済危機の深さよりも、この危機をもたらした犯人探しにあります。

間違いなく、その最大の容疑者はDavid Oddsonです。オッジソンは危機の時の中央銀行総裁であっただけでなく、その前に13年間も首相を務めました。また、危機の際にイギリスとの紛争や銀行救済で不手際のあった、独立党のGeir Haarde首相も関心を集めました。ハーデ首相は講義の群衆に襲われて、結局、辞任しました。

銀行経営者と投機業者、そのほとんど、すべてが男性と言えます。Hallaは、男性たちが陥った攻撃的な投資競争(a "penis competition" -- who has the biggest?)を批判します。そして、その責任を問うというより、新しい文化を求めています。

31年間、議員として働き、汚職と無縁であったSigurdardottirは、そのシンボルであり、彼女が首相となることで国民は政治の変化を期待するようになりました。彼女は社会民主同盟を率いて、政治への信頼を回復し、控え目で有能な人々を重視します。政権を代表する「女性」たち(閣僚11人中の5人が女性)は新しい文化・価値を示しています。

33歳の教育・科学相Katrin Jakobsdottirは、Steingrimur J. Sigfussonとともに、左派のグリーン政党を率い、社会民主同盟との連立を指導してきました。Steingrimurはマルスク主義者でしたが、プラグマティストであり、資本主義を救済する役割を引き受けます。1988年、ブームの後の経済危機では、インフレを抑えることに成功しました。

Katrinは、「危機管理はグリーンが担う」と確信します。アイスランドが持つ豊富な資源、地熱エネルギーを活かし、また美しい資源による観光業に期待します。女性たちは、この国の社会全体に「新しい均衡」を求めています。

・・・北欧が舞台のムーミンの話を思い出しました。

FT April 24 2009

Iceland minister warns on EU

By Miles Johnson in Reykjavik

BBC 2009/04/25

Centre-left wins Iceland election

BBC 2009/04/25

Councils may recoup Iceland cash

(コメント) Johanna Sigurdardottir首相は、EU加盟に積極的ですが、連立相手のグリーンは、財務大臣のSteingrimur Sigfussonのように、慎重(むしろ反対)です。財務大臣の関心は、銀行の再建にあるでしょう。その経営陣には債権者が加わるかもしれません。

BBCによれば、選挙結果は63議席中の34議席(社会民主同盟20、左派グリーン14)を連立政権の与党が占めました。独立党は敗北したとはいえ、決して消滅したわけではないのです(16議席)。“ We lost this time but we will win again later ” Bjarni Benediktsson独立党党首は語っています。国外に逃げた金融資産家たちが、今後の改革や政治論争に介入するかもしれません。

Sigurdardottir女史はEU加盟交渉を目指して、国民投票を唱えています。しかし、連立与党の左派グリーンは反対です。他方、わずか人口30万人に対して、100億ドルの緊急融資を行ったIMFなどの動向も重要です。

アイスランドのランズバンキLandsbanki銀行は、そのイギリスにおける子会社Heritable Bankがイギリス地方政府の預金を管理していたことで、その回収がイギリスの政治問題(そしてアイスランドとの国際紛争)になっています。ブラウン政権の強硬な交渉によってアイスランド政府は預金の全額返済に関与を強いられましたが、それでも損失額は2億ポンドに達するようです。

なぜ預けたのか、だれが銀行を監督したのか、という責任も問題になるでしょう。

NYT April 26, 2009

At the Polls, Icelanders Punish Conservatives

By JOHN F. BURNS

FT April 26 2009

Poll result points Iceland towards EU

Miles Johnson in Reykjavik

(コメント) アイスランドの金融ビジネスを率いた「ニュー・ヴァイキング」たちの行動が批判されています。これに対称的な女性指導者として、Sigurdardottirが支持を集めました。66歳の彼女は、引退を準備していましたが、金融危機による政権崩壊で、突如、暫定政権の首相に指名されました。寡黙で、堅実な政治手法を好み、注目を集めるのを嫌う人物です。また、連立相手の左派グリーンを率いるSigfusson財務相は、元トラック運転手で、アメリカの自由市場思想に染まったアイスランドを転換するために戦う強い意志を示します。

金融危機の損害は様々に議論されていますが、記事は、およそ100億ドル、子供も含めて国民一人当たり3万ドルの損失を被った、という数字を挙げています。イギリス政府の要求で、破綻した銀行に預金した外国人に対する返済だけでも10億ドル以上の政府保証を行いました。

しかしIMF融資の交渉やクローナの価値安定化に重要なEU加盟方針は、1944年に独立を達成したアイスランド国民の主権国家意識を損なうもので、多数に支持されていません。タラ戦争を繰り返した歴史からも、タラの漁獲量をEUの委員会が決めることに強い反発を示します。

The Guardian, Tuesday 28 April 2009

Iceland puts paid to Viking capitalism

Eirikur Bergmann

BG April 28, 2009

Iceland learns the hard way

(コメント) 女性や新議員が増えたこともこの選挙の特徴です。この結果は、イギリス、アイルランドなど、金融危機に苦しむ他の諸国にも重要でしょう。

BGはそれを、アメリカ型からEU型のグローバリゼーションに転換すること、と理解します。地域の国際協調による利益を目指す、こうした動きは世界中に広まるだろう、と。


FT April 23 2009 Zuma’s victory

NYT April 24, 2009 Enter Zuma, Bearing Baggage

LAT April 25, 2009 Jacob Zuma: South Africa's enigma

(コメント) 南アフリカ共和国の大統領選挙はJacob Zumaの勝利に終わりました。しかしその過程で、汚職の嫌疑を回避し、司法制度を損ない、ムベキ前大統領と対立して、支配政党であるアフリカ国民会議を分裂させました。しかし、投票過程や手続きは円滑に行われ、不正を糾弾する声はありません。

Zumaは、公平で、効率的な政府を目指す、と公約しました。そのためには、まず縁故政治やビジネスの政治利用を行わず、不況においても支持者や利益団体の要求に十分な分別ある対応を示すことです。南アフリカが一党支配体制の政治腐敗に染まることは、アフリカ全体にとって深刻な影響を及ぼします。

LATも、南アフリカ共和国が示す理想と矛盾、富の格差やエイズの蔓延、Zumaのもたらす疑惑や一党支配への不信感を強調します。


FT April 23 2009

China shows the world how to get through a crisis

By Jim O'Neill

China Daily 2009-04-24

Will Asia use crisis as catalyst for change?

By Dieter Ernst

(コメント) Jim O'Neillは、この危機が中国の転換と国際的役割にとって大きく貢献する、と期待します。1997年のアジア通貨危機に際して、中国政府が政策転換したように、今回の金融危機と輸出不振も迅速な政策の転換に結びつく、と考えるからです。すなわち、1.インフラ投資、2.農村部の医療制度改革、3.金融緩和への転換、をすでに表明しています。

この2年以内に、中国は日本を抜いて、世界第二の経済規模を得て、世界経済成長の牽引役を引き受けるでしょう。

Dieter Ernstも、アジアが、特に中国とインドが、世界不況を逃れて成長を続け、回復の条件を示すことができるか? と問います。すなわち、輸出に依存した成長から、もっと国内のサービスや食糧、医療、環境改善、生活インフラに向けた投資が必要です。しかし、景気回復に最も積極的な中国でも、成長モデルの転換には障害が多く、消極的だ、と憂慮します。


Business Week, April 24

Slump Spurs Debate: How to Reshape Japan Inc.

Kenji Hall

FT April 26 2009

Japan’s deceptive green shoots

(コメント) 貿易収支の反転が示すように、外国の需要に依存した日本経済が急速に落ち込んだことで、日本政府は財政刺激策に奔走しています。しかし、それと同時に、日本経済の「空洞化」(日本企業の海外移転)に対する国内の経済成長戦略が欠かせません。

為替レートの大幅な変動や日本国内の投資環境、労働力供給に対する不満、などが重なって、企業は国内投資を控えるかもしれません。

FTは、日本の成長が生じたのは、小泉元首相の「改革(痛み)なくして成長なし」という信条からではなく、「外需(中国の需要)なくして成長なし」という現実からであった、と指摘します。そして、日本が学ぶべき教訓は、銀行の不良資産を処理する間、輸出に頼り続けた経済運営を改めるべきであった、ということです。もはや日本企業は、他の惑星にでも輸出するしかないのです。

April 27 (Bloomberg)

Wall Street’s Crash Has Them Sleeping in Streets

William Pesek

(コメント) 日本の経済がどれほど悪化しているかを知るには、あまり信用できない失業率などの統計を見るより、大阪の街を歩けばよい、とWilliam Pesekは勧めます。多くのホームレスたちが暮らしています。

失業であれ、自殺であれ、日本社会はそれを隠そうとします。最も苦しむ者たちでさえ、欧米に比べて、給付を求める者はわずかです。女性の多くは働きたくても仕事がなく、求職さえ行っていません。わずか300円でも、「ビッグ・イシュー」“The Big Issue Japan”を売るのは難しい、と失業中の男性は言います。・・・「誰もが、私などいないかのように、通り過ぎてしまう。」

大阪のホームレスが減った、という統計をPesekは信用できません。少なくともあいりん地区をお歩けば、それはとんでもない過小評価であろう、という気がします。ロンドンでも、ワシントンでも、もっと多くの救済活動が行われているのです。日本では、国家規模の偽装が行われている、とPesekは嘆きます。

日本企業は最近までの景気回復による利益を労働者に分配しませんでした。多くの人々がインターネット・カフェで派遣の仕事を探し、かろうじて生活しています。小泉純一郎が市場改革を唱え、年金を減らし、医療保険制度を変え、派遣労働者を増大させました。日本が大きく変わったのは、かつて終身雇用を重視し、解雇を避けたはずの松下やトヨタのような一流企業が、アメリカ企業のように、今では需要の変動に応じて即座に大量解雇を実行することです。

こうして不安に駆られた人々は消費をさらに抑えます。


CSM April 24, 2009

Barack Obama and the new place of American power

By John Hughes

(コメント) アメリカは世界最大の軍事力と経済規模を持ちますが、歴史上の帝国と同じように、その頂点を過ぎました。アメリカの指導力は、特にオバマ政権になって、むしろ各国への協力を要請し、説得するスタイルに変わりました。

・・・ロシアを説得し(旧衛星諸国について、イランの核開発について)、中国を説得し(その経済的影響力について、北朝鮮について)、EUに協力を求め(アフガニスタンへのNATO増派について)、インドを促し(経済力の増大について、パキスタンとの関係改善やタリバン、アルカイダの掃討について)、エジプトやサウジ・アラビアを説得します(シリアとの関係改善、ハマス、ヒズボラとの交渉について)。・・・

しかし、オバマ政権が本気で多極化し、緊密に統合した世界の協力による指導を願うのであれば、国連安保理改革に取り組むべきでしょう。ドイツ、インド、日本、ブラジルなどが求めるように、常任理事国を拡大するのか?


BBC 2009/04/24

Why search for a new nuclear treaty?

The Times, April 27, 2009

Cutting the nuclear arsenals

(コメント) 冷戦の頂点から交渉して、ソ連歩会直前に合意された戦略兵器削減条約Strategic Arms Reduction Treaty (Start) 2009年に失効します。アメリカとロシアによる軍備縮小に向けた交渉が新しい軍備管理を求めています。ロシアは超大国でなくなったとしても、その影響力を示すことに執着します。アメリカ政府にとっては、交渉はその他の懸案事項を解決するための手段です。

交渉にとって合意の障害となるのは、検証手続きの問題、輸送・移動システムの問題、中国など、その他の核保有国の問題、そして、あらゆる条約は相互の信頼がなければ成立しません。核廃絶の第一歩として、アメリカとロシアは徹底した議論を必要としています。

LAT April 24, 2009

No-nuke world: a pipe dream?

(コメント) 協調による核廃絶を唱えるAndrew Grotto と、軍事力の行使を含む核抑止を支持するGabriel Schoenfeldとの論争です。

グローバリゼーションの時代に、核兵器を生産して使用することは、非現実的なコストのかかる政策です。核武装が、根本的には安全保障を求めて行うのであれば、その国が安全保障を実現し、しかももっと優れた解決策を示してやることです。北朝鮮でも、イランでも、それは可能だ、とGrottoは主張します。

イラクでやったように、核武装を試みる政府を転覆するために軍事力を行使するより、現実的に、核武装を試みる政府のコストを引き上げることで、それを防ぐことができるでしょう。核物質や核技術の監視を強化し、国際協調体制を築くことが、オバマ政権の目標です。

さらに、合意されたルールを破る政府は代償を強いられるでしょう。実際、イランも北朝鮮も、激しインフレと失業増大に苦しんでいます。イラクのケースと、アルゼンチンからスウェーデン、特にリビアのケースを比べてみることです。核武装は、軍事力に拠らず、説得によって放棄させることができます。なぜなら、アメリカ政府は、核武装しなくてもその国が安全保障を得られ、しかも豊かになれる道を示すからです。

そして、アメリカはヨーロッパやアジアが核軍拡競争に陥るのを防ぐためにも、最低限の核兵器を保有し続けるでしょう。核廃絶は、こうした包括的な戦略の結果として実現できます。

この主張に対して、Schoenfeldは完全に失望しています。

・・・ネオコンの主張を現実無視の信条による幼稚な発想であると描くのは間違っている。・・・インフレや失業で、国家の戦略目標を放棄する政府ではない。イラク攻撃があったから、リビアは核武装をあきらめたのだ。

・・・これはアメリカが先に核軍縮する、宥和政策に過ぎない。・・・北朝鮮はアメリカのジャーナリストを拘束し、アフマディネジャドはホロコーストを否定する演説をやめない。・・・これがオバマ政権の戦略であれば、この政権のうちにもイランと北朝鮮は核保有国になる。


The Guardian, Friday 24 April 2009 No change for the dollar Swaminathan Aiyar

FT April 24 2009 China reveals big rise in gold reserves By Jamil Anderlini in Beijing and Javier Blas in London

WSJ APRIL 26, 2009 The IMF's Gold Gambit By JUDY SHELTON

YaleGlobal, 29 April 2009 China Tries to Wriggle Out of the US Dollar Trap Wenran Jiang

(コメント) ドルに代えてSDRや金を国際通貨や準備として使用することは望ましい、実行可能な選択でしょうか?

SDRは、通貨というより、異なる通貨に分散投資するためのETFに過ぎない、とSwaminathan Aiyarは批判します。(US dollar 44%, euro 34%, yen and sterling 11%) ドルは世界最大の経済を基盤として、アメリカ政府はそれに課税する権力を独占しているから、世界中の投資家によって保有され、使用されるのです。IMFはSDRを発行するだけで、世界経済に請求できるどのような権限も持ちません。

ではなぜ、スティグリッツやバーグステン、ウルフは中国の発現を支持したのでしょうか? それは、国際通貨制度に根本的な欠陥がある、と考えるからです。黒字国による赤字国の融資と長期的な構造調整が必要です。たまたまG20が世界不況を回避するために召集されたから、SDRの追加発行で合意できたのであり、基本的に主要国はSDRがインフレ的な性格であることを批判してきました。将来、制度の改革は続くとしても、SDRは追加されないでしょう。

2兆ドルのドル建て外貨準備は、中国の経済運営に深刻な為替リスクを生じています。しかし、他の通貨や金融資産に移すことは困難です。ドル暴落の罠にはまるからです。他方、もっとも端的には、それを実物資産、特に食糧・資源・エネルギーや輸送インフラに投資することでしょう。中国政府は世界中で、鉱山を買収し、道路や鉄道の建設に投資や援助を供与しています。

それこそが、中国に最適な形へ、世界的な規模で生産配置を変え、世界の資源供給・輸送能力を増し、長期的に見た世界経済のバランスを変えるのです。

IHT April 27, 2009 China Can’t Have It Both Ways

The Japan Times: Sunday, April 26, 2009 Why China will continue to back Pyongyang By JONATHAN HOLSLAG

(コメント) 中国政府は、麻生首相の靖国参拝を批判します。また、中国政府はチベット仏教の指導者、ダライ・ラマがアメリカを訪問するのを拒むよう、アメリカ政府に要請します。この二つは、同じ政府の発言として無責任である、とIHTは考えます。

JONATHAN HOLSLAGは、中国政府が北朝鮮の体制を擁護するのは、歴史によって唯一の庇護者であるだけでなく、その平和的な体制転換がアメリカや日本の影響力を招き入れることになり、また、混乱が生じれば難民流出を招くからである、と考えます。さらに、北朝鮮は中国経済にとっての資源調達地、最下級の消費財輸出市場として独占できる、と。


NYT April 24, 2009

Reclaiming America’s Soul

By PAUL KRUGMAN

(コメント) オバマ大統領は、ブッシュ政権の拷問指令を究明し、法的な訴追や補償を行うべきである。このことは、アメリカ人の魂を再生する重要な政策である、と主張します。この問題について特に集めていませんでしたが、他にも多くの論説があります。


FT April 24 2009

Sudden debt?

The Observer, Sunday 26 April 2009

Britain's no longer a world power, so let's be a better, fairer nation

Will Hutton

NYT April 29, 2009

Humbled by Meltdown, City of London Ponders Its Identity

By LANDON THOMAS Jr.

(コメント) 赤字予算の幅はGDP12%に、債務は80%に及びます。イギリス政府は、突如として、金融救済の先駆者から、財政破たんの落伍者になっています。まるで債務にあえぐ「バナナ共和国」や「ヨーロッパの重病人」みたいだ、とFTは不満を述べます。2200億ポンドもの国債発行が必要でしょう。

債務のGDP比率は79%に達し、ドイツの水準を超えますが、日本はその倍以上ありますから、新興諸国と違って、政府が自国通貨建で債務を維持する能力は、まだ、非常に高いわけです。ただし、いつか投資家たちがそれを改める日も、突如、来るわけです。

こうした労働政権の困窮を、Will Huttonはどのように理解するのか? まず、大国のような振る舞いを止めることです。いくら国連の常任理事国であっても、EUの主要国に過ぎず、過大な負担を受け入れないことです。同時に、工業力では指導的地位を失っても、ロンドンが不可欠の金融センターであるように、イギリスはグローバリゼーションで重要な役割を担えます。

保守党のように債務比率を騒ぐよりも、GDPの5%が消滅した影響を見極めることです。為替レートが大きく減価して、イギリス経済は外から見て一層縮小しました。雇用を確保するには、それも必要なことです。しかし、次期政権はこの縮小した経済を直視しなければなりません。

モルガン・スタンレーに雇用されてロンドンで働いたTetsuya Ishikawaのバブル小説が紹介されています。ロンドンの金融部門で7万人が失業し、全業種では28万人が職を失うと推定されます。Ishikawaもその一人です。危機の前、2008年には、300万ポンドのボーナスを得たほどでした。

記事は、バングラデシュからの移民、Faruq Ranaも紹介しています。次のIshikawaを目指す若者です。


WSJ APRIL 24, 2009

The Weimar Complex

CSM April 28, 2009

A fallen wall, a renewed Germany, a united Europe

By Elizabeth Pond

(コメント) ドイツ経済の成長はマイナス6%となり、今年、100万人以上が職を失う、と予想されています。大恐慌以来、最悪の経済危機を前に、ワイマール共和国が崩壊し、ナチスが政権を執った悪夢がよみがえります。

WSJの記事は、ドイツの連立政権が財政赤字を抑制し、銀行の救済にも慎重であることを称賛します。しかし、選挙を意識して資本主義への批判も目立つ、と批判します。富裕層への課税も強めますが、富裕税ではない、と左派との違いを強調します。経済は危機を避けられないが、政治的な危機ではない、と。

Elizabeth Pondは、また異なる視点から、経済危機が政治危機に転化しないことを歓迎します。それは「ドイツ問題」が解決されたからです。ドイツが強くなるとき、ヨーロッパは分裂し、戦争が起きました。ドイツ再統一はその不安を呼びましたが、1980年代にヨーロッパ市場統合を実現したことで、ドイツはヨーロッパの一部になれたのです。

また、緑の党が躍進したように、戦後ドイツの政治意識が大きく転換した、と指摘します。

The Guardian, Friday 24 April 2009

The world is united in anger

Dominique Moisi

SPIEGEL ONLINE 04/28/2009

TAKING THE DOWNTURN ON THE CHIN: Why Is Germany So Calm?

By Juan Moreno and Stefan Simons

WSJ APRIL 30, 2009

Mayday for Capitalism

(コメント) Dominique Moisiは、フランスに広がる工場長の監禁事件、アメリカ議会に起きたAIGボーナス支給への憤慨に注目します。イギリスでも、銀行家や政治家は大衆からの激しい非難を浴びています。こうしたポピュリスト的な怒りの背景とは、現実の報酬や地位における極端な格差を憎み、その不公平さを悔やみ、糾弾する激情が広まっていることです。

ベルリンの壁が崩壊して、世界に広まったはずのフランス革命の理想、「自由、平等、友愛」は、最初の一つを除いて著しく損なわれています。・・・政治システムや政治家が信頼されていないときほど、公平性をめぐる不満は制御不能になる。共産主義体制が崩壊して20年を経たが、フランス革命の衝撃は決して過去のものではない。・・・たとえオバマの登場がアメリカの希望であるとしても、噴出する不満がそれを押しつぶさないとも限りません。

イギリスや、特にフランスでは資本家に対する激しい抗議が起きているのに、かつては政治テロも見られたドイツが静かであるのはなぜか?

左派が批判してきた失業者救済政策、ネオリベラリズム批判を繰り返した今、突如として批判すべき対象が消滅したこと、社会福祉体制の下で労働者の負担は軽減されている、など。この経済危機がいつまで続くかによるでしょう。実際、フランスでは右派のド・ヴィルパン元首相が、ドイツでは急進左派のラフォンテーヌが、一層の政治的危機を予想し、準備しています。

メイ・デーの騒乱を懸念しつつ、WSJは社会不安が経済不況を長引かせる、と批判しています。


WSJ APRIL 25, 2009

We Need Public Directors on TARP Bank Boards

By ROBERT B. REICH

(コメント) ライシュの主張は、資本主義と民主主義とのバランスにあります。オバマ政権で、いくらガイトナーが金融救済に取り組んでも、その資金を使うのが旧経営者たちであれば、国民としては納得いきません。なぜ自分たちの納めた税金で、金もうけのための銀行や企業に奉仕する重役たちが巨額の報酬を受け取っているのか?

資本主義の原理に従えば、株主の利益を増やすことが重要であり、他方、民主主義の原理に従えば、有権者の要求を実現することが重要です。シティグループやバンク・オブ・アメリカが企業向けの融資(そして雇用)を増やすように求めても、経営者たちは株価を引き上げる手法に専門的な知識を注ぎます。環境にやさしい、燃料効率のよい自動車を求めても、経営者たちは利益の大きなSUVやピックアップ・トラックの生産に固執します。

こうした税金によって救済された企業経営者たちは、その決定事項を必ず有権者に公表しなければならない、と主張します。これは、銀行救済の正当性に関わることです。

The Guardian, Monday 27 April 2009

The cost of business on Wall Street

Dean Baker

NYT April 27, 2009

Geithner, Member and Overseer of Finance Club

By JO BECKER and GRETCHEN MORGENSON

FT April 28 2009

Fixing bankrupt systems is just the beginning

By Martin Wolf

(コメント) NYTの記事は、ガイトナーがウォール街と深いつながりを持っていることを、時期や実名を挙げて詳しく伝えます。

Martin Wolfは、IMFのレポート(Global Financial Stability Report)を取り上げ、金融危機の推定損失額が41000億ドルに引き上げられたことを指摘します。危機の救済は不可避であり、躊躇するほど不況が深刻になって、経済全体に大きな損失を招きます。しかし、この財政による損失額への支援を短期間で回収できるという期待は失われました。公的債務の負担は長期にわたるでしょう。

Asia Times Online, Apr 28, 2009

Unholy partners

By R Taggart Murphy

(コメント) アメリカの金融危機とその処理は、日本の経験とどれほど異なるのか?  この点で、R Taggart Murphyは、Richard Katz2重経済を前提にした日本の成長モデルは破たんした)とともに、Eamonn Fingleton(世界制覇への政府による計画は続いている)や、J Mark Ramseyer(日本は特別ではない)も指摘しています。

Katzの最近の論説("The Japan Fallacy: Today's US Financial Crisis is Not Like Tokyo's 'Lost Decade'")を取り上げ、R Taggart Murphyは、アメリカのオバマ政権が引き継いでいるウォール街救済策も、日本のバブル破綻処理と変わらない、と指摘します。日本政府は、愚かで頑迷であったから、不良債権処理を先延ばしにしたのではない、と。日本とスウェーデンでは、歴史、政治文化、権力関係が全く異なっていたのです。同様に、サマーズやガイトナーも、そのような解決策を選択しません。

日本では大蔵省が権力を握っていたように、アメリカではゴールドマン・サックスが権力関係の中枢にいます。オバマ政権はその呪縛から逃れられず、それ以外の金融システムを想像できないのだ、とW.Buiterにも批判されています。大蔵省の幹部であれ、ポールソンたちであれ、これまでの部下や同僚、親しい関係者たちが苦しむ解決策を自ら望みません。

FT April 30 2009

Reopen the taps of global finance

Asia Times Online, May 1, 2009

Black-hole balance sheets

By Antal E Fekete

(コメント) 2008年の最後の8カ月間で、国境を超える融資の減少額は48000億ドルです。救済資金を出し続けるのは限界です。金融のグローバリゼーションを、リスクの全システムにおける管理とともに、再生しなければなりません。


IHT April 25, 2009

First, Reform the I.M.F.

By MARK WEISBROT

The Guardian, Monday 27 April 2009

IMF: As bad as ever

WSJ APRIL 27, 2009

IMF Gets Money, Politically Perilous Tasks

By BOB DAVIS

(コメント) MARK WEISBROTは、J. SachsがかつてチフスにたとえたIMFの融資条件を批判します。IMFは融資の条件として政府支出の削減を求めており、それは世界不況に立ち向かうため財政刺激策を必要とする国際合意に反している、というわけです。The Guardianも、ワシントン・コンセンサスや市場経済・正当派が後退したことをIMFは反映していない、と批判します。

IMFは、しばしば、融資によって成長を犠牲にした、と言われます。そこで、融資よりも金融システムの改善に助言することを重視するようになりました。アメリカ政府がIMFに金融システムの包括的な評価を依頼すれば、世界の経済システムが大きく変化する新しい姿勢として世界中に影響を及ぼすはずだ、とWSJは主張しています。

Asia Times Online, Apr 28, 2009

IMF lost on the high seas

By Hossein Askari

The Guardian, Tuesday 28 April 2009

A great global giveaway

Paul Collier

(コメント) Hossein Askariは、金融危機の背景に過度の金融緩和を見ています。その意味では、IMF融資を増やすことが解決を意味しないのです。危機の直前には、世界中でインフレとバブルが生じていました。不況を回避するためにケインズ主義を持ち出すのは危険です。ハイパー・インフレーションの危険が強まっています。ドルに代えて国際準備通貨を求める声が高まります。インフレによって金融救済を続けることは、貨幣価値を損なって実質の需要を減らし、生産活動を損ない、失業を増やす、と。

Paul Collierは、SDRを追加してもIMFの融資は誰に届くのか、と考えます。多くの援助計画が条件を守れず失敗しました。IMFはマクロ経済の安定化を目標に融資額を決め、条件を示します。政府が融資を何に使うかは監視できないのです。しかし、困窮した生活を送る多くの国民に届かないとしたら、むしろNGOに財政資金を供給する方がよいでしょう。


WP Sunday, April 26, 2009 The Next 100 Days

The Observer, Sunday 26 April 2009 Obama's excellent 100 days

NYT April 26, 2009 Obama at 100 Days: How Does He Compare? LOU CANNON, ROBERT DALLEK, ROGER MORRIS, JEAN EDWARD SMITH and RICHARD REEVES

WP Monday, April 27, 2009 Selling The Green Economy By Robert J. Samuelson

FT April 28 2009 One hundred days of platitude Christopher Buckley

The Guardian, Wednesday 29 April 2009 100 days: Tim Geithner's travails Tim Fernholz

NYT April 29, 2009 One Hundred

FT April 29 2009 Obama’s hundred days of ambition

SPIEGEL ONLINE 04/29/2009 100 DAYS OF OBAMA: The Instant American Revolution By Marc Pitzke in New York

(コメント) オバマが大統領に就任してから100日間が経過しました。当然、英米では多くの論説が評価をめぐって論争し、将来も予想しています。


The Observer, Sunday 26 April 2009

Stemming the water wars

Jeffrey Sachs

(コメント) 多くの地域で人々が苦しむのは、資金でも、軍隊でもなく、水や食料が足りないのだ、とJeffrey Sachs主張します。世界の水需給の不均衡を調整するために、国際社会が支援しなければならない社会が多くあります。


FT April 26 2009

Eurozone banking needs a co-ordinated strategy

By Wolfgang Münchau

FT April 27 2009

European banks cannot set aside the rules

By Neelie Kroes

(コメント) ガイトナーとサマーズの金融危機対策が不十分だと批判する前に、EUの金融危機の方が深刻で、その対策も遅れていることを認識しなければならない、とWolfgang Münchauは指摘しています。しかし、EU諸国は金融危機対策でも、財政刺激策でも、協調に失敗しています。協調を書いた刺激策は、しばしば期待された効果がなく、保護主義的な手法が選択されます。それは協調をますます難しくします。一国的な対策や規制が重要な意味を持たないことを、政府は国民に認めるべきです。金融危機の救済においても、市場競争を損なわないためにはEUの共通ルールに合意し、欧州委員会が判断すべきです。


The Guardian, Monday 27 April 2009

The swine flu crisis lays bare the meat industry's monstrous power

Mike Davis

NYT April 28, 2009

Globalism Goes Viral

By DAVID BROOKS

April 29 (Bloomberg)

Hedge-Fund Bubble Bursts in Time for Swine Flu

William Pesek

LAT April 29, 2009

The swine flu battle

FT April 30 2009

All systems go

By Andrew Jack

Asia Times Online, Apr 30, 2009

The global politics of swine flu

By Kaveh L Afrasiabi

(コメント) 新型インフルエンザが流行すれば、その犠牲者は10万人に及ぶこともあり、大規模な戦争に匹敵します。デイヴィスMike Davisの『感染爆発:鶏インフルエンザの脅威』は興味深い調査報告でしたが、豊かな国を襲った鶏インフルエンザよりも、今回のメキシコから現れた豚インフルエンザに対する世界の予防・監視・防疫体制の方が(予算も準備も)お粗末だろう、と警告します。豚インフルエンザについて、これまでインフルエンザの繁殖地であった中国南部ではない、新しい繁殖地、あるいは、繁殖・感染メカニズムが形成されたかもしれない、と警戒しています。豚の大量飼育工場や薬剤による汚染の危険性が示唆されます。

こうした食肉の供給システムは、世界的規模のコングロマリットが担っています。Smithfield Farms (pork and beef) and Tyson (chickens) 彼らの政治力は絶大で、自分たちの利益を守るために国際防疫体制も破ります。食肉産業の工業化が限界を超えたのかもしれません。

DAVID BROOKSは、豚インフルエンザの感染拡大阻止について、原理主義のテロ、世界的金融危機、地球温暖化、エネルギー不足、核兵器の拡散、などと同じく、グローバリゼーションがもたらす分散した脅威であり、新しい対応策が必要と考えます。情報通信技術や輸送手段の革新と低廉化、人やモノの移動がますます世界化する結果として、リスクは蔓延し、どこからでも瞬く間に拡散します。

こうした問題に対処するために、G. John Ikenberryが唱えたアメリカ主導の集権型世界インフラ整備(たとえばWHO)ではなく、BROOKSは分権型試行錯誤と情報の共有を提案します。ダイナミックで、意思決定を分散した、緊急時の行動機関が世界各地に必要です。21世紀型の危機に対しては、さまざまな権力装置の権力移譲と相互補完subsidiaryが重要だ、と。


WP Monday, April 27, 2009

'I Am Not Dr. Doom'

SPIEGEL ONLINE 04/29/2009

IS 2009 THE NEW 1929?: Current Crisis Shows Uncanny Parallels to Great Depression

NYT May 3, 2009

After the Great Recession

By DAVID LEONHARDT


FT April 27 2009

The end of the Thatcher era

By Gideon Rachman

FT April 27 2009

How libertarian dogma led the Fed astray

By Henry Kaufman

(コメント) 19795月、選挙に勝利したマーガレット・サッチャーは、イギリス国民が30年間の社会主義の実験に飽きて、異なることを試したがっている、と考えました。その後、30年間で、もう一つの実験も失敗に終わった、とGideon Rachmanは「サッチャー時代の終焉」を描きます

サッチャーが政権として取り組んだアイデアは、この時代の世界を特徴づけています。民営化、規制緩和、減税、為替管理の廃止、労働組合への攻撃、「富の再分配」より「富の創造」を賛美すること。その自由市場改革は東欧から中国、そしてソビエト連邦にも及んだのです。世界が「イギリス病」に感染することを恐れるのをやめて、「イギリス式治療法」を学ぶために集まってきた、とサッチャーは自慢しました。

今また、サッチャーが反対した政策はイギリスにもどってきました。金融部門を国有化し、増税し、不況対策としてケインズ経済学が実践されています。特に、サッチャーが力説した「勤労と報酬との関係」は、彼女が規制緩和で解き放った金融ビジネスによって極端にまで破壊されました。保守主義の道徳的な尊厳が失われたのです。同様に、サッチャーが賞賛したゴルバチョフの自由化とソ連解体も、ロシア自由市場の混乱と独裁に変わっています。

しかし、とGideon Rachmanは付言します。サッチャーの時代は終わったように見えるが、その自由市場思想に代わる社会の代案は何もない。金融危機と世界不況を恐れて、各国政府は手当たり次第に何でも受け入れているに過ぎない。サッチャーに代わる社会思想を示す指導者が現れない限り、サッチャーの時代はまだ終わったと言えない。

Henry Kaufmanは、連銀が金融市場の変化を理解せず、自由放任の思想に委ねてしまったことを、二重の過ちとして重視し、根本的な制度改革を求めています。連銀は、その目標である金融秩序の安定性を、証券化やグラス=スティーガル法の廃止が許されても、金融機関が巨大化することで達成できると楽観していたのです。

流動性の概念は資産に依拠したものから、単に借入れの容易さへと変化しました。そして、金融政策においても、連銀のリベラリズムは市場のもたらす結果に関する楽観を強めたのです。独自の金融規制や監督は忘れられ、銀行の示す健全性の数量モデルを信用しました。中央銀行自身が、バブルの最中に判定を市場に委ね、その破裂まで放置する、と公言したのです。その結果、信用膨張を続けて、その後の危機と不況が大きくなりました。

連邦準備銀行の制度そのものを変えて、金融的な過剰を抑制する姿勢自体を新しい制度に組み込みたい、と考えます。


FP Mon, 04/27/2009

The G-20 made the IMF bigger, not better

By Martin Edwards

IHT April 28, 2009

What Role for the G-20?

By MIKHAIL GORBACHEV

(コメント) Martin Edwardsは、G20によって突然呼び戻されたIMFは、2年前に死亡を宣告されたはずではなかったか? と問います。

20は、IMFに融資条件の緩和と通貨危機予防の融資を求めました。そのために、IMFは新しい財源を与えられ、債券発行も許されるでしょう。それは同時に、中国やロシアなどの発言力を高め、資本市場に依存することを意味し、IMFの国際機関としての独立性を弱める結果にもなります。

MIKHAIL GORBACHEVは、G20が危機脱出の政策決定を行う機関になると考えません。たとえ世界GDP90%を集めても、G20は主権国家に変わることはないのです。むしろ社会的要因、環境的要因、経済的要因をつなぐ、新しいモデルへの転換を促す国際機関になるべきだ、と主張します。

同時に、G20は国連と緊密に連携しなければなりません。それは、どのように形を取っても、世界管理の新しい閉鎖的な権力集団です。国連がG20の情報の透明性や世界への説明責任を明確に示さなければ、その決定に十分な正当性と権威を示せないでしょう。


FT April 28 2009

Tackling pirates the hard way

The Guardian, Thursday 30 April 2009

Sierra Leone rises again

Tony Blair

(コメント) 「ソマリアは国際介入の墓場である。」・・・アメリカも、国連も、地域協力機関も、1991年以来続く内戦を終結させるために介入し、むしろ問題を悪化させてきた。・・・

アデン湾の警備を各国の海軍で強化すれば、少しは海賊の襲撃も減るでしょう。しかし、地上においてソマリア政府が再建できなければ、海賊が絶えることもないのです。また、国際介入という強硬策は、歴史から見て、ナショナリズムの勢いを増し、政府への国際的な支援を集めるのです。

他方、イギリスの元首相、トニー・ブレアは、国際介入によってシエラレオネが平和を取り戻し、それから始めた経済再建を称えています。例えば観光業の再生について・・・Lonely Planet recently named the country one of its top 10 to visit in 2009. Bradt Travel is bringing out the first guidebook dedicated to Sierra Leone. And you can now fly here direct from Europe in six hours.・・・

政治指導者たちは、戦争ではなく繁栄をもたらし、隣人同士の信頼を回復することができる、と。


WSJ APRIL 29, 2009

ADB's Not-So-Capital Idea

WSJ MAY 1, 2009

The ADB Is Helping Asia's Poorest

By HARUHIKO KURODA From today's Wall Street Journal Asia.

(コメント) WSJはADBの増資を批判して、アジア諸国が必要とするのは公的融資ではなく市場自由化である、と主張します。他方、ADBの黒田総裁は、アジア諸国が陥った欧米の金融危機による輸出不振や資本流出、不況の影響を緩和することが重要である、と訴えます。


FP April 2009

The Bourgeois Revolution

By Joshua Kurlantzick

The Guardian, Wednesday 29 April 2009

After Thailand's bitter feud, an uncertain future

Tom Fawthrop

FT April 29 2009

Fatal flaws that wrecked Thailand’s promise

(コメント) Joshua Kurlantzickは、新興諸国の都市中産階級に見る反民主主義の動きを、タイの騒乱を理解するモデルと考えます。すなわち、民主化は都市ブルジョアジーにビジネスの機会を増やし、富裕への道を開きましたが、一層の民主化によって貧しい農民層が求める改善策は、都市富裕層への増税や規制制度への参加を求めます。都市中産階級が豊かになればなるほど、こうした民主主義のコストを嫌い、貧しい農村が支持するタクシンのような独裁者を嫌い、軍部と手を組んで、制限された民主主義を好むようになるのです。

中国でも、ラテンアメリカでも、豊かな中産階級が少数で、積極的に政治参加する貧しい大衆を恐れるほど、この傾向(都市富裕層・ブルジョアジーの反民主主義)は強まるでしょう。しかし、こうした行動は民主的な制度を弱め、結果として、ブルジョアジーの経済・社会基盤を失わせるのです。タイがそうであるように、ソフトな軍事独裁体制が再生します。

Tom Fawthropは、バンコクの騒乱を、タクシンの後退とアビシット首相の機会と見ます。

FTは、タイがその成長にもかかわらず、クーデタを繰り返した軍、バンコクのエリート層、王制を基盤とした脆弱な政治基盤しかなく、その上に1980年代後半・90年代、日本からの投資で主に自動車産業が生産拠点を築いたに過ぎなかった、と批判します。投資や市場を海外に頼り、国内の貧困層に分配する政治的なメカニズムを欠いていたのです。1997年の通貨危機は、そのバランスを破壊し、タクシンのような少数の例外を除いて、旧ブルジョアジーを衰退させました。


The Guardian, Thursday 30 April 2009

The rise and crash of Ireland

Mary Fitzgerald

(コメント) ヨーロッパで最もダイナミックな「ケルトの虎」。投資ブームから住宅ブーム。人々の所得は増え、債務によって消費を増やした。ユーロ圏として金利は抑えられ、移民が流入して好況を続けた。・・・

金融危機はそれらが間違っていたことを示しました。住宅関係の失業者が求職センターに並び、政府は支出を切り詰めて資本市場での評価を気にするだけです。・・・F.D.ルーズベルトが登場することもないまま、フーバー政権下の不況が続く、と嘆きます。

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The Economist April 18th 2009

India’s jumbo election

India’s election: The untouchable and the unattainable

South Africa’s election: Africa’s next Big Man

South Africa’s elections: Voting for the people’s man

Banyan: The trouble with the king

Piracy off Somalia: Perils of the sea

Congo’s faltering economy: Too big to fail

Protests in Moldova and Georgia: Street scenes

Selection bias in politics: There was a lawyer, an engineer and a politician…

(コメント) 世界にはいろいろな政治=権力システムがある、という話をしました。この週の雑誌を見るだけでも、これほど様々な「民主主義」が記述されています。インドと南アフリカの選挙。タイの王制。ソマリアの海賊。コンゴの資源独裁。モルドヴァとグルジアの反政府デモと国際干渉。

政治システム(とその目標や条件)の性格によって、政治家になる前の職業は様々である、という指摘に興味を持ちました。アメリカなら弁護士(オバマ)、中国ならエンジニア(胡錦濤、温家宝)、韓国なら官僚。アフリカの大統領の多くが軍事クーデタや革命によって権力を得たため、前職は軍人やゲリラです。

権力者が選ぶ閣僚や政府幹部は、大学の同窓や、軍隊・秘密警察の人脈、政治家の血族・親族です。ブルームバーグ、ベルルスコーニ、タクシン、など、ビジネス・エリートも多いですが、意外に学者やエコノミスト、医者も多いのです。ソ連崩壊後、旧連邦の地方選挙に多くのビジネスマンが参加しました。政治は競争に有利であり、選挙にカネがかかり、利権を得られて、政治家たちを信用できない、と考えるビジネスマンは、自分で政治家になったのです。議員であれば汚職の告発も免れたでしょう。

日本政治家の前職は? ・・・政治家? 官僚? 芸能人? その意味は何でしょうか?


The Economist April 18th 2009

Technology and medicine: Fixing health care

Medicine goes digital: A special report on health care and technology

Health care in China: Will patients be rewarded?

(コメント) 裕福な諸国では医療制度改革が国の将来や政治の安定性、成長力を左右する大問題です。そのコストが増すばかり、と思っていたら、いよいよ情報技術革命が医療や医薬品にも革命を起こす、という記事に楽しくなりました。分からない医学用語や医薬品の支払いだけ理解すればよいかのような現状が終わるなら、大歓迎です。

他方、貧しい諸国にも、つまり中国の農村やアフリカの奥地にも、この革命は波及しそうです。


The Economist April 18th 2009

China’s economy: Bamboo shoots of recovery

Housing: Building castles of sand

Home ownership: Shelter, or burden?

Business in Iraq: It’s the economy, stupid

Economics focus: The curse of politics

(コメント) 中国経済は金融危機の犠牲になったのではなく、自らインフレ抑制とバブル退治のための金融引き締めを行っていたことが急速な景気後退をもたらした、という指摘があります。世界不況の中でも、急速に8%成長を回復する条件を持っているのだ、という事情は、なるほど欧米や日本と異なっているのです。

住宅の所有を促す政策が景気変動を増幅している(バブルが膨張し、不況は長引く)かもしれない、という議論も面白いです。イラクからアメリカ軍は撤退するけれど、本当に必要な、民間投資がビジネス機会と雇用を増大する、という計画にアメリカ軍は資金を与えます。

こんなこと分かり切ったことですが、金融危機の処理は経済学が教える通りに進まない、という記事です。日本政府や官僚がアメリカ人に比べて異常なほど愚かであったから、ではなく、公的資金を利用することに有権者の強い反対があったから、不良債権処理は次々に失敗したのです。アメリカにできるのか? もちろん、同じように行き詰まっています。韓国やスウェーデンの迅速な改革例にも、それに見合った事情や制度がありました。