IPEの果樹園2009

今週のReview

4/27-5/2

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

食糧危機、 金融救済・安定化、 不況対策とインフレ不安、 EUの金融・財政安定化、 タイの政治対立、 左派の退潮、 オバマ外交キッシンジャー、 、 IMF改革

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


FT April 16 2009

The world must feed its hungry

(コメント) 世界の指導者たちは、金融危機の鎮静化にすべての関心や資金を注ぎ込んでいるように見えます。しかし、忘れてならないのは、同じこの世界に住む数億人の人々にとって、毎日の食糧を十分に得ることが死活問題である、ということです。

「昨年、記録的な食糧価格の高騰で暴動が起き、1億人が世界食糧計画の支援を受けた。十数カ国で数千、数万の絶望した人々が暴動に及ぶことは、金融崩壊へのどのような反応よりも社会をはるかに不安定化する。この危険は去ってなどいない。」

下落したものの、価格はまだ過去数十年に比べて高く、短期的な高騰でも、幼児の栄養不良はその発育を損なう。気候変動や投資不足、政策ミスなどが危機を構造的なものにしている、と。

食糧危機は、その供給が不足しているのではないし、食糧自給体制が正しい答えでもない、とFTは主張します。A.センが指摘したように、所得分配の不平等が飢饉の条件となるのです。また、効率的な世界の食糧生産を配置する、効果的な市場の作用が欠かせない、と。

「しかし悲しいことに、危機への対応は逆向きであった。食糧輸出の禁止、耕作地の奪い合い、物々交換の秘密交渉。こうした政策はやめねばならない。それは自己破壊的で、コストが高く、貧しい諸国を破滅させる。他者を害するだけで、すべての者に有益な貿易システムを掘り崩す。」

他方、世界政府はないけれど、諸政府は協力して「世界的公共財」を供給しなければなりません。食糧生産を高める研究、特にアフリカの農産物の改良として、この論説は遺伝子技術を支持します。

G8は、正しくも重要な新興諸国を招いたが、農業大臣たちは争うばかりで解決策を合意できない、と批判します。


FT April 16 2009

Capitol capital

(コメント) 経済活動を回復させるには、公的資金による銀行の資本増強が必要だ、と議論されています。しかし、単純に行えば、有権者の激しい反発を招くので、アメリカ政府は、それを納得してもらう仕組みとして“stress tests”を主張しています。

しかし、FTは、必要な水準を問題にします。銀行が「支払い不能」でなければよい、というのではなく、リスクを取って融資を増やさなければならないからです。それは、アメリカ企業の資金調達を支えてきた資本市場が麻痺しているために、一層重要になっています。

The Observer, Sunday 19 April 2009

You give bankers £1.3 trillion and do they thank you? Do they hell

Will Hutton

FT April 19 2009

Steeled for stress

By Krishna Guha

NYT April 20, 2009

Erin Go Broke

By PAUL KRUGMAN

(コメント) Will Huttonは、この取引があまりにも、異常な、不公平さを示していることに憤慨します。政府を介して国民は1.3兆ポンドという莫大な債務を保証してやり、利益が出たら銀行家の儲け、損失が出たら国民の負担になるのです。

膨張した債務の連鎖が崩壊しながら、実体経済を破壊したことで、人々の生活が苦境に陥っています。金融政策は不況を予測できず、金融監督者は銀行や建築組合の抱えるリスクを評価できませんでした。Will Huttonは、この国民の不満を機会として、銀行や金融システムを改革してほしい、と求めます。

ガイトナーTim Geithner財務長官の提案した金融救済案と“stress tests”に関しては、Krishna Guhaの論説が様々な専門家の意見を紹介・整理しています。それは、銀行国有化を避けて、公的資金を利用した救済・安定化が可能である、ということを基本とした提案です。

スウェーデン、日本、そして20年前のS&L危機から学んで提案した、というのですが、結局、危機にはそれぞれの金融システムや銀行の特徴があって、同じ答えは無いのです。正しい知識があれば、市場が答えを出す、として前任者のポールソンが示した提案を、ガイトナーは継承しました。限られた公的資金で民間資本を呼び戻すという発想も共通です。

ロゴフ、ルービニ、サックス、スペンス、などの意見が並びます。

PAUL KRUGMANは、アイルランドのケースを考えます。アイルランドでは、厳しい不況と、金融引き締め、財政支出削減が重なって起きています。特に、住宅バブルの崩壊で財政赤字が増大したアイルランドの苦境は、アメリカの将来を示すものでしょうか?

KRUGMANは、アイルランド政府が銀行部門の不良債権を買い上げる政策を示したことで、財政赤字を増加させた、と批判します。一時的な国有化は銀行部門を秩序正しく整理する(パニックを回避する)ために必要であるが、民間銀行の損失を政府(納税者)が吸収するのは間違いだ、と考えるからです。銀行の損失が膨らめば財政赤字が増大し、政府の長期的な債務返済をさらに難しくします。

アイルランドの教訓とは、すなわち、アメリカ政府も銀行を救済することで経済の回復を損なう恐れがある、ということなのです。

WSJ APRIL 21, 2009

A Backdoor Nationalization

April 23 (Bloomberg)

Wall Street’s 1929 Scams Return in Geithner Plan

Jonathan Weil

(コメント) WSJは、アメリカの金融街がオバマ政権の金融救済分担案(Public-Private Investment Program)や裏口から銀行国有化を進める計画(普通株式への転換)を嫌っている、と伝えます。

1929年の株価暴落に関しては、1933年からFerdinand Pecoraが上院銀行通貨委員会でスキャンダル(いわゆる"a pool”による株価操作)を暴露し、その後、証券取引委員会とグラス=スティーガル法の通過をもたらしました。今また、下院議長であるNancy PelosiPecora委員会を再現しようとしています。そしてJonathan Weilは、ガイトナーの分担案がこのプールによる価格操作を招くだろう、と批判します。

FT April 23 2009

We must keep at the process of repair and reform

By Timothy Geithner

(コメント) G20の合意を実現するために、G8の行動を要請するガイトナーの短い論説です。

1.財政・金融政策を使って景気回復を促す。2.IMFを増強し、SDR増加も含め、責任ある行動を求める。3.経済・金融に関する国際協調の制度化を進める。

これは完璧な政治表現かもしれませんが、これで十分でしょうか? むしろ現状維持を支持した内容にも見えます。踏み込んだ発言はどこにもない。

WSJ APRIL 23, 2009

Financial Reforms We Can All Agree On

By CHARLES W. CALOMIRIS

(コメント) ガイトナー=バーナンキ=G20の金融危機解決法を整理します。ただし保守派の研究機関から出ています。

1.「大き過ぎて潰せない」という銀行が公的資金で救済されるだけでは将来も危機を繰り返す。たとえ大きくても潰せるように、また、民間にコストを負担させるように、制度化する。

2.金融政策や金融監督を改善する。バブルを抑制するような変更のルールを合意する。

3.住宅金融でレバレッジが多用されないように、低所得者の最初の住宅購入だけ支援する。

4.デリバティブのOTC取引を交換所で処理するように育成する。5.リスク評価の改善。6.格付け会社への介入が格付けのインフレに導くのを回避する。7.銀行の経営の改善を促すガバナンスの改善。


FT April 16 2009

Bouncing China

(コメント) 中国経済の成長はV字型の回復になると期待されています。都市部における固定投資は昨年の30%増を記録していますし、政府の指示で銀行も融資を30%伸ばした、ということです。財政支出の実績も日本より優れている、とFTは指摘します。

たとえ、インフラ投資の限界や融資の不良債権化があるとしても、重機の販売を中国に大いに期待するコマツだけでなく、世界が中国の急速な回復を望んでいます。

Asia Times Online, Apr 18, 2009

Cash-rich China courts the Caspian

By M K Bhadrakumar

NYT April 19, 2009

Slump Tilts Priorities of Industry in China

By JONATHAN ANSFIELD

NYT April 21, 2009

China Influence Grows With Car Sales

By KEITH BRADSHER

FT April 22 2009

China flexes new economic muscle at sea

(コメント) 世界不況から最初に回復することを目指す中国は、その豊富な外貨準備や工業製品の輸出能力を利用して、エネルギーや資源、農産物の供給国に対する融資・援助、工業製品輸出、などを積極的に拡大します。カスピ海の資源争奪戦でも、中国からの投資や融資が急速に重要性を増しつつあります。

不況と景気回復は、産業政策、環境規制、自動車産業、海軍増強と海上輸送の確保、などに影響します。それらはしばしば日本(現状と歴史)に比較されるでしょう。


April 17 (Bloomberg)

Geithner’s Biggest Problem Is Dollar, Not China

William Pesek

WSJ APRIL 17, 2009

Geithner's Yuan Sense

China Daily 2009-04-20

A global economy that goes beyond the dollar

By Zhang Monan

Asia Times Online, Apr 21, 2009

Yuan trade move 'far reaching'

By Olivia Chung

FT April 22 2009

Yuan for all?

(コメント) ガイトナーは中国政府が人民元の為替レートを人為的に低く維持している、と非難しなくなりました。議会や産業界は憤慨するけれど、金融街や中国政府は歓迎するでしょう。

中国が膨大な外貨準備を持ちながらまだ貧しい国であり、そのドル建準備をSDRにしたいという願いも、中国自身の経済や政策の弱さであって、強さを示すものではない、とクルーグマンやWilliam Pesekは考えます。ドル暴落を回避することは、中国経済にとって重要です。特に、アメリカが金融緩和を極端に進め、財政赤字を長期的に増大させ、インフレとドル安も促すとすれば、なおさらに。

根本的には、中国が人民元を世界で利用される通貨にすることでしょう。

Zhang Monanによるアメリカの金融政策の批判は率直で、よく分かります。…Excessively issuing the dollar and raising national debt has long served as two major engines of US economic growth. As the world's largest debtor, the US now views the inflation and devaluation of the dollar as a secret weapon to curtail its mammoth foreign debt. Also, the dollar's status as the global reserve currency has easily enabled the world's largest economy to shift part of the price it should shoulder for inflation to other countries.

しかし、アメリカが金融緩和しただけでなく、中国も黒字をため込んでアメリカの金融緩和を助けてきました。同時にZhang Monanは、バブル崩壊後の日本の金融政策も通貨を世界にあふれさせて発展途上諸国に大きな被害を与えた、と批判します。今やアメリカが日本と同じ政策を採用している、と警告するわけです。だから、ドルの変動やアメリカ経済の不均衡から世界経済を切り離すべきだ、と。

円ではなく人民元が、金融規制や国際資本取引を自由化するにつれて、急速に国際通貨として重要になる、と予想されています。ユーロのように地域の通貨として支配的な地位を目指すのです。そして、SDRを介して、長期的にドルの国際通貨における支配的地位を交代します。


SPIEGEL ONLINE 04/17/2009

TYPHOON FROM THE WEST: Suicides on the Rise as Japan's Economy Falters

By Wieland Wagner in Tokyo

FT April 21 2009

Japanese bond issuance

NYT April 23, 2009

Japan Pays Foreign Workers to Go Home

By HIROKO TABUCHI

(コメント) 日本が世界に紹介されています。SPIEGELの記者は、大阪の餓死者に驚きます。そして企業の輸出依存、失業者、自殺者、政府の債務累積、などの不安を感じます。インターネット・カフェは失業者の簡易宿泊・求職コーナーになってしまいました。

FTが注目するのも、麻生政権の大胆な景気刺激策と債務依存です。…That is a lot for an economy with a debt to gross domestic product ratio skirting 200 per cent already. But it will get bigger. 郵政民営化は、このような時期に何をもたらすのか、市場の不安を高めるでしょう。

かつて好況において日系人の出稼ぎ労働者を積極的に雇用した企業も、今では解雇と帰国を促しています。日系人への利益還元や技術指導・訓練などを名目にしていた、日本のいびつな移民政策が方針転換に向かいます。

“We worked hard, we tried to fit in. Yet they’re so quick to kick us out,” he said. “I’m happy to leave a country like this.”


NYT April 17, 2009

Green Shoots and Glimmers

By PAUL KRUGMAN

The Times, April 18, 2009

Foundations of growth

FP April 2009

Imbalance of Powers

By Brad Setser

WSJ APRIL 18, 2009

Fed's No. 2 Allays Worries About Stimulus

By BRIAN BLACKSTONE

(コメント) PAUL KRUGMANは慎重派、The Timesの論説は楽観派です。すくなくとも、このまま大恐慌を再現することには向かわない、と。

Brad Setserは、G20が世界経済の構造的な不均衡を問題にしなかったことを重視します。国際収支の不均衡が蓄積される限り、再び危機の条件も蓄積されます。特に、G20は為替レートの調整に言及しなかった点で問題を残します。ドルと人民元とが固定されたまま、アメリカが景気刺激策をとる限り、将来のドル暴落も準備されているでしょう。

20は、基本政策についても対立を残しました。アメリカの主張する財政刺激策について、ヨーロッパと中国が反対したのです。なぜなら、危機の原因はむしろアメリカの債務膨張にあったからです。民間部門から公的部門に代わっても、アメリカが内外の不均衡(過剰消費と経常収支赤字)を放置して債務を増やす限り、次の危機が懸念されます。

アメリカ準備制度理事会の副議長、Donald Kohnも連銀の急激な変化を警戒します。

The Guardian, Sunday 19 April 2009

Budget for a Green New Deal

Colin Hines

WP Sunday, April 19, 2009

The Shape of the Recession

NYT April 19, 2009

It May Be Time for the Fed to Go Negative

By N. GREGORY MANKIW

FT April 19 2009

Inflation is looming on America’s horizon

By Martin Feldstein

(コメント) 景気回復の決め手が「量的緩和」であることに、Colin Hinesは憤慨します。政府が債務で支払うことができるなら、何でもできそうだ。それを「グリーン・ニュー・ディール」と呼んで、環境保護やエネルギー安全保障と結びつけるのが最近の流行りだが、歴史上では、リンカーンは南北戦争を戦い、ヒトラーは不況を脱出するためにアウトバーンを建設した、と。

Adam Posenによれば、アメリカの景気回復はU字型でもV字型でも、L字型でもなく、W字型になるそうです。なぜなら、1.財政刺激策による回復が成功しても銀行の不良債権処理に時間がかかり、再び悪化する。2.アメリカ経済の生産性は以前に比べて低く、成長が高まればインフレを生じる。その結果、連銀が短期金利を引き上げて、再び減速する。

N. GREGORY MANKIW の論説は、少し幼稚な不満調です。マイナス金利、学生の提案、Silvio Gesellやケインズの現金保有への課税、そして、結局、それはインフレと同じだ、と書きます。確かに、失業者の増加や政府債務が後世の負担を増すことに比べて、少々のインフレで経済状態が改善するなら、なんとも素晴らしいことです。

そして、N. GREGORY MANKIWは、たとえインフレ・ターゲット主義者のバーナンキでも、マイナス金利なしには目標を達成できない、と挑発します。

Martin Feldsteinは、目前のデフレを恐れるあまり、長期的な経済管理に失敗する、とオバマ政権を批判します。すなわち、空前の財政赤字(今後10年で、GDP比80%に達する)がインフレを避けられなくするからです。

1980年代には貨幣の供給を抑制してインフレを回避できました。しかし、今は金融も兆緩和しています。金融不安が人々を貨幣の保有に強く制約しているだけですから、この状態が改善されれば、一気にインフレに向かうかもしれない、と。

WP Monday, April 20, 2009

Our Depression Obsession

By Robert J. Samuelson

Asia Times Online, Apr 21, 2009

Not all economists agree

By Peter Schiff

FT April 21 2009

Why the ‘green shoots’ of recovery could yet wither

(コメント) Robert J. Samuelsonの他にも、多くの論説が1930年代と現代の類似性を指摘します。

かつて、イングランド銀行のMontagu Norman、ニューヨーク連銀のBenjamin Strong、フランス銀行のÉmile Moreau、ドイツ帝国銀行のHjalmar Schachtが、政治的対立もあって、為替レートや国際収支不均衡を円滑に調整できず、大恐慌と第二次世界大戦に至りました。今も、アメリカ連銀のバーナンキやECBのトリシェ、イングランド銀行のキング、中国人民銀行の周小川が、世界的不均衡から金融危機、世界不況への悪化を阻止するための国際協調に取り組みます。

20がIMFを通じて新興諸国や世界各地の金融不安に融資すると決めたことは、1931年のクレディット・アンシュタルト破綻から国際金本位制の崩壊、その後の世界経済会議を思わせます。その後、ようやく、金本位制が前提した経済学の正統的な理解が変わります。

Peter Schiffは、オバマの主張するケインズ主義に反対しています。特に債務に依存して景気回復を唱えることです。

FTも、オバマ政権やバーナンキが危機を回避する点で成功しても、金融システムや経済成長の健全さを回復するには不十分なことを強調します。世界の主要な金融当局や財政当局が需要を追加するために介入して、その効果がないとは思えません。しかし、問題は、いつ、どのようにして世界経済は正常な状態に戻るのか? です。日本を見ればわかるように、危機を回避するだけでは、長期の不況や停滞を解決したことにならない、とFTは警告します。


YaleGlobal, 17 April 2009

The EU Can Ignore Eastern Europe at Its Own Peril

Katinka Barysch

FT April 20 2009

Germany’s election

FT April 21 2009

Greek deficit weighs on eurozone

By Kerin Hope in Athens and Tony Barber in Brussels

WSJ APRIL 21, 2009

Europe's Forceful Response to the Financial Crisis

By JüRGEN STARKa member of the Executive Board and the Council of the European Central Bank

NYT April 22, 2009

Troubled Polish Port City Can’t Wait for Euro

By CARTER DOUGHERTY

(コメント) 東欧やバルト海の旧ソ連圏からEUに加わった諸国において、経済危機が都市暴動を含む政治危機に転化しつつあります。

財政安定成長協定(the Stability and Growth Pact)によってEUは加盟国がGDPの3%以下に財政赤字を抑制しなければなりませんが、ギリシャは政府の予測でも3.7%、EUは4.8%の赤字になると予想しています。2005年の見直し後も3%以下に抑制するよう求められていますが、不況によって、さらに多くの諸国がこの制限を超えるでしょう。ドイツの財務大臣は不満を述べていますが、見直しが求められます。

むしろ、この制限によって財政緊縮を強いられている加盟諸国に対する、金融・財政支援が必要になっています。一つの金融政策と各国に分割された財政政策を、EUは金融危機や不況に応じて調整することに失敗したように見えます。

しかし、JüRGEN STARKは、EUの財政・金融システムを考慮すれば、アメリカに劣らぬ刺激策や金融緩和を行ってきた、と主張しています。むしろ、インフレ抑制や安定協定への市場の信頼を回復し、財政健全化の目標を維持するために今後の政策を重視します。

NYTの記事は、ポーランドのユーロ採用を扱っています。スペイン、ギリシャ、イタリアの経験を見れば、ユーロの採用が容易でないことは分かります。貿易赤字を為替レートによって調整できない以上、賃金を下げるか雇用を減らして競争力を回復します。それでもポーランド企業はユーロ圏でなければ(ユーロ圏の隣国に比べて)輸出市場を失う、と感じています。

それは、かつてスターリンとチャーチルが引いた「鉄のカーテン」を思わせるようです。


NYT April 18, 2009

Why Thais Are Angry

By THITINAN PONGSUDHIRAK

FEER April 2009

After the Uprising

by Thitinan Pongsudhirak

(コメント) PONGSUDHIRAKは考えます。「タイの変化はネパールのような転換をたどらないだろう。王制はタイの歴史とアイデンティティーの一部である。また、政治の安定や経済の活力を損なうほどの民衆運動が定期的に起きたフィリピンのような経過もたどらないだろう。ビルマの軍事独裁体制に匹敵するほど歴史を逆転させることも、当然、あってはならない。こうした近隣諸国の経験から見て中間のどこかに、特にインドネシアが画期的な民主化に成功したことを受けて、タイの有機的な、最善の長期目標が見出される。」

アビシット首相は、特権階層に、民主化運動との和解を説得しなければなりません。

BG April 19, 2009

Thailand in trouble

SPIEGEL ONLINE 04/20/2009

A DIVIDED NATION: 'In Thailand, the Law of the Jungle Prevails'

Sukhumbhand Paribatrathe governor of Bangkok and a cousin of the king

SPIEGEL ONLINE 04/20/2009

INTERVIEW WITH EXILED FORMER THAI LEADER THAKSIN: 'I'm Like a Rat'

(コメント) BGの短い論説は、アメリカの民主主義という視点から見て、タイの政治的対立が仲裁しにくい性格であることを率直に示しています。すなわち、民主化を求める運動の代表は、2006年にクーデタで政権を追われ、国外に逃げた富豪のタクシンです。彼は特権階級の外から成りあがった人物であり、法を無視してイスラム勢力を殺りくし、バンコクの特権的エリートを排して家族に利権を与えました。他方、バンコクの反タクシン勢力も、選挙の結果を無視し、王制と結びつき、農村部の貧困を顧みません。

SPIEGEL ONLINEは、双方に対する面白いインタビューを載せています。「仏教徒による熱帯の楽園と思われていた国が、内戦や無秩序を議論している。あなたの社会はどうしてこれほど分裂してしまったのか?」 と、記者は尋ねています。

残念ながら、その答えは正しいけれど、常識的・表面的なものです。以前から貧富の対立、農村と都市の対立はあったが、政治エリートたちは一定のタブーや節度を守っていた、というのです。すなわち、王を尊敬し、対立をエスカレートさせなかった。それらが失われた、と。すなわち、タクシンがその強い個性と選挙による3度の勝利を経て、金の力で支配するようになった。伝統的なエリートたちのルールを変えたのだ、と。

タクシンは、何千もの麻薬密売人やテロリストを法に拠らず殺した、と主張します。彼らの殺害を命じたとは言わないが、彼らは町から消えて、メディアも触れなかった。空港を占拠するより、気に入らない者を町から消す方がよいのか? どちらも無法であるが、彼らは天使ではないし、われわれもも民主派だ。・・・

タクシンへのインタビューも興味深いです。「私はどぶネズミのように追放されたのだ。」 国民の支持が自分にある、という気持ちにより、穏健な表現に抑えられているかもしれません。

IHT April 21, 2009

Keeping Up With the Thais

By PHILIP BOWRING

The Japan Times: Wednesday, April 22, 2009

A violent warning for Thailand's urban elites

By TOM PLATE

Asia Times Online, Apr 23, 2009

The roots of Thailand's tension

By Charles E Morrison

(コメント) TOM PLATEジョン・ロールズの『正義論』を援用しています。その社会に帰属するすべての者が尊重する包括的な意思決定の仕組みが必要であること、自分たちの立場が守られ、改善され、尊敬されるように社会を組み立てていると信じることができなければ、「正義」は失われるのです。

タイ社会は、自分たちの優位を信じる都市のエリートたちと、下等とみなされる農村の貧しい住民との間に分裂し、主人と奴隷に分裂してしまいました。しかも、エリートたちは尊敬を失い、社会の公平さ(という印象)を回復できません。タイという社会や家族の一体性が失われてしまいました。彼らは民主的な近代政治を手に入れるかもしれません。しかし、伝統に依拠した「微笑みの国」は戻らないのです。

東南アジア各国が政治的な転換を経験しています。それは、教育の普及、政治意識の変化、経済発展、新しい情報通信技術、などが旧政治の変革を求めているのです。Charles E Morrisonは、たとえ混乱を経てでも、そのような近代的な政治契約を得るように積極的に支持しています。


FT April 19 2009

Europe’s left is failing to gain from the crisis

By John Lloyd

WP Tuesday, April 21, 2009

The Twitter Revolution That Wasn't

By Anne Applebaum

(コメント) 世界的な金融危機、不況が広まるなかで、なぜ左派政権・政党への支持は高まらないのか? ヨーロッパの例を考察しています。

例えば大国、イギリスやイタリアでは危機によって右派が支持を得ています。スペイン労働党政権、ザパテロ大統領は、高成長と高い支持率を誇ってきましたが、今は逆に、14%の失業率を負っています。小国でも、デンマークや北欧の社会民主党が政権を失い、苦戦しています。むしろ、フランスでは極左派が台頭しています。他方、ドイツでは大連立の後、極左派より、自由市場を掲げる政党が台頭しました。

テロ、移民問題、社会福祉などの不安が、左派よりも右派に有利なテーマになったからでしょう。進歩的な左派のイデオロギーが有効な解決策とは思われていないのです。グローバリゼーションの圧力が左派政党から効果的な手段を奪った、という不満があります。

イギリスの中道左派による政策ネットワークの代表、Olaf Crammeは考えます。「ネオリベラリズムの危機にもかかわらず、資本主義を改造する左派の提案は広く受け入れられていない。富と安全をどのように確保するか、信頼される対案を示すことは難しい。実際、多くの国で、保守派の政党が金融資本主義の成長に熱意を失い、左派以上に金融規制を唱えている。」

人々が左派に対して抱く不信感は、過去において、金融資本の成功から社会プログラムの財源を得てきた左派政権の姿勢、また、非難するだけで、有効な政策を持たず、政権に加わることもなかった極左派の姿勢に向けられています。そして、たとえ今は目立った支持を集めていなくても、情勢が短期間に転換して、極右の政治勢力に関心が集まることをJohn Lloyd警戒します。

Anne Applebaumは、ヨーロッパのもっとも貧しい、世界でも最も不幸な土地として挙げられるモルドバにも、ようやく、情報革命がおよんで政治を変え始めた、と考えます。この事件を世界のメディアはTwitter Revolutionと呼びました。

モルドバのVladimir Voronin大統領は、元ソビエト秘密警察の署長であり、決して偶然とは思えないが、モルドバで最も裕福な男の父親である。これに対して、現代の情報技術を手にした若者たちが、ソーシャル・ネットワーキングによって、民主主義を要求し、不正選挙に抗議するデモを組織した。若者たちは1000人を集めたいと願っていたが、1万人を超える参加者が集まった。

それはイギリスのフーリガンや、ルーマニアで首都の街頭を占拠したモッブの破壊や放火ではまったくありません。逆に、デモで暴力行為を扇動したのは、モルドバ秘密警察が潜入させた者たちでした。しかも、モルドバはヒトラーとスターリンの合意でルーマニアから分割された土地であり、今はルーマニアがEUを目指し、モルドバの支配者はロシアを頼っています。EUは平静を呼びかけ、ロシアはルーマニアによる政治介入やクーデタを非難しています。

民衆の抗議は組織されておらず、多数の支持もないようです。しかし、これからも繰り返し集まる力を得たでしょう。

FP May/June 2009

Thoroughly Modern Marx

By Leo Panitch

(コメント) 世界中で『資本論』が売れている、と言います。なるほど。世界資本主義の危機だから。マルクスがもし再生したら、現代の危機を理解し、問題を指摘しただろう。実際、根本的な資本主義の改革を求めるのに、マルクス主義者である必要はない、とLeo PanitchDean BakerWillem Buiterの提案を示します。「経済の金融課の次は、金融の社会化に向かう!」

銀行危機に対して日本やスウェーデンの取り組みや、地球温暖化の対策に排出権取引を提案するオバマ政権に対して、Leo Panitchはマルクスも提案したかもしれない、と指摘します。ただし、政治的な権力の転換がなければ、それは資本主義の救済でしかない、と。

資本主義の矛盾がこれほど働く人々に大きな負担を強いている今でも、マルクスなら資本主義のダイナミズムは続くと考えたはずだ。彼はユートピアを説くのではなく、それぞれの国で労働者が権力を握ることを唱えるリアリストだったから。

The Guardian, Monday 20 April 2009

Hobbes's Leviathan, Part 3: What is selfishness?

Mary Midgley

(コメント) むしろ、ホッブズを読み直す者もいるでしょう。


WP Sunday, April 19, 2009

Why We Should Banish Larry Summers From Public Life

By Naomi Klein

The Guardian, Monday 20 April 2009

Economics in a bubble

Dean Baker

FT April 21 2009

A flawed first draft of history

By Lionel Barber

FT April 21 2009

How economics lost sight of real world

By John Kay

(コメント) ラリー・サマーズをこの惑星から、とまでは言わないが、せめて公の席から追放したい、とナオミ・クラインは書いています。彼女は、サマーズのような頭の切れる知識人たちが、次々に間違った政策決定を絶対的真理として主張してきたことを「ブレイン・バブル」と呼びます。

同様に、他の論説も、経済学や経済ジャーナリスト、経済専門誌などの大失敗(現実の変化、危機の到来を見ていなかったこと)を描いています。


FT April 19 2009

In search of an Obama doctrine

By Clive Crook

The Guardian, Monday 20 April 2009

The great shift in global power just hit high gear, sparked by a financial crash

Martin Jacques

(コメント) オバマの野心は本物だ、とClive Crookは注意します。多くの人は、オバマの雄弁さを中身がないことだと誤解しているかもしれないが、良かれ悪しかれ、オバマは本当にやるだろう。金融危機を救済する過程でアメリカ経済を作り替え、外交政策においても国際秩序を作り替える。これはすでに「オバマ・ドクトリン」だ!?

しかしClive Crookは、国内改革やスタイルの変化はともかく、外交政策においてオバマは失敗しつつある、と見ています。高い人気を得ながら、成果はないだろう、と。同盟諸国はコストを支払いたくないのです。

1930年代の国際金融危機と世界恐慌について、しばしば言及されることは、現代と同じ覇権の移行期である、という点です。Martin Jacquesは、危機によって中国への覇権移行は加速する、と主張します。2008年から、中国の指導者たちは急速に態度を変え、国際秩序についても積極的な発言を始めました。

この3月に出版された5人のナショナリストによるベストセラー、『不幸な中国』は、中国には覇権国になるしか選択肢はない、と主張しています。また、ドルに代わって人民元が国際通貨の役割を担う時代を予想します。

CSM April 21, 2009

One way to boost US-China military cooperation

By Kent Hughes Butts and Geoffrey D. Dabelko

Asia Times Online, Apr 22, 2009

OBAMA, CHANGE AND CHINA: Brzezinski's G-2 grand strategy

By Henry C K Liu

WSJ APRIL 23, 2009

The World Depends on U.S.-China Cooperation

By WILLIAM S. COHEN

(コメント) 環境問題で協力し、安全保障でも協力する。アメリカと中国は、双方に利益となる分野を増やして協力関係を築くだろう、と予想する論説があるのは当然です。

Henry C K Liuは、G7によるマルチラテラリズムを主張するサマーズに対して、ブレジンスキーの米中協力関係(G2)を対比します。そして、中国は第二次大戦後の国際秩序を転換するという目的を持たない、と主張します。


The Japan Times: Sunday, April 19, 2009 North Korea's rocket test and the road ahead By JAMES J. PRZYSTUP

IHT April 20, 2009 Israel, Iran and Fear By ROGER COHEN

WSJ APRIL 20, 2009 Spinning a U.N. Failure

The Guardian, Tuesday 21 April 2009 Durban II: Ahmadinejad's charade Seth Freedman

The Guardian, Wednesday 22 April 2009 The killing goes on in Gaza Joe Stork

LAT April 23, 2009 Bombing Somalia is a dud By Micah Zenko

The Guardian, Thursday 23 April 2009 To bomb, or not to bomb, Iran Scott Lucas

(コメント) 北朝鮮、イスラエル、イラン、ソマリア、ガザ、など。


April 20 (Bloomberg)

Bill Gates of India Offers 1.2 Billion Answers

William Pesek

(コメント) 7億1400万人が有権者登録するインドの政治について。インド経済が必要とするインフラや教育、カースト制を廃止するためのイデオロギーの戦い、労働システムの改善、などは政治によって達成すべきことです。シン首相の改革が依拠する複雑な政治基盤を乗り越えるチャンスを、InfosysNandan Nilekaniのような新興起業家たちに期待します。


NYT April 21, 2009

Immigration and the Unions

(コメント) 移民労働者たちを非合法化し、未登録の地下経済に押しとどめておくことが、アメリカ人労働者の雇用を増やすことにはなりません。労働組合も、移民労働者たちの権利を強化し、彼らの組合を助けるべきだ、とこの論説は訴えます。


SPIEGEL ONLINE 04/22/2009

PAUL BRINKLEY'S WAR

By Ullrich Fichtner

(コメント) 資本主義によってイラクを平和にする。国防総省ペンタゴンの次官補であるPaul Brinkleyは、"business transformation"の責任者、the Task Force to Improve Business and Stability Operations in Iraq (TFBSO)の監督者です。

3月の米兵の死亡者は4名であり、イラク人の犠牲者は278人(民間人が229人)でした。それはイラクにとって非常に「平和」な数字だそうです。少し以前なら、その10倍は殺されていました。

平和への移行に向けて、イラク国民は汚職や宗派対立を克服しようとしています。それとともに、民主的に統治された国家として、再び自分たちの石油資源を市場に売ることができなければなりません。後者を実現することがBrinkleyの使命です。

イラクにおける民間投資を回復すること。成長や雇用を通じて、人々の平和を確立すること。


LAT April 22, 2009

Obama's nuke-free world

WP Wednesday, April 22, 2009

Obama's Foreign Policy Challenge

By Henry A. Kissinger

(コメント) オバマの演説に対する二人(Andrew Grotto and Gabriel Schoenfeld)の論争は興味深いです。一方は、レイキャビク会談を指摘し、他方は、軍縮を唱えた1930年代の国際会議を厳しく批判したケナンの言葉を引用します。

Henry A. Kissingerは、まさにケナンと同じように、「核のない世界」というオバマのユートピアを、現実からの逃避であると非難するはずです。

しかし、そうでもないようです。Kissingerは、世界が様々な問題に直面しており、しかもそれらが密接に関係している、と認めます。オバマ政権が目指すのは、このような現実における世界秩序の転換です。オバマはこの秩序を「協調外交(a sort of concert diplomacy)」と理解します。それはナポレオン戦争後の20年間に実際に世界を支配した秩序です。アメリカの覇権は、他国の意見を聞くこと、その承認から生まれます。権力は共同体の意識から生じ、各国はその資源に応じて責任を与えられます。

世界経済危機はそれにふさわしい課題でした。オバマは国際会議で様々な国と意見を交わし、異なった意志に従い、国際秩序に向けたそれぞれの責任を分担しました。アメリカはその中で、事実上の拒否権を得ていたのです。他方、環境問題や安全保障には、また異なった交渉が必要です。

Kissingerは、特に安全保障における北朝鮮とイランの核武装阻止を取り上げています。周辺諸国や安保理の要求をも無視する北朝鮮には、「協調外交」に対比して、伝統的な「ギブ・アンド・テイク」の外交交渉が指摘されます。さらに、イランは地域の安全保障に向けた勢力均衡を形成する相手です。両者には異なった「外交」戦略が必要です。

Kissingerは、「協調外交」によって世界秩序を変える分野を見極めるために、こうした伝統的外交戦略の細部を求めます。

The Japan Times: Wednesday, April 22, 2009

Nuclear disarmament: too much, too soon?

By RALPH COSSA

(コメント) もしアメリカが核軍縮を一方的に指導し、アジア太平洋で核弾頭を減らせば、逆に中国がそれを増やして、冷戦期に米ソが相互確証破壊で達成したような抑止を目指すかもしれません。そのとき、アメリカは日本に対する核の傘を提供するかどうか、日本側に深刻な疑念が生じるだろう、と指摘します。

それゆえ、核軍縮は多角的に行わなければならず、しかも非核武装の同盟諸国に対して十分な説明と情報を与えなければなりません。

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The Economist April 11th 2009

Safe without the bomb?

China and the G20: Taking the summit by strategy

Water rights: Awash in waste

Water: Sin aqua non

The troubled Baltics: Still afloat in the Baltic, just

Buttonwood: Spin and substance

Japanese banks: A capital affair

(コメント) アメリカ大統領が多忙さに負けない意志と超人的な能力を必要とすることに、あらためて、感嘆します。核軍縮、不況対策、金融規制、などの国際協調が議論されており、国際連盟や軍艦の保有比率を決めた時代を連想させます。オバマが、国内経済の立て直しに失敗したゴルバチョフのようにならないか、と心配です。

特に面白いのは、水の管理です。食糧や土地、女性(売春)、臓器、排出権、魚の国際管理と権利の売買・市場化を思えば、水についてもこの雑誌が同じ発想を支持するのは当然でした。しかし、読んでみると面白いです。世界の水循環の4分の3を支配しているのは農業であり、もし水の利用権を市場で売買できれば、農民たちは価格に応じて作物や農耕技術の選択を変え、世界の水不足は解消されるだろう、と期待します。ただし、市場化が円滑に機能するための情報や制度は、現実にまだ存在しないのですが。


The Economist April 11th 2009

The G20 and the IMF: Banking on the fund

The IMF – Mission: possible

Economics focus: Cycle-proof regulation: Raghuram Rajan

(コメント) IMFに関する論説です。IMFはこれまで破産した国家(スピード違反した酔っぱらい運転手)を取り締まる警察官でしたが、新しく(交通事故のような金融破たんリスクの)保険会社にならなければならない、という話です。そのためには、IMFが被保険者(新興市場や、さらに国際金融サービス国家)に好かれなければなりませんが、まだ難しいようです。

IMFがもっと好かれるためには、IMFのガバナンスを改善する、もっと加盟諸国の意見を吸収し、反映する制度改革が必要です。クォータの再分配、トップの人事、新クォータのオークション、IMFの融資・保険政策に関する財務大臣の会議、といったアイデアが紹介されています。

IMFの主任エコノミストであったRajanは、危機を経験しているときこそ、金融政策や金融規制が景気循環を増幅しないように改善を求めます。