今週のReview
4/20-/25
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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******* 感嘆キー・ワード **********************
アイルランド、 タイの政治不安、 ワシントン・コンセンサス、 新しい混合経済体制、 北朝鮮、 アメリカの金融不安、 ソマリア沖の海賊、 EUの金融不安、 対イラン外交の転換
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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
FT April 7 2009
Irish budget
NYT April 8, 2009
Ireland's Emergency Budget Includes Help for Banks
By EAMON QUINN
(コメント) 経済取引は8%も縮小し、失業率は12%に達しそうです。EUの加盟国であり、ユーロを採用しているアイルランドの危機がこれほど厳しいのであれば、アイスランド政府や国民がそれを願うはずもありません。
Brian Lenihan財務大臣は、危機を前提にした明確な予算案を示しました。政府の支出を大幅に削り、増税することは避けられない。そうでなければEU内で合意された財政赤字上限の4倍を超えることになるからです。為替レートを切り下げることはできませんが、輸出を伸ばして回復を促すことが政府の唯一の希望です。ただし、歴史が繰り返して、直接、アイルランド人労働者を輸出することになるかもしれません。
なぜ、これほど危機が深刻なのか? 住宅バブルが大きかった以上に、財政刺激策や金融政策、為替政策を奪われていることが深刻です。本来であれば、ECBが金融緩和し、EU規模で財政移転が行われ、ユーロ安を促すような介入や国際協調が話題になるはずです。財政赤字上限を景気変動に合わせて調整する政治メカニズムが必要です。それを回避することがドイツやフランスのせいであれば、EUの責任ある指導的地位を彼らは失うでしょう。EUない政策意思決定の制度改革か、あるいは分裂を覚悟した政治混乱が待っています。
EAMON QUINNは、アイルランド政府の銀行救済策として “Bad Bank” が設立されたことに言及します。それは800億〜900億ユーロの不良債権を銀行から買い取るa National Asset Management Agencyです。すでに政府は主要銀行Anglo Irishを国有化しており、その不良資産を調べています。
アイルランドはEUの他の加盟国に比べて所得税が低かったため、これを大幅に引き上げて財政赤字を抑制します。さまざまな公的支出を削減する提案も含めて、アイルランドの成長モデルthe era of the Celtic Tiger economyは完全に終わりました。
それでもユーロを捨てないのは、この経済危機を乗り越えて回復を導くまで、ユーロ建ての借り入れを増やす必要があるからです。短期的な財政規律と長期的な成長政策を金融市場に示すことで、ユーロによる借入れ(そして金利差)は維持されます。
The Guardian, Wednesday 8 April 2009
Reality caught up with Ireland's boom
Niall Stanage
FT April 8 2009
Celtic Tiger is an endangered species
(コメント) Irish Examiner 紙はその予算を「地獄の予算」 "The Budget from Hell"と呼んだそうです。Niall Stanageは、アイルランドの急成長はその民族や歴史の神秘によるものではなく、英語が使用されて、教育を受けた野心的な若者たちが、法人税を極端に低くしたことで投資を集めたことが一時的なブームをもたらしたに過ぎない、と考えます。しかし、多くの人々はその軌跡に酔い、自分たちをも偽ってバブルを膨らませたのです。
それが突如として崩壊し、これほど短期間で経済を縮小に向かわせ、苦痛を増していることにも、アイルランド政府は耐えるしかありません。アイルランドは、ニューヨーク、ワシントン、ブラッセル、北京が動かす、もっと大きなゲームの駒でしかない、と嘆きます。
将来も、その債務を払い続けられるのか、何年先までも、市場を納得させることは難しいでしょう。
The Guardian, Friday 10 April 2009
Ireland's pain begins
Mary Fitzgerald
FT April 12 2009
Celtic Tiger sharpens its claws for recovery
By Peter Sutherland
(コメント) オバマ政権が世界中に財政刺激策を強調して行おう、と呼びかけて、まだ1か月もたたないのに、金融市場に強制された小国の政府が受け入れる空前の緊縮予算ばかりです。一体、G20で叫んでも、金融市場には何も聞こえていなかったのか?
ブームの間にできた素晴らしい住宅街も、優れた工業設備も、いまでは放置されて朽ちるか破壊されるのを待っているだけです。The Economist誌が2004年にthe "best place to live in the world"として選んだことも、現在の苦境を緩和する役には立ちません。
しかしPeter Sutherlandは違います。住宅バブルに依拠した財政黒字や経常収支赤字の拡大は、金融危機によって急速な不況をもたらしています。それに対応したアイルランドの予算案をSutherlandは支持し、不況によって賃金が下落することを受け入れる市場の弾力性に注目します。それは経済の競争力を高め、財政赤字で不況を緩和するのではない、もっと長期的に持続する効果を上げる、と。
世界経済が回復に向かうとき、アイルランドの成長モデル「ケルトの虎」は最初によみがえる、と。
Foreign Policy Thu, 04/09/2009 Making sense of Thailand’s turmoil By Roberto Herrera-Lim
BBC 2009/04/11 Asean fiasco deepens Thai stalemate By Jonathan Head, BBC News, Bangkok
BBC 2009/04/12 Thai battle of wills heads for climax By Jonathan Head, BBC News, Bangkok
(コメント) Roberto Herrera-Limは、この闘いが、国外追放されているタクシン元首相とタイ農村部や貧困層を巻き込んだ「貴族制」を批判する者たちと、王政に結びついたタイのエリート階級やその政治構造・軍隊・官僚制度との間に起きた、非常に深刻な対立であると考えます。その解決には時間がかかり、しかも結末は予想できません。
ASEANの会場を取り巻き、アビシット首相を批判するタクシン派の集会が続きました。彼らは、2006年に軍部が介入してタクシンを政権から追放したクーデタの責任者として、プレム前首相やプミポン国王を批判します。支持者たちに向けて、明確に、革命を呼びかけます。バンコク市内に2万人から3万人の支持者がいます。
ただし、政府がデモ隊の鎮圧に躊躇することで社会不安は起きるでしょうが、「革命」は起きない、とBBCは紹介しています。
FT April 12 2009 Thailand descends into chaos By Tim Johnston in Bangkok
FT April 12 2009 Colour-coded challenge to Thai elites By Tim Johnston in Bangkok
(コメント) デモ隊を追い払うのは、警察なのか、あるいは政府を支持する階層が雇った暴力団か? こうした治安回復が意味するものが何か、まだ分かりません。また、アメリカやEUからは反政府デモが暴力を控えるように求めています。首相による戒厳令も、新しい権利や政治の姿を求める民衆にとって、十分な手段にならないだろう、と記事は予想します。
政府はタクシン政権の時代の腐敗やポピュリズムを批判し、反政府派は民主主義とエリート主義との対立を強調します。
The Times, April 13, 2009 Thailand Humiliated
The Guardian, Monday 13 April 2009 Thaksin waits in Thailand's wings Simon Tisdall
The Guardian, Monday 13 April 2009 The Reds' fight for Real Democracy Giles Ji Ungpakorn
(コメント) 政府は軍部に支持されていますが、タイ政治における軍の頻繁な介入は統一よりもん分裂をもたらし、国民の利益を唱えながら特殊な派閥の利益を示しました。他方、タクシンは追放された億万長者であり、その政権や経済勢力には腐敗の疑惑が多くあります。タクシンの政治手法はポピュリスト的であり、反政府的なイスラム教徒に対する厳しい弾圧は論争になりました。
しかし、タクシンが政治への発言や抵抗を続ける重要な理由は、彼が選挙で十分な得票差により権力を手にした首相であり、再選されたにもかかわらずクーデタで追放された指導者であることです。他方、アビシット首相は、バンコクの大衆抗議によって崩壊したタクシン派の政府に代わって、反タクシン派が指名した代表に過ぎません。タクシン派の抗議を「国家の敵」と呼び、「法に基づいて」排除するという正当性を強く示すことはできません。
タクシンは選挙を求めています。もし選挙で彼が勝利すれば、再び軍がクーデタをおこすかもしれません。Simon Tisdallは、政治的な爆発よりも、取引が可能であると考えます。ただし、軍を町に出さないことです。
Tシャツの色の違いは何を意味するのでしょうか? Giles Ji Ungpakornは、対立はますます階級対立になってきた、と指摘します。これは、2005年以来、それまで左派が存在しなかったタイ政治に、億万長者でポピュリストのタクシンが貧困層を基盤とした政治権力を企てた結果です。
赤いシャツを着た、彼らが求める真の民主主義とは、軍隊や王室が結託して政治権力を操作する体制を終わらせることです。エリート層は憲法を超えた存在として王室を利用し、法廷を利用し、黄色いシャツを着たバンコクの暴動を組織してきました。
Giles Ji Ungpakornは、赤シャツの反政府行動が、単なるタクシンの支持者ではない、とも指摘します。むしろ赤シャツはタクシンが王に忠誠を示すことに不満です。彼らはコミュニティーから組織された反体制派であり、共和国派、市民政治運動なのです。それに反して、黄シャツ派は、新しい独裁、伝統的な政治支配の更新を狙い、メディアや中産階級、NGO指導者にも支持されています。
IHT April 14, 2009 What Shirt for Thailand? By PHILIP BOWRING
WSJ APRIL 14, 2009 The Thailand Lesson
(コメント) 王室はエリート層や軍部保守派とあまりにも密接な関係を築き過ぎたと思います。また、PHILIP BOWRINGは、タクシンが反政府行動をどこまでも激化させるとは考えていません。両者には政治的な妥協の余地があるのです。そして、民主主義による権力の分割や移行を介して、タイ政治が安定し、王室は国民統合のシンボルとなる道を求めます。
WSJも、アジアの各国で「管理された民主主義」が崩壊しても、その受け皿がないケースと違って、タイは政治改革を通じて投資を呼び寄せ、富をもたらす可能性に富んでいることを指摘します。
BBC 2009/04/14 No winners in Thailand's crisis By Jonathan Head
SPIEGEL ONLINE 04/14/2009 RED SHIRTS ABANDON PROTEST: Bangkok Riots Over -- For Now By Jürgen Kremb in Bangkok
FEER April 2009 Time for an 'Orange Revolution' by Jamie F. Metzl
Asia Times Online, Apr 15, 2009 A battle won in Thailand's 'war' By Shawn W Crispin
April 15 (Bloomberg) Anarchy in Streets Builds When GDP Isn’t Shared William Pesek
(コメント) 今回の政治紛争にも勝者はいない、とBBCのJonathan Headは考えます。タイには、党派を超えるオバマのような政治指導者がいない、という声を伝えます。
Jamie F. Metzlも、タイの政治が赤色でも黄色でもない、オレンジ色の革命を実現するまで、混乱は収まらない、と考えます。双方の政治勢力がタイの政治制度を変えて、民主主義に参加する道を開くことです。
それは、William Pesekが指摘するように、富を生み出す過程に参加する平等な権利を、政治が保障することでもあるでしょう。タクシン経済学を再現しても解決にはなりません。
東南アジアで最も成功した経済が、それにふさわしい政治制度を求めています。輸出によって高成長を実現できた時代を、富の分配による安定的な政治改革にも利用しなかったことが、経済危機のアジアで表面化する? インドネシア、マレーシア、フィリピン、そして、中国やインドでも。
FEER April 2009 Thailand Needs New Elections by Colum Murphy
IHT April 17, 2009 Thailand’s Failed Experiment? By ZACHARY ABUZA
(コメント) ZACHARY ABUZAは、アビシット首相がタクシンと和解し、軍や裁判所は政治運動を禁止してはいけない。政府が選挙管理内閣を指名して、タクシンも参加した選挙を行い、勝利した側が序を回復し、反対派は抗議運動を放棄するべきだ、と主張します。
The Guardian, Friday 10 April 2009
The Washington consensus is dead
Anthony Painter
(コメント) オバマによって「ワシントン・コンセンサス(ブッシュ・ドクトリン)の終わり」が示されました。主要国はオバマの示す新しい秩序に直面します。アフガニスタン、パキスタンをどうするか、世界経済の規制と管理をどうするか、NATOはどうなるのか、核の拡散、米ロ関係はどうなるか、など、オバマは先週だけで示したのです。
「ワシントン・コンセンサス」、規制緩和、市場が最善の答え、価値に関わらないエートス、そのような政策態度は終わりました。オバマのプラグマティズムのオバマ外交は、リアリズムによって鍛錬された理想を大義とします。
WP Friday, April 10, 2009; A17
It's Your Country Too, Mr. President
By Charles Krauthammer
(コメント) 数時間前に行われた北朝鮮のミサイル発射にも言及して、オバマはプラハで核のない世界を約束しました。「ルールが確立されるべきだ。違反者は処罰される。・・・強い国際的な対応を示すときだ。」 どのような? とCharles Krauthammerは批判します。安保理は、非難するどころか、関心を示すこともないだろう。
彼にはビジョンがあるとしても、それを実現する手段がない。北朝鮮さえ止められない核拡散防止条約や、ロシアとの核削減交渉を進めても、ヨーロッパにおけるオバマ人気を高める程度にしか役立たない。
アメリカの傲慢さを反省したからと言って、オバマは何を得たのか? アフガニスタンにヨーロッパは兵士を送るのか? 追加の財政刺激策を決めたのか? ロシアがイランとの交渉に協力し、中国は北朝鮮の行動を抑えるのか? グアンタナモの囚人を引き取るために外国の政府が押し寄せたか? オバマは現実を知らない。
オバマが外遊すればするほど、再びアメリカの衰退を称賛するだろう。反アメリカ的な大統領。
The Guardian, Friday 10 April 2009
Socialism has failed. Now capitalism is bankrupt. So what comes next?
Eric Hobsbawm
(コメント) 資本主義(国家の関与しない、純粋な資本主義、ブルジョアの無政府主義)も社会主義(私的な利潤追求に汚染されない、計画された社会主義)も破たんした。1980年代に社会主義の政治システムは崩壊し、サッチャー、レーガン以来の自由市場資本主義も目の前で消滅しつつある。
将来は、混合経済のものであろう。しかし、どのような?
ソ連型の計画経済に戻ることはあり得ない。それは政治的な過ちに加えて、経済が停滞し、非効率になっていた。しかし、社会主義の示した教育や社会目標の達成を忘れてもいけない。しかし、欧米の社会主義者たちは、すべて自由資本主義の豊かさに騙されてきた。ブレアとゴードン・ブラウンは、単にズボンをはいたサッチャーだった。これほどの富をもたらす経済システムは資本主義しかない。社会主義政党は分配を是正するだけだ、と。
グローバリゼーションは、そのような左派政党の基礎を掘り崩した。イギリスの新しい労働党(New Labour)は、サッチャー的なイギリスの復活に魅了され、世界自由資本主義の神学に帰依した。そして、ロンドンを億万長者たちの金融センターとしてマネー・ロンダリングを賄い、イギリスのGDPに20%から30%も追加した。その結果、金融危機がイギリスを揺るがしている。
危機を克服する方法も、世界資本主義に代わるものも、政府には見つけられない。進歩的政策はどこにあるのか?
経済成長や豊富さは、目的ではなく手段である。本当の目的は、われわれの生活(人生)であり、その機会を豊かにし、希望を与えることだ。例えば、億万長者のパラダイスとなったロンドンを見ればよい。この都市でどのような人生が可能であるか? 何百万人もの人々がどのように職に就いて暮らしているか? ミシュランの星を並べるレストランにシェフはひしめいても、子供たちに十分な学校はない。たとえロンドンの諸大学にフットボール・チームが結成できるほどノーベル賞受賞者がいるとしても、子供たちの学校の不十分さを補うものではない。
進歩的政策とは公的なものであり、私的なものではない。それは諸個人の所得や消費の増大ではなく、その機会を増やすものだ。A.センはそれを、集合行為によって「ケイパビリティー」を高めること、とみなした。公的意思決定は、人々の生活を豊かにする集合的な社会的改善を目指す。今世紀最大の問題である環境の危機に対してもそうだ。
The Guardian, Wednesday 15 April 2009
The fight for democracy goes on
Imran Khan
FT April 10 2009
Man in the News: Kim Jong-il
By Christian Oliver
YaleGlobal, 10 April 2009
The Koreas: A Tale of Two Triangles
Han Sung-Joo
FP April 2009
Ending North Korea's Endless Nuclear Drama
By Morton Abramowitz
FT April 12 2009
Sanctions will have no effect on North Korea
By Andrei Lankov
(コメント) Han Sung-Jooは、北朝鮮と同様に、韓国もアメリカと中国の間で制約された行動を強いられていることを「トライアングル」として説明します。
Morton Abramowitzは、アメリカ自身のジレンマを二重に描きます。一つは、1994年の合意です。基本的に、北朝鮮が核開発を凍結し、国交正常化に向かう「賄賂」として、軽水炉の建設や重油などの援助を約束しました。もう一つは、6カ国協美に参加する諸国の姿勢が大きく異なっていることです。そのため、報酬・賄賂と制裁・威嚇とを組み合わせた通常の国際交渉メカニズムは機能しないのです。それは、米中経済関係の深化や金融危機によって、さらに難しいものとなっています。
その一つのカギが、中国もアメリカも日本政府が核武装することを考えないように、という懸念であるのは、むしろ日本の重要な役割であり、新しい構想への責務でしょう。核兵器やミサイルのない安全保障地帯を作る構想があって、初めて、すべての交渉は動き出します。
Andrei Lankovは、北朝鮮への制裁が効果を持たないと断言します。なぜなら中国とロシアが反対するからです。すでに2006年に核実験を行った際、北朝鮮はそれを学んでいます。制裁による威嚇は無駄だ、と。
軍事的な攻撃は近隣諸国が強く反対し、経済的な封鎖や金融制裁も、たとえ行っても北朝鮮の体制が変わることはなく、すでに飢餓状態の国民を苦しめるだけです。それでも過剰なレトリックに対抗して相互に空しく威嚇するなら、最後に折れるのは北朝鮮ではなくアメリカでした。しかも賄賂を積み増す結果になったのです。
最善の対応策は、北朝鮮の威嚇を無視することだ、という結論になりそうですが、Andrei Lankovはそれにも反対しています。無視されることに対して、北朝鮮はミサイルを発射しました。交渉を続けるしか方法はなく、空しい威嚇が金正日の得点にはならないことを学ぶように説得する、と結論します。
LAT April 14, 2009
Unleash the financial furies against North Korea
By Juan Carlos Zarate
The Guardian, Tuesday 14 April 2009
In the hall of mirrors of the ailing Kim, nothing is quite what it appears
Simon Tisdall
WSJ APRIL 14, 2009
Groundhog Day in Pyongyang
FT April 14 2009
North Korea expels US nuclear monitors
(コメント) Juan Carlos Zarateは、北朝鮮が反応したのは、安保理の決議ではなく、アメリカが金融制裁を行ったときだ、と主張します。北朝鮮との取引がある金融機関をアメリカの金融システムから遮断するのです。外交交渉と軍事力の行使に限らない、スマート・パワーとして、金融制裁は非常に効果的である、と。
北朝鮮は、国際査察と核能力の廃棄に向けた作業によって制限を加えられた、という観察もあります。独自に軽水炉を動かす技術力もなく、その能力を限界まで示すことで、援助を有利に交渉することが目的だ、と。
IHT April 15, 2009
Nuclear Advice
By MILAN VODICKA
CSM April 15, 2009
A bold Plan B for North Korea
By Ted Galen Carpenter
Foreign Affairs (http://www.foreignaffairs.com)
Pyongbang! :Washington’s Korea Conundrum
Victor D. Cha
(コメント) MILAN VODICKAは、オバマが望む「核のない世界」を実現する条件を具体化します。1.北朝鮮のような無法国家に核を放棄させる。そして、2.イスラエルに隣人より先に、3.それゆえイランにも、4.パキスタンとインドに、5.ロシア、6.英仏、7.中国、も核を放棄させる。しかし、アメリカは優れた核兵器をすでに開発しているではないか? と言えば、8.アメリカは核・技術を放棄する・・・?
そのような現実は起こらない。核兵器は冷戦を冷戦のまま抑止した。アメリカ以外の国が核兵器を開発し、使用していたら、異なる世界秩序が今の私たちを支配したはずだ。
Ted Galen Carpenterは、アメリカが北朝鮮の独裁体制を終わらせる方法を考えます。それは、中国が協力することです。
しかし、本当に外交交渉しかないのか? しかも、外交で北朝鮮の非核化が実現できるのか? Ted Galen Carpenterは、この前提を疑います。もし北朝鮮が核武装を完成するつもりなら、しかも、軍事攻撃を選択できないなら、3つの選択肢が残ります。1.多角的な制裁を強める。2.北朝鮮を核保有国として認め、抑止する。3.中国と協力して、北朝鮮の指導部をクーデタで倒す。
この最後の可能性は、アメリカが中国に十分な報酬を与えれば可能である、と考えます。すなわち、中国が求めるのは、在韓米軍の撤退、さらに、韓国との安全保障条約の見直し、あるいは、台湾海峡に対する関与の見直し、です。
Victor D. Chaも、北朝鮮の金正日が健康を回復し、再び威嚇と援助を取引する限り、また、他国への核流出を許す限り、このまま交渉を続けるだけではオバマ政権の失敗になる、と考えます。短期的には、制裁を強め、長期的には、民主的な体制への転換を促すことでしょう。
すなわち、安保理決議を強化し、経済制裁を加え、テロ支援国家の指定も再考する。さらに、中国や韓国と緊密に情報交換して、金正日に代わる、北朝鮮の次の指導体制を合意する。安全保障と経済援助の提供を約束する。アメリカと周辺諸国は、北朝鮮から逃れる人々への教育と食糧を支援し、人道的支援を格段に増やす。アメリカの景気刺激策の一環として、北朝鮮での住宅建設をミシガンから(自動車産業の労働者の雇用として)請け負っても良い。
BG April 16, 2009
How to deal with N. Korea
By Dr. Hui Zhang
(コメント) 逆に、もし北朝鮮が安全保障とアメリカとの国交正常化を求めて、直接交渉を望むのであれば、アメリカ政府からそれを認めてやる、という主張も出てきます。それによって北朝鮮は非核化し、長距離ミサイルとその技術を放棄します。
FT April 10 2009
Currency squabbles are set to worsen
(コメント) 1930年代の「近隣窮乏化政策」に対する不満と同じように、ユーロ圏はイギリス・ポンド安に、アメリカは中国・人民元の過小評価に、赤字国は黒字国の為替レートに、黒字国は赤字国の保護主義に、不満を述べています。
誰もが正しく、誰も正しくはない。正しくは、こうした論争だけでは不況が終わらないこと。需要を増やす政策が正しいのです。そして、黒字国は、赤字国よりも需要を刺激しやすいことを忘れてはなりません。
April 14 (Bloomberg)
Dollar’s Fade Won’t Support Stock Rally
Paul Kennedy
Asia Times Online, Apr 16, 2009
Decouple the world from the dollar
By Korkut A Erturk
(コメント) Paul Kennedyは、ドルの歴史的な暴落局面が近いと感じています。中国の指導者たちがドル資産の損失を懸念し、国連の特別委員会がドルの外貨準備を減らす方策を示し、FRBが大規模な財務省への資金供給を認め、予算局が将来の赤字増大を予測し、世界の市場はドルの下落局面を迎えているのです。ドルからアジアの市場に、資本は移動するでしょう。
April 10 (Bloomberg)
It’s Do or Die Time for No. 2 Economy
William Pesek
FT April 14 2009
Shrinking Singapore
NYT April 16, 2009
For Young Japanese, It’s Back to the Farm
By HIROKO TABUCHI
(コメント) William Pesekは、繰り返された日本の景気刺激策がGDPの5%に達したことを称賛しています。その累積赤字にもかかわらず、日本政府は不況の深刻さを認識して、アジアの景気刺激策を指導した。遅れているヨーロッパとは違う、と。しかし、デフレも進む中で、金融緩和の余地はなく、一層の財政赤字が必要になります。いつまで、それに耐えられるのでしょうか?
開放型の都市国家、シンガポールも、輸出の落ち込みで深刻な不況を経験しつつあります。GDPの8%という刺激策を行いましたが、それでも不況は深刻です。
日本政府は若い失業者を農村へ送ろうとしています。しかし、農業へのロマンチシズムとは異なる、農村の非効率や高齢化、低収入の現実は解決されていません。
The Guardian, Saturday 11 April 2009
A global crisis requires global solutions
Joseph Stiglitz
(コメント) 世界的な規模の金融危機によって、何の失敗も犯さなかった発展途上国が不況に落ち込むこともあります。特に輸出の落ち込みは深刻です。
財政刺激策は、各国ごとに決められ、その効果は外国にも流出するために、積極的な協調が行えない限り、十分な刺激は実現しません。IMF融資も増やす予定ですが、融資条件には借り手も貸し手も不満足です。先進工業諸国やその企業に有利な扱いが一般的で、また、豊かな国は補助金を出して市場競争をゆがめています。中国が求めたように、世界には新しい準備通貨が必要です。経済政策を協調させる世界的な機関を設立せよ、と。
NYT April 12, 2009
Restore Order and Win a Financial War
By ALAN S. BLINDER
April 13 (Bloomberg)
Averting Depression as Consumer in U.S. Fades
Stephen Roach
(コメント) 銀行家が政府からの金で富を得ているかもしれないが、彼らを糾弾する時間は後回しだ。今はアメリカが直面する2正面戦争に勝利することを全力で遂行せよ。
すなわち、一方ではバブル崩壊で消費や投資が急速に減った。これに対処する方法は分かっている。財政刺激策、減税、金融緩和。連銀は狂ったように紙幣を印刷している。勝つまで続けるしかない。
他方、銀行の破たんは解決策が分かっていない。特に、融資を証券化してできた「影の銀行システム」は不透明で、市場の不安を払しょくできない。ポールソンもガイトナーも、これを銀行救済と資本増強で試みているが、十分な解決策になっていない。
政府は、この2正面戦争に勝つための戦略を示さなければならない。
Stephen Roachは、政府の対策は機能し、大恐慌を再現することはないだろうが、危機の原因については解決されていない、と考えます。すなわち、内外に金融的な不均衡です。アメリカ人は貯蓄を忘れて消費とバブルに耽り、他方、世界的な不均衡は国際資本移動によって融資され、拡大し続けました。アメリカは世界的な「倹約のパラドックス」を回避するカギでした。
不況によって民間貯蓄が急速に回復し、もし政府が債務を増やして財政支出を続けなければ、急激なデフレ圧力が生じるでしょう。それはアジアの貯蓄が埋めることになっていましたが、安定的に持続するでしょうか? また、世界的な不均衡を解消する調整過程が進むとしたら、アジアは輸出を減らして国内需要を増やすわけです。これも順調に実現するのでしょうか?
つまり、こうした過程が保護主義や為替レートの混乱、内外の政治対立によって妨げられるなら、世界経済の回復は脅かされるのです。国際協調が必要だ、というとき、指導者たちが話し合うテーマはこれなのです。
The Guardian, Monday 13 April 2009
No end in sight
Dean Baker
April 15 (Bloomberg)
Depression Lurks Unless There’s More Stimulus
Robert Shiller
The Japan Times: Thursday, April 16, 2009
Don't believe rumors that recovery is coming
By NOURIEL ROUBINI
(コメント) しかし、本当に世界恐慌の不安は払しょくされたのか? いや、とんでもない、とこれらの著名な研究者たちは警告し続けます。
Robert Shillerは心理的な要因を強調します。人々の怒りを鎮め、銀行システムへの信頼を取り戻すまでには、まだ多くの財政支出が必要かもしれません。
WP Sunday, April 12, 2009; B02
John Williamson Conversation
(コメント) 貧しい国はそれを嫌い、反グローバリゼーション運動はそれを攻撃し、G20でゴードン・ブラウンがその死亡を宣告しました。ジョン・ウィリアムソンが20年前に提案した「ワシントン・コンセンサス」は死んだのでしょうか?
ウィリアムソンは質問に答えています。自分はそのときガラパゴス諸島にいたから、ブラウンの死亡宣告をインターネットで読んだ。それが正しいかどうかは、「ワシントン・コンセンサス」の内容をどう解釈するかによる、と応えます。彼の示した10カ条は今も有効ですが、スティグリッツなど、ネオリベラリズムのシンボルとしてなら、「ワシントン・コンセンサス」をどのように批判するのも彼らの自由です。
「ワシントン・コンセンサス」を現在の金融危機の原因と見ることはできません。市場開放を上げているのは保護主義を批判するためだ。資本主義は20年にわたって変動を繰り返してきたのだから、いずれ下降は避けられなかった。むしろG20で主張された改革は不十分で、制度を複雑にするだけではないか。
「ワシントン・コンセンサス」は、ラテンアメリカ諸国で起きている政策変化がワシントンの要求してきたことに近付いている、ということに注意を促すため命名した。しかし、当時の報告にコメントしてくれたRichard Feinbergが指摘したように、その名前を、the "Universal Convergence" にしておくべきだったかもしれない。
自分の研究は為替レートに関するものだが、それは世界が無視している。そして、「ワシントン・コンセンサス」という言葉が政策改善に役立ったのか、という点では自問しています。
The Guardian, Sunday 12 April 2009
Death tax: the stimulus we need
Rowenna Davis
(コメント) 相続税の引き上げには、道義的な理由だけでなく、経済的な理由もあります。特に、現在の金融危機に際して、経済的なインセンティブにゆがみを与えることなく、財政赤字を抑制して、しかも消費を促すには、相続税の引き上げが合意的なのです。
WP Sunday, April 12, 2009; B05 What's The Big Idea? By Emily Langer
NYT April 12, 2009 Anarchy on Land Means Piracy at Sea By ROBERT D. KAPLAN
(コメント) 海賊は軍艦で倒せない。アメリカが同盟諸国に呼びかけて国際的な治安維持の船隊を組織しても、海賊たちは現れ、巨大な戦艦の維持は困難だ。むしろ、地域の信頼できる国家に軍事支援して、海賊の討伐を組織するのが良いだろう、とEmily Langerは海軍の意見を紹介します。
ソ連の傀儡国家は消滅し、アメリカ帝国の影響も衰えた世界に、海賊の現れる地域があります。新しい帝国が現れるまで、そうした海域は残るでしょう。ROBERT D. KAPLANは描きます。
These pirates are fearless because they have grown up in a culture where nobody expects to live long. Pirate cells often consist of 10 men with several ratty, roach-infested skiffs. They bring along drinking water, gasoline for their single-engine outboards, grappling hooks, ladders, knives, assault rifles, rocket-propelled grenades and the mild narcotic qat to chew. They live on raw fish.
地上の無法状態が続くなら、海賊は商船や漁船、タンカー、戦艦でも襲うでしょう。これは軍隊を送って戦う戦争ではありません。しかも、それはテロリストの補給基地にもなります。
WP Monday, April 13, 2009; A15 Kill the Pirates By Fred C. Iklé
LAT April 14, 2009 How to solve the pirate problem Jonah Goldberg
FP April 2009 The Pirate Economy By J. Peter Pham
The Guardian, Tuesday 14 April 2009 America sank these pirates, but the Age of Might is over Geoffrey Wheatcroft
WP Tuesday, April 14, 2009; A16 A Solution for Somalia
The Guardian, Wednesday 15 April 2009 Piracy – the new warfare Robert Fox
NYT April 15, 2009 In the Age of Pirates By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) 昨年世界で起きた海賊事件のうち、約3分の1はソマリア沖で起きました。海賊行為は偶然に行われるのではなく、犯罪組織によるビジネスとなっています。ホッブズ的国家と近代的兵器や技術との組み合わせ。脅迫、人質、身代金。
15年前に国連の任務でアメリカ軍が関わり、犠牲者を出して以来、アメリカにとってソマリアの再建は多くのコストをともなってきました。しかし、政府と秩序を回復する以外に、解決策はなさそうです。
BG April 15, 2009 No silver bullet for Somalia problems By Charles R. Stith
WSJ APRIL 16, 2009 Pirates Vs. the Rest of Us By DANIEL HENNINGER
(コメント) 北朝鮮のミサイルであれ、海賊の襲撃であれ、安全保障を供給する国際システムが崩壊していることが分かります。
NYT April 12, 2009
Mr. Soddy’s Ecological Economy
By ERIC ZENCEY
(コメント) 金融危機を反省するなら、根本的に異なった見方を試してみてはどうか? Frederick Soddy, Nicholas Georgescu-Roegen, Herman Dalyなどに関する論説です。熱力学の法則による政治経済学、通貨秩序を唱えた人々です。
The Guardian, Monday 13 April 2009
This economic crisis cries out to be transformed into the founding of a new Europe
Ulrich Beck
(コメント) 「もし1930年代の世界恐慌がわれわれに何かを教えるとすれば、国民的な幻想に引き籠ることは致命的な誤りである、ということだ。それは切迫する世界経済崩壊の恐怖を現実の中に引き出すだろう。」
失業者が世界を覆いつつあり、社会不安と反移民感情はヨーロッパにもあふれている。今や、破たん国家の亡霊が、繁栄と安全の砦となるはずのヨーロッパにもよみがえった。危機はヨーロッパの周辺、東欧の新加盟諸国を襲った。共産主義システムに裏切られた彼らは、今また、資本主義システムにも裏切られたと感じているだろう。
「もしEUが存在しないとしたら、今、それを発明しなければならないだろう。一国的な解決つを拒むグローバルな諸問題が集まってできたワールド・リスク・ソサイアティにおいては、国民国家が力を失い、主権を行使できない。・・・主権をプールしたEUだけが、ヨーロッパのすべての国、すべての市民に、自由と平和に中で生きることを約束できる。」
危機が示したように、政治統合のない通貨統合は機能しない。選択は、より実質的なヨーロッパの統合と、ヨーロッパの解体との間にある。新しいリアルポリティクスとは、国民国家ではなく、ヨーロッパである。しかし、政治的混乱は極右政治に力を与えている。
WSJ APRIL 13, 2009
How Populism Fuels a Financial Crisis
By ALEX BANDY | From today's Wall Street Journal Europe.
CSM April 14, 2009
The next global economic shock?
By Milton Ezrati
FT April 16 2009
Moldova threatens Europe’s eastern overtures
By Nicu Popescu
FT April 16 2009
The eastern hood
(コメント) ALEX BANDYは、ハンガリーの危機の原因を、ポピュリズムによってもたらされた財政赤字である、と主張します。・・・人口1000万人のうち、390万人しか働いていない。160万人は最低賃金を受け取り、税金を支払わない。300万人が年金を受け取っている。しかも、そのうちの80万人以上は、疑わしい理由で身体障害者の年金を65歳以前から受け取っている。・・・
すでに世界的な金融危機の前から、ハンガリーにはIMFなどから2500億ドルの救済融資が行われていました。財政赤字を抑制する法案を成立させる以外に、ハンガリーの金融危機は終わらない、と。
Milton Ezratiは、西欧の諸銀行が、輸出に依存するアジア諸国(1.4兆ドルの対外融資の54%)や、金融危機の波及する東欧への融資(1.8兆ドル)を拡大してきた結果、脆弱性を増しています。ヨーロッパの方が銀行は外国において拡大し、政府は救済の財源が乏しいから、アメリカよりも解決策が難しいでしょう。アメリカのサブプライム・ローンよりも、救済融資よりも、問題は深刻です。
モルドバでは選挙の後、不正を糾弾する反政府の民主化運動が厳しく弾圧され、権威主義体制が本格的に登場しつつあります。ロシアは早速支持を表明していますが、EUとの経済取引や援助額は大きく、EUの姿勢が今後の政治に重要な役割を果たさねばなりません。
モルドバとルーマニアの間では他国における自民族の安全保障をめぐって、EU内の衝突が起きつつあります。
NYT April 13, 2009
Realpolitik for Iran
By ROGER COHEN
(コメント) アメリカのイラン外交を大転換する、大変に興味深いエル・バラダイ国際原子力委員会(IAEA)委員長の意見を紹介しています。
ディック・チェイニー前副大統領を映画『スター・ウォーズ』のダース・ヴェイダーにたとえ、アメリカのイラン外交は二つのマントラに支配された、とエル・バラダイは指摘します。「核の知識も遠心分離機も持たない。」「イランは必ず崩壊する。」どちらも間違っていました。
そしてブッシュ政権はアメリカとイランが協力する可能性をつぶし続けたのです。2001年にアフガニスタンの支援について、2003年にイランの提案に対して、2005年にEUとの合意でフランス製の原子炉を与えるのにも反対しました。「イランは悪の帝国であり、体制転換しなければならない」と主張し続けたのです。
エル・バラダイは1942年のアメリカにたとえます。「もしルーズベルトが、スターリンにこう言ったとしたら、その後の歴史はどうなっただろうか? ・・・ジョー(スターリン)、私たちは共産主義のイデオロギーが嫌いだ。だから、ナチスを倒すために君の助けを受けないつもりだ。君が強力であることは知っているが、悪とは手を結べない。」
ブッシュ政権は同じくらい愚かに、イランの宗教政治体制を拒んできた。中東における2度の戦争や不安定に対して、ハタミ大統領なら融和できたにもかかわらず。
エル・バラダイは、イラン国民が核武装する決意を固めたとは考えません。しかし、イランは核武装する技術を獲得して、それによるパワー、威信、そして保険を得ようと決意したわけです。すなわち、ブラジルや日本と同じ、「バーチャル核武装国家」(いつでも核武装できる技術や条件を持つが、核兵器を保有しない国家)になりたいのです。
また、エル・バラダイは、オバマ大統領の「核のない世界を目指す」という方針を歓迎します。他国の核武装を危険だとして禁止しながら、自分たちは核兵器を技術革新することなどできない、と。
エル・バラダイの示す関係正常化は、アメリカとイランが次のような条件を満たします。・・・イランはハマスやヒズボラへの軍事支援をやめる。イスラエルを承認しないが、干渉もしない、と宣言する。イラクとアフガニスタンの安定化に協力する。核の平和利用に限定していることを示すために、IAEAの査察を受け入れる。アル・カイダのテロと戦う。人権を尊重する。
他方、アメリカは、・・・イスラム共和国の安全保障を約束し、その地域における重要な役割を承認する。イランが研究目的で行う限定的な核濃縮を認める。フランスからの原発輸入を認める。イランのWTO加盟を支持する。凍結されたイラン資産を返還する。すべての制裁を取り下げる。2国家案をすべてのパレスチナ人が受け入れるように求めたイランの声明を重視する。
最後に、エル・バラダイは、イスラエル政府がイランの核施設を爆撃することに執着している点を心配します。もしそれが実行されれば、中東が火の玉となって、全アラブ世界の支持を受けたイランの核武装と直面することになる、と。だからオバマ政権は、ニクソンが中国を転換させたのと同じ重要な外交政策を実行すると同時に、断固としてイスラエルを制止しなければなりません。
FT April 13 2009
China property prices ‘likely to halve’
By Jamil Anderlini in Beijing
FT April 13 2009
China needs reform to become world class
FT April 15 2009
An army marching to escape medieval China
By Tom Mitchell
The Guardian, Thursday 16 April 2009
Asian nations unite
Fidel V Ramos
(コメント) 住宅価格の下落は続いています。しかし金融危機を超えて、世界は成長を回復し、そのとき中国は一層の重要性を得ているでしょう。しかし、同時に、中国は国際秩序の主体として発言し、行動する条件を、国内の改革によって示さなければなりません。それは、情報の自由化と、法の支配である、とFTは主張します。
出稼ぎ労働者や中台関係についても紹介されています。
FT April 15 2009
Concorde’s fate offers a lesson for finance
By Viral Acharya, Matthew Richardson and Nouriel Roubini
(コメント) これも一種の新しいブレトン・ウッズだと思います。金融システムをコンコルドにたとえて、それが最高の技術を駆使した超音速機であっても、危険であり、社会的なコストが大き過ぎれば、現実に飛ぶことはできない。事故の後、もっと遅くても、安定した飛行機、より多くの乗客を乗せる技術に転換した、と主張します。
FT April 13 2009
Lessons learnt for capitalism’s future
FT April 14 2009
The Future of Capitalism: Uncertainty bedevils the best system
By Edmund Phelps
FT April 14 2009
Cutting back financial capitalism is America’s big test
By Martin Wolf
The Guardian, Thursday 16 April 2009
Is the crisis good for globalisation?
Neri Zilber
FT April 16 2009
The role of the state is crucial in this crisis
By Pat McFadden
(コメント) 金融システムは急速に世界化しましたが、ガバナンスは国家に制限されています。金融監督は十分行えないまま、もし金融システムが破たんすれば国家は救済しなければなりません。あまりにも巨大な金融機関の国家を超える債務を、救済できる財政規模がない以上、どちらかが制限するしかないでしょう。すなわち、国家が金融システムの拡大を抑えるか、金融システムが国家から国際機関に金融の権限と救済の財源を移すか。
Edmund Phelpsは、金融システムの失敗を「不確実性の無視」であったと考えているようです。技術革新を取り込む点で資本主義を超えるシステムはなく、技術革新には不確実性がともなう。その結果、資本主義は景気変動や市場の暴落を繰り返してきた、というわけです。大きな話ですが、これで良いのでしょうか?
Martin Wolfの論説は、ここでも紹介したSimon Johnsonのアメリカ批判を取り上げています。新興市場諸国、特にロシアと同じくらい、アメリカの政策は「金融オリガーク」たちに支配されていた、と。外国からの膨大な資本流入、信用の膨張、極端なレバレッジ、資産市場、特に不動産価格のバブル、そしてその崩壊、金融システムの破たん、です。
この点までは、Martin Wolfも同意します。しかし、さらに、アメリカの金融機関は危機をもたらす上で主要な責任があった、という点に疑問を示します。支払い不能であることを隠すために損失を認めなかったのか? それを知りながら一層のハイリスク商品に手を出したのか? ・・・まるで、日本のバブル処理やアメリカのS&L危機を思い出させる話ですが。
この先の評価は微妙かつ曖昧です。Martin Wolfは、新興市場のような政治支配はなかった、と主張します。しかし、ウォール街にとって良いことはアメリカにとっても、世界にとっても良いことだ、というイデオロギーがあった、と認めます。金融機関が支払い不能かもしれないが、政府でさえそれを認めないのは、救済資金が莫大だからです。日本政府と同様に、アメリカ政府も納税者=有権者の反発を恐れています。
だから? ・・・資本主義は「破産」によって蘇るしかない、というのです。「破産」のない資本主義は、資本主義ではなく、社会主義だ、と。・・・納得できますか?
あるいは、「恐慌」のない資本主義は、資本主義ではない? グローバル化した技術革新と波及のメカニズムが、もし将来も維持できるとしたら、何と呼ぶようになるのでしょうか? この危機によって、もっと穏健な、人間的な社会への合意をもたらすかもしれません。
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The Economist April 4th 2009
The rich under attack
Spare a dime? A special report on the rich
The G20 and the world economy: Be hold
Democracy in South-East Asia: The Indonesia surprise
Japan: The incredible shrinking economy
Buttonwood: Minsky’s moment
(コメント) どれも感心しませんでした。疲れていたから? 特集記事をざっと見ても、超富裕層が減る方向に変化するだろうが、それを過度に行えば社会や経済を損なう、と言いたいようです。
少し面白かったのは、インドネシアを民主主義のモデルに持ち上げていること、日本経済はもう一つの「失われた10年」に入りつつあること、金融部門は産業部門と違って、破産による資源の再配置が大幅な経済の縮小を引き起こす、という話です。