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IPEの風 4/20/09

・・・政権が倒れる、治安や秩序が失われる、・・・ハンガリー、ギリシャ、タイ、モルドバ、・・・武器と暴力が蔓延する、・・・ソマリア、北朝鮮、ジンバブエ、イラン、・・・

世界各地の論説が懸念する厳しい事態に対して、私たちは共に生きる力を準備しているでしょうか? あるいは、日本政府が「ヤドカリ国家」を築き、将来から借財し続けることで、たとえ一時しのぎでも、安心の礎になるのでしょうか? 旧秩序が弱まり,現実の条件を反映しなくなれば,小国の危機が世界的な課題と重なります.

ソマリアでは、政府が崩壊し、生きるすべのない男たちを集めて海賊が組織され、船舶を襲って身代金を要求します。このホッブズ的な無秩序に抗して、地上の権力を再建するべきでしょう。あるいは、隣国からの軍事介入を支援し、国連軍を派遣します。

ジンバブエでは、政府が白人農家を追い出し、財政赤字に対して紙幣を乱発し、ハイパー・インフレーションを生じて経済が崩壊しました。すでに、国際的な仲介者も加わり、反政府派との協議が行われましたが、連合政府は権力の不透明な分割の下で機能していません。

北朝鮮は、安保理も、周辺諸国による協議や制裁も無視し、核兵器を開発・保有して、ミサイルを発射します。日本政府は金正日との威嚇競争、チキン・ゲーム(あるいは、ロシアン・ルーレット)を始めるのですか? たとえ正気でも、狂気を演じ、最後まで狂気を貫くかもしれない相手です。しかし、再び、クーデタもしくは権力移行の可能性が議論されています。難民の救済や援助・経済復興について交渉するため、金正日を排除したい、と。米中主導で、朝鮮半島再統一を含む国際秩序を交渉します。

イランは、テロ組織を支援し、反米主義を掲げる宗教指導者が政治を支配し、イスラエルと敵対して核兵器を開発しつつあります。オバマ政権が中東外交を転換し、イランとの合意に至るでしょう。イランは中東地域の平和と繁栄とを組織する重要な国になります。しかしイスラエルは、それを受け入れるでしょうか?

モルドバでは、共産党の支配が継続し、貧困と経済危機、選挙の不正に対して、民衆が反政府デモを行っています。隣国ルーマニアは自民族の保護を理由に介入を示唆します。EUは、貿易や資本の供給、援助を介して、両国政府に強い影響力を持っています。民主化とEU内のルール、ユーロの採用を条件に、交渉による内外の改革要求が強まります。

ハンガリー政府は、厳しい緊縮予算を組んで、議会の承認を得なければなりません。財政赤字やインフレを抑える新しい合意を示すことで、ドイツ、フランス、イギリスの政府は、ハンガリー市民の苦境を緩和する財政支援を行うでしょう。また、EU内の安定化基金を設けるため、ユーロ債の発行を計画しています。

ギリシャやタイでは、政治システムが支配エリートたちに独占されています。世界的金融危機の中にあって、政治的な発言を求める人々の苦境と不満を、債務、インフレ、切り下げによって吸収することができません。対立を超える新しい政治指導者を見出し、将来のビジョン・理念を掲げて、国民の支持を得ることです。

アメリカ政府は、まだ、金融システムを安定化できません。国境を超える金融危機に、政府が示す単純な答えはないのです。「影の銀行システム」にまで踏み込んで、損失を明らかにし、公的資金を投入し、再建される新しい金融秩序を示す、という十分な能力と政治的な決断、信頼を世界に求められています。

そして日本では、輸出が急速に失われる中で、公的債務に依存した不況回避と政権交代に向かっています。それは同時に、年金、景気刺激策、医療保険、といった老人と利益団体による旧政治を変えるため、危機を自覚した若者が政治に参加し、革新を遂げるチャンスです。

グローバリゼーションが減速し、自由主義が後退するときです。保護主義、資本規制、財政刺激策、金融緩和・リフレ政策を、ナショナリズムや国際対立、戦争に向かうことなく、合意されたルールの下で実行するときが近いように思います。それは私たちに、新しい理論や経済システムの基礎となる経験をもたらすでしょう。

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