今週のReview
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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NATO生誕60周年、 北朝鮮のミサイル発射、 G20の評価、 中国とSDR、 核兵器のない世界、 中東欧の危機救済
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor, WSJ:Wall Street Journal Asia
IHT March 31, 2009
By CHARLES A. KUPCHAN
(コメント) NATO(the North Atlantic Treaty Organization)結成の60周年に関する重要な演説です。アフガニスタンの安定化のために増派を唱えたオバマ政権とヨーロッパ諸国との意見対立があります。また、グルジアのNATO加盟を要求したブッシュ政権に対して、ヨーロッパ諸国はロシアとの関係悪化を懸念して反対しました。
確かにコソボのように、ヨーロッパの平和にとってアメリカ軍は今も重要な、不可欠の要因でしょう。しかし、冷戦終結後のヨーロッパの平和をめぐって、NATOのあり方が問い直されています。
CHARLES A. KUPCHANは、三つの重要なテーマを示します。すなわち、ロシアとの関係改善、加盟国の増大による意思決定のルール改善、世界の民主主義を支持する共同防衛組織への改編、です。
この三つの問題は密接に関係しています。CHARLES A. KUPCHANは、ロシアとの関係が当面悪化するのは避けられないと見ています。ロシア自身がその条件を作っているからです。しかし、長期的には、ロシアがヨーロッパの安全保障に参加するよう、求めるべきだ、と考えます。
ある意味では、アフガニスタンやロシアについて、カシミールやガザについて、NATOが関与するべきかどうか、意見が分かれるのは当然です。加盟国が増えるにつれて(26カ国)、その安全保障に関する考え方、軍事的な脅威のとらえ方が異なるからです。どこまで負担を受け入れるのか、各国政治家の意見は対立します。
ですからCHARLES A. KUPCHANは、意思決定をもっと柔軟にするよう求めます。戦争と平和に関する意思決定とは区別して、さまざまな国際秩序の評価をめぐっては、加盟諸国間で完全な意見の一致がなくても、柔軟に調整を促し、参加を維持する方がNATOとその加盟諸国に有益でしょう。ただし、関与の仕方は慎重に、コストを抑制しなければなりません。
NATOは、民主主義諸国が協力して安全保障を確保する(もしくは、軍事力の行使を抑止する)、世界的な安全保障体制を目指すのです。インド、イスラエル、日本、オーストラリアも参加するでしょう。もちろん、今は、その敵と思われているような諸国も。
CSM April 02, 2009
NATO at 60: ready for a new role
By Bill Huggins
LAT April 2, 2009
How do we save NATO? We quit
By Andrew J. Bacevich
(コメント) Bill Huggins も、NATOが加盟諸国間で多角的な制度を立ち上げるのを助ける「ブローカー」として機能することを重視します。2007年にエストニア政府が「サイバー攻撃」を受けた際も、NATOが仲介して専門家によるthe Cooperative Cyber Defense Centre of Excellenceを設立したそうです。そのような役割のためにも、NATOは(全会一致や拒否権を回避する)条件付き多数決の仕組みを意思決定に取り入れて、加盟諸国間の決定を容易にします。こうしてNATOは“a new multilateral security”へと成長します。
他方、Andrew J. Bacevichは、軍事同盟の政治的目的が失われたとき、それは解消されるべきだ、と考えます。冷戦終結、ソ連崩壊によって、NATOの存在理由は失われたのです。ところがNATOは東欧からロシアの周辺部にまで安全保障の関与を拡大して、そのビジネスを維持したのです。
ロシアはグルジアを軍事的に懲罰して、その影響圏を維持する姿勢を明確にしました。またNATOがアフガニスタンの秩序回復に関与し、その成果を示せないことで、NATO自体の結束が失われました。NATOを称賛する声は、過去の成果に依拠しており、単なるノスタルジーだ。それは、現在、(破たん寸前の)GMを世界最大の自動車会社だったと賞賛するに等しい、と強烈に批判します。
NATOの拡大による延命は失敗でした。アメリカが主張するようなウクライナの加盟は、逆に戦争を誘発するでしょう。アフガニスタンの関与を深めることも、ドイツなどの離脱を招くでしょう。
NATOが再生するには、アメリカが離脱するべきだ、とAndrew J. Bacevichは主張します。その政治的目的は、ヨーロッパの安全保障を提供し、不安定な政治経済秩序を赤軍から守ることでした。もはや、ヨーロッパは自分たちの安全保障をアメリカに頼るべきではないのです。
NYT April 2, 2009
America Agonistes
By ROGER COHEN
IHT April 3, 2009
NATO at 60: Alive and Kicking
By JAAP DE HOOP SCHEFFER(secretary general of NATO)
IHT April 3, 2009
NATO at 60: Save the Champagne
By MARK MEDISH
(コメント) ROGER COHENは、NATOすなわちパックス・アメリカーナが成功したから、ヨーロッパやアジアは繁栄の道を見いだせた、と主張します。そして、それは成功の故に、その使命を終えたのです。ここでもGMにたとえて、世界の地殻変動は、すべてのものが変化から免れることを許さない、と指摘します。
だから、NATOの60周年記念と同じころ、ロンドンではG20がアングロ・サクソン資本主義の終末をどうするか相談しているのは当然なのです。ますます新しい勢力と協力する仕組みを見出す必要があります。中国がIMFでより大きな発言力を求めるのも当然なのです。
この世界で、アメリカが世界各地の地域安全保障に軍事力を提供することは不可能です。何より、安全保障は、21世紀の現実に依拠しなければなりません。そして、新しい「民主主義の同盟」が現実を反映して誕生します。
JAAP DE HOOP SCHEFFERは書いています。「安全保障は裁量的な事項であり、資金がなくなれば、それがなくても生きていける。それは(しかし)われわれの繁栄が拠って立つ基礎である。また経済と同じように、安全保障は多国籍の組織を通じてのみ実現される。だからNATOのサミットは重要なのだ。」
アフガニスタンについても、ロシアについても、アメリカとヨーロッパとは意見を交換して、共通の道筋を見出すべきだ。「同盟の勝利とは、同盟の死だ」という主張は間違っている、と。
MARK MEDISHは、ベルリンの壁崩壊の20周年と比べています。ロシアはNATOの拡大を決して受け入れたくないでしょう。だから、NATOを改組して、全く違う性格の組織を作る方が良い、と考えます。
WSJ APRIL 3, 2009
Let NATO Settle the Border Wars
By PETER I. BELK and ANDREW A. ROSEN
The Guardian, Friday 3 April 2009
Old man Nato
David Hearst
(コメント) 国際収支や為替レートがそうであるように、国境線も一方的な変更は不可能であり、必ず、国際紛争を起こします。
冷戦終焉後、ソ連の周辺地域で多くの国境紛争が起き、政治体制が崩壊し、秩序が失われてきました。国際的な枠組みが失われた地域で、各国は一方的な軍事力の行使による国境変更の誘惑に駆られています。こうした問題に対処する軍事的な強制力を備えた国際的意志決定メカニズムとしては、NATOが重要な候補になることを避けられません。
PETER I. BELK and ANDREW A. ROSENは、そのためにNATO自体が制度的に解決しなければならない問題を三つ指摘します。1.軍事的侵略や脅威と、それに対する防衛の負担を、各国の決定に委ねていること。2.コソボや南オセチアの領土的分割を受け入れた今でも、領土の不可分という原則を掲げていること。3.たとえば、ウクライナとロシアの国境紛争やグルジアの体制崩壊にまで関与するべきか、その領域を拡大することについての合意がないこと。
世界の安全保障に真空地帯が残される危険は排除しなければなりません。しかし、NATOが介入しなければ、ほかにどのような選択肢があるのか、という根本的な問題提起を、オバマ政権は避けるつもりなどないでしょう。ブッシュ政権が唱えた一方的な同盟関係・軍事基地の再編・再配置ではないとしても、私たちは答えなければならないのです。
David Hearstは、60歳になったNATOを、ローマ帝国ではないし、その宗教が民主主義でもない、と考えます。加盟国は必然的に善でもないし、富裕でもありません。NATOは、安全保障の視点でリアリスト的な計算に基づき設計された国際機関ですが、同時に様々な他の機能を帯びています。ポーランドがその歴史からNATOを必要とするほど、今のアメリカやヨーロッパはNATOを必要としていません。東欧諸国は自国の利益を優先してNATOを利用するのであり、ヨーロッパが資源・エネルギーの確保を追求する点では、ロシアの発想と何ら変わりません。
SPIEGEL ONLINE 04/03/2009
NO NUKES, MORE TROOPS: Obama Seeks to Renew Partnership with Europe
WSJ APRIL 3, 2009
If NATO Didn't Exist We'd Have to Invent It
By MIREK TOPOLáNEK(prime minister of the Czech Republic)
The Guardian, Saturday 4 April 2009
Nato's existential crisis
Robert Fox
(コメント) オバマが求めるヨーロッパとの新しい軍事同盟は、ヨーロッパがより多くの軍隊を出し、アフガニスタンに重心を置き、核兵器を減らす、という中身です。特に、オバマが「核兵器のない世界(a world without nuclear weapons)を目指す」とストラスブールで演説したことにSPIEGEL誌は注目します。
その直前に、オバマはロンドンで発展途上諸国への緊急融資として1兆ドルを合意し、さらに、フランスやドイツが強く求めていた国際金融規制にも同意したのです。こうした姿勢は、SPIEGEL誌に限らず、ヨーロッパの多くの者が驚く方針転換でした。同時に、オバマはヨーロッパのおける反米論を批判しました。ただし、アフガニスタンやパキスタンに関するヨーロッパの疑念と不満は解消されていない、とSPIEGEL誌は考えます。
チェコの首相が語るように、世界的な経済危機が戦争に至った1930年代、チェコの民主主義体制は失われたのです。世界経済会議と同様に、ナチ・ドイツの侵略を容認したミュンヘン条約が想起されます。
問題は、アフガニスタンの民主主義崩壊が、当時のチェコの民主主義と同じものなのか? ということでしょう。また、東欧における金融危機を放置し、政治・経済危機をもたらした場合、その安定化に、ヨーロッパは今もアメリカの協力を必要とするのではないか? あるいは、アメリカ軍がパキスタンでテロ掃討作戦を展開するとき、イギリス在住のパキスタン人に及ぼす影響を無視できるか?
The Japan Times: Friday, April 3, 2009
Small-scale abductions that can trigger war
By TOM PLATE
Asia Times Online, Apr 4, 2009
Launch? What launch?
By Donald Kirk
(コメント) 歴史が示すように、些細な事件から戦争は起きる、とTOM PLATEは警告しました。この記事が触れているのは、北朝鮮の兵士たちがアメリカ人ジャーナリスト2人を拘束し、連行した事件です。記者たちは中国との国境地帯で脱北者に関する映像を求めていました。
アメリカ政府は努めて抑制した対応や報道姿勢を求めました。世論が刺激されて対応をエスカレートさせたくなかったからです。アメリカの政権交代による外交の機会を残したわけです。しかし、時間がたつにつれて、こうした姿勢だけでは交渉や関与を強める外交を破滅させます。
他方、北朝鮮は即座に記者たちを解放しました。北朝鮮政府は、日本の拉致問題とアメリカの記者拘束が結びつくことを避けたのではないか、と指摘します。日本が拉致問題で北朝鮮政府の対応を非難するのは不当だ、と。
他方、中国政府にとっては、6カ国協議の枠組みが有効ではない、という印象を強めたでしょう。それは中国外交の限界を示すものです。また、さらにこうした事件が続くなら、アメリカ国民の中国に対する疑念が強まるでしょう。
北朝鮮のミサイル発射は、再び、こうした図式を世界に示しつつあるのでしょう。
Donald Kirkは、人工衛星を打ち上げることが国際法違反にはならない、と指摘します。特に、ICG(the International Crisis Group)の報告を紹介し、"the risks of overreaction"が北朝鮮内部の強硬派を刺激する、と注意します。北朝鮮が他国と同様にルールに従って人工衛星を打ち上げるなら、それを非難することはできない、と。
アメリカは中国の台頭にどのように対応し、朝鮮半島でも戦争に応じる考えがあるのか?
CSM April 05, 2009
North Korea's challenge for Obama
The Guardian, Sunday 5 April 2009
Let's hope Obama keeps his cool
John Gittings
BG April 5, 2009
A need for restraint over N. Korea's satellite
By John Feffer
(コメント) CSMは、北朝鮮政府は3000万ドルをミサイル発射のために支出しながら、飢饉を回避するために海外援助を必要としている、と批判します。
いつまで北朝鮮の体制は続くのか? 中国政府が望む限り。中国は、朝鮮半島が統一されて、アメリカ軍が国境まで迫ることを受け入れられないから、と指摘します。韓国政府も、統一にともなう財政負担を恐れています。
北朝鮮のミサイル発射を最も非難できる人々は、飢餓に苦しみながらも、政府を非難することが許されていない北朝鮮の国民である。冷戦期の独裁体制が生き残っていること、核兵器やミサイル技術の拡散が起きていることに、他国の批判は集まります。オバマは冷静さを保って、北朝鮮訪問の機会を待ちます。
John Fefferも、北朝鮮が人工衛星を打ち上げる、という発表を疑う必要はなく、過剰な反応だ、と批判します。冷静さと国際防衛体制、がオバマ政権の基本姿勢です。
WSJ APRIL 5, 2009
Kim's Targets
By ANDREI LANKOV
WSJ APRIL 5, 2009
The Song of Kim Jong Il
The Guardian, Monday 6 April 2009
The road to zero nukes
George Perkovich
(コメント) ミサイルの発射によって、オバマ政権は外交政策を試され、中東諸国からはミサイルのバイヤーが訪れ、北朝鮮国民は指導者の誕生を祝うロケットへの称賛を口にします。北朝鮮は体制の軍事的な転覆はないと知っているから、国際的な危機を演出することで援助を上乗せするように圧力をかけることができます。「われわれはここにいる。われわれは危険だ。抑止できない。援助を認め、外交的に譲歩するしかない。」
おそらく、アメリカ政府はミサイルの国際規制について話し合うでしょう。北朝鮮はミサイル技術を封印する条件として、研究開発費用の補償を求め、莫大な援助を要求します。
George Perkovichによれば、たとえ時間がかかるとしても、北朝鮮を改心させるのはオバマが「核のない世界」を実現するしかないのです。核兵器と弾道ミサイル技術が広まれば、世界のどこからでも、他国を脅迫することができます。オバマの演説は、共和党・民主党の安全保障専門家たちが核廃絶をアメリカの利益として一致して主張するようになったことを反映しています。
しかし、核技術や核物質の厳格な管理体制ができるまでは、北朝鮮の脅迫を最悪のケースから遠ざけるために、その選択肢を制限し、懐柔し続けねばなりません。
WSJ APRIL 6, 2009 Kim's Crumbling Dynasty By NICHOLAS EBERSTADT
Times Online, April 6, 2009 It's a hard truth to stomach, but we will have to talk to Kim Jong Il Richard Lloyd Parry
The Times, April 6, 2009 Nuclear Threats and Rewards
Asia Times Online, Apr 7, 2009 A missile launch for dummies By Donald Kirk
WP Tuesday, April 7, 2009; A22 Confused on North Korea
BG April 7, 2009 North Korea's rocket lingo
(コメント) NICHOLAS EBERSTADTは、北朝鮮が崩壊する最大の要因として、後継者問題に注目します。
悪の帝国が滅んでも、世界の悪漢コンテストは終わりません。オサマ・ビン・ラディンが姿を消してから、注目を集めた支配者と言えば、ムガベ、プーチン、アフマディネジャド、・・・そして、疑う余地なく、金正日です。しかし、彼でさえ真空から生じたのではなく、アジアのもっとも根深い暴力と狂気に蹂躙された土地、朝鮮半島の歴史から生まれたのだ、とRichard Lloyd Parryは紹介します。
朝鮮半島をめぐる中国と日本の争いや日本の植民地支配、東西冷戦による大国の介入した戦争、分裂状態の維持が、金正日の存在を特徴づけました。しかも、ソ連が崩壊し、中国が次第に市場自由化によって北朝鮮への支援を控え出したとき、この支配者は行動によって自分の存在理由を示すしかないのです。
核のない世界を目指す上で、現在、最大の障害はイランと北朝鮮への核拡散です。イランが国際交渉の余地を持つのに対して、北朝鮮の孤立と脅迫は突出しています。オバマ政権は核の廃絶を国際規範として、その実現に向けた交渉と圧力、報償を国によって区別するでしょう。しかし、北朝鮮は従来の外交に従いません。
The Timesの論説は、過去の例を指摘します。ソ連の共産主義独裁体制が交渉を拒んでいたとき、最後に、人権の改善を条件に援助を与えた、と。北朝鮮に示す最後の条件もこれしかない。
安保理における各国の反応はバラバラです。北朝鮮と交渉するオバマ政権の代表であるStephen W. Bosworthが、ブッシュ政権の交渉ジレンマを脱することが可能なのか、WPは疑わしいと見ています。
BGは、対照的に、オバマ政権や世論が、実際には存在しない脅威を、過剰な反応によって高めてしまうことを警戒します。対話によってのみ非核化は実現できる、と。
April 8 (Bloomberg)
Buffett Could Buy North Korea as Gift for Obama
William Pesek
(コメント) William Pesek の論説はいつも面白いです。北朝鮮がオバマのNATO演説に合わせてミサイルを発射したことは関心を引いたけれど、わずかな時間でしかない。なぜなら、世界金融危機に比べて北朝鮮の経済(推定260億ドル)は小さすぎるからだ。アメリカ経済(14兆ドル)と比べても意味がないから、バフェットの投資額(370億ドル)と比べることになる。
つまり、William Pesek は夢想するわけです。バフェットが北朝鮮を買い取ってくれたら、と。そして、このBuffettlandの生産物をアメリカに売る。オバマがそれに十分な利益をもたらす値を付ければ、バフェットも満足します。
ところが、この北朝鮮という国が、アジア全域を人質にとってアメリカや中国を脅すわけです。日本政府は繰り返し厳しい言葉を駆使して警告したけれど、このアジア最大の経済国家も北朝鮮に対して無力なことを証明しただけでした。韓国にも、選択肢がありません。やはり、問題は中国です。中国は北朝鮮の体制崩壊を望みませんが、アフリカの独裁者から資源を購入することに非難が集まっています。
IHT April 9, 2009 Let Them Eat Rockets By DANIEL SNEIDER
The Japan Times: Thursday, April 9, 2009 The lighter side of North Korea's launch By TOM PLATE
FEER April 2009 North Korea's Triumph by Nobuyoshi Sakajiri
(コメント) オバマが本気で核軍縮を始めれば、金正日の生き残り策は世界から非難されます。体制の維持に役立つなら、民衆が餓えることも構いません。国営のメディアが、マリー・アントワネットにたとえたそうです。国民が餓えるなら、「ロケットでも食べればよい。」
中国が示す6カ国協議は解決の道を示せません。なぜなら、日本やアメリカにとって北朝鮮の行動を抑制するために中国の圧力を求めているのに、中国にとって最大の不安は北朝鮮の体制崩壊だからです。日本やアメリカは中国にどのような説得を行うか、それが重要です。
日本だけが制裁を極端に強めても、制裁の効果はなく、6カ国協議で孤立するだけで、外交的にも大きな敗北になるでしょう。
BBC 2009/04/03 Developing agenda wins at G20 By Kabir Chibber
CSM April 03, 2009 The G-20 can do better next time
LAT April 3, 2009 Stimulus left them cold at the G-20 summit
(コメント) G20は、世界を開発されたか発展途上か、という分類で見る時代を終わらせた、とKabir Chibberは考えます。中国、ブラジル、インドを無視して、世界経済は考えられません。同時に、彼らは国際機関の強化と独自の発言によっても、注目されました。
他方、アメリカとヨーロッパの綱引きは合意できないまま流れてしまいました。サルコジの唱えた世界金融の警察官は誕生しませんし、オバマの願った世界ニュー・ディールと呼ぶほどの財政刺激策の協調体制も得られません。
G20: Chance for a real new world order Oliver Tickell The Guardian, Friday 3 April 2009
SPIEGEL ONLINE 04/03/2009 The West's Fatal Overdose By Gabor Steingart
(コメント) 戦争は、将軍たちだけに委ねるには重要すぎるように、経済危機も、財務大臣や首相でさえ、その処理を委ねるには重要すぎるでしょう。戦争も、経済危機も、その後の世界を支配する国際秩序を決定するからです。
しかし、金融危機と世界不況からの脱出を唱えたG20の指導者たちですが、銀行家や投機家たちに何兆ドルもの支援を約束するだけで、世界の貧困や気候変動を緩和するためには何も貢献しませんでした。IMFは相変わらず、貧しい諸国に緊縮政策を押し付け、零細な農家に国際競争を強いるのでしょう。Ban Ki-Moon国連事務総長はグローバル・ニュー・ディールを求めて演説しましたが、この危機を新秩序構築への機会にはできませんでした。
ドイツの財務大臣Gabor Steingartは、財政刺激策を強く批判しています。それは「安定、成長、雇用」ではなく、「債務、失業、インフレーション」である、と。
危機の原因は、アメリカの極端な金融緩和と経常収支赤字の拡大、要するに安価なドルを世界中に垂れ流したことだ、と批判します。しかも、それを利用してウォール街は投機的な売買を普及させ、世界中をバブルに巻き込んだ。アメリカの大統領は変わったが、金融政策は変わらないどころか、もっと金融緩和と財政赤字を増やすことに向かっている。アメリカで唯一フル稼働しているのは、紙幣の印刷所だけだ、とGabor Steingartは憤慨します。
NYT April 3, 2009 The Economic Summit
(コメント) アメリカから見た評価は、ドイツと全く逆です。G20はその縦横な責任を果たせなかった。特に、各国は追加の財政刺激策を約束しなかった、と批判します。世界の消費と投資が落ち込む中で、主要諸国が協力して財政支出を増やすことが決定的に重要なこの時期に、彼らはその責任を果たそうとしない。
特に、ドイツのメルケル首相は最悪だ!
ドイツの歴史的な経験からインフレに対する心配は理解できるが、今のドイツにインフレは起きないし、むしろ不況がもたらした政治的危機を思い出すべきである。
FT April 3 2009 China slowly grows into its crucial role
FT April 3 2009 Supercharged IMF
(コメント) G20で目立った、世界不況からの脱出に積極的な新しい要素としては、中国とIMFがあります。
IMFは、日本と同様に、アメリカやヨーロッパ、中国がIMF向け融資枠を増やすことで、緊急融資の財源を得ました。投票権の再配分を回避した形です。
Cooperation crucial to claw way out of crisis By Fu Mengzhi (China Daily) 2009-04-03
WSJ APRIL 3, 2009 G-20 Reality Check
New world, new rules: now Brown must dare to spend Polly Toynbee The Guardian, Saturday 4 April 2009
The trillion dollar question: will banks now join the rest of us in the real world? Will Hutton The Observer, Sunday 5 April 2009
(コメント) Fu Mengzhiは、G20よりも米中G2の重要性を強調しています。
社会民主主義者の理想は大いに膨らんでいました。「良識を備えた資本主義」というゴードン・ブラウンの目標は実現したのか? 強欲な銀行家たちではなく、本当に不況に苦しむ者たちへ救済資金は届くのか? イギリスのFTでさえ財政刺激策の追加を強力に支持しています。
金融規制や公正・公平さという基準が、どこまで実現するのか?
G20: But where was Mr Angela Merkel? David Mitchell The Observer, Sunday 5 April 2009
NYT April 5, 2009 Known for Tight Spending, I.M.F. May Have to Loosen Reins After G-20 Windfall By LANDON THOMAS Jr.
FT April 5 2009 IMF warns of strains exerted on east Europe By Stefan Wagstyl
(コメント) これほど巨額の追加融資を行うには、IMFの使命や作業の指針が根本的に変わらなければならない、と心配されます。例えば、とることの融資条件でも、東欧への緊急融資でも。
FT April 5 2009 The London summit has not fixed the crisis
FT April 5 2009 A wider order comes into view By Quentin Peel
The G20's failing grade Kevin Gallagher The Guardian, Monday 6 April 2009
IHT April 7, 2009 More Seats at the Table By PHILIP BOWRING
Don't forget to reform the UN Zahir Tanin The Guardian, Tuesday 7 April 2009
FT April 7 2009 What the G2 must discuss now the G20 is over
(コメント) 財政刺激策の拡大、保護主義の抑制、IMFによる不安定化諸国への追加融資、といった目標をG20は達成したか?
アメリカの財政赤字とドル安が結びつく心配はないのか? 同時に、中国の経常収支黒字を抑制しなければならないことを中国政府は理解しているか?
The Japan Times: Tuesday, April 7, 2009 Completing the G20's agenda By ROMAN FRYDMAN and MICHAEL GOLDBERG
G20 meet presages new global economic order By Liu Junhong (China Daily) 2009-04-07
Asia Times Online, Apr 8, 2009 G-20 makes it worse By Hossein Askari and Noureddine Krichene
There is no global economy Mark Weisbrot The Guardian, Wednesday 8 April 2009
Why Gordon's G20 failure is good news for the people Simon Jenkins The Guardian, Wednesday 8 April 2009
FT April 8 2009 The pendulum will swing back By Sir Martin Sorrell
The G-20’s Uncertain Roadmap Jonathan Fenby YaleGlobal, 8 April 2009
IHT April 9, 2009 Diverging Interests By MELVYN KRAUSS
Unravelling Free Trade Nayan Chanda Businessworld, 9 April 2009
(コメント) Jonathan Fenbyは考えます。国際収支の不均衡を解消するメカニズムについて、新興諸国も含めた新しい合意は形成されていません。中国が外貨準備の価値を維持するためにはSDRを利用する提案をしたのもそのせいです。グローバリゼーションに対する反対がさらに強まる前に、主要国は合意(もしくは、そのための制度)を形成しなければなりません。
April 3 (Bloomberg)
Be 197% Sure Schoolgirls Won’t Help Your Economy
William Pesek
FT April 8 2009
Sharp casts doubt on Japan’s export status
By Robin Harding in Tokyo
FT April 8 2009
The sharp end
FT April 8 2009
Japan’s stimulus
(コメント) William Pesekは「クール・ジャパン」の文化政策より、日本の老人債務大国化を憂慮します。65歳以上と15歳以下の人口が国民に占める割合を観れば、アメリカ13%、19%、中国8%、19%に対して、日本は23%、13%です。
金融緩和が限界で、公的債務を累積してきた国で、財政刺激策をさらに拡大するということは、資本流入による円高や企業の海外流出を促し、逆に、将来の急速な円安という、不安定な経済を作っているのではないか?
NYT April 3, 2009
By PAUL KRUGMAN
(コメント) PAUL KRUGMANは、中国の人民銀行総裁がドルに代えてSDRを準備資産にする提案は、現実に向き合っていない、と批判します。なぜなら、SDRは通貨ではなく、主要通貨のバスケットに過ぎないからです。ドルから他通貨への資産分散を求めるなら、それはドル暴落であり、外貨準備の大幅な損失を避けられません。
中国が、そして他の主要国が向き合っている現実とは、過剰な貯蓄(あるいは消費)を是正する調整過程です。中国は自国の成長パターンを変えることしか答えはないのに、今もまだ、それを避けています。
WSJ APRIL 6, 2009
China's Yuan Ambitions
By BEN SIMPFENDORFER
Asia Times Online, Apr 7, 2009
China gets assertive as US ties grow
By Jing-dong Yuan
WP Monday, April 6, 2009; A15
China's Dollar Deception
By Robert J. Samuelson
(コメント) BEN SIMPFENDORFERは、金融危機に応じて、中国が人民元を国際通貨として機能させる前段階を積極的に進む可能性を示唆します。特に、中国は他国の中央銀行とスワップを結び、人民元を融資することにしています。それが他通貨に交換できませんが、中国からの輸入に支払うことができ、貿易信用の途絶に苦しむ国、また、輸出を維持・拡大したい中国企業にとって効果的です。
もし閉鎖的な決済メカニズムを追求するなら、通貨ブロックのような印象も受けます。しかし、だからこそこの記事は人民元の交換性をすべての点で認め、変動レートに移行する改革を期待するのでしょう。
Robert J. Samuelsonの批判は、こういうことでしょう。中国人民銀行のZhou Xiaochuan総裁がドルに依存した国際通貨制度を金融危機の原因と批判することは正しいが、二つの点で政治的な自己正当化のレトリックである(あるいは、イデオロギー、と言えるでしょう)。
一つは、アメリカはドルを垂れ流したが、それは、中国のような黒字国が調整を拒んで黒字を累積し続けたからでもある、と。さらに、ドルに代わる国際通貨はない、という点を指摘し、中国は他国にスワップ協定として人民元を供給し、輸出を増やすための賄賂に使っている、と批判します。ドルに代わる国際通貨がない以上、何をやっても良いから、自分たちで黒字の価値を守るしかない。だから、こうした他国を犠牲にするような行為も許されるのだ、というわけです。
保護主義も同じです。しかし、Robert J. Samuelsonは、ドルが国際通貨を担う時代がまだ続く以上、相互の調整過程を円滑に進めることを求めます。・・・そう、アメリカの方からこうした話をすることこそ、中国の影響なのです。
FT April 6 2009
A freer China would stimulate spending
By Minxin Pei and Ali Wyne
FT April 8 2009
We should listen to Beijing’s currency idea
By Fred Bergsten
(コメント) ドルの外貨準備をSDR建基金に移してIMF内に置く、というアイデアは、Fred Bergstenが2007年12月にWPで公表しており、それについて中国政府の高官が強い関心を示していた、と述べています。市場でドルを売らずに、しかも為替リスクを分散できるからです。また、中国の温家宝首相がドル建ての外貨準備を持ちつづけるには、アメリカ政府の保証が必要だ、と考えるのも1971年にイギリス政府がアメリカに要求して、それをきっかけにアメリカはブレトン・ウッズ体制を破壊した、と回顧しています。
Fred Bergstenは、SDR建の基金を、すべての関係者にとって利益になる、と支持しています。黒字国が外貨準備を分散するだけでなく、アメリカにとってはドル暴落を防ぎ、ユーロの急騰も防ぐでしょう。将来のドルに代わる国際通貨を考える際にも、ドル価値の安定化に有効です。
何よりも、米中がG2で国際秩序を改善するための重要な基礎になる、と主張します。ただし、それはもっぱら、IMFにおいてヨーロッパ諸国が占める過大な投票権を奪うことのようですが。
WSJ APRIL 4, 2009
Geithner's Bank Plan Is a Good Start
By MARTIN FELDSTEIN
WP Sunday, April 5, 2009; B01
The Radicalization of Ben Bernanke
By Simon Johnson and James Kwak
NYT April 5, 2009
Obama's Big, Bold Bet
By THOMAS L. FRIEDMAN
NYT April 6, 2009
How to Clean a Dirty Bank
By ANDREW ROSENFIELD
BG April 7, 2009
Scrap the Summers-Geithner plan
By Laurence J. Kotlikoff
(コメント) ガイトナーの官民共同不良債権買取基金the Public-Private Investment Programは不評ですが、MARTIN FELDSTEINは支持しています。不評である理由は、損失が出ないように政府が保証し、利益が出たときは民間に与えるからです。その仕組みが分かっている以上、民間業者は結託してひどい債権を政府の保証により損失を免れ、他方、利益を増やそうとするでしょう。
他方、MARTIN FELDSTEINはオークションによる価格の設定を、ひとまず、信じています。うまくいくかどうか、政府が不良債権を審査したり回収したりできないのだから、民間部門を積極的に動かす仕組みが必要なのです。それは、私自身が想像する、将来の結果による保証や救済の仕組みと似ています。
さらに、うまく行くためには、不良債権を売り出す銀行へ政府による資本注入を増やし、住宅債務の保有者に長期ローンへの切り替えを可能にする支援策も必要です。
Simon Johnson and James Kwakは、この金融危機克服を「バーナンキの戦争」と呼びます。1980年代以来、インフレの危険を冒しても、失業や不況を克服するために通貨の供給を増やし続けています。その成功については、「バーナンキの賭け」と呼びます。
オバマ政権の政策全体についても、「賭け」として描かれます。ANDREW ROSENFIELDは、ガイトナーよりもシンプルな、政府による銀行の買収と切り離し("Bad Bank”)を支持します。
Laurence J. Kotlikoffは、サマーズ=ガイトナーの銀行救済計画に強い不快感を示します。銀行を救済すること、経済を回復すること、複雑な仕組みによって、銀行が不良債権処理から一層の利益を得ること、これらは別のことだが、彼らは同じことにしてしまった、と。もっとシンプルな処理のための銀行を設けるだけで良い。
The Guardian, Saturday 4 April 2009
Nuclear disarmament: Bombs away
WP Monday, April 6, 2009; A15
Why Not a World Without Nukes?
By Eugene Robinson
WP Tuesday, April 7, 2009; A23
Yes, We Can . . . Disarm?
By Anne Applebaum
(コメント) わずか3日間で、オバマはロンドンで世界の繁栄を支持し、プラハで世界の平和を高めました。メドヴェージェフ大統領は、「同志オバマ」を絶賛します。「武器よ、さらば! 核よ、さらば!」 ミサイル防衛網も、新冷戦も、グルジアも、さらば!
しかし、専門家に言わせれば、オバマは何一つ新しいことなど述べていないのです。ただ、ロシアとの話を友好的な話題に限っただけです。
たとえ世界から核兵器がなくなっても、とAnne Applebaumは考えます、世界のバランス・オブ・パワーはなくならないし、化学兵器やアル・カイダなどの脅威もなくならない。オバマが世界に模範を示しても、他の大国が核を放棄することはないし、新たな核保有国が現れる。オバマの演説に合わせて北朝鮮はミサイルを発射したが、北朝鮮を非難する決議が自分たちの行動も制約することを嫌って、ロシアや中国は決議に反対した。
WP Tuesday, April 7, 2009; A23
A World Without Nukes -- Just Like 1939
By William Kristol
WSJ APRIL 7, 2009
The Nuclear Illusionist
(コメント) オバマは、アメリカが最初に核を開発し、アメリカがそれを使用したことを意識したような演説をしました。・・・核を保有する者は、核を使用する権利を持つ。今も、世界中に蓄積される何千発もの核兵器は冷戦の遺産である。冷戦が終わったのだから、その遺産も片づけよう、と主張しました。
しかし、戦争がなくなれば武器は要らない、というのは、古代からの理想である、とWilliam Kristolは考えます。またそれは、アメリカの大統領たちが世界に自由主義と民主主義を広めようとしてきた一つの理由です。
しかし、オバマは北朝鮮に対して「国際社会が一致して強い抗議の声を上げる」ことを求めます。しかし、それ以外には何もしません。オバマはイランに対して「イラン政府が国民にとって最も好ましい選択をする」ように望みます。しかし、イランが核武装しても、その主張は変わらず、イランの指導者たちがオバマの理想を理解できなくても、何もしません。
オバマは、核のない世界へ向かう道を支持しました。そして、当面の現実世界が核とミサイルで武装する国を増やすことについて、何も語っていません。
FT April 8 2009
This new nuclear arms age has its own set of risks
By Lawrence Freedman(King’s College London)
The Japan Times: Wednesday, April 8, 2009
A ray of hope for abolishing nuclear arms
By ALEKSANDER KWASNIEWSKI, TADEUSZ MAZOWIECKI and LECH WALESA
CSM April 09, 2009
Obama's bid for nuke-free world: Bad idea.
By Richard J. Harknett
(コメント) オバマ政権のスタッフたちが、こうした「理想主義への批判」を予想しなかったはずはありません。Lawrence Freedmanは、オバマ演説を正しい文脈におきます。すなわち、米ソ超大国が安心して核軍備を競うことのできた世界(冷戦のユートピア)は終わったのです。(ALEKSANDER KWASNIEWSKI, TADEUSZ MAZOWIECKI and LECH WALESAも同様に。)
オバマが最も恐れているのは、ビン・ラディンが核兵器を手にしてアメリカの都市を攻撃することです。核拡散は、相互確証破壊(MAD)を不可能にし、極小な核保有国に核のバランスを破壊する効果的な脅迫の手段を与えます。それゆえ、むしろアメリカとロシアが核保有を減らすことで、こうした核拡散を厳しく管理する国際体制への転換を迫っていくわけです。
しかし、またアメリカとロシアが大幅に抑制した核兵器を別々に保有するのではなく、核兵器を統一して国際管理し、配備する、核抑止体制によって、逸脱を許さない体制が過渡的に求められるかもしれません。(Richard J. Harknettも同様に。We need not idealize global politics to make the world more secure.)
FT April 5 2009
How to save the market economy in Europe
By Mario Monti
FT April 5 2009
Eastern intentions
FT April 6 2009
The euro in eastern Europe
FT April 8 2009
Eastern eggshells
By Stefan Wagstyl
IHT April 9, 2009
Europe’s Next Revolution?
By ANDREW WILSON
(コメント) EUは、世界経済統合のモデルとして、成長モデルの革新を普及させ、国家間の徴税システムを競争的に破壊する行為に歯止めをかける合意を見出し、単一市場を強化しながら、グローバリゼーションへの政治的支持を確保できる、とMario Montiは考えます。
それ以前に、EUは東欧の金融・経済危機、そして政治危機に対処しなければなりません。EUはユーロ採用の条件を緩和したくないし、東欧諸国はEUに下層市民として参加したくない。IMFは、残された可能な選択肢として、東欧諸国のユーロ化(一方的なユーロの採用)を支援することを提案しています。
新しい、安定した通貨の導入は、経済危機という悪魔を倒す「銀の弾丸」になるかもしれない、とIMFはその例を挙げています。パナマ、エルサルバドル、エクアドル、コソボ、モンテネグル。しかし、問題は、その将来の持続性である、とFTは警戒します。十分な輸出や資本流入が実現できるのか? あるいは、再び、アルゼンチン?
東欧の貧困国、モルドバでは、反政府デモが激しくなっています。共産党政権は嫌われ、親EUから親ロシアへの外交の転換も嫌われ、経済危機が深まっています。EUとIMFは、モルドバの民主主義体制を救済するときです。
The Times, April 9, 2009
Eurozone braces itself for the perfect storm
Anatole Kaletsky
(コメント) 非常に興味深い、的確な論説だと思います。東欧の金融危機をドイツが救済しなければ、それはリーマン・ブラザーズか、クレディット・アンシュタルトを再現するかもしれません。
ヨーロッパは英米以上に深刻な危機に苦しんでいます。それは三つの脅威が加わっているからです。1.ドイツ経済が輸出の落ち込みに対して脆弱である。2.東欧諸国の金融危機が波及する。3.ユーロ圏内のコアと周辺・近隣諸国との対立が激化する。
まずドイツ経済の好調さは、ユーロ圏の周辺部や東欧、ロシアにおける金融・住宅バブルに向けた輸出の増加によるものでした。ドイツ自身は金融危機を回避しても、こうした地域の危機が輸出の減少によって深刻な不況をもたらします。
次に、東中欧の急速な成長は資本流入と信用の膨張によるものでした。その対外債務のGDP比率は、アジア通貨危機の前にアジア諸国が示した率を超えています。しかも債務の多くは外貨(ユーロやスイス・フラン)建です。そのために各国は通貨価値を切り下げて景気回復を図る従来の政策を採れません。しかし、IMF融資を受けて、緊縮政策を繰り返しながら、為替レートを維持する政策が成功する見込みは少ないでしょう。たとえG20がIMF融資の増額を認めても。
最後に、中東欧の債務を救済できるのは、彼らの政府ではなく、裕福なドイツ人です。もし危機が中東欧に及べば、その波及を止めるためにドイツが救済することはあるでしょう。しかし、ユーロ圏内には、アイルランド、ギリシャ、ポルトガルなど、金融危機とバブル崩壊に苦しむ国があります。中東欧諸国の債務を救済して、ユーロ圏内の周辺部における債務危機を救済することを拒むことは難しいでしょう。そして、スペインも、イタリアも?
ドイツ政府が選挙前に、そのような問題を示されたら、答えることは難しいのです。
YaleGlobal, 6 April 2009
Somalia’s Piracy Offers Lessons in Global Governance
Christopher Jasparro
NYT April 9, 2009
Homegrown Aid
By JEFFREY D. SACHS
(コメント) グローバル・コモンズの供給と管理をめぐる政治問題です。
The Japan Times: Monday, April 6, 2009
Rebalancing Asia's economies
By JONG-WHA LEE
FT April 8 2009
China’s consumption is a disappearing act
Asia Times Online, Apr 10, 2009
China's unreal estate
By Chan Akya
(コメント) JONG-WHA LEEは、アジア開発銀行のチーフ・エコノミストです。消費を重視せよ、地域協力を拡大せよ、と求めています。しかし、他の記事を読めば、「中国の消費」に期待することを慎重に再考しなければならないでしょう。
The Guardian, Thursday 9 April 2009
Confucius can speak to us still - and not just about China
Timothy Garton Ash in Beijing
(コメント) 「師、いわく・・・」 という中国人のエートスを形成する儒教とその始祖、孔子が、本当は何を言ったのか? とTimothy Garton Ashは考えます。なぜなら、中国国内でも、国外への積極的な普及においても、儒教が急速に復活したからです。
Timothy Garton Ashは、こうした儒教による「中国人」の特別視を批判します。ハンチントンであれ、中国や共産党の知識人であれ、「儒教」や「中国的な価値」で何かを説明することはできません。さまざまな宗教や価値観は何世紀も混合し、変容しており、特にこの20年間で、中国人の価値観は西洋の価値観と急速に混合したのです。
拙著『グローバリゼーションを生きる』の中で、北京の孔廟を訪れた際、レジーム論を連想したことを記しました。その当時、建物は埃をかぶって、訪れる人もわずかであったと思いますが。
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The Economist March 28th 2009
The G20 summit: London calling
Emerging-market multinationals: Not so nano
Australia’s foreign policy: Rudd floats an Asian balloon
London economic summit: Gordon’s Big Top
NATO and its future: Have combat experience, will travel
Globalisation and trade: The nuts and bolts come apart
The dollar as a reserve currency: Handle with care
(コメント) ロンドン・サミットの課題を、金融危機、国際規制、不況対策、保護主義、と考えていましたが、記事は最初に、IMFの融資枠拡大、を挙げています。ゴードン・ブラウン・サーカスの出し物が準備された経過で、いつの間にかIMFがトップに立ったわけです。
アメリカもドイツも、互いの手を縛る約束をするより、国際機関に解決をゆだねることを選択したのでしょうか? 保護主義についての考察は、グローバル・チェーンの時代における、不況対策と緊急貿易管理を、どのようにグローバリゼーションの逆転に向かわせないか、を重視します。
G20とNATOについて心配するより、WTOとNanoに期待する方が良いのかもしれません。また、中国がドルに代えてSDRを求めるのは、アメリカの財政赤字がインフレを招くことに注意しただけで、SDRによる国際通貨体制を望んだわけではない、と指摘します。さらに、いっそ、バンコールのように一次産品を準備にするか、ケインズ自身は黒字国に課税することを考えていたのでは、と中国政府に反問します。
麻生首相より、オーストラリアのラッド首相の方が、中国を含めたアジアの国際秩序再編を求めて積極的に動いています。日本の未来は?
The Economist March 28th 2009
Learning the hard way
Saving America’s banks: Only halfway there
America’s toxic-asset plan: Dr Geithner’s bank rehab
(コメント) オバマ政権が期待されたほど政治を確信できないし、金融安定化も遅れている、という批判を検討しています。