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IPEの風 4/13/09

G20の金融サミットが行われているとき、並行して、NATOは誕生60周年を祝いました。他方、日本政府は北朝鮮のミサイル発射に対して、ますます厳重な警戒態勢を敷いていました。「迎撃する」という外相の明確な発言が、むしろ「内相」としてのシグナルであったのか、誤報騒ぎも含めて、国民が北朝鮮のエキセントリックな放送に戸惑い、政府がメディアを独占する時間を増やしたのです。

しかし、北朝鮮のミサイル発射をどう扱うかは、日本が国内世論や次の選挙のために脚色する政治ショーではありません。WTOが世界貿易の拡大や保護主義に代わる政策を提案する枠組みへ、IMFが国際収支や国際金融の緩衝材から支援手段へ、国連安保理、NATOが国境紛争や軍備管理・核廃絶を求める枠組みへ、その姿を変えつつあります。北朝鮮をめぐる日本政府の主張に主要国が支持を表明するかどうかではなく、アジアの地域安全保障を提唱し、朝鮮半島の非核化や再統一を支持することが、日本にふさわしい役割ではないでしょうか?

日本が国際論争において積極的に発言し、行動するためには、国内政治の質が問われます。斬新なアイデアを実現する活発な政策論争、有能な指導者、長期政権、選挙による政権交代、がなければ、世界政治の重要な主体として認められません。つまりイギリス、アメリカ、ドイツ、さらに幾分かは中国の、政治制度からも学ぶことでしょう。あるいは、このまま北朝鮮と同じような「ヤドカリ国家」であることに満足して、老衰するのでしょうか?

そうではない、と思いたいのに、民主党はどこに消えてしまったのですか? 麻生内閣が次々に財源もないまま「景気回復だ」という政策を示すとき、野党がそれを批判し、積極的に対案を示す必要があります。小沢一郎の政治献金問題でにわかに存在感を失うような野党が、政権を担えるとは思えません。

他方、アメリカと国連安保理に訴えるとき、日本政府はどのような長期的目標や実現方法を示しているのですか? 財政刺激策15兆円(約$150 billion)の発表は、ロンドン・サミットの成果であり、不況対策として正当化するだけで良いのでしょうか? 麻生内閣の閣僚たちが、本当は、瞬間的に選挙へ移行するはずだったとしても、今や、政策論争を担うときです。

もちろん、私がこうした論争を唱えるつもりはありません。私が残念に思うのは、もっと早く、アジアの安全保障体制を再構築する役割を日本が担わなかったこと、ドルに依存した国際通貨制度の改革を日本が唱えなかったこと、アジア地域の貿易や投資を安定させる枠組みに深く関与して、中東欧の危機救済に悩むドイツの苦しみを日本が引き受けてこなかったこと、中国とアメリカが国際秩序の転換に貢献する積極的なテーマや論争を歓迎し、日本が一緒に論争を指導しなかったこと、・・・などです。

いや、たぶん日本の官僚たち(少なくとも一部)は、それを求めていたかもしれません。彼らに正当性を与え、政治的な決断と長期的な関与の重要性を示すための的確な言葉と財源を、私たちが与えなかっただけです。こうして日本は、グローバリゼーションの第2幕で、早くも退場する列に並ぶのです。

「・・・日本は国力の相対的な衰退をやりくりして、それに中国がつけいるのを防ぎ、アメリカが太平洋の主要同盟国に幻滅するのを防がなければならなくなる。」(ビル・エモット『アジア三国志』)

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でも、私は時代小説が好きです。乙川優三郎の『さざなみ情話』や、平岩弓枝の「かみなり」を読んでいると、こうした日本人の情感や文学の素晴らしさを感じます。そうであれば、単に、アメリカの1990年代を見習えとか、サッチャー革命、中国の反日ナショナリズム、自民党の赤字国債増発、民主党の政治献金疑惑、などに翻弄されることなく、たとえ高齢化しても、新しい制度や協力関係を見いだす力が日本の民にもある、と信じたくなります。

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