IPEの果樹園2009

今週のReview

4/6-/11

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

国際通貨ドルの退位、 米中G2の時代、 資本主義は変わるか?  20についての論争、 J.スティグリッツ, 中国の国際秩序

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


WP Monday, March 23, 2009

The End of Dollar Dominance?

By John Pomfret

NYT March 24, 2009

China Urges New Money Reserve to Replace Dollar

By DAVID BARBOZA

(コメント) 1.4兆ドルの(あるいは、2兆ドルに向かう)外貨準備(そのほとんどがアメリカ財務省証券)を持つ中国の中央銀行総裁Zhou Xiaochuanが、アメリカのドルに代わって、IMFによる準備通貨を利用したい、と主張しました。中国は、アメリカの将来の成長を疑っているし、現在の政策がインフレを促して、中国の対外資産を減少させることを嫌っているのです。

中国政府は、ロンドンでの金融サミットにおいて、アメリカ政府が将来のインフレを加速するような政策を選択することに対して、あらかじめ牽制したかったのかもしれません。温家宝首相は、景気刺激策がアメリカの財政赤字を増やし、ドルの価値が下落する可能性を指摘して、それは好ましくない、と主張しています。つまり、ドル安政策(貿易戦争)を牽制したかったのかもしれません。

他方、もし中国が財務省証券を購入しなくなれば、アメリカの財務省証券は価格が下落し、高金利になって、オバマ政権の財政刺激策を無効にしてしまうでしょう。

プリンストン大学の専門家Nicholas Lardyによれば、中国政府が言いたいのは、ドルの長期的な支配がアメリカ政府に海外からの借り入れを容易にしているのは不公平だ、ということであり、財務省証券を保有するリスクは高まっている、ということです。「それは正当な懸念である」と、Lardyは認めています。

同時に、中国政府は金融市場がドル不安を生じることに注意して、財務省証券の購入を促すシグナルを送っています。そしてZhou Xiaochuanが示唆したのは、SDRをもっと使うことです。かつて発展途上諸国がSDRの増発を求めても、アメリカ政府に無視されていました。今度は違うでしょう。

FT March 24 2009

China’s plan to end the dollar era

FT March 24 2009

Global reserve currency

(コメント) 中国にならできると思うだけに、ドルの支配を終わりにするべきだ、という提案は国際金融システムの根幹を揺るがすものでした。日本のアジア通貨基金提案に激怒した、と言われるサマーズが、この提案をどのように受け止めたのか、興味深いです。

しかしFTは、中国政府はドルを脅しているのではなく、資産の暴落を恐れているのだ、と指摘します。あまりにも膨大な為替リスクに直面して、中国の通貨当局はリスクを分散しようと、他通貨や高利回りの債券を購入しました。その結果は、大きな損失を出したようです。

それゆえ、中国がドル以外の安全な準備資産を求めるのは合理的なのであり、たとえそれがアメリカ政府の財政赤字を金融するためには不都合でも、アメリカが望むままに赤字を融資でき、国際通貨・準備を管理できると思うのは間違いなのです。現在の世界金融危機もそれを示しています。

Zhou総裁は、IMFが加盟諸国に創りだせる独自の通貨、SDRの利用を拡大するよう求めています。同時に、黒字国はIMFにその準備を委ねて赤字国への融資を増やすのです。こうしてIMFは強化され、より弾力的に活動できるでしょう。

FTは、他の側面を指摘します。一つは、現在、黒字国として何をするのか? もう一つは、将来、アメリカに代わる覇権国家が国際通貨を供給しなければならない。

中国の政府や中央銀行が考えていることには正しい根拠があります。しかし、たとえSDRが準備資産となっていも、黒字国が不均衡を続けるなら、国際金融市場は同じような動揺を繰り返すでしょう。中国が輸出に依存して、大幅な外貨準備を累積する行動を変えなければなりません。

また、安定した国際通貨の背後には、安定した国家の支援とパワーがなければなりません。今、アメリカのドル資産を捨てて、世界の投資家が中国やロシアの資産に向かうでしょうか? 将来、中国が安定した覇権国家になれば、間違いなく、そうなるでしょう。しかし、いまはまだ、アメリカのドル資産が投資家の選択する国際準備なのです。

China Daily: 2009-03-24

China deserves greater role in IMF's reform

By Yi Xianrong

The Wall Street Journal, 25 March 2009

China Takes Aim at Dollar

Andrew Batson

(コメント) 中国人民銀行のZhou Xiaochuan総裁が求めているのは、ドルだけでなく、ユーロや円など、少数の通貨に偏ったシステムの改革です。なぜなら、このシステムは少数の国にだけ不当に大きな政策の自由や影響力、パワーを与えるからです。

IMFの副専務理事、John Lipskyは、中国の提案を真剣に受け止める、と応えています。ずでに、ドルによる現行の国際システムをJoseph Stiglitzも批判しました。その理由は、(外貨準備が)アメリカの赤字に依存しているからです。

また、中国はSDRの利用を支持していますが、それはIMFを強化し、そのIMFの意思決定にもっと多くの発展途上諸国が参加する、という形で変化を目指しています。中国は、IMFが発行するSDR建の債券を(財務省証券に代えて)購入するようになるでしょう。

China Daily 03/25/2009

Reform international monetary system

By Zhou Xiaochuanthe governor of the People's Bank of China

(コメント) その問題提起には私も共感します。 “What kind of international reserve currency do we need to secure global financial stability and facilitate world economic growth?”

国際決済や準備としては、金、銀、そして、ポンド、ドルの外国為替、もしくは短期資産が保有されました。ただし、この問題を解決するには、もちろん、準備資産の選択だけでは不十分です。

国債通貨制度改革の目標は、「特定の諸国と結びつかない、長期的に価値の安定した」国際準備通貨を創り出すことである、と。そうすることで、信用に依拠した各国通貨を国際準備資産として使用することが引き起こす、現在の金融危機のような問題を解決できる、と考えます。

さらに、Zhouによれば、この超国家準備通貨は、国際機関によって管理され、世界流動性の供給を管理する。一国の通貨が準備通貨でなくなることにより、為替レートの変化は各国の不均衡の調整だけに適合する動きを示すだろう。それはまた、将来の通貨危機を減らし、危機に対する管理・救済においても積極的な役割を果たせる。

さて、ではどうやって国家の主権から独立した国際準備を創るのか?  ケインズの唱えた国際通貨を、今、創るのは困難です。ZhouはSDRに注目します。SDRは、すでに超国家的な準備の性格を持っています。しかし、SDRの追加によってIMFの緊急・安定化融資を強化でき、IMF内部の新興国の発言力を強め、さらに、SDRの配分においては発展途上諸国への支援にも利用できるでしょう。

Zhouは、超国家準備貨幣の導入が、すべての国(アメリカやEUや日本)にとって、漸進的で長期的に行われるなら、利益である、と主張します。この過程を実現するのが、SDRの利用拡大をてことしたIMF改革なのです。・・・良くできた、実現可能な主張だと思います。主要国間の信頼・協力関係が築けたら。

しかし、SDRの利用を促進する話を読むと、これは金融市場の既得権を持つドル建金融市場とアメリカ系金融機関にとって、非常に厳しい競争を強いる条件ではないか、と思います。つまり、アメリカが本当に協力するのだろうか? と。

IMFはSDR建の債券を発行します。SDRの価値は新興諸国の通貨も含めて計算し、GDPでウェイトを付けます。SDRの配分も機械的にではなく、各国の保有する資産に応じて、またSDRの価値を高めるように調整します。それは投機的な資本移動や金融市場の過熱に対しても有効な介入手段となるでしょう。成長や開発、マクロ政策の監視においても、特定の国よりも、超国家機関の準備通貨を使う方が優れている、と。

そのためには、要するに、今のドルによる外貨準備をIMFのSDR資産に振り替えさせるのである。こうして、ドル本位制から、中国など黒字国の選択による、SDR本位制への移行が可能になる。

・・・SDR建金融市場はまだ存在せず、金融決済やさまざまな便宜において、民間取引のドル建市場を脅かすことはないでしょう。しかし、アメリカと新興諸国の将来の経済状態や政策次第で、それは加速するわけです。たとえば、IMFでアメリカが拒否権を失い、ロンドンやシンガポールで金融機関が本格的にSDR建市場を拡大し始めたら。

BBC 2009/03/26

Will the US dollar remain king?

By Katie Hunt

(コメント) サマーズと違って、ガイトナーは中国人民銀行の提案を検討する姿勢を示し、ドル安を引き起こしています。US Treasury Secretary Timothy Geithner said he was "quite open" to China's idea, triggering a plunge in the dollar.

アメリカ経済は歴史的な不況を迎えており、ドル建金融市場の死滅寸前まで危機は及んでいます。アメリカ政府がはねつけて、中国の不快感を招くのは、決して望まない(どうしても避けたい)状況なのです。

BBCの記事がポンド・スターリングの没落過程と比較するのは当然です。また中国が、自分の通貨を国際通貨として使え、と主張していないことも重要です。中国自身が国内の金融市場を整備中であり、まだ、国際通貨の役割を担いたくないのです。

しかし、SDRの利用拡大という提案について、多くの評価は「非現実的だ」というものです。金融市場としての「広がりと深さ」が圧倒的に優れているからです。ユーロでさえドルに及ばず、SDRは問題外です。中国も動けません。中国がドルから資産を分散するという姿勢は、一挙にドル暴落を招く危険があるのです。

・・・しかし、だから言ってるじゃないか。アメリカが協力して、漸進的に、長期的な移行を実現するなら、と。それこそが世界経済の利益なのだ。・・・

WSJ MARCH 26, 2009

China and the Dollar

YaleGlobal, 27 March 2009

China Rises Again – Part II

Glenn D. Tiffert

The Guardian, Monday 30 March 2009

China's empty threat

Dean Baker

(コメント) WSJは、もちろん、ドルの特権を擁護します。ガイトナーの「オープンな」姿勢を批判し、中国には、SDRを利用する市場はないし、それを管理する超国家主体など無い、めちゃくちゃだ、と憤慨します。

中国がドルを買わなくなる、というのは、誰にとっての悲劇なのか?  Dean Bakerは問います。それは、ドルの価値を減らして、人民元を増価させる。アメリカ政府が望んでいたように、アメリカは輸出を増やすだろう。

中国はアメリカ向けの輸出を減らすようなことを望まない。温家宝はドル債を買い続けるし、それを止めるという脅しを使うはずもない。たとえ中国がドル債の購入を減らしても、すでにバーナンキはドル債の購入を増やしており、中国の買わない分を買い増すだけだろう。それは、どちらが買ってもインフレ要因だが、今のようにデフレが心配なら、望ましいことである。

ただし、中国はアメリカ向けの輸出を増やすことで成長を維持する政策をやめねばならない、と。

March 31 (Bloomberg)

Dollar Isn’t Going to Yield to Yuan Just Yet

Celestine Bohlen

FT March 31 2009

Asia is the victim if the bond bubble bursts

By Yu Qiao

(コメント) Celestine Bohlenは、中国の望む超国家通貨を、グローバリゼーションの時代にはエスペラント語と同じように有益だが、誰も使わない、とその問題を指摘しています。

今も、1971年のコナリー財務長官が通貨危機に騒ぐ欧州諸国に向けた放った暴言が適切なのです。「確かにドルはアメリカの通貨だ。しかし、それが問題だとしても、アメリカの知ったことか? (自分で何とかしろ。)」

Yu Qiaoが指摘している問題は、いわゆる「再建ブレトン・ウッズ体制」の解体を意味するわけです。ドルを準備として蓄積し、輸出による成長で繁栄したはずが、ドル暴落の不安によってアジア諸国はオバマ政権の景気刺激策にも不満である。これは、インフレ政策による債務の帳消し、あるいはデフォルトをもたらすのではないか?

アジア諸国はその外貨準備をドルの買い支えで消耗したくない。むしろアメリカ経済の産業部門へ投資することに使いたいのです。しかし、今の金融危機で投資には大きなリスクがあります。Yu Qiaoはそこで提案します。1.アジア諸国はアメリカ政府と合意して、金融危機から保護された基金CRF(a crisis relief facility)に投資を集める。2.CRFの内部で、株式投資に転換できる。

さらに、アメリカ政府や連銀が関与して、アジアの投資を債券から企業の株式に転換する仕組みのようです。

Asia Times Online, Apr 1, 2009

Beyond the dollar

By Martin Hutchinson

FT April 1 2009

China is just sabre-rattling over the dollar

By David Pilling

(コメント) Martin Hutchinsonは、中国人民銀行が、ドルを準備にする代わりに、IMFの官僚たちを強化するSDRではなく、金本位制を復活させるべきだ、と考えます。

中国人民銀行の提案で、もっとも興味深い、重要な点は、中国がドルに代えて人民元の利用を主張しなかったことです。むしろ単独の国民通貨に依拠するのは弱く、危険だ、と考えています。国際通貨のメリットを失わないで、ドルへの依存を減らすことです。しかし、David Pillingは、中国とアメリカの安全保障上の牽制行為を冒頭に記しています。

どちらが真実か? どちらもシュールリアルな覇権争いでしょうか?


BG March 26, 2009

China's grand bargain

By Robert I. Rotberg

(コメント) 中国とアメリカは互いに相手を必要としている。アメリカは中国の人民元が安すぎると非難するのをやめて、中国もアメリカのリフレーション政策に協力する方が良い。

アメリカは中国の協力を必要としている。北朝鮮の核兵器やミサイル。ビルマとの交渉。イランとの交渉(中国はイランの最大の貿易相手国)。アフリカの安定化と貧困解消(中国は最大の投資国であり、武器輸出国である)。

金融危機を鎮静化して不況を緩和するには、金融的・財政的な拡大策、保護主義の抑制、発展途上諸国への援助が必要である。中国の協力なしに、欧米だけでは十分な成果を上げられないだろう。だから、アメリカは中国が国内の反体制派を恐れて人権を無視するようなことがあっても、強く非難するのは控えた方が良い。

それは混乱した、しかし必要な、取引だ。

NYT March 27, 2009

Hong Kong Billionaire Says It’s Time to Buy

By BETTINA WASSENER

WP Sunday, March 29, 2009; B01

Look to Beijing

By Zachary Karabell

China Daily 2009-03-31

Time to rethink regional security cooperation

By Zhang Tuoshengthe China Foundation for International and Strategic Studies

(コメント) 金融危機は終わるでしょうか。香港の億万長者、Li Ka-Shingは、不動産を買うべきだ、と薦めています。どうですか?

安全保障に関しても、今、中国とアメリカ、また地域安全保障のあり方が急速に変化しているかもしれません。Zhang Tuoshengは、欧州の安全保障をモデルにします。

FT April 1 2009

China agrees to need for co-operation with US

By Geoff Dyer, Beijing Bureau Chief

The Guardian, Thursday 2 April 2009

China arrives as a world power today - and we should welcome it

Timothy Garton Ash in Beijing

WP Thursday, April 2, 2009; A21

How a 'G-2' Would Hurt

By Dennis C. Wilder

(コメント) Geoff Dyerは、今や国際政治の主要な問題で、米中の合意なしには何事も起こらない、とGeoff Dyerは考えます。アメリカが多くの融資を外国の中央銀行にも供与したように、中国もインドネシア、ベラルーシ、マレーシア、アルゼンチン、香港、韓国、とスワップ協定を結びました。中国国内には、世界金融危機の原因が中国の対外黒字や外貨準備の累積にある、という主張に対して、強い不満が起きています。

(日本の安倍首相ではないですが)以前に比べて、中国国内で国際政治に関する強い主張が明確に示されるようになっています。中国の中央銀行総裁という立場で、ドルが国際準備通貨の地位を代わるべきだ、というのも非常に重大な発言です。

また、もっと価値の安定した準備資産を、もっと弾力的に供給するべきだ、と主張することで、中国は金融危機に影響に苦しむ発展途上諸国の声を代弁しており、大きな政治的支持を得ることにもなるのです。

Timothy Garton Ashも強く中国の参加を支持します。もはやG7にロシアや中国を加えるかどうか、議論することもありません。金融危機と世界不況を解決するにはG20が重視されるのであって、その中で中国は重要な役割を担っています。

しかし、中国はどのような役割を担うのか? 世界が中国に多くを要求するほど、中国も世界に多くの要求を示し始めます。最近の、超国家的な準備通貨を創れ、というのも顕著な例だ、と(この主張自体は以前からあり、J.スティグリッツも最近示しました)。G20に向けて、胡錦濤主席は議長のゴードン・ブラウン首相に対して、IMFのより大きな発言権を求めました。

中国の指導者は、G20の中でもG2の考え方を好みます。中国が今後、国際秩序に何を求めるのか、あらかじめ特定の考え方はないようだ、とAshは考えます。むしろ、西側との交渉によって形成されて行くでしょう。だからこそ、G20をはじめとして、中国の参加と発言を積極的に歓迎し、1945年以来、構築されてきた西側のリベラルな国際秩序を開く必要があるのです。そして、この秩序が単に西側のためだけにあるのでなく、中国を含むすべての国の価値を実現する条件にもなることを、説得することでしょう。

こうして(成功するか失敗するか、いずれにせよ)、2010年代に、国際秩序は大きく転換するのです。

他方、Dennis C. Wilderは、オバマ大統領がG20で、明確に、G2を否定するべきだ、と主張します。なぜなら、そのような態度を公式に示すことは、従来のアメリカの同盟諸国やアジア地域の安定を著しく損なう、という代償を伴うからです。日本、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピンが重要であって、中国との関係を優先することはできません。

それは、冷戦終結後、最も重大な戦略関係の見直し、として解釈されるでしょう。そのような混乱を避けるべきです。

The Independent, 2 April 2009

The Real Summit has been Between China and the US

Hamish McRae

Asia Times Online, Apr 3, 2009

China prepares for next surge

By Mark Selden

(コメント) Hamish McRaeは、今は不況を脱出することが重要であって、不況においてこそ新興諸国の力は重要になり、世界のパワー・バランスは変化を加速する、と考えます。何よりも重要な関係は、米中のG2であり、G20でなければ不況からの脱出策は議論できません。今年中に中国は日本を抜き、翌年、ブラジルはカナダを抜き、インドはスペインを抜くでしょう。

201933年の世界経済会議にたとえるのは間違いです。むしろ1914年のグローバリゼーション崩壊と第一次世界大戦への道である、と。

Mark Seldenは(ざっと見ただけですが)、James FallowsGiovanni Arrighiの研究に依拠して、中国経済が危機を克服できるだけでなく、一層強力に成長を続ける力がある、と主張します。それは、これまでの成長した諸国の例と比べて、出稼ぎ労働者の供給や覇権システムの循環が有利に働く、と考えるからです。


SPIEGEL ONLINE 03/23/2009

THE HANGOVER AFTER THE PARTY

Eastern Europe's Economic Crash

By Jan Puhl

WSJ MARCH 28, 2009

Eastern Europe and the Financial Crisis

By DAVID ROCHE

SPIEGEL ONLINE 03/31/2009

US ECONOMIST ADAM POSEN

'Merkel Does Not Get Basic Economics'

YaleGlobal, 1 April 2009

The G-20 and the Future of Capitalism – Part II

Jean-Pierre Lehmanna

NYT April 2, 2009

The European Single Market Shows Its Seams

By NELSON D. SCHWARTZ

(コメント) 東欧の危機に関する補足です。

「それは牢屋から釈放されて上限なしのクレジット・カードをもらったようなものだ。」と、DAVID ROCHEは説明します。東欧の金融危機で特異な点は、信用拡大が外貨建で、しかも外国の銀行によって広められたことです。また、民間の企業や家計が借り入れました。

この背景には、EUへの加盟やユーロの採用を前提し、急速に成長して所得水準もキャッチ・アップする、という強気の予想があったのです。それは不動産や資産市場のバブルをともない、金融破たんはEUに波及します。救済融資とその条件、コスト分担の問題が起きるわけです。

Adam Posenは、メルケルの金融危機対策や不況対策を批判しています。また、オバマ政権の金融救済策も。

Jean-Pierre Lehmannaは、G20をめぐってEU内の分裂を考察します。各国はますます保護主義的な、グローバリゼーションを解体する政策を取っています。イギリスの移民労働者排斥、フランスの外国向け直接投資の妨害、など。1900年と同様に、今もヨーロッパの分裂が崩壊を導きます。


WP Sunday, March 29, 2009; B01

Re-emerging As an Emerging Market

By Desmond Lachmanpreviously chief emerging market strategist at Salomon Smith Barney and deputy director of the International Monetary Fund's Policy and Review Department

(コメント) 元投資銀行家・IMF金融官僚の痛烈な自己批判、アメリカ政府批判です。

「新興経済"emerging markets"」と呼ばれた諸国で繰り返し起きた債務危機、通貨危機、政治経済体制の崩壊を見て、まさか同じことがアメリカで起きるとは思わなかった、と慨嘆しています。クローニズムを批判し、政策の一貫性や透明性がないと批判し、持続不可能な経済状態でありながら将来にリスクがあるとはまったく考えていないと批判していた、と。すべてアメリカの銀行や企業、政府、消費者がしていることです。

危機にあって、アルゼンチン政府の担当者が示した傲慢さ、場当たり的な対応に辟易したけれど、アメリカ政府や連銀の対策は同じである。経済が機能しないにもかかわらず、政治家たちはナショナリズムを吹聴して政策転換を拒んだ。彼らが失敗に気づくのは、抗議の群衆が街頭を占拠し、政府を倒すときだけであり、アメリカ政府の財政赤字増大を見つめる市場や中国政府が警告を発するときだけだ。


The Guardian, Friday 27 March 2009

Restructure now

Robert Reich

WSJ MARCH 28, 2009

Obamanomics Isn't About Big Government

By ROBERT B. REICH

(コメント) 不況の時こそ構造問題の解決に取り組め、とRobert Reichは主張します。それは、アメリカにおける所得格差、中所得層の没落です。彼らが減少したことで、需要は衰え、生産的な投資も減って、生産力がありながらアメリカは失業を解消できません。他にも、気候変動や、外国からの石油や資本流入に依存する経済構造を改めるべきだ、と指摘します。

その方法は、アメリカ政府が積極的に集合財への公共投資を増やすことです。エネルギー、教育、医療・社会福祉、輸送システムの改善において、公共投資は重要です。アメリカの公的債務負担は不況によってさらに増大するでしょう。しかし、戦争からの復興がそうであるように、将来の成長に投資するため債務が増えることは問題ではありません。

債務をどのように負担するか、アメリカは税制、特に富裕層への限界税率を高めるべきだ、と主張します。

WSJへの論説では、この点でRobert Reichが富裕層の支持を求めています。そのために、彼らの愛するレーガン政権と比較するのです。

何よりも、オバマの10年財政再建計画を見ることです。オバマが目指すのは大きな政府ではありません。レーガン政権と比べても、オバマの目指す政府支出のGDP比率は低いでしょう。むしろレーガノミクスとの違いは、成長をもたらす基礎が広がることです。レーガン政権は富裕層の富が次第に貧困層にも及ぶという「トリクル・ダウン」を主張しました。現状において支持することはできません。オバマは逆です。

その差をもたらす重要な政策転換は、公共投資の違いです。レーガン政権は軍事費の拡大に使い、雇用訓練、教育、インフラ、技術開発、は減らされた。オバマ政権はアメリカ人の生産性を高めるために投資する。

今日、資本はどこで貯蓄されたかにかかわらず、国境を超えて投資される。地球上の収益の高い投資機会を比較している。あまりにも流動的な金融資本の国際移動には批判が強まるだろうが、投資の多くは工場や生産設備、研究所、その他、雇用をもたらす形でも行われている。こうした投資を呼び寄せることができるのは、賃金が安い、規制が緩い、課税されない、という理由だけでなく、労働力の生産性が高い、ということだ。

オバマノミクスは、教育、医療、近代的なインフラに投資することで、アメリカの労働力の生産性を高めるだろう。

The Guardian, Friday 27 March 2009

A 'people first' strategy

James K Galbraith

The Guardian, Friday 27 March 2009

New deal for a social Europe

Dave Prentis, Frank Bsirske and Carlo Proda

FT March 27 2009

Now we get what we deserve – inequality rage

By John Lloyd

(コメント) James K Galbraithは、1930年のケインズの言葉を引用し、これからの不況に対する間違った二つの考え方を批判します。一つは、回復は時間がたてば自然に生じる。もう一つは、銀行からの資本の流れを回復させる。

間違った経済予測に頼る政府の無策と、資本の管理に失敗した銀行の救済は、不況を長引かせ、失業に苦しむ人々を増やすでしょう。

Dave Prentis, Frank Bsirske and Carlo Prodaも、金融機関や多国籍企業の救済ではなく、もっと病院や学校に投資せよ、と主張します。

John Lloyd は、不平等と、その社会的な批判や是正策について考察しています。たとえば、最近のPolly Toynbee and David Walker, Unjust Rewards (2008), やイギリスの社会主義者による主張R.H. Tawney, In Equality (1931), 社会統計学者の最近の研究Richard Wilkinson and Kate Pickett, The Spirit Level,を紹介しています。

FT March 29 2009

Equities show us the way to recovery

By Alan Greenspan

YaleGlobal, 3 April 2009

The G-20 and the Future of Capitalism – Part III

Pranab Bardhan

(コメント) Alan Greenspanは、経済の回復と資本市場や株価の正しさを確認します。株価が底を打てば、資産価値の回復と銀行融資の拡大が続くでしょう。株価は、確かに景気循環や経済価値の指標として正しくないかもしれません。しかし、その実物経済への影響は重大です。

結局、資本主義とは「技術進歩」と、その成果や方向に関する「資本化の支配力」を意味する、とPranab Bardhanは考えます。現在の金融危機が示す雇用や地域社会の破壊にもかかわらず、この二つの性格は変わりません。IMFの強化を除けば、国際金融規制はそれほど確立できません。資本主義は成長を回復する力を示し、将来も、中国やインドを含む各国の支配層によって選択されるでしょう。

民主的な政府であれば、その性格に介入・干渉し、その危機を緩和しようとします。それでも、ますます移動性を高める資本の性格に対応することはできません。保護主義によって、グローバルな供給と消費のパターンは影響を受けるでしょう。小規模な発展途上諸国は、もっとも厳しい条件を強いられるでしょう。

IHT April 2, 2009

A World in Need of a New Order

By THIERRY DE MONTBRIAL

IHT April 2, 2009

Forging a New Capitalism

By NICOLAS SARKOZY

(コメント) 1989年の社会主義圏崩壊や、昨年からの世界金融危機は、時代を画する事件です。そこには共通した特徴がありました。情報伝達・処理技術の革命です。世界はコミュニケーション技術によって結びつき、「国際社会」を形成しつつありますが、1945年に構築された国際秩序はそれに適応できませんでした。

ガバナンスを回復する試みが続くでしょう。それは必ず、多極的で、異質さを含む、世界的規模の秩序となります。主要諸国が協力しなければ、開放型の世界秩序は維持できません。そして、第一次世界大戦のシナリオを再現するなら、その破壊力は地球を滅ぼすものとなります。

NICOLAS SARKOZYは、G20による国際金融規制が資本主義システムを救済する、と訴えます。


Time for a fairer, greener deal Bea Campbell The Guardian, Friday 27 March 2009

Why bother with the G20? Ruth Lea The Guardian, Friday 27 March 2009

(コメント) G20に大きな期待は持たない。世界的な規模の危機だから世界的な対策が必要だ。しかし、金融緩和や財政刺激策の協調は実現しないだろう。強力な国際規制や独立の機関を要求するヨーロッパに対して、アメリカも中国も冷淡である。反グローバリゼーションの活動家たちは、G20が対処するべき緊急課題、銀行融資の減少と保護主義による世界不況の悪化から、政治的関心を奪ってしまう。

Next on Mr Brown's agenda: invade the Channel Islands Martin Kettle The Guardian, Friday 27 March 2009

The Times, March 28, 2009 Global intelligence

Globalisation's big gamble Ngaire Woods The Guardian, Saturday 28 March 2009

(コメント) もちろんこれは、ブレアがイラク戦争に参加し、サッチャーがフォークランド諸島に艦隊を派遣したことから想像したわけです。ゴードン・ブラウン首相の情熱はチャネル諸島のタックス・ヘイブンを破壊することに向かっている?

The Timesの記事も、反グローバリゼーションのデモを批判します。資本主義やグローバリゼーションを批判して、より貧しくなり、環境破壊を解決する技術を見つける機会も失うだろう。50年前に同じような金融危機が起きていたら、資本主義は崩壊したかもしれない。しかし、今は豊かになった人が増えたから、崩壊することはない、と。

Ngaire Woodsは、資本主義の成果をもっと多くの人が分かち合えるように、政治・社会システム・法・制度求めます。いずれも問題があると認めつつ、政府介入、国際規制、貧困国の救済、金融危機のための基金設立、国際機関の改善、を検討します。

LAT March 29, 2009 Obama's uphill climb at the G-20 summit Doyle McManus

It's easy to sneer, but this G20 summit will make a difference Will Hutton The Observer, Sunday 29 March 2009

(コメント) Will Huttonは、この危機を引き起こした者たちを許さず、新しい秩序を求める抗議の声を上げることで、政治家たちは改革を実現できる、と考えます。しかも、そのアイデアは存在します。IMFの財源を倍増させ、各国の政策監視を効果的に行う権限を与えます。発展途上諸国がSDRをもっと利用できるようにすることも有効です。ドル価値の暴落から身を守るために中国がSDRの利用を促すことも当然です。

巨大金融機関の利益や救済資金にばかり政治家たちが動くのではなく、もっと人々の雇用、所得、住宅、年金のために動くべきです。

G20 - a vital meeting that can effect global change The Observer, Sunday 29 March 2009

NYT March 30, 2009 Struggle Over I.M.F. Becomes Focus as Crisis Summit Nears By MARK LANDLER

(コメント) オバマ政権がG20でIMFのSDR発行に傾いた背景が説明してあって、興味深いです。オバマ政権は、財政刺激策を重視して、EUとの国際協調にG20の成果を示そうと考えました。しかし、EUはそれに乗りません。EUは国際金融規制に関心があるのです。アメリカはそれを好みません。

そこで、アメリカはIMFの拡大を支持しました。日本もEUも支持したのですが、中国やインドは支持しません。なぜなら、正式に彼らのクォータを増やし、IMFの運営に対する発言力を拡大するべきだ、と考えるからです。IMFをめぐるガバナンスの改革には、アメリカもEUも強い反対があって扱いたくないのです。

世界金融危機が拡大し、不況で失業者が増え続けています。オバマ政権は世界経済の回復に向けて指導力を発揮する機会を失いたくありませんでした。他方、中国はIMF改革に消極的な欧米を刺激するために、ドルを国際通貨から退位させるという提案を行います。ガイトナー財務長官は、G20のために顧問として招いたE.トルーマンがSDRの増発による金融危機への救済融資を提案していたことに注目し、IMFの融資拡大というテーマをG20の目玉にしました。

これなら中国やインドも反対できません。EUは東欧の救済資金に充てることができます。財政政策の協調はできず、国際規制や制度改革もできないけれど、ともかく融資の拡大にアメリカは指導力を発揮した、と。

FT March 29 2009 Obama calls for G20 ‘unity’ By Edward Luce, Lionel Barber and Chrystia Freeland in Washington

Asia Times Online, Mar 31, 2009 G-20 maps road for chaos By Hossein Askari and Noureddine Krichene

(コメント) Hossein Askari and Noureddine Kricheneは、G20の共同声明を「カオスの作り方(a recipe for chaos)」と呼んでいます。彼らの過去10年に及ぶ金融政策が間違っていたから、金融機関が資産の管理に失敗したから、金融危機が生じているのに、需要が不足しているから不況に苦しんでいる、というだけです。まるで飢饉に苦しむ村へやってきて、食糧の需要が少ないから生産できないのだ、と説明しているようなものだ。むしろ、貨幣供給の洪水と実物経済の供給低下が起きつつある。

すでに過去10年にわたって、G20諸国は財政赤字を累積し、国際収支不均衡、為替レートの不安定性、保護主義をともないながら、中国や日本などがそれを融資し続けてきた。金利を下げることで、金融市場に深刻な歪みを生じてきた。ケインズ主義的な需要刺激策は、財政赤字や対外赤字の累積した、しかも、食糧やエネルギーに在庫や供給余力の乏しい経済には適用できない。

LAT March 30, 2009 Group of 20 questions

Building the G20, the right way Nina Hachigian The Guardian, Monday 30 March 2009

(コメント) LATの論説はアメリカの視点を、Nina Hachigianの論説は国際機関の視点を示しています。G20が有効であるために4つの注意を記します。

The G-20 and the Future of Capitalism – Part I Jeffrey E. Garten YaleGlobal, 30 March 2009

(コメント) G20の共同声明が、もし各代表の意見の相違を隠さない、正直な表現で示されたとしたら、どうなるか?  Jeffrey E. Gartenは想像します。

結局、オバマ大統領は締めくくります。「国際協調は重要だが、アメリカも含めてどの国も、他国を助けるために自国の政策を犠牲にすることはない、という事実に世界は直面した。」・・・サルコジ大統領はモニターのために次回のG20をいつ開くか決めますが、開催地については各国が対立し、それを決める特別委員会を設ける、と決めました。・・・

The Times, March 31, 2009 Let's shake off the shackles of free trade Noreena Hertz

WSJ MARCH 30, 2009 For G-20, Lofty Goals Have Fallen to Earth By CARRICK MOLLENKAMP, STEPHEN FIDLER and ALISTAIR MACDONALD

G20: A new horizon for humanity José Luis Rodríguez Zapatero The Guardian, Tuesday 31 March 2009

SPIEGEL ONLINE 03/30/2009 Can the G-20 Save the World?

Group Therapy for 20 By Anne Applebaum WP Tuesday, March 31, 2009; A17

(コメント) SPIEGELは、G20の論点をくわしく整理しています。アメリカ、ドイツ、イギリス、中国、フランス、ブラジル・・・ しかし、日本の発言は何もない?

Anne Applebaumが指摘するように、これだけの議題を、これほどの政治家たちが集まって、たった1日で決まるはずがないのです。彼らが集まるのは話し合うためではなく、それが政治だからです。例えば主催国イギリスのゴードン・ブラウン首相は、アメリカのガイトナー財務長官と同じように、金融危機の条件を形成した時期に蔵相であり、責任を問われています。その不人気を挽回する国際会議になるわけです。

他の参加者も、それぞれ、国内向けの政治目標があります。G20は、裕福な諸国の方針がばらばらで、わずかな成果しか示せなかった会議として、歴史に残るでしょう。

FT March 31 2009 Why G20 leaders will fail to deal with the big challenge By Martin Wolf

FT March 31 2009 G20 must not forget the poorest

(コメント) この会議の目的は、世界需要の減少を補い、国際不均衡を是正することです。しかし、たとえ目標では一致しても、それを達成する方法が各国によって全く異なります。

赤字国が金融機関を救済するために公的資金を支出しても、危機の原因は解決しません。むしろ、黒字諸国が政策を転換することです。そして、中国人民銀行総裁が指摘したような、国際通貨制度の改革を長期的に扱う必要があります。

タックス・ヘイブンやヘッジ・ファンドを扱うより、世界の貧困層を救済することに、もっと政治家は責任を果たすべきです。世界銀行のゼーリック総裁は「弱者救済基金(a “Vulnerability Fund”)」設立を提案しています。

FT March 31 2009 G20

FT March 29, 2009 The G20: expect nothing, hope for the best and prepare for the worst W. Buiter

Asia Times Online, Apr 2, 2009 The G-20's summit of fear By Walden Bello

(コメント) G20の議題をW. Buiterが作れば、どうなるか? 保護主義は進行しています。これを撃退すること。財政刺激策と金融健全化を目指す規制とは、一つのパッケージとして扱う。金融監督・規制の改善点を示す。IMFを拡充し、ガバナンスには経済規模の変化を反映させる。

W. Buiterは、いっそエイプリル・フールに始めたら良かった、と指摘したのに対して、Walden Belloも、これはただのショーだ、と断言します。彼らには、世界経済がどこに向かうのか、どうすれば安定化するのか、分かっていないのだから、と。

ブレトン・ウッズの再現や、IMFの拡充は、彼らが問題の一部であったことを忘れている。彼らが依拠する考え方は間違っていたし、その安定化策への信頼はアジア通貨危機の処理において完全に失われた。IMFのガバナンス構造は一向に改革が進まない。

Walden Bello は、むしろ国連事務総長が世界金融改革をJ.スティグリッツに委嘱して委員会を設け、政策の協調に関してはthe "Global Coordination Council"がガイドラインを示します。また、当面の措置として、金融機関の損失を補てんし続けるより、真っ先に発展途上諸国の債務を免除せよ、と主張します。さらに、アジアやラテン・アメリカが示すような地域の金融協力機関も支持するべきだ、と主張します。

G-20 Leaders Are Meeting on Political Death Row Matthew Lynn April 1 (Bloomberg)

G20: Stop tinkering, start the overhaul Ha-Joon Chang The Guardian, Wednesday 1 April 2009

(コメント) Ha-Joon Changの主張は、新興諸国や発展途上諸国の立場を示して興味深いです。英米が主導する需要刺激策は、それが危機の条件であっただけに、もっと異なるアプローチが必要です。IMFも融資政策も見直すべきでしょう。すなわち、新興市場経済や発展途上諸国に生産的な投資を増やすような国際制度の改革が重要なのです。

G20: Victory from the jaws of defeat? Frank Field The Guardian, Wednesday 1 April 2009

SPIEGEL ONLINE 04/01/2009 Economists on the G-20: 'I Doubt the US Is Serious'

SPIEGEL ONLINE 04/01/2009 China Looks For Financial Freedom at G-20 By Andreas Lorenz in Beijing

(コメント) SPIEGEL ONLINEが提供する指導的なエコノミストたちの提言は面白いです。

K.ロゴフ(貿易と金融における保護主義の根絶)、J.スティグリッツ(金融救済システムの革新)、R.ソロー(すべての国が財政刺激策を)、H.ジェイムズ(脆弱な新興市場経済に支援を)

そして、中国です。中国はアメリカに融資する銀行の役割を担っているが、あまりにも貸し込んで、追加の融資をしなければ返済できないよ、と言われています。通常は、国際会議で責任を負うような発言をしない中国の代表が、ドルに代わる国際通貨システムを要求しました。

Priority 1: World Growth By Nicolas Sarkozy WP Wednesday, April 1, 2009; A21

NYT April 2, 2009 Obama Plays Down Rift Over Economy on Eve of Summit By DAVID E. SANGER and MARK LANDLER

FT April 1 2009 The poor must be included in a global economy By Bob Geldof

(コメント) G8やG20が語る国際通貨制度には、南北の格差を是正するテーマが含まれているはずです。金融機関の莫大な債務を保証し、破産するのを救済できるのであれば、貧しい諸国の債務を免除した方が良い、と考える者がいるのは当然でしょう。もし世界が一つなら、貧しい国への融資や援助を減らし、保護主義や移民排斥に頼るより、不況対策としての「財政刺激策」や「金融緩和」を誰に対して行うべきか? G20でオバマやブラウンは答えるべきだ。

FT April 1 2009 When to judge the G20 moment

FT April 1 2009 G20 leaders accused over toxic assets By Chris Giles, George Parker and Gillian Tett in London

FT April 1 2009 International bodies warn G20 leaders By Chris Giles in London

The Japan Times: Wednesday, April 1, 2009 Group of 20 too diverse to succeed By KEVIN RAFFERTY

(コメント) 英米とEUとが、財政刺激策と金融規制で対立する、という以外にも、さまざまな駆け引きがあったでしょう。たとえば、タックス・ヘイブンの規制では、独仏が中国(香港など)との対立を懸念していたそうです。さまざまな異なる意見や政治的な原則を集めるほど、合意は難しくなるわけです。

The Times, April 2, 2009 Two and a half cheers for a G20 triumph Anatole Kaletsky

(コメント) 各国の持ち時間は、わずか11分の国際会議で、何か重要なことが決まったとは思えません。彼らは世界を救出したという成果を自慢したいだけです。すでに各国が自分で莫大な救出資金や財政刺激策を発表してきました。

ドイツと日本が、金融危機を恐れなかったために、最も対策が遅れ、輸出の落ち込みによる不況が深刻です。

WSJ APRIL 1, 2009 The G-20's Funny Money

(コメント) この記事は、IMFがSDRを追加配分する、という妥協案に言及したのは日本の麻生首相だった、と述べています。これを、ドルに代えてSDRを準備通貨にするべきだ、という中国人民銀行総裁の発言と比べているわけです。

日本政府は巨額の援助を発展途上国に対して行うことを提案し、その際、アメリカ財務省にとって追加の負担とならないよう、SDRの増発を考えました。それは、財務省顧問であるエドウィン・トルーマンがSDR増発を支持していたからではないでしょうか?

ところで、この記事はSDR増発に反対しています。SDRは通貨ではなく、加盟国の通貨を引き出せる権利に過ぎません。そして、たいてい、引き出されるのはアメリカ・ドルなのです。金利も非常に低い。つまり、本当なら融資を受けられなかった国でも、SDRの追加配分を受けてドルが手に入る。これは、アメリカ人から富を奪うことに等しい、と考えている記事です。

日本政府や麻生首相に感謝しているのではないのです。

BBC 2009/04/02 Striving for a new world economic order By Steve Schifferes

BBC 2009/04/02 G20 ushers in historic IMF changes By Steve Schifferes

G20: Best summit since 1944 Will Hutton The Guardian, Thursday 2 April 2009

(コメント) BBCの記事はNIEOを想像させる新世界経済秩序(NWEO)という文字が気に入りました。英米がIMF重視に転換した、というのなら、そう呼べるかもしれません。IMFが、今後、国際秩序を転換する制度的な仲介装置になるのでしょうか?

Will Huttonは、G20の成果に驚き、大いに賞賛しています。単に労働党政権を支持する、という意味だけでなく。・・・「影の金融システム」を規制する。タックス・ヘイブン、ヘッジ・ファンド、デリバティブを抑制する。高額報酬を批判する。銀行、貯蓄組合、保険会社の破綻を救済することに制限を設ける。など。

This summit is decisively different – the most substantive of its type since 1944. It offers a break with the Washington consensus, free market ideology and financial turbo capitalism – and is assembling the world around a new order and set of ideas.

彼は何に感動したのか? それは、世界の政治指導者たちが発した「どのような資本主義を望むか」というメッセージです。・・・金融工学を駆使して、手っ取り早く億万長者になるぞ、という資本主義、ブラウン首相が蔵相のときにシティで何度も金融ビジネスの革新を称賛した演説が依拠した資本主義は、完全に、破滅したのです。そうではなく、富と雇用を創り出し、きちんと税金を支払う資本主義が、指導者たちの求める新しい資本主義です。さらば、ワシントン・コンセンサス!

G20: The US can't go it alone Mark Thoma The Guardian, Thursday 2 April 2009

G20: The IMF consolation prize isn't enough Graham Turner The Guardian, Thursday 2 April 2009

G20: Why support the IMF? Dean Baker The Guardian, Thursday 2 April 2009

(コメント) G20の成果がIMFの増資であっても、IMFを強化した程度で金融危機が鎮められるのか? アジア通貨危機を観れば、むしろ逆ではないか?

世界は不況の淵に沈んでいくのに、オバマ政権はブッシュと変わらぬ救済策しか出せず、銀行を国有化することにも及び腰だ。アメリカの住宅市場や銀行部門が回復しないのに、IMFによる救済融資で何ができるのか?

Dean Bakerも、IMFがアメリカのバブルを見過ごした、他方で、救済融資には緊縮政策を要求している、と批判します。

SPIEGEL ONLINE 04/02/2009 More Oversight and $1 Trillion for World Economy

NYT April 3, 2009 G-20 Pact Has New Rules and Commitments of $1.1 Trillion By MARK LANDLER and DAVID E. SANGER

FT April 2 2009 Summit success reflects a different global landscape By Philip Stephens

FT April 2 2009 The first bricks in a new world order

(コメント) Philip Stephensが指摘するように、ドイツのメルケル首相が明確にそうであったように、各国の指導者たちは、それぞれ、自国の利益を主張し、認め合ったのです。

「サミット参加国には、独自の歴史と文化的な基準がある。西と東、旧支配国と新興国との間に、多くの相違点がある。」「だから回復を促す政策を考えても、ドイツ人はワイマール共和国のハイパー・インフレーションを思い出すし、アメリカのオバマ大統領は大恐慌のもたらした人々の惨めな生活を考えている。」

サミットによって各国の考え方は近づいたか? 多分、そんなことはないだろう。しかし、サミットは地政学的なパワーの移行をより正確に反映する点で前進であった。いかに不完全なものであれ、これこそが多極化した世界の多角主義的なガバナンスの実際である。新世界秩序は、ここから誕生する。

WSJ APRIL 2, 2009 G-20 Expands IMF Lending Powers to $1 Trillion By STEPHEN FIDLER, BOB DAVIS and ALISTAIR MACDONALD

WSJ APRIL 1, 2009 The Socialist Solution to the Crisis By POUL NYRUP RASMUSSEN

(コメント) IMFの規模を、2500億ドルから、さらに5000億ドル追加し、SDRも2500億ドル発行して発展途上諸国の救済に充てる、という1兆ドルの世界金融緩和を、WSJは嫌っているようです。まるで、資本主義が否定されたような気になるのでしょう。

BBC 2009/04/02

G20 leaders' statement

(コメント) G20Argentina, Australia, Brazil, Canada, China, France, Germany, India, Indonesia, Italy, Japan, Mexico, Russia, Saudi Arabia, South Africa, South Korea, Turkey, the UK, the US and the EU)の共同声明です。すごく長い! もちろん、新聞ですでに読んだでしょうが、英文も面白いです。成長と雇用を目指す、世界ケインズ主義。グローバル・ニュー・ディール。


NYT March 26, 2009, 204 am

Where’s the Plan, Wall Street?

Bill Mayer

By ANDREW ROSS SORKIN

NYT March 27, 2009

The Market Mystique

By PAUL KRUGMAN

NYT March 30, 2009

America the Tarnished

By PAUL KRUGMAN

WP Monday, March 30, 2009; A17

Geithner's Hedge Fund

By Robert J. Samuelson

(コメント) ウォール街が求める再建像とは何か? ガイトナーは金融部門を再生するために政府による賄賂を配るのか? 逆に、Krugmanは、オバマ政権がセキュリタイゼーションに依拠した金融ビジネスの復活を目指していることに強い不満を示しています。他国の通貨危機や金融危機に説教したサマーズが、国際会議でアメリカの惨状について説明しなければならないことに、アメリカの地位の低下が示されています。

あるいは、今でも、ガイトナーはアメリカ政府をヘッジ・ファンドの親分として金融市場とビジネスの利益に従わせるのでしょうか? そして、燃え盛るポピュリズム政治の標的になる?  Call it Uncle Sam's hedge fund.

The Guardian, Friday 27 March 2009

Reform is needed. Reform is in the air. We can't afford to fail

Joseph Stiglitz

SPIEGEL ONLINE 04/01/2009

SPIEGEL INTERVIEW WITH ECONOMIST JOSEPH STIGLITZ

Government Stimulus Plans are 'Not Enough'

NYT April 1, 2009

Obama's Ersatz Capitalism

By JOSEPH E. STIGLITZ

(コメント) 国債通貨・金融システムの改革を目指す国連の委員会を、Joseph Stiglitzが委員長として指導しています。その紹介を読むと、本当に実現するなら、夢のような話です。

Joseph Stiglitzは、何と、実現不可能を可能にする制度を次々に指摘します。すなわち、

Global Economic Coordinating Council: 政策協調、経済状況の審査、世界経済の需要ギャップ、調整策の提案。A Global Financial Regulatory Authority: 各国による規制の裁定、抜け穴、規制緩和への競争、を取り除く。A Global Competition Authority: 特に金融部門の独占・巨大化を終わらせ、過大な報酬をなくす。A new global reserve system: 利用しやすい、インフレにならない世界的な準備通貨の維持・管理。ほかに、発展途上諸国がデフォルトや債務管理、資本管理に頼る際、グローバルな基準を設けて助ける機関も提案しています。SDR増発も、地域協力開発銀行も、IMFの緊縮策より優れています。

Joseph Stiglitzが、ガイトナーの金融安定化策に強く反対していることも印象的です。このような救済策は成功しない。失敗した銀行家たちに莫大なボーナスをやるだけだ。もっと小さな町の中小の金融機関に公的資金を投入するべきだ。それらは国有化して、人々の金融サービスに役立つ者だけ残す。

世界経済の緊密化により、危機は国際協調でしか解決できない。アメリカ人はすでに債務に依存し過ぎており、対米輸出で成長するモデルは維持できない。黒字国は刺激策を行う義務がある。世界経済危機においては、黒字国の輸出に税金をかけても良いくらいだ。

そこまで主張できないから、せめて黒字国はIMFを通じて危機の国に融資を増やすべきだ。ドイツも、東欧の危機を救済し、グローバリゼーションを機能するために行動するしかない。

三つ目の論説は、ガイトナー提案への強烈な批判です。大幅に水増しされた資産評価を真に受けて、リスクは政府が負い、利益は資本家に与える。Joseph Stiglitzは、一時的な国有化の方が、ガイトナーの唱える「模造資本主義」より、納税者にとってはるかに好ましい、と主張します。


WSJ MARCH 27, 2009

How Korea Solved Its Banking Crisis

By LEE MYUNG-BAK

The Guardian, Saturday 28 March 2009

Chile cashes in on prudence

Raúl David Sohr Biss

FT March 29 2009

S Korea seeks to halt protectionist drift

By David Pilling, Christian Oliver and Song Jung-a in Seoul

The Guardian, Wednesday 1 April 2009

G20: Argentina belongs here

Rodrigo Orihuela

(コメント) 韓国、チリ、アルゼンチンは、通貨・金融危機にどのように対応したのか? G20、アメリカ、EUは、何を学ぶべきか?


FT March 30 2009

Caring for Korea

The Japan Times: Monday, March 30, 2009

Here we go again: coaxing the North to shoot straight

By RALPH COSSA

WSJ MARCH 30, 2009

Kim's Latest Hostages

NYT April 1, 2009

North Korea's Test

(コメント) 北朝鮮のミサイル発射について。


The Guardian, Saturday 28 March 2009 The masks of anarchists Stephen Moss

The Guardian, Saturday 28 March 2009 Marching for a fairer world Jesse Griffiths

NYT March 29, 2009 A Boy Living in a Car By NICHOLAS D. KRISTOF

IHT April 1, 2009 edition What the poor can teach the rich at G-20 By Jamie Zimmerman

The Guardian, Wednesday 1 April 2009 G20: The revolution will be taught Richard Rogers

The Guardian, Wednesday 1 April 2009 G20: My message to the alternative summit John McDonnell

BBC 2009/04/02 Did it deliver for the world's poorest? By David Loyn,

The Guardian, Thursday 2 April 2009 G20: Spreading the wealth around Richard Kozul-Wright and William Milberg

The Guardian, Thursday 2 April 2009 G20: All talk on development Larry Elliott

The Guardian, Thursday 2 April 2009 Our leaders still aren't facing up to the scale of the crisis Seumas Milne

The Times, April 3, 2009 Actually, those G20 protesters do have a point Camilla Cavendish

(コメント) 反資本主義、反グローバリゼーション、反ネオリベラリズム、反権力、反金融ビジネス、反米、反秩序・・・

社会的な矛盾や対立は必ず抗議の声を上げ、解決を求めて社会・政治運動を形成し、緩和・改善策、補償制度、介入を求めます。これらはそうした内容を含むかもしれない、と思って集めましたが、要約する時間はありません。


FT March 30 2009

Bank regulation needs straightening out

By Peter Thal Larsen

(コメント) 規制緩和によって形成されてきた世界金融システムは崩壊した。もはや再建できない。ブレーキとハンドルを付けた金融システムとして構築するには、どのような手段があるのか? たとえ高速道路を作るにしても、どうすれば、もっと安全に走れるのか? 遅い車はどこを走るべきか? 

この論説は論点を整理しています。世界中で、新しい論争が始まった。


FT March 31 2009

Debt in Japan

(コメント) 日本は? 債務。・・・赤字。輸出の減少。為替レート。株価。金融政策。政治的混乱。高齢化。派遣労働者の解雇。貧困。自殺。・・・いよいよ、貯蓄が減り、経常収支も赤字、再び不況と、財政支出?

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The Economist March 21st 2009

How China sees the world

China and the West: A time for muscle-flexing

Labour mobility: The road not taken

Ireland’s economy: The party is definitely over

Charlemagne: Fingers in the dyke

(コメント) 中国に関する記事に関心を持ちました.アメリカの銀行や金融政策に関する記事もありますが,私にはあまり感心する内容ではなかったので.

米中二極化,G2サミットや,中国の国際的な影響力をどう見たらよいか? という議論に加えて,一体,中国は世界をどう見ているのか? どのような国際秩序を(また,社会=資本主義を)望むのか? という問題が提起されています.

中国には,当然,毛沢東主義者や急進的な左派も影響力を維持していますし,他方,市場改革や国際的な影響力の拡大,外貨準備や資本市場への影響,アメリカ企業の買収,など,さまざまな国際派が存在しているでしょう.中国が国際的な役割を引き受け,アメリカと平和的.積極的,そして,諸外国の意見も民主的に反映するような仕方で新しい世界秩序の一部になるとしたら,その前に,どれほどの困難や摩擦,内外の危機を克服しなければならないのか?