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IPEの風 4/6/09
贈与税を一時的に下げる? これが世界不況に立ち向かう世界第二の経済を(まだ今なら)誇る日本政府の景気対策ですか?
老人から若者に資産を移せば、もっと消費し、もっと投資するだろう、という理由で、贈与税を下げることは、本当に望ましい景気刺激策でしょうか? 私には、これも不況やG20(国際協調)を口実とした選挙対策に見えます。高速道路ETC特別料金と同様、あまりにも差別的な、高齢富裕層給付金・若年富裕層助成制度であり、株式・住宅・自動車買上げ奨励金です。
裕福(で無知?)な老人から資産を移転させたいなら、むしろ、高所得者に対して、将来、贈与税を一時的に上げてはどうですか? 来年から5年で10%増税する。その後は、政策の効果を見て判断する。もっと上げても良いと思います。いっそ、日本の出生率や自殺者数と連動させてはどうでしょうか? ただし、G20の求めるタックス・ヘイブン対策を、本気で推進することですね。
社会福祉が充実すれば、もっと国内消費が伸びるはずだ。銀行の融資が大企業に偏って行われることを是正できれば、中小企業の投資が増えるはずだ。通貨価値がもっと高まれば、貿易黒字を減らして国民の生活を改善できるはずだ。外貨準備を累積させるより、もっと国内に投資して環境対策や社会保障制度の充実に使うべきだ。・・・
これらは、すべて、中国経済の構造的なゆがみを是正するために世界の論説が訴えていることです。おそらく日本に対しても、同じような改革を世界は求めていたのではないでしょうか? それは、1980年代後半、中国ではなく日本が、国際的な責任ある地位を担うように期待されていた頃の話です。銀行の不良債権を処理せよ、安全保障政策を見直せ、という要求とともに、内外の議論を受けて日本という国が自ら改革する時機を逸したのは、やはり、政治やエリート層の失敗であったと思います。
中国について、もっと内需を刺激するためには、医療保険や年金など、福祉を充実させるべきだ、と言われます。その通りでしょう。中国政府は、何よりも、日本の失敗から学ぶでしょう。日本政府は中国の改革を助け、今、自分たちにできる改革を議論し、内外の構想を示すことです。
たとえば、もし富裕層が世代を超えて形成されるとしたら、中国であれ日本であれ、社会にとって、大きな損失であると思います。むしろ逆に、自然を守り、回復するための基金や、技術開発のための研究者支援制度に、寄付することを促す方が良いでしょう。富裕層を優遇するより、社会的な還元を促す寄付行為を免税にすれば、若者の活力を引き出せるかもしれません。
あるいは、失業や貧困が長期的に減るような、生活のための緊急援助や職業訓練制度、新興企業・起業家支援、公立学校や、高等教育のための奨学金制度を充実するために寄付してもらってはどうでしょうか? 自分の寄付がどのように使われるのか、今の制度では実感できない、ということが問題であれば、全く新しい制度を老人たちがたち上げるのを助けるべきでしょう。
そのような制度が、単に日本国内だけでなく、中国にもあれば、また世界中にあれば、国境を超えて助け合う機会となるでしょう。
世界的な金融危機に応じて、日本政府は赤字国債の発行を主張します。しかし、成長率を上げるのでなければ、借金を増やすことで将来の負担が増えるばかりです。現在の不況を緩和して、ますます将来の危機に対して脆弱な経済を作っているのであれば、現在の政府の、不況対策と選挙を意識した身勝手な政策に、私は強く反対したいです。
政府であれば、もっと本気で、この国に住む人々の長期的な繁栄の条件を、常に政策の基準として示さなければなりません。
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