今週のReview
3/2-3/7
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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******* 感嘆キー・ワード **********************
東欧危機の意味、 中国・アジア、 日本の愚かさ、 アメリカの模索、 銀行国有化、 スキデルスキー、 弾力性より硬直性、 オバマ演説への失望、 クリントン訪日・韓・中、 世界ブルジョアジー
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor, WSJ:Wall Street Journal Asia
NYT February 18, 2009
When the World Knocks at the White House Door
By Robert Dallek
(コメント) 大統領になった者は、例外なく、難しい外交問題に直面する、とRobert Dallekは指摘します。
F.D.ルーズベルト(大恐慌に直面し、経済ナショナリズムを重視して、ロンドン経済会議を欠席した)、トルーマン(ナチス・ドイツを倒し、ソ連を東欧とドイツに抑え込み、日本への原子爆弾投下を決めた)、アイゼンハワー(朝鮮戦争)、ケネディ(キューバのピッグズ湾侵攻作戦が失敗)、ジョンソン(ベトナム戦争)。いずれもアメリカの外で起きた危機への対応に自分たちの時間と能力を注いだのです。
オバマはジョンソンに似ている、とRobert Dallekは考えます。ジョンソンは、国内の社会改革を優先するために、カストロとの軍事衝突を避け、パナマの民族主義を懐柔しました。しかし、オバマがすぐに理解するように、「大砲とバター」の両方を約束することは容易だが、実際に、それを同時に実現することは不可能である、と。
FT February 19 2009
The European Union must help its new states
By Katinka Barysch
FT February 19 2009
Wanted: leaders to face demons of Europe’s past
By Philip Stephens
(コメント) 東欧のEU新加盟諸国で銀行危機が拡大することに、Katinka Baryschは警告を発しています。問題は、金融だけではなく、成長モデルへの信頼が損なわれて行くことであり、EUに帰属することが大きな失望や支援の欠如を痛感させ、中期的に、アイデンティティが冒されて行く、というのです。
1990年代にEUが推し進めてきた、市場の統合、金融自由化、労働者の自由な移動は、外部市場への依存と脆弱性を高めて、今や不況や経済危機をもたらす大動脈です。特に、自動車産業が示すような、全ヨーロッパをつなぐ供給ラインの一部として成長してきたからです。
加えて、世界金融市場にリンクすることで、ユーロ建やスイス・フラン建の低金利融資が受けられるメリットを味わいました。企業だけでなく家計も、住宅や自動車の購入に外貨建の融資を利用したのです。それは、自国通貨でしか収入のない家計にとって、国際市場で決まる金利や為替レートの変動に対するリスクを考えた上での選択とは決して言えませんでした。
それらの成長や融資を最も享受したのは銀行部門の合併や西欧からの進出であり、今や、急速な資本流出を招いています。東欧への融資が焦げ付いて、格付けの下がる西欧の銀行が増えそうです。こうした銀行部門の救済と東欧経済の支援にECBやEUが十分な関与を示さないとすれば、人々の怒りは彼らに向かうでしょう。
自由化、は悪しき言葉になり、社会的な不満が噴出し、各地の選挙でポピュリストの政治家が当選しています。
Philip Stephensが「過去の悪魔」と呼ぶのは、ナショナリズム、です。たとえ、脱近代を実現しつつあるヨーロッパにおいても、ナショナリズムは政治を占拠しています。フランスのサルコジ、ドイツの黒字、イギリスの銀行、・・・
FT February 22 2009
Eastern crisis that could wreck the eurozone
By Wolfgang Münchau
(コメント) クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、手軽なEMU解体の賭けになっています。政治家たちは1992年のEMS崩壊を思い出します。
アイルランドに通貨危機が起きたら、ECBは救済します。それは、今や、ドイツも認めることです。しかし、東欧に危機が起きても、ユーロ圏は崩壊するかもしれません。ハンガリーの家計が債務を返済できなくなれば、オーストリアの銀行が破たんし、そのエクスポージャーはオーストリアのGDPの80%に及ぶ、と注意しています。スイスやイタリアにも同様の問題があるでしょう。
インフレと為替レートを除けば、マーストリヒトの参加資格・手順は合理性を欠くから、それらを無視して、今すぐユーロ化(Euroisation)せよ、とWolfgang Münchauは主張します。
WSJ FEBRUARY 24, 2009
How to Avoid a Euro-Zone Debt Crisis
By SIMON TILFORD
(コメント) ラテンアメリカではなくEU諸国の中で、債務危機に陥る国が出るのか? そんな国があるのか? と思いますが、SIMON TILFORDの論説を読むと、アイルランド、オーストリア、イタリア、スペイン、ベルギー、といった国が並びます。
その理由は、競争力を失った、国際銀行部門が肥大化し過ぎている、(さらに、住宅バブルの破裂やサブプライム危機が波及する)。
債務危機に陥った国を事後的に救済するとか、各国が個別に財政赤字を出すよりも、EU諸国が協力してユーロ債を発行し、事前に救済基金を準備して危機を回避する方が良い、と主張しています。共通のIMFあるいは「最後の貸し手」を作るわけです。なぜなら、個々の国が赤字を増やせば、むしろ危機が激化して、他国にも波及するし、相互の貿易や投資が縮小し、さらにはユーロ圏を離脱する(そして、インフレ政策と切り下げを繰り返す)恐れがあるからです。
しかしドイツは、こうした考え方を以前から強く嫌っていました。他国の財政赤字をドイツと共通の通貨で負担し、金利が上昇するとか、インフレが高まることは受け入れがたい、と考えます。また、もし金融危機や財政赤字を共通の基金で賄えるなら、それを恐れずに自国の無責任な拡大政策を取る政府も現れるでしょう。
解決策は、EUの一層の政治統合を進めることです。財政や政治を統合せずに、共通の通貨を使用する、というEMUには、たとえECBがあっても限界が指摘されてきました。ドイツは、協力して危機を克服する姿勢を示すことは、政治的な資本を蓄積できる、と指摘します。
The Guardian, Wednesday 25 February 2009
Fiddling while eastern Europe burns
Simon Tisdall
(コメント) 金融危機だけでなく、さまざまな社会・政治危機が拡大し、ヨーロッパ、という新旧の政治システム=構造が激しく軋む音が聞こえます。政治家たちは以前のような「EU拡大・深化」という理想を失いつつあります。
Rather than urgently address massive Hungarian debt defaults, plunging Polish output, splintering Baltic coalitions, or Ukrainian street protests, they(ブラッセルに集まったEU諸国の外務大臣たち) wasted time arguing over Slovenia's arcane Adriatic fishing boat dispute with Croatia.
EU内の財政刺激策も、新旧の加盟諸国が分配をめぐって対立し、実現しません。
FT February 25 2009
Fight the crisis with eurozone bond market
By Romano Prodi
FT February 25 2009
Europe needs a stronger France inside Nato
By Karl Kaiser and Dominique Moïsi
(コメント) 欧州委員会の元委員長Romano Prodiは、4月にロンドンで開催予定のG20サミットに向けたEU提案を語っています。EUが求めるのは、ヘッジファンドを含めた国際的な資本取引の透明性であり、EU共通の危機対応メカニズムや防衛システム、救済基金であり、そのためには、EUの独自予算、ユーロ短期債の発行が必要です。ユーロが重要な国際通貨としての機能を担うためにも、金融市場を整備しなければなりません。
まさに、戦争に代わる新しいヨーロッパ共通の脅威として、通貨・金融危機が重要になり、新しい「ドイツ問題」を解決するために、政治的な合意と制度化が模索されています。
独仏の国際戦略家、Karl Kaiser and Dominique Moïsiは、安全保障について、「フランスのNATO復帰問題」を検討しています。それは、アメリカやロシア、アジアの動きをにらんで、ヨーロッパが国際秩序に占める重要な地位を維持する問題でもあります。ドゴールの時代の反米感情によってサルコジを攻撃するイデオロギーは、不毛な論争を煽る、と批判します。
The Guardian, Thursday 26 February 2009
Europe is torn between essential solidarity and national egoism
Timothy Garton Ash
(コメント) ギリシャやイタリアの国民は、ドイツの政治家を選ぶ投票に参加しません。そうであれば、ドイツ国民がヨーロッパ共通の救済基金を調達するユーロ債の発行で不利益を感じる限り、ドイツの政治家は反対します。ヨーロッパ(あるいはユーロ圏)の問題をドイツの政治家だけで決めるのは間違いなのです。
また、Timothy Garton Ashは、こんな風にも描きます。1989年に非暴力で共産主義体制を消滅させた東欧諸国が、20年かかって、資本を持たずに資本主義体制を築いてきたのは、西側との統合で資本市場を利用できたからです。ところが、今その資本市場統合が危機や不況の源泉となっています。東欧諸国にようやく誕生した政治・経済体制の運命を握っているのは、西側の銀行や株主たちです。彼らは体制を長期的に安定化するよりも、手っ取り早く逃げ出す方を選びます。
EUに加盟した東欧諸国は、まだユーロを採用できません。今、彼らの通貨価値は急落し、ユーロやスイス・フランで融資を受けた企業や中産階級が、彼らの知らない原因で、次々に、破産しつつあります。彼らが共通に胸に抱くのは「絶望と不正義」の感覚だ、と。彼らは西側の「自由主義」(とそれがもたらす繁栄)を求めて政治・経済改革を、たとえ苦しくても、受け入れてきました。しかし、西側が彼らを扱うやり方は「金融保護主義」であり、「経済的エゴイズム」だ、と街頭の政治家たちが激しく批判し始めています。
金融危機以前から、トルコ問題、ウクライナ問題、セルビア・ボスニア問題で、彼らのEUに対する不満は高まっていました。1940年代後半に、また、1989年に、問われていたのと同様に、今また、ヨーロッパという政治プロジェクトの全体が問い直されており、明確な答を示さなければ、政治的崩壊の危機に至るのです。
ヨーロッパの連帯を選ぶのか、あるいは、経済的エゴイズムに向かうのか?
IHT Thursday, February 26, 2009
Storm over Germany
By William Drozdiak
(コメント) ドイツで9月27日に行われる選挙は、非常に重要です。選挙の争点や、結果を支配するドイツ国内の政治的な力学が問題になります。
China’s $3 Trillion Meets U.S.’s $14 Trillion William Pesek Feb. 20 (Bloomberg)
NYT February 21, 2009 China Starts Investing Globally By DAVID BARBOZA
Global Crisis Spurs Long-Needed Change in China David Dollar YaleGlobal, 20 February 2009
FT February 21 2009 US, China to ‘to help lead the world recovery’ By Geoff Dyer in Beijing
FT February 22 2009 China’s dollar dilemma By Geoff Dyer in Beijing
The Japan Times: Tuesday, Feb. 24, 2009 Unbalanced bargaining game with China By DU TRAN
Multilateralism key to navigating rocky path By Xiao Lian (China Daily) 2009-02-24
Clinton’s Slumming May Boost Asia’s $120 Billion William Pesek Feb. 25 (Bloomberg)
Outlook on China: peaceful partner or warmonger? By Malou Innocent CSM February 26, 2009 edition
FT February 25 2009 Asian exports
The Japan Times: Wednesday, Feb. 25, 2009 Building an Asian safety net By MICHAEL RICHARDSON
(コメント) 人民元のレートが過大か、過小か、論争になります。それ以上に、中国経済の規模も、日本やアメリカをいつ抜くのか、あるいは、抜くことはないのか、それとも、すでに超えているのか、意見が対立します。
世界経済の回復や中国の役割、金融危機の次の局面を考える際に、前提となる数字です。逆に、日本は輸出によって経済規模を支えており、アメリカの規模はウォール街を含んでいます。
「通りが血に染まるときこそ、買いの好機だ。」 かつてロスチャイルドが言ったとか。しかし、今世界的な金融資産の価格下落で、中国の資本家がバーゲンセールの掘り出し物を探しているのではないか、と恐れる論説もあります。他方、それがどれほど大きな損害となって引き上げることになるか、日本の経験も振り返るでしょう。
しかし、アメリカは忘れないはずです。中国からの投資を必要としているのはアメリカであって、中国には他の選択肢もある、ということを。プライヴェート・イクイティ・ファンドの代表であるブラックストーンが株価暴落で消滅したとき、まだ経営にも参加できないうちに、中国の代表的な政府系投資信託CICは30億ドルを支払って9.9%を取得していたわけです。その後に失われた資本が中国国民に激しい怒りや恥辱を思い出させている、とGeoff Dyerは伝えています。
もしその憤りがあまりにも強烈で、政府の方針にも批判が及ぶなら、また、財務省証券への投資が低利回りであることを批判されるなら、いよいよ中国はアメリカの消費市場やその赤字を支えることから距離をおいて、輸出より国内市場に依拠した成長を目指すでしょう。そしてアメリカの通貨、経済、軍事的地位が急落するかもしれません。
Brad Setserの推定では、中国の外貨準備は2兆3000億ドル、国民一人当たり1600ドルに達し、これをアメリカのためではなく、国民自身が豊かになるために使え、という主張が強まっています。他方、アメリカはますますその赤字を中国だけに頼りつつあります。そして、中国政府自身もアメリカからの資本逃避やドル暴落を恐れています。その資産を使って、中国は直接に、もしくは、IMFを介して、アメリカの経済運営を監視したい、と(当然!)考え始めています。つまり、アメリカの金利を決めるのは、バーナンキではなく北京になるのです。
中国自身は、アメリカとの対立を避けようとしています。その意味で、G20に積極的に参加し、中国が支える「多角主義Multilateralism」は、適当な監視や強制を組み合わせる国際交渉の条件を整備します。
また中国が、アジアの安全保障や貿易、通貨の制度的保障・安定化を、相互利益の原則によって組織できるなら、地域の経済発展に重要な基礎をもたらすわけです。
Feb. 20 (Bloomberg)
Smoot-Hawley’s Ghost Appears as Economy Tanks
Michael R. Sesit
(コメント) スムート=ホーレイ関税は、誰もが指摘する中で、むしろ自己実現的な予言となる恐れがあります。それが現れる前に、その条件となる不況を回避できるかどうか、が重要です。本当に国民が大規模に失業し始めたら、政治は外国製品も、外国資本も、外国人労働者も、差別するでしょう。
The Guardian, Friday 20 February 2009
Bill Emmott in Tokyo
(コメント) 急激な経済の悪化について、豊かな諸国で競い合うのはイギリスと日本です。ただし、その政治の愚かさに関しては日本が抜きんでていることを、辞任した中川大臣が示しました。
Bill Emmottは、日本がこの経済危機で数少ない受益国だろう、と楽観します。なぜなら、ようやく、自民党や政治の旧体制が終わるからです。不況による失業と、社会保障制度、医療システムの崩壊を我慢させられている国民は、失敗した政治家たちを追放する民主主義の機会を得るでしょう。・・・たとえ、民主党が無能な政治集団であっても、政府を交代させるときです。
FT February 20 2009
Japan’s fearless women speculators
By David Pilling
Feb. 23 (Bloomberg)
Americans Would Be Lucky to Mimic 1990s Japan
William Pesek
(コメント) アメリカも日本のようになるのか? という問題はもう解決した。アメリカもゼロ金利になって、金融システムは崩壊した。今や、アメリカも日本のように幸運であるか? とWilliam Pesekは問います。つまり、日本はバブル経済が崩壊してからも、経済秩序が完全に崩壊することはなかった。アメリカも深刻な不況を回避できるのか?
リチャード・クーが述べたように、大変な成果であった、と言えるでしょうか? 日本は行動が遅く、不良債権処理も明確な方針や制度を示さなかった。しかし、ゼロ金利と最悪の公的債務水準を築くことで、その成果を達成できました。
アメリカは、日本のように豊富な国内貯蓄がなく、スウェーデンのように容易に国有化できる単純な金融システムではありません。日本は不良債権を銀行が把握できましたが、アメリカは証券化した資産のリスクを銀行でも把握できません。また、日本の借り手は企業でしたが、アメリカの借り手は住宅を購入した家計です。
日本の経験から、二つの教訓をバーナンキとガイトナーに伝えておくべきだ。1.迅速に行動すること。2.時期が来たら、財政刺激策をきっぱりやめること。
FT February 24 2009
Japan still needs a government
FT February 24 2009
Japan’s buyer of last resort
(コメント) FTは、株価引き上げを求めて公的資金で株を買うより、直接に、財政刺激策と銀行への公的資金注入を求めます。ただし、機能しない政府を選挙で交代させることが必要です。
しかし、香港は1998年に暴落する株価を回復させるため公的に介入し、成功しました。日本との違いは何か? FTは簡潔に指摘しています。
WP Wednesday, February 25, 2009
Japan's Taro Aso in Washington
FT February 26 2009
Diplomatic feint that looks to leave Japan in the cold
By Philip Stephens
FT February 26 2009
Yen
(コメント) 国民からわずかしか支持されていない麻生太郎首相が、ワシントンでオバマ大統領に会えたのはなぜか? 中国との関係を重視したいアメリカにとって、それが日本との関係をこじれさせないように、日本も重視していますよ、という姿勢を示すためでした。せめて、アメリカがEUと交渉する前にイギリスと情報交換するような、重要な役割を担っている、と考えたいです。
インタビュー記事は面白いです。たとえ大きく手を加えたとしても、麻生首相がアメリカ国民(WPの読者)に知ってほしいことが分かります。メドヴェージェフ大統領の印象、北朝鮮問題、そしてアメリカの財政刺激策とドルの国際的地位、を話題にしています。北朝鮮の非核化問題に関しては6カ国協議を重視すると指摘するだけで、もっと具体的な、踏み込んだ独自のアイデアを示さなければ影響力を維持できない、と思います。(たとえば、トニー・ブレアが繰り返したように。)
麻生首相(あるいは、自民党政府や財務省?)が、リチャード・クーの財政政策による需要の維持について、明確にアメリカに訴えたことを知りました。
FTのPhilip Stephensは、日本の外交、その基礎にある認識が変わらなければならない、と以前から分かっているのに、まだ次の外交方針を示せないのか、と苛立ち、呆れています。日本はもはや、東アジアで唯一の西側が支持する民主主義国家という役割を主張しても意味がない、と。
Mr Obama’s administration is shuffling the hierarchies of its relationships in the region. Japan remains America’s closest friend, sheltered by a US security guarantee. But Washington’s most important relationship is now with China.
アメリカは、現実に合わせて、アジア地域の戦略的な関係・秩序を組み替えようとしているのです。中国や北朝鮮はその一部でしょう。そして、日本もです。
Foreign Affairs , March/April 2009
The Japan Fallacy
By Richard Katz
(コメント) Richard Katzの比較論は、日本の経済に構造的な問題があったけれど(今も)、アメリカにはない、というものです。経済・政治認識や政策に関するワシントン・コンセンサスと北京コンセンサス、と対比されますが、ジャパン・コンセンサス、というのもあるわけです。
NYT February 20, 2009
By PAUL KRUGMAN
(コメント) オバマの財政刺激策でも、失業を減らすことはできるが、不況は終わらない。不況はいつ終わるのか? ・・・バーナンキ議長は5-6年かかると予想します。
PAUL KRUGMANは、三つの不況を並べています。父親の代の不況、祖父の時代の不況、そして、曽祖父の時代の不況です。親の代の不況は、1981-82年のように、金融引き締めで創り出されました。金融緩和で不況も終わりました。祖父の不況は、1929年の大恐慌です。株価暴落や銀行の倒産、そして、戦争がようやく十分な刺激を与えました。日本のバブル崩壊もそれに似ており、10年間の財政支出と輸出によって終わりました。
アメリカが経験しているのは、曽祖父の不況です。それは金融政策でも、財政政策でもなく、住宅や金融資産、その他の耐久消費財が、時間とともに供給過剰を解消するから、終わるのです。19世紀の不況がそうでした。誰かが、この苦しみを取り除いてくれない限り。
NYT February 21, 2009
Growing Worry on Rescue Takes a Toll on Banks
By ERIC DASH
WP Monday, February 23, 2009
The Deficit Hawks' Attack on Our Entitlements
By Robert Kuttner
(コメント) 財政刺激策によって生じる財政の一時的な赤字を、金融資産運用の業界を代表するPeter G. Petersonなどが指導する、財政健全化を推進する民主党のグループは、社会保障費、医療保険の削減に利用している、と批判します。
Robert Kuttnerは、こうした社会保障費の削減論(それは民営化とウォール街の仕事を増やす)に反対します。彼らは、財政や経済を破綻させると主張して社会保障制度を攻撃してきたが、実際に経済を破たんに導いたのはウォール街だ、と。
WP Sunday, February 22, 2009
How to Lift a Falling Economy
By Ricardo J. Caballero
(コメント) 世界に40兆ドルの損失をもたらすとも推定されている危機について、政府(を介して私たち)に何ができるのでしょうか? Ricardo J. Caballeroは、政府が銀行株式を今の2倍保有すると約束するように提案します。それは未来に対する政府介入です。
銀行の株価は上昇し、それゆえ、銀行は資本調達も容易になり、融資を増やし、消費、特に退職者の消費が回復し、保険会社のバランス・シートも改善し、投機的な売りや企業買収はなくなり、銀行部門や金融システムが健全化します。これによる納税者の負担はゼロです。
・・・香港コンセンサス、ですね?
WP Monday, February 23, 2009
Obama's Stunted Stimulus
By Robert J. Samuelson
Asia Times Online, Feb 25, 2009
Gold lights up Obama errors
By Hossein Askari and Noureddine Krichene
(コメント) 財政赤字はインフレーションを予想させ、世界の金価格を上昇させます。それは金利を引き上げて不況を強め、ますます財政赤字が増大し、・・・最後は、ライヒスマルクやジンバブエ・ドルになる!
金による保証のないドルが、膨大な財政赤字を出しても、資本流入を維持できる、と思うアメリカ政府は間違っているのか?
WSJ FEBRUARY 20, 2009
Nouriel Roubini: 'Nationalize' the Banks Dr. Doom says a takeover and resale is the market-friendly solution.
By TUNKU VARADARAJAN
WSJ FEBRUARY 21, 2009
'Good Banks' Are the Cost Effective Way Out of the Financial Crisis
By WILLEM H. BUITER
(コメント) 危機を予想して「Dr. Doom」と呼ばれるルービニが、銀行の国有化、を支持しました。それは共和党を含む政界においても、次第に支持されつつあります。
ルービニが一時的な「銀行国有化」を主張した理由は、次の二つです。1.結果的に納税者の負担を減らす、2.救済によってできる巨大銀行を、金融システムにショックを与えず、分割できる。
WILLEM H. BUITERは、「Good bank」を作ることを提案しています。なぜなら、銀行の不良債権をすべて買い取る財源がアメリカにないからです。すでにGDPの40%に及ぶ債務がありますが、それが大きくなれば、債務のインフレによる実質的な減免が疑われます。アメリカ議会は増税も支出削減も実行しないでしょう。国民は戦争に際して債務を受け入れましたが、サブプライム危機に対しては支持しません。
ルービニの国有化案について、「Good bank」を作る方が優れている、と主張します。国有化に比べてコストが安く、銀行の評価を信用する必要もなく、モラル・ハザードを起こさない、と。
What is nationalization? Colin Barr, senior writer, Fortune, February 20, 2009
FT February 22 2009 Bank nationalisation
NYT February 23, 2009 Banking on the Brink By PAUL KRUGMAN
(コメント) シティやバンク・オブ・アメリカのような銀行を国有化する事情は次の三つです。1.銀行は事実上破綻に瀕している。2.銀行が破たんするのは許せない。3.民間銀行のまま救済するのは、莫大な財政的負担や政治的反対に耐えられない。
むしろ、オバマ政権が、破たんしかかっている民間銀行の株主たちに、公的資金で褒美を与え続けている現状の方が問題だ、と。
WSJ FEBRUARY 23, 2009 The Problem With 'Nationalization' By GERALD P. O'DRISCOLL JR.
The Times, February 26, 2009 Obama, at last, has got it right. But will we? Anatole Kaletsky
Stressing Solvency WP Thursday, February 26, 2009
The Guardian, Saturday 21 February 2009
Robert Skidelsky
(コメント) 政治的エリートの約束はどこでも同じです。敵から守ってやる。豊かになれる。もちろん、具体的な内容は地域によって異なり、それを表現する政治文化も異なります。
こうした社会契約の基礎は、経済崩壊が始まったらどうなるのか? 特に、ロシアと中国が試されています。特に改革過程で富と権力を得ているエリートたちは、景気悪化によって非難されます。西側の社会では、概ね、政府に関係する者の富は抑制されています。しかし、現在の危機では銀行家が批判されています。
政府はジレンマに直面します。社会的に見て、銀行家は罰せられねばなりません。しかし、景気回復のためには銀行を救済し、金融システムを再建しなければなりません。どれだけの処罰と、どれだけの救済が必要か? 経済学の計量モデルでは決まりません。政治的リスクが含まれているからです。例えば、アジア通貨危機ではスハルトの政治体制が破滅しました。
Robert Skidelskyは、専制支配の主張する「法と秩序」など張り子のトラである、と断言します。軍事的敗北や金融恐慌によって大衆が支配者を追放するとき、それがはっきりします。そして、この転換においてこそ、民主主義は優れています。
体制の崩壊を招くことなく、支配者が交代します。大衆は不満と怒りを投票箱に集めます。多くの国で政府は後退するでしょう。しかし、それは「ニュー・ディール」であって、革命ではないのです。
アナリストたちは、もっと社会契約の中身を議論しなければなりません。そして、社会的に合意された規律や規範がない経済ほど、富と権力を、いつも同じ少数者の手に集中させてしまうのです。民主主義において経済不況が深まることは、こうした政治的変化の条件です。そして、ロシアや中国でも、経済的な富をもたらすことに失敗した政府は、市民たちより大きな権利を約束します。
The Observer, Sunday 22 February 2009
We will put people first, not bankers
Gordon Brown
The Guardian, Sunday 22 February 2009
This is no time for politics as usual
Peter Preston
(コメント) だから、ゴードン・ブラウンは強調するわけです。銀行には重要な役割があるから救済する。そして、新しい銀行システムは経済の再生に尽くし、社会のために活動する。金融支配者にはならない、と。
何の警告も受けず、何の準備もないままに、経済危機に落ち込んだ国民は、ゴードン・ブラウンが職にとどまれるかどうかなど気にしません。
BG February 21, 2009
Pull the plug on US automakers
By Derrick Z. Jackson, Globe Columnist
NYT February 22, 2009
Start Up the Risk-Takers
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) さらに200億ドルの支援を要求する? 銀行は国有化して救済するけれど、自動車会社は破産処理するべきか? アメリカの雇用を守るために支払うべきか? しかし、同じ額で多くのベンチャー企業も救済できるはずです。自動車会社を残すのと、未来のマイクロソフトやインテルを育てるのと、どちらが重要か? 再生可能なエネルギーの開発の方が重要だ、と。
The Guardian, Sunday 22 February 2009
What the world needs now...
Jeffrey Sachs
(コメント) 世界不況を解決する最善の方策はないか? それは、主要諸国の国際協調と、貧しい諸国・地域への開発投資です。
NYT February 22, 2009
Can Talk of a Depression Lead to One?
By ROBERT J. SHILLER
FT February 22 2009
Let’s turn Group of Seven rhetoric into action
By William Rhodes
The TimesFebruary 23, 2009
This slump is stirring a political storm
William Rees-Mogg
The Guardian, Thursday 26 February 2009
No chance of a return to the dark days of the 30s? Don't kid yourself
Larry Elliott
(コメント) 大恐慌について警告を繰り返すことは、私たちの期待形成に影響します。それは自己実現的な予言となるかもしれません。オバマはそのリスクを考えなければなりません。
個人が経済破綻によって不正義を強く感じたとき、人種差別のスローガンやファシズムが政治の舞台に登場しました。今もそうです。BNP(イギリス国民党)が労働者の票を労働党から奪っています。フランスでも、日本でも。
FT February 22 2009
Flexibility gives way to rigidity’s virtues
By Paul De Grauwe
(コメント) 弾力性が賞賛されて、弾力性を支持する成長モデルや経済の「構造改革」が盛んに主張されてきました。しかし、今度は逆に、「硬直性」が求められます。
その理由をPaul De Grauweは指摘します。デット・デフレーションが始まって、経済が悪化する循環を断ち切るために、弾力的に反応しない主体や制度が必要だからです。たとえば、それは「社会保障」です。
経済の硬直性を批判する際に、しばしば社会保障のコストが大きすぎると批判されました。今では逆です。アメリカやイギリスに比べて、イタリアやアイルランドの債券格付けは低くされています。しかし、それは間違いです。「弾力性」が良い条件であるのは、不況の中ではないからです。むしろ、「硬直的」な国の方が不況は軽く、早く回復するでしょう。
FT February 22 2009
Why we still need more social housing
By Kate Barker
(コメント) 不況対策として低家賃の住宅を各地域に建設するのは、公共投資として重要や雇用をもたらすだけでなく、労働者たちの住居を確保し、さらに、回復時の労働者の移動を容易にする、など、利点があります。
The Guardian, Monday 23 February 2009
Time for a global bargain
Will Hutton
(コメント) IMFを強化する、というだけではブラウン首相はG20の使命を果たせません。市場は、政府が集まっても問題を解決できない、という疑いを深めています。
銀行から不良資産を取り除き、資本増強して「good bank」を作ります。政府は彼らの信用を保証します。国有化も最後の手段としてあります。主要国の政府は、信用回復に向けて相互依存と責任とを意識しなければなりません。
FT February 23 2009
Bailing out Dubai
FT February 23 2009
Dubai
(コメント) グローバリゼーションのもたらした究極の造形がドバイでした。周辺の富を狙って、不動産、貿易、観光、そして、地域の金融センターを創るはずでした。その破たんを救済するのは、近隣の守旧的な石油国家、アブ・ダビの世界最大のSWF(政府投資信託)です。ドバイは砂漠の海に浮かぶアイスランドとなりました。
NYT February 24, 2009
By DAVID BROOKS
(コメント) オバマの行動を呼びかける演説に、DAVID BROOKSは、エドマンド・バークの『フランス革命の省察』を思い出します。バークは、個人の理性には限界があり、政治的改革は時代を積み重ねた知識を必要としているから、変化は漸進的でなければならない。決して破壊的な決定はしない方が良い、と主張します。その保守主義や歴史的な受動性が、若い革命家たちに嫌われた文章です。
しかし、「知らないことの渦巻く銀河系a galaxy of unknowns」の中に位置するオバマとその経済危機は、あまりにも少数の個人に権限を集中し、失敗するかもしれない大胆な行動を主張しています。オバマの称賛するエコノミストたちは、全く異なる答えを主張する他のエコノミストたちに比べて、絶対に間違いを犯さないとは思えません。アメリカの政治システムに財政赤字を健全化する仕組みがあるとも思えません。
バークの警鐘が鳴り響きます。そして、左右のイデオロギーに広がる思想家たち(オークショット、バーリン、ハイエク、オーウェル、など)が、方法として、より穏健な社会改良を支持しました。なぜなら、完璧な社会改良・社会管理を唱える思想ほど破壊的な影響を残したからです。われわれの理解した者は世界のほんの一部であり、社会は計測できないような、あまりにも複雑な有機体である、と。
NYT February 25, 2009
Time of Reckoning
FT February 25 2009
Obama’s first State of the Union
The Times, February 26, 2009
Obama Stumbles
(コメント) オバマの議会演説を聞いて、私は失敗だと感じました。オバマは問題の核心を見失っている、と。国民や議会に対して、大統領が何を語るべきなのか? オバマの演説では、中身がない、と思いました。その点を、アメリカのメディアはあえて触れなかったのだと思います。しかし、イギリスのジャーナリストたちは明敏で、辛辣です。FTの指摘は正しいでしょう。
Fine, although one wonders how much longer Mr Obama will be able to give this speech. He said nothing new. He offered no real information to explain what will become of the banks, or how the budget deficit will eventually be brought back under control, or how his expensive and increasingly confident promises to reform education and healthcare will be paid for. In every case, it was “details to follow”.
危機の渦中にある指導者として、聞きたくないような真実も告げて、議会に具体的な提案を示し、より優れた対案を求め、積極的に議論を指導しなければなりません。だからThe Timesは「オバマがこけた」と書くのです。選挙を戦っている、夢見る若者では生き残れない。
The Times, February 25, 2009
Goodbye Gucci. It's the age of co-op capitalism
Noreena Hertz
(コメント) グッチの協同組合的資本主義について。
NYT February 25, 2009
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) アメリカ衰退論で注目されるのは東京ではない。北京であり、モスクワであり、ブラッセルだ、とTHOMAS L. FRIEDMANは書き始めます。
今は指導者のいない世界です。ロシアや中国がアメリカに代わって国際的な公共財を供給する責任を引き受けることはないでしょう。EUは今もバラバラです。世界は、アメリカの支配を嫌いますが、アメリカ経済が回復しなければ自国も危機を免れないことでは一致しています。
アジア通貨危機の際に、アメリカの批判で財閥企業や銀行を潰した韓国は、一時的にアメリカ離れを示しました。しかし今や、アメリカを強く求め、賞賛しています。オバマの外交は真っ先にアジアへ向かい、アジアの期待に応えるべきでしょう。
BG February 25, 2009
A new paradigm for US foreign policy
By Jonathan Moore
Asia Times Online, Feb 27, 2009
New US tone, same old issues
By Jing-dong Yuan
BG February 26, 2009
Clinton's missed opportunity in China
By Merle Goldman
The Japan Times: Thursday, Feb. 26, 2009
Clinton gets off to a good start in China
By FRANK CHING
China Daily, 2009-02-26
Shelving stereotypes a must for cooperation
By Ni Mengzhou
(コメント) 北京を訪問したクリントンは、人権問題に触れなかったそうです。昨年、人権活動家たちが発表した08憲法案は、この機会を待っていたはずです。中国の政治改革を求める姿勢を失ってはなりません。
日本にきたクリントン国務長官が、明治神宮に参拝し、拉致家族に面会したことも、日本の政治や社会運動から見れば、なぜ? という疑念や不満を呼んだと思います。それらは、日本の保守的エリート層におけるアメリカへの好感を高め、米中関係改善を中傷させないための布石だった、と解釈されるわけです。
中国から見ても、アメリカとの関係は相互利益によって積極的に肯定されます。
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The Economist February 14th 2008
The Obama rescue
Taiwan’s economy: Mirror, mirror, on the wall
The economy: Britain’s fallen star
Irving Fisher: Out of Keynes’s shadow
America’s banking crisis: Worse than Japan?
(コメント) オバマ政権の財政刺激策やガイトナー財務長官の金融安定化案が注目されていました。リチャード・クーの議論は、幾分、影響し始めているのかな、と思います。しかし、前面に出たのはアーヴィング・フィッシャーでした。債務の返済とデフレが悪循環を起こして不況を拡大する過程が、ケインズと対比されて、重視されます。
台湾経済やイギリス経済の悪化に関する解説、そして、しばしば銀行救済に関して挙げられる日本とスウェーデンの対比、が英米の論争を支配しているのが分かります。アメリカの銀行危機は日本よりも深刻で、スウェーデンよりも複雑です。財政赤字と輸出によって不況を緩和できた日本やアジアの通った逃げ道は、世界にもアメリカにもありません。
The Economist February 14th 2008
The middle class in emerging markets: Two billion more bourgeois
Bourgeoning bourgeoise: A special report on the new middle classes in emerging markets
(コメント) 中産階級、もしくは、ブルジョアジー、という特集です。通常は決して意見が合わないマルクスと、この点(ブルジョアジーの革命性)では完全に意見が一致する、と皮肉な自慢もしくは自嘲で始まります。
グローバリゼーションの成果であり、政治的な改革、民主化の条件、社会や政治の安定化、政策の合理性を高める、などと期待される「世界ブルジョアジー」の誕生ですが、記事の論理はもっと複雑で、巧妙に、説得的です。
世界ブルジョアジーが急増する過程は、新興市場の成長に由来しますが、これも一種のルイス・モデルだな、と思います。その政治的な評価は、かつての近代化論を再生したものです。グローバリゼーション時代のクズネッツ=ロストウ。
それでも富は少数者の手から分散し、中産階級という多様な安定化と成長を指向する政治勢力を得て、エリートたちは民主化を受け入れ可能(利用可能)とみなすのです。中産階級によるグローバリゼーションの社会・政治的な安定化を予想するのは、逆立ちしたH.アーレントです。