IPEの果樹園2009

今週のReview

1/26-1/31

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

日本の不況、 多極化世界の帝王、 ガザ戦争と対立軸、 銀行救済で良いのか?  アイスランドからイギリスへ:銀行国有化、 オバマの就任式、 世界市場の不均衡解消、 欧米日共同市場の結成

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


WSJ JANUARY 15, 2009

The Truth About Japanese Stimulus

By RICHARD KATZ

FT January 21 2009

Japan’s new carry trade – the handbag

By David Pilling

(コメント) RICHARD KATZは、日本がバブル後の政策論争を引きずって、再び失敗を犯しつつある、と考えます。輸出に依存した日本経済の景気悪化は、トヨタやソニーだけでなく、それほど急激なのです。10-12月期で年率にしてマイナス8%というGDPの変化は前例のないものです。

大規模な刺激策を示さない理由を、KATZ4つの神話に見ています。1.無駄な公共工事を増やすだけだ。2.1990年代の財政刺激策は役に立たなかった。3.日本人は何でも持っているから、消費せずに貯蓄してしまう。4.すでに巨額の債務がある。

しかし、財政刺激策を有効に使う方法はあります。特に、派遣労働者の解雇が急増しており、彼らの所得を維持する必要があります。財政刺激策が役に立たなかったのは、それが効果を発揮すると早く止めてしまい、不況に戻ったからです。また、日本人も所得が増えれば消費するのであり、また、都市のインフラ整備など、なすべきことは多くあります。巨額の債務はあっても、低金利のおかげで債務負担は軽いままです。財政の刺激策によって成長を回復すれば、増税もできます。

円相場は1ドル=88円代です。欧米市場で資金調達できないことに加えて、円高で低金利の時期に資金を調達して、円安になってから返済する、という過程に利益を観ているのでしょうか? 日銀は金融緩和を続け、日本政府は財政刺激策を発表して、内需に転換しなければならないはずです。アメリカ以上に積極的な景気刺激策を取れば。しかし麻生内閣が終わる秋まで、日本政府の迷走が続くことを見越して、大幅な円高と円安を予想している? そうであれば、日本の旅行者だけでなく投資家が、海外(あるいはGold)に避難し始めるでしょう。

David Pillingは、世界金融危機によりキャリー・トレードが終わって、円債務を清算するために円高が生じている、と指摘します。それに対して、通貨当局が外為市場に介入する話が出るわけですが、David Pillingは円高を受け入れるのが良い、と主張しています。なぜなら、消費者の利益になる。企業は円高に対応する形で生産拠点を海外に設けた。対外不均衡の調整に役立つ。

ただし、世界の需要不足や日本におけるデフレの再現が問題として指摘されます。


BBC 2009/01/16

Who will succeed N Korea's Kim Jong-il?

By Becky Branford

Asia Times Online, Jan 17, 2009

Smart power play in Pyongyang

By Donald Kirk

(コメント) カストロが最後にアメリカとの国交正常化を行うチャンスを持つとしたら、北朝鮮はどうでしょうか? オバマの登場で、あるいは、それ以上に世界や中国の不況で、金正日にも国交回復の機会が巡ってくるのか? むしろ、一層、困難になる?


The Guardian, Friday 16 January 2009

China's dragon still roars

Jonathan Fenby

NYT January 22, 2009

Jobs Vanish as Exports Fall in Asia

By KEITH BRADSHER

FT January 22 2009

Only by spending can Asia save itself

(コメント) 中国やアジア経済の不況が欧米以上に深刻である、というのは誤解です。輸出の落ち込みは重大ですが、それでもプラス成長するし、回復は早い、と予想されます。もしアジアが十分な景気刺激策を取れば。


IHT Friday, January 16, 2009

Get smart

By Joseph S. Nye Jr.

The Guardian, Thursday 22 January 2009

Obama's grand narrative may unite his country but divide the world

Timothy Garton Ash

(コメント) 文化や価値観、そして政策によって、アメリカのソフト・パワーは高められる、とJoseph S. Nye Jr.は主張します。文化や価値よりも、政策は変更しやすいから、ベトナム戦争のときもアメリカの政策は嫌われましたが、回復できました。今もそうだ、と。

この、ちょっと常識的な「スマート・パワー」論の後に、カート・ヴォネガットJr.風のTimothy Garton Ashを読むのは楽しいでしょう。

「アメリカの第47代大統領が、1月にしては季節はずれの温かい日に宣誓を行った。グロリア・エヴァンゲリスタは、初のヒスパニック系、また、女性で二人目のアメリカ大統領である。彼女は、その夫、ヴィクトル・チュの持つスペイン語の聖書に手をおいて宣誓した。チュの中国系企業に対するロビー活動がもたらす豊富な利益は議論になっていたが、一時的に忘れられた。宣誓式を見つめるバラク・オバマ元大統領は、二期目の大統領職で心に傷を負わせた最後の数か月のせいで白髪となり、二人の共和党出身元大統領に挟まれて立っていた。前任者ジョージ・ブッシュと後任者キティ・マクファーレンである。2025120日の異常な陽気は、地球温暖化のせいではないかと多くの者が指摘した。オバマ政権はそれを遅らせるために空しく戦ったのだが。新大統領、エヴァンゲリスタは、英語とスペイン語の混じった就任演説で、俗にG2と呼ばれる米中戦略提携関係について、飽き飽きするほど入念に語った。」

Ashはオバマの就任式において、世界市民としてのオバマと、世界帝王としてのアメリカ大統領という二つの姿を見て、しかも、複雑なこの世界で、彼が容易には目的を達成できず、その行動の多くが中国との協力関係に依存していることを感じたわけです。

オバマはアメリカの多文化社会の現実であり、理想(と悪夢)を体現しています。それゆえ、アメリカ社会の新しい人的エネルギーが湧き起こる源泉になるのでしょう。しかし、アメリカの例外主義やアメリカの愛国心を、世界が共有しているわけではありません。多極世界の到来を予測するアメリカの情報部が観る未来は、アメリカの指導者にとって住みにくい世界でしょう。


China Daily 2009-01-16

Blaming China for crisis an irresponsible act

By Zhang Jianhua

China Daily, 2009-01-20

US has itself to blame for financial meltdown

By Liu Junhong

Asia Times Online, Jan 21, 2009

China's tough choice: Food or concrete

By Antoaneta Bezlova

China Daily, 2009-01-21

Joint efforts needed to keep Sino-US ties on track

By Yuan Peng

(コメント) 確かに世界貿易は不均衡に苦しんでいるが、国際金融危機を貿易不均衡(そして中国)のせいにするのは間違いだ、とZhang Jianhuaは主張します。G20が合意したように、その原因は、アメリカによる長すぎた金融緩和と財政赤字、そして金融市場の監督が穴だらけだ、という事実に帰せられる、と。他方、IMFは弱体で、金融危機の危険があるのだから、アジア各国は当然、外貨準備を増やしたのであって、非難すべきことではない。

Liu Junhongも同様の趣旨です。しかし、中国も住宅バブルが崩壊し、株価も暴落しています。過剰な金融緩和や景気の過熱を反省することはないのでしょうか?

世界の不況と輸出減少に加えて、中国政府は、農地不足と食糧価格の高騰を心配します。景気対策・雇用創出と、経済から外交にまで及ぶ対米協調は、中国共産党が権力を維持するためのカギなのです。


Beyond Gaza WP Saturday, January 17, 2009

BG January 17, 2009 The truth about Hamas's mission By Andrea Levin

The Japan Times: Sunday, Jan. 18, 2009 The long-term security threat to Arab states By BARRY RUBIN

アラブ諸国間の対立も激しくなっています。ガザ地区のハマスを、イスラエルと協力して封鎖したエジプト政府と、それに反対したイランとシリアが支援するヒズボラ、イランはエジプトのムバラク大統領に対する暗殺も呼び掛けている、というのです。ファタハはハマスの敗北を望みます。中東の政治対立は、イスラエルとパレスチナではなく、アラブ諸国におけるナショナリスト(政府)とイスラム原理主義者(体制転換)との対立に変わりました。

イラン・シリアが目指すイスラム革命の計画は、全アラブ諸国の体制転換、パレスチナ国家の前提となっているイスラエルの承認拒否、核武装、地域における西側の影響をすべて排除すること、です。それは達成不可能であり、永続的なテロと戦争のプログラムだ、とBARRY RUBINは批判します。

FT January 19 2009 Ceasefire in Gaza Gideon Rachman

The Times, January 20, 2009 Gaza: no victors, just thousands of victims Martin Fletcher

イスラエル、ハマス、双方が勝利を宣言する。ガザの機能は破壊され、ハマスは生き残り、数カ月はロケットが飛ばないかもしれないが、イスラエルは将来の敵を増やした。平和はもっと遠くなった。1200人の死者。5000人の負傷者。10万人のホームレス。それが勝利か?

FT January 20 2009 Torn asunder By Tobias Buck and Roula Khalaf

Obama's Middle East policy could take cues from Northern Ireland experience Jonathan Freedland in Washington The Guardian, Wednesday 21 January 2009

北アイルランド紛争の経験から学ぶことは何か? 1995年から北アイルランドで交渉にあたり、1998年のグッド・フライデー合意を成立させたGeorge Mitchellがオバマ政権の中東特使として指名されました。ミッチェルが交渉参加者に求めた原則は、すべての党派が暴力を闘争の手段として否定する、ということでした。しかし、それはアメリカやEUがハマスに求めている条件と同じになる可能性が高く、ハマスはファタハとイスラエルの合意を認めません。

FT January 21 2009 The ruins of Gaza

Asia Times Online, Jan 22, 2009 Obama and the other ceasefire By Kaveh L Afrasiabi

Israel's bigger battle ahead: its national identity By Bill Glucroft CSM January 22, 2009 edition

NYT January 22, 2009 The One-State Solution By MUAMMAR QADDAFI

もしパレスチナ国家が誕生しないなら、イスラエル国内の政治はアラブ系人口の増加によって変化し、混乱するでしょう。

あるいは、リビアの指導者カダフィは、暴力の循環を終わらせるために、2国家案を放棄するように求めます。パレスチナ人が、どうしてもイスラエルの土地を認めたくないのです。パレスチナ人はイスラエルの国籍を取り、ユダヤ人はヨルダン川西岸に入植地を増やします。イスラエルの工場はパレスチナ人の労働者や財、サービスの輸入なしに稼働できません。

FT January 22 2009 Saudi patience is running out By Turki al-Faisal

サウジアラビア政府は、オバマ政権が国連決議に基づく2国案の支持とイスラエルへの非難を表明するよう求めています。そして、アラブ諸国をまとめて和平案を示したサウジアラビア外相の提案を受け入れるのです。


NYT January 18, 2009 Closing Guantánamo

(コメント) オバマ政権の最初の行動は、グァンタナモ基地の閉鎖とアメリカに法の支配を取り戻すことでなければなりません。


WSJ JANUARY 17, 2009 U.S. Plots New Phase in Banking Bailout

WSJが、アメリカ金融危機救済策の現状を確認します。「銀行が再生しなければ、経済は再生しない。」「銀行が依存している資産の価値が明確でないなら、銀行は再生しない。」 そこで、銀行の抱える不良債権を確定するために、政府は保証を与え、あるいは不良債権処理のための金融機関を設立しなければなりません。

しかし、銀行が再生するだけで経済が再生するのか? 銀行を再生させるだけで良いのか?

NYT January 18, 2009 Obama Urged to Move Swiftly to Rescue Banks By STEPHEN LABATON

NYT January 18, 2009 How About a Stimulus for Financial Advice? By ROBERT J. SHILLER

FT January 22 2009 The right and wrong way to bail out the banks By George Soros

資本主義、もしくは市場の基礎を確立したアダム・スミスは、多くの場合、消費者が選択することで市場はうまく機能する、と考えました。しかし、金融は異なります。ROBERT J. SHILLERは、消費者が正しい判断をするためには、金融アドヴァイスを行う公的に認められた補助者がいなければならない、と主張します。そして、金融破たんを起こした場合にも、政府は個々の消費者が社会的に見て正しい反応を取るよう助けるべきなのです。

そのために、アドヴァイスは無料であり、助言者は利用者や金融機関から料金を取りません。そして、政府が助言時間に対して支払います。あるいは、金融部門の社会的な役割を長期的に評価する形で報酬を決めると良いでしょう。

Barack Obama's big stimulus Dean Baker The Guardian, Monday 19 January 2009

Mortgage Momentum WP Monday, January 19, 2009

FT January 19 2009 Obama – the man is the message By Gideon Rachman

BG January 19, 2009 The New Deal wasn't built in a day By Philip Warburg

Obama’s First Job Is Buying Brain-Dead Banks Michael R. Sesit Jan. 20 (Bloomberg)

NYT January 20, 2009 Obama’s Bailout Challenge By ANDREW ROSS SORKIN

The Japan Times: Tuesday, Jan. 20, 2009 Coordinate a global stimulus for this crisis By KEMAL DERVIS and JUAN SOMAVIA

LAT January 21, 2009 What to do with all that stimulus money

Marshall Plan for America Nicolaus Mills The Guardian, Thursday 22 January 2009

財政政策に関する論争です。その空前の規模、支出の目的、支払い方法、資金調達、返済、その他、市場に及ぼす影響と、歴史的な意味がさまざまに議論されます。


NYT January 18, 2009

Time for (Self) Shock Therapy

By THOMAS L. FRIEDMAN

FT January 18 2009

Beggar thy lender

(コメント) THOMAS L. FRIEDMANは、オバマ政権がショック・セラピーを取るように求めます。オバマはアメリカの主要銀行のトップ300人を集めて、次のことを要請します。

「銀行家のみなさん。この危機は、あなたたちが起こした。・・・銀行は経済に血液を送り込む。銀行が動かなければ、刺激策があっても、経済は動き出さない。・・・」

「われわれはこうするつもりだ。詰まった動脈を切り開く。政府の銀行専門家があなたたちのバランス・シートを分析している。われわれが正しいかどうか、答えなさい。もし支払い不能となれば、あなたの銀行は国有化して閉鎖します。価値があればオークションで売却し、不良債権は政府の再生基金が吸収して、市場が回復したときに売却します。あなたの銀行が弱ければ、他の銀行と合併しなさい。そして、強い銀行だけが、残された損失を償却できてから、バランス・シートに追加の公的資金を得られるでしょう。損失を出す者や愚か者に資金を使いたくない。」

Foreign Policy の編集者であるMoisés Naímは述べたそうです。ロシア、タイ、インドネシア、韓国、メキシコ、・・・アメリカ政府は金融危機の国に「ショック・セラピー」を強く求めてきた。アメリカ自身が金融危機に陥った今、誰もが「漸進主義(グラデュアリズム)」を唱えている、と。

ただし、日本のバブル処理には適切であっても、資本流入に頼るアメリカが「ショック・セラピー」を行えばどうなるのか、真相は分かりません。準備通貨であることの信認を失わなければ、処理は容易かもしれません。逆の場合は、逆です。


FT January 18 2009

Australian economy

FT January 19 2009

Rouble devaluation

FT January 19 2009

China’s hard landing

(コメント) オーストラリア、ロシア、中国。欧米の金融危機は代表的な新興市場の成長も破壊しました。輸出が落ち込んで、金利を下げ、通貨価値を下げ、補助金を出す・・・。

中国でも、不動産価格・株価が下落し、生産過剰でデフレが始まっており、企業は投資をやめてしまいました。成長率は急落し、失業は急増しています。中国の二桁成長は過去の時代になりそうだ、とFTが伝えます。


FT January 18 2009

A second front for beating the crisis

The Guardian, Monday 19 January 2009

Credit crunch part two

FT January 19 2009

Shoot the bankers, nationalise the banks

By Philip Stephens

(コメント) ゴードン・ブラウンは銀行への資本注入で金融危機の収拾を先導したと賞賛されたはずですが、その後、再び損失が増大して銀行危機も再燃しています。問題のある銀行の責任者を解雇し、国有化して迅速に処理するしかない、とPhilip Stephensも考えます。

FT January 20, 2009

Can the UK government stop the UK banking system going down the snyrting without risking a sovereign debt crisis?

Willem Buiter

(コメント) Willem Buiterはアイスランドとイギリスを比較して分析します。実際、今では、ロンドンを「テムズ河畔のレイキャビク」と呼ぶそうです。

アイスランドに救済融資したIMFの条件は奇抜なものです。資本流出規制をして、2010年まで返済不要。財政赤字の自動的な安定化機能も許容されています。危機にあったアジア諸国には許されなかったものです。それほどアイスランドの債務は大きいというわけですが。GDPの8%以上の落ち込みも予想されています。

「イギリスは新しい『矛盾のカルテット』による犠牲者になる。1.小国で非常に開放的な経済。2.経済規模に比べて銀行部門が巨大な対外債務を負う。3.世界的な主要準備通貨ではない。4.財政規模に限界がある。」

アイスランドの危機は、その対応を誤れば、アイルランドだけでなく、イングランドにも波及するかもしれない、とWillem Buiterは警告します。アメリカ型の銀行救済、民間債務の保証、を続けていては、イギリスが破たんしてしまう。バーナンキ、ガイトナー、サマーズ、というオバマ政権の「モラル・ハザード」台風に巻き込まれてはいけない。銀行救済ではなく、すべての銀行を国有化して処理するべきだ、と主張します。

Willem Buiterの提言は、本質において、不良債権処理銀行を作ることです。すべての銀行を国有化するのは、それによって「モラル・ハザード」を出さないようにしているのです。民間銀行のまま処理銀行に評価できない債権を押し付けるのは問題です。民間売却のオークションを信奉したり、公的資金を入れ続けたりすることが、正しい解決策なのだ、と思い込むのはあやしいです。

アイスランドと似ているのは、イギリスも銀行の対外債務が大きい、というだけでなく、実質為替レートが大幅に高く、国際競争力を失う「オランダ病」を生じていながら、金融・建設部門が過熱したまま放置され、経常収支赤字を資本流入で補っていたことです。これは金融危機の爆弾です。

政策決定者やエコノミストは傲慢で、市場が好調な理由を市場と自分たちの優秀さと誤解しました。そして危機が起きると、外から大波が来て、正しかった政策や制度、規制が飲み込まれた、と弁解しています。政治家と中央銀行、金融監督が独立性を欠き(アイスランドでは同一人物が移動した)、互いをチェックしませんでした。「銀行は大き過ぎて潰せない。」「金融機関のバランス・シートを社会化して、損失を分かち合う。」といった解決策が取られました。そして、(銀行の債務が)大き過ぎて、政府が債務超過に陥ったのです。「大き過ぎて救済できない」という状態です。

この金融危機によってユーロ圏が解体し、財政規律も失われる、という予想に反して、Willem Buiterは、逆に、EUの財政協調が進むだろう、と考えます。金融危機に対して、共通の財源が必要だ、と合意するからです。

 

The Guardian, Tuesday 20 January 2009

The nuclear options

Dan Roberts

FT January 21 2009

Nationalisation is not a panacea

By John Gapper

The TimesJanuary 21, 2009

Mervyn King paves way to start Bank print presses

Gary Duncan, Economics Editor

NYT January 22, 2009

Falling Pound Raises Fears of Stagnation

By JULIA WERDIGIER and NELSON D. SCHWARTZ

FT January 22 2009

Are UK banks too big to rescue?

By Martin Wolf

(コメント) イギリス経済の救済するために、国有化や中央銀行による政府債務の貨幣化、ポンド安、などが主張されています。ただし、輸出を刺激するポンド安も、あまりに加速すれば資本逃避と通貨危機、その後の高金利や財政赤字、経済停滞につながります。

イギリス人は1970年代の経済停滞が再現することを恐れている、とWERDIGIER and SCHWARTZは様々な議論やその背景を紹介しています。


FT January 19 2009 Obama – the man is the message By Gideon Rachman

FT January 20 2009 Troubles laid bare by bleak diagnosis By Edward Luce in Washington

FT January 20 2009 Obama: We must change with the world By Daniel Dombey and Demetri Sevastopulo in Washington

オバマの就任式について、世界中で、多くの論説が書かれました。これらはその一部です。

「危機に直面して、難しい選択を避けてはならない。」

氷のように澄み切った青空の下で、オバマはアメリカが直面している厳しい問題について、硬質なトーンで語り続けた。

The new president called for America to face the future by returning to first principles, sacrifice and duty, courage and fair play – “these things are old,” he said. “These things are trueWhat is demanded then is a return to these truths.”

アメリカ国民は正しく戦うだろう。「犠牲、義務、勇気、フェア・プレイ」がその原則である。それらは昔から変わらぬ真実だ。

人々の生活をより良くするために、内外における政府の介入主義を宣言する。

BBC 2009/01/20 Obama vows to meet US challenges

LAT January 20, 2009 Obama's oath

オバマの宣誓は、無神論者からの抗議があった結果だ、ということです。

Obama's rhetorical high notes Peter Hyman The Guardian, Tuesday 20 January 2009

All the conservative trappings freed Obama to frame a radical message Jonathan Freedland The Guardian, Tuesday 20 January 2009

Obama's speech Michael Tomasky The Guardian, Tuesday 20 January 2009

Why not a black prime minister? Patricia Scotland The Guardian, Tuesday 20 January 2009

The Burden He Shoulders By Richard Cohen WP Tuesday, January 20, 2009

就任式の朝、オバマ達の姿を想像したRichard Cohenの短文は秀逸です。・・・

オバマが妻や娘たちと普通に生活する間にも、世界の株式相場や経済危機は変化し続けます。

イラクやアフガニスタン、世界中のテロ組織は活動している。

刻々と多くの労働者たちが職を失って、この寒風の吹きつける街頭に投げ出される。

住宅は差し押さえられ、銀行が破たんし、国家が破たんし、核兵器が秘密裏に製造・移送されている。

子供たちは学校を辞めてしまい、中国人はアメリカの債券を買わなくなり、インド人もそれに従うだろう。

ドイツの首相は財政刺激策を嫌い、ロシアはウクライナとガス輸送で紛争を繰り返し、アメリカ兵は外国の戦場で命を落とす。・・・ブッシュはもういないのに。

・・・オバマ夫妻は、大統領とその夫人として、彼らの習慣である最初のコーヒーを飲んだ。

下院議長は金融救済のあり方を変えようとしているが、財務長官に指名されたガイトナーは税金を支払っていなかった。

アメリカは債務の沼に沈んでいく。・・・金融的なブラック・ホールだ。銀行システムが消えつつある。

ドルは円と対抗し、ユーロは人民元と対抗する。北朝鮮は韓国を脅し、プルトニウムで原子爆弾をいくつか作っただろう。

イスラエルはガザ地区のパレスチナ人に対してあまりにも残酷に振る舞い、ハマスを人民解放戦線にしてしまった。

イランとエジプトは核武装して対抗するだろう。しかし、年老いたムバラクはムスリム同胞団を恐れる。

世界の気温は上昇し、石油は枯渇しつつある。

・・・彼は立ちあがった。

世界のテロリストたちが動いている。CIAは彼に何を伝えるのか。

・・・片手を挙げて、宣誓する。「私、バラク・フセイン・オバマは・・・」

No Choice but to Matter By Eugene Robinson WP Tuesday, January 20, 2009

Inauguration Day WP Tuesday, January 20, 2009

NYT January 20, 2009 Government’s Promise

NYT January 20, 2009 The Politics of Cohesion By DAVID BROOKS

FT January 20 2009 Calm authority of a born leader

BG January 20, 2009 Obama's political speech of a lifetime By Derrick Z. Jackson, Globe Columnist

The gap in Obama's promise IHT Tuesday, January 20, 2009

On Inauguration Day, one nation CSM January 21, 2009 edition

LAT January 21, 2009 Inaugural address sounds notes of optimism and reality

Hard Truths at the Outset By David Ignatius WP Wednesday, January 21, 2009

Words Made Flesh By Harold Meyerson WP Wednesday, January 21, 2009

オバマの言葉によって、ブッシュ政権の築いた国防政策は崩壊しました。

"As for our common defense," Obama said, "we reject as false the choice between our safety and our ideals." Moments later, he added, "Power alone cannot protect us, nor does it entitle us to do as we please."

「われわれの共通の防衛について」オバマは語ったのです。「パワーだけで安全保障は得られない。それはわれわれが好むように行動することを許すものでもない。」

NYT January 21, 2009 President Obama

NYT January 21, 2009 Radical in the White House By THOMAS L. FRIEDMAN

オバマが選ばれたのは、彼がラディカルであるからだ。今まで隠れラディカルと批判されたが、今こそ、本当に、右でも左でもない、ラディカルであると示すときだ。

American spring BG January 21, 2009

WSJ JANUARY 21, 2009 A 'Responsibility' Era

The TimesJanuary 22, 2009 Task No 1 for Barack Obama: reinvent capitalism Anatole Kaletsky

LAT January 22, 2009 Obama and a lifetime pledge, renewed By Paula A. Daniels

NYT January 22, 2009 The Remaking of America By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT January 22, 2009 The Age of Responsibility By ROGER COHEN

FT January 22 2009 Changes that will shape a leader promising change By Philip Stephens

アメリカを変え、資本主義を変える。


FT January 20 2009

Why Obama must mend a sick world economy

By Martin Wolf

Jan. 21 (Bloomberg)

A $17 Trillion Alliance Can Save World Economies

William Pesek

NYT January 21, 2009

The Economy Is Bad, but 1982 Was Worse

By DAVID LEONHARDT

(コメント) オバマ大統領は、世界経済を破壊したのはアメリカであり、それを立て直すときだ、と信じている。しかし、そうではない、とMartin Wolfは指摘します。危機は世界経済がもたらしたのであり、アメリカだけでは解決できない、と。

この危機は、アメリカと中国の合作なのか、あるいは、アメリカの金融政策が間違ったのか、論争しています。いずれにせよ、その核心には住宅市場のバブルがあり、それに支えられた需要の膨張があります。それは供給の拡大を持続しました。住宅バブルが破裂し、需要が減る中で、需要を増やすか、あるいは、供給を減らす形で調整は進みます。

アメリカの債務を中国が融資すればよい、という問題だけではなく、バブルに依拠した拡大をやめるべきです。そのためにはIMF融資が重視されるでしょう。オバマが提唱する世界の高レベル会談でIMFなど国際機関が再建され、世界経済の均衡回復を監視する力が高まることにMartin Wolf期待します。

中国のあり方が注目されます。2007年にドイツを飛び越え、次に日本を超えるでしょう。麻生首相は世界第二の経済と自慢しますが、すぐに不況とデフレで、そうでなくなることをもっと心配してはどうでしょうか?

1.9兆ドルの外貨準備において、少なくとも6500億ドルはアメリカ財務省証券です。もし中国がドルの準備を売却すれば、アジア諸国がそれに従うでしょう。そして、アメリカ経済を破壊すれば、確実に、中国の輸出市場も失われます。経済的な「相互確証破壊」とWilliam Pesekは呼びます。


FT January 20 2009

Five lessons in global diplomacy

By Javier SolanaEU high representative for common foreign and security policy

(コメント) 1.すべての答えは政治にある。内戦、国際紛争、エネルギー問題、気候変動、原爆の廃止、・・・。軍事力や経済力によるパワーだけが重要と考えてはならない。正当性も重要だ。たとえば、パレスチナ人には力がないとしても、彼らの権利を否定する合意は許されない。

2.国際介入は、他国の国内政治を考慮に入れた、高度に戦略的な判断だ。

3.交渉に参加する人物の個性と信頼は決定的に重要だ。制度や秩序が危機に陥ったとき、1ビ切りの指導者たちが重要な決定を行う。互いの信頼関係を築いていなければならない。

4.単独に、たとえアメリカでも、自国の問題を解決できる国はない。中東地域に強い協力機関がないのは、その不安定さの原因であり、結果でもある。


The Guardian, Wednesday 21 January 2009

The migration front line

Prokopis Pavlopoulos

YaleGlobal, 21 January 2009

Exporting People

Joseph Chamie

(コメント) 移民についての論考です。世界同時不況において、輸入を阻止することは強く制限されているのに、移民を阻止することは放置されています。しかし、ギリシャはジュネーブの移民に関する国際協定を承認し、入国を拒む場合も彼らの権利を尊重している、と主張します。長期的な移民政策も示して、受け入れ基準を明確にしています。EUは協力して、域外からの非合法な移民流入を阻止するべきだ、とProkopis Pavlopoulosは主張します。

他方、労働力の輸出を政策として推進してきた国もあります。移民たちからの送金はフィリピンのGDPの14%にもなります。それゆえフィリピンは、不況になればますます、労働者たちを輸出したいわけですが、移民労働者への需要は減り、むしろ帰国する者が増えています。


NYT January 21, 2009

Questions for Mr. Geithner

(コメント) 財務長官になる者は、どのような質問に答えるべきでしょうか?

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The Economist January 10th 2008

The hundred years’ war

The struggle for Gaza: Where will it end?

British manufacturing: Coming in from the cold

Rolls-Royce: Britain’s lonely high-flier

(コメント) イスラエルとパレスチナとの紛争では、小さな土地をめぐって互いにその存在を許さない人々が暴力を使って破壊と報復を繰り返してきました。アラブ系住民は数の優位があり、ユダヤ人は軍事力に優位があって、相手の存在を認めて譲歩する機会を失い続けました。その姿勢は、互いの宗教によって強化された、と記事は指摘します。紛争が激しくなるほど、宗教に依拠する強硬派が穏健派を弾圧しました。現在の停戦によって成立したイスラエルの軍事的優位を、占領地の返還、国際的に認められた国境線の確定に向けた入植者の引き揚げ、などとして政府が和平の機会にできるか? と記事は問います。

ジェット・エンジンのプロぺラに革命的な技術を実現したロールスロイスの話は興味深いです。しかも、その販売力はイギリスの金融サービスや情報ネットワークを生かし、自社のエンジンを搭載した飛行機のモニターを常時、世界中で行っていることが販売の決め手となっている、と。製造業とサービス業とを分けて考える貿易パターンは時代遅れ、と批判します。

The Economist January 10th 2008

America’s budget: After the recession, the deluge

Emerging markets: Stumble or fail?

Economics focus: Dramatic times

(コメント) 欧米日の旧産業社会に対して、新興市場は金融危機を先に脱出し、新しい世界市場の枠組みを決めていくのかもしれません。記事は、新興市場が相互貿易を拡大してきたし、アメリカのような構造的問題を抱えていない、と主張します。

こうした記事を読みながら、日本が成長のダイナミズムを分かち合うために、税金や社会保障、医療保険制度を、アメリカや中国と共有する仕組みを作れば、労働力移動や企業の進出を促すことはできないか? と考えました。まったく異質ではあっても、メリットを共有できる仕組みに合意してほしいです。

富裕諸国の5大金融危機として、スペイン、ノルウェイ、フィンランド、日本、スウェーデン、が挙げられるそうです。アメリカの危機はまだ悪化しそうだし、日本のようになるはずがない、という意見は消えてしまいました。