IPEの果樹園2009

今週のReview

1/19-1/24

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

ヨーロッパ:外交と通貨、 ガザ戦争、 オバマ政権の刺激策、 アメリカの債務返済、 中国海軍の拡大、 国際秩序:KissingerBrzezinskiKENNEDY、 国際収支不均衡の解消、 アイルランド

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


The Guardian, Thursday 8 January 2009

Europe is failing two life and death tests. We must act together, now

Timothy Garton Ash

(コメント) アメリカ人も、中国人も、ロシア人も、パレスチナ人も、・・・ヨーロッパを軽蔑している、とTimothy Garton Ashは認めます。ヨーロッパは弱虫で、ばらばらで、一貫せず、偽善的で、怒り散らすだけだ。

ヨーロッパがこれほど無能であるから、ガザで多くの民衆が爆弾の雨に焼かれているのに、何もできない。また、それほど直接に悲惨な映像が伝えられないとしても、ロシアとウクライナの天然ガス・パイプラインをめぐる紛争によって、ヨーロッパの老人たちが暖房を止め、冷え切った部屋にこもることを強いられているのに、何もできない。・・・法の支配。平和的な交渉。そんなヨーロッパの理想は踏みにじられるだけだ。

ヨーロッパは(ブルボン王朝のように)、行動するチャンスがあっても、何もせず、何も学ばなかった。チェコの外相がEUの外交政策を代表し、他方、サルコジ大統領はEUの議長として行動する。こうした分裂した制度を改めて、リスボン条約が示すようなEU大統領を導入するべきだった。EU拡大やユーロの10周年は素晴らしいが、しかし、ヨーロッパは制度にこだわり過ぎて、政治的な意志を欠いてしまった、とTimothy Garton Ashは反省します。

確かに、たとえエジプトの和平案を助けても、アメリカが何もしなければ、イスラエルはガザ地区での停戦を受け入れないだろう。他方、ロシアとウクライナの紛争はEUの力で解決できるはずだ。すなわち、ヨーロッパの天然ガス市場が単一化され、EU27カ国が統一した政治的な意志を示すなら、彼らはそれを拒めないはずだ。

では、アイルランドにリスボン条約を再投票で承認するように強制するべきか?  Timothy Garton Ashは、それが民主的なやり方ではない、と感じます。制度の改革は重要だが、それは手段に過ぎない。ヨーロッパに欠けているのは政治的な意志である、と。すなわち、政治的指導力が欠けているのであり、有権者がヨーロッパ規模の指導力を政治家たちに強く求めていないのです。アメリカや、中国や、インドが世界の姿を急速に変えていく中で、ヨーロッパの諸国民は、国境を越えた指導力が必要であることを自覚し、もっと政治家たちに要求しなければなりません。

より強力な、一貫した、ヨーロッパの長期的な利益を主張することが、私たちの生きる危険な世界においてはどれほど重要であるか、人々が気付くことが重要です。そうでなければ、ヨーロッパの民衆は、この平和で、繁栄した、自由な、市民的秩序の下での生活を、将来も維持できるとは決して思えない、と。

The Guardian, Sunday 11 January 2009

Finding Russia's place in Europe

Joschka Fischer

FT January 12 2009

Leaning closer

By Daniel Dombey and Tony Barber

(コメント) ロシアは、ヨーロッパにとっての戦略的な敵か、扱いにくい友なのか? 旧共産圏や英米は前者、しかし、EUの独仏など旧加盟諸国は後者の答えを好みます。ロシア政府自身が、本当に、自分たちも国際的な役割を担いたいのであれば、ヨーロッパと敵対するのではなく、むしろ加わる方が得策です。ヨーロッパの安全保障OSCEやNATOも、ロシアと交渉し、合意することで強化されるのでしょう。

ロシアも参加した新しい安全保障と、経済のパートナーシップが深まることで、ヨーロッパもロシアも変わる、とJoschka Fischerは期待します。

オバマ政権の下で、アメリカとの新しい関係が持つ意味も議論されています。アメリカは火星人(戦いの神)、ヨーロッパは金星人(美の女神)、というたとえは、今や、両者の立場がもっと近づいたことで成り立たない、とDaniel Dombey and Tony Barberは考えます。しかし、それはイギリスから見れば、アメリカとの「特別な関係」という外交的な切り札を失うことになります。

また、準備中のオバマ政権スタッフは、ヨーロッパの政治的な支持の確かさを測っている段階でしょう。そして、イラクでも、アフガニスタンでも、グァンタナモでもなく、国際金融秩序の再建がアメリカとヨーロッパの最大の課題なのです。その成果を左右するのは、アジアです。

FT January 11 2009

France, Germany and fissures in the eurozone

By David Marsh

FT January 13 2009

EU must plan for the unlikely worst

FT January 14 2009

Sovereign default in the eurozone and the breakup of the eurozone: Sloppy Thinking 101

Willem Buiter

(コメント) もう一つの話題は、ユーロです。安定性を重視するドイツと、成長を重視するフランスとの対立が、不況によって激化するでしょう。加盟諸国の債券はスプレッドが拡大しつつあります。そして、ドイツはECBが加盟国の債務返済を保証してはならない、という合意を見直そうとしません。すなわち、スプレッドが拡大すればユーロからの離脱を予想する投機が生じてデフォルトになり、本当に離脱する国が出てくるかもしれない、と。

すでに市場はユーロ圏の周辺(スペイン、アイルランド、ギリシャ)について不安を示しています。しかし、Willem Buiterは、ユーロ加盟国のスプレッドに違いがあることと、ユーロが安くなること、ユーロ圏が解体すること、は異なる、と指摘します。特に、ユーロ圏が、ユーロ安によって守られているのであり、ユーロの低金利を可能にしており、それゆえに、たとえスプレッドに大きな違いがあっても、ユーロ圏内の周辺諸国はユーロにとどまることで大きな利益を得ているわけです。また、離脱して新しい独自通貨を大きく切り下げた場合、ユーロ建債務が大きい国は、その債務負担が急増します。

Willem Buiterは、スプレッドの拡大を、市場が政府に規律を与えるものとして歓迎します。むしろ、スコットランドがイギリス連邦(UK)から離脱し、ユーロを採用する方が起こるだろう、と。

FT January 15 2009

The Obama challenge: is Europe just a spectator?

By Philip Stephens

(コメント) Philip Stephensは、オバマへの期待は大き過ぎるから、それが失望に変わる問題を考えます。アメリカ国内とヨーロッパと、どちらの失望が早いか? ヨーロッパはアメリカの覇権が維持されること、なぜなら、それ以外の覇権は魅力がないから、を望んでいるが、それがヨーロッパに多く要求しすぎないことも望んでいます。双方が関係を修復する善意を持つ機会に、大西洋共同体を再建するには、三つの柱を建てなければならない、とPhilip Stephensは考えます。

第一に、謙虚さ。アメリカは世界秩序に必要な覇権国であるが、一国では成果を上げることができない。ヨーロッパと同盟することで正当性を得られる、ということを認める。ヨーロッパは、ベルリンの壁が崩壊した後、理想とするようなポスト・モダンの多角的世界秩序(マルチラテラリズム)がまだ実現していない。規範的な秩序やソフト・パワーを主張するだけでは十分でないことを認める。

第二に、リアリズム。すなわち、現実の可能性について正直に評価することです。冷戦は終わり、ソ連の脅威は存在しません。大西洋同盟は選択の一つに過ぎないのです。安全保障に関するアメリカの関心はアジアと中東に向けられています。ヨーロッパとアメリカが異なった戦略的立場を取ることが増えるでしょう。しかし、多くの分野で双方の利益は強く結び付いている、ということを理解することです。

第三に、想像力。孤立した争点に閉じこもってはいけない。ロシアとの関係。ガザ戦争。地球温暖化。その他、多くの問題を孤立させて、互いに非難だけを繰り返すことは、関係全体を悪化させるでしょう。より大きな地政学的視野を得なければなりません。たとえば、欧米が国際機関で対立すれば、中国がイランの核問題で主導権を握られるかもしれない、と。

ヨーロッパとアメリカが協力することに、なお、望ましい秩序は依存しているだろう、と。


Jan. 9 (Bloomberg)

Gaza Silence Shows UN Lack of Power

Celestine Bohlen

(コメント) 中東の小さな土地に起きたガザ戦争を止められないことは、国連や国際社会の制度が無力であることを証明しています。ロシアとグルジアの衝突について多くの試みがあったにもかかわらず、安保理は何もできませんでした。ガザ空爆の直前には安保理を開くこともできず、軍事衝突が悪化しました。

192の加盟国を持つ国際連合は、安保理常任理事国(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス)の拒否権によって機能麻痺しています。国際社会は彼らの国益によって解釈され、制限されています。すべての国際機関は、支配的な大国の利益を離れて存在することができない、と。

特に、アメリカの拒否権行使には、イスラエルに関する決議が多いのです。即時の停戦と、イスラエルによるガザ地区の封鎖を解除するよう求める、リビアが先週提出した決議に対しても、アメリカの国連大使は「均衡を欠く」として拒否しています。ロシアがグルジアの領土を軍事的に侵した明白なケースでも、安保理はロシアの拒否権で動けませんでした。

5大国に拒否権を認める、という国連憲章は、それ以外の民主的な仕組みを否定してしまうものでありながら、それなしには大国の参加を維持できないものでした。冷戦終結の時期に、集団的な軍事力の行使を実現しましたが、その成果が疑われ、その後はロシアや中国による拒否権も加わって、安保理は再び行動できなくなっています。

Endgame in Gaza By Charles Krauthammer, WP Friday, January 9, 2009

Hard Lesson for Israel By Jackson Diehl, WP Friday, January 9, 2009

WSJ, JANUARY 9, 2009 Yes, Israel Can Win in Gaza By EDWARD N. LUTTWAK

Charles Krauthammerは、国際的な圧力を無視して、レバノン型の国際監視下による停戦(A)ではなく、ハマスの完全な解体(B)を実現しなければならない、と主張します。なぜなら、Aは、軍事力を行使できない国連軍、実効性のない禁輸措置、テロリストたちが再び武器を集めるまでの停戦、を意味するからです。また、イスラエルだけが人道援助の安全地帯を確保できる、と。

Jackson Diehlの教訓は全く反対です。イスラエルが学ぶべき教訓とは、軍事的な攻撃で過激派のテロを消滅させることはできない、ということです。イランが支持し、国際的に展開する政治社会運動であるハマスを、イスラエルが空爆で消滅させることなどできません。パレスチナの選挙において、政治的に勝利するしかないのです。

パレスチナ人社会で、過激派は穏健派を圧倒したが、同時に、分裂を深めた。過激派の勝利はパレスチナ人社会を守るものではないし、繁栄するものでもない、とEDWARD N. LUTTWAKは考えます。イスラエルのハマス討伐をもっとも歓迎するのは、穏健派のパレスチナ社会なのです。

LAT, January 10, 2009, Hamas' war crimes By Alan M. Dershowitz

'Israel Is Not Going to Show Restraint' Lally Weymouth, WP Saturday, January 10, 2009

ハマスは市民を盾にしてイスラエル軍と戦っている、とAlan M. Dershowitzは批判します。たとえば、ロケットを子供に運ばせ、国連の学校をロケット発射基地に利用する。病院やモスクも利用してきた、と。

イスラエルのTzipi Livni外相は、ガザ戦争がパレスチナ人とイスラエルの戦争ではなく、パレスチナ自治政府も含む中東地域の穏健派と、この地域の過激派との戦争である、と説明しました。だから、停戦という言葉も使いたくない。双方が合法的な主体として戦争しているのではない。ハマスはテロリストであり、これはテロ掃討作戦である、と。

Crossroads in Gaza WP Saturday, January 10, 2009

BG January 10, 2009 In Gaza, no one is winning By Robert Malley

LAT January 11, 2009 Silence the guns in Gaza

LAT January 11, 2009 Bridges to peace in Gaza By Avraham Burg

LAT January 11, 2009 Negotiating the Mideast By Patrick Tyler

戦争は、唯一の答えではない。社会は、価値観や言葉を共有できない他の社会を破壊する。しかし、戦争が問題を解決できないとしたら、どうすれば価値観や言葉を共有できるのか?

What is Israel's endgame in Gaza? Jonathan Spyer, The Guardian, Monday 12 January 2009

Security First By J.D. Crouch II, Montgomery Meigs and Walter B. Slocombe, WP Monday, January 12, 2009

BG January 12, 2009 'What if' questions of Gaza war By James Carroll

We believe in resistance, not revenge Basim Naim, The Guardian, Tuesday 13 January 2009

Gaza needs a peace stimulus By Daniel Noah Moses and Aaron Shneyer, CSM January 14, 2009 edition

The Japan Times: Wednesday, Jan. 14, 2009 Gaza: worse than a crime By GWYNNE DYER

死者の数で、戦争の正義が決められるわけではない。パレスチナ側に死者が多く出ても、それでイスラエルが悪者にはならない。戦争には双方に目標と犠牲がある。道徳ではなく、その効果によって、戦争を判断すれば、攻撃の後にハマスは強化され、イスラエルでは強硬派が政権に就くだろう。この軍事行動は今のイスラエル政府にとって役に立たないだろう。

Amid the horror and doom of Gaza, the IRA precedent offers hope Jonathan Freedland, The Guardian, Wednesday 14 January 2009

和平に向けた教訓を示す、重要な論説です。どれほど軍事力が不均衡であっても、和平交渉は可能だし、政治的な解決策を見出すことができる、とJonathan Freedlandは考えます。パレスチナとイスラエルの戦いは解決策のない、終わりのないものだ、という悲観論は間違っている、と。なぜなら、同様に終わりがないと思えた、南アフリカも、アイルランドも、平和を実現できたからです。

ただし、IRAはイギリスの消滅を主張しなかったし、イギリス軍はベルファストを空爆して1000人を超える死者を出すこともありませんでした。共通する点は、小さな土地をめぐる争いであり、人口の変化、信仰が重要であることです。

重要な転換は、双方が武装闘争ではなく政治闘争に移ることです。そのためには想像力を駆使しなければなりません。

第一の転換。それはイスラエル政府が、紛争を終わらせたいという真実の声明を発表することです。イギリス政府の北アイルランド担当大臣が1990年に発表しました。イギリス政府はこの地域を維持するために利己的な戦略・経済利益を求めない、と。同様に、イスラエル政府は、パレスチナ国家が土地を確保するために、ヨルダン川西岸の占領を解き、ユダヤ人入植地をすべて取り除くことで、その意図を明確に示せる。

第二の転換。双方の発想から、武装闘争を締め出すことです。武力の行使によって利益を得ることは不可能である、と理解しなければなりません。イギリス政府はIRAと戦うより名誉ある撤退を求めました。IRAはイギリス軍を地域から爆破して消滅させることはできない、と理解したのです。ハマスは、自爆テロでバスに乗ったイスラエル市民を殺しても、ロケット弾を撃ち込んでも、占領を終わらせるのではなく、長引かせるだけだと理解するでしょう。イスラエル政府は、ガザに爆弾の雨を降らせても、しばらくすれば新しい世代の兵士たちが加わって、ハマスが強化されることを知るでしょう。

第三に、もっとも難しい転換。それは、最強硬派を排除することなく、政治的な統一を維持して、停戦と和平への努力を続けることです。武装闘争・強硬派を排除して和平を進めれば、彼らは「真のハマス」を結成して指導部を乗っ取るでしょう。強硬派を分離させるような動きはやめること。そして、交渉が始まれば、双方が相手側の指導部にも利益となるよう配慮しなければなりません。そうしなければ、交渉による妥協は住民たちに敗北と解釈されるのです。

イスラエルは、この点で、完全に失敗しました。世俗的で穏健派のファタハがイスラエルの存在を認め、交渉によってパレスチナ政府を求めたにもかかわらず、イスラエルはファタハによる暫定政府を軽視し、武装闘争を放棄したことに見合う交渉上の譲歩を与えませんでした。むしろ、ヨルダン川西岸にも、イスラエル軍による検問所がより多くできて、ユダヤ人の入植地が増えたのです。パレスチナ人たちがハマスを支持するようになった理由の一つです。ガザ地区からの一方的な撤退も、イスラエル政府はパレスチナ暫定政府と合意して協力できませんでした。むしろ、ハマスが武装闘争の成果であると主張したのです。

Jonathan Freedlandは、ハマスが武装闘争を放棄しない、という反論を退けます。イスラエルとハマスは間接的な接触を続けるし、互いに和解可能な党派を見出すだろう。そして彼らを支援して、和平交渉の代表となるように助け合うのです。ハマスの側には、イスラエル創設時の1967年に国境線を戻すことで妥協する姿勢がある。他方、イスラエルの側にも、軍事力の行使が解決をもたらさず、政治的に解決できる、という理解を確立しなければならない、と書いています。

NYT January 14, 2009 Israel’s Goals in Gaza? By THOMAS L. FRIEDMAN

THOMAS L. FRIEDMANは、イスラエルのガザ空爆について、その目標を質します。それはハマスを教育(education)したいのか、それとも殲滅(eradication)したいのか?

2006年に二人の兵士を誘拐されて、イスラエル軍は、ヒズボラに対して、その協力的な市民も含めて、レバノン空爆で殺害し、破壊しました。イスラエルには、それが論理的な帰結なのです。イスラエルは敗北を強制しようとしますが、ヒズボラは勝利を宣言しました。それによってイスラエルは何を得たのか? ヒズボラは何を学んだのか?

もしハマスをせん滅するのが目標であれば、その死傷者は膨大な数に達し、政府が崩壊したソマリアのような状態になる、とTHOMAS L. FRIEDMANは考えます。オバマ政権はハマスに質すでしょう。お前たちはガザの再建を求めるのか、それとも、イスラエルの消滅を求めるのか?

NYT January 14, 2009 Why Israel Can’t Make Peace With Hamas By JEFFREY GOLDBERG

FT January 14 2009 Endgame in Gaza

BG January 14, 2009 Gaza tunnels: No path to peace By David Schenker

Save Gaza by Destroying the Heart of Terror Natan Sharansky, Jan. 15 (Bloomberg)

FTは、イスラエルの国際的な評価を致命的に貶めないためにも、停戦を急げ、と要求します。150万人が住む土地に爆撃して、あらゆる公共施設を破壊するような野蛮さを、国際社会に印象付けることになった、と。また、イスラエルの戦車でアッバスにガザ地区の支配権を与えることは、その正当性を損なうだけでしょう。

イスラエルの元防衛大臣Natan Sharanskyは、ガザ空爆の批判に反論しています。200161日のテル・アビブにおけるディスコへの自爆テロ攻撃でも、若者21名が死亡したことに対して、イスラエル政府は選択肢を検討しました。

このまま軍事力を抑制すれば、国際的な非難はテロリストに向けられる。そこで、イスラエル軍はピン・ポイントの報復と捜査、逮捕だけに限った。しかし、テロはますます激しくなって、ついに20023月、ひと月で130人以上の犠牲者を出すようになった。前年には抑制した防衛案を採用し、侵攻したが、その結果、恐れていたような非難を浴びた。アメリカのパウエル国務長官も、即時の攻撃停止を求めた。世界のメディアは、「ジェニン虐殺」のような、間違った反イスラエルのキャンペーンを行った。

Natan Sharanskyは、当時の作戦を称賛します。侵攻作戦の結果、イスラエルへのテロ攻撃は激減したし、他方、パレスチナ人も再建に成功した。パレスチナ自治政府は武力に対する態度を変えて、アッバスが権力を握った、と。イスラエル経済と結びつくことで、ヨルダン川西岸は経済的な繁栄を得たのである。安全と繁栄の理由は、イスラエル政府がテロリストに対する攻撃においては「均衡」を無視し、外交によって成果を期待する姿勢を捨てたことだ。

「テロは癌であり、「均衡」ではなく、完全に除去するしかない。」

Foreign Affairs, January/February 2009

Beyond Iraq: A New U.S. Strategy for the Middle East

By Richard N. Haass and Martin Indyk

(コメント) アメリカのオバマ新政権が中東に対してどのような姿勢を示すのか、それは重要な転換点となるでしょう。

イラン政府をアメリカの受け入れ可能な形で国際秩序や世界市場に迎え入れること(北朝鮮の6カ国協議や非核化がモデルとなっています)、イスラエルとパレスチナとの和平交渉を再生すること(シリアやイランとの合意が必要です)、独立した二国家の共存が目標です。


The Guardian, Friday 9 January 2009

For all the wild apocalyptic punditry, recessions pass. This one will, too

Simon Jenkins

The Guardian, Friday 9 January 2009

Britain needs a state bank

John McFall

NYT January 11, 2009

Tax Cuts for Teachers

By THOMAS L. FRIEDMAN

The Guardian, Monday 12 January 2009

Immigrants: the perfect recession scapegoat

Aleksandra Lojek-Magdziarz

(コメント) 資本主義崩壊論から新規な景気対策、外国人・資本への攻撃まで、思想家・政治家たちは知恵を絞ります。非難する声もあるでしょうが、より優れたアイデアで対抗することです。


IHT Friday, January 9, 2009

The key is how to count the nukes

By Lance W. Lord

IHT Friday, January 9, 2009

Toward a nuclear-free world: a German view

By Helmut Schmidt, Richard von Weizsäcker, Egon Bahr and Hans-Dietrich Genscher

(コメント) キッシンジャーたちの核廃絶提案を受けて、二つの論説が載っています。核兵器の廃絶はどうすれば可能か? アメリカとロシアが中心となって各廃棄の国際メカニズムを作るなら、中国やインドも参加する、という見込みがあります。

では、核を保有していないドイツは、どう考えるか? シュミットらの論説を見てください。ドイツは、ロシアとの間でヨーロッパに向けられた中距離核を問題にし、NPTの核監視体制を重視し、また、弾道ミサイルの防衛に関しても合意を求めています。


NYT January 10, 2009

Obama’s Biggest Challenge

By BOB HERBERT

NYT January 11, 2009

Is Government Spending Too Easy an Answer?

By N. GREGORY MANKIW

The Times, January 12, 2009

We may want to borrow but will anyone lend?

William Rees-Mogg

NYT January 12, 2009

Ideas for Obama

By PAUL KRUGMAN

FT January 12 2009

Obama’s stimulus plan must include science

By David Gross and Eric Kandel

(コメント) アメリカではすでに1100万人以上が失業しています。200712月以来、260万人の雇用が失われた、ということです。新規雇用は150万人の増加が必要であったから、400万人分が不足した。BOB HERBERTは、変革を主張して当選したオバマが、臆病な指導者でないことを願います。

N. GREGORY MANKIWは、しかし、オバマの財政刺激策が経済にとって必要なものではない、と批判します。サマーズは甥だから、と厭味も書きながら、ポール・サミュエルソンの教科書、『経済学』(1948年の初版)を取り上げて、その基本原理を確かめて、疑問を示します。

乗数はそれほど大きくない(1.4程度)。それゆえ、民間投資ではなく、公共投資に向けると多くの無駄によって厚生水準を損なってしまう。しかも、減税の方が多くの所得を追加した、という研究を紹介します。無駄な公共投資などせずに、不況対策として減税せよ、というわけです。

しかし、William Rees-Moggの論説の方が優れていると思います。ケインズ主義の財政刺激策は、資金を調達しなければなりません。しかし、財政赤字が増大すれば、その国は(たいてい)海外からの資本流入に頼るわけです。その場合、財政赤字が多い国は融資条件が悪化します。短期的な金融危機の回避とは別に、長期的な景気刺激策として、財政赤字は良いことか? という問題が起きてきます。

PAUL KRUGMANは、法人や個人への減税などやめて、失業者への給付と医療費補助にもっと支出し、財政刺激策を即効性のある投資に限らず、もっと多年度にわたる大規模な投資にも及ぶべきだ、と主張します。

WP Sunday, January 11, 2009

We're Borrowing Like Mad. Can the U.S. Pay It Back?

By Greg Ip

(コメント) Greg Ipが、アメリカは返済できるのか? と問うのは当然です。アメリカ政府が破産するなんて考えられない、というのは答えになりません。ここにはアメリカの債務不履行とインフレに関する興味深い比較と考察が集約されています。

何よりも、アメリカ政府の債務は、今後、急増します。不況によって税収が減り、支出が増えます。さまざまな公的救済・支援が続きます。さらに、政府は事態が悪化すれば支出が急増するような保証を与え続けています。そうした債務額を合計すれば、公的債務のGDP比は、現在の41%から60%へ、さらにもっと増えるでしょう。

他方、アメリカはドル建で借金しており、ユーロ圏のように金融政策を超国家機関に制限されていません。債務負担が重すぎると思えば、それを中央銀行が貨幣化して、インフレによって軽減できるわけです。では、なぜインフレで消滅させないのか? ロシアやジンバブエの例を指摘して、Greg Ipは、政府がインフレを回避しようとする事情も紹介します。

返済するとなれば、重要なことは不況を終わって経済が成長を取り戻すことです。この点では、やはり、日本の例が指摘されています。日本は国内貯蓄があり、円建てで、高金利や資本逃避を心配しなくてよかった。他方、アメリカ政府はそうも行きません。もちろん、債務を負っているのが他国の中央銀行であるとか、ドルに代わる魅力的な資産がない、という有利な点もあります。

オバマに求められるのは、不況回避のためには巨額の財政赤字が続くことを覚悟し、その後、景気が回復すれば、成長を損なわないように増税する、という難しい決断です。

CSM January 13, 2009 edition A trade fix for Obama's stimulus

LAT January 13, 2009 Skeptical of Obama's stimulus plan Jonah Goldberg

NYT January 13, 2009 Where the Money Is By BOB HERBERT

NYT January 14, 2009 Banks in Need of Even More Bailout Money By EDMUND L. ANDREWS and ERIC DASH

FT January 14 2009 Citigroup must recruit a zombie-slayer By John Gapper

FT January 14 2009 America cannot spend its way to prosperity By David Walker

LAT January 15, 2009 A smarter stimulus

(コメント) 税金や政府債務を利用して支出する、すねわち、財政刺激策を決めるのは政治家たちであり、イデオロギーの戦いです。銀行の救済、失業者の救済、貧困層の救済、あるいは、不況の回避。あるいは、軍事支出? ・・・債務であれば、誰が貯蓄を提供するのか? 中国は減速し、ますます国内の不況対策に関心を向けるだろう。すると、アメリカ政府は増税するのか? どうやって? 消費に課税する? 金融取引に課税する?

アメリカ経済は、債務を返済するために、生産的な投資を行い、競争力を高める必要がある、と主張されます。財政政策の変化は、当然、通商政策や移民政策にも関係あるでしょう。

FT January 13 2009

Why Obama’s plan is still inadequate and incomplete

By Martin Wolf

(コメント) アメリカ経済が立ち直れば世界は救われるのか? そう簡単ではない、とMartin Wolfはオバマの方針を批判します。

問題は、オバマの政策スタッフが示す計画よりも、アメリカの財政赤字は増えるということです。この点で、日本の例が重視されています。リチャード・クーの研究を参照し、バブル破裂によって株式や土地の価値が失われ、それが銀行の融資を減らして、更に企業の倒産や失業を増やす、という過程で、日本政府は赤字支出を増やしました。アメリカも同じです。

日本は好調な世界経済に輸出を伸ばすことでショックを緩和しましたが、今のアメリカはそれができません。さらにアメリカは国内貯蓄が不足しているために、中国など、外国からの資本流入に頼っています。

Martin Wolfは、アメリカの貯蓄不足や社会保障に関わる構造的な赤字を加えて、長期に及ぶ赤字の継続を重視しています。貯蓄を増やす(消費を減らす)ことは、同時に、アメリカの対外赤字を減らすように求めます。また、日本のような経済停滞は避けねばなりません。すなわち、一挙に民間の債務(それは銀行の不良債権)を処理することです。

他方で、世界経済(貿易・投資)の流れも変わります。アジアは、特に中国と日本は、積極的な調整に取り組めるでしょうか? 日中の軍備拡大競争よりも、アジア改革推進競争を見たいです。

WP Thursday, January 15, 2009

Let the Bank Bailout Work

By Martin Neil Baily and Charles L. Schultze

FT January 15 2009

Do not squander America’s stimulus on tax cuts

By Joseph Stiglitz

Asia Times Online, Jan 16, 2009

Obama's stimulus plan - for China

By Hossein Askari and Noureddine Krichene

(コメント) 金融機関の救済や財政刺激策の内容が検討されています。

Joseph StiglitzN. GREGORY MANKIWの減税擁護論を批判しています。富裕層や企業への減税はやめて、失業した家族や、生産性を高める社会的なインフラ、教育などに投資するべきだ、と主張します。

Hossein Askari and Noureddine Kricheneは、ケインズ主義と称する積極的財政支出を批判します。オバマのような財政刺激策では、雇用が中国や日本で生まれるにすぎない。しかも財政赤字の増大は限界を超えると民間投資を妨げる。むしろ供給側の改善によって(製造業の)競争力を高め、国内で雇用を増やすべきだ。


NYT January 11, 2009 Striking the Brothels’ Bottom Line By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT January 15, 2009 Where Sweatshops Are a Dream By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) 売春宿や苦汗工場が貧しい子供たちにとっては重要な職場なのか? プノンペンのごみ山ツアー(もしくは、現代のダンテ新曲)にオバマ政権御一行様ご招待。貧しい国の労働市場においては、苦汗工場でさえ重要な雇用を得たことになる。彼らが工場を建てることに、苦汗工場であるという非難は好ましくない。


FT January 11 2009

In praise of an explicit number for inflation

By Frederic Mishkin

FT January 13 2009

Does monetary policy still work?

By Stephen Grenville

(コメント) 金融政策について、実質ゼロ金利になって、もはや出番はないのか? と感じられますが、Frederic Mishkinは、今こそインフレ目標を明示せよ、と主張します。それによって連銀の金融政策が長期的な信頼を得られるし、景気回復によってインフレが加速するという懸念も抑制できる、というのです。特に、日銀の量的緩和策が効果を示さなかった一つの理由として、インフレ目標を示していなかったからだ、と主張します。

Stephen Grenvilleは、ゼロ金利政策が金融政策の終わりである、という誤解を払拭します。金利は変更だけでなく、その水準が問題である。ゼロ金利はアクセルを付加まで踏み込んでいる状態であるから、ニュートラルではありえない、と。

問題は、マクロ的な意味では解決不能であり、銀行の不良債権や企業の投資意欲(あるいは債務処理や過剰生産力)がミクロ的に解決されねばならないのだ、と強調します。それは、ゼロ金利を生かして政府が財政出動することです。


Asia Times Online, January 11th, 2009 China’s global role after the Crash of 2008 By David Goldman

The Guardian, Tuesday 13 January 2009 China's authorities are running scared Simon Tisdall

Asia Times Online, Jan 14, 2009 A Chinese 'Marshall Plan' or business? By Wenran Jiang

The Times, January 14, 2009 A tidal wave of discontent threatens China Wei Jingsheng

(コメント) 米中関係が最も重要になる。アメリカの景気回復は中国からの投資・融資に拠るが、それは若い発展途上国が、老人の開発国に対して資本を移転するという、根本的な理由に拠るのです。ただし、この金融危機までは逆転していたのです。

他方、中国は国内の政府批判を弾圧し、また不況を緩和することに、全力を尽くすでしょう。不況だからこそ政府は、中国版「マーシャル・プラン」や、資源供給をめぐる「グレイト・ゲーム」を模索しています。

Asia Times Online, Jan 15, 2009

Energy security guides China on Gaza

By Antoaneta Bezlova

The Japan Times: Thursday, Jan. 15, 2009

China steps up global diplomacy

By FRANK CHING

(コメント) 中国政府は、製品輸出や資源輸入の海上輸送について安全を確保するために空母を建設し、石油資源を確保するために中東和平にも深く関与する姿勢を示すようです。ガザ危機は中国が国際舞台に登場する新しい機会となりました。旧植民地として関わってきた英仏や、イスラエルとの関係を重ねたアメリカに比べて、中国は有利な立場を取れるでしょう。


LAT January 12, 2009

Reach out to Cuba

By William M. LeoGrande and Peter Kornbluh

(コメント) 米中関係の正常化が台湾ロビーによって妨げられた時期を、冷戦が終わって、ソ連が崩壊して不要になったはずですが、現在も続くキューバに対する禁輸措置と比べています。キューバを封鎖する政策は、アメリカの利益を損なっています。オバマは早急にキューバとの関係を正常化し、貿易を促すべきでしょう。


IHT Monday, January 12, 2009

The chance for a new world order

By Henry A. Kissinger

FT January 13 2009

The Group of Two that could change the world

By Zbigniew Brzezinski

(コメント) Henry A. Kissingerは、経済的な統合と制度化が、金融危機と不況によって逆転の危険性を示したことから、政治的な地域ブロック化が進むことを考えます。それは、歴史的に繰り返されてきたことであり、経済統合の拡大が続くか、あるいは、現実の政治単位に向けて経済が分割されるか、世界は再び、重要な転機にあるわけです。Henry A. Kissingerは、現在の金融危機を克服するやり方、特に、米中協力の制度化を支持します。太平洋を越えた政治的な秩序を形成することで、世界は次の景気回復と長期の平和を得られるのです。もちろん、日本は、この米中協力体制の一部になるのです。

1978年、私はカーター大統領に命ぜられて、国交正常化の秘密交渉をするために北京へ向かった。その当時、北京には外国人が1500人しか住んでいなかった。その後、1100人の職員を擁するアメリカ大使館ができて、現在では、15万人の外国人が北京に暮らしている。米中関係の正常化によって、より良く、安全なものへ、世界は変わったのだ。」と、Zbigniew Brzezinskiも書いています。なぜなら、国交正常化は冷戦構造を変え、安全保障上の懸念を和らげて、ケ小平が改革に取り組む政治的余地を生みだしたから、と。

米中はどのような目標を共有するのか? 気候変動、国連平和維持軍、核兵器削減、G8を拡大し、経済危機脱出の政策協調を行う、とZbigniew Brzezinskiは考えます。全くその通りであり、こうした点で、ヨーロッパも日本も、アメリカの呼びかけに十分応えてこなかったことを後悔しなければならない時代が来るのかもしれません。

米中協力を確立するためには、個々の摩擦や衝突を超えて、包括的な、インフォーマルな関係を緊密にするべきです。双方の指導者たちが定期的に会合を開き、二国間関係だけでなく、世界情勢について意見交換します。破滅的な文明の衝突を懸念しなければならない時代であるからこそ、協力関係を深める必要は増します。

WSJ JANUARY 14, 2009

American Power Is on the Wane

By PAUL KENNEDY

LAT January 15, 2009

Leadership and Legitimacy

Asia Times Online, Jan 16, 2009

Capitalism at the crossroads

By Chan Akya

(コメント) PAUL KENNEDYは、a "declinist"と批判されても、アメリカ人があまりにも楽観的であることを心配します。彼が20年前に警告した「帝国の過剰拡大」が、いよいよアメリカの現実になったからです。

オバマ政権がはるかに困難な時代を経験すると考える理由は、経済予測が急激に悪化して、通貨を増発する極端な提案も出ていることです。また、急激に追加された財政支出が浪費され、十分な効果を発揮できないこと、財務省証券の買い手が海外にもいなくなることを心配します。アジア(中国やインド)に比べて、アメリカ経済は縮小し、相対的に衰退するのは確実であって、歴史を参考とするなら、フェリペ2世やルイ14世の時代がふさわしいのです。

たとえアメリカに、カリスマ性のある、知性に富んだ指導者が出ても、アメリカ経済がアイゼンハワーに時代に得ていた規模や地位は再現しないのです。悲観的にいえば、アメリカにできることはアジアの時代に転換する過程を、より破壊的でなく、不快さを抑制した過程にするだけです。楽観的にいえば、アメリカ自身がようやく国際的な「法の支配」を重視するわけです。


WP Tuesday, January 13, 2009 Short End of the Pipeline By Anne Applebaum

JoongAng Daily, 14 January 2009 Russian Gas Politics Yoo Chul-jong

FT January 15 2009 To secure its energy, Europe must end opacity By Diarmid O’Sullivan and Tom Mayne

(コメント) ロシアとウクライナの天然ガス、パイプライン問題について。それはアメリカではなく、ヨーロッパの問題です。しかしロシアは、次に、アジアや朝鮮半島にまでパイプラインを建設するでしょう。つまり、アジアの問題です。ヨーロッパであれ、アジアであれ、エネルギーの供給地が政治的にも健全で、開かれた、透明な市場を共有できるように、積極的な関与が求められます。


FT January 13 2009

Europe’s banks need a federal fix

By Howard Davies

(コメント) ヨーロッパの経済圏the European Economic Areaでは、ユーロ圏を超えて、金融システムがばらばらに管理されています。アイスランドの銀行は、イギリスの金融庁に関係なく、アイスランド当局が銀行として認めれば、イギリスの預金者からも預金を集めました。そして、預金保険の財源もその国に依存し、条件も国によってバラバラです。

そこで、他国に進出する場合は別の銀行として、その国の規制に従う。あるいは、EEA全体の金融規制を行う。しかし、イギリスから見れば、自分たちの優れた金融規制をEEAの劣った規制に代える、という不満があります。あるいは、EEAの金融関係当局がインフォーマルな形で情報を交換・共有する関係を築く、という提案をしています。


The Japan Times: Wednesday, Jan. 14, 2009

Chance for East Asian security cooperation

By BRIAN P. KLEIN

FEER January 2009

Japan’s Mistake at the NSG

by Kono Taro

Jan. 14 (Bloomberg)

Warren Buffett Is Sage of Tokyo as Well as Omaha

William Pesek

Asia Times Online, Jan 15, 2009

Japan: The price of normalcy

By John Feffer

(コメント) BRIAN P. KLEINは、ソマリア沖の海上保安活動に米中日が参加することは、これまでなかなか進まなかったアジアの地域安全保障を制度化する重要な契機になる、と主張しています。あるいは、日本の参加は遅れ、ますます孤立した国であるというイメージを与えるか?

Kono Taroは、アメリカとインドの核協力を批判します。NPT,NSG,CTBTといった核兵器の拡散を抑制して、その廃止を目指すための国際的枠組みを否定する合意であったからです。日本政府が核廃絶の決議を求めるなら、それを実現する一貫した努力が必要です。

William Pesek は日本企業の透明性やガバナンスについて、John Fefferの論説は、やや冷笑的ですが、日本の政治家たちが不戦論・平和主義からの離脱を模索していることを考えます。


FT January 14 2009

The Fund could tame unfair competitive devaluation

By Jessica Einhorn

IHT Thursday, January 15, 2009

Shortchanging the IMF

Philip Bowring

(コメント) 危機は長期的・構造的な問題を解決するチャンスである、とJessica Einhornは指摘します。米中間で見られるように、世界経済な不均衡を重ねてきました。問題は、IMFが国際収支不均衡を非対称的に扱っていることです。すなわち、赤字国には緊急融資と、その条件に政策調整を求めます。他方、黒字国は容認されています。そうではなく、一定期間を超えて黒字を蓄積する国が、外国為替市場に介入して不当な国際競争力を得ているとIMFが判断したなら、その国に対してWTOが追加の関税を求めることを加盟諸国に認める、という制裁措置を取るのです。

こうした強い政治的権限は、ガバナンスの改善を必要とします。IMFの分担金を増やして投票権の割合を再編し、IMF・世界銀行の総裁指名を独占する慣習を改める、などの決断がともなうべきでしょう。

Philip Bowringは、IMFの資金不足とアジア諸国の外貨準備を比べて、アジア地域の金融安定化協力が、他の地域を無視して行われた場合、IMFや世界の金融システムを損なう、と警告します。これに対して、たとえば、IMFはSDRsを発行しなければならないでしょう。また、赤字国の債券を国際市場で売却するのを助けます。


FT January 15 2009

Things fall apart

By John Murray Brown

(コメント) ウェッジウッドやデルがアイルランドから撤退し、政府はアイルランドで3番目に大きな銀行を国有化しました。

高失業率、高課税に苦しんだ1980年代の経済に戻ったようなアイルランドの惨状です。当時の税率を引き下げ、ユーロ加盟を契機に、アイルランドは飛躍してきました。なぜにわかに暗転したのか? 何か有効な対策はないのか?

EU向けの投資先として、アイルランドの評価は高く、雇用の多くをもたらしました。しかし、史上空前の低金利とユーロ高を背景に、人々は債務に頼って消費を増やし、経済活動はますます住宅建設と不動産売買に偏っていたようです。財政状態も銀行も非常に健全と思われていましたが、景気が悪化して不動産価格が低下すると、住宅建設は終わり、雇用は減り、債務は不履行になったのです。財政も銀行も急速にその状態が悪化し、救済融資が行われています。

ルクセンブルグを除いてEU加盟27カ国中の第2位であった一人当たりGDPも、今では賃金上昇による国際競争力の低下、大量失業として現れました。財政赤字は格付けも悪化させ、債務負担を増します。ユーロによって為替レートの変更が不可能になっているため、賃金水準を絶対的に下げなければなりません。政府は賃金凍結や公務員の賃金カットを主張し、激しい社会・政治対立を招いています。

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The Economist, January 3rd 2008

Gaza: the rights and wrongs

Gaza and Hamas: What can we do?

Fifty years of Castro regime: Time for a (long overdue) change

The Cuban revolution at 50

The oceans: A sea of troubles

Troubled waters: A special report on the sea

The euro at ten: Testing times

The euro at ten: Demonstrably durable

Fixing finance: A slice of Danish

Japanese immigration: Don’t bring me your huddled masses

Lexington: Huntington’s clash

Russia: Uncle Volodya’s flagging Christmas spirit

(コメント) ユーロが誕生して10年目。キューバ革命が成功して50年目。ユーロは最初の本格的な不況を経験し、金利や為替レートが共有された各国の模索が試されています。ユーロに逃げ込む、あるいは、ユーロを離脱する、という選択肢を安易に唱える政治家は反省しなければなりません。キューバ革命は、その本質についての解釈とは別に、オバマ政権との和解が期待されます。

優れた技術と人口増加は、海洋資源や海の変質を加速している、と警戒する特集記事に驚くことが多かったです。その最後に、EU規制の混乱に対比して、アイスランドの漁獲割当と譲渡のシステムが紹介されます。海の所有制と管理が支持されています。

日本における移民論争、亡くなったハンチントンの優れた役割、ロシアの経済悪化とプーチンの権力に対する執着が、同じ世界の異なった局面を感じさせます。