IPEの果樹園2009

今週のReview

1/12-1/17

IPEの風

*****************************

世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

*****************************

******* 感嘆キー・ワード **********************

米中協力体制、 ガザ戦争、 ロシアのプーチン救済、 財政刺激策、 国際金融制度の改革1,、 アイルランド、 ドルに代わるもの、 近隣窮乏化大恐慌へ、 中国の失業対策

******************************

ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


The Japan Times: Thursday, Jan. 1, 2009

Growing challenges to Asian stability

By BRAHMA CHELLANEY

(コメント) 中国の台頭について私たちが既に感じていながら、はっきりとは語らない現実について、インドの研究者BRAHMA CHELLANEYは明瞭に語っています。

アメリカはアジアのパワー・バランスが変化することに対応して、中国をもっと重視した新しい外交政策を模索するだろう、と。二つの朝鮮、二つの中国、二つのベトナム、インドの分裂、などが支配的であった冷戦構造が、アジアでも、ついに消滅するからです。

北朝鮮やミャンマー、パキスタン、イランの問題を解決するうえで、中国との協力が不可欠です。しかも、アメリカの経済運営はますます中国からの資本流入に依存するでしょう。世界の工業力はアジアに移転し、世界の貯蓄もアジアからアメリカに流れています。かつてミュルダールが描いた、貧しく、人口圧力に支配された、資源の乏しいアジア、という特徴は消えて、世界経済のエンジンになりました。

しかし、アジア諸国には不安が高まり、新しい超国家的問題群も生じています。境界線の確定、軍事的な脅威の抑制、ナショナリズムや宗教的な原理主義のチェックは、まだまだ不十分です。貿易、投資、観光に限らず、テロや犯罪の情報収集・取り締まりなど、相互依存を深めたアジア地域の協力がもっと必要です。

中国の台頭は、19世紀後半に日本が非西洋国家として世界秩序に参加するときの諸問題と似ています。それはまた、中国、インド、ロシアを合わせたよりも大きな経済規模を持つ日本が、第二次大戦後の平和憲法や日米安保に依存した姿勢を転換する契機にもなりそうです。インドも、ヒマラヤを超えて及ぶ中国からの影響力や、インド洋に展開される中国海軍、沿岸への中国の関心に対して、警戒感を強めています。

アジア太平洋に関するアメリカの基本姿勢は、勢力均衡の維持、でした。冷戦下で日本と韓国を支持し、軍事基地を得てきました。その後、中国との国交を回復してソ連に対峙しました。現在、アメリカは中国の台頭を受け入れていますが、東アジアで中国が日本やインドと対決することを望みません。たとえば、日中が海底油田開発で対立し、軍事的衝突に発展するような、領土問題で日本の側に安全保障を約束するような事態を、アメリカ政府は避けたいわけです。

その姿勢は、さらに中国がアメリカの銀行として重要になることで影響を受けるでしょう。オバマ政権の財政刺激策が成功するかどうかは、中国がアメリカの金融市場に投資し続ける(そして外交的にも協力する)ことに大きく依存しています。

しかし、同時に、中国以外の国(特に日本と産油諸国)もアメリカへの資本流入にとって重要であり、中国だけが一方的な決定を押し付けるわけではありません。もし日本や産油諸国が投資を減らせば(また、ドル建資産を売れば)、ドル安は中国の外貨準備を大きく損ないます。そうであれば、いよいよアジアも、ヨーロッパのような地域協力を制度化する条件に至るわけです。

ただしBRAHMA CHELLANEYは、この点で、東アジアとヨーロッパとの違いを指摘し、警告しています。すなわち、ヨーロッパに比べて、1.アジアはパワーの不均衡が大きい、2.ドイツはパワーを支配関係に利用しなかったが、中国はそうではない、3.日本を除いて、発展段階が低い、4.社会的にも経済的にも、大きな相違がある、5.民主主義体制が支配的でなく、共通の価値や規範を示せない、と指摘します。

また中国も「バランス・オブ・パワー」を重視していますが、それはアメリカと違って、アジアの秩序を組み換えるためです。すでに、米中友好関係を重視する姿勢は、チベットの反政府デモをブッシュ政府に容認させました。さらに米中協力体制が深まるなら、在韓米軍の撤収に加えて、日本やインドにおいても、アメリカの姿勢は変化する可能性が高いわけです。日本政府はこのことに不安を感じており、米軍に安全保障を頼る現在の方針を見直すかもしれません。

アメリカにとっては、世界政治経済にますます重要な役割を担いながら、不安定さを増す東アジアの安全保障・国際秩序を安定化するため、アジアでの軍事的な役割を(米中間でも、旧来の同盟諸国との関係でも)強化することが重要でしょう。他方、日本とインドが協力関係を深めたように、各国の戦略にも変化が生じるわけです。

China Daily, 2009-01-01

China-US relations on path towards greater progress

(Xinhua)

WSJ JANUARY 6, 2009

China at Sea

By HUGO RESTALL

(コメント) 相互の利益だけでなく、世界平和と発展のために、米中協力体制の制度化を称賛する論説です。WSJは、中国が空母を持つことは、アジアのバランス・オブ・パワーを大きく変質させる、と理解し、「マラッカ海峡から台湾までが、事実上、中国の湖になる」と指摘します。

最大の問題は日本の対応であり、軍事拡大競争が始まれば、アジアは最悪のケースに向かいます。当然、アメリカの存在と中国の主張に、アジア各国がますます注意するわけです。

IHT Tuesday, January 6, 2009

Marriage of convenience

By David Shambaugh

(コメント) David Shambaughは、米中関係の深化と制度的な協力、中国の国際的な役割を重視し、こうした関係を30年かけて構築したアメリカの姿勢を称賛しています。

貿易額は1979年の25億ドルから2008年には4000億ドルになった。アメリカは中国の最大の貿易相手国である。アメリカのFortune誌による上位500社はほとんどすべてが中国と取引しており、中国企業の5万社以上に、合計で500億ドル以上の投資をしている。ウォルマートだけでも、それを国家として比べるなら、中国の第7番目の貿易相手である。

中国はアメリカの最大の債権国(9月までで5850億ドル)である。30年前にはアメリカで学ぶ中国人留学生はいなかった。しかし今では、アメリカの大学に67000人が学び、中国の大学にアメリカからの留学生が11000人学ぶ。

中国の存在は次第に世界的に高まり、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アメリカ、中東で、アメリカの方針と対立することがある。中国は「ソフト・パワー」も発揮するだろう。台湾をめぐっては何度も軍事衝突の危険があった。しかし、これほど深く関与した二国が、世界の平和や繁栄に積極的な貢献もできるし、他方、破壊することもできることを自覚するなら、「成熟した結婚生活」に入ったというべきだ。すなわち、米中が離婚する、という選択肢はないのだ。

Jan. 7 (Bloomberg)

Zero Growth in China Is 2009 Black Swan Event

William Pesek

NYT January 8, 2009

China Losing Taste for Debt From U.S.

By KEITH BRADSHER

(コメント) 輸出不振から中国が減速し、成長率は5%を切って、政治不安に向かうかもしれない、とWilliam Pesekは指摘します。中国の成長モデルは容易に転換できません。

また、中国からのアメリカ投資も持続しない可能性があります。アメリカの景気の悪化や株価下落は、当然、中国からの投資も減らすでしょう。また、中国の貿易黒字は減少し、中国向けの直接投資も減って不均衡は抑えられ、中国の外為市場への介入、対米投資を減らすでしょう。


The futility of force Robert Fox The Guardian, Friday 2 January 2009

SPIEGEL ONLINE 01/02/2009 INTERVIEW WITH ISRAELI AUTHOR MEIR SHALEV: 'Even the Left Was in Favor of Striking Hamas'

イスラエルの攻撃を「説明する」ことは、さまざまな観点でなされています。これは「正しい戦争」なのか? 軍事力だけで、長期的に見て、達成できる目標があるか? 軍事力の行使を強く支持する意見もあります。Rupert Smith, The Utility of Forceは、人民の中を泳ぐ魚のようなゲリラ戦(毛沢東)を回避し、現代の高度な軍事技術による、短時間で成果を上げる戦争を支持します。

イスラエルのリブニ外相は、戦争の目的について、「安全保障の環境を変えるため」と語りました。またBBCのように、レバノン侵攻の失敗を取り戻し、イスラエルの軍事的な抑止力を回復する、と解釈するのは正しいか? ハマスの目的や兵力を殺いで、住民から切り離すことが目的であれば、イスラエルはパレスチナ自治政府のアッバスをもっと強く支援するべきでした。

インタビューに応えて、イスラエルの作家Meir Shalevは、もっと早くハマスのミサイル発射を阻止するべきだった、と考えます。そして交渉を通じて、政治的な合意に至るのです。イスラエルが間違っていたのは、交渉相手を選べると考えたことだ。

イスラエルの反戦運動も沈黙している。ハマスの勢力が後退することは好ましい、と思うから。エジプトもすでに国内のイスラム過激派に苦しめられているから、封鎖に協力し、ハマスの強硬派がエジプトに流入することを許さない。

Moral Clarity in Gaza By Charles Krauthammer WP Friday, January 2, 2009

Defining Victory for Israel By Michael Gerson WP Friday, January 2, 2009

Charles Krauthammerは考えます。ガザから撤退したとき、シャロンはただちに、ユダヤ人を含む、すべての住民を守る非暴力的な体制を樹立するべきだったが、これに失敗した。その結果、ハマスの浸透とイスラエルに対する無差別なミサイル攻撃を許してしまった。

ハマスが6カ月間の停戦後、延長することを拒んだとき、イスラエルは、ガザ地区の住民と、平和的な秩序を共有する機会を得た。イスラエル軍は、ガザ地区の住民に携帯電話のメッセージを送った、と言うのです。テロリストが武器を隠している住宅から立ち退くように、と。そして精密なハイテク兵器で軍事目標を攻撃している、と。 “no rockets, no mortar fire, no kidnapping, no acts of war” とCharles Krauthammerは戦争目的を描きます。

死傷者の数から、攻撃は「均衡を欠いている」という批判に対して、Michael Gersonは、攻撃の目標は報復や「均衡」ではなく、ハマスのミサイル攻撃能力を奪うことだ、と主張します。また、アメリカにとっても、この戦争は「テロリズムに対する勝利」でなければなりません。

A brewing storm By Cathy Young IHT Friday, January 2, 2009

NYT January 3, 2009 Is the Real Target Hamas Rule? By ETHAN BRONNER

LAT January 4, 2009 In Gaza, the real enemy is Iran By Yossi Klein Halevi and Michael B. Oren

戦争の目的は何か? それは達成可能なものか? その目的を軍事力ではない他の手段では達成できなかったのか?

ハマスの支配体制を排除することか? あるいは、原理主義を支援するイランの影響力を排除することか? 死亡したのはハマスの兵士だけか?

Obama is losing a battle he doesn't know he's in Simon Tisdall The Guardian, Sunday 4 January 2009

As its troops march in, again Israel looks to its military past Peter Beaumont The Observer, Sunday 4 January 2009

Countering Iran in Gaza and Beyond By Jim Hoagland WP Sunday, January 4, 2009

For Obama, a Tough Page to Turn By David Ignatius WP Sunday, January 4, 2009

As the Troops Enter, We Fear the Worst By Eyad El-Sarraj WP Sunday, January 4, 2009

FT January 4 2009 Israel is on firmer ground against Hamas By Lawrence Freedman

FT January 4 2009 A dangerous gamble in Gaza

Lawrence Freedmanは、2006年のレバノンに対する攻撃で、ヒズボラを排除しようとした作戦と詳しく比較しています。イスラエルによる攻撃は、ガザ地区の住民にハマスなど強硬派への支持を広めるだけだ、と批判されています。しかしLawrence Freedmanは、住民の疲弊とハマスの弱体化により、イスラエルに勝利のチャンスがある、と考えます。すなわち、イスラエルは軍事的に勝利することで早期に撤退し、撤退が政治的にも勝利であることを示すために、パレスチナ人の土地に平和と繁栄をもたらすように協力するのです。

イスラエルが地上軍を投入したことは大きなギャンブルである、とFTは憂慮します。特に、戦死者や民間人の死傷者が急増していることは問題です。今すぐ必要なことは、国際的な監視の下で停戦を合意し、実行することです。そして戦争ではなく選挙によって、新しい代表と和平交渉の方針を選ぶことです。

WSJ JANUARY 4, 2009 Israel's Tragic Gaza Dilemma By MAX BOOT

BBC 2009/01/05 Obama's strategic silence on Gaza By Richard Lister

The Three-State Option By John R. Bolton WP Monday, January 5, 2009

NYT January 5, 2009 Why Israel Fights By WILLIAM KRISTOL

FT January 5 2009 Israel’s self-defeating Gaza offensive By Gideon Rachman

BG January 5, 2009 Enlightenment in Gaza By James Carroll

オバマはソフト・パワーを今すぐ行使しなければなりません。迅速、かつ、効果的に、暴力を止めることです。しかし、アメリカ憲法では、ブッシュがアメリカの外交政策を決める、と定めています。もし就任演説までオバマが沈黙し、就任演説でも内政に関する方針だけが述べられるとすれば、その間に中東の政治情勢は大きく変化してしまいます。

Begetting violence By Rami G. Khouri IHT Monday, January 5, 2009

After Gaza, how Obama can pick up the pieces By George Moffett CSM January 6, 2009 edition

LAT January 6, 2009 Broker a Gaza cease-fire now

LAT January 6, 2009 Hamas speaks By Mousa Abu Marzook

Obama fiddles while Gaza burns Ray LeMoine The Guardian, Tuesday 6 January 2009

Israel needs an international bail-out Simon Tisdall The Guardian, Tuesday 6 January 2009

Gazans need to choose peace over extremism Shai Hermesh The Guardian, Tuesday 6 January 2009

言うまでもなく、イスラエルが初期の戦闘で勝利することは間違いありません。しかし、撤退や、勝利の状態を長期的に確保することは難しいでしょう。ガザ地区の国際管理体制と、住民たちから原理主義を分離すること、が求められます。

A Conflict Hamas Caused By Richard Cohen WP Tuesday, January 6, 2009

It's a War Process By Anne Applebaum WP Tuesday, January 6, 2009

NYT January 6, 2009 The Confidence War By DAVID BROOKS

Israel, Gaza and the quest for a broader regional peace IHT Tuesday, January 6, 2009

イスラエルの軍事攻撃は、ますますハマスへの支持を強め、反対派の弱体化をもたらし、アラブ諸国内でも、穏健派が政治的支持を失うでしょう。そして中東地域の政治不安が深まります。それゆえ、イスラエルはこの攻撃をできだけ短期に終了し、和平交渉を支持し、今回の攻撃を限定することを支持するヨーロッパやアラブ穏健派も含めて、地域の安全保障協定に今後の管理をゆだねるべきです。そして、ハマスのロケットではなく、オバマが支援する和平交渉を通じて、ヨルダン川西岸やガザ地区のパレスチナ人が悲惨な状態から抜け出せることを示すことです。

LAT January 7, 2009 Middle East 'proportionality' By Etgar Keret

Looking past Gaza Simon Tisdall The Guardian, Wednesday 7 January 2009

Gaza after a Hamas rout will be an even greater threat to Israel Jonathan Freedland The Guardian, Wednesday 7 January 2009

We must stop arming Israel Nick Clegg The Guardian, Wednesday 7 January 2009

軍事力でテロ組織を掃討することはできません。もし国際監視が有効なら、イスラエルに圧倒的な軍事的優位を与えることがまちがっている、と主張できます。主要国はイスラエルへの武器輸出を禁止することです。ハマスのミサイル攻撃を非難するのと同様に、イスラエルの軍事力を批判しなければなりません。

NYT January 7, 2009 The Mideast Ground Zero By THOMAS L. FRIEDMAN

The Japan Times: Wednesday, Jan. 7, 2009 Israel's response to Hamas' zero-sum game By FANIA OZ-SALZBERGER

The Times, January 8, 2009 Victory through air attack? It's pie in the sky Correlli Barnett

LAT January 8, 2009 The Gaza blame game Rosa Brooks

Of rage and indifference Michele Hanson The Guardian, Thursday 8 January 2009

Running out of proxies Simon Tisdall The Guardian, Thursday 8 January 2009

An Unnecessary War By Jimmy Carter WP Thursday, January 8, 2009

ジミー・カーター元大統領は、ハマスとイスラエル政府との交渉を仲介していました。そして、イスラエルによるガザ地区への空爆や地上軍の侵攻は容易に避けられたはずだ、と訴えます。イスラエル政府が停戦を拒んだ、と。通常は、ハマスが停戦の延長を拒んで空爆が始まった、と報道されています。

カーターは、イスラエルの町に向けられたハマスのミサイル攻撃を、間違いなくテロだ、と断言します。政府はこれを阻止しなければならない、と。しかし、イスラエル政府は外交的にも軍事的にも、ミサイルを止めることができませんでした。その後、エジプトの情報責任者が仲介して、ハマスとの話し合いが行われます。カーターは、ハマスの指導者が次第に軟化し、交渉に応じた経過を記しています。

双方の軍事行動を停止して、ミサイルの発射が止まったとき、6カ月の停戦と人道的援助物資の輸送が再開されました。しかし、ハマスを交渉相手として認めないイスラエル政府は、この事実を受け入れませんでした。援助物資の輸送は20%しか回復せず、その後、イスラエルがエジプト側へのトンネルを破壊したとき、この不安定な休戦は終わりました。

カーターはガザ地区の封鎖を解除することを目指しましたが、イスラエル政府は、ハマスがミサイルの発射を停止して48時間たてば、輸送を15%の水準まで回復させると主張し、これがハマス側の怒りを買いました。停戦は延長されず、空爆を始めて12日間で、イスラエルは約1000か所の地点を砲撃もしくは爆破しました。その間、イスラエル政府はアメリカの完全な支持を得て停戦を拒み続けました。モスク、インターナショナル・スクール、民間人の住宅、あるいは公共施設を破壊しました。密集した住宅地での市民生活を維持する水道、電気、下水施設が壊されました。

国際社会が監視する停戦をただちに合意し、恒久的な和平に向けた交渉を始めるべきだ、とカーターは紛争当事者に求めています。

NYT January 8, 2009 The Gaza Boomerang By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT January 8, 2009 What You Don’t Know About Gaza By RASHID KHALIDI

RASHID KHALIDIは、ガザ地区の状態を短く説明をしています。そして、この戦争は、「イスラエルの抑止力を回復するために」という理由で、ミサイルを発射したことに無関係な多くのガザ住民に対して行われている、と強調します。イスラエルの軍事行動は、「パレスチナ人に敗北したことを思い知らせるために」行われている、というのが真実に近い。

NYT January 8, 2009 Fighting to Preserve a Myth By GIDEON LICHFIELD

FT January 8 2009 The peace has been lost to Israel’s military victories By Philip Stephens

BG January 8, 2009 The lessons of Gaza By Andrew J. Bacevich

In defense of Israel's 'disproportionate' response in Gaza By Allan Richarz CSM January 9, 2009 edition

勝利の後で、イスラエルが軍事力によって現実を変えることはできない、という事実だけが残るでしょう。イスラエルを脅かしているのは、単なる手製のロケット弾ではない。ヒズボラは再強化され、イランは、将来、核武装するかもしれません。パレスチナ人が独立国家を持たなければ、イスラエルはユダヤ国家として維持できないでしょう。また、占領地を返還しなければ、シリアは和平に合意しないのです。


WP Friday, January 2, 2009

Mr. Putin's Bailout

BG January 2, 2009

A brewing storm in Russia

By Cathy Young

WP Saturday, January 3, 2009

For Russia, A Dark Horizon

By Masha Lipman

(コメント) ロシアも金融危機の影響を受け、不況に対策を打っている。しかし欧米諸国と異なるのは、一人の人間を助けるために救済策が作られることだ。すなわち、プーチン救済である。銀行は金融的な意味より、政治的に抑圧されている。

プーチンの操り人形であるメドヴェージェフは、憲法を改正し、大統領の任期を4年から6年に延長しました。そして、この石油価格下落と不況の苦しみ、通貨価値の暴落と資本逃避を国民が理解する前に、メドヴェージェフは辞任し、プーチンが大統領に復帰するのではないか、と予想されています。

さらにメドヴェージェフは、テロと国家反逆罪に法廷を廃止しました。プーチンが好む秘密警察を許すものです。プーチンは繰り返し、国内のメディアに対して、不況について議論することを禁止しています。株価は70%下落し、8月以来、1700億ドルの資本が流出し、石油収入の減少で予算も赤字になりました。しかし、プーチンを救済する政策はあっても、石油と天然ガスの輸出に依存した経済を改革する政策はありません。

極東の町で初めての大規模な抗議デモがあったことを伝えています。デモに参加したのは、国内企業を保護するために日本製の自動車に関税を課す政策に反対した人々です。

FT January 6, 2009

The battle of the oligarchs behind the gas dispute

By Jérôme Guillet and John Evans

FT January 6, 2009

Settle the Ukraine gas dispute

The Guardian, Wednesday 7 January 2009

A capitalist revolution

Mark Almond

The Guardian, Thursday 8 January 2009

Ukraine's deep freeze

Paul de Zardain

WP Thursday, January 8, 2009

Mr. Putin's Cold War

(コメント) ロシアがエネルギーを武器に使っている、ヨーロッパの安全保障が脅かされる、という議論を、Jérôme Guillet and John Evansは批判します。実際に起きているのは、双方の寡占体制が利益の分割をめぐって争ってきたことの繰り返しでしかない、と。

ロシアは資源を持っており、ウクライナはその輸送インフラを持っている。だから、どちらも相手を必要としているのです。少数の政治集団が騒がしい闘争を繰り返すだけです。ウクライナの重工業は市場価格でエネルギーを購入できず、交渉によって確保してきました。だから紛糾するのです。しかし、短期で合意に達するのは、長引けばロシアも輸出市場を失うからです。

Mark Almondは、ガスプロムが18世紀イギリスの資源外交やオイル・メジャーと同じ存在であることを認めています。すなわち、政治的にも経済的にも、重要なプレーヤーになるでしょう。

他方、アメリカ政府はヨーロッパがプーチンのロシアにエネルギー供給を依存する状態を抜け出すように求めます。


FT January 2 2009

Huntington’s misunderstood doctrine

By Christopher Caldwell

LAT January 5, 2009

Kennan, Huntington and the power of intellectuals

WP Monday, January 5, 2009

Prescient and Principled

Fareed Zakaria

(コメント) 急激な社会変化の中では、人々がアイデンティティの喪失に苦しみます。国際紛争の源泉について、経済やイデオロギーではなく、文明を重視したこと、また、メキシコからの移民流入によってアメリカ社会が分裂する、と警告したことで、ハンチントンは政府に強い影響を与えました。アイデアは、権力を握る人々の判断に影響し、現実を変えるわけです。


FT January 2 2009

Perils of ignoring festering conflicts

(コメント) 世界には、多くの紛争地帯があります。そこでは、西側の政策や軍事介入の結果として、無秩序が拡大し、政府を崩壊させ、テロ組織や原理主義を広めてしまった。このことについて、開発諸国政府には反省が必要です。パレスチナ、パキスタン、ソマリア、など。


The Guardian, Saturday 3 January 2009

I wasn't right. But that's OK

Bill Emmott

The Japan Times: Saturday, Jan. 3, 2009

Why does Germany's chancellor hesitate?

By HANS-WERNER SINN

NYT January 4, 2009

Recession, Taxes and Mr. Obama

FT January 4 2009

Fatal flaw weakens German rescue package

By Hans-Werner Sinn

(コメント) なぜ不況が来るのを予想しなかったのか?  Bill Emmottは、日本が発達した資本主義国で例のないバブル破壊を経験したが、その後の不況を回避したことを重視しすぎた、と反省します。それはケインズ主義的な財政刺激策と、世界経済の好調さに支えられた輸出によるものでした。しかし、今は世界中が不況です。

もう一つの理由は、心理です。消費者や企業、投資家、彼らの心理変化を軽視したことは間違いだった。確かに主要諸国が一斉に財政刺激策に乗り出したが、景気が回復するかどうかは心理に依存しています。

その他、アメリカとドイツの財政政策に関する考察です。

The Guardian, Monday 5 January 2009

Road to hell

Dean Baker

WP Monday, January 5, 2009

The Limits Of Pump Priming

By Robert J. Samuelson

NYT January 5, 2009

Fighting Off Depression

By PAUL KRUGMAN

(コメント) Dean Bakerは、財政刺激策としてハイウェーの建設を増やすことに反対します。それは自動車の通勤を便利にして住宅地を拡大し、エネルギーの消費量、二酸化炭素の排出量を増やしてしまうでしょう。

Robert J. Samuelsonも、財政刺激策は万能薬ではない、と注意します。せいぜい、点火薬、あるいは、ポンプで水をくみ出すときの呼び水でしかない。あまりの莫大な公共投資は非効率で、それ自体が破壊的になる。輸出指向の成長回復が最も期待できるのだが、アメリカ以外のすべての国がアメリカ市場に期待している。

PAUL KRUGMANは、マネタリストや合理的期待形成は間違いであった、と指摘します。金融政策が効果を失い、財政刺激策が重要となる局面が現実に生じたのです。問題は、議会がそれを承認するのに時間を要することです。財政刺激策が減税よりも優れていることを証明しろ、と求められます。こうした時間を要しているうちに、最悪の場合、大恐慌が再現するかもしれません。

FT January 5 2009

Can the US economy afford a Keynesian stimulus?

Willem Buiter

BG January 5, 2009

Who should get the federal stimulus funds

By Edward L. Glaeser

YaleGlobal, 6 January 2009

US and China Must Tame Imbalances Together

Michael Pettis

BBC January 7 2009

In the long run we are all dependent on Keynes

By Peter Clarke

(コメント) Willem Buiterは、大規模な財政刺激策に反対します。「ケインズ主義の誤謬」と呼ばれている問題を考察します。Edward L. Glaeserは、その使い方を考えます。

そして、本当に世界を不況から抜け出させるためには、Michael Pettisによると、アメリカと中国が協力して過剰消費と過剰生産の調整を実行しなければなりません。歴史的に見て、世界の流動性供給が増大したのは、1.金融革新が起きたとき、2.世界的な不均衡が融資されたとき、です。今回も、アメリカの金融革新と、米中の不均衡拡大が融資されてきました。

その金融膨張が逆転して、アメリカの過剰消費は急速に調整されていますが、中国の過剰生産力は容易に解消されません。巨大な価格下落と失業増大への圧力が世界に輸出されるより、アメリカが財政刺激策で需要を維持して、世界を不況から救う方が良いでしょう。中国も、不況を回避するため、それに協力するはずです。しかし、中国政府がそのリスクを十分に理解していないかもしれない・・・

The Guardian, Thursday 8 January 2009

Drink-driving on the US's road to recovery

Joseph Stiglitz

(コメント) 金融危機はアメリカの中央銀行が酔っぱらいの運転手であったから起きた。流動性を過剰に供給し、規制を緩和し、危機が起きると、衝突事故みたいに救済融資を繰り返している。そして自分たちが起こした根本的な問題を見ようとしない。こうした運転手に頼る限り、私たちの不安は増すだろう。

アメリカの放蕩は非難されてきたが、世界はアメリカに感謝しなければならない。それなしには世界の需要水準は維持できなかった。今や金融でも財政でも保守的な原則が戻ってきて、世界不況の代価を支払っている。その背景は、1.発展途上諸国がIMF融資を嫌って、外貨準備を蓄積した。2.金融が豊かな者に集まり、世界の不平等を強めてきた。3.石油への需要がその供給能力を超えて拡大し続けた。

こうして生じた過剰な流動性は高い収益を求めてレバレッジを高め、リスクの高い投資に向かった。他方、危機によって、アメリカの消費者が正気に戻るなら、政府が財政支出で補っても、世界経済は縮小するだろう。

Joseph Stiglitzは、長期的・根本的な対応として、1.国内の再分配や国際援助を通じて、世界の不平等を緩和する。2.温暖化防止のために、世界は輸送システムなどへ大規模な投資を行う。3.貧しい国が富裕な国に投資して、過度の金融緩和を招く現在のドルに依拠した国際金融システムを不要にする、世界準備システムを築く。バンコール、すなわち、SDRsの供給である。


NYT January 4, 2009

The Irish Economy’s Rise Was Steep, and the Fall Was Fast

By LANDON THOMAS, JR

(コメント) アイスランドは有名ですが、もっと健全な投資を通じて成長してきたはずのアイルランド経済も真っ先に危機に陥っています。住宅価格は50%下落し、株価も90%以上下落、失業率は10%に迫ります。

アイルランドの奇跡は20年以上前に始まった、と記事は紹介しています。政治家、経済学者、官僚など、the “Doheny & Nesbitt School of Economics”と呼ばれた人々です。税率を半減し、輸入税も劇的に下げて、外国投資を歓迎し、ヨーロッパでもっとも開かれた経済に変えました。

しかし、成長率は高まり、資本流入や移民(最初は出稼ぎ労働者の帰国、続いて東欧諸国からの移民)流入が増えた結果(すなわち住宅不足)、低金利を利用した住宅投資が経済規模に比して増えて行きます(ヨーロッパ平均の5%に対して、14%)。住宅バブルに対して課税を強化するべきだ、と政府に提言してきたが、聞き入れられなかった、と関係者は述べています。


LAT January 4, 2009

Wall Street follies

NYT January 4, 2009

The End of the Financial World as We Know It

By MICHAEL LEWIS and DAVID EINHORN

NYT January 4, 2009

How to Repair a Broken Financial World

By MICHAEL LEWIS and DAVID EINHORN

FT January 4 2009

Originative sin: the future of banking

By John Plender

(コメント) 世界の金融市場を支配したウォール街の金融機関とその監視体制・官僚制度が、今では投資家と諸外国の政府・金融機関に市場不信を広め、その根本的な改革は避けられません。しかし、誰が、どのように改革・規制すればよいのか? バブル処理に翻弄されてきた日本人も聞いてみたいでしょう。

MICHAEL LEWIS and DAVID EINHORNは、Joseph Stiglitzよりも実行可能な、改革のアイデアを示します。特に、公的資金を利用する姿勢を転換することです。金融機関を救済する(それは正しくスウェーデンが行った)だけでなく、金融危機で住宅や仕事を失う人を救済するために使うべきです。それは住宅保有者に返済のための政府融資を長期で受ける権利を与える、また、セーフティー・ネットを充実させる、ということです。

金融機関を破たんさせると他の経済的影響が大き過ぎるから、破たんさせずに処理することが必要です。不良資産を分離し、政府が管理して、市場が回復してから民間に売却し、損失を抑制した形で公的資金で処理する、と概ね合意されています。銀行経営者は責任を取って辞任します。記事は、バブルを放置した監視機関も解任・解体するべきだ、と述べています。

さらに、救済の決定は短期的な株価変動によって催促されてはなりません。格付け機関は公的な地位をはく奪するべきです。彼らはリスク評価に失敗しました。CDS(Credit-default swaps)は規制します。銀行の自己資本を新しく国際規制します。SECとウォール街との間で人間を共有しない。しかし、公的な使命に経験と知識に富むスタッフを利用します。

John Plenderは、金融革新がもたらす問題とメリットを示します。金融システムを守る規制はモラルハザードをもたらします。モラル・ハザードを防ぐためにも規制は強化されるでしょうが、規制を逃れるために工夫される金融革新こそ問題です。

FT January 5 2009 Central banks must be the debt watchdogs By Andrew Large

WP Tuesday, January 6, 2009 Our Stake in the Bailouts By Michael Brownrigg

FT January 6, 2009 Government money should have strings attached By Viral Acharya, David Backus, and Raghu Sundaram

BBC January 7 2009 Leaders must act together to solve the crisis By Kevin Rudd

The Japan Times: Wednesday, Jan. 7, 2009 Lessons of the credit crunch By HUGH CORTAZZI

The Guardian, Wednesday 7 January 2009 Has America lost its mojo? Kenneth Rogoff

The Times, January 8, 2009 Like tulips, wealth can wither and bloom again Ben Macintyre

(コメント) 多くの点で国際政治に仲介の役割を担える位置を占めるオーストラリアのKevin Rudd 首相は、財政刺激策の効果を高める国際協調を訴えています。

Ben Macintyreは、1636年にピークに達したチューリップ・マニアについて、紹介しています。

FT January 8 2009

The Bank must act to bring lenders together

By John Eatwell and David Pitt-Watson

(コメント) この論説によれば、不況は協調の失敗によるものだ、というのがケインズのもっとも肝要な考察でした。投資家は、ほかの投資がなく、一人で投資すれば失敗します。また政府は、一国だけで財政刺激策を取れば、国際収支が悪化します。それらでは協調を促す試みが成功しつつあるのです。

しかし、金融市場では、今も銀行が互いに融資を拒んでいます。イングランド銀行や政府は協調を促すことに失敗しています。アメリカのように、政府は銀行の株式の一部を購入するのが良い、と提案しています。


FT January 5 2009

There is only one alternative to the dollar

By David Hale

Asia Times Online, Jan 6, 2009

Gulf takes wrong currency path

By Chris Cook

(コメント) 国際金融システムを媒介する通貨・金融資産として、ドルに代わるものを探す必要があります。David Haleは、ユーロではなく、それが金であると主張します。

アメリカの金融危機によって下落したドルが、その後、危機が波及するにつれて「安全資産への逃避」の結果、ドル高に変わりました。今後も、オバマは積極的な財政出動を実行しますから、ヨーロッパや日本よりも先に不況を抜け出すでしょう。するとドル高が続きます。

しかし、他方で、1兆5000-7000億ドルという巨額の財政赤字は、連銀の流動性供給が課題に達している中で、インフレへの懸念を強めます。外国投資家が資本の流れを抑制すればアメリカ政府の債券価格が下落し、高金利をもたらすかもしれません。バーナンキは戦後の金利制限に言及しており、それがドル暴落をもたらすかもしれません。

その過程には中国や日本の為替介入が重要な役割を果たします。David Haleは、中国がドル資産の購入を減らす一方で、これまで介入を控えてきた日本が円高を抑える介入を始めてドルを買う、と考えます。そして、主要通貨が増価を嫌う中で、インフレによる債務免除を求めるのではないか、という投資家の懸念は、金の購入に向かうのです。

あるいは、地域通貨や商品通貨、電子通貨の可能性はどうでしょうか?  Chris Cookの論説は、湾岸協力会議GCC諸国(Bahrain, Kuwait, Oman, Qatar, Saudi Arabia and the United Arab Emirates)による電子決済通貨「ペトロ」に関する考察です。スイスがすでに行っている電子決済網を例に挙げて、石油によっても決済可能な子通貨「ペトロ」によって、GCCは資本市場と未来の産業を育成できる、と主張しています。


Jan. 5 (Bloomberg)

This Year Will Be Crazier Than 2008

William Pesek

(コメント) 2008年はアジア諸国にとってひどい年だったが、2009年には何が起きるか? William Pesekは辛辣な?空想を広げています。

FT January 6, 2009

Choices made in 2009 will shape the globe’s destiny

By Martin Wolf

(コメント) 2009年に何が起きるかは今後の数世代を決定する、とMartin Wolfは考えます。すなわち、不均衡に基づく成長は再現せず、均衡した成長パターンを見出すか、あるいは、世界市場の統合化が逆転するか、その選択が避けられない、と。

Carmen Reinhart and Kenneth Rogoffの論文を紹介して、Wolfはその規模を推測し、さらに、Wynne Godleyらの研究によって、アメリカ政府の財政刺激策を考えます。問題は、アメリカ経済が世界経済の需要を維持する最後の砦であり、その意味で、日本のバブル崩壊とは意味が異なることです。

もし、国内の完全雇用だけでなく、中国や世界の輸出圧力を吸収するだけの財政刺激策を行えないと、アメリカ国内に増大する失業者の不満は1930年代の「近隣窮乏化政策」、ドル安と保護主義、に戻るでしょう。それを回避するには、主要黒字国の政策担当者がこうしたメカニズムをよく理解して、アメリカの財政赤字を助けるしかないのです。


The Baltimore Examiner, 6 January 2009

The end of a gilded age

By Harold James

(コメント) Harold Jamesは、グローバリゼーションは各時期に革新を行う主要産業が交代してきた、と指摘します。金融危機の後も、規制を強化するのは間違いであり、金融革新を続けて経済を調整するように求めます。新技術が登場することで、かつての農業や自動車と同じように、銀行も機械化され、単なるシンボルになっていくでしょう。


FT January 8 2009

Obama and trade: an alarm sounds

By Jagdish Bhagwati

(コメント) ガザ空爆についてだけでなく、自由貿易体制の擁護についても沈黙するオバマ次期大統領に、Jagdish Bhagwatiは警告します。そして、「公正貿易」を主張してWTOの自由化交渉を阻み、弱小国とのFTAに代えてしまう試みに強く反対します。


FT January 8 2009

How Beijing can boost its human capital

By Minxin Pei

(コメント) アメリカからの金融危機は波及しませんが、世界不況と投資の減少、輸出不振によって、中国の失業者が増加しています。中国政府は、特に出稼ぎ労働者の失業と、大学新卒者の雇用難について、社会不安を回避できるかどうか、その能力を問われている、とMinxin Peiは主張します。

中国政府の統計や推計に拠っても、出稼ぎ労働者の1000万人が解雇され、その半分が帰郷したようです。また、560万人の新卒者の中で150万人が仕事を見つけられず、都市にとどまった出稼ぎ労働者と加えて、大規模な失業者の政治圧力が生じるでしょう。特に大学生は、その家族の中でたった一人、期待を担っており、中国社会の特権層を代表しています。

Minxin Peiは、対策として公共事業に投資を増やすことは、資本集約的なプロジェクトや、すでに過剰生産力を持つ分野であるから、効果が少ないだろう、と批判します。むしろ、無償の教育プログラムを提供し、また、そのためにも、農村部の学校を拡充して、若者を大規模に雇用することを推奨しています。

平等や社会的移動性の点から、中国らしい、興味深い提案だと思います。先々週、たまたま私も似た提案をしました。

******************************

The Economist December 20th 2008

International man of mystery: Flying anything to anybody

Sinking sterling: Fall from grace

Booms and busts: The beauty of bubbles

World trade: Barriers to entry

Economics focus: Banks need more capital

The battle of Smoot-Hawley

(コメント) 年末特集号の後半です。冷戦終結後の紛争地域に大量の兵器を運んで富を得たグローバリゼーション時代の「死の商人」、Viktor Boutについて。イギリスがユーロを採用せず、独自通貨を維持していることで、金融危機のショックが大いに緩和されている、という話。

北京オリンピックの開会式も真っ青の、1120日にドバイで披露された、世界バブル終幕を告げる大祭典。それに続けて、1930年代、アメリカ、フロリダのバブルを振り返っています。バブルは、非難を受けて当然だが、少なくとも技術革新の導入を促し、労働者に雇用をもたらし、さまざまな社会インフラを残した、と記事は称えています。

他方、世界恐慌が心配であるのは、世界貿易が後退し、世界金融市場が動揺し続けるからです。グリーンスパンは、銀行が自己資本を積み増すことで信頼を得るしかない、と考えます。ウィリス・ホーリーとリード・スムートが指導した1930年の関税引き上げも紹介されています。ただし、その被害が大きくなったのは、アメリカ議会が保護主義を寄せ集める装置となり、不況とデフレの進行が世界貿易を大きく減らしたからだ、と指摘します。