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IPEの風 1/12/09
衛星放送でパリのデモを観ました。イスラエルを支持し、和平交渉を妨げるハマスを非難するデモでした。またイギリスでは、イスラム教徒たちがデモを行い、ブラウン首相はイスラエルの軍事行動をもっと明確に批判するべきだ、と要求しています。アメリカのブッシュ政権が、ジョージ・H・W・ブッシュと命名された11番目の原子力空母を就航させました。
日本の姿は見えません。西ドイツの元首相であるヘルムート・シュミットが、読売新聞に論説を載せていました。ドイツは近隣諸国との友好関係を築き、制度化することに成功した。しかし、日本は孤立したままだ、と。シュミットも、あるいはビル・エモットも、今の世界で、日本は国際政治の第二集団における先頭を競う国でしかない、とはっきり述べています。
中国は、核兵器の国際管理体制の下で、すでに核武装しており、有人ロケットを打ち上げ、安保理の拒否権を持ち、海軍を国際展開し始めました。日本政府がそれを敵視するのは正しくないでしょう。安全保障やエネルギー供給、輸送経路の確保など、成長にともない、中国の行動を合理的に正当化する理由は現実にあるからです。しかし、そこにはジレンマも生じます。通貨価値の人為的な切り下げや保護主義がそうであるように、利益をもたらすという意味で合理的としても、単独で行うことが他国の不安を強め、国際秩序の崩壊をもたらす危険もあるからです。
エモットは、アメリカとインドの核協力体制を、将来に向けた重要な政策転換であった、と称賛しています。日本政府が、東南アジアやインドへのインフラ整備に援助を増やし、政治・経済統合を促すのも、同様に、中国の台頭を意識したものです。そして同じ理由で、開放型世界貿易の維持や不況回避策において、日本は積極的に中国と協力しなければなりません。
プーチンのロシアが麻生政権に似ている、と言えば、それは妄言でしょう。プーチンは、自分がやればもっと非難されたような、大統領の任期延長をメドヴェージェフにやらせ、金融危機や経済危機の処理も、いざとなればメドヴェージェフを犠牲にして行うでしょう。メディアや反対派を強権で弾圧した上、秘密警察を使って批判的な個人を抹殺するかもしれません。選挙を任期いっぱいまで先延ばしにする麻生首相とは、比べ物にならない、わけです。
ロシアは再びウクライナへの天然ガス供給をストップしました。アメリカが主張するように、ヨーロッパはロシアのエネルギー供給を拒絶するべきでしょうか? しかし、原子力発電をエネルギー政策の中心に据えて、ロシアをEUやNATOから永久に排除することが、ヨーロッパの政治・経済に安定性を保障する道とは思えません。またその場合、ロシアが資源を売るのは、当然、中国など、アジア市場に集中するのではないか? というのも不安です。
オバマ政権はアメリカ経済を復活させるでしょう。しかし、万一、アメリカが金融市場の安定化に失敗したとき、ユーロ、もしくは、SDRs(そしてヘイルが言うように、金Gold)が国際通貨の役割を果たすでしょう。アジアにおいて円と人民元とが協力できなければ、ドル暴落や人民元の通貨圏形成に影響されて、円の為替レートはますます不安定に変動するのではないでしょうか? そのとき日本企業は、日本を生産拠点として維持することをあきらめるかもしれません。
覇権を失うことは悪いことではない、とイギリスの論説がアメリカ人に教えています。日本は、覇権国アメリカの地域的な従者、という地位を失うだけです。優れた指導者がいれば、それを嘆く必要などありません。
確かにバブルの面があったでしょう。しかし、アイスランドやアイルランドの記事を読んで、どこでも、一握りの人間が新しいアイデアの強固な信奉者として登場し、権力を握る集団の要求と一致したとき、根本的な変革が始まる、と思いました。中国の過剰生産力、日本で失業している派遣労働者、町工場、アジアが持つドル準備、など、新しいアイデアで社会的な富に変わる条件を結びつける「自由な市場」は現れるでしょうか?
押熊のブックオフまで、約3.5キロあります。途中、何度も歩いて、ジョギングとも言えない有様ですが、ともかくも、たどり着きます。休日でもあり、多くの人が古本を探していましたが、途中のラーメン屋は全くお客が入っていませんでした。帰り道はますます歩く回数が増えて、しかも風が猛烈に冷たい。仕事や住宅を中心に、政府は経済を再建するときです。
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