今週のReview
1/5-1/10
*****************************
世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
*****************************
******* 感嘆キー・ワード **********************
グローバリゼーションと信仰、 中国の新・国際主義、 ロシア経済の不安、 ガザ空爆、 サマーズの財政刺激策と論争、 新しい国際体制、 中国の役割、 スムート=ホーレイ関税、 NAFTAの見直し、 カンボジアの売春
******************************
ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor, WSJ:Wall Street Journal Asia
ロイター、AFPBBでは、海外の政治経済問題に関する多くの記事が日本語で読めます。またBJpressは、Financial Times, The Economistの重要な最新記事を日本語で紹介しています。
The International Herald Tribune, 24 December 2008
Tony Blair
(コメント) イギリスの元首相、トニー・ブレアは、グローバリゼーションを破壊する進行や社会的な価値の相違を克服するように求めます。信仰心が人々の平安や和解を促すより、憎しみや宗派対立を激化させる恐れがあります。
ブレアは、グローバリゼーションが進んでも宗教的な信念は衰えない、と考えます。だから、異なる信仰が互いに和解できる道、共有できる価値を見出さなければ、グローバリゼーションはその利益を普及することに失敗するでしょう。それは政治的にも支持されなくなるのです。
同時に、宗教団体や信仰心がグローバリゼーションを助ける場合もあります。貧しい人々や開発への支援を積極的に担ったのは、歴史的にも、将来も、こうした人々です。グローバリゼーションは多くの信仰がまじりあった社会を創り出します。さまざまな異なる宗教と一緒に暮らし、効率的な富の生産を実現しなければなりません。もし宗教が異なる信仰とも和解し、共通の価値を見いだせるなら、グローバリゼーションを安定させる社会資本となるでしょう。
それは公的秩序の一部であり、主として教育において実現され、国家がグローバリゼーションに対応する優れた公共秩序を確保するための重要な投資分野です。プラスの、建設的な、進歩的な勢力として信仰を育てることは、グローバリゼーションを生きる国家の重要課題です。
金融危機が示したように、人々は帰属するシステムを信用できなくなっています。技術や規制によって効率を改善する理性的な提案を、実際に、人々の行動に結び付ける(あるいは、軍事力によってテロ組織を粉砕するだけでなく、彼らに平和な社会関係を取り戻す)のは、それが自分も含めて社会を改善できること、社会的な価値を共有していると信じる力です。
Securing peace between Israel and Palestine would obviously be of enormous importance, a huge symbolic expression that would militate against the divisiveness and hatred that inspires people to commit acts of terrorism in the name of God. 残念なことに、ブレアが重視した中東紛争の解決は、その後、軍事行動に圧倒されています。
共通の善、思いやり、正義。・・・「神の前では、すべての個人が、同じように尊い、平等な存在である。」
China Daily, 2008-12-25
Peaceful development core of foreign policy
By Shi Yinhong
(コメント) 中国の改革開放がもたらした新しい外交姿勢は、一貫した論理で、中国と世界にとっての共通の利益をもたらしている、と主張します。それ以前の外交は、三つの要素、すなわち1.マルクス=レーニン=毛沢東の思想、2.伝統的な愛国心、3.古典的な権力政治、によって動きました。
これに対して、ケ小平の改革開放とともに採用された「新・国際主義"neo-internationalism"」は、多角的な協力、国際システム、国家を超えた非政治的な交流を重視する考え方です。補完関係、国際社会の共通利益、平和的な発展、など、その後のキー概念を指摘します。
しかし、言うまでもなく、国際関係はパワー・ポリティクスであり、中心・周辺関係が支配しているから、世界資本主義の矛盾した性格も変化しない以上、安全保障や領土をめぐる中国の脆弱性を最小限に抑えなければならず、軍事的な優位を確保し、慎重な外交姿勢を守ることは決して譲れない、と考えます。いわば、改革開放がもたらした中国のグローバリゼーションが、こうした脆弱性と国際的な防御をますます強めているわけです。
この二つの姿勢をつなぐのは、「創造的な調整creative adjustment」、「創造的な適用creative adaptation」という概念です。内外の事情に積極的に対応する戦略的な能力の形成・獲得を明言する論旨は、日本政府よりもはるかに先進的だ、と思います。
The Japan Times: Friday, Dec. 26, 2008
China and India diverging
By HARSH V. PANT
IHT Sunday, December 28, 2008
China's gunboat diplomacy
By Rory Medcalf
China Daily, Updated: 2008-12-29
China plays bigger role in proliferation control
By Shen Dingli
(コメント) ムンバイのテロ攻撃に対して中国政府は支援や協力を示さず、インドとアメリカによる核技術の協力関係にも中国は反対しています。インドは中国の姿勢を、インドの国際的な地位上昇を拒むものだ、と解釈し、中国との敵対感情が明確になっている、とHARSH V. PANTは指摘します。シッキム=ブータン=チベットの交差する地帯に関して、双方が安全保障上の関心を高めています。
欧米との関係では「新・国際主義」や「多角的な協力」を重視しても、アジアにおいては、中国外交が伝統的な覇権を回復するという姿勢に徹しているように見えます。アメリカの一極支配を否定し、砲艦外交が復活します。
ソマリア沖の海賊討伐に参加する中国の海軍も、数百年ぶりに、その国際的な地位向上を示します。中国はこれまで国際輸送のフリー・ライダーでしたが、主要国はその負担を中国にも協力して支払わせようとします。しかし、インド政府は中国海軍がインド洋を航行することに不満です。
もちろん、たとえ違う形であれ、日本はもっと支払っているのでしょうか? 韓国とともに、日本も参加を検討しています。
「ウォール街の山賊たちは金融に関する信頼を破壊しました。中国の海軍覇権がアジアの世紀における大国間の信頼を築くなら、ソマリアの海賊に世界が感謝するかもしれない。」
また、朝鮮半島の非核化に限らず、大量破壊兵器(WMD)の拡散や国際取引に関する規制や監視体制を築くために、中国とアメリカは重要な役割を担わなければならない、とChina Dailyの論説は主張します。G2体制を予感させます。
NYT January 1, 2009
As Trade Slows, China Rethinks Its Growth Strategy
By KEITH BRADSHER
FT January 1 2009
Asia in 2009: A rough ox ride to power
By David Pilling
BG January 1, 2009
The mounting pink slips in China
By Christina Larson
(コメント) 中国経済のダイナミックな成長過程が、同じように、劇的な逆転を示しつつあるようです。たとえば、貨物船やトラックは大幅に割り引いても荷物が確保できず、空っぽで走らねばなりません。企業主が倒産して逃げ出す前に、自ら退職したり、事前の支払いを要求する労働者も現れている、ということです。
アメリカの資産市場が崩壊し、消費者が支出を控える結果として、中国では出稼ぎ労働者が解雇され、早々と帰郷した四川省の役人たちが雇用の開拓に絶望的な努力を続けているわけです。雇用を維持するために内需へ転換することは短期的に難しく、結局は、中国政府も輸出を支援する方策を総動員します。それはオバマ政権との火種となるでしょう。あるいはインドネシアのように、不況の広がるアジア諸国で中国からの輸入品に対する抑制策が導入されていきます。
2009年は、アジアが将来に向けた経済や国際政治の基礎を確立する年になる、とDavid Pillingは予想します。
中国の激しい変化を正しく理解できるとは思えません。チベットの反政府デモ、四川省の大地震、北京オリンピック、そして、株式や不動産のバブル崩壊、国際金融危機による輸出の低迷、成長減速へ、今や不況対策一色に変わりました。特に、中国の改革を支えてきた都市中産階級が資産を失ったことは、今後の中国政治をさらに大きく変える恐れがあります。
LAT December 26, 2008
Thailand's king reigns -- but he doesn't rule
By Darryl N. Johnson
The Guardian, Friday 26 December 2008
Save Pakistan, save the world
Feisal Hussain Naqvi
(コメント) タイ、パキスタン、それぞれの平和と、社会的な革新が必要です。
WP Friday, December 26, 2008
Peace for the Mideast
By Turki al-Faisal
(コメント) アラブ諸国が統一して要求するイスラエル・パレスチナ間の和平と領土の提案です。イスラエルに対峙するアラブ諸国の意思統一が、パレスチナ問題を前進させる重要な条件かもしれません。
NYT December 26, 2008
The Reckoning: Chinese Savings Helped Inflate American Bubble
By MARK LANDLER
(コメント) 裕福なアメリカが貧しい中国人の貯蓄を利用して消費を増やす、という現象について、プリンストン大学教授からFRB議長になったバーナンキは合理的な説明を試みました。すなわち、中国の過剰貯蓄がアメリカの過剰消費を促している、と言うわけです。それは永久に続くものではないけれど、今すぐ消えるものでもなく、しばらくは我慢するしかない、と。
その危険性は早くから分かっていたのであり、もっと早く中国政府に人民元レートの弾力化、変動フロートの採用を求め、人民元を増価させておくべきだった、と考えます。しかし、そのためには政策協調が必要でした。円の為替レートに調整を求めたような、「プラザ合意U」を中国と合意するべきだった、とは(なかなか)言えません。政治的な合意に問題があれば、協調介入の失敗と為替レートの乱高下が今以上に難しい問題を起こしたでしょう。
FT December 26 2008 Faces of the Crisis: Nouriel Roubini By Chrystia Freeland
FT December 26 2008 The year the god of finance failed
FT December 26 2008
Old danger threatens new model Europe
By John Thornhill
(コメント) ヨーロッパの崩壊をもたらした深刻な原因とは、ナショナリズム、でした。国家主権をプールして、ナショナリズムを克服する制度を構築したことが、グローバリゼーションに関するEUの優位であったはずです。しかし、世界不況はその頑健さを試します。
FT December 26 2008
Why free markets must be defended
(コメント) 「自由」は支持されるのに、「自由市場」はそれほど支持されない。それでよいのか? とFTは考えます。大恐慌でも、ベルリンの壁でも、自由と自由市場とは運命を共にしました。金融危機に政府が介入を拡大し、市場型の多元主義は大きな失敗に直面しています。(日経新聞の論説のように)政府は資本主義を救済よ、ただし、介入は最小限に、と主張しています。
FT December 26 2008
By Isabel Gorst in Moscow and Anuj Gangahar in New York
FT December 28 2008
Russian economy: The Putin defence
By Catherine Belton
December 29, 2008
Pipeline politics in Ukraine
BG December 29, 2008
Provoking Russia
By Muammar Gaddafi
(コメント) ロシアや中国も、世界金融危機に巻き込まれ、不況への最前線に投げ出されました。ロシアは石油価格が暴落し(バレル当たり147ドルから40ドルへ)、資産市場が崩壊、通貨ルーブルの減価を容認しています。それが、外貨準備や財政刺激策を使った刺激策とともに、ロシア経済の苦境を緩和するのか、都市富裕層や労働者の不満が政治的な安定を脅かす可能性も議論されます。
かつてそうであったように、今も、政治的権威と通貨価値とは関係するようです。通貨価値の暴落を止められない政府の多くは権力を失います。ルーブルの価値を維持する政策は、失業者を増やし、社会保障費を増大させます。他方、ルーブルの減価(たとえ抑制しても)は外貨建て債務を負った企業の先行きも不安にします。企業債務を政府が保証すれば、外貨準備は急速に減ります。
たとえ減価を緩やかに進めても、期待によって資本逃避が加速し、為替市場はパニックを起こすでしょう。当然、1998年の記憶がよみがえります。
すでに、太平洋岸の町では、自動車の輸入税を引き上げ案に抗議するデモが起き、群集はプーチンの辞任を求めました。
それはウクライナとの交渉決裂や、ロシア政府の好戦的な禁輸措置にも関係しているかもしれません。価格再交渉は、国際相場の暴落によって重要ではなくなっていますが、モスクワはウクライナ政府のNATO加盟に反対して、圧力をかけようとしています。他方、アメリカもロシアの反発を軽視していたかもしれません。
FT December 26 2008
China’s state sector urged to boost economy
By Jamil Anderlini in Beijing
FT December 26 2008
Vietnam devalues dong
By Tim Johnston in Bangkok
(コメント) 中国は国営企業を利用して景気刺激を図り、ベトナム政府は通貨を切り下げます。計画経済の復活ではないにしても、政府の関与は再び増大し、インフレ抑制よりも輸出の減少が最大の問題になっています。アジアの競争的な通貨切り下げが起きるかどうか、主要国間の協調体制は不十分です。
IHT Friday, December 26, 2008
A Faustian failure
By Adrian Hong
NYT December 29, 2008
‘Firm and Patient’
(コメント) 北朝鮮の核問題について、人権蹂躙を無視して、アメリカ政府は交渉を進め、合意を急ごうとしている、とAdrian Hongは批判します。北朝鮮の自由を求め、脱北者を支援する活動を続けたきたAdrian Hongが、その体制転換、武力行使をアメリカ政府に要求しています。北朝鮮の体制を擁護する者たちは、どのような譲歩も受け入れる気がない。それは体制の終わることを意味する、と確信しているから。
ブッシュ政権の末期を利用しようという北朝鮮の意図は失敗に終わりました。アメリカは、北朝鮮が積極的な行動を示す場合に、それに対する行動を取る、と。
BBC 2008/12/27 Massive Israeli air raids on Gaza
Beyond bombs and rockets in Gaza By The Monitor's Editorial Board CSM December 29, 2008 edition
Gaza: where civilians become targets Andrea Becker The Guardian, Sunday 28 December 2008
To be in Gaza is to be trapped Peter Beaumont, foreign affairs editor The Guardian, Sunday 28 December 2008
母親が泣き叫び、瓦礫の中で子供たちを探しています。イスラエルの軍隊は民間人を攻撃します。その理由は、ハマスが民間人の中にテロ活動のインフラを構築しているから、これを破壊しなければならない、と言うのです。Andrea Beckerは、イスラエルの言う「テロのインフラに対する標的を絞った攻撃」が、結局、すべての民間人に向けられることを批判します。
Peter Beaumontは、ガザの歴史と、イスラエルの支配と占領政策が、PLOに対抗する、エジプト系ムスリム同胞団が組織するハマスを強める結果になった、と指摘します。ハマスの権力掌握に対して、イスラエルはガザの住民全体を懲罰する全面封鎖を実行し、人々の生活を極端に悪化させました。本格的な軍事侵攻は、ガザの住民に自爆テロを決行させ、政治的団結と抵抗を強める、と考えます。
The recklessness of Hamas Seth Freedman The Guardian.co.uk, Sunday 28 December 2008
Talking, not force, is the only solution in Gaza The Observer, Sunday 28 December 2008
イスラエルの方が、ハマスの仕掛けた罠にはまった、とSeth Freedmanは主張します。民兵がカッサム・ミサイルを無差別に発射するのは、イスラエルを挑発して封鎖を解かせる作戦だった。停戦を継続できない状態にして、軍事攻撃や全面戦争が起きれば、ハマスはアラブ諸国や国際世論を味方にできる、と言うわけです。イスラエルを非難するゴードン・ブラウンや政治家たちは間違っている、と。
The Observerは、ハマスが停戦を破棄したこと、イスラエルが2月に選挙を控えていること、を重視します。イスラエルの内閣は、選挙予想で劣勢にあることから、政権を維持するために強硬姿勢を取りました。「市民に対して、国境を超える数百発のミサイル攻撃を受けて、これを放置できる政府など無い。」
双方が裏切られたと感じています。イスラエル政府は、抵抗するユダヤ人入植者を強制排除してまで、撤退を進めたのに、イスラエルをせん滅すると主張するハマスが権力を握りました。他方、ファタハはイスラエルとの合意を守ったにもかかわらず、独立政府の交渉が進みません。両者はハマスが支持を失うことを望んでいますが、ガザ住民全員に向けたイスラエルの懲罰政策や封鎖はハマスの闇取引や住民掌握を結果的に助けており、軍事攻撃は失敗するに違いない、と。封鎖の解除と平和的な交渉を軌道に乗せることが必要だ、と理解するしかありません。
Israel Strikes WP Sunday, December 28, 2008
FT December 28 2008 Bombing Gaza is not a solution
WPの論説は、真の勝者とはイランである、と考えます。戦闘が続くなら、それはハマスを支持するイランの勢力を強め、イスラエルは封鎖を解除してオバマ政権発足を交渉促進に向ける機会を逃したのです。
FTは、停戦終結とともに戦闘が再開された。驚くのは、それを誰も止めようとしなかったことだ、と指摘します。死者の数が示すように、イスラエルによるガザ空爆はハマスのロケット攻撃がもたらす脅威と比べて、明らかに、均衡を欠いています。しかし、これはイスラエルが六日間戦争でも示したように、その原則において明らかです。圧倒的な軍事的報復だけが、イスラエルという国家の生存を保証する、と。
過去の紛争や政治集団の動きに照らして、FTはハマスとファタハが政治的に団結して交渉を進めることを望みます。
WSJ DECEMBER 29, 2008 Israel's Gaza Defense
WSJ DECEMBER 29, 2008 Palestinians Need Israel to Win By MICHAEL B. OREN and YOSSI KLEIN HALEVI
The dire cost of domestic rivalries Neve Gordon The Guardian, Monday 29 December 2008
A fatal miscalculation Jonathan Spyer The Guardian, Monday 29 December 2008
SPIEGEL ONLINE 12/29/2008 Merkel Blasts Hamas for Middle East Violence
Olmert's Final Failure By Jackson Diehl WP Monday, December 29, 2008
WSJは、ハマスの敗北が中東和平の条件である、という意見です。時間を追って、今回の軍事攻撃が選択された理由が起きました。イスラエルはガザから撤退し、ハマスが勝利し、イスラエルの殲滅を主張して780発のロケット弾を撃ち込みました。ハマスを衰退させることが軍事攻撃の目的であり、ガザの占領や併合が目的ではない、と。
しかし、自分の家にロケットを打ち込む奴らをせん滅するのは当然だ、と主張する人々が、パレスチナ人の難民キャンプの暮らしやガザ地区への経済封鎖を気にしないことは、矛盾です。むしろ、生活の改善を競い合うのが民主政治であるはずです。
同じ視点ですが、EUはハマスの姿勢を批判してきました。特にドイツのメルケル首相は、今回の軍事攻撃がハマスの和平妨害に対して行われた、と指摘し、イスラエルのオルメルト首相を電話で激励しました。それは、アメリカのライス国務長官と同じです。ハマスは殺し屋であり、テロリストであるから、殺害されて当然だ、と国家安全保障会議のスポークスマンは述べました。
他方、イギリスのゴードン・ブラウン首相、フランスのサルコジ大統領、はソナラEU外交部長は、イスラエルの軍事攻撃が市民生活にも及ぶ過剰なものであることに問題を指摘します。
オルメルト首相は、その3年足らずの政権期間中に、二つの戦争を行った。最初の戦争はレバノンのヒズボラを攻撃したものだが、今では政権当初よりもヒズボラの勢力が拡大している。今回のガザ攻撃も同じ失敗を繰り返すだろう、とWPはイスラエル政府の判断ミスを批判します。
「大イスラエル」の建設から、パレスチナ国家の建設と共存へと、その政治的立場を転換してきたオルメルトが、ユダヤ人国家を守るために行った一方的撤退の結末として、ハマスの台頭とミサイル攻撃にさらされたことは、皮肉なことに、大規模な軍事攻撃の引き金となりました。平和を求めて戦争に終わる、というのが、イスラエルの歴代内閣です。
Needed in Gaza: US inspectors, peacekeepers, and aid workers By Timothy Rieger CSM December 30, 2008 edition
The Times, December 30, 2008 That's enough pointless outrage about Gaza David Aaronovitch
LAT December 30, 2008 Israel's options in Gaza
LAT December 30, 2008 Israel, Hamas and the seduction of blind force By Gershom Gorenberg
LATは考えます。パレスチナ側に、イスラエルとの交渉を認める統一した政治体制ができれば、それが軍事攻撃の勝利、と呼べるものだ、と。
6カ月の停戦は解決策とならず、イスラエルで選挙が近づくほど、打開策としての軍事攻撃は誘惑となりました。
Israel's onslaught on Gaza is a crime that cannot succeed Seumas Milne The Guardian, Tuesday 30 December 2008
Bloodied in Gaza Laila El-Haddad The Guardian, Tuesday 30 December 2008
Divided on Gaza WP Tuesday, December 30, 2008
Has Israel Revived Hamas? By Daoud Kuttab WP Tuesday, December 30, 2008
NYT December 30, 2008 War Over Gaza
NYT December 30, 2008 Why Israel Feels Threatened By BENNY MORRIS
民間人への被害を最小限にする努力が、イスラエルの自衛という理由を受け入れ可能にします。また、アメリカやEU、国際社会の関与が重要です。
40年前、エジプトはイスラエルを封鎖し、消滅させようとした、とBENNY MORRISは指摘します。そして、イスラエルこそ包囲された、という感覚を持っている、と説明します。すなわち、1.東にはイランの核兵器開発、2.北のヒズボラ、3.南のハマス、4.イスラエル国内のパレスチナ住民とインティファーダU、が抑えきれない不安を掻き立てます。
The Gaza calamities BG December 30, 2008
BG December 30, 2008 The suffering that Hamas causes By Jeff Robbins
BG December 30, 2008 The cycle of violence in Gaza By H.D.S. Greenway
WSJ DECEMBER 30, 2008 Hamas Knows One Big Thing By BRET STEPHENS
Gaza crisis: a crossroads for Obama By Sandy Tolan CSM December 31, 2008 edition
Israel, Hamas, and moral idiocy By Alan M. Dershowitz CSM December 31, 2008 edition
The Times, December 31, 2008 Security Dilemmas in Gaza
オバマ次期大統領とクリントン国務長官はどう対応するのでしょうか? アメリカは積極的な関与を示して、双方に厳しい真実を語り、長期的な利益に目を向けた交渉の推進者になるべきです。
これは「安全保障のジレンマ」であり、解決するためには、国家を超えた制度・地域安全保障と、関係する諸大国の合意・関与が必要です。その上で、経済的繁栄を求める市場・市民社会の統合化が平和を拡大し、長期的に確立します。
The Times, December 31, 2008 We must adjust our distorted image of Hamas William Sieghart
Rewrite the script Amjad Atallah and Daniel Levy The Guardian, Wednesday 31 December 2008
Let us stop. Hold our fire. Restraint is our duty to the innocent of Gaza David Grossman The Guardian, Wednesday 31 December 2008
NYT December 31, 2008 Fight Fire With a Cease-Fire By DAVID GROSSMAN
LAT January 1, 2009 Israel can't bomb its way to peace Rosa Brooks
William Sieghartは、イスラエルがテロリストとして空爆の標的にした警察官たちが、ガザ市の治安を回復して、市民生活を豊かにしていた、と証言しています。彼らは皆殺しにされました。戦争は、地上で行われる戦闘が生死を分かつだけでなく、テレビや新聞の言葉を占領し、人々の頭に形成される認識を征服することで勝利します。
戦争の行方は戦場で決まるのではなく、双方の国内政治過程によって決まる以上、アメリカは中東外交を強化しなければなりません。
イスラエルが世界最強の近代兵器を持ち、人口150万人の、近代武装した軍隊も持たないガザ地区を制圧することは疑いないのです。これは「政治ショー」です。選挙を意識し、アメリカの新大統領を意識した。しかし、同じように、ガザ地区では強硬派が生き残り、短期間に組織を立て直して、イスラエルへの攻撃を再開することも疑いありません。
むしろ、反イスラエル、反米、反西側の感情が世界各地で強められるでしょう。イスラエルの財政的、軍事的な基盤を与えているアメリカだけが、和平への指導力を持っています。
Deconstructing diplomacy Simon Tisdall The Guardian, Thursday 1 January 2009
Why Israel Is Bombing Gaza By Ephraim Sneh WP Thursday, January 1, 2009
Hard Truths About the Conflict By Robert J. Lieber WP Thursday, January 1, 2009
BG January 1, 2009 Has Israel learned its lesson? By Jeff Jacoby
ガザ市民の生活は、イスラエルからのエネルギーや水の供給、環境、医療、貿易の保障によって可能なのです。そうであれば、ハマスの政治体制が取り除かれることを多くのガザ市民も願うでしょう。だからこそ、直ちに停戦を合意して、別の方法でハマスを追放するべきだ、とEphraim Snehは主張します。
Robert J. Lieberは、軍事攻撃の前提である現実を示します。イスラエルの空爆は目標を限定している(アフガニスタンの国連軍やアメリカの空爆よりも優れている)。ハマスは和平を望んでいない。イスラエル国家を軍事力やテロで滅ぼすことはできない、と認めるなら、和平は可能である。
LAT December 27, 2008
From Pax Americana to slacker Americans
By Chris Ayres
FT December 29 2008
Restoring America’s world stature
(コメント) 覇権国の地位を退くことは悲観することではない。イギリスは帝国を失ったが、過剰な責任から逃れて、高度な国際性と文化、繁栄を享受している。消費者や政治家のプライド、ナショナリズムにこだわることなど無益だ。日本車が優秀なら、次は日本車を買えばよい。
オバマのアメリカは以前と同じ覇権を得ることはない。国際分担を目指し、協調のための指導力を発揮する位置に就いて、成果を上げることです。
WP Saturday, December 27, 2008
By Lawrence Summers
(コメント) しかし、新政権にとって、国内経済の再建が優先です。
Lawrence Summersは、オバマの財政支出を規模と中身の点で明確にします。金融危機と不況は、失業率を10%にまで高め、1兆ドルの需要不足をもたらすでしょう。300万人の雇用確保を目標に、大規模な財政支出を必要としています。その中身は、新規ではなく、すでに生活を支えている公共インフラを再建することに向けられます。すなわち、教育・研究所・図書館、エネルギーの自律、医療と保険制度の整備、が重視されます。
政府支出の性格を「変革」することは、オバマの当選を支えたメッセージです。そこで、ワシントンの利益団体に支配されず、政府が戦略的な視点で選択すること、財政支出の透明性を確保するために、民間からの監視も歓迎する、と主張します。減税や消費の症例ではなく、長期的な公共投資によって、アメリカが直面する長期的な課題にこたえなければならない、と。
日本の「構造改革」も、市場や民営化だけでなく、こうした目標を示すべきだ、と思います。
WSJ DECEMBER 27, 2008 There's No Pain-Free Cure for Recession By PETER SCHIFF
NYT December 28, 2008 Bailout of Long-Term Capital: A Bad Precedent? By TYLER COWEN
NYT December 28, 2008 Debt Sweat: Printing Money – and its Price By PETER S. GOODMAN
公的介入や公共投資を拡大する「大きな政府」に関して、当然、さまざまな批判的意見があります。ケインズと対抗するオーストリア学派は、その一つです。すなわち、危機は市場のバブル処理であって、その痛みを避ける政府の介入は解決策ではなく、後世に破壊的なインフレーションと経済停滞をもたらすだろう、と。
金融危機は多くの間違った判断によって起きる。もし1998年にLTCM危機を正しく処理できていたら、現在の危機は起きなかったかもしれない、とTYLER COWENは考えます。金融システムに影響するような融資を行えば、中身が悪くても救済される、と分かったのです。実際、当時、LTCMに資産を預けていた金融機関は、ベアスターンズ、メリル・リンチ、リーマン・ブラザーズなどでした。
アメリカは経済対策の財源をどこに求めるのか? それが連銀なら通貨を印刷するのであり、財務省なら、(増税ではなく)債券を発行し、外国(中国、日本、サウジアラビア、など)の貯蓄を使います。心配は、彼らがアメリカ政府の返済意志を疑うときです。インフレになれば、外国投資家は資本を引き揚げ、ドルが暴落、金利が急騰します。
多くのエコノミストはそれを誇張と考えます。しかし、もしファニー・メイやフレディ・マックを救済しなければ、その保証した住宅債券を大量に購入していた中国の銀行が、アメリカの資本市場に対する信用を完全に失ったはずです。救済を繰り返し、連銀に頼る結果、将来のインフレが懸念されます。連銀はそれを自覚しており、景気が回復すれば迅速に通貨供給を減らすでしょうが、その判断は難しいのです。
NYT December 28, 2008 Boom, Bust, Repeat By DANIEL GROSS
We need a moral vision as well as money to rebuild Britain Will Hutton The Observer, Sunday 28 December 2008
FT December 28 2008 World Economy in 2009: Three priorities for recovery By Wolfgang Münchau
The Times, December 29, 2008 Six vital lessons of the 1931 depression William Rees-Mogg
資本主義は、もっと政府が市場を規制し、危機に積極的な介入を行うべきであり、景気回復には、ラディカルなケインズ主義と、社会的な公平性の回復が必要だ、とWill Huttonは考えます。
回復の条件としてWolfgang Münchauが指摘するのは、デフレを避け、金融部門を縮小し、国際的な協調を維持することです。
William Rees-Moggは、大恐慌を回避できた4つの歴史的教訓として、1.財政均衡化を無視せよ、2.割高な為替レートにこだわるな、3.不況期に関税を上げるな、4.銀行システムの破たんを許すな、と要約します。
The Year of Living Gloomily By Eric Weiner WP Monday, December 29, 2008
NYT December 29, 2008 Fifty Herbert Hoovers By PAUL KRUGMAN
FT December 30, 2008 How to prevent the Great Depression of 2009 By Roger E.A Farmer
A Chilling Uncertainty By Amity Shlaes WP Wednesday, December 31, 2008
The Big Bailout Lessons By Harold Meyerson WP Wednesday, December 31, 2008
WSJ DECEMBER 31, 2008 Free Trade Should Be Part of the Stimulus Plan By JAMES BACCHUS
It's Time To Pay The Bills By David Ignatius WP Thursday, January 1, 2009
FT January 1 2009 The problem with all this economic doom and gloom By Samuel Brittan
PAUL KRUGMANは、たとえ連邦政府が不況の際に財政赤字を増やそうとしても、アメリカには50人のハーバート・フーヴァーがいる、と指摘します。それは財政赤字を禁止された州知事たちです。不況によって歳入が減れば、州政府は支出を減らすしかないのです。
Roger E.A Farmerは、実体経済も期待によって変化する。だから金融緩和が限界に達した後は、政府が市場に介入し、株価を引き上げることも支持しています。たとえば、S&P500のような指標で株式のブロックを売買し、市場介入すれば、個別の企業の盛衰には関与しない形で、株式相場を押し上げ、人々の消費や投資を回復できるから、と。
・・・We're all living in bailout nation.
CSM December 29, 2008
India: Let Kashmir go
By Bennett Ramberg
(コメント) 住民自身に、分離独立か、どの国に帰属するか、決めさせることが望ましい。旧ソ連邦、チェコスロバキア、セルビア/モンテネグロ。住民自身に委ねるLetting go policyは、治安を回復し、軍事的なコストを減らし、近隣諸国との対立を解消します。
NYT December 28, 2008
Win, Win, Win, Win, Win ...
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) オバマはガソリン税を導入するべきです。Michael Mandelbaumに従って、ガソリン税の導入は、5重の利益がある、と考えます。このまま石油価格の下落で大型自動車の販売が復活してしまうのを許さず、環境にやさしい、効率の良い自動車を開発し、財政的な刺激策と組み合わせて増税の負担を免除し、オバマ政権が体系的なアプローチを示すことで、アメリカは環境政策や中東和平でも指導的な役割を担えるでしょう。
FT December 28 2008
Europe in 2009: Old danger threatens European unity
By John Thornhill
(コメント) ヨーロッパはナショナリズムを政治から追放しました。「ナショナリズムとは戦争である」とミッテランは定義したように、EUによって各国は主権をプールし、国家間の紛争解決を制度化したのです。
しかし、過去のナショナリズムを恐れなくなった世代は、EUの政策に反対して「ナショナリズム」を唱え、フットボールを応援して国旗を振ります。ドイツの「正常化」は、ドイツがEU内で利益の不一致を明確に示す状況をもたらしました。グローバリゼーションと金融危機が広まるなかで、人々は(EUではなく)国家の役割を強調するようになっています。
それは国益を意識させ、保護主義の本能を刺激し、逆に、ヨーロッパ統一の理想は色褪せます。
かつてツヴァイクは1914年以前の民衆の感覚について書いたそうです。ヨーロッパの民族間で戦争するというのは、魔女や幽霊と同じように、過去のものである、と。その後、それは「石の家」ではなく、「夢の城」に過ぎないと分かった。現代においても警戒を要します。
FT December 28 2008
Bad start for new Bretton Woods
(コメント) G20は、ニュー・ブレトン・ウッズという目標を大きく下回ったままです。G20が提唱したドーハ・ラウンドの再開は失敗し、新しい保護政策を取らない、という約束も、わずか48時間で破棄されました。ロシアが自動車輸入に関税を追加し、インド、インドネシア、ブラジル、アルゼンチンが続きました。為替レートの調整や財政刺激策の協調に、焦点は限られるでしょう。
FT December 30 2008
Recession, recovery, trade war and artificial life – welcome to 2009
The Guardian, Wednesday 31 December 2008
Should we fear a trade backlash?
Barry Eichengreen
(コメント) FTの論者たちによる2009年の予測です。そのテーマそれ自体が、世界秩序の変化を示しています。すなわち、世界不況、人民元、中央銀行、銀行国有化、株価、石油価格、ロンドン、総選挙、ガイトナー、オバマのニュー・ディール、ムガベ、ビッグ・スリー、キューバ、中東紛争、北朝鮮、イラン、人工生命。
Barry Eichengreenは、アメリカ議会が再びスムート=ホーレイ関税法を成立させる可能性を検討します。経済史から二つの例を挙げ、マクロ経済政策の基本を示して、非常に説得的です。
すなわち、スムート=ホーレイ関税が採用されたのは、他に選択肢がなかったからです。金本位制によって為替レートは調整できず、財政政策による刺激に関しては理解されていませんでした。金融緩和しても、今、問題になっているように、危機においてその効果は疑わしく、また、国内需要を安価な輸入材の購入によって失うことを嫌ったわけです。
しかし、現代では、金融緩和に加えて財政刺激策が積極的に利用できます。その追加された需要が外国へ漏出することは、為替レートの減価によって防げるでしょう。金本位制と変動レート制との違いは、マクロ経済の安定化における根本的な条件を変えた、と指摘します。
その意味では、イギリスの1932年関税引き上げに類比できる、と考えます。イギリスは関税を引き上げますが、ポンドの増価によって、その効果をほとんど失いました。それでも保護主義を採用したのは、20%という失業に対して、(財政政策を知らない)政治家たちが何かしなければならなかったからです。
世界的な規模のサプライ・チェーンを構築した主要企業は保護主義に反対します。高関税は彼らの活動を損なうだけです。経済政策の正しい理解があれば、政府には他にも適当な不況回避策があるわけです。
FEER December 2008
Weathering the American Contagion
by Ulrich Volz
The Japan Times: Tuesday, Dec. 30, 2008
Making nice in Asia during a global slump
By MICHAEL RICHARDSON
(コメント) Ulrich Volzの論説は、当然の内容ですが、的確に、中国の役割を拡大しています。中国が世界経済に貢献する道は、成長率を高く維持することだ、と胡錦濤主席は述べましたが、さらに、近隣諸国との協力関係を深めることも重要です。競争的な為替切り下げや保護主義を招かないように、緊急融資を合意し、政策を監視・協力するべきでしょう。
MICHAEL RICHARDSONは、北東アジアよりも東南アジアの方がASEANという制度を持っている点で優れている、と考えるようです。
FT December 29 2008
Iceland, investment banks & jobs
(コメント) 投資銀行は主要なビジネスが破たんし、国家としてもアイスランド(やアイルランド)が(ほとんど)破たんしました。
通貨が大きく減価することは、うまくいけば、輸入を減らし、その分、国内需要に向けた生産と雇用をもたらします。また、輸出が伸びます。しかし、競争的な切り下げとデフレを避けなければなりません。
Dec. 30 (Bloomberg)
Capitalism Is Worst System Except for the Rest
Caroline Baum
The Guardian, Thursday 1 January 2009
The long shadow of 1979
Chris Hallam
The Guardian, Thursday 1 January 2009
Kevin Gallagher and Timothy Wise
(コメント) ソ連崩壊と同じように、金融危機で資本主義や自由市場も終わったのか? Caroline Baum の論説は否定しています。
サッチャー政権の登場した1979年やNAFTAの成立した15年前を、市場原理主義やネオリベラリズムの象徴として言及することが多いようです。
Kevin Gallagher and Timothy Wiseは、NAFTAを見直したい、というオバマの姿勢を批判します。なぜならアメリカ人の多くはNAFTAがメキシコに有利だ、と信じているからです。実際、NAFTAによってメキシコの工業製品輸出は7倍に増え、直接投資の流入も増えました。そして、インフレは抑制され、生産性が上昇し、メキシコ経済は離陸する、と期待されたのです。
しかし、成長率は下がりました。一人当たり所得は平均1.6%しか増えません。これは輸入代替工業化の時期(1960-79年)よりも低く、中国はもちろん、多くの新興市場に劣る数字です。製造業の雇用は60万人増えましたが、安価な農産物の流入で、200万人が農業を捨てました。その結果、移民よりも雇用を、というNAFTAのスローガンとは逆に、移民が倍増し、厳しい国境警備を逃れて50万人も入国していると推定されます。
メキシコの賃金はアメリカの6分の1しかなく、それでも失業率が上昇しています。NAFTAを見直すべきだ、というのはメキシコ側の主張でもあるのです。オバマは、双方が貿易や投資によって利益や雇用を増大できる合意を実現しなければなりません。
The Guardian, Thursday 1 January 2009
2009 brings hard choices over the future of capitalism
Timothy Garton Ash
(コメント) Timothy Garton Ashも、資本主義の死滅は誇張であろう、と考えます。しかし、三つの点で重大な変化を見ています。1.市場と国家の重心が移動する。政府介入や規制が重要になる。2.持続可能な、環境にやさしい、炭素エネルギーから自由な成長を求める。3.成長を回復するより、「幸福Happiness」そのものを研究する。
環境保護には、企業や消費者の行動、それゆえ、有権者や株主が変化しなければなりません。また、人類の大部分が経済的繁栄の利益を享受できていないなら、現在の成長パターンは見直す必要があるでしょう。
FT December 30 2008
A yen for Zirp
IHT Tuesday, December 30, 2008
A close-up on Japan's 'lost decade'
By Philip Bowring
(コメント) 日銀はゼロ金利政策を実施してもデフレを解消できませんでした。遅すぎたし、少なすぎた。ゾンビ企業を放置した。今また、円は資産の逃避場所になり、円高が進んでいます。しかし、企業の業績は悪化し、倒産が増えています。やはり日本人の貯蓄は外国へ流れるのでしょう。
Philip Bowringは、欧米は日本のバブル処理に関する間違った教訓から、過剰な金融救済と財政支出に走っている、と考えます。日本の経験は必ずしも危機を悪化させておらず、長期的な成果は他国に劣らない。むしろ高齢化に備えて貯蓄した分、英米のような現在の消費を刺激した国より低成長になっただけである、と。
The Guardian, Tuesday 30 December 2008
Year of living dangerously
Simon Tisdall
WP Thursday, January 1, 2009
The New Year
NYT January 1, 2009
By NICHOLAS D. KRISTOF
(コメント) 貧しい国を訪れた旅行者たちを取り巻く、若い娼婦たちの笑顔には、どのような意味があるのか? NICHOLAS D. KRISTOF は少女の話を伝えます。
13歳で誘拐されたベトナム人の少女、Sina Vannは、カンボジアにつれて来られ、麻薬中毒にされて、売春させられました。彼女の処女も売られたのです。
彼女は男に笑顔を示して、売春を求めるカンボジア語と英語を覚えました。男たちが彼女を選ばないと、激しい暴力が待っていました。叫び声が漏れないように、ほとんどの売春宿には地下に拷問部屋がある、と。拷問には電気ショックが使われたそうです。それは彼女たちの外見を傷つけず、市場価値を損なわないからです。
またアリのいっぱいいる棺桶に閉じ込められた、と言います。
売春宿から逃亡して、自由になり、勉学の機会を得たSomaly Mamが、彼女を救出します。そして、一緒に、強制売春から少女たちを解放する戦いを続けています。
セックス奴隷のための国際売買は現代の奴隷貿易です。19世紀の奴隷と異なるのは、その多くがエイズによって20代で死ぬことです。オバマとヒラリー・クリントンは、人身売買を廃止することを外交政策に掲げてほしい、と訴えます。
******************************
The Economist December 20th 2008
Fare well, free trade
Congo: Stop paying for murder
Israel and the Palestinians: Lift the siege of Gaza
The Madoff affairs
Birds in China: The loneliness of the Chinese birdwatcher
Immigration: The border closes
Egypt and Gaza: Can nothing be done?
Latvia’s troubled economy: Baltic brink
Tintin: A very European hero
(コメント) 面白いと思って急いで読みました。グローバリゼーションの二つのエンジン、貿易と資本移動、が止まりそうです。スムート=ホーレイ関税が話題になります。G20の国際協調は言葉だけでした。ワシントンと北京は何をするのか? 産業の補助金、為替レートの変動、貿易摩擦、政治的な報復。・・・マクロ政策による刺激策をフル活用して回避できるか? 米中協力の時代。
コンゴ内戦の背後に、ルワンダのカガメ大統領がいる、という国連の報告書が出ました。ルワンダをジェノサイドから復興した理想の国として描く記事をいくつか紹介してきましたが、一部では、カガメ独裁が批判されていました。
ガザ地区に関する記事もあります。すでに、その後の戦争を知っていますが、封鎖や占領を解除する選択肢、エジプトの協力姿勢、を問題にしています。そして、マドフ。北京に雀が少ない理由は、毛沢東が退治したから。ラトヴィアの金融救済に関する短い記事。
ヨーロッパ、特にフランス(1949年以来、子供漫画の内容を法律で規制)とベルギーで支持される漫画の主人公、ティンティンについて。面白い特集記事を読みました。ヨーロッパの小国に生まれた大人たちが思い描く、子供のためのヒーローです。
日本における漫画の影響力、インターネットにあふれる性表現、暴力や犯罪の慢性化を防ぐために、何ができるでしょうか?