IPEの果樹園2008

今週のReview

10/19-10/24

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

核管理、 G7と国際協調、 ケインズ1−2、 銀行休日、 ボルカー、 ブラインダー、 ハットン、 ウルフ、 預金保険、 スティグリッツ、 国際金融戦争、 イギリスもユーロ圏へ? アジアの刺激策、 中国の外貨準備、 アリバー、 アイスランド、 韓国、 オブスフェルド、 バグワッティ

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


IHT Thursday, October 9, 2008

Nonproliferation

By Graham Allison

(コメント) 国際金融危機がもたらす被害と救済策をめぐって政治家たちが議論している一方で、国際的な核不拡散の体制が崩壊しつつある、とGraham Allisonは警告します。核兵器が競争的に開発され、拡散される世界になってしまえば、金融市場のような救済策もありません。

ブッシュ政権は、ライス国務長官の主張にもかかわらず、北朝鮮やイランの非核化について前進できませんでした。それは、チェイニーとボルトンの強硬路線が、敵に対して何の関与政策も、制裁と援助の組み合わせも、示さなかったからです。

核不拡散体制は、すでに崩壊への臨界点を超えてしまったかもしれません。


WSJ OCTOBER 9, 2008 Progress Amid the Ruins

WSJ OCTOBER 9, 2008 There's No Easy Way Out of the Bubble By VERNON L. SMITH

住宅価格の上昇と石油価格の上昇に見られたバブルがはじけました。これは古典的なバブルとその崩壊過程である、と指摘します。住宅は、2008年第二四半期のアメリカの総資産規模19.4兆ドルの3分の1を占める。住宅の価値は長期的に見た水準は大きく変化しておらず、たとえ今、買い手がなくとも、将来、必ずもっと高く売れる。

しかし、まさに問題は今なのです。これは古典的な「流動性の危機」であり、解決の決め手は「信頼の回復」です。それができない限り、市場の短期的均衡は、長期の均衡点と非常に異なった状態にとどまります。そして、実際に金融機関が破たんし、連鎖的に企業や銀行がさらに破たんするのです。

バーナンキは流動性を与えるために何でもやりました。民間に直接融資し、民間企業の証券も担保として受け入れました。民間融資の保証までしました。しかし、市場の信頼が回復するかどうか、わかりません。財務省と協力して、救済融資や不良債権の買い取りも認めました。しかし、市場が価格を下げるなら、それを遅らせることはできても、止めることはできません。

住宅も、株価も、石油も、銅も、小麦も、トウモロコシも、すべて安くなった。・・・素敵なことだ。

Fears of 1930s Redux Are Pushing Asia to Action William Pesek Oct. 10 (Bloomberg)

中央銀行が国際協調して金利を引き下げました。アメリカ、ヨーロッパ、イギリス、カナダ、中国、の中央銀行です。その前日には、韓国、台湾、香港、の中央銀行が金利を下げました。日本銀行はすでに低い金利を切りを下げず、それに代わって2兆円を市場に供給しました。アジアでもインフレからデフレに焦点が移り、パワー・シフトが注目されます。オーストラリアは大幅に金利を下げました。

他方、バーナンキは前任者と異なって、流動性を過剰に供給しています。インフレーションの危険を冒して。日本経済はいまでもアジアで最大ですが、むしろ、中国の金利引き下げに注目が集まりました。日本の指導者たちは景気を悪化させないことばかり話し合うが、企業家精神の不足、高齢化の進展、には応えようとしない。

History can guide, yet there are new limits of the possible Martin Kettle The Guardian, Friday October 10 2008

危機の深化を受けて、さまざまな政策の可能性は次第に拡大し、少なくとも開かれます。ブラウン首相は21世紀において労働党政権が信頼されるかどうか、死命を賭して5000億ポンドの安定化策を示しました。

19318月、ジョン・メイナード・ケインズは、資本主義が選択に直面している、と書きました。「資産の貨幣価値が以前の水準に戻っていく」か、あるいは、「広範な支払い不能、債務不履行、金融構造の大部分が崩壊する」か、という選択です。

しかし、もちろん、ケインズは2008年の危機を知りません。二つの危機は異なっています。1931年には株価暴落の後、各国は通貨危機に陥って、各国はデフレに入り、企業の、そして政府の破たんが続きました。今は危機が金融部門に限られ、銀行や企業の倒産が続いていません。物価水準が下落することもないのです。しかし、銀行家たちは当時と同じように、ドラスティックな政策・政府介入を嫌います。まるで集団的な自殺を願っているように。

第二に、政治家は当時も最善を尽くしました。しかし、彼らも何をするべきか、最善の選択肢がわからなかったのです。当時の聡明なイギリス労働党David Marquand首相は回顧しました。「後から見れば、その当時の政治はマニ教的な光と闇との戦いに見えるだろう。すなわち、経済の正当派を打ち破ろうとする光の勢力と、それにしがみつく闇の勢力だ。しかし、真実はもっと複雑だ。正統派と非政党は重なり、しかも中間で重なるだけでなく、両端でも重なっていた。右と左という古い区別はあいまいになって、意味を失い、しかも、新しい方針は現れなかった。すべての党派の政治家が未知の領域に迷い、手さぐりで進んでいた。」

第三に、われわれは1929-31年の経験を学んでいます。物価や資産価格が大幅に上昇してから嵐を防ぐより、政府はもっと早期に介入する方が良い、という教訓は、学ばれたにもかかわらず実行されませんでした。しかし、恐怖に駆られて資産を投げ売りする人々を止めることができるのは政府だけだ、という教訓を生かすことができるかどうかは、今、試されています。また、当時も危機は国際的でした。しかし、各国はバラバラに対策を取りました。

ブラウン首相は協力する必要性を訴え、ケインズが示したように制度を求めます。しかし、EU各国は単なる一国の対策しか示さず、EUは国際連盟になってしまうでしょう。この挑戦に敗れるなら、現在のEUは崩壊し、国際連盟と同じように、再び築かれるでしょう。

危機から逃れるために、失敗した銀行や企業をすべて救済することだけが主張されるのは間違いです。貧困や不平等を解決する道もあるはずです。われわれは世界を思い通りに構築できないけれど、ここには選択の自由があるのです。

Shame on the Bank of England Chris Payne The Guardian, Friday October 10 2008

The Financial Decelerator WP Friday, October 10, 2008

NYT October 10, 2008 An Economy You Can Bank On By CASEY B. MULLIGAN

NYT October 10, 2008 Plan B: Flood Banks With Cash By FLOYD NORRIS

証券市場に依拠した新しい金融システムは崩壊してしまいました。ポール・ボルカーは「すべての取引がその元に、すなわち商業銀行システムに戻っていく。“everybody is running back to Mother, the commercial banking system.”」と述べました。しかし、問題は商業銀行も弱ってしまったことです。銀行同士が互いの信用を疑って資金を出しません。

1933年、ルーズベルトは銀行休日36日〜13日)を宣言しました。そして連邦政府が銀行の資産内容をチェックし、いくつかの銀行を閉鎖しました。その後、再開した銀行はすべて健全である、と政府が保証したのです。実際には、政府が銀行を完全にチェックできたとは言えず、問題が残っていましたが、国民は政府を信用し、銀行パニックは終わりました。しかし、今は政府の保証が失敗したのです。より多くの現金が必要でしょう。

FT October 10 2008 The excesses of pragmatism By Christopher Caldwell

「民主的資本主義」とか「自由民主主義」とか、あるいは「民主的でリベラルな資本主義」などというが、それは好況が続くときであり、不況になれば選択しなければならない。ポールソンは何よりも「繁栄」を、「資本主義」を助けることを選んだ。

ポールソンの法案が下院で否決されたのは、それが財務省のイラク解放戦だからだ。それは国民に対する「衝撃と恐怖」ではなかったのだが、株価暴落でそうなった。そして議会の承認を得た。市場民主主義を賛美した者たちが、今や政府から得た金を裏庭に埋めているのを、われわれは忘れない。

つい先日まで、アメリカ政府は日本の失敗から学び、連銀もそれを繰り返さないと自信たっぷりであった。しかし、今や欧米が日本とおなじ状況に陥っている。わずかに異なるのは、日本よりも少しダイナミックな経済に、日本よりはるかに少ない貯蓄しかない、ということだ。

FDRのニューディールは支持を得て、その後も拡大されて行った。そして1970年代、バブルの波に終わった。そのとき資本主義世界の危機を救ったのは、レーガンとサッチャーだった。危機の救済は政治を称賛する人々を生むけれど、注意も必要だ。ロシア経済が1990年代の危機から回復したとき、政治権力を握るのはプーチンだった。

FT October 10 2008 More haste, and much more speed

The Japan Times: Friday, Oct. 10, 2008 'Pumping station' or bust By KENICHI OHMAE

21世紀の銀行取り付けはサイバースペースで発生する。全ヨーロッパ型の救済策をまとめることに反対したドイツのメルケル首相は、たった一日で、ドイツの不動産会社を救済しなければならなくなった。まるでウォール街からの金融テロリズムに爆撃されたように感じている。他方、アメリカは流動性を供給しなければならないが、中国やロシア、産油諸国の協力が必要だ。つまり、彼らがドル価値の下落を嫌って投げ売りするかもしれない。

WSJ OCTOBER 10, 2008 We Have the Tools to Manage the Crisis By PAUL VOLCKER

ボルカーは、これまで金融部門の危機であったものが、はっきりと、実物経済の不況を避けがたいものにする限界を超えた、と書いています。

州政府や地方政府が赤字に直面して融資できなくなり、各国は輸入に資金を得られず、為替レートも不安定化して、それぞれが赤字削減を急ぐからです。放置すれば、不況は内外で急速に広がるでしょう。金融部門に蓄積された不均衡は、政府が行動しなければ、秩序正しく回復できない。しかし、それを防ぐ手段はある。

各国政府が行動し、預金保険制度や銀行間の合併が促進され、資本が増強され、デリバティブのネッティングが進み、CDSの不透明性を軽減、不良債権の買い取り、コマーシャル・ペーパー市場への直接の買い介入、短期資金への一時保証、そして不況を緩和するための介入が行われる。

危機が収束すれば、こうした脆弱で、過度の膨張した、あいまいな金融構造が経済に計り知れないダメージを与えることを、二度と許してはならない。

WSJ OCTOBER 10, 2008 Denmark Offers a Model Mortgage Market By GEORGE SOROS

アメリカのモーゲージ市場が持つ欠陥を克服するために、デンマークがそのモデルを提供している、と指摘します。アメリカはモーゲージを普及するために政府の支援を拡大し、証券化において利益が間違って誘導され、さらに複雑なデリバティブの仕組みを悪用されました。特に、モーゲージによる融資を住宅価格の上昇期と下降期とで非対称的に借り換える仕組みが間違っていた、と批判します。具体的に、デンマークにおいて問題点を克服した制度が存在する、というのは興味深いです。

FT October 10 2008 G7 ministers agree joint action By Chris Giles in Washington

FT October 10, 2008 US price deflation on the way By John Muellbauer

G7 ministers forced to think the unthinkable Larry Elliott and Heather Stewart The Guardian, Saturday October 11 2008

G7に集まった主要国の政府幹部に、「創造的破壊」を歓迎するオーストリア学派は一人もいない。ポールソンはその市場原理に従いリーマンを倒産させたが、その結果、意見を変えた。G7による共同声明が失敗すれば、各国には国有化政策しか残らず、それはブラウン首相によって示された安定化策の国際化を意味する。銀行間市場の停止こそ各国政府を恐怖させた最終警告だった。

A weekend to save the world The Guardian, Saturday October 11 2008

FT October 11, 2008 A damp squib from the G-7 in Washington DC Willem Buiter

Willem Buiterのさまざまな考察が刺激的です。G7による政策協調は世界経済に影響を与えるには不十分です。しかし、G20は合意を形成するには大きすぎます。既存のG8に代わって、金融問題をあつかうニューG8(the USA, the EU, Japan, China, India, Brazil, Russia and Saudi Arabia)が重要だ、と考えます。

国際協調が重要な分野として8つを指摘します。1.銀行間市場、2.他の銀行の債務保証、3.国際取引を含む銀行の資本増強、4.銀行を救済する政府への財政支援、5.強制的な債務と株式とのスワップ、6.モラル・ハザードの抑制、7.国によって異なる不良債権処理、8.会計処理の原則、です。

A Global Strategy WP Saturday, October 11, 2008

NYT October 11, 2008 Time to Act

主要国の政府と中央銀行が協力して金融市場の不安を払しょくする直接介入を合意しました。これ以上に何ができるでしょうか? WP、NYT、ともに好意的です。決定的な時期に、主要行の政治指導者は決断し、行動に参加したのです。

しかし、これで終わった、とは言えません。

BG October 11, 2008 Back-to-basics banking By Robert Kuttner

NYT October 12, 2008 Got $700 Billion? Sweat the Details By ALAN S. BLINDER

ポールソンの救済法案は三つの点で問題がある。1.どの不良債権を買うのか? 2.いくらで買うのか? 3.利益相反が起きる。財務省の誰が評価するのか?

財務省が十分な規模で、しかも十分な価格で、不良債権を購入してやるには、結局、モーゲージを組んでいた金融機関の解雇されたスタッフを採用しなければならなくない。さもないと、迅速に、大規模に、何をいくらで買うのか、政府には救済案が実行できなくなる。しかし、そこには重大な利益相反がある。

Government to inject £40bn into ailing UK banks Jill Treanor, Larry Elliott and Nicholas Watt The Guardian, Sunday October 12 2008

EU bank bail-out plan agreed Ian Traynor in Paris, Larry Elliott and Heather Stewart in Washington The Guardian, Sunday October 12 2008

Don't make a crisis into a depression Chris Osborne The Guardian, Sunday October 12 2008

Without real leadership, we face disaster Will Hutton The Observer, Sunday October 12 2008

1929年、大恐慌の週に、ウォール街の株価は23%暴落した。先週、ロンドンで18%、フランクフルトで21%、東京では24%も株価が暴落した。共産主義者や社会主義者が予言してきた資本主義経済の危機はようやく訪れた。しかし、皮肉なことに、彼らはこの危機に乗じる前に消滅してしまった。

各国政府が示した安定化策は不十分だ。なぜなら危機の革新にあるデリバティブ取引に比べて規模が小さすぎるから。CDSを中心としたデリバティブ市場は55兆ドルに達し、それはアメリカ、日本、EUのGDPを合計した額の2倍を超える。たとえ銀行を国有化しても解決しないだろう。リスクを分散し、解決するために開発されたデリバティブ商品が、結果的に、金融システムを非常にリスクの高いものにした。

互いのリスクを恐れて資金を出すことができず、株価は暴落し、不況が迫っている。証券は支払われず、金融危機はG7の境界を超えて、銀行の破たんが世界に輸出されている。かつてハイマン・ミンスキーが指摘したように、規制されない金融資本主義の膨張はスランプとパニックによって終わる。世界はこの「ミンスキーの瞬間」を迎えている。

政府と中央銀行は、納税者の金を無限に銀行へ注入し、銀行の間の融資をすべて保証して、市場から何でも購入して流動性を供給しなければならなくなる。中央銀行は通貨を供給し、政府は自身のCDSを発行し続ける。

将来の世界金融市場は、デリバティブ市場を監視する単一の世界当局が樹立される。世界の信用格付け機関も統一され、主要国の中央銀行はより迅速かつ大胆な金融緩和が行えるように、合意が確立されるだろう。0.5%の切り下げではまだ小さすぎる。

しかし、政治家たちにその覚悟があるか? ブッシュの任期は終わり、メルケルは不安定な連立に依拠しており、麻生の支持政党も機能せず、脆弱だ。こうした政治的不安定と協調の失敗は、外国為替市場の混乱によって増幅される。各国政府は銀行の国有化や資本移動の規制、為替管理を検討し始めるだろう。

On the edge of the abyss Ruth Sunderland The Observer, Sunday October 12 2008

FT October 12 2008 Australia and NZ launch bank safeguard plan By Peter Smith in Sydney

Let's spend money Dean Baker The Guardian, Monday October 13 2008

The Great Depression looms again Chris Colvin The Guardian, Monday October 13 2008

アメリカの1930年代を分析したアーヴィング・フィッシャーによれば、デフレを回避することが重要です。金融部門から実物経済へと不況が広がったのは、債務デフレが進行したからです。物価が下落しても債務額は変わらず、ますます多くの農家と銀行が破たんしました。信用が膨張していればいるほど、債務デフレは激しいでしょう。最終段階は、取り付け、貸し渋り、資産売却、銀行破たんが起きます。

NYT October 13, 2008 Gordon Does Good By PAUL KRUGMAN

イギリスのゴードン・ブラウン首相は世界の金融システムを救ったのか? その答えを出すには時間が必要だ。しかし、少なくともブラウン首相は、イギリスの経済規模によっては得られない国際的な指導力を、その明晰さと決断力によって得た、とPAUL KRUGMANは考えます。逆に、ポールソンは、ブッシュ政権を支配する「政府は悪、民間は善」というイデオロギーに支配されて、正しい解決策を避けてきました。

FT October 13 2008 Irresponsibility ushers in the age of control By Philip Stephens

FT October 13 2008 Nationalise to save the free market

FT October 13 2008 Is there time to avert a Minsky meltdown? By George Magnus

ミンスキーの瞬間、市場はいったん崩壊して、資産に新しい価格を付けます。その間、欧米諸国の政府は流動性を供給し、資産の投げ売りを防がねばなりません。

FT October 13 2008 Torturous Tarp

BG October 13 2008 Preventing the other meltdown By James Carroll

WSJ OCTOBER 13, 2008 Keep Your Money in the Market By BURTON G. MALKIEL

アメリカ経済が大恐慌を再現する恐れはなく(特に金融政策の誤りが回避されるから)、株価の暴落や不況の悪循環は続かない。投資家たちは市場に資金を入れておくことが最善の道だ。

Global Bailout WP Tuesday, October 14, 2008

NYT October 14, 2008 Intervention Is Bold, but Has a Basis in History By STEVE LOHR

FT October 14 2008 Governments have at last thrown the world a lifeline By Martin Wolf

これで流れは変わった、とMartin Wolfは欧米諸国の対応を歓迎します。

ブラウン首相の果敢な行動によって、欧米諸国も即座に追随し始めました。深刻な金融危機を鎮圧するには協調行動が欠かせません。まずは、流動性の供給と、弱体化した金融機関への資本注入です。そのコストは高くつきますが、それに代わるものは経済恐慌です。さらに、政府が信用保証を与え、不良債権を買い取ることもできます。アメリカとEUでは重点が異なります。

信用保証による歪みや部分的な国有化は、将来、困難をもたらすでしょう。しかし、パニックは収まる方向にあります。

各国政府の用意した莫大な安定化への資金投入は効果を発揮するでしょうか? そのカギは、銀行から政府にリスクが移ることと、金融部門から実体経済に不況が及ぶことです。これらは封じ込めることができる、とMartin Wolfは考えます。

巨額の財政赤字を引き受ける小国の場合、高金利と為替レートの急速な減価で、財政が破たんするリスク(政府債のデフォルトか、インフレの加速)があります。しかし、アメリカやEU全体で見れば、財政的な負担は「わずかに」5%から(追加の損失や不況、影の銀行部門の信用収縮を考慮しても)10%までであり、そのようなリスクは生じない、と主張します。

ただし、こうした楽観は今後の不況を回避する程度にかかっている、と認めます。

FT October 14 2008 Banks got burned by their own ‘innocent fraud’ By John Kay

問題は、これまで金融システムを称賛して利益を享受してきた人々が、国民への負担をどうやって説明するか、という点です。金融システムそのものが、巨大なポンツィ金融や「ネズミ講」となってしまったことに、誰が責任を取るのか?

FT October 14 2008 Panic passes but the causes remain By Edward Chancellor

WSJ OCTOBER 14, 2008 We're Laying the Groundwork for Recovery By BEN S. BERNANKE

LAT October 15, 2008 Paulson's latest economic rescue

FT October 15 2008 Asia struggles to find common crisis plan By James Lamont in New Delhi, David Pilling in Tokyo, and Roel Landingin in Manila and agencies

WSJ OCTOBER 15, 2008 Blanket Deposit Insurance Is a Bad Idea By ALAN S. BLINDER and R. GLENN HUBBARD

民主党と共和党の政府経済顧問が連名で、預金保険の拡大適用を批判しました。預金保険にはコストがともない、その効果は解決すべき問題に及ばない、と。

アイルランドやドイツは預金の全額を政府が保証し、国によっては更にさまざまな民間債務の支払い保証を政府が引き受け始めました。しかし、例えばアイスランドのように、政府でも負担しきれない債務を民間銀行が負っているかもしれません。

そのような保証は、市場に安心よりもパニックの信号として働くでしょう。また、政府が保証しない分野から資産を取り去ってしまうでしょう。さらに、国際的な資本逃避を促す、近隣窮乏化政策になるでしょう。

預金者が取り付けに並ぶことは起きていません。預金の流出が融資を妨げているのではないのです。銀行が互いのリスクを恐れ、銀行間市場が止まっていることが問題です。そこで著者たちは、金融機関への資本増強策を急ぐこと(銀行はつぶさない)、そして銀行間市場に政府保証を与えること、を求めます。

Asia Times Online, Oct 16, 2008 Forget the silver bullet By Hossein Askari and Noureddine Krichene

Paulson tries again Joseph Stiglitz The Guardian, Thursday October 16 2008

ポールソンは金融機関に資金を入れながら、他方で、住宅を差し押さえられる人々、倒産する企業や商店には何もしない。しかし、それらが金融機関の不良資産となっている。

イギリス政府は、少なくとも銀行の経営者たちを辞任させた。アメリカでは誰も辞めていない。政府の資金をもらいながら株主への配当も続けている。ゴールドマンサックスに投資したバフェットは、株価が下落した際には、購入価格でそれを売却するオプションを得た。アメリカの納税者は、ポールソンが下落した市場価格で買うのを認めただけだ。将来、銀行が立ち直っても、納税者はその利益を得られない。

Joseph Stiglitzは、二つのことを要求します。将来、納税者の資金が失われた場合、金融市場に支払わせること。また、金融システムの規制や監督を改革すること。

この前の危機においては、タイ、韓国、インドネシアの納税者たちが支払い、国際金融システムの改革は忘れられました。しかし、今回は違うだろう、とJoseph Stiglitzは考えます。納税者たちには強力な民主主義がある。彼らは怒り、金融部門の権力や特殊利益に対しても黙っていない。

The nightmare continues - on a high street near you Will Hutton The Guardian, Thursday October 16 2008

FT October 16 2008 A policy success amid the disaster By Martin Wolf


BBC 2008/10/09 Time to reform the IMF? By Katie Hunt

185カ国が加盟し、通貨・金融危機に対する早期警戒システムを構築したはずのIMFが先頭に立って危機を鎮静化できないとしたら、その存在理由が問われます。

IMFは予測に失敗し、有効な政策手段を持たず、国際協調を組織する力もありません。ただし、BISやOECDも危機の予測には失敗しています。

IMFはアジア通貨危機に際して、各国政府による銀行の救済に反対したことを翻しました。それゆえ、ダブル・スタンダードという批判を受けています。

Surviving the hurricane Larry Elliott The Guardian, Friday October 10 2008

バブルの最中に、早期の金融引き締めを行うこと。好況の際に財政黒字を出しておくこと。金融政策に資産市場のバブルを考慮すること。

Navigating the Storm By John Lipsky WP Friday, October 10, 2008

IMFの副専務理事が、資本流出を止める国際的な預金保険制度と、その後の主要国による世界マクロ政策協を提案しています。

LAT October 11, 2008 What we've lost Tim Rutten

A good man in a crash. Now can he show how to mend it? Polly Toynbee The Guardian, Saturday October 11 2008

A new order must be imposed on the City The Observer, Sunday October 12 2008

The Next World War? It Could Be Financial. By Peter Boone and Simon Johnson WP Sunday, October 12, 2008

このまま放置すれば、各国は自衛のために隣国の金融秩序を破壊する、という金融戦争が起きるだろう。金融危機になれば、インドネシアでも、ロシアでも、アルゼンチンでも、外国の債権者に対して自国民を守るために法律を変えてしまう。

イギリスのブラウン首相がイギリス人預金者の扱いについてアイスランドを訴えたこと、さらに、テロ対策の法律を使ってアイスランドの在英資産を差し押さえたことは、国際金融戦争を過熱させる象徴的行為となった。

こうした敵対的行動が増えれば、国際金融を長期にわたって妨げ、国際政治にも影響し、世界の安全保障にも問題が生じる。しかも、アイスランドだけでなく、東欧圏やトルコ、ラテンアメリカなど、世界中の小国や周辺諸国で金融危機のリスクが急速に高まっている。ロシア、ブラジル、インドでさえ、債務の借り換えを拒まれる。同時に、アジア通貨危機の際にIMF融資と安定化を支持したアメリカの影響力が低下している。

国内の金融危機が国際金融戦争に拡大することを防ぐために6つの要請を行う。1.主要国の銀行が資本増強する。2.銀行預金と債務に、期限を設けて、包括的な政府保証を与える。3.大幅な金融緩和。4.流動性供給の継続。5.財政刺激策。6.住宅所有者への救済策と住宅価格の下落防止。

Overseeing Finance's New Era By Henry Kaufman WP Sunday, October 12, 2008

金融危機は金融機関の集中をもたらし、危機が沈静化すると、その後の規制緩和を促進する。そうであれば、さらに巨大な金融コングロマリットを監視する制度が必要になる。

FT October 12 2008 How to capitalise the banks and save finance By George Soros

FT October 12 2008 A system overwhelmed by innovation By Clive Crook

LAT October 13, 2008 The next president and the economy

The death of Wall Street Dani Rodrik The Guardian, Monday October 13 2008

金融革新には合理的な理由があり、関係者はすべて利益を得ることを説明できる。正しい制度のアレンジがあればよかった。しかし、救済資金が1兆ドルという、メキシコやアジアの以前の金融危機を忘れてしまうほどの規模で、アメリカの金融危機は被害を出しつつある。では、金融革新をすべて投げ捨てるべきか?

犯人探しは難しくない。むしろ犯人がいっぱいだ。住宅モーゲージを融資した業者、金融緩和を続けたグリーンスパンの連銀、それをCDSにして世界中に売りさばいた金融機関、利益を増やすためにレバレッジを使って購入し続けた金融機関、それを支持した信用格付け会社、さらに世界の反対側で貯蓄に励み、世界的な「貯蓄過剰」をアメリカに流し続けたアジア諸国、こうした持続不可能なマクロ不均衡を前提に政策を作っていた各国政府、リーマンブラザーズを倒産させたポールソンの財務省、・・・

要するに、これは自殺なのか? 殺人なのか? 事故なのか? あるいは、何か、もっと普遍的な生命体の欠陥なのか? その原因を理解していないわれわれが次の規制や制度に殺到しても、一世代を経ずに次の危機が起きる。間違いなく。

The Crisis's Silver Lining Fareed Zakaria WP Monday, October 13, 2008

FT October 13 2008 The crisis is redefining our leaders By Gideon Rachman

WSJ OCTOBER 13, 2008 A Capitalist Manifesto By JUDY SHELTON

Turning crisis into opportunity Lu Ning The Guardian, Tuesday October 14 2008

The view from the east Randeep Ramesh The Guardian, Tuesday October 14 2008

This is no time to listen to the siren call of the euro Simon Tilford and Philip Whyte The Guardian, Tuesday October 14 2008

金融危機はイギリスがユーロ圏を拒む理由を失わせたのだろうか? そうでもない、と主張します。確かに、イギリス経済はユーロ圏の変動に強く影響されるようになって、ロンドンを単にフランクフルトの郊外にしてしまったかもしれません。金融危機に直面すれば、独立の通貨圏を維持することが困難であると実感します。アングロ・サクソン型の資本主義も信用を失いました。

しかし同時に、政治統合をともなわない金融統合という実験を、金融危機は試しています。同じユーロ圏でありながら各国の国債は異なる金利を示しています。それは市場が通貨統合の崩壊するリスクを忘れないからです。例えば、ドイツやオランダは賃金を統制して、スペインやイタリアは生産性上昇が低かった結果、各国の国際競争力に差があります。貿易収支の不均衡を為替レートなしに調整する場合、赤字国の賃金下落や失業は深刻になるでしょう。

また、市場が懸念することは、金融危機に対してユーロ加盟国間で政策対立が生じていることです。各国の対策は近隣窮乏化を招いています。それゆえイギリスのユーロ圏加盟は十分な根拠を示しながらも、今すぐには起きないでしょう。

NYT October 14, 2008 Big Government Ahead By DAVID BROOKS

FT October 14 2008 Why regulating bankers’ pay is still a bad idea By Jamie Whyte

FT October 14 2008 Stimulating Asia

世界不況を回避するために、アジアを刺激するべきか? アメリカ市場に輸出することで成長してきたアジアは選択を求められる。縮小する輸出市場を奪い合って不況を加速するか? それともたがいに輸出を伸ばして世界経済の景気悪化も緩和するか?

今年前半で、中国政府は1740億ドルの財政黒字を出しており、減税や社会保障の充実に使える。アジア諸国は、消費を抑制して輸出のための投資するより、もっと消費し、もっと輸入して、国民を豊かにできる。

FT October 14 2008 World trade

WSJ OCTOBER 14, 2008 America Will Remain the Superpower By BRET STEPHENS

Greenspan Age of Turbulence Is Getting Asia Down William Pesek Oct. 15 (Bloomberg)

1997年のアジア金融危機を描いたのはNaomi Klein's ``The Shock Doctrine,''であった。そこにはグリーンスパン議長が危機を歓迎し、これでアジアが生まれ変わると称えている。アジア開発銀行の黒田総裁も、危機後の改革があったから、現在、アジアは欧米の金融危機に対して強さを示している、と主張します。

アジア通貨危機、日本の「失われた10年」からアメリカは学んだ、と主張するより、アジアが学ぶべき大恐慌以来の5つの教訓があります。1.正しい規制、2.金融商品の透明性、3.市場イデオロギーの排除、4.アメリカ一極集中の排除、5.国際協力。

アジア諸国は協力して、積極的に金融を緩和し、銀行の支払いを保証し、各国の外貨準備から共通の救済基金を設け、言葉だけでなくアジア地域協力を実現するときである。

Risky business Kenneth Arrow The Guardian, Wednesday October 15 2008

Back to the future? No, thanks Jonathan Michie The Guardian, Wednesday October 15 2008

Tobin's nice little earner The Guardian, Wednesday October 15 2008

この危機によって政策集団内の認識は大きく変化し、トービン・タックスに対する国際協力が可能になった。国際通貨取引に1%の100分の1を課税して、危機のための財源を形成しながら、短期的取引の過熱を防げる。

BBC 2008/10/15 Will China bail out the West? By Michael Bristow

1兆9000億ドルの外貨準備を使って、中国は西側世界を救済するだろうか?

融資には条件がつくだろう。中国政府の優先順位は国内改革である。特に、農村部の所得倍増を約束した。そのためには世界経済の減速の影響を避けるために、もっと国内や新興諸国の取引を増やす必要がある。

また、中国が単独では行わない。アラブ諸国やロシアなど、新興諸国の外貨準備も含むだろう。それは西側政府との政治的なギブ・アンド・テイクでなければならない。例えば、アメリカが台湾に売却する武器だ。

History lessons for financial crisis: Act fast, act globally By Robert Marquand CSM October 16, 2008 edition

Don't Blame Capitalism By Peter Schiff WP Thursday, October 16, 2008

NYT October 16, 2008 Asia Looks to Its Own Consumers to Bolster the Region's Economies By KEITH BRADSHER

FT October 16 2008 A better way to revive credit markets By Robert Aliber

国際金融のマネーゲームとその歴史を熟知したアリバーなら、金融市場の混乱を魔法のように消すことができるかもしれません。用意する材料は、アメリカのモーゲージ証券(MRS)、財務省の安定化資金(Tarp)、そして証券市場です。

専門家の方は原文を読んでください。要点は、大部分の住宅所有者が月々の支払いを続けている、しかし、証券市場は機能せず価格が短期的に暴落している、また、銀行は長期的な価格水準で見た損失に対する十分な準備金を持っている、ということです。

銀行の持っている住宅モーゲージのすべてを新しいトラストに集め、毎週、市場で一定額の証券を売却します。財務省のTarpは(パニックによる価格下落が行き過ぎているなら)このオークションに介入して、その少し上で底値を決めます。それより安く購入した銀行はボーナスを得ます。また、こうして決まった価格は他のMRSの評価を引き上げます。将来、不安が消えて、市場に流動性が戻ったら、価格は回復して財務省はより高い価格で証券を市場に売却し、大きな利益を得るでしょう。

流動性危機を回避し、長期的な投資を回復させ、妥当な水準で、市場に拠って損失処理を受け入れさせる、というイメージでしょうか。不良資産を選び、その価格を評価する必要はない。透明な市場の選択にゆだねる。オークションの情報は公開される。

A new cop for global finance CSM October 17, 2008 edition

錆ついてしまった制限速度の標識に代わって、「ブレトン・ウッズU」を開催するときです。アメリカ、イギリス、フランス、インド、中国の意見は異なっていますが、共通の繁栄を築くためには基礎が必要です。ブラウン首相のイメージによれば、その合意はより透明で、長期的な投資を重視するだろう。銀行はより多くの資本を融資によって保持する。経営者たちの資格や、正しいリスク評価を求めて、政府が金融機関を監視する。


The Guardian, Friday October 10 2008

Kicking Iceland while it's down

Ben H Murray

FT October 10 2008

A cruel wind

By Kate Burgess, Tom Braithwaite and Sarah O’Connor

(コメント) アイスランドの金融部門民営化と自由化、最近の金融技術を学んだ一握りの企業家たちによって、国を巻き込んだ繁栄の錬金術が横行し、ついに破たんするまでの経過を簡潔に描いています。

アイスランド危機の作り方。用意するものは、銀行部門の民営化、漁業組合の年金、自信過剰な金融工学の同窓生たち。

1973年まで、アイスランドは世界銀行の分類で発展途上国でした。ほとんど漁業のみに依存した貧しい国だったからです。1991年から2004年に改革が進みます。危機前には、世界でも最も裕福な所得水準を得ていました。ただし、膨大な債務と輸入に頼っています。

民営化によって成立した三つの銀行は、自分たちの北極海のゴールドマンサックスと自慢していました。グローバリゼーションによる投資の自由化、情報通信技術は経営者がどこにいるかを無視させます。国際的な借入に拠って、北欧やイギリス、ドイツで企業を買収します。製薬業、通信業、小売業、何より金融サービス業でした。アイスランドの成長は不動産や株式のブームとなって、ますます資金を引き寄せました。

中央銀行が、IMFが、格付け会社が、アイスランドに警告を発しました。銀行は次第に融資を減らし、資産を分散し始めています。資金調達でも外貨建て借り入れではなく、インターネットを介した外国からの預金集めを拡大し、また、ドイツの商業銀行を買収しました。主要銀行の一つは、毎月、ヨーロッパの諸銀行から7億ユーロの預金を奪った、と言います。

しかし金融危機が欧米市場で勃発し、アイスランドの借り入れコストを増やし、資産価格とアイスランド通貨の価値は急落します。インフレが高まり、生産は減少し、不況が迫っています。政府は銀行を国有化しましたが、政府自身がデフォルト寸前です。近隣諸国は救済融資を行わず、NATO加盟国でありながら、政府はロシアに頼りました。イギリス政府は預金者や地方政府が支払いを受けられないことに憤慨しています。

金融危機は、銀行・金融部門が膨張することで生じたブームの結末です。

The Guardian, Saturday October 11 2008

Don't mess with Iceland

Roy Hattersley

FT October 12 2008

The shocking errors of Iceland’s meltdown

By Richard Portes

(コメント) 危機の発生過程について、Richard Portesは政治的要因を説明します。アイスランドのGlitnir Bankは資産内容も健全で、不良債権や危険なデリバティブ契約を抱えていませんでした。しかし、金融危機のせいで市場の短期融資を得られなくなったとき、Glitnir Bankが融資を求めたアイスランド中央銀行(ICB)は、それを拒みました。そして、懲罰的な条件で国有化したのです。

ICBの総裁David Oddsson2005年にICBに入るまで、13年間、首相を務めました。Portesは、この国有化はDavid Oddssonの政治的判断であり、技術的に見て無能で、市場を無視していた上に、直後の彼のコメントは危機を悪化させた、と強く批判しています。

その結果として、アイスランドの格付けは低下し、通貨価値も急落します。Kaupthingはまだ市場で生き残っていたのに、Oddssonはイギリス人の預金者に対する保証を否定する発言をします。この発言も国内政治向けに行われたものでした。イギリスのブラウン首相もテロ対策法を使って報復し、金融危機を悪化させます。

他方、アイスランド・クローナの国内取引は行われないまま、海外市場でその価値が大幅に下落します。これに対してICBは更に失敗を重ねます。市場を無視した水準で為替レートを固定すると表明し、有効な手段を取ることもなく維持できませんでした。さらに、首相はロシアからの融資を40億ユーロ受けると、交渉し始めたばかりの段階で発表し、市場の不安を高めてしまいます。

Portesは考えます。1.アイスランドの銀行はレバレッジが高く、国内経済規模を大きく超えた取引をしています。しかし、それはイギリスやスイスも同じです。資本移動により危機が波及する恐れもあります。2.政治家が中央銀j高総裁になってはいけません。部分的なユーロ加盟や、IMFによる融資など求めるべきではないでしょう。それは政治家の発想です。

アイスランドは変動レート制を取るべきではありません。大幅に価値が下落して社会混乱を招くからです。政府が資本規制して、固定レートを守るべきです。あるいは、EUに加盟する交渉を開始し、ユーロを採用するための為替レートの変動幅をユーロ当局と合意することです。

アイスランドには優れた制度や人的資本があり、優れたサービス企業があるから、より規模を縮小した優れた銀行は残り、一時的に生活水準の低下はあっても繁栄を取り戻せる、と。

FT October 14, 2008

Iceland: wiser counsels should have prevailed

by Robert Wade

NYT October 15, 2008

Iceland Looks for Help to Stave Off a Crisis

By REUTERS

FT October 15 2008

Iceland out cold

(コメント) アイスランドの困難は、銀行の債務に対して、市場評価が悪化した結果、資産が足りなくなったことです。その不足分は今後1年で約100億ドル。資産を投げ売りして400億ドル、他にも、将来のエネルギー生産を現金化し、年金を担保に借り入れ、ロシアからも融資を受けて、その差を埋めます。

為替市場は成立しません。危機は、短期借りで長期投資を行ったアイスランド人の失敗ですが、イギリスのFSAが彼らに、イギリス人から預金を奪うことを許したのは、失敗でした。


NYT October 12, 2008

The Post-Binge World

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 議会が救済融資を認めても、銀行が融資を再開しないのはなぜか? 今の世界は、陽気なばか騒ぎで飲み明かした後なのです。株式、債券、銀行、・・・信用で膨張してきた資産価格は正常に戻ります。

「ベルリンの壁が崩壊した後、事実上、世界中の経済が資本主義になって、資本を求めてさまようようになった。」と、THOMAS L. FRIEDMANは問題の起源をそこに求めます。間もなく金融工学が現れて、何でも資産に変えられるものは市場で売買するようになりました。住宅の抵当も、銀行融資も、バラバラにして証券化し、世界のどこででも、誰でも売買できる金融商品の一部になり、年金や保険などを集めた金融機関が資産として購入しました。

この「金融サービスの民主化」は喜ばしいニュースでした。貧しい人々も住宅を購入し、貧しい諸国も急速に成長する機会を得ました。

しかし、あまりにも複雑化した食物連鎖の一部が有毒であったことに市場参加者はショックを受けて、何も食べられなくなりました。金融システムの全体がパニックに感染し、政府が介入することで金融機関のバランス・シートを整理し、資本を増強することもできないのです。世界的な規模で、もっと真実に依拠した金融システムが再建されるべきです。


FT October 12 2008

A stake in the land

(コメント) 農民が土地の売買を行う権利を持つことは、うまくいけば、農村の貧困や社会問題を解決するでしょう。しかし、制度の改革には予想外のリスクがあります。旧ソ連圏の民営化がそうであったように、貧しい農民からの土地収奪や「囲い込み」、一層の富の集中、そして土地なし層の大規模な都市流入が起きるかもしれません。


WP Monday, October 13, 2008 Delisting North Korea By Victor Cha

WP Tuesday, October 14, 2008 In Korea, Rituals of Absurdity By Anne Applebaum

NYT October 14, 2008 The Latest North Korea Deal

WP Wednesday, October 15, 2008 Settling With North Korea

(コメント) 北朝鮮のテロ支援国家指定が解除されました。Victor Chaは、ブッシュ政権が何を計算したのか、考えます。金融危機やイラク戦争の処理のまずさがブッシュ政権の成果として北朝鮮との交渉を推進させているのでしょう。しかし同時に、この決定はオバマとマッケインの大統領選挙にも影響します。

アメリカ国務省は、金正日死亡による混乱や再度の核実験を心配したのかもしれません。


FT October 13 2008

Sinking feeling

By Louise Lucas, Song Jung-a and Raphael Minder

FT October 16 2008

South Korean won plunges 9.7%

By Song Jung-a in Seoul

(コメント) 韓国はアイスランドに比較されて憤慨したそうです。確かに、人口規模でも、経済の中身でも、アイスランドとは異なります。しかし、なぜ韓国が金融危機を噂されるのか?

韓国は世界一の造船業を誇っています。しかし、金融危機が世界景気を冷やせば、海運業は仕事が減り、造船の注文も減る、というわけです。大企業も資金が調達できなくて、ウォン安を加速しています。今年に入って24%も減価し、危機の記憶がよみがえります。

韓国の銀行は、アメリカやイギリスと同じように、市場で資金調達して長期融資をしています。金融危機はこれを破壊しました。しかも、ドル建で借りています。国際金融市場で資金を借り換えることができなければ、企業も、銀行も、政府も破たんします。家計は以前よりも債務を負っています。貿易収支は以前の危機後で初めての赤字になり、株式を売却した外資系の金融機関が資本を流出させています。

韓国の電機産業や造船業の世界的な成功は、資金調達を容易にしてきましたが、そのことが国際金融危機によって、逆に、リスクを高めました。クレジット・カード普及政策によるバブル破綻もあって、政府の資金調達や為替レート対策は信用されていません。


FEER October 13, 2008

Will This Be America's 'Lost Decade'?

by Kazuo Ueda

FEER October 14, 2008

How Vulnerable Are Asian Markets?

by Christopher Wood


IHT Tuesday, October 14, 2008

Asia's reawakening resentments

By Philip Bowring

(コメント) 金融危機が広まってからIMFはしきりに欧米市場の救済を正当化しています。中国の人民銀行幹部は、IMFが行うマクロ政策のサーベイランスは欧米諸国に甘かった、と批判しました。それはいつものことです。欧米諸国、特に英米は有利であり、オーストラリアは韓国と比べて金融不安が起きても不思議ではないのに、韓国の金融市場が動揺します。国際金融市場やIMFの政策評価には、欧米や白人の優位、非白人の劣位を前提したバイアスがある、とPhilip Bowringは批判します。


WP Tuesday, October 14, 2008

Keynes Would Have Seen It Coming

By Robert Skidelsky

(コメント) 金融危機の理由については多くの欠陥や問題が指摘されています。しかし、本当に危機を説明できる理論が欠けています。金融市場がバブルとその破裂を繰り返すことを、ケインズはよく理解していました。

ケインズは、1920年代のブームから、規制されない金融市場がもたらす不確実性を確信しました。しかし、その後、アーヴィング・フィッシャーの理論が採用されて、物価の安定性を金融政策の目標にします。しかし、物価は景気に遅れて変化します。景気が過熱しても物価は安定していることがあります。経済が不況に入ってもバブルは続くのです。

ケインズは1930年代の危機の後、経済活動が低水準のまま、「低雇用均衡」を続けることを学びました。それを変えるには外的なショックが必要です。当時のそれは第二次世界大戦であり、1990年代の日本はその欠如によって停滞を続けました。

ケインジアンたちは、金融市場に「バタフライ・コリダー(蝶々の回廊)」を設けたいと願っています。将来の不確実さによって投資家たちが心理的な振幅を描く傾向を抑えたいからです。


FT October 14, 2008

Reserve accumulation and financial stability

By Maurice Obstfeld, Jay C. Shambaugh and Alan M. Taylor

(コメント) 資本移動が活発な世界に生きる中央銀行家にとって、金融政策の自律性と為替レートの安定性とは、資本移動の自由と同時に成立しない、トリレンマを形成する、と指摘されます。この論説は、それにしても、なぜ新興市場は外貨準備を増やし続けるのか、という問題に、金融深化と資本移動を組み合わせると、金融市場が突然死する可能性が高まるからだ、と考えます。銀行への取り付けと外貨への資本逃避が起きるのです。


FT October 16 2008

We need to guard against destructive creation

By Jagdish Bhagwati

(コメント) 金融危機に直面しても、政府・中央銀行は金融引き締めや緊縮財政を目指さないし、保護主義には強いることもない。危機の教訓は生かされるだろうから、大恐慌は再現しない、とJagdish Bhagwatiは考えます。しかし、国際金融システムが本当に安全な形で再建されるためには、「ウォール街=財務省複合体the “Wall Street-Treasury Complex”」による支配を抜け出す必要があります。金融技術の革新は必ず破壊的な局面がともなうのであるから、その全体を考慮してリスク管理しなければならない、と。

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The Economist October 4th 2008

World on the edge

Money markets: Blocked pipes

Global banks: On life support

Cross-border rescues in Europe

The Federal Reserve: Plan B

Deposit insurance: A useful fiction

Rethinking Lehman Brothers: The price of failure

Echoes of the Depression: 1929 and all that

Economics focus: The resilient dollar

(コメント) 国際金融市場は停止し、銀行は生命維持装置で何とか存続しています。アメリカ連銀の不安、EUの不安、さまざまな制度は危機に対応できません。かつてユーロ市場における信用創造はあるか、という議論を思い出しました。無い、という答えでしたが、今は違うように思います。

欧米から大恐慌は起きないと思いますが、新興経済発で起きるかもしれません。日本型の停滞も、政治が混乱すれば、世界中で起きるでしょう。ドルからユーロへの移行が円滑に進むのか、それも分かりません。


The Economist October 4th 2008

John McCain and Barack Obama: An inconvenient truth

US Election 2008, A Special Report: The battle of hope and experience

The US-Mexican border: Good neighbours make fences

Immigration and the European Union: Letting some of them in

Apologies: Who’s sorry now?

(コメント) いずれも詳しく読めませんでした。面白そうですから、記録にとどめます。