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IPEの風 10/19/08
祝日なのに授業がある、という、とんでもない(!)日に、自動車で京田辺キャンパスへ向かう際、ラジオの国会審議を聞きました。民主党の何某氏が麻生首相や中川財務・金融担当大臣、桝添厚生労働大臣を厳しく追及し、彼らも答弁に立って、その指導的地位に応じた責任を引き受け、行動を起こすための所見を述べていました。国会における野党の追及、与党の答弁、ともに素晴らしいものだと感じたのは、政治家たちが選挙を、しかも政権交代につながる可能性の高い選挙を前に、強い緊張感を持っていたからでしょう。
アメリカ大統領選挙の第二回討論会の後、オバマとマッケインがそれぞれ話した内容や姿勢を、テレビで直ちに紹介し、政治評論家が評価していたことに驚きました。オバマは大学教授のように説明し、未来や希望を語る雄弁家ですが、マッケインはタウンミーティングに強い毒舌家、個性派、情緒派です。
日本でも、週末には各放送局がコメンテーターを並べて政治談議を広めています。ビートたけしのTVタックルや爆笑問題の模擬国会論戦も非常に面白いです。さらに、政治家を個別に呼んで、国会審議の要点を説明させ、司会者や聴衆の質問に答え、さらに専門家たちが評価する番組を作ってほしいと思います。
ジンバブエの天文学的なハイパーインフレーションがゼミで話題になったとき、通貨秩序の回復を主張する保守派の強い政治指導者が現れない限り、インフレは容易に終わらない、と言いました。それはC.S.マイアーが指摘したインフレーションの政治的な諸段階です。
ハイパーインフレーションは、しばしば、弱体な・分裂した民主政府が、社会の各階層から生じる不満を聞き入れるため、増税せずに次々と支出を増やして、通貨を増発することから生じます。その後、インフレが次第に手に負えなくなり、加速していくにつれて、政治・経済秩序が完全に失われ、人々は年金や資産、雇用まで失って、生活水準の急激な低下に苦しみます。そして、激しいインフレを止めるためなら、強烈な・権威主義体制、軍事的支配でも歓迎するようになります。
もし社会主義的な政府が労働者たちから支持を得ようとすれば、大幅な増税や金融引き締めの約束はなかなか実行できません。むしろ信用されず、資本家たちは長期の投資を行わないし、通貨価値の下落が続く中で、むしろ資本逃避を加速するでしょう。なるほど、これは資本家のストライキです。政府が倒れ、インフレ抑制の必要を受け入れた保守派政権の下で、国際的な融資を受けて為替レートや物価は安定し、投資もようやく回復します。
ところが、競争的な利潤動機に投資を委ねていると、さまざまな条件下で(特に「・・・革命」などの過信から)、金融緩和がついには投機の過熱に向かい、資産価格の暴騰から暴落へ変わるようです。金融機関の資産が減少し、不良債権を抱えて、融資できなくなります。結局、金融ビジネスの利益は私物化されたのに、その損失を放置した場合の不況が怖いので、システムの危機を回避するために政府の公的資金で救済します。なるほど、これは資本家のための社会主義である、と思います。
TVニュースを観ていると、香港の玩具会社が中国の二つの工場を閉鎖した、と伝えていました。玩具の主な市場はアメリカであり、労働者7000人が未払いの賃金などを求めて集まり、抗議しているため、警察が鎮静化に努めています。市当局が労働者への支払いを保証しました。アメリカやヨーロッパの金融危機は、こうして速やかに中国の生産工業に波及し、政府が直接介入して、銀行ではなく、労働者への最後の支払保証を提供しています。
日本でも金融機関が巨額の損失を出し、公的資金で救済されるようになるのかどうか、私にはわかりません。証券化やレバレッジに慎重で、もしくは、不得手であったことが幸運であった、と言われます。しかし、低金利の続く日本で、さまざまな怪しい金儲けの情報がはびこっているとき、金融革新に手が出ない人々や地方の銀行ほど、中身の分からない複雑な国際金融商品を保有しているのではないか、と心配です。
もし政府が不況対策で支出を増やすなら、銀行を救済するより、不正規雇用の対策に重点を置いてください。労働者を支援する新しい制度や組織化を促し、弾力的な雇用契約のフォーマルなモデルと法的権利を強化してはどうでしょうか? そして、起業や正規雇用への転換が連続するような労働の未来を開いてほしいです。
国際金融危機と労働者の復権を中心に、真剣な国会論戦を期待します。
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