IPEの果樹園2008

今週のReview

10/12-10/17

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

朝鮮半島の変化1,−2、 ポールソンのTARP、 世界資本主義の管理、 洞窟の住人、 SARSパニック、 Wolf1−2、 Bergsten、 Reich、 De Grauwe国有化、 Shiller、 Thaksinグローバル・ドル証券、 Subramanian中国からの救済融資、 アイスランド破たん、 イギリスの指導力、 中国の農民

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


WSJ OCTOBER 2, 2008

The World Shouldn't Fear The Collapse of North Korea

By JOHN R. BOLTON and NICHOLAS EBERSTADT

The Japan Times: Monday, Oct. 6, 2008

After the Dear Leader has passed

By YOON YOUNG KWAN

Asia Times Online, Oct 7, 2008

The facts and fables of a unified Korea

By Andrei Lankov

(コメント) 北朝鮮の内部の変化を、周辺諸国は警戒しているでしょう。北朝鮮自身が内部から政治転換を実現するのか、あるいは、体制の崩壊が進んで国際介入を要するのか、予測できません。いよいよ東アジアの秩序が動き出し、金融危機後の国際秩序に重要な役割を果たす時代が来る、と思います。The Economistの特集記事もありました。

JOHN R. BOLTON and NICHOLAS EBERSTADTは、大量破壊兵器の管理を重視します。政治体制が崩壊する時期に、核兵器や生物化学兵器を使用させないための工夫を必要とします。内戦の混乱がその引き金になる可能性は高く、むしろ軍による核の管理体制継続を優先するのが良い。同様に、北朝鮮から周辺諸国への難民流出は、長期的な帰還や韓国への受け入れ態勢を用意し、その移住の権利を保障するべきだ。

韓国は統合による経済コストを恐れて延命策を支持しているが、北朝鮮が改革を延期するほど、その埋めなければならないギャップとコストは大きくなることを忘れてはならない。統合された朝鮮半島には、より大きな経済的機会があり、しかも、アメリカにとって強力な同盟国となる。

韓国の元外務大臣YOON YOUNG KWANが指摘するように、今も、南北の分断は冷戦期のイデオロギー対立を継続しています。しかし、1990年代初めにソ連の支援が失われて、計画経済は行き詰まり、人々は飢餓に苦しみ、インフォーマルな市場によって生きるしかなくなりました。今では貨幣経済が浸透しています。体制を維持するための最後の手段が核兵器の開発であったけれど、市場の浸透は北朝鮮の社会を変えてしまうだろう、と予想します。

しかし、政府はますます軍部の力に依存し、経済官僚は影響力を失っている。また、金正日の重病や死亡は集団指導体制をもたらすかもしれないが、その安定性は疑わしい。東アジアの将来に大きな不確実性が生じるだろう。

他方、Andrei Lankov Roh Moo-hyun前大統領の演説を取り上げます。彼は、南北統一の形態がEUのような連邦制しかあり得ず、その場合、半島全体で自由民主主義の政治体制を採用できず、今の北朝鮮政府が相手であろう、と認めます。また、その際に人権や難民の扱いを北が反対することも率直に認めています。Rohは、南北統一よりも、平和と繁栄を維持することの方が重要だ、と考えます。

これは、南北が互いに相手の社会政治体制を認めず、半島の統一を主張してきたことを思えば、重大な転換です。朝鮮戦争の経験や記憶は若い世代に失われ、1997年の金融危機を経験して右派の根拠が揺らぎ、ドイツの東西統一がもたらしたコストや結果が知られるにつれて、韓国の左派・若者における統一熱は失われたのです。そして、平和的な共存と長期の経済支援が、準備段階として主張されます。

韓国において独裁体制に反対し、人民の声を代表するという政治的な立場を支持してきた人々が、北の独裁者の体制を支援し、その転換を「破滅的である」と非難するのは皮肉なことだ、とLankovは指摘します。


This primal scream of rage is a call for thorough overhaul Larry Elliott The Guardian, Friday October 3 2008

ポールソンの救済案はハンプティー・ダンプティ―を元に戻そうとしている。しかし、いくら7000億ドルを用意しても、バーナンキが流動性を与え続けても、金融システムは元に戻らないだろう。

第一に、金融ビジネスは膨張してしまった。危機が終われば、銀行の数は減っているだろう。第二に、銀行は損失を埋めて融資を再開するために新規資本を必要としている。だからスウェーデンのように、公的資本を注入すると同時に、納税者が銀行を監視し、その不良債権処理を強制し、株主ではなく預金者を守らなければならない。第三に、不況が続けば不良債権は増加し、銀行システムの再建も遅れる。だから、G7が積極的な景気刺激策を合意しなければならない。

たとえポンドが減価していても、それは金融不安があるからだ。不況を回避するために、今、金有緩和しなければ、日本のような長期の停滞に落ち込む。

NYT October 3, 2008 Edge of the Abyss By PAUL KRUGMAN

金融システムが崩壊したり、深刻な不況になることはない、と言えたのは以前の条件であり、今はそれが起きつつある。リーマンを倒産させたのはポールソンの判断ミスだった、と考えます。

議会で当然多くの批判と修正を受けた救済法案が成立してから、危機を回避するにはスウェーデン型の一時国有化により金融システムを再編することをKRUGMANは支持します。また、実体経済が深刻な不況に落ち込まぬように緊急の刺激策が必要です。しかし、政府が必要な支援を与えることも、ブッシュ政権では考えられません。

NYT October 3, 2008 The Borrowers By BETHANY McLEAN

FT October 3 2008 Fear and loathing after the credit crisis By John Willman

FT October 3 2008 Outside Edge: No other word for it but a bail-out By Jurek Martin

FT October 3 2008 Europe: In it together By John Thornhill

Taking the long view By Giles Merritt IHT Friday, October 3, 2008

A crisis made in the Oval Office Dean Baker The Guardian, Saturday October 3 2008

WSJ OCTOBER 3, 2008 How Government Stoked the Mania By RUSSELL ROBERTS

Asia Times Online, Oct 4, 2008 The mother of all golden parachutes By Hossein Askari and Noureddine Krichene

ポールソンの提案"Troubled Asset Relieve Program" (TARP)は、政府による巨大な「ゴールデン・パラシュート」である。金融機関が保有する価値の下がった資産を、ポールソンが発行した財務省証券で集めるバーナンキが発行したドルで、購入する。銀行は余ったお金で財務省証券を保有し、利益を得られる。そしてバーナンキがもっと流動性を供給し、住宅価格を上昇させるに至れば、ポールソンは損失を出さなくて済む。しかし、そこまでやらない。

たとえ今でも、議会はTARPを認めてはならなかった。危機の原因と金融システムの改革について、独立の委員会を設けて報告させるべきだ。そして、中央銀行の役割、金融部門の再生、長期的な安定性の確保、供給条件を重視した成長の枠組み、を確立するべきだ。

LAT October 4, 2008 Mean St. replaces Main St. Tim Rutten

NYT October 5, 2008 End of an Era on Wall Street: Goodbye to All That By TIM ARANGO and JULIE CRESWELL

A short history of capitalism's rise and fall Will Hutton The Observer, Sunday October 5 2008

This terrifying moment is our one chance for a new world Will Hutton The Observer, Sunday October 5 2008

危機が教えているように、もっと公平で、長期的な投資を重視した金融システムを築くときだ。これまでの市場システムに関する政治的解釈が間違っていたことは明白になった。これは挑戦であり、希望の始まりだ。

Out of crisis comes an opportunity for change The Observer, Sunday October 5 2008

9/11 Was Big. This Is Bigger. By David Rothkopf WP Sunday, October 5, 2008

金融危機は始まったばかりだが、すでにその影響は9・11よりもはるかに大きく、はるかに長引くだろう。9・11はわれわれが世界に対する見方を変えた。しかし、この金融危機は世界がわれわれに対する見方を変え、世界の機能する仕方を変える。

次の選挙に問われているのは、レーガン=サッチャーのドグマを超えて、アメリカが新しい資本主義を選択するか、ということだ。それは効果的な規制をともない、複雑な世界的規模の資本主義を管理する国際制度の下で、政府は市場によって成長を促すけれど、市場に取り残された人々を守る、そんな資本主義である。

Bad Medicine By James Grant WP Sunday, October 5, 2008

He Told Us to Go Shopping. Now the Bill Is Due. By Andrew J. Bacevich WP Sunday, October 5, 2008

NYT October 5, 2008 Swedish Spoken Here By THOMAS L. FRIEDMAN

NYT October 5, 2008 Foreclosures and the Right to Vote

FT October 5 2008 Short shrift By James Mackintosh

SARS Offers Lessons for Credit Panic Kevin Hassett Oct. 6 (Bloomberg)

これがパニックというものだ。投資家たちは出口に殺到し、値段と関係なく、とにかく流動性を、換金することを求める。しかし、これほどの規模でパニックが起きるのは珍しい。

歴史を探せば、大恐慌、あるいは1907年や1837年にさかのぼる。あまり古い例は参考にならない。むしろ、もっとも最近の例として2003年のアジアにおけるSARSのパニックを参考にすることだ。それは10万人に26よりも少ない例であったが、北京の観光収入が80%も減少し、四半期にGDPが5%低下した。香港、シンガポール、台湾でも同様であった。

香港では25%の人が自分も感染すると考えたし、感染したら死ぬと信じていたが、実際の死亡率は11%であった。正確な情報もないまま、主観的な確信により、人々は群集行動に向かった。ある者は感染を恐れて職場にも行かず、それがまた他者の不安を強めた。

SARSの脅威がなくなるより前に、パニックは終わった。シンガポール政府は、毎日、最新の情報を提供した。「病気の性質、症状、感染メカニズム、感染者数、死亡者数、回復の可能性、予報のための衛生情報」を詳しく教えた。その結果、シンガポールで自分を感染者と誤解したケースは、香港の半分にとどまった。

感染者は確認され、隔離された。対処する選択肢が存在し、感染を避ける予防法も示された。金融市場のパニックでも同じである。透明性を重視することだ。それは難しいように聞こえるが、簡単な方法がある。

政府は、不良債権を買い取るのも良いが、それだけでは終わらない。金融監督者が健全な金融機関を選別しなければならない。返済できない債券の条件を見直し、市民は資産を安全に保つために、現金化するべきか、保有し続けるべきか、明確な指針を得なければならない。政府が沈黙することはパニックを拡大する。

Beyond the bail-out Dean Baker The Guardian, Monday October 6 2008

How the Euro is gaining currency John Stevens The Guardian, Monday October 6 2008

Is It 1929 Again? By Robert J. Samuelson WP Monday, October 6, 2008

今の状況は1929年と似ているが、違うことも多い。

当時もローンで買い物し、住宅価格は上昇していた。株価下落に人々は驚き、世界的に広まった。しかし、今の方が政府支出は大きく、しかも、迅速に行動しようとする。不況の程度や株価の下落率も大きく異なる。当時は19327月までに、ピークから90%も下落した。何よりも、銀行の5分の2が倒産して、当時の連銀は通貨供給を増やさず、減少させてしまった。これが恐慌を拡大した主要な原因である。

このまま不況になるだろう。住宅の過剰供給は解消されねばならない。消費者は慎重になるし、銀行もさらに損失を出して、つぶれるかもしれない。しかし、これは不況から回復に向かう通常の過程である。非常に複雑な世界の金融システムが回復を遅らせ、政府が間違った対応を取れば危機が深まる。しかし、そうでなければ、1929年が再現することはない。

NYT October 6, 2008 Detroit Got Its Bailout

FT October 6 2008 Inadequate cover By Francesco Guerrera in New York and Andrea Felsted in London

FT October 6, 2008 The case for a coordinated rate cut Willem Buiter

BG October 6 2008 Making some sense of $700b By James Carroll

WSJ OCTOBER 6, 2008 Politicians can make the adjustment more or less painful. By ZACHARY KARABELL

金融危機によって一つの時代が終わる。アメリカは引き続き重要な中心地であるが、世界の中心ではなくなる。

アメリカは1945年のイギリスではないし、現在の中国は当時のアメリカではない。しかし、今後、アメリカは資本を得るために、投資国に対してさらに従順でなければならない。1970年代以来、アメリカは資本流入をドイツや日本に頼り、その後、台湾、シンガポール、韓国などにも頼ったが、それらの国はかつてアメリカが援助した復興した国だった。

アメリカはグローバリゼーションを推進した結果、労働力のかつて半分を吸収した製造業が今では10%だけになり、それに比べて金融部門が拡大してきた。この間、特に最近の5年間は、莫大な富がアメリカやヨーロッパから、アジア、中東、ロシアへと移転したのである。愚かなほどレバレッジに頼ったウォール街の金融システムに、世界の富が依拠していた。

しかし、その時代は終わるだろう。第一に、金融危機後、新しい経済はアメリカの金融市場に依拠しなくなる。各国の中産階級は金融に関しても自信を深めた。他方で、アメリカ市場はアラブ諸国や中国の政府系投資ファンドを疑うようになっている。また、アメリカにおける金融規制や会計・納税制度の強化により、外国の投資家は逃げてしまうだろう。証券市場についても、企業はアメリカ以外に、香港やロンドンで上場するだろう。

危機の後に再建される世界は、アメリカが思うほど同じではない。それはアメリカ以外の国や企業にとって、好ましいものだろう。

LAT October 7, 2008 Are we depressed yet? By Steve Fraser

Get ahead of the game Larry Elliott The Guardian, Tuesday October 7 2008

IMF・世銀総会では、新しい国際金融アーキテクチャーが議論されるだろう。格付け基準は見直されるし、IMFの早期警戒システムは批判されるだろう。

もはや銀行は安全だと繰り返す時期は終わった。個々の金融不安から、金融システムの見直しが議論され、政策担当者が危機より先行して改革を示すときである。

NYT October 7, 2008 The Testing Time By DAVID BROOKS

世界中の政治指導者たちは、経済を安定化し、浮動的な資本移動に対して何をしなければならないか、と問われている。この問題は、また、世界の経済パワーが中国や産油諸国、新興経済に移動していることと結びついている。

この膨大な資本が数1,000人の資産運用者の手にゆだねられている。彼らはハイテクで武装した「プラトンの洞窟」の住民たちである。すなわち、実際の経済活動というよりも、コンピューター・スクリーンの示す指数や変動率に注目し、人々が次に移動することを予想して、その資本を瞬間的に先回りして国際移動させる。その結果、彼らは心理的な変動にさらされる。

エコノミストたちは感情を殺し、リスクを分散しなければならない、と考える。投資においてリスク分散がおかしいとか、そして非情緒的なことを批判する。しかし、投資家たちは人間であって、不確実さの中で巨額の資本を動かす意思決定においては心理的に極端な状態が入れ替わる。うまくいっている時と、状況が悪化し始めてからでは、全く違う投資行動に支配される。

市場にあふれる流動性の海は、一瞬で、すべて枯渇してしまう。中央銀行や財務省が登場するけれど、彼らにできることは何もない。脅したり、平静さを呼びかけたり、励ましたりして、投資が再開される雰囲気を作ろうとする。

富をもたらす世界のシステムは、こうした社会心理的な変動にさらされた一群の人々によって資本を供給されている。この構造を改革しない限り、金融危機から逃れられない。そして世界は新重商主義的な各国の行動に翻弄される。

FT October 7 2008 It is time for comprehensive rescues of financial systems By Martin Wolf

現実が変化したなら考え方も変えるべきだ、というケインズの言葉を示して、歴史的な危機に迅速な対応をも問えます。1.パニックを止める。例えば預金の全額保証を行う。しかし、それはアメリカには適当でない。厳しい監視の下で、政府が民間金融機関の債券を保証する。2.自己資本を強化する。強制的な債務の株式化が望ましいが。3.不良資産を政府が買い取って保証することで、国際的に保有されている債券として投資家に市場を提供する。

また、ユーロ圏では最後の貸し手機能が働かず、危機が懸念される。協調して債務の株式化などを示すべきだ。

FT October 7 2008 Public assistance must protect the taxpayer By John Kay

FT October 7 2008 Extend state ownership to save jobs By Richard Sennett

FT October 7, 2008 Reshaping the banks: time to ask the IMF for help by Raghuram Rajan

FT October 7 2008 Hoarding cash

PostGlobal, 7 October 2008 Today's Capitalism Has Run Its Course Bashir Goth, Somalia/UAE

The unintended consequences By Paul Kennedy IHT Tuesday, October 7, 2008

WSJ OCTOBER 7, 2008 Lessons From the Selloff

WSJ OCTOBER 7, 2008 We're Not Headed for a Depression By GARY S. BECKER

危機の程度は限られている。政府が銀行の株式を購入するのは間違いだ。複雑すぎるデリバティブや証券化は間違いだった。救済融資はやめることだ。それでも、世界市場の資本主義的な地域において、早晩、次の成長が実現するだろう。

FT October 8 2008 Wanted urgently: a comprehensive and global solution By Dominique Strauss-Kahn

世界的な規模で、包括的な対策が必要である。問題の核心は、金融機関が価値の疑わしい証券を大量に購入していたことである。たとえ自分のバランス・シートに問題がなくても、保有する証券の中身に何が起きるのか評価できない。そこで、1.政府が金融機関の支払いを保証する。2.金融機関は不良資産を取り出し、損失を認める。3.損失を処理するために民間資本が足りなければ公的資金を入れる。4.国際的に対立しないよう、協調した政策を取る。5.新興市場への資本流入が流出に転換するのを緩和する。

Asia Times Online, Oct 8, 2008 Political courage the missing link By Hossein Askari and Noureddine Krichene

WSJ OCTOBER 8, 2008 A Buyer of Last Resort By DENNIS J. SNOWER

Armageddon avoided Robert Peston BBC 8 Oct 08, 04:42 PM

Why bank shares are falling Robert Peston BBC 8 Oct 08, 10:23 AM

Bailout Is Big, Bad, Ugly, the Only Answer Jane Bryant Quinn Oct. 8 (Bloomberg)

If Only Goldman, Merrill Had Been More Japanese William Pesek Oct. 8 (Bloomberg)

LAT October 8, 2008 Give the bailout time

It's not nationalisation by stealth Chris Hamnett The Guardian, Wednesday October 8 2008

Five crucial moves Will Hutton The Guardian, Wednesday October 8 2008

SPIEGEL ONLINE 10/08/2008 CAPITALISM IN CRISIS: The Broken Pact with the People By Dirk Kurbjuweit

Globalizing The Crisis Response By C. Fred Bergsten and Arvind Subramanian WP Wednesday, October 8, 2008

金融危機は世界に及んでいる。ラテンアメリカでは外国銀行が重要な役割を果たしている。アメリカだけでなく、日本、ヨーロッパ、中国でさえ、景気の悪化と悪質な感染がみられる。

基本は三つである。財政刺激策、資本増強、預金保証。これらを個別政府ではなく、国際協調として行うことだ。もちろん、景気刺激策として何をするかは国によって違う。国際的な投資や、預金の引き出しにも、合意が必要だ。

アメリカは金融救済法案を通過させた。ヨーロッパは各国別の規制や財政を調整しなければならないし、アジアは為替レートを調整して過剰な貯蓄を減らすべきだ。

Global Crisis: How Far to Go? Part I Branko Milanovic YaleGlobal, 8 October 2008

BG October 8, 2008 The end of the 'any breathing borrower' era By Nicolas P. Retsinas

WSJ OCTOBER 8, 2008 Good Policies Can Save the Economy By LEE E. OHANIAN

WSJ OCTOBER 8, 2008 We Won't Suffer a Japanese Deflation By DAVID GITLITZ

No Depression By Laurence J. Kotlikoff and Perry Mehrling WP Thursday, October 9, 2008

NYT October 9, 2008 Central Banks Coordinate Global Cut in Interest Rates By CARTER DOUGHERTY and EDMUND L. ANDREWS

NYT October 9, 2008 I.M.F. Calls for Aggressive Response to Crisis By MARK LANDLER and DAVID STOUT

NYT October 9, 2008 Saved by the Deficit? By ROBERT B. REICH

金融救済法案は議会で否決された。ウォール街を救済することに国民は不満だった。財政赤字を増やすことはどうだろうか? 1993年にビル・クリントンが大統領に就任したとき、財政赤字を増やすとしたら非難されただろう。しかし、今は財政赤字を増やす必要がある。

まず、赤字の規模は当時より小さい。確かに7000億ドルが財政赤字に加わるとすれば、そうではなくなる。しかし、住宅の価格が下落し続けるだけでなく、回復するだろう。1993年とは景気の局面が異なる。当時は回復期にあったが、今は明らかに不況へと向かっている。政府は最後の買い手として需要を維持するべきだ。大恐慌は第二次世界大戦への突入で終わったことを思い出すことだ。

同じ財政赤字のようでも中身が異なる。現在のアメリカでは、社会インフラの修復が強く求められており、学校教育や社会保険の充実も必要である。気候変動の対策もますます切迫している。こうしたことに財政支出するのは、赤字と言うより、むしろ投資である。

Financial crisis: IMF draws up emergency bail-out plans for countries Heather Stewart and Larry Elliott The Guardian, Thursday October 9 2008

IMFのStrauss-Kahn専務理事も大胆な対策を求めたが、アメリカが救済融資や財政赤字を増やして不況を回避するのとは異なっている。国連が呼びかけた貧しい諸国への資金集めは進んでいない。

Time for the bankers' silver bullet Thomas Palley The Guardian, Thursday October 9 2008

NYT October 9, 2008 The Reckoning: Taking Hard New Look at a Greenspan Legacy By PETER S. GOODMAN

FT October 9 2008 Temporary full state ownership is only solution By Paul De Grauwe

ライシュやド・グローブの意見も、私は尊重します。

経済が正常なときは、銀行が短期いで借りて長期で貸し出す。こうして銀行は信用を創造し、流動性を供給する。しかし、銀行が流動性を減らすことで、非銀行部門は流動性を得ることができる。それゆえ、銀行は信用されていなければならない。特に銀行相互の信頼は欠かせない。

ところが、その信頼が消滅したのだ。だから銀行による信用拡大のメカニズムは利用できない。銀行が互いを信用せず、短期の債務を長期の貸し付けには転換せず、短期でしか貸さない。だから金融市場が機能しないのだ。

経済から流動性が失われ、非銀行部門は信用を得られない。経済活動は停まってしまい、不況が急速に拡大する。この流動性危機の下は銀行間の協力関係が失われたことにある。他の銀行に融資する際に、その銀行が支払い不能ではないのに、他の銀行が融資しないかもしれないので、自分も融資を断る。こうして支払い不能の銀行にしてしまう。

この間違った均衡を逆転するには、一つしか方法がない。それはある程度大きな国や通貨圏の銀行システム(少なくとも、その主要銀行)を一時的に国有化することだ。流動性危機の核心にある協力の失敗を解決する制度は、政府だけである。

銀行に公的資本を追加しても、中央銀行が流動性を大量に供給しても、効果はない。流動性危機が続く限り資産価格は下落して、次々に銀行を危機に向かわせる。資本増強策では悪循環が止まらず、資本は消えてしまう。ブラックホールのようなものだ。

連銀が銀行システムを経由せず、直接に非銀行部門に融資し、企業のコマーシャル・ペーパーを購入するのは正しいことだ。それでも連銀は銀行融資をすべて代わることはできない。政府なら銀行部門を吸収し、相互の融資を命令することができる。

ポールソンの救済案は、民間債務を政府債務の交換することであり、債券価格に下限を与え、メルトダウンを防ぐものだ。銀行システムを一時的に国有化し、新しい均衡を実現することで、その後の改革を実現し、それから政府は銀行システムを再び民営化する。

FT October 9 2008 English lessons

FT October 9 2008 Reaching for the stop button

FT October 9 2008 The final bail-out

FT October 9 2008 Depression economics

BG October 9 2008 $700,000,000,000 (that's a lot of zeroes) By Wendy Espeland

WSJ OCTOBER 9, 2008 Progress Amid the Ruins

WSJ OCTOBER 9, 2008 There's No Easy Way Out of the Bubble By VERNON L. SMITH

WSJ OCTOBER 9, 2008 Good Financial Information Matters More Than Ever By ROBERT J. SHILLER

これは「金融民主主義financial democracy」の失敗だ。労働者階級の人々が最初の家を購入する際に証券化を利用して、その金利や支払いがどうなるのかについて(富裕層は利用できた)十分な情報を得ていなかった。また、多くの市民がその危険性を十分理解しないまま証券化された金融商品に投資した。

金融システムの民主化を求める運動、その指導者たちが、アメリカの資本主義を支えてきた。再び、彼らが登場するときである。たとえば、債券格付けを企業化したJohn Moody、金融顧問を始めたSuze Orman、などがそうだった。

しかし、格付け会社はリスク評価に失敗し、金融顧問たちはバブルをあおったと批判されている。大衆が投資のメカニズムに参加できる民主的システムを築くには、まだ多くの時間が必要である。


China Could Be Dragged Down by Wall Street Crash William Pesek Oct. 3 (Bloomberg)

中国こそ、長年、そのバブル崩壊を恐れられていた国である。アメリカへの輸出が減少し、初めて投資した株がその価値を増やすことしか考えていなかった庶民も、58%の価値が失われたことに驚いている。中国がアメリカの消費の穴を埋めることは難しい。

Make way for China and India Randeep Ramesh The Guardian, Friday October 3 2008

アメリカのドルに代わって、インドのルピーと中国の人民元が重要になってくる。アメリカは、その金融政策や海外における軍事介入に、これまでドルの対外価値を心配しなかった。アメリカは世界の資源、石油、資本、労働力を自由に利用して、利益を上げてきた。アメリカは金融部門を膨張させ、高収入の雇用を増やしてきた。貯蓄を無視して消費を刺激してきた。しかし、これからはそうではない。

FT October 5 2008 China must step up spending

FT October 6 2008 An Asia bond could save us from the dollar By Thaksin Shinawatra

タイの元首相で、ロンドンに亡命しているタクシンは主張します。

アジア諸国はその外貨準備を集めてアジア債券を発行し、ドル安に対抗しなければならない。

これまでアメリカに輸出し、その経常黒字をアメリカの金融資産に投資してきたアジア諸国は、その準備を価値を損なわずにアジアの投資や貿易に転換するべきではないか? これはアメリカという船が沈むのを見捨てる行為ではない。むしろ修理して再浮上させるものだ。アジアの30億人は、その準備をデリバティブのような難解な証券に投資するより、アジアの生産設備に投資することを望むだろう。

アジア債券は世界ドル(global dollars or “globars”)で発行される。それはいつか世界通貨本位になるかもしれない。その価値をアメリカの外で安定するのはIMFである。アメリカ政府がそれを認めなくても、中国、日本、韓国、シンガポール、タイ、などの政府は、外貨準備を集めて、その通貨を合成したグローバル・ドル証券を発行することに合意できる。その利回りはアメリカの財務省証券と同じか、それよりも高く設定する。アジア諸国はアメリカ政府より支払い能力が高い。

アフガニスタンやパキスタンの政治的リスク、日本の地下鉄で毒ガスがまかれるリスクはあるかもしれないが、大きくはない。中国政府がポールソン財務長官からの資本自由化要請を無視したように、アメリカの新しい成長モデルが発見されるとか、その金融システムを正しく規制すると、神に祈るよりも、アジア諸政府の発行するグローバル・ドル証券に投資する方が良い。

これは新しいことではない。アジア諸国は個別の通貨で証券を発行している。そのため、証券の価値は浮動的で、利回りは高いのにアメリカ政府の証券より評価が低い。アジア証券として集まれば、その評価は高まるだろう。アジア諸国は借り手から貸し手に変化している。アメリカが金融危機を修復している間も、東京、シンガポール、香港でアジア証券市場を安定的に運営することができる。

何よりも、アジアの黒字がアジアの生産的な資産によって循環することこそ、最大の利益である。

FT October 6 2008 Shorting in China

FT October 6 2008 Korean banks

FT October 7 2008 A master plan for China to bail out America By Arvind Subramanian

金融救済法が成立してもさらに、不良資産を買い取り、住宅市場を回復させ、不況を回避するための財政刺激策を追加するに、アメリカ政府は新しい資金を5000億ドルも必要とする。納税者は不安を覚えるだろう。中国の外貨準備を利用してはどうか?

その外貨準備1兆8000億ドルから、中国政府は5000億ドルをアメリカ政府に貸し付ける。これまで、アメリカ政府の証券を中国政府が購入することは、間接的で、条件なしの支援であった。これはそうではない。かつてアメリカなど西側政府が行った「ひも付き援助」であり、第三世界諸国の政府がIMFに求められる「コンディショナリティー・融資条件」をアメリカ財務省に対して付けることである。

IMF融資は債務国政府に改革の利益を理解させ、国内政治交渉のためにわずかながら甘味を与える。中国が付けるのは二つの条件だ。1.資金をアメリカ政府による銀行部門の改革に使う。それは次に議論となる銀行の資本増強策である。その際に、ヨーロッパが示した国有化は最も有効であるが、アメリカ議会はそれを嫌うだろう。中国からの融資は銀行の「社会化」を嫌うイデオロギー論争を回避する。

2.資金をアメリカの「社会的セーフティーネット」に使う。それはIMF・世銀の調整融資でも行われる。脆弱な住宅所有者の地位を助けることで、この融資が左右の勢力から支持されるだろう。それはアメリカ住宅市場の根本問題を解決し、しかも金融救済において、公平を重視する。

中国側のメリットは、1.人民元レートの設定などでアメリカの住宅バブルに責任がある。2.アメリカの不況を回避し、中国の輸出と成長を維持する。3.世界経済の責任ある擁護者としてその資源を利用する、超大国の地位を得る。

Asia Times Online, Oct 8, 2008 China takes stock in crisis By Wu Zhong, China Editor

中国政府は、国内の過剰流動性を抑えるために、外貨建て資産への転換を促そうとしてきた。今は海外投資のチャンスである。2兆ドルに及ぶ外貨準備を保有し続けねばならない。

FT October 8 2008 Asia’s revenge By Martin Wolf

1970年代の石油ショックがもたらした国際収支不均衡は、オイル・ダラーのリサイクリングとして、結局、1982年にメキシコから始まる債務危機をもたらした。現在の危機でも、新興市場は大幅な経常黒字を続けて、その資金をアメリカ金融市場に還流させていた。

問題は、規制緩和された世界金融の機能がもたらしている。たとえアメリカやイギリスであっても、大幅な資本流入が続けば経済運営に異常が生じる。特に、1997-98年のアジア危機によって、その後の経常収支黒字はアジアや新興経済に累積されてきた。

主要黒字国の貯蓄はアメリカの赤字支出によって埋め合わされていた。アメリカの住宅バブルが崩壊して不況が始まり、消費は急速に減少する。住宅債務も返済されず、銀行の不良債権となる。金融システムの破たんさえ起きかねない。今、それらを埋め合わせるのはアメリカ政府の赤字だ。債務危機のメキシコと異なり、アメリカ政府は証券を発行できる。主要黒字国がアメリカ政府に融資することで、資金は循環する。

しかし、元の形で世界金融を続けてはいけない。もっと多くの資本が貧しい国の生産的な投資に向けられるべきである。そのカギは、彼らが経常赤字になっても自国通貨で融資を受けられることだ。また、主要国の側では、金融自由化が金融不安をもたらしたことを学ぶ必要がある。統合された世界経済において、どのような金融自由化が望ましいのか、答えを見出すことだ。

FT October 8 2008 Asian capital flight

FT October 9 2008 China takes the lead


LAt October 3, 2008

Europe's far-right revival isn't Nazism

By Ian Buruma

(コメント) 日曜日のオーストリア総選挙で、二つの極右政党が得票数を前回から倍増させました。ヒトラーの生地、オーストリアに再び極右の権力がよみがえるのか?

むしろ既存政治勢力の既得権を批判する勢力がなく、EU統合の中で移民反対やナショナリズムを表現できなかった人々の不満とともに、極右政党の支持が高まった、と考えます。


SPIEGEL ONLINE 10/02/2008 RISE OF THE REST: The Challenges of the New World Order By Wolfgang Nowak

The Russian Challenge – Part I Katinka Barysch YaleGlobal, 3 October 2008

これからの世界秩序について、論争を整理しています。たとえば、"The Post American World" by Fareed Zakaria, "The Second World" by Parag Khanna, "The Great Experiment" by Strobe Talbott, as well as "Rivals" by Bill Emmott and " The War for Wealth" by Gabor Steingartなどが、多極化した世界をめぐって出版されています。他方、彼らの戦略は大きく異なっています。

アメリカとヨーロッパの姿勢が異なるのは当然です。アメリカはロシアから遠く、相互の貿易もわずかしかありません。他方、EUは天然ガスの40%、石油の3分の1をロシアから輸入しています。ロシアにとっても、EUは利益の大きな巨大市場です。2000帰路の国境線を共有しており、紛争の起きかねない近隣地域を抱えています。ロシアのエリートたちはドイツとビジネスし、フランスで保養し、イギリスの学校に通わせます。その関係は多面的で、錯綜しています。

EUもロシアの潜在的な脅威を重視していますが、アメリカとは異なった判断を示します。なぜなら関係を断絶するコストが大きく異なるからです。

The Japan Times: Friday, Oct. 3, 2008 Adjusting to a power shift By DAVID HOWELL

FT October 3 2008 The American Future: Review by Niall Ferguson

Behind the Bluster, Russia Is Collapsing By Murray Feshbach WP Sunday, October 5, 2008

FT October 5 2008 A global downturn in the power of the west By Dominique Moïsi

The Russian Challenge – Part II Joergen Oerstroem Moeller YaleGlobal, 6 October 2008

FT October 7 2008 Russia finds it is in same sinking boat

Shared interests By Mark Brzezinski IHT Tuesday, October 7, 2008

何がロシアの国益なのか、クレムリンはよく考えることだ。国境周辺で民主主義国家を転覆することがロシアの国益にはならない。たとえばWTOに加盟した場合の利益を考えてみてはどうか?

Asia's fear of a weak America By Philip Bowring IHT Tuesday, October 7, 2008

FT October 8 2008 Do not let Russia ‘Finlandise’ western Europe By Edward Lucas

Building on Common Ground With Russia By Henry A. Kissinger and George P. Shultz WP Wednesday, October 8, 2008

America's missile diplomacy Ian Williams The Guardian, Thursday October 9 2008

FT October 9 2008 Crisis marks out a new geopolitical order By Philip Stephens

Asia Times Online, Oct 10, 2008 Wall Street: A new Iraq War By Pepe Escobar


BBC 4 Oct 08, 12:35 PM

Markets call time on Iceland

Robert Peston

The Guardian, Monday October 6 2008

Iceland is in the heart of the economic storm

Gwladys Fouché

NYT October 8, 2008

Iceland Seeks Emergency Loan From Russia

By JULIA WERDIGIER

(コメント) 人口319000人のアイスランドは、国ごとヘッジファンドになったケースであり、資本流出と破たんの時期を迎えています。すなわち、世界のほとんどの国よりも高い金利を提示して莫大な資本を集め、それを北欧やイギリスに金融資産に投資してきました。

わずか50年前までは漁業だけに頼り、貧しい暮らしを耐えていた国民が、今ではOECDでも最も裕福な水準に達しています。

アイスランドの富の源は、ほとんどゼロ金利の日本などから資金を引き出し、高金利の資産や不動産投資へ国際的に転換する、というキャリー・トレードでした。それは世界的な金融バブルを助長し続けた要因であり、今や、当然、その崩壊にも巻き込まれたのです。アイスランドのGDPが200億ドルに対して、主要銀行(Kaupthing, Landsbanki and Glitnir)の借入額は1200億ドルにもなっていました。

預金者を保護し、銀行の破産を防ぐために、アイスランド政府は国有化しましたが、債務に対して財政規模が不十分です。通貨価値の急落に対して、アイスランド政府はロシアから54億ドルを借りる、と報道されています。北欧諸国やドイツ、IMFからではなく、外貨準備の余っているロシアの外交政策に頼ったわけです。政府は合意をまだ否定しています。

Considered view 07 Oct 2008 On thin ice By George Hay

Willem Buiter Time for Iceland’s authorities to pull the plug on their banks FT October 7, 2008

Iceland FT October 7 2008

Don’t worry, we can always lease Heathrow to the RussiansFT October 7, 2008

Time for Iceland’s authorities to pull the plug on their banks FT October 7, 2008

Willem Buiter Iceland’s bank defaults: lessons of a death foretold FT October 9, 2008

Frozen in Iceland FT October 9 2008

NYT October 9, 2008

Meltdown of Iceland’s Financial System Quickens

By ERIC PFANNER

(コメント) アイスランドはIMFの救済融資を受けて、金融部門と財政を再建するしかない、と言われています。さもなければ不況の苦しみだけでなく、通貨価値の急落で極端な生活水準の悪化や、ハイパーインフレーションを招くでしょう。

“There is a lot of fear in society and there are people who are losing everything.”

通貨価値は旧来しており、市場が鎮静化した後で、ユーロを採用するしかない、とRichard Portesは考えます。

しかし、それを妨げるのはアイスランド国内の政治です。与党も野党もユーロ加盟には反対しており、特に行業関係者はEUの規制を嫌っています。それは1950年代から70年代まで続いたイギリスとの「タラ戦争」でも有名です。今回の金融危機でもイギリスからの預金者をめぐって対立が起きています。

1990年代の金融緩和と金融ビジネスブームの中で繁栄した人々の暮らしが消滅し、その後には社会の不安と怒りが待ち受けています。


NYT October 5, 2008

A Manhunt or a Vital War?

By ROBERT D. KAPLAN

LAT October 6, 2008

Judgment without borders

By David B. Rivkin Jr. and Lee A. Casey

(コメント) アフガニスタン、パキスタンの戦場について。


FT October 5 2008 The case for a European rescue plan By Wolfgang Münchau

The Japan Times: Sunday, Oct. 5, 2008 EU financially vulnerable when confidence collapses By HANNES ANDROSCH

NYT October 6, 2008 Germany Moves to Shore Up Confidence in Economy By CARTER DOUGHERTY

SPIEGEL ONLINE 10/06/2008 RESPONSE TO FINANCIAL CRISIS: Germany Agrees on New Rescue Package for HRE

NYT October 6, 2008 Financial Crises Spread in Europe By CARTER DOUGHERTY, NELSON SCHWARTZ and FLOYD NORRIS

不動産会社、国境を超えて預金を集める銀行、高金利だけを目指す預金者や金融機関、それを嫌う政治家、ばらばらの預金者保護政策、株価は世界中で連鎖的に急落・・・ ヨーロッパが統一通貨を得てから初めての本格的な金融危機です。指導者たちは集まりましたが、共同の金融救済基金を設ける、というサルコジ大統領の提案をドイツのメルケル首相が反対して潰しました。

アメリカ発の金融危機を非難する時期は終わったのです。ユーロ加盟15カ国がつぎはぎ制度やばらばらの政策で対応するなら、危機は止められません。

FT October 6 2008 How to save Europe’s banks

WSJ OCTOBER 6, 2008 Europe's Panic The Schadenfreude about America didn't last long.

NYT October 7, 2008 Europe Works to Contain Crisis By CARTER DOUGHERTY, NELSON SCHWARTZ and FLOYD NORRIS

WSJ OCTOBER 7, 2008 Divided We Fall By DANIEL GROS and STEFANO MICOSSI

SPIEGEL ONLINE 10/07/2008 FACING THE CRISIS: EU Finance Ministers Increase Savings Guarantee

Now, Europe WP Tuesday, October 7, 2008

WSJ OCTOBER 7, 2008 Europe Needs A United Approach To the Credit Crunch By ULRICH VOLZ

NYT October 8, 2008 Europe Seeks Unified Policy on Bank Crisis By CARTER DOUGHERTY and LANDON THOMAS Jr.

FT October 8 2008 A shift from bumbling to sensible policy Gillian Tett

イギリスの金融危機安定化策は1990年代の各国における危機の経験と、最近のアメリカの救済法案“Tarp”から学んで、世界で最も優れた内容を目指しています。

1.銀行の不良債権を処理するには資本増強が必要であると認めた。政府は銀行の優先株を購入する。2.銀行間市場を動かすために流動性を供給するだけでなく、発行される証券を政府が保証する。3.銀行の失敗を認めて、より厳しい規律を課すことを認めた。

こうして、イギリス政府は国際的な基準と協調の条件を示す姿勢を示したわけです。

FT October 8 2008 Britain’s bail-out

NYT October 9, 2008 Britain Announces Huge Bank Bailout By JULIA WERDIGIER

Brown and Darling have bitten the bullet - and set the world an example Will Hutton The Guardian, Thursday October 9 2008

FT October 9 2008 Shocks to system show need for fresh answers By Alistair Darling

イギリスのAlistair Darling大蔵大臣が世界に金融危機への包括的で協調した対策を求めています。それは新しい事態に応じた新しい政策や制度を必要としています。G7に先行したイギリスの対策発表は、国際協調の優れた指導的役割を狙ったものです。

FT October 9 2008 Keynes, thou shoulds’t be living . . . By Samuel Brittan

FT October 9 2008 European business: backed up By Richard Milne and Jeremy Grant


NYT October 7, 2008

The Crisis Agenda

NYT October 7, 2008

The Dismal Questions

By JOSEPH E. STIGLITZ, R. GLENN HUBBARD and MYRON S. SCHOLES

WP Wednesday, October 8, 2008

Pre-Meltdown Mind-Set

(コメント) 大統領候補者たちは金融危機について発言しなければなりません。住宅所有者たちはどうなるのか? デリバティブ取引をどうするのか? 救済した金融機関と納税者のお金はどうなるのか?

ナッシュビルの第2回大統領候補者討論会において、質問されるべきことを三つだけ示せば。JOSEPH E. STIGLITZ: 1.ポールソンの救済案は成功するか? 失敗したら、さらに拡大するか? 2.住宅所有者に何か支援するか? 3.個人債務者救済のために、破産法を改良するか?

R. GLENN HUBBARD: 1.規制を増やすべきか? 2.連銀の役割はどこまでか? 3.金融機関の資本準備について基準を厳しくするべきか? 4.危機の原因究明と改革案について特別委員会を指名するか?

MYRON S. SCHOLES: 1.成長と分配のバランス。2.金融規制の有効性。3.金融革新の重要性。


The Japan Times: Tuesday, Oct. 7, 2008

'New politics' of Thai opposition

By PAVIN CHACHAVALPONGPUN

FEER October 8, 2008

Thailand's Red October

by Bertil Lintner


Asia Times Online, Oct 10, 2008

China's farmers can bank on land

By Verna Yu

(コメント) その影響を受ける程度や期間を比べれば、欧米の金融危機よりも重要かもしれません。中国政府が8億から9億人の農民に対して、その土地を使って融資を受けられる(また耕作権を譲渡できる)ような制度改革を認めるでしょう。改革を始めて30年を経て、国家による社会主義の最後の重要な基盤である耕地を民営化しようとしています。

都市整備や工業化において農地を強制的に収容された農民の紛争が激化しています。都市部の富裕化にもかかわらず、農民の貧困は変わらず、その不平等は社会不安を招きます。農業の大規模利用や投資には長期的な利用権を法的に確立しなければなりません。

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The Economist September 27th 2008

I want your money

Pay and the financial crisis: Questions of equity

Lexington: President Hank

America’s bail-out plan: The doctors’ bill

American finance: And then there were none

Economics focus: Capital bonanza

(コメント) The Economistはポールソン案を強く支持します。なぜならこの案は銀行の不良債権を減らし、そのコストは限られているからです。他方、官僚が株価や報酬を決めることには反対します。ポールソンのプラグマティズムを称えます。

ポールソンとバーナンキの金融救済計画は詳しく経過をたどり、その考え方を示します。流動性危機である、という説明は、リーマン・ブラザーズの破たん後、全面的な金融市場不安によって否定されます。連銀のバランス・シートを使って市場に流動性を供給し続けます(最後ではなく、最初の貸し手)が、その間にポールソンは救済案TARPをまとめました。議会は修正を求めますが、その間も世界の株式市場は連動して下げました。ポールソン案の欠陥が指摘されています。不良債権の価格は決まらない。住宅価格は下げ続ける。銀行は資本不足になる。公的資本の注入を嫌う。しかし、TARPはモーゲージ証券市場や住宅価格に信頼感を取り戻ることで、融資が再開できるようになる、と考えます。

そして、誰もいなくなるのか? アメリカ金融市場の将来が、海外の金融パワーに依存し、金融機関はもっと小規模で専門化したブティック・バンキングに移るかもしれない。投資銀行が金融権力をふるう時代は再現しないでしょう。

また、かつては第3世界の新興市場が未成熟な金融市場を批判されたが、アメリカでさえ、資本流入による変調は大きな被害をもたらしました。金融のグローバリゼーションには大きなコストがともなうようです。だから資本規制を支持する、というより、資本流入を正しく利用するには大きな制度改革を要する、と考えています。


The Economist September 27th 2008

Rwanda and the Great Lake region: A pioneer with a mountain to climb

The odd couple: A special report on the Koreas

(コメント) フツ族の支配者が煽動して、少なくとも80万人のツチ族を虐殺してから、隣国のコンゴでも戦争が起き、400万人が死亡したと言われます。カガメ大統領のルワンダ再建は成功し、アフリカのハイテク都市国家、スイスを目指しています。しかし、政治的反対派にはカガメ独裁を批判する声があります。

朝鮮半島の統一に関する状況は変化し始めています。それは外交交渉でも、北朝鮮の体制でもなく、市場と情報の浸透が進んでいるからです。「奇妙なカップル」というタイトルで、アジア通貨危機後、韓国の政治経済体制が抱える問題、ソ連崩壊後、北朝鮮が抱える問題、を紹介し、朝鮮半島統一の進路は不透明になりました。しかし、間違いなく北朝鮮は持続できない状態を深めており、解体の時が、南北でも、周辺諸国でも十分に合意しないまま、迫っています。

・・・それゆえ新しい国際秩序は、しばしば戦争を必要としました。