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IPEの風 10/12/08
金融危機は世界的であるから、その解決策も世界的な規模でなければならない、と信じる人が次第に増えるでしょう。
アメリカから始まった国際金融市場のメルトダウンは、9・11やソ連崩壊にたとえられています。日本政府は緊急行動計画や関係諸国に呼びかける準備ができているでしょうか?
日本でバブルが破裂したとき、株に投資した覚えのない自分には関係ない話でした。しかし、金融部門の信用収縮は実物経済を巻き込んで、不良資産は増え続け、金融逼迫や倒産、デフレ、政治的混乱が、何年も、何年も、私たちを苦しめたわけです。現在の金融危機が進めば、恐慌がヨーロッパで、日本で、ブラジルや中国で、起きるかもしれません。
いろいろな論説を読みながら、こんな風に思いました。心理的なパニックがもたらす金融危機に対して、各国政府は協力して以下のような対策を取ってはどうでしょうか?
1. 預金保険を拡大する。日本だけでなく地域規模で、全額、危機が収束するまで、預金を保証します。そのためには、特別な大口預金を厳しくチェックする体制が必要です。
2. 最後の貸し手と金融機関の監視体制を強化する。特に主要通貨市場では、中央銀行からの特別融資を利用する場合、金融機関を国有化して国際的に検査し、再建する。
3. 経常収支赤字の融資困難、あるいは、資本逃避によって不況に陥る国に緊急融資を行う。
4. 低所得の住宅所有者や失業者が急増する国に対して、セーフティーネットの充実資金を黒字国が融資する。
5. 土地・資産価格の下落、デリバティブ取引やファンドの整理後、金融機関の資本増強策について、国際機関が各国に共通の選択肢を示す。
6. 個別金融機関の破産処理を合意する。金融システム危機と区別して、国際的な債権債務関係を引き継ぐ機関や手続きを合意します。
7. 金融取引のレバレッジを抑制する。国際基準を設け、監視制度によって抑制します。レバレッジの抑制はインフレやバブルを警戒する金融政策にも反映します。
8. 急激な資本流入と流出に対する一時的規制のルールを国際的に合意する。
こんな対策が本当に役に立つでしょうか? 私のアイデアは机上の空論です。しかし、危機の現場で対策を検討し、問題の処理に当たっている人々は多くの経験を共有するでしょう。彼らが次の危機を防ぎ、コストを抑えるのです。経済学者も、歴史家も、社会学者も、政治家も、さまざまなアイデアを試し、危機から学びます。
「今週のReview」では、ド・グローブの提唱した金融部門の国有化や、タクシンが提唱するグローバル・ドル証券の発行が興味深いです。政治的合意が難しいとしても、次の危機までには実現する準備をしてほしいです。また、世界恐慌回避のためには、中国やインドを含む機関車論(すでにG20との協力が報道されています)と、世界デフレ回避のためのSDRsによる貧困国援助、新興市場為替レートの円滑な国際調整フォーラム、を推進してはどうでしょうか?
バブルと金融機関の破綻で日本の投資家たちが株式市場を信用しなくなったように、アメリカの金融システムは外国投資家の信頼を失うでしょう。危機の後に栄えるのは、さまざまな既存の金融機関より、預金が全額保証された安全なネットワーク・バンキングかもしれません。コンビニ店舗とインターネットで、基本的な操作のみを行います。同時に、専門化と顧客の絞り込みを進めて、資産管理や運用アドバイスを有料で行うブティック・バンキングを育成してはどうでしょう。資格を得て、公認された者だけが集まって金融情報・分析を共有します。そして常に、助言した取引記録を公開し、個人や団体がチェックできるようにします。
せっかく週末にG7財務相・中央銀行総裁の会議があったのに、世界第二の経済国である日本の中川財務・金融相は、不機嫌な表情で、金融市場に意味不明さを発散していました。アイ・コンタクトもなく、ポールソン財務長官と笑顔で握手することさえなかった彼(そして日本政府)が会議に参加した意味とは、いったい何でしょうか?
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