IPEの果樹園2008

今週のReview

9/29-10/3

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

アジアとアメリカ, ポールソンの金融救済案とその疑問, アジア指令に背くガイトナー総裁, RTCの原則, スウェーデンの経験, 救済策は不要だ, 日本の教訓1,−2, ロシア金融危機

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


The Japan Times: Thursday, Sept. 18, 2008

Asia still suffering from a 'leadership deficit'

By ROBERT SUTTER

NYT September 25, 2008

The Return of Taro Aso

FT September 25 2008

A temp in Tokyo

(コメント) 安全保障を担い、国際通貨(それゆえ開放された金融市場と長期投資)を供給し、各国の輸出財に対して自国市場を開放する。輸出による成長を期待するアジア諸国にとって、そんなふうに頼りになる国はアメリカしかない、とROBERT SUTTERは考えます。

アジア諸国には、中国も日本も積極的に地域の統合化を担う外交政策がなく、特に日中間は不信をぬぐえません。アメリカの指導的役割は、まだ、将来のアジア諸国によって歓迎されるでしょう。

偶然とはいえ、アジア諸国に対するアメリカの貿易赤字額が7000億ドルと言うのは、ポールソンが提案したウォール街の救済融資枠と同じです。

麻生首相について、NYTは「けんかっ早いナショナリスト」という評価を紹介しています。そして「プラグマティズム」への変身を期待します。(NYTの考える)アメリカは、日本が国際的な役割を担い、安全保障面でも重要な役割を果たすべきだ、と考えます。しかし、それが日本政治のナショナリストや旧政治勢力に依存しなければならない事態を苦々しく思っているようです。

「ナショナリストの妄想や攻撃的な見せかけが、アジア諸国の激しい反発を招く」という失策を避けるべきだ、と忠告しています。日本国民が経済的な優位を失う過程で、不安を持つのは自然です。しかし、それを過去の醜いナショナリズムによって慰めるのではなく、市場改革を推進することで自信を回復するべきなのです。

日本経済の様変わりは労働市場に顕著であるが、首相でさえ一時雇用、大臣たちは派遣労働者であるらしい、とFTは皮肉に表現します。しかし麻生は、自民党という圧倒的な権力集団の中で、恵まれた家柄とマンガ好きを公言する政治家です。同じように扱ってよいのか?

日本はだれが首相になっても、官僚たちが操縦している国である、とFTも考えます。結局、この首相も、アメリカに約束したイラク戦争への協力を法律として成立させることができるのか? 次の辞任劇までに、首相の仕事を学ぶゆとりもなさそうです。


FT September 18, 2008 Fear and loathing in the financial markets Willem Buiter

Ann Woolner Sue Them, Jail Them, Make Them Pay for Meltdown Sept. 19 (Bloomberg)

一部の者がその強欲によって破壊した経済を立て直すために、私たちが長年にわたってそのコストを支払い続ける。ウォール街の金貸しや、金融魔法使いたちが破滅させた企業を生き延びさせるために。そうしなければ、株式相場が暴落して、そこに投資している自分たちの年金が失われるぞ、と脅されて。

しかも、こうして事実上、国有化される企業や金融機関の幹部たちはポケットにたらふく金を詰め込んで出て行くだけだ、というのが私たちには耐えがたい。例えば、メリルリンチのStanley O'Nealは、昨年、1億6100万ドルを得て会社を去っている。Countrywide Financial Corp.Angelo Moziloは、2007年、ストック・オプションだけで1億2200万ドルを得ている。リーマン・ブラザーズのRichard Fuldは、株価の暴落で10億ドルは減ったにもかかわらず、それでも4億9000万ドルを引き出した。

こうした連中がプライヴェート・ジェットや邸宅やヨットを買うのを許すことはなく、司法が追及して牢獄につなぐべきではないか? 何が犯罪か、という明確な線引きがあれば、それも不可能ではないでしょう。また、この崩壊にいたる取引を許した証券取引委員会はどうか?

What the Candidates Can Do By R. Glenn Hubbard WP Friday, September 19, 2008

NYT September 19, 2008 Crisis Endgame By PAUL KRUGMAN

救済融資の線引きを試みても失敗して、とうとう不良債権の多くを政府が購入する、というアイデアに至りました。融資や投資の主体は危険を恐れて、政府の債券に逃避しています。アメリカ政府が倒産するとしたら、もうおしまいだ! 政府はこの資金をなんとか民間に還流しなければなりません。しかし、短期の金利がほとんどゼロになった今、さらなる金融緩和は効果を持ちません。

包括的な金融危機の救済策とは、政府が不良資産をすべて買い取るしかない、とポール・ボルカーなどが主張しました。しかし、その中身は定まりません。スウェーデンが1990年代前半にやったような厳しい金融規制をアメリカ政府が導入するのか? もしそうでなければ、所詮、税金を救ってウォール街を救済するだけなのです。

そのコストは莫大(スウェーデンの場合、GDPの4%。アメリカなら6000億ドル)であり、分配のゆがみは議論されていません。

NYT September 19, 2008 Bankers and Their Salaries

FT September 19 2008 There’s no free lunch and no free economy By Christopher Caldwell

FT September 19 2008 Capitalism in convulsion: Toxic assets head towards the public balance sheet By John Plender

資本主義のアメリカに住んでいると思うから、損失は自分で負うしかなかった。けれど、アメリカは変わったらしい。ウォール街にはフリー・ランチのある国になった。損失の社会化。不良資産の国有化。しかし、市場に信頼が回復しなければ、いくら救済しても危機は終わらない。

世界には、例えばアジアには、貯蓄がふんだんに存在する。しかし、資産市場から資金が逃げて、価格は下がり続ける。たとえばロシアには、石油の代金が流入し続けていが、株価は下落している。アメリカ政府が危機を救済しても同じことだ。

極端にレバレッジを拡大した金融メカニズムが、今は縮小し続けている。赤字の主体は何でも縮小するだろう。アメリカの経常赤字もそうだ。政府自身がオフバランス・シートで経済を膨張させてきたのだから。

この危機の後に何が残るのかは、規制当局の対応にかかっている。中央銀行がその代償として独立性を犠牲にし、財政的な救済が頻発すれば、H.ミンスキーの最後の命題に含まれる重要な点、すなわち、深刻なインフレによって債務を破壊する局面に向かう。

FT September 19 2008 Time for a bail-out of bust US finance

NYT September 20, 2008 Hard Truths About the Bailout

1.   もし政府が買い取った住宅の価格が安くなれば、納税者には大きな負担となる。では、住宅の価格はどうなるのか? 誰が(誰と)売買を決めるのか? 分からないことが多い。

2.   金融機関を救済するだけでよいのか? 倒産する企業や失業者に対する救済策は? 不況を回避し、その痛みを減らす方策を組み合わせるべきだ。

3.   将来の財政をどうするのか? 救済策によって財政を逼迫させる結果として、雇用や社会的弱者への影響、増税や他の支出を削る場合を説明せよ。

4.   国民に真実を語れ。政府とその機関は銀行や保険会社、ヘッジファンド、その他の金融機関の活動を規制し監視しなければならなかった。彼らは、それを故意に、組織的に、行わなかったのだ。

ブッシュ政権は市場の「見えざる手(invisible hand)」を信奉し、自己規制、自己是正に委ねてしまった。国民はその高い代償を支払っている。議会と行政当局が国民の信頼を回復しなければならない。救済策はその第一歩でしかない。信頼できる金融システムを実現するために規制し、強制する作業が残っている。

Saving Wall Street from itself BG September 20, 2008

BG September 20, 2008 Banking meltdown déjà vu By Doug Bailey

救済策は不快であるが、世界の金融システムを守るために避けられないのかもしれない。もし国民が負担しなければならないのであれば、政府はそれを監視していなければならなかった。今後、ウォール街は自分たちのリスクで儲けている、などと言うことはできない。

Doug Baileyが経験した20年前のニューイングランドにおける銀行業の破たんも、今とそっくりだった、と伝えています。

A Bad Bank Rescue By Sebastian Mallaby WP Sunday, September 21, 2008

Sebastian Mallabyは、ほんの数週間前には誰も言わなかった数百億ドルもの極端な救済策が、まるで避けられないかのように主張されている、と警告します。

1989年にできたRTCは破たんした貯蓄組合の債権を買い取った。いま議論されているのは破たんする前に買い取ることだ。また、1989年には貯蓄組合の債務は政府が保証していた。だからRTCが処理するしかなかった。今はそうではない。倒産する前に買い取った資産を管理する点で、政府が民間よりも優れているとは言えない。結局、政府はどの資産をどんな価格で買い取るか、決めることができず、正しい価格より高く買ってしまうだろう。政府は補助金を支払うのだ。

ポールソンの提案より、もっとよい方法がある。たとえば、Raghuram Rajan and Luigi Zingalesは、公的資金を使うのではなく、銀行が増資させるべきだ、と言う。最初、政府は銀行に配当をすべてやめさせる。次に、健全な銀行は増資を行うように命じる。どちらも政府の強制がなければ、配当を減らすとか、増資することが、経営困難を示すシグナルと解釈されるからだ。

また、Charles Calomirisは、評価の難しい不良債権ではなく、銀行の株式を購入することを薦める。株の評価は市場を見れば簡単にわかる。また不良債権処理が進めば株価は上がる。

LAT September 21, 2008 Bailing out Wall Street

Calling Out the Culprits Who Caused the Crisis By Eric D. Hovde WP Sunday, September 21, 2008

誰に責任があるのか? 犯人探しが続く。しかし、答えは簡単だ。ウォール街とワシントンDCの両者である。彼らが金儲けをすることを彼らが許した。その結果が大恐慌以来の金融危機である。金融ビジネスの政界に及ぼす影響は急速に衰えるだろう。そうでなければならない。他方、危機の結果は同じであってはならない。深刻な不況も戦争も、回避できるはずだ。

FT September 21 2008 This is no time for politics of the playground By Clive Crook

Asia Ponders United Socialist States of America William Pesek Sept. 22 (Bloomberg)

現在のNY連銀総裁Timothy Geithnerガイトナーは、10年前、アジア通貨危機の際にも各国の調整政策を命じた緊急チームの幹部でした。彼の指令は10点だった、とWilliam Pesekは要約します。

1.通貨の防衛には金利を引き上げよ。2.債務を減らすために政府支出を削れ。3.投機家やヘッジファンドを責めるな。4.不動産価格の下落を放置せよ。それは市場の調整である。5.間違った投資を行った者は助けるな。モラルハザードは悪だ。6.企業の透明性を高めよ。7.補助金はいつでもどこでも間違いだ。8.銀行の不良債権はただちに処理せよ。9.自分たちの失敗を非難するメディアを攻撃するな。10.アメリカの繁栄を導く自由市場の政策に従え。

アメリカ財務省が発する近頃のメッセージは変わった。・・・ これらの指令をすべて無視せよ!

もう一つ変わったのは、かつてアジアの不良債権を非難していたアメリカの金融街が、自分たちの不良債権を購入する相手としてアジアの投資機関に集まってくることです。マニラのアジア開発銀行に会議で集まった人々が、アメリカ人は命令するのを好むが、従うのは苦手らしい、と雑談しています。

ミルトン・フリードマンとカール・マルクスの教義を混ぜて、喜劇役者のマルクス兄弟が運営するような経済システム、あるいは、USSRA(アメリカ社会主義合衆国)の誕生を慨嘆する者がアメリカ国内にも増えています。

誰も、アメリカのウォール街を焼き払って歴史に名を残すような暴君ネロにはなりたくない。バーナンキも救済融資に走ったが、アジアの成長する諸国、タイ、インドネシア、韓国の経済をたたき潰したガイトナーでさえ同じでしょう。アメリカも漸く,アジアの苦しい経験と知識を学ぶわけです。

What's the model for Asia now? Europe? Is it China's mix of top-down control of economic trends and market openness? Is it a return to Japanese-style financial management?

William Pesekは、市場に対する信頼をアメリカ人が再生しなければならないのと同じように、アジアは世界市場に統合されたことと対応していない政治の遅れを払しょくしなければならない、と指摘します。不安定さを増すタイ、統制だらけの中国、麻痺し続ける日本、倦怠に病むマレーシア。アメリカはアルカイダと戦い、過去の清算のためにファンドを設け、中国は世界都市や空港を建設しました。アメリカはアジアで生まれる富を導く力を失うでしょう。

The Confidence Game By Robert J. Samuelson WP Monday, September 22, 2008

やはり10年前に、「コン・ゲームだ!」というのを何度も読みました。金融ビジネスは、カジノだけでなく、巨大な詐欺の舞台となったわけです。バーナンキもポールソンも、まったく予想しなかった激しい戦場に立たされて、自軍の崩壊に直面しています。

金融ビジネスは信頼に依拠して機能しており、それが失われたら、ビジネスを回復するために、より大きな詐欺を必要とするのでしょうか? いつの間に連銀は、中央銀行ではなく、民間への巨大な貸し手、そして政府は債務保証組合や買取業者になったのか? 金融危機が続くのよりましだ、と彼らは「戦争」を正当化します。

大衆の怒りが待っているでしょう。7000億ドルも費やして金融街から下取りしてやるなら(それが高値で売れるかもしれないから負担ではないと言うなら)、国民の住宅や株式、債券なども、価格が下がれば下取りするべきだ、と。

NYT September 23, 2008 The Establishment Lives! By DAVID BROOKS

NYT September 23, 2008 A Second Opinion? By BOB HERBERT

救済して安金融ビジネスに関わった上層の人々がどれほど儲けていたか知っているだろうか? 大恐慌以来の金融危機を理由に、その危機をもたらした者たちを救済してやるというのはどういうことか?

How Main Street Will Profit By William H. Gross WP Wednesday, September 24, 2008

FT September 24 2008 Whatever is good for Goldman . . . By John Gapper

FT September 24 2008 Paulson cannot be allowed a blank cheque By George Soros

George Sorosは、ポールソン財務長官の処理の不手際が7000億ドルの救済策を必要とした、と批判します。救済案は不完全で、もし白紙の小切手を貰えば、自分たちが職を失うことを幹部たちが知っているから、彼らはできるだけ高く売りつけて逃げ出します。ここには金融取引における情報の非対称性と、利益の相反問題が顕著に示されています。(買取価格が高すぎても低過ぎてもいけない。)

オバマの提案は正しい、と支持しています。1.納税者にとっての損得を示し、2.超党派の監視委員会を設け、3.債券保有者だけでなく住宅所有者も救済し、4.救済される金融機関の幹部たちの報酬に限度を設ける、というものです。

救済機関は政府から切り離して資金を調達させ、不良資産ではなく金融機関の株式を購入し、住宅モーゲージだけでなく住宅の所有者に支援を与えて売却しないようにするなら、住宅市場は回復して、金融危機も終わるでしょう。

Wall Street's Man in Washington By Harold Meyerson WP Thursday, September 25, 2008

分配問題は内外でも起きるでしょう。アメリカの金融機関は、すでにアブダビ、シンガポール、中国、韓国、クウェートの政府系投資ファンドから巨額の資本を調達しています。ポールソンの救済案は彼らの利益も反映しなければなりません。あるいは、利益に反した場合、投げ売りや資本逃避が起きるでしょう。ポールソンが話すとき、“We”とは誰のことか?


Paulson's Line in the Sand Washed Away by Tides Caroline Baum Sept. 19 (Bloomberg)

ポールソンの発言を受けて投資家の反応が変わってしまい、ポールソンの救済策は失敗して、救済を拡大し続けました。安全だ、健全だ、と繰り返し発言したにもかかわらず。投資家はますます不信感を強めます。政府が全部買い取ったら、金融危機は終わるのか?

SPIEGEL ONLINE 09/19/2008 DEALING WITH THE CREDIT CRISIS: Massive Government Intervention to Bail Out Banks By Marc Pitzke in New York

NYT September 19, 2008 The Post-Lehman World By DAVID BROOKS

金融危機によって、これまでの開放型世界資本主義の時代は終わった、というけれど、本当だろうか? 政府を大きくして、金融ビジネスへの規制を増やせば、人々の雇用や安定した成長が取り戻せるのか?

FTのMartin WolfJohn Kayの論説を受けて、DAVID BROOKSは考えます。まず、事実と違う。ファニー・メイやフレディー・マックは政府による規制の代表であった。また、金融規制の緩和はクリントン政権のときに行われた。こうした改革が、住宅価格のバブルや外国資本の流入をもたらした、と主張することはできない。

連銀の金融政策を非難する者、外資の流入を非難する者、会計規則を非難する者、・・・金融危機を生じた原因を理解できていないのに、将来の危機を防ぐための正しい規制が行えるわけがない。

ウォール街の新しい金融ビジネスの在り方を教える。インフレも失業もバブルも、・・・ハリケーンの被害も抑制するようなスーパー連銀を築く。政治的ゆがみや人間的な欠陥を持たない金融監督官を求める。好景気の中でもバブルを停止させ、外国投資を抑え、支持率を気にする大統領を無視するような監督官・・・

しかし、理想を語ることと、現実の金融規制は別だ。政治の支配や世界的な規模の金融監督者について、バブルを歓迎した人々が再び殺到している。

FT September 19 2008 King’s men must put themselves together again By John Gapper

FT September 19 2008 Questions arise on how vehicle will manoeuvre By Krishna Guha in Washington and Gillian Tett in London

FT September 19, 2008 Matched Preferred Stock plan for government assistance by Charles Calomiris

Back to Basics in Banking By Colbert I. King WP Saturday, September 20, 2008

Day of Reckoning WP Saturday, September 20, 2008

少しずつ改善する方法が失敗した以上、私たちは包括的な改革案を避けてはいられないだろう。しかし、答えていない多くの問題がある。

政府は、誰から、どんな資産を、いくら(価格)で購入するのか? 市場がうまく機能していないから政府が購入するのであれば。誰がするのか? この利益は疑わしく、リスクは途方もない計画を、納税者に薦めるのか? 住宅の差し押さえに苦しんでいる有権者たちにも? そもそも、これは成功するのか?

NYT September 20, 2008 Hoping a Hail Mary Pass Connects By JOE NOCERA

FT September 20, 2008 Financial crisis: what the US authorities should do by Andrew Smithers

FT September 21 2008 Hanks a lot

NYT September 21, 2008 But Will It Work? By PETER S. GOODMAN

専門家の見解を紹介しています。まず、包括的な介入が必要である、というコンセンサスがある、と考えます。Alan S. Blinderが認めたように。複雑な網の目に対して介入がどのような効果を持つか、誰にもわかりません。しかし、最悪の混乱に向かって落ち込んでいるときに、何もしないことは許されません。

日本型の長期停滞はすでに避けられた、とNouriel Roubiniは考えます。そして救済策は危機の中心にある住宅市場の悪化を止めるはずです。本当に回復するには投資家の反応を見なければなりません。

The US took action in the face of crisis. We must do the same Will Hutton The Observer, Sunday September 21 2008

NYT September 21, 2008 A Professor and a Banker Bury Old Dogma on Markets By PETER BAKER

ポールソン財務長官は、いよいよ、ほかに選択肢はない、と主張し始めました。これは政治的な打算ではない。放置すれば、突然、市場が止まってしまう。バーナンキと組んで、経済浮揚計画の指揮を執ります。

If Mr. Bernanke is the intellectual force and Mr. Paulson the action man of this unlikely tandem, they have managed to create a nearly seamless partnership as they rush to stop the financial upheaval and keep the economy afloat.

二人の人物と背景、人脈を紹介しています。

NYT September 21, 2008 The Wall Street Bailout Plan, Explained By DAVID STOUT

FT September 21 2008 High-stakes US rescue vote By Krishna Guha, Harvey Morris and Daniel Dombey in Washington and George Parker in Manchester

FT September 21 2008 The shadow banking system is unraveling Nouriel Roubini

この20年間発達してきたthe shadow banking systemが崩壊した。それは銀行に対する規制を回避するために発生したものだ。その参加者たちは、非常に短期で調達した資金を、流動性の乏しい長期の手段により、レバレッジを効かせて投資する。彼らは銀行と違って、預金保険や最後の貸し手がなく、流動性危機から逃れられない。

Nouriel Roubiniは、危機の拡大過程を描きます。

FT September 22 2008 Do not exaggerate investment banking’s death By Philip Augar

FT September 22 2008 A systemic crisis demands systemic solutions By Dominique Strauss-Kahn

IMFStrauss-Kahn専務理事は、個別の救済ではなく、体系的な危機解消策を求めます。金融危機が金融や世界経済に生じる損失は1兆ドルに及ぶだろう、と予想しています。IMF/世銀総会を機会に、世界的な規模で対話を行い、世界的な規模の改革が必要です。Vigilance(覚醒), objectivity(客観性) and collaboration(協力) – on a global scale

FT September 22 2008 Paulson’s plan still needs some work

FT September 22 2008 Politics influenced 1930s precedent By Alan Beattie in Washington

1930年代の金融危機に際して、RFCは銀行の優先株を購入しました。1933-35年に10億ドル。当時の商業銀行の株式簿価は36億ドルでした。他方、その購入に際しては、政治の関与が重要な偏りを生じたようです。

A Prescription for Recovery By Robert H. Dugger WP Monday, September 22, 2008

20年前のS&L危機を処理したRTC(the Resolution Trust Corporation)についての論説です。まず、S&L危機は今の金融危機と大きく異なっていました。金融ビジネス全体に及ばず、GDPの3%に過ぎません。外国からの資本流入に大きく頼り、財政も逼迫しているから、今の方が危機は深刻です。

その教訓とは、原則なしに資金を投入すれば納税者の負担は膨張し、システムの安定化も実現しない、というものです。必要な原則とは、1.納税者の利益を優先する。地域経済を守り、貯蓄を守る。2.納税者のコストを長期的に最小化する。3.暫定的な提案は避けよ。どうせ数字を挙げるなら、10年かけて1兆ドルと言うことも必要だ。4.世界中の投資家にとってアメリカ市場の信頼が重要だ。5.躊躇するより、行動せよ。迅速に資産を取り込んで、その運用を学ぶこと。

NYT September 22, 2008 Bipartisan Support for Wall St. Rescue Plan Emerges By BRIAN KNOWLTON and DAVID M. HERSZENHORN

Bank Rescue a Political, Bureaucratic Nightmare John M. Berry Sept. 22 (Bloomberg)

LAT September 22, 2008 Back-to-basics investing By Kelly Candaele

No blank cheque for Wall Street Dean Baker The Guardian, Monday September 22 2008

危機をめぐる二つの事実とは、ブッシュ政権がリスクを無視したまま眠っていたことと、金融ビジネスのプロたちは複雑な商品を開発して、当然、そのリスクを知っていながらレバレッジを利用した利益の拡大に走っていたことだ。

ブッシュ政権は、ポールソンに7000億ドルの小切手兆だけ渡せば、後はうまくやる、と約束した。しかし、ポールソンはウォール街のギャングの一味、ゴールドマンサックスの幹部だった男だ。議会はポールソンに説明を求め、委員を指名しなければならない。また、救済される金融機関では幹部の報酬を制限することだ。

NYT September 22, 2008 A Fine Mess By WILLIAM KRISTOL

NYT September 22, 2008 Cash for Trash By PAUL KRUGMAN

7000億ドルをドブに捨てるようなものか? これまで危機を封じ込めることを主張していたはずのポールソンを、危機になっても信じるだけでよい、とは思えません。

PAUL KRUGMANは、金融危機の4段階を考えます。1.住宅バブルがはじけた。モーゲージを組み込んだ資産の価格が下落する。2.損失が増えて金融機関は債務に見合った資本が不足する。3.融資を行わず、債務を減らそうとする。経済に悪影響を及ぼす。4.資産を売ろうとして、ますます資産市場の価格を下げる。レバレッジの縮小という悪循環が生じる。

ポールソンはモーゲージの悪化を食い止めるために政府が買い取る、と主張するが、金融危機は止まるか? 資本不足はどうなるのか?

だから、政府が介入するなら危機の第4段階ではなく、第2段階が望ましい。資本を注入するなら株式を購入して、不良債権処理が終わればその利益を回収するべきだ。

たとえ空が落ちてくると政府が脅しても、議会は立ち止まって修正を求めよ。

Beyond a bailout, Wall Street needs new rules By Andy Zelleke CSM September 23, 2008 edition

NYT September 23, 2008 Starting a New Era at Goldman and Morgan By BEN WHITE

NYT September 23, 2008 Europe and Japan Balk at U.S. Request on Bank Aid By CARTER DOUGHERTY and MATTHEW SALTMARSH

NYT September 23, 2008 Stopping a Financial Crisis, the Swedish Way By CARTER DOUGHERTY

スウェーデンの経験を紹介しています。GDPの4%に及ぶ救済資金を充てたというのは、今のポールソンの救済案に匹敵します。しかし、スウェーデンでは銀行を政府が所有し、不良債権処理によって負担を実際に回収できたわけです。

スウェーデンの危機は今のアメリカと同じような経過で起きており、また日本の危機処理よりも優れています。「政府が資本を強化する前に、スウェーデンの銀行は損失をただちに償却するよう命じられた。同じ問題に直面した日本政府は、その償却を遅らせるという失敗を犯し、何年も解決が遅れた。」そして、スウェーデンでは株主の利益が優先された。

政府介入の支持者にしばしば警告される「モラルハザード」論についても、政府が所有した銀行に虚偽の解決を許さなかったわけです。Looking back, Swedish officials say the tough-love approach toward the banks paved the way for success.

アメリカ議会やウォール街は認めたくないようですが。

BBC 2008/09/23 The politics of the bail-out By Steve Schifferes

Rescue Plan Sows Seeds of New Kind of Capitalism Caroline Baum Sept. 23 (Bloomberg)

LAT September 23, 2008 A better bailout

The US can afford to pay for this rescue - but little else Bill Emmott The Guardian, Tuesday September 23 2008

これで「金融資本主義」は終わった。サッチャー=レーガン主義もおしまいだ。と、喜ぶのはまだ早い。われわれは規制された日本市場の失敗を見たのだから。アメリカはよくやっている。

アメリカ政府は不良債権を国有化してでも処理する意志を示した。しかし、金融機関が破たんする前に「不良債権」を定義するのは難しい。景気は悪化しており、明日には不良債権がもっと増える。アメリカの処理がうまくいけば、他国の政府も見習うだろう。

ドル暴落を心配する者がいるが、巨額の救済策のせいでドル安は起きない。ドルが安くなるとしたら不況になるからだ。アメリカ政府の債務はGDPに比べてまだ小さい。救済額が大きいのは、それだけアメリカ経済が大きいことを意味している。14兆ドルの経済に対して5.4兆ドルの債務であるから、さらに数兆ドルの救済策にも堪えられる。

もし救済策の影響が及ぶとしたら、それは次の大統領の手を縛ることだ。オバマが11月に当選しても、彼が約束した社会保障制度の改善策は実行できない。増税しない限り。

A Hedge Fund Like No Other By Simon Johnson and James Kwak WP Tuesday, September 23, 2008

A Bailout or a Bonanza? By Eugene Robinson WP Tuesday, September 23, 2008

Improving Paulson's Cure By E. J. Dionne Jr. WP Tuesday, September 23, 2008

A Lesson the Markets Ignored By Richard Cohen WP Tuesday, September 23, 2008

Countdown to a Meltdown WP Tuesday, September 23, 2008

NYT September 23, 2008 The $700 Billion Question By ANIL K KASHYAP and JEREMY C. STEIN

7000億ドルの金で救済機関は何をするのか? 4つの可能な仕事がある。1.ウォーレン・バフェットのように、政府は安価な良い買い物をする。本当に価値のある資産が、今だけ、捨て値で買えるなら。プライヴェート・バンキングの投資アナリストたちを多く雇用する。2.購入したモーゲージを整理し、再生しなければならない。たとえば利払いを軽減して差し押さえを減らす。

それだけなら、できるかもしれない。しかし、十分ではない。

3.金融機関は損失を処理できない。自己資本が不足してしまう。そのためにポールソンは、最初、資産を高く買い取ってやるつもりだった。しかし、アメリカ企業だけでなく外国の金融機関や企業にも支払うことは問題があると気づいて、これをやめた。他の国内投資家にも悪しき前例となる。そこで、4.優先株を発行させて購入する。

FT September 23 2008 Paulson’s plan was not a true solution to the crisis By Martin Wolf

アメリカ国民は包括的な解決策を期待しており、それ以外では失望を招く。しかし、緊急性は正しさの証明にはならない。

この2週間余りの出来事をもっと大きな視野で見れば、アメリカ経済はGDPに対する債務の比率が1980年の163%から2007年の346%にまで上昇してきた。それは経済の二つの部門に集中している。すなわち、住宅(50%から100%)と金融(21%から116%)である。金融部門のバランス・シートは膨張し、その利益は急増したが、レバレッジは反対方向にも作用する。

もし人々が債務の返済に不信を抱けば、融資は停まり、I.フィッシャーが命名し、日本が経験したような「デット・デフレーション」が起きる。

救済策は納税者のコストやリスクを最小限にしなければならないし、人々の経済的動機を損なってはならない。少なくとも、社会正義に反することは許されない。ところがポールソンの提案は、流動性危機には連銀が対処するから必要ない。また、支払い不能の金融機関を助けるために不良債権を高く買い取ることは、納税者に大きな損失を与え、無責任な投資家に上限のない救済資金を与えることになる。そもそも不良債権の価値は容易に評価できないはずだ。

そもそも提案は資本増強に対処していない。もっとも単純には、金融機関が増資して、配当をやめることだ。さらに、債務を株式化する。これらは公的資金を要しない。それらを拒む機関には、政府が優先株を購入するように増資を命令する。

FT September 23 2008 European banking on borrowed time By Daniel Gros and Stefano Micossi

FT September 23 2008 Do not abandon inflation targets By Frederic Mishkin

FT September 23 2008 Dollar rally halted on debt concerns

WSJ SEPTEMBER 23, 2008 The End of Wall Street

モルガン・スタンレーとJPモルガンは、75年前にグラス=スティーガル法が分割した商業銀行と投資銀行を、再び統合することを決めた。革新的な銀行業から安全な銀行システムを求めて。

FT September 24, 2008 The price of salvation by Simon Johnson and James Kwak

Asia Times Online, Sep 24, 2008 Paulson plan throws oil on fire By Hossein Askari and Noureddine Krichene

ポールソンとバーナンキが求めるthe Mortgage and Financial Institutions Trust (MFI)の設置は金融システムをさらに危険なものにする。ポールソンの主張に反して、それは過剰な流動性を供給して危険な投機を促す。投資家の失敗を納税者が負担するのは恐るべき発想だ。彼らは財政や金融の利益を犠牲にして、金融機関の利益に服従している。

それは金融システムの将来に不安定性と無秩序の種をまく。

Asia Times Online, Sep 24, 2008 The wrong rescues By Martin Hutchinson

NYT September 24, 2008 Buyout Plan for Wall Street Is a Hard Sell on Capitol Hill By MARK LANDLER and STEVEN LEE MYERS

Asia Times Online, Sep 25, 2008 US on reverse socialism path By Ronald Solberg

Build a better bailout By Howell E. Jackson CSM September 25, 2008 edition

LAT September 24, 2008 Don't sell America's economy short By Max Boot

Paulson's Panic By Robert J. Samuelson WP Wednesday, September 24, 2008

今回の危機を「ポールソン恐慌」と呼ぼう。それはポールソンが引き起こしたわけでもないし、バーナンキと一緒に対処しているのだから、ちょっとひどい呼び方だ。しかし世界の金融システムはパニックに向かっているし、ポールソン自身がパニックに陥っている。

そしてRobert J. Samuelsonは、ポールソンを超える経済への政治的介入として、R.ニクソンの賃金・物価統制を挙げています。どちらも自由市場哲学の信奉者であるのが皮肉だ、と。そして、どちらも魔法の解決策ではないだろう。

時間とともにポールソンは市場に流動性をまき散らし、新しい融資、新しい証券化、そしてデレバレッジを止めるだろう。

NYT September 24, 2008 An Inadequate Case for the Bailout

FT September 24 2008 Lesson from savings and loans rescue By Tim Ryan

BG September 24 2008 Lessons from the meltdown By Scot Lehigh

同様に、1971年のニクソンが現在のパニックにたとえられています。「私もケインジアンだ」と、当時のニクソンは宣言しました。金融危機にイデオロギーは関係ない、とバーナンキは民主党の支配する議会をけん制しましたが、問題はいくつもあるのです。

BG September 24 2008 Bailout must address the foreclosure crisis By Bruce Marks

FT September 25, 2008 Bagehot plus RFC: the right financial fix by Larry Kotlikoff and Perry Mehrling

金融危機には二種類ある。流動性危機と支払い不能危機だ。だから解決策もふたつ必要だ。つまり、Bagehot plus RFC

FT September 25 2008 We need a new Global Monetary Authority By Jeffrey Garten

金融危機には二面性がある。国内の銀行危機と対外的な通貨危機です。だから再発を防ぐには、解決策にも二面性が必要だ。国内金融規制だけでなく、国際的・世界的な規制を。

IMF,G7、BIS、いずれも危機の国際的な広がりには対応しない。そこで連銀が世界中央銀行の役割を兼ねることになる。世界資産額は1980年の12兆ドルから、2007年に200兆ドルへと急増した。しかも欧米ではなく、アジアと湾岸地域で増えている。それにつれて、世界資産市場におけるアメリカ文化、カウボーイ資本主義の常識は衰退していくだろう。そうであれば、世界金融庁は普遍的基準を作るために欠かせない。

The Japan Times: Thursday, Sept. 25, 2008 Bright side of the U.S. financial meltdown By TOM PLATE

BBC 2008/09/25 US 'agrees Wall Street bail-out'

Why Mark-to-Paulson Accounting Won't Save Banks Jonathan Weil Sept. 25 (Bloomberg)

LAT September 25, 2008 Beyond the bailout

LAT September 25, 2008 Keating 5 ring a bell? Rosa Brooks

Too much of a good thing Adam Davidson The Guardian, Thursday September 25 2008

A Bailout We Don't Need By James K. Galbraith WP Thursday, September 25, 2008

救済融資など必要ない。取り付けが心配なら、預金保険の上限を外せばよい。住宅危機は景気を回復すること、地方財政の危機は連邦政府の財政移転、老後の資産をなくした人々には社会保障制度の整備、そして今後の成長を考えれば、エネルギー政策と気候変動に関してエネルギーの節約や再生エネルギー開発に投資することだ。

Bailout Breakdown WP Thursday, September 25, 2008

Why We Need to Act Now By Anne O. Krueger WP Thursday, September 25, 2008

ポールソンの救済策を支持しています。ここでも重要な根拠は日本の教訓です。つまり、銀行の不良債権処理を求めるだけでは容易に処理が進まない、というわけです。今すぐ処理するか、処理を遅らせるか? 日本は間違った選択をしました。

正しい買取には価格を評価するために透明性が必要です。また、十分な資金を用意しなければなりません。しかし、何より重要なことは迅速さです。

What Keynes Could Tell Paulson By David Ignatius WP Thursday, September 25, 2008

ケインズと言えば、不況の際に金融緩和して、政府が赤字を拡大する話と思うだろう。しかし、一般理論を今読めば、それは金融危機の本であると分かる。市場心理がパニックを引き起こし、結果的に政府介入が必要になる、とケインズは主張している。「流動性選好」と彼が命名したように、市場で疑いが生じたら、過度の楽観は悲観に変わり、人々は一斉に安全な資産に向けて逃げ出す。こんな場合、市場は自分で不均衡を是正する力がない、とケインズは考えた。貨幣は動かず、生産的な投資も止まってしまう。政府が民間に代わって投資するべきだ、と。

R.スキデルスキーによれば、ケインズはいつも、経済政策の社会・政治的な結果を重視していた。第一次大戦の賠償金問題であれ、ブレトンウッズ会議であれ。

What's the True Cost? By Robert J. Samuelson WP Thursday, September 25, 2008

NYT September 25, 2008 The Crisis Last Time By RON SUSKIND

NYT September 26, 2008 Lawmakers Agree on Outline of Bailout By DAVID M. HERSZENHORN


BBC 2008/09/18

Japan offers solution to financial crisis

By Duncan Bartlett

The Japan Times: Sunday, Sept. 21, 2008

The Japanese knack for choking in a slump

By GREGORY CLARK

(コメント) 日本の銀行危機が世界恐慌の引き金を引く、という恐怖が鎮まったのは、たった4年前に過ぎない、とDuncan Bartlettは書いています。

2002年には、日本の主要銀行が支払い不能に陥っているように見えた。不動産に絡んだ融資が返済不能になったのは今のアメリカと同じである。

危機を回避するために、日本の中央銀行は金融緩和を限界まで行い、最終的には政府が税金を使って銀行を救済した。それには少なくとも1000億ドルを費やした。また、有利な金利で融資し、銀行の株式も購入した。彼らが利益を出せるようになったのは2006年である。

ケインズ主義の経済政策を基準に、GREGORY CLARKも日本の経験を振り返っています。アメリカに広まる「日本の教訓」や「日本の轍を踏むな!」「アメリカは日本のような失敗を繰り返さない」といった主張を批判します。

日本政府はバブル崩壊後の不況を緩和するためにケインズ主義者の宮沢首相が大幅な財政赤字を実現して景気を回復させた。1996年、OECD諸国中で最高の4%成長であった。しかし、次の橋本内閣がアメリカの供給サイド経済思想を輸入して、景気回復をくじいてしまった。同時に山一証券が倒産するのを許した。

その後、小渕、森は財政刺激策に復帰したが、再び、小泉首相と竹中平蔵は財政再建・構造改革を叫んで供給側の思想をふりまき、倒産を増やした。そして銀行の倒産を迎えて、ようやく今のアメリカ政府が用意しているような公的資金投入を容認したのだ。

誰が悪いのか? 経団連。日本の多くのエコノミストたち。日本経済新聞。そして小泉劇場に浮かれた人々。英米の金融メディア。

そして、世界は日本を見なくなり、中国に新しいモデルを探しています。

FEER September 2008

Bracing for the American Contagion

by Colum Murphy

FT September 24 2008

Japan’s banks step on to world stage

(コメント) アジアは大丈夫か? アジアは金融ビジネスにおいても復活し、世界市場への攻勢に転じるのか? しかし、日本の銀行は投資銀行ビジネスの人食いザメにはなれそうにない。逆に、食われてしまうかも・・・


The Guardian, Friday September 19 2008

Free market ideology is far from finished

Naomi Klein

(コメント) まだ自由市場の哲学は滅ばない。政府には何もできない。政府は解決策ではなく、問題の源泉である。・・・もしわれわれが良い社会の基準を成長にしか見いだせないなら、ジャンク・ローン(ゴミの・クズの融資)を創り出すことは成長のために再開されるだろう。危機は、すべてを犠牲にして成長を求めるような政治・経済・イデオロギーの支配を終わらせるときにだけ、全く異なる社会を見いだせる。

1930年代のニュー・ディールが再現するには、もっと大きな政治的圧力がなければ不可能でしょう。たとえ自由市場が失敗しても、その哲学は消滅しません。

Mark Braund Thinking through the crisis The Guardian, Saturday September 20 2008

George F. Will Bailout on Wheels WP Sunday, September 21, 2008

Failing the World Poor NYT September 24, 2008

BARBARA EHRENREICH The Power of Negative Thinking NYT September 24, 2008


FT September 19 2008

Russian lessons

The Japan Times: Friday, Sept. 19, 2008

What goes around comes around for Russia

By BRIAN KLEIN

FT September 23 2008

Putin’s package

The Japan Times: Tuesday, Sept. 23, 2008

Russia entering third act of financial tragedy

By ANDERS ASLUND

Sept. 24 (Bloomberg)

Putin, Not Just Paulson, Setting Decade's Course

Amity Shlaes

(コメント) 北京オリンピックも、ロシア軍のグルジア侵攻も、ウォール街のメルトダウンですっかり忘れられていますが、重要でなくなったわけではないはずです。

アメリカの金融危機と救済策ばかり話題になっていますが、ロシアの金融危機も深刻であり、プーチン=メドヴェージェフは2日間の市場閉鎖後、1300億ドルの安定化基金を用意して主要銘柄の急激な反発を演出しました。

しかし、グルジア戦争から今日までのロシア金融市場の混乱により、FTは、モスクワが国際金融センターになるという夢から覚めた、と考えます。また、ロシアは世界経済と結びついており、切り離せない、とも指摘します。ドルや石油価格、そして外交を誤れば資本逃避が起きる。最後に、プーチン主義は限界に達した、と考えます。市場が繁栄するならプーチンの政治手法には目をつむって支持しておく、というオリガークたちの暗黙の承認はひび割れました。

ANDERS ASLUNDも、519日以来、60%も株価が暴落して、9000億ドルの資産が消滅した衝撃を考察しています。これはロシアの成長力も奪うでしょう。この短い論説が優れています。

それによれば、ロシアの金融危機は5段階で進みました。1.プーチンによる石炭・鉄鋼財閥Mechelへの嫌がらせ。株価下落。2.グルジア侵攻。その後の資本流出が未熟な銀行システムを破壊。ソビエト式の株式市場閉鎖。グルジア侵攻後は国際資本市場から締め出される。3.銀行危機の始まり。借り入れて株に投資していた。4.不動産バブルの崩壊。銀行危機を深める。5.投資がストップし、消費も削減される。成長から不況へのジャンプ。

財政も健全で、莫大な外貨準備を持つ公的部門が、危機の救出に役立たなかった。それは、プーチン政権が市場の信頼を破壊する中心人物だったからだ。


FT September 19 2008

The Great Wall Street of China

FT September 22 2008

Beijing’s burden: a slowing China bodes ill for the world economy

By Geoff Dyer

(コメント) 中国の台頭を、脅威か、チャンスか、と考えた時代はさらに続きます。中国への資本流入や貿易黒字は、次の時代にアメリカの消費拡大やインフレ抑制を助け、さらに、住宅バブルやウォール街の恐慌、ファイアー・セール、そして、主要金融機関の救済合併や救済融資を支えるのでしょうか? 中国は、アメリカ企業や不良債権の最後の買い手になるのです。

さらにFTは、アメリカ企業の所有者となった中国政府系投資ファンド(CIC)は、アメリカ資本主義の経営者として、中国国内の景気減速や失業増大を強く意識するだろう、と考えます。1998年の香港金融危機に対する積極的な市場介入が成功したことを記憶しているなら、たとえ当面は株価がまだ下がるとしても、中国政府は重要な貢献を、そして指導力の移転を成し遂げるでしょう。

Geoff Dyerは、逆に、アメリカや欧日に続いて、中国経済も不況に向かう危険を考えます。中国の成長はすでに過熱しており、株式市場や都市の不動産でバブルを生んでいました。それは収縮期にあるのです。


BG September 19, 2008

North Korea's crimes against humanity

By Václav Havel and Kjell Magne Bondevik

IHT Sunday, September 21, 2008

Imagining the next North Korea

By Philip Bowring

WP Thursday, September 25, 2008

North Korea's Reverse


WP Sunday, September 21, 2008

Rough Week, But America's Era Goes On

By Niall Ferguson

IHT Tuesday, September 23, 2008

The Panic of 1907

By H.D.S. Greenway

(コメント) Niall Fergusonは、この危機を「中国=アメリカ体制」の終焉と見ています。中米経済が世界をリードする時代は終わり、アメリカの覇権も失われて、世界は大国間の競争に向かいます。


The Guardian, Monday September 22 2008

Putting Doha on life support

Kevin Gallagher and Timothy Wise


NYT September 22, 2008

A Measure of Hope

By PAUL COLLIER


The Guardian, Wednesday September 24 2008

The new Warsaw Pact

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The Economist September 13th 2008

Financial Services: Hank to the rescue

America’s economy: Paulson’s pluck

Buttonwood: Credit and blame

Israel: Give Livni a chance

Charlemagne: A worrying new world order

(コメント) エジプト、パキスタン、タイ、ブラジル、ウクライナ、など、興味ある記事と思いつつも、集中力を欠いて、その要点をつかみ切れませんでした。

ファニー・メイとフレディー・マックを救済しても、金融危機は完全に終わるわけではないことを指摘しています。GMなど、大企業が倒産したらどうするのか? たとえモーゲージの支払いが少し緩和されても、住宅価格は以前の差し押さえと競売の圧力を持続しており、下落し続けます。すでに、銀行の不良債権と景気悪化は共鳴し始めているのです。自由市場信仰、特に「効率的市場仮説」が危機を増幅している、という主張が明確になったようです。

増大するパレスチナ人の人口を、治安部隊や安全壁で押しつぶせる、という幻想を捨てることです。イスラエルの外相が次期首相になるかもしれません。彼女はパレスチナ国家を支持しており、国境の合意を求めており、エルサレムを共有する意志を示します。イスラエルの平和を得るために。

グルジア侵攻と、フランス大統領でEU議長でもあるサルコジの外交は、新しい世界秩序の性格や名前についての論争を刺激しています。「アメリカの覇権」が失われた「多極世界」というよりは、「無極世界」、「オーヴァーラッピング・ワールド」、「相対的大国の時代」、「ネオ・ポーラー・ワールド」・・・