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IPEの風 9/29/08

戦争についてはミュンヘン会談(あるいは真珠湾)がしばしば言及されますが、金融危機についてはアメリカのS&L危機、スウェーデンや日本の危機救済策、そして1930年代が繰り返し言及されます。

スウェーデンの優れた金融危機管理・救済処理を読むと、コーポラティズム論や小国論を思い出しました。

日本の金融機関が国際金融の舞台に再登場して、欧米市場を席巻するのが好ましいことか? 欧米に支配的な金融ビジネスを模倣するだけでは意味がないと思います。日本の経験と特質を生かした新しい金融ビジネスの在り方を示してほしいです。

バーナンキ連銀議長、ポールソン財務長官の決断と行動力を称賛するよりも、彼らが合意を形成できるのか、危険な政治論争が始まりそうです。

危機を回避するために救済する、という場合、まだ解決していないのは内外の分配問題と、新しい金融システムに向けた改革です。

オバマとマッケインとのテレビ討論会を観ました。

麻生首相の滑り出しは快調のようです。日本の安全保障や日米同盟を大いに議論して深めたい、という限り、民主党を超える支持を得られるかもしれません。しかし、中国や韓国との関係はどうでしょうか? また、国内の景気対策や金融危機を理由に、財政と金融行政とを一緒に扱う方が良い、と主張するのは、時代を逆行しているように思います。

国連本部の同時通訳が機器の不調でできないとわかると「メイド・イン・ジャパンじゃないからだ」と笑わせるのも、アメリカびいきのサルコジ大統領の雰囲気です。しかし、アメリカの金融危機に日本の経験や知識を役立てたい、というのは、どうなのでしょうか? 日本の改革を進めてアジアの模範になれ、と言われそうです。

NYTの社説が指摘したように、アメリカ政府は日本が国際安全保障を分担すること以上に、アジアで友好関係を深めることを望むでしょう。

小泉元首相が引退するのは、選挙において小泉チルドレンが全滅するのを見たくないからだろう、と思いました。構造改革や財政再建、竹中=ホリエモン革命に、どこまで関与していたのか?

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自分の研究を振り返って,読み直すことはあまりないのですが,1998年に桜井先生や伊豆先生との研究会で作った小さな論文集,『グローバル化の政治経済学』(晃洋書房)に書いた拙論を思い出します.

終章において,私は「国際秩序を築くものは何か?」と問いました.そして,伝統的な答えである覇権戦争に加えて,技術革新(あるいは国際分業の急速な変化)と,国際金融危機を鎮静化する力を挙げています.グルジア=ロシア戦争や,中国経済の台頭,そしてアメリカの金融危機が世界に波及しつつある現実を前にして,おおむね正しかった,と(たとえ斬新な意見ではなくとも),IPEの洞察力に満足しています.

同じ終章で,北朝鮮の終末,朝鮮半島の統一に関与する過程で,日本は国際秩序の形成に積極的に貢献できるはずだ,と主張しています.

アメリカの覇権は,この金融危機の後には変質するでしょう.少なくとも,日本の政治指導者たちは,もっと自立した政治経済の在り方を,長期的な・世界的な視点で模索しなければならないと思います.

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