今週のReview
9/15-9/20
*****************************
世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
*****************************
******* 感嘆キー・ワード **********************
大西洋経済圏、 グルジアに寄せて、 タイの政治紛争、 日本改革案、 リベラルな左派、 ファニー&フレディーの国有化、 安全保障をどうするか?
******************************
ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor, WSJ:Wall Street Journal Asia
IHT Thursday, September 4, 2008
Liberalizing trans-Atlantic trade
By Bill Emmott and Roy MacLaren
(コメント) WTOのドーハ・ラウンドが決裂したことは、中国とインドが西側の提案を拒んだから起きたと考えます。しかし、より根本的な問題は、提案が中国のWTO加盟を十分に反映していなかったことです。新興市場が重要性を増すなかで、世界市場のルールは、アメリカによっても、EUによっても作れません。
ところが、アメリカもEUも、そして日本までが、多角主義的な合意が失敗すると分かれば、一斉に二国間で、また地域的な合意を結んで、多角主義を自ら破壊しています。彼らが二国間合意や地域主義に向かうのは、アジア諸国、特に中国とインドの台頭を恐れるからです。少しでも交渉を有利にするために、既存の貿易圏に貿易・投資のルールを輸出しようとします。
The Economist前編集長Bill Emmott とカナダの国際通商大臣 Roy MacLarenは、むしろ欧米が大西洋貿易協定a trans-Atlantic trade agreementを形成して、新興諸国にも、共通のルールに基づく貿易・投資の多角的自由化を参加するよう働きかけるべきだ、と主張します。
拠り大きな市場に形成されたルールが世界市場を支配します。アメリカがNAFTAを支配したように、大西洋経済が合意できればアジア企業に、EUがカナダやメキシコと合意すればアメリカ企業に、共通のルールを採用せよ、と政府に圧力をかけるでしょう。
日本企業がもし世界市場で競争するのであれば、アメリカや韓国との貿易・投資ルールを、政府は少しでも先行して構築しなければならないわけです。
Sept. 5 (Bloomberg)
Inflation Is Trumping George Soros in Hong Kong
William Pesek
(コメント) 曾蔭権(Donald Tsang)行政長官の支持は低下しているが、もしインフレを抑えられなければ辞任するしかなくなるだろう。もしそれを避けたいなら、しなければならないことは分かっている。香港ドルをUSドルから切り離すことだ。
確かにドル・ペッグは香港を1997年のアジア通貨危機から救ったが、それだけの理由で維持することは間違いだ。香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority)の任志剛(Joseph Yam)総裁は、外貨準備が1580億ドルに及ぶと発表した。香港ドルは切り上げるしかない。たとえソロスがしなくても、世界中の投機資金がその機会を待っている。
そう書くのかと思って読むと、William Pesekはそうではない。なぜなら、切り上げには難しい時期だ。アメリカもEUも日本も景気は悪化しつつある。香港ドルのペッグを決めるのは政治的決断であり、それは香港の指導者を任命する中国の判断にかかっている、というわけです。その中国に関心は、成長や雇用を維持したいが、インフレも困る、というジレンマです。アメリカの金融政策を輸入している、という意味では、アメリカ連銀の苦境も伝わって来ます。
インフレは香港の競争力を低下させ、景気も株価も悪化します。
The Straits Times, 5 September 2008
Banking on Neo-Confician Capitalism
Ho Kwon Ping
Sept. 8 (Bloomberg)
Goldman Sachs Cools on World's Freest Economy
William Pesek
FT September 11 2008
China’s two trillion dollar question
(コメント) アジア通貨・金融危機により、これまで軽視されてきたアジアの儒教型資本主義は、欧米の投機的資本移動、所得不平等、ファンド・マネージャーへの高額報酬、などに対する批判とともに、社会的安定性を目指すシステムとして、再び支持されるようになりました。
William Pesekは、香港がかつて衰退or消滅を予測されていたことを思い出します。中国に吸収されれば、上海のような他の都市に追い越される。しかし、とっくに死亡記事が載っているはずが、その後のアジア通貨危機にも、SARSにも、香港は生き残りました。中国がその有利さを維持したいと願う限り、香港はその機会を逃しません。
中国の外貨準備がますます増えています。アメリカの金融危機に連動しない、中国という投資家が、何を考えるのでしょうか? 1兆8100億ドル。中国は何に使うのか? 2000億ドルの政府系投資ファンド、the China Investment Corporationを設けて、分散しようとしています、が。
FTはファンドの運用が不透明であれば、経済ナショナリズムに利用される、と懸念します。むしろ、人民元の増価を許し、資本規制を緩和して民間の海外投資を自由化していくことを勧めます。
LAT September 5, 2008
Millennium Development Goals unmet
(コメント) 貧困、疫病をなくす、と公約したはずですが、世界の富裕諸国はそれを破っています。ミレニアム開発目標はG8サミットで認められました。開発援助額は2006年に4.7%減少し、2008年には8.4%さらに減少しました。2015年までに、援助額を国民所得の0.7%にまで引き上げると約束しました。しかし2007年は、わずか0.28%でした。
ますます小さくなる世界で、もっと多くの所得が援助に割かれるべきです。
NYT September 5, 2008
How to Exit Iraq
By JOHN NAGL, COLIN KAHL and SHAWN BRIMLEY
(コメント) アメリカにとって最悪の問題は、イラクからうまく撤収することです。バスラを撤退したイギリス軍の方法が参考になるでしょう。
FT September 5 2008
The evolution of creationism
By Christopher Caldwell
FT September 9 2008
The day McCain’s party blew its political advantage
By James Carville
WSJ September 11, 2008
Obama Can't Win Against Palin
By KARL ROVE
(コメント) サラ・ペイリンは、ウィリアム・J・ブライアン以来、1世紀ぶりに、正副大統領候補に加えられたcreationistすなわち、人間や世界は神によって創られたintelligent design、として進化論を否定する者です。
James Carvilleは、ペイリンの指名によって、マッケインは共和党が持つ安全保障面での優位を失うだろう、と指摘します。社会福祉よりも安全保障を重視する、(Republicans were willing to put “being” above “well-being”.)という姿勢です。重要な三つの戦争(イラク、アフガニスタン、対テロ)において、民主党は弱腰だ、と主張してきたはずですが。
彼女がどれほど子供好きの「ホッケー・ママ」であっても、世界各地の戦争を指導する位置には就けない。
他方、KARL ROVEは、ペイリンがいかに有効にオバマを倒す条件になるか、考えます。まず、オバマ陣営はペイリン批判に多くの時間を費やしている。経験や責任を問うなら、ペイリンはオバマに勝っている。それに気づけば、有権者は二人の経歴に注目するはずだ。「豚に口紅」の発言でも、オバマは人に関わって中傷している。
Propping up the rouble FT September 5 2008
Malcolm Rifkind A hot war is no way to prevent a cold one IHT Friday, September 5, 2008
民主主義国グルジアの防衛は、チベットに法の支配を要求するのと同じように重要であるが、軍隊を送るほど西側にとって死活的ではない。たとえNATOを拡大しても、本当に戦争してまで守る気がないことをロシアは知っているだろう。それは強さではなく、弱さの表れだ。
他方、グルジアはロシアの南部国境における死活的な戦略地点である。NATOの拡大はロシアの軍事行動を抑止することに失敗するし、それはますます第一次世界大戦が始まった条件に似てくるだろう。
Killing messengers in Russia BG September 6, 2008
THOMAS L. FRIEDMAN Georgia on My Mind NYT September 7, 2008
NYTの記事を読んで私は驚いた。「アメリカ政府はジョージアを再建するために10億ドルの救援を発表した。」しかし、すぐに気が付いた。これはジョージアではなく、グルジアのことだ・・・
確かにロシアと戦うグリジあの指導者を助け、他国に軍事侵攻するロシアを放置してはならない。とはいえ、われわれは何を優先するべきなのか? イラク、イラン、アフガニスタン、パキスタン、さらにグルジア? 自国の金融不安鎮静化と救済策に忙しいのに、プーチンを困らせるなら1億ドルでも十分だろう? 新しい冷戦?
THOMAS L. FRIEDMANは、すべてに優先して、アメリカは最も革新的な技術を実現する高い能力を持たねばならない、と主張します。ところがその力を失いつつある。インフラの劣った、基礎研究を軽視する、教育システムに欠陥だらけの国になりつつある。グルジアに援助するより、ジョージアの復興を優先するべきではないか?
ところが、共和党大会で注目されたのは妊娠中絶反対であり、技術革新ではない。
Jackson Diehl The Trouble With Saakashvili WP Monday, September 8, 2008
グルジアの民主主義を守ることには賛成だが、サーカシビリを擁護するつもりはない。もし10億ドルを支援するなら、グルジアの民主主義に役立つように、サーカシビリの反対派が不利にならないように、行うべきだ。
Gideon Rachman Between cold war and appeasement FT September 8 2008
ロシアと戦争することも、ロシアの「影響圏」を追認することも、私たちは避けなければならない。ロシア人がいる土地に次々と介入することを黙認するのは、西側の理想に反する。しかしNATOの拡大は解決策にならない。
今回は、1968年にプラハを占領したようなわけにはいかないだろう。ロシアの株価が急落したように、軍事的な占領はそれで終わりではないのだ。
Charles Clover Invasion’s ideologues: Ultra-nationalists join the Russian mainstream FT September 8 2008
Brook Horowitz Russia: Integration, not isolation IHT Monday, September 8, 2008
DAVID MILIBAND Russia must change course The Japan Times: Monday, Sept. 8, 2008
イギリス外相、DAVID MILIBANDは、相互依存や、相互の分担、協力、などという言葉が、ロシアの軍事行動によって色褪せたことを認めます。「われわれは冷戦を再現することを望まない。しかし、平和の永続する基礎が何であるか、再考するときだ。」
論説の趣旨は分かりますが、網羅的で、前後に強気と弱気、強硬策と慎重さ、平板な扇情的攻撃と寡黙な熟慮、といった迷走した話が続きます。イギリスはヨーロッパの端にある島であり、ロシアに石油や天然ガスを依存するわけでもないから、強気を示しつつドイツやフランスに配慮し、あるいは、弱気を悟られないようにアメリカの同調を求める、という矛盾した姿勢になるのでしょう。
決定的な反撃はできないが、時間とともに軍事的勝利の栄光は失われ、市場でロシアの不利益が示される、と予想します。
ANDRZEJ OLECHOWSKI and PAWEL SWIEBODA Brussels vs. Moscow WSJ September 9, 2008
John Gray Folly of the progressive fairytale The Guardian, Tuesday September 9 2008
Michael R. Sesit Russian Peace Deal Would Reassure Investors Sept. 10 (Bloomberg)
「ロシアはこの20年間の屈辱にこだわっているだろうが、ナチス・ドイツのような世界征服を計画しているわけではない。」冷戦時のような、イデオロギー対立も、殲滅を掲げた核軍拡競争もない。
それでも地政学的な危機は高まっており、投資家たちはロシアを逃げ出し、旧ソ連圏を避け、リスク・プレミアムで新興市場なども弱気になり、伝統的避難地であるスイスや、欧米ではなく、しかも黒字で守られた円に逃げ込む気配です。グルジアは、世界中に潜伏するリスクの大きさを投資家たちに痛感させました。
イラン核処理施設への空爆、インドとパキスタンのカシミール紛争、イスラエルとアラブ諸国の対立、・・・ 「われわれは中国にオリンピックを見て、インドでは国際的な企業買収劇を見る。しかし、ロシアには、1990年代の心的な後遺症と、帝国復活の欲望を見る。」と、フランスのサルコジ大統領は述べました。アメリカ、ヨーロッパ、ロシアで、政治的・軍事的な機構が動き始めた、とゴルバチョフ元ソ連共産党書記長は注意しました。戦争への動きと停止させるべきです。
第一次世界大戦が起きたときに、最も重要な点は、多くの政治指導者、情報を持って分析した専門家たちが、あれほど大きな戦争になるとは予測していなかったことです。``Many people -- not least, investors, a generally well- informed class -- were taken completely by surprise by the outbreak of World War I,'' wrote Harvard historian Niall Ferguson…
それぞれが妥協し、譲歩することで、安全保障の大きな合意を形成する機会はあったはずです。しかし、小さな問題にこだわって、対立が避けられなくなりました。冷戦期のオーストリアがそうであったように、ロシアとEU・アメリカの間で相互の関係を深めることで、中立的な空間が安定的に維持されます。たとえば、アメリカとロシアはミサイル防衛網で譲歩できるでしょう。EUとロシアは平和維持活動で譲歩します。
アメリカが支配することもないし、ロシアが滅ぶこともない。それは、サルコジに言わせれば``the era of `relative powers'' なのです。
David Ignatius Caution Over Confrontation WP Wednesday, September 10, 2008
The price of Putin FT September 10 2008
これも有名な話です。James Carville, campaign manager to President Bill Clinton back in 1992, put it with characteristic directness. “If there was a reincarnation,” he said, “I want to come back as the bond market. You can intimidate everybody.”
しかし、この論説では、それがプーチンの願いだ、と書いています。債券市場や経済の動きは、プーチンにとって我慢ならないものだからです。
誰が悪いのか? もちろん、プーチンに最大の責任があります。プーチンはひとりの億万長者を、まるでチェチェンのテロリストを非難するように、“purge”するぞ、と脅しました。この国は法によって支配されるのではなく、権力者が支配するのだ、と人々は確認しました。株価は暴落し、一週間で600億ドルが消えました。
それまでロシアの株価は、欧米の金融危機を無視して上昇していました。しかし、ロシアでは財産も権力者に奪われます。ロシア経済はたったひとつの産業、エネルギーにだけ依存して拡大しました。そのエネルギー輸出でも受けた挙句、インフレが起きているのに、プーチンは無関心です。小国を侵略した代償は、驚くほど高くつくでしょう。
もし生まれ変わるとしたら、私は・・・物価指数になりたい・・・?
DALJIT SINGH Russia and the West square off The Japan Times: Thursday, Sept. 11, 2008
The Guardian, Friday September 05 2008
Is Ukraine next?
FT September 7 2008
Kiev needs EU more than Nato
(コメント) 次はウクライナ、・・・最後は東ドイツ? ウクライナには830万人のロシア人が住み、国民の半数は、程度の差はあれ、ロシア語を話す。そうであれば、ウクライナ、そしてモルドバを、NATOではなく、EUの経済圏の積極的に取り込むことを求めています。
FEER September 5, 2008
by Daniel C. Lynch
WP Saturday, September 6, 2008
Thailand's New Crisis
The Japan Times: Saturday, Sept. 6, 2008
Democracy failing in Thailand
Asia Times Online, Sep 9, 2008
What Sondhi really wants for Thailand
By Shawn W Crispin
(コメント) FTなどは、バンコックの暴徒(モッブ)に支配される民主主義を嫌っていましたが、タクシンはタイの民主主義を悪用し、クーデタによって追放されたにもかかわらず、亡命先のイギリスからサマック首相を操った、と非難する声も強いでしょう。
WPは、民主主義と称して民主主義を破壊する行為だ、とPAD(People's Alliance for Democracy)を批判します。民主主義が政治や社会から排除されていた者を参加させ、発言や力を与えることに成功した国(ブラジル、インドネシア、メキシコ)もあれば、逆に、そのシステムを利用して大衆を動かし、ポピュリストや先住民の声を利用して権力を握れば、民主主義を逆転させる国(ヴェネズエラ、ボリビア)もある、と指摘します。
タイは、トルコと同じく、民主主義の運動に脅かされた旧支配層が権力を回復するために動き始めた例として理解されています。旧支配者とは亡命中のタクシンです。タクシンは、一方で、社会保障制度を築き、農民に融資を与えました。しかし他方で、メディアを支配し、軍や警察で人権を無視しました。ついに、国王が軍部のクーデタを支持し、権力から追放されたのです。
今回のPADの反政府活動も、軍部が戒厳令に従わず、サマック首相を辞任されました。しかし、完全な王制の復活や軍の支配を目指すより、PADが指導して選挙を行い、新しい議会が民主主義を前進させることを願っています。
JTは、たとえタクシンの支援があっても、サマックは合法的に選出された首相であり、PADが法に従わないことを民主主義によって弁解できない、と考えます。タクシンを追放した軍部のクーデタは、旧エリート層がタクシンのポピュリズムを恐れ、排除したのだ、と指摘します。軍部がサマック政権の戒厳令に従わなかったのは、2年前のクーデタを継続する判断です。
タクシンの勢力も、反政府側も、現行の民主主義を信用せず、法の支配に従いません。王制や軍の介入も恣意的です。民主主義は再び崩壊する過程にあります。
PADが求める「新しい政治」では、議会の30%しか選挙で決めません。70%は指名されます。どうやって? これは選挙によってタクシン派が多数を支配することを防ぐためではないか? 暴力的な衝突を繰り返すより、制度的な妥協を図るケースはどの国の歴史にもある。上院と下院、衆議院と参議院は異なった原理で選出された。タイの民主主義も制度的な妥協を模索している?
Asia Times Online の編集者、Shawn W Crispinは、このあたりの事情を、反政府勢力の指導的人物Sondhi Limthongkulにインタビューしています。
The Japan Times: Wednesday, Sept. 10, 2008
Thailand: populism vs. privilege
By GWYNNE DYER
IHT Thursday, September 11, 2008
Farcical, maybe, but serious too
By Philip Bowring
WSJ September 12, 2008
Asia's 'Democratic Crisis'
By MICHAEL AUSLIN
(コメント) GWYNNE DYERも、タクシンをタイのフアン・ペロンJuan Peronと呼びます。富と権力を握って、貧しいものに再分配を行い、広く支持を得ました。2年前に彼を追放した街頭デモは、再分配を嫌ったタイの富裕層や旧支配者たちが金で雇ったデモ隊だった、と書いています。ところが、軍のクーデタによって、その政党を禁止され、国外に亡命したタクシン派は、民政移管後、再び選挙で勝利し、この追放劇は終わらなかったわけです。
「タクシンはポピュリストだ。彼は貧しい人々に債務の救済を、低利融資を、医療の改善を、その他のサービスを約束した。それは従来のタイ政治にはなかったものだ。」それゆえ、タクシンは旧政治家と、それを支持してきた都市の中産階級、ビジネス・エリートから嫌われた。
DYERは、PADを民主主義とはまったく関係ない、と否定します。その主張は、教育を受けていない田舎の有権者が多いから、投票は容易に買収されてしまう、ということです。だから選挙結果を受け入れません。では、何が民主主義なのか? 彼らの求める議会の改革とは何か? PADが自分たちの友人を議会に指名するという「息をのむほどの厚かましさ」にあきれながら、DYERは、それでも国王や軍は介入しそうにないから、成功するかもしれない、と考えます。
ペロンは1955年に国外追放されて、その後も20年はアルゼンチンの政治を混乱させました。タクシンはタイのペロンだ、と考えます。
タイの政治が混乱するとき、その平和的な収拾を導いた王室はどうなったのか? 「王室は解決策ではなく、むしろ問題の一部になりつつある」とPhilip Bowringは書いています。しかも東南アジアにおいて、マレーシアではアンワルがイスラム教徒の政党に依拠して復活しました。分離独立の動きもあるようです。タイとマレーシアという重要な国が政治的な混乱を深める、と予想します。
MICHAEL AUSLINは、アジアの民主主義政治体制が示す弱さを問題にします。日本の首相は再び辞任し、タイの首相は戒厳令を発し、モンゴルでは選挙後の暴動で、2か月たってようやく議会が開かれました。韓国の大統領は街頭を埋め尽くす反政府デモにより政府機能をマヒさせてしまい、台湾では新大統領が中国と主権の否定にも及ぶ密約をしたのではないか、と噂されています。
楽観論者は、民主主義とはこのように混乱や騒動が付きものであって、これも成長する過程だ、と静観します。しかし、未成熟な民主主義では、人々が憲法の保障する権利を重視せず、平和的な権力の交代ができないのではないか、と悲観する者もいます。そして、このような民主主義の混乱に窮し、絶望した人々が、むしろ過去の専制体制を安定化のために求める政治状況も生まれてくるわけです。
Asia Times Online, Sep 6, 2008
Triangulating an Asian conflict
By Chan Akya
(コメント) アメリカの次の大統領が、オバマとマッケインのどちらに決まるか、それは世界に重要な影響を及ぼします。しかし、アジアにも同じくらい重要な変化が起きていることを忘れないように。1.パキスタンのウラン濃縮。2.中国の漢民族主義。3.インドのヒンズー原理主義。
いずれが爆発しても、世界のすべての秩序を大きく変えるでしょう。
The Japan Times: Saturday, Sept. 6, 2008
It's deja vu, all over again
By BRAD GLOSSERMAN
The Japan Times: Monday, Sept. 8, 2008
Why Japan's leaders matter to Americans
By TOM PLATE
Asia Times Online, Sep 10, 2008
Resurrection of the charlatan
By Martin Hutchinson
(コメント) 「デジャビュ」? なぜ首相たちは、自分が辞めることを最後の選択肢として合理化するのか? むしろ、自分で解散して選挙する。お金をかけず、議会の多数を得るため、すぐれた人物や話題を示して、選挙で民意を問う、と言うのが指導者です。自民党内の多くの政治家が支持するのは、麻生太郎です。
Aso has baggage, too. He is prone to gaffes, his family has war-related issues (a family-run mine used forced labor), and his vision for Japan is very conservative and nationalist, reminiscent of Abe's.
外国のジャーナリストでなくても、麻生氏の歴史認識、戦争責任、戦後秩序、ナショナリズム、などを問い質したいところでしょう。しかし、誰であれ、日本の政治は分裂しており、実現すべき政策理念が定まらない、とGLOSSERMANは考えます。TOM PLATEも書きます。
These days, when a Japanese prime minister resigns, the temptation is to say just two things. One is "ho," and the other is "hum."
それでもアメリカにとって日本が無視できないのは、貿易や成長をバランスし、中国の台頭を国際秩序に吸収するためのパートナーになれるから、というより、経済的な破局を起こせるし、中国との紛争を招く危険な勢力を温存するから、というわけです。国際関係の重要な変化は、いずれの場合も、国内政治とつながっています。
Martin Hutchinsonは、日本がケインズ主義を放棄する小泉改革を継続できなかったことを惜しみます。政権を維持するために景気刺激策を繰り返し、財政再建は失敗し、インフレによって中産階級は貧しくなります。
WSJ September 12, 2008
A Blueprint for Reforming Japan
By TAKEO HOSHI and ANIL K. KASHYAP
(コメント) 筆者たちは、弱者救済の名目で改革を後退させるのではなく、日本の改革を前進させる提案をします。レーガンやサッチャーが行った転換を、日本では首相が4人か5人交代し、政権政党も交代して行わねばならないようです。
論説の趣旨は、長期的に、日本が生産性を高めるにはどうするべきか、という視点で示されます。日本の平和や繁栄は、特にエコノミストから見れば、優れた生産性の上昇率や輸出パフォーマンスに基づくものです。日本経済は、高い生産性を示す輸出部門と、低い生産性のまま維持されている国内の保護部門に分かれます。
そこで改革案では、選挙前の補正予算のような、非効率な部門に補助金を与えることはやめます。むしろ、
1.零細企業を補助しない。それは革新的な新興企業の拡大を遅らせている。
2.衰退する農家を保護しない。それは効率的な専業農家の発展を妨げている。
3.納税者のID管理を確立し、大企業のサラリーマンも、商店や個人も、同じように納税させる。今の税制は不公平である。
4.移民政策を改める。高齢化が進む中で、若年労働者は不足する。低賃金部門や専門職だけを外国人労働者に開放するより、日本社会への統合を重視するべきだ。
5.金融政策決定を改善する。デフレからインフレに移れば、金融政策の効果を高め、独立性や透明性、市場との対話を改善するチャンスだ。
なるほど、全くその通りだ、と思います。首相候補たちに熟慮してほしいです。
The Guardian, Sunday September 07 2008
Conor Foley
The Observer, Sunday September 7 2008
Foreign ownership may be fun, but beware the penalties
Will Hutton
(コメント) Timothy Garton Ash が "liberal interventionism" を放棄した、というのです。本当にそうでしょうか? 「リベラルな介入主義は、他国への侵略を命じたり、銃を取ることがお前たちの利益だなどと教えたりしない。それは一連のルールや規範を形成する。多くの国はそれを受け入れて、完全には国際法や国際機構に従う。この星におけるすべての人間に一定の基本的人権を認めるが、それはその人の<文化>や、状況、規則にかかわらない。リベラルな介入主義は一般と特殊の間のバランスを取り、こうした基礎に立って国家間の平和を維持する。」
Conor Foleyは、Ashがリベラルな左派を代表して、ブレアの外交政策を賛美し、そして、イラクの失敗に懲りて、今やリベラルな介入主義(あるいは、帝国主義)を放棄して、ロシアが国境を犯したと非難する古典的な立場(国家主権の不可侵)に舞い戻った、と主張します。
Will Huttonもリベラルな左派の重要な論客ですが、イギリス企業がアラブの石油資本・政府系投資ファンドによって買収されることに反発します。われわれはそれを心配するべきか? アメリカ企業による買収や、ブラッセルからの規制は許しても、アラブやロシアの石油マネーは排除するべきなのか?
そうだ、とWill Huttonは考えます。ウィンブルドン現象ならぬ、プレミア・リーグ効果、に注目します。世界でもっとも有名かつ優秀なフットボール・リーグですが、それゆえ世界の富豪たちのコレクションとして買収されました。Chelsea's Roman Abramovich, Manchester United's Malcolm Glazer, Aston Villa's Randy Lerner and now Manchester City's Sulaiman al-Fahim
新しいオーナーたちは、短期の成果を求め、イギリスの若手選手を育てるより、世界中のプレーヤーを金の力で引き抜きます。美しいプレーよりも、移籍や給与の急速な上昇と、それに絡む詐欺・犯罪が世界中に輸出されます。企業も同じである、と。なんでもオークションにかけて高値を付ける者が買収できるなら、R&D、製品開発、労働者の訓練は、もっと短期の成果のために犠牲になるでしょう。政府系投資ファンドによる買収は、さらに深刻な問題です。
ところが政府はシティの繁栄にしか関心がない。ウィンブルドン現象もシティの繁栄を支えているから大歓迎だ、というわけです。
左派の知的な指導者たちは困難な論争を続けています。それは、彼らに理想があり、世界の変化に応じて、新しい実現の道を模索するからです。
Saskia Scholtes in New York and James Politi in Washington US government takes control of Fannie and Freddie FT September 5 2008
アメリカの住宅市場が悪化し続け、金融不安が解消せず、アメリカの景気悪化も懸念される中で、ポールソン財務長官は二つの政府系住宅金融会社(Fannie Mae and Freddie Mac)を政府管理下に置いた。債務残高は1兆6000億ドルに及び、アメリカ史上最大の救済である。
財務省は、それが二つの会社の資産を引き継ぐから、納税者の負担にはならない、と主張している。また、Fannie Mae and Freddie Macに融資する権限は、7月に議会が認めたばかりである。しかし融資にとどまらず、完全な管理を選択したのは、一旦は市場における資金調達を試みたが、その結果、一層の混乱を生じたからである。
オバマに言わせれば、これはブッシュの失敗であり、共和党政権を終わらせるべきです。マッケインに言わせれば、これは政府の失敗であり、大きな政府(民主党の政策)に反対します。
Fannie Mae and Freddie Macの債券は海外の中央銀行や政府系投資ファンドも大量の保有している。それは財務省証券よりも利回りが良いからだ。
Mohamed El-Erian A delicate balance in the Freddie and Fannie action FT September 7 2008
ハリケーン・グスタフの人的な被害はカトリーナに比べてはるかに軽微にとどまった。しかし、世界の金融市場では今も次々に堤防が決壊している。Freddie Mac and Fannie Maeを政府管理下に置く決定は、世界の金融市場でこれ以上の被害が生じるのを食い止めるため、新しい堤防を築く試みであり、それは同時に、金融危機の回避とモラル・ハザードの抑制という困難なバランスを取る試みでもある。
アメリカ政府が重大な発表を日曜日に行ったのは、これが3度目である。それは先の2回よりも有効であろうか? ふたつの事情でそれは決まる。一つは、この対策に反応して内外の資本が市場に流入するかどうか? もう一つは、この対策にとどまらず、アメリカの諸政策・制度が連動して改善され、しかも国際的な支援が得られるか?
住宅市場は新しい現実を反映した水準を見出し、金融システムは将来のハリケーン発生を予防する仕組みを発見しなければならない。
Krishna Guha in Washington, Chris Giles in London and Saskia Scholtes in New York US takes control of Fannie and Freddie FT September 7 2008
US takes over key mortgage firms BBC 2008/09/07
Robert Peston Fannie, Freddie, Cheshire and Derbyshire BBC 2008/09/07
この発表に際して、ブッシュ大統領は二つの機関を「経済にとって受け入れがたいリスク」と述べました。ポールソン財務長官も、それが金融システムの危機を招きかねない、と認めます。FRBのバーナンキ議長も、その行動を強く支持しました。
EDMUND L. ANDREWS U.S. Unveils Takeover of Two Mortgage Giants NYT September 8, 2008
RON LIEBER The Rescue’s Effect on Consumers NYT September 8, 2008
Fannie and Freddieを政府が吸収した後、その影響はどうなるか? 住宅価格、債務者、債権者、新しい融資、投資家、への影響を検討します。
Bill Emmott Return of the Mac (and Mae) The Guardian, Monday September 08 2008
1990年代、日本の経済危機が長引いたことを、Bill Emmottは、もっと早く国有化すべきであったのに、それを認めなかった、と批判しています。・・・これはちょっと驚きです。
それに比べて、アメリカ政府はFannie and Freddieを国有化しました。明らかに、それが損失をもたらせば、国民が税金で負担しなければなりません。それでも、アメリカの公的債務/GDP比率はイギリスの比率よりも小さく(この論説はイギリスのThe Guardian紙に載った)、日本とは比べ物にならない低い水準です。
国有化によって根本的改革の必要を受け入れ、銀行や企業にも転換を要請・強制できれば、また、安易な融資による住宅の売買を抑制する仕組みを作れば、この措置は危機を回避し、改革を促して将来の危機を防いだ、という大きな成果となるわけです。
Dean Baker Freddie's dead The Guardian, Monday September 08 2008
しかし、本当にこの国有化、もしくは、政府による不良金融機関の買収劇は、公益を実現するものでしょうか? Dean Bakerは批判します。
「これらの住宅金融機関は、自分たちが住宅バブルを見逃し、避けられないバブル崩壊に備えて資産を守るべく融資を抑制しなかったから、破綻に瀕したのである。住宅市場を精査し、バブルを警戒するのは彼らの職務である。もし彼らは5年か6年前、住宅価格が既に異例の水準であったとき、融資を抑えていたら、これほど危険な水準に及ぶ前にバブルを阻止しえたであろう。」
Fannie and Freddieの評価は難しい。彼らは政府の信用を得て、しかも民間企業という利益を得てきました。また、住宅融資に十分な流動性のある市場をもたらしたことは重要な革新です。彼らは民間企業として大きな利益を得てきました。
PAUL KRUGMAN The Power of De NYT September 8, 2008
KRUGMANも、この政府による乗っ取りを、正しいことであり、見事であった、と称賛します。これはしなければならないことなのです。しかし、金融危機に対して安定化をめぐる財務省と連銀の戦いは、ますます敗北に向かいつつあります。
住宅バブルなど存在しない、と言ったグリーンスパンの楽観は消え去って、すでに大恐慌のとき以上に急速な住宅価格の下落を生じている、と批判します。それは、最も顕著な「債務デフレ」のシグナルです。まだ物価は上昇していても、資産価格が急速に下がります。I.フィッシャーが見たように、人々が資産の売却を急ぐから、それは悪循環となり、流動性が失われて不況に陥ります。
2007年7月にサブプライム・ローンによる損失は1000億ドルとバーナンキは予測しましたが、すでに5000億ドルを超えても処理が終わりません。なぜ、1980年代末の日本の失敗を研究していたはずのバーナンキたちが、金融危機をアメリカで再現しつつあるのか?
KRUGMANは、バーナンキの金融緩和は実際には引き締めにしかならず、ブッシュの減税は小さすぎ、間違ったやり方で行われた、と批判します。
CHARLES DUHIGG, STEPHEN LABATON and ANDREW ROSS SORKIN As Crisis Grew, One Option Remained NYT September 8, 2008
ポールソンとそのチームは何か月も検討を重ねました。しかし、その選択肢はますます少なくなっていたのです。彼らは毎日18時間働き続けた結果、オバマが民主党大会を、マッケインが共和党大会を終えた、次の週末に、救済策を発表しました。前後の詳細を伝えています。
ポールソンのモットーは、先送りしない。自分で始末する、でした。外資の引き上げという懸念も胸に、ポールソンはNYSEでの資本調達を打診し、投資家に否定されています。
日曜日の午前11時前、両社が将来の損失に備えて1000億ドルまで融資を受けること、それを条件に、政府の直接支配下にはいる、と合意させます。
The end is nigh for Freddie and Fannie FT September 8 2008
Fannie & Freddie: coping with crunches FT September 8 2008
Fannie & Freddie: the nitty-gritty FT September 8 2008
Fannie & Freddie: effect on banks FT September 8 2008
Fannie & Freddie: effects on US economy FT September 8 2008
Michael Mackenzie in New York and Krishna Guha and Andrew Ward in Washington Markets rally after Fannie and Freddie bail-out FT September 8 2008
John Gapper A US government bail-out of foreign investors FT September 8 2008
これによって最も利益を受けるのは、外国人投資家である、とJohn Gapperは考えます。まるでラテンアメリカのように。The federal government had to give reassurance to foreign investors in agency debt if it wanted to avoid chaos in financial markets and a run on the dollar.と、書いています。
Jonathan Weil Freddie, Fannie Scam Hidden in Broad Daylight Sept. 9 (Bloomberg)
Willem Buiter Better late than never, or two cheers for Hank Paulson FT September 8, 2008
Fat Fannie and Freddie LAT September 9, 2008
Larry Elliott Saving Fannie and Freddie was nationalisation pure and simple The Guardian, Tuesday September 9 2008
イギリスのノーザンロック、アメリカのファニーとフレディー。自由市場の信奉者がもたらした新しい世界です。世界の株式市場は空前の国有化を歓迎し、株価を挙げました。Larry Elliottはポールソン財務長官を “a born-again socialist” と呼びます。これは20世紀の金融市場を最悪のルールに導いた右派の没落である、と。
Steven Rattner A New Fannie and Freddie WP Tuesday, September 9, 2008
Mr. Paulson's Bailout WP Tuesday, September 9, 2008
The Bailout’s Big Lessons NYT September 9, 2008
財政赤字と結びつけます。つまり、この救済によってアメリカ政府は大幅な赤字を埋めなければならないかもしれず、アメリカの財政赤字は均衡化する見込みがない、という予想が投資家たちの悲観を強めている。
ANDREW ROSS SORKIN Paulson’s Itchy Finger, on the Trigger of a Bazooka NYT September 9, 2008
SHERYL GAY STOLBERG Rescue of Mortgage Giants Displays Paulson’s Clout NYT September 9, 2008
Martin Wolf US housing solution is not a good one to follow FT September 9 2008]
アメリカのGDPの40%に匹敵する債務が崩壊するのを無視することなどできない。救済する他に選択肢はなかった。しかし、Martin Wolfは考えます。それは世界の金融市場に、長期的には、どのような影響をもたらすのか? 住宅市場のバブル、家計の債務依存は、アメリカだけに限りません。証券化によって、ますます多くの人が住宅を建てる・所有できる時代になりました。この市場が崩壊するとき(株式市場と違って)、政府は最後の買い手でなければならないのか?
なぜ救済しなければならないのか? WolfはRobert Shillerの答えを受け入れます。すなわち、株式市場であれ、住宅市場であれ、投機的な資産市場で価格を維持するための救済ではない。システムへの信頼を守るためである。だから救済の対象は、もっとも慎ましい庶民の困窮を防ぐことに集中しなければならない。
Fannie Mae's Patron Saint WSJ September 9, 2008
John Gapper Take this weekend off, Hank FT September 10 2008
Julian Delasantellis Paulson placates China, Russia - for now Asia Times Online, Sep 10, 2008
ロシア、中国、その他の外国投資家が、アメリカへの投資を引き揚げ始めるのはいつか?
Amity Shlaes Fannie Mae's Demise Rooted in the Swinging '60s Sept. 10 (Bloomberg)
Mark Gilbert Henry Paulson, Why Scare My Mother? Sept. 11 (Bloomberg)
Caroline Baum Fannie, Freddie Get Bigger Before They Shrink Sept. 11 (Bloomberg)
Decisive inaction FT September 11 2008
Bailout for Billionaires WSJ September 11, 2008
この救済で最も利益を得たのは、ゴールドマンサックス(ポールソン財務長官の前の職場)など、機関投資家、ファンド・マネージャー、億万長者である。
NYT September 7, 2008
Long-Term Capital: It’s a Short-Term Memory
By ROGER LOWENSTEIN
FT September 11 2008
Capitalism and the credit crunch
By Samuel Brittan
(コメント) 金融危機とは何か? LTCMの経験から。市場の価格はいつでも正しいのか? 資産市場は、財の市場と同じように均衡点に向かうのか? 貨幣や金融市場は放置できない。
FT September 7 2008
How a downturn could turn into a disaster
By Wolfgang Münchau
(コメント) 1年以上も金融不安が続いているのに、主要工業諸国のどこも実体経済がマイナスになっていない。これは驚くほど優れた景気維持政策が成功したのだ、とWolfgang Münchauは考えます。しかし、このまま不況は回避できるのか? もし金融市場の損失が限界を超えて金融機関が連鎖的に破たんし始めたら、また、もしアメリカから資金が流出してドル暴落が起きたら、急激に悪化するでしょう。米欧の金融政策には注意を要します。
The Guardian, Monday September 08 2008
Follow the money
Prem Sikka
The Guardian, Thursday September 11 2008
Statistical Powellism
Philippe Legrain
(コメント) 非合法移民を減らすには?Prem Sikkaは “creating geopolitical structures that promote more equitable share of wealth and power” と考えます。もっと発展途上国に教育や医療、雇用をもたらす投資が行えるような条件がなければ、彼らは何としてもイギリスに来るだろう。また、Philippe Legrainは移民自由化論者です。
イギリスが1970年代に採用した政策は、今の日本とそっくりです。一時雇用制度によって4年間の居住を認め、イギリスの生活に適用し、雇用を継続し、技術のある者、もしくは、資産のある者だけを選別して永住権を認める。しかし、Legrainは最近の移民割当やポイント・システムも含めて、政府が予測に合わせて制限することは成功しないだろう、と考えます。
BBC 2008/09/10
'Big Bang' experiment starts well
By Paul Rincon
FT September 10 2008
Collision course
(コメント) スイス・フランス国境に、50億ポンド(80億ドル)をかけて、瞬間的にビッグバン状態を再現する実験施設、the Large Hadron Collider (LHC)が完成した、というニュースに驚きます。ブラック・ホールができて地球が呑み込まれる、という不安について、それが起きないことを十分に検討した、と言います。
こんな時ですから、Fannie & Freddieを呑み込んだアメリカ財務省を連想してしまいます。どちらも小説のような本当の話です。次の時代の、兵器やエネルギー、輸送、情報処理、フロンティアが議論されるでしょう。
FT September 10 2008
Time to reform the global security network
By Nigel Hall
IHT Thursday, September 11, 2008
India nuclear deal puts world at risk
By Jimmy Carter
(コメント) 安全保障を確立する国際的な機関、政府間の合意形成や、兵士、武器、財源の確保を迅速に行うメカニズムが、ますます必要になっています。国連の平和維持活動はイラクにおいてテロ攻撃を受けて後退しました。ダルフールへの介入も実現しません。ソマリア、バルカン、ルワンダの失敗が記憶されています。
しかし、国連の重要性は失われませんでした。NATOもコソボやアフガニスタンで問題を示し、改革は遅れています。コストと効果を考慮して、地域的な安全保障協力の方が国連よりも有効だ、とは言えません。国連が優れているのは、安全保障をその予防や和解まで含めて支援することです。安全保障は、より長期の開発と結びつきます。
Jimmy Carterは、アメリカとインドの核協力合意を批判します。むしろ、インドがNPT(核拡散防止条約)に参加することが重要です。
Adjusting to 9/11 LAT September 11, 2008
Heraldo Muñoz Chile's 9/11 -- and the legacy of Gen. Pinochet LAT September 11, 2008
A world that changed The Guardian, Thursday September 11 2008
Kenneth R. Feinberg 9/11 Fund: Once Was Enough WP Thursday, September 11, 2008
PHILIP BOBBITT and JOHN C. DANFORTH Questions of Security NYT September 11, 2008
(コメント) PHILIP BOBBITTらの論説は、大統領候補であるオバマとマッケインに対して、主に、安全保障に関する公開質問を行っています。1.アフガニスタンが、パキスタンのように、タリバンやアルカイダの聖地になっていけばどうするか? 2.世界各地でエスニック・クレンジングやジェノサイドが起きるだろう。アメリカに助けを求めてきたらどうするか? 3.イラクからの撤退は? 4.イラン核開発を阻止するために軍事力を行使するか? 5.戦争やテロとの戦いにおける捕虜の扱いや裁判は? 6.国連安保理やNATO,その他の地域同盟関係をどう見るか? 7.ドーハ・ラウンド決裂後の通商政策は? 8.ロシアのグルジア侵攻による外交政策の変化は? 9.世界的なパートナーシップを築く手段はあるのか? 10.中東和平と温暖化ガス排出規制に制約されたエネルギー政策の将来は? 11.食料価格上昇と人口増大によるアフリカの惨状は? 12.アメリカが直面する安全保障問題に対する原則上の違いを示せ。
******************************
The Economist August 30th 2008
Bring back the real McCain
John McCain: No surrender
Russia and Georgia: South Ossetia is not Kosovo
America’s nuclear deal with India: Time to decide
Fannie Mae and Freddie Mac
Thailand: No compromise
Afghanistan: Mournful wake
Immigration trends: Poles depart
Economics focus: Capital ideas
Private equity and banks: Loan rangers
(コメント) マッケインについての特集記事です。もしアメリカ大統領選挙が、その個人に対する人気投票であるなら、なるほど、大統領にふさわしい人物としてマッケインが選ばれるかもしれない、と思いました。しかし、ペイリン指名による泥仕合の展開は、どちらに有利なのか分かりません。アメリカ、ロシア、中国、インド、という世界地図上の大国が、領土や核兵器をめぐって秩序を争うのであれば、マッケインが次の大統領でしょう。
他方、金融危機や移民問題、新興諸国の民主化、アフガニスタンの治安回復、金融政策に代わる(と称する?)民間投資家や保険契約とのフロンティア開拓に、積極的な新しい秩序を築くアイデア、指導力、協力姿勢を求めるには、オバマこそ大統領にふさわしい。