IPEの果樹園2008

今週のReview

8/25-8/30

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

グルジアとロシア、 北京オリンピック、 破滅論者ルービニ、 国際政策協調1、 貨幣と疎外、 保護主義に反対する、 銀行家の社会主義、 安全保障

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


FT August 14 2008

UK schools need Swedish lessons

(コメント) イギリスの学校制度も改革を求められています。子供たちは学校で十分に学ばないまま社会に出て、基本的な計算や読み書きもできず、その多くが失業者になります。

FTは、スウェーデンの改革を見習うべきだ、と主張します。イギリスの学校はいわば地域ごとのカルテルであり、競争を妨げられています。他方、スウェーデンでは生徒が自由に学校間を移動でき、彼らのバウチャーに従って学校の財源が変化します。こうして学校は生徒を奪い合い、優れた学校は拡大し、劣った学校は縮小します。

必要な科目(計算や科学)や優れた授業に対しては、学校が教員の報酬を増やすこともできます。それは教員組合や地域の教育委員会と対立を生じるでしょう。それゆえ、拙速な改革は望ましい結果をもたらしません。制度の移行のために政府が支援する必要もあります。

スウェーデンが成功したのは、単に競争させたからではなく、競争の条件や評価の基準について合意を形成し、また、縮小する学校や生徒・教員の移動、報酬の変化についても、不満を吸収できる制度や、そもそも分配の平等性を重視する社会だからではないか。


David Clark Whose imperialism is worse? The Guardian, Friday August 15 2008

Paul J. Saunders Georgia's Recklessness WP Friday, August 15, 2008

サーカシビリ大統領が軍隊に南オセチアの制圧を命じたのは、ロシアの平和維持部隊との衝突を予想したうえで、それでも西側、特にアメリカが関与すれば、ロシア軍の攻撃は抑制されるだろう、と計算したからである。

彼は繰り返しアメリカとの連帯を賛美し、アメリカの民主主義の価値を説くが、ここで重要なことは、価値ではない。サーカシビリにとっては、アメリカが誰に支配されていようと構わないのだ。重要なことは、グルジアとロシアとの関係を変えるために、アメリカ(の軍事力)を利用できる、ということだった。

サーカシビリはロシア軍の侵攻を「プラハの春」にたとえる。しかし、グルジア国内の反政府勢力に対しては自由を認めず、激しい弾圧をおこなっている。

かつてエドアルト・シュワルナゼを失脚させるために、アメリカとロシアは協力し、その結果としてサーカシビリが権力を握った。ロシアは、サーカシビリが自治区を軍事的に制圧するやり方を見て、その見解を変えた。ロシアの近隣地域において、アメリカよりも自分たちの方が死活的利益を守っていると考えるロシアは、軍事力の行使をためらわないだろう。それを招いたサーカシビリの失策は、アメリカの利益を損なっているのだ。

つまり、アメリカ政府は非公式にロシアに伝えることだろう。アメリカはグルジア政府が軍事力で交代させられるのを許せない。しかし、このような無謀な指導者の友人でもないのだ、と。

Olga Ivanova A Free Press? Not This Time. WP Friday, August 15, 2008

ロシアからアメリカの大学に留学してジャーナリズムを学ぶ研究生が、アメリカの主要メディアに対して、情報の偏った扱い方を批判しています。

サーカシビリが南オセチアを攻撃して、民間人に多くの犠牲者を出した。サーカシビリの論説は載せるのに、ロシアからの情報は何も伝えようとしない。責めて第三国として、情報の自由やジャーナリズムの独立性を守れ、と。

Strobe Talbott Russia's Ominous New Doctrine? WP Friday, August 15, 2008

ロシアのラヴロフ外相の発言を取り上げて、ロシアが新冷戦に向かう気なのか、検討するように新大統領に求めています。

タルボットは、ロシアがトビリシ政府による南オセチアでの「ジェノサイド」「エスニック・クレンジング」を指摘し、サーカシビリをミロシェビッチにたとえて、ロシア軍のグルジア侵攻をNATOのコソボ空爆に同一視することを強く否定します。NATO空爆前に外交的な交渉を尽くしたし、コソボはベオグラード政府が制圧していた。他方、南オセチアは自治を認められ、ロシア軍が保護していた。

ミロシェビッチは「大セルビア主義」を唱えて領土の拡大を求めたのであり、もしロシアが同様の行動を取るなら、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンの一部も併合し、各地のロシア系住民は反政府活動を始めるだろう。そのような主張を支持する姿勢に変わったのか?

PAUL KRUGMAN The Great Illusion NYT August 15, 2008

クルーグマンは、グルジアの戦争に、グローバリゼーションの第一期が第一次世界大戦によって終わった歴史がよみがえるのを感じています。

かつて、国際貿易と国際投資によって緊密に統合された世界は、ナショナリズムによって破壊されました。ジョン・メイナード・ケインズが描いたロンドンの銀行家の生活スタイルは非常に有名です。そして、第一次世界大戦後に、指導者たちがそのような世界を回復することには失敗しました。

ノーマン・エンジェルの“The Great Illusion”『大いなる幻想』を取り上げます。エンジェルは第一次大戦前に、世界は緊密に結びついているから、軍事的征服が経済的に利益をもたらす、という幻想は終わったと考えました。クルーグマンは、ヨーロッパとアメリカの間で戦争することはないだろう、と考えます。それほど市場も価値観も共有しているからです。しかし、世界の大部分はそうではないのです。

市場の拡大が戦争を不可能にする、というのも幻想です。

Quentin Peel Man in the News: Mikheil Saakashvili FT August 15 2008

元駐在大使は述べた。「彼は非常に知的で、思慮深いが、複雑な思考の過程で飛躍することがある。彼は不適当な状況で笑う。・・・彼はシステムを民主化しようと望むが、彼自身は非常に独裁的な人物だ。改革を指導してきたが、度を過ぎて行った。」「忍耐を欠いた人物であり、せっかちに行動する。」

Russian expansion FT August 15 2008

A postwar post-mortem BG August 15, 2008

William Horton Beebe-Center Eurasia and the West IHT Friday, August 15, 2008

DAVID B. RIVKIN JR. and LEE A. CASEY The Kremlin's 'Protection' Racket WSJ August 15, 2008

Paul Kennedy Georgia is important. But what it tells us about global politics is far more so The Guardian, Friday August 15 2008

ロシアが南オセチアやアブカジアに対して取った行動は、アナーキー・無政府状態、と呼ぶ国際関係ではよく見られる例である。大国の周辺で小国の内部における民族間の土地支配をめぐる紛争が激化し、国境もあいまいになる。ついに大国が介入し、自分たちが望ましいと考える解決策を押し付ける。小国はこれを受け入れるしかない。

しかし、小さな事件でも、大国間の姿勢に影響を及ぼします。中国は、オリンピックが終われば、ロシアと同じような多くの少数民族問題について、ロシアが国連憲章を支持して、内政問題にすることを好む。他方、EUは、1991年以後のヨーロッパの国際システムが安定性を失ったことを重視する。ロシアの威嚇は東欧にも及ぶのか? 天然ガス供給を外交の材料にするのか?

アメリカは、外交政策の決定に複雑さが増して、明確な方針を決めかねる。これまでブッシュ政権が示した、傲慢で一方的な「テロとの戦争」といった軍事力の行使が、もはやロシア周辺の事態に軍事的対応を取る負担に耐えられない。アメリカ一極の世界は終わった。

他方、プーチンの剛腕ロシアも長続きしない。その基礎はエネルギー輸出とナショナリズムである。エネルギーは予想以上に急速に枯渇し、ナショナリズムは反発を招く。

Charles Grant The bear's Achilles heel The Guardian, Friday August 15 2008

ロシアの拡大であれ、アメリカの拡大に対するロシアの反撃であれ、グルジア戦争でロシアは利益を得たのか? 長期的に見れば、そうでもない。

ロシアの弱点は」経済である。中国のように、多国籍企業や世界市場を利用して成長する方が良かった。アメリカが去り、EUが去り、中国が去る。多極化した世界で、ロシアの将来は衰弱する。

Kaveh L Afrasiabi Iran gambles over Georgia's crisis Asia Times Online, Aug 16, 2008

Chan Akya Utterly pointless Europe Asia Times Online, Aug 16, 2008

あるいは、ヨーロッパよりもはるかにダイナミックなロシアは、人口が減少し、内部分裂したヨーロッパの秩序を再編して、将来も支配的な大国として繁栄するのでしょうか? ウクライナは、ブラッセルよりも、次第にモスクワに向かうだろう。

The New Chill NYT August 16, 2008

MICHAEL BRONNER When the War Ends, Start to Worry NYT August 16, 2008

Tim Judah Might makes right LAT August 17, 2008

国際社会には明確な法律はなく、誰もが受け入れるような解決策は決まらない。

「これらの紛争の根は深く、旧ソ連圏に特別なものではない。武力衝突は特赦や、長期の「紛争凍結」をもたらすかもしれない。しかし、たとえ最高の善意を集めても、彼らが平和的な解決に至ることはないだろう。分割はまた大国間の交渉道具になる。それはもっと大規模な紛争の代理戦争として好都合である。それが南オセチアとアブハジアの運命だった。サダム・フセインが失脚するまで、アメリカがイラクのクルド人を利用したように、ロシアはグルジアを不安定化するためにそれらを利用した。」

もし南オセチアがグルジアから分離独立するなら、彼らは北オセチアと統合して新しい国を作ることを望むだろう。それは、ロシアにとって別の問題を引き起こす。アメリカを助けて大幅な自治を得たイラク北部のクルド人が繁栄するほど、多くの国内クルド人を迫害してきたトルコの脅威になるのと同じである。

国際法は何の答にもならない。なぜなら二つの原理、民族自決権、と、領土の不可分性、とは矛盾するからである。アメリカとNATOは、コソボに住むアルバニア人の自決権を理由に78日間もセルビアを空爆した。他方、南オセチアの独立やロシアの介入には、グルジアの領土の不可分性を主張している。それは、ロシアがコソボの独立に反対した同じ理由である。

大国が望むことを行い、小国は従うしかない。「力が正しいことを決める。"Might makes right. "」「権力政治がそのルールを示すのだ。"realpolitik has its own rules."

David Greenberg The plight of the lame duck LAT August 17, 2008

Neal Ascherson Russia has called our bluff over countries we can't defend The Observer, Sunday August 17 2008

Controlling the new Russia requires new thinking The Observer, Sunday August 17 2008

ロシアは停戦合意に気が進まないが、それはこの戦争をヨーロッパの勢力均衡を変えるものとして考えているからだ。冷戦終結後、ロシアはこれまで近隣諸国への影響力が失われるのを見てきた。そしてロシアとの軍事・政治ブロックを離脱した国が他の軍事同盟に次々入っている。こうした世界パワーの再配置を座視することには我慢ならないのだ。

ロシアの南オセチア侵攻は周辺の小国を不安にする。各地にロシア系住民や少数民族の分離活動が存在するからだ。それは、ズデーテン地方のドイツ系住民の保護を名目に、チェコスロバキアに侵攻したヒトラーを想起させる。しかし、冷戦期と違って、ロシアとヨーロッパとの経済的な関係ははるかに深まっている。ただし、ソ連支配下でも西側の民主主義を支持していたインテリゲンチャは、プーチン支配下で消滅してしまった。

ロシアの脅迫が成功するのを許してはならない。しかし、冷戦期の好戦主義が双方で復活するのも正しくないだろう。小国を、大国の戦略のコマにしてしまう。ヨーロッパが安定性や平和を維持したのは経済統合を深めることによってである。アメリカではなく、EUこそがこの方法でロシアの姿勢を変えるべきだ。

Jim Hoagland A Measured Response To Putin WP Sunday, August 17, 2008

プーチンにとってのサーカシビリのイメージは、ブッシュにとってのサダム・フセインと似ている。プーチンはこの戦争で、メドヴェージェフの大統領就任が彼の権力を維持する芝居であったことも示した。

プーチンの間違った行動を止めるには、アメリカとEUが協力して、ロシアの封じ込めを宣言しなければならない。NATOからG7に拡大して、ロシアへの非難声明を出すべきだ。

Michael Dobbs 'We Are All Georgians'? Not So Fast. WP Sunday, August 17, 2008

MAUREEN DOWD Russia Is Not Jamaica NYT August 17, 2008

アメリカがロシアをジャマイカのように扱った期間は終わった。ロシアはアメリカよりも多くの核兵器を持っている、ということを思い出した。

Charles Clover in Tbilisi and Catherine Belton in Tskhinvali West in united front over Georgia FT August 17 2008

Clive Crook Washington remains hobbled by Iraq FT August 17 2008

Michael Bronner When the war ends, start to worry IHT Sunday, August 17, 2008

David R. Francis Oil-pipeline routes, market leverage make struggle a 'battle for energy.' CSM August 18, 2008

RONALD D. ASMUS NATO's Hour WSJ August 18, 2008

モスクワは軍事力による越境介入をしない、という前提が崩れた。ロシアがこれ以上その不安定性をヨーロッパに向けて輸出しないように、西側は行動しなければならない。

NATO加盟国には軍事インフラを整備するために援助し、ロシアからの攻撃に即応できることを保証する。一方的に取り上げてこなかったロシアからの軍事攻撃に対する作戦をNATOで検討する。ウクライナには特に厳格な約束を与え、国内政治対立と切り離す。

Gregory Rodriguez A middle road in Azerbaijan LAT August 18, 2008

Max Hastings The Russians yearn for respect in the same way as a street kid with a knife The Guardian, Monday August 18 2008

THOMAS DARNSTÄDT, UWE KLUSSMANN, CHRISTIAN NEEF, MATTHIAS SCHEPP, GABOR STEINGART Vladimir Putin Takes on a Powerless West SPIEGEL ONLINE 08/18/2008

Nicolas Sarkozy Europe Gets Started On Quelling a Crisis WP Monday, August 18, 2008

EUが、ハイパー・アクティブとしばしば描かれるフランス大統領と外相によって代表されていたことは、危機に際して幸運であったかもしれません。彼らはただちにモスクワに飛んで、プーチン、メドヴェージェフと会談し、トビリシに飛んで、サーカシビリとも会談しました。そして彼らは停戦協定に合意したのです。

軍隊の撤退を超えて、コンボ地域を安定化させるための交渉は、国連安保理が引き継ぐべきだろう、とサルコジは書いています。国際社会は難民や被災者に救援を行わねばならない。モスクワは、これが一回限りのやりすぎた報復であるのか、それとも近隣諸国と国際社会に対する強硬路線を示したものか、試されている。それはEUとの関係にも影響する、と知るべきだ。

サルコジは、EUが行動したことを強調し、ロシアの対抗勢力として地域の安全を確保できる、と主張する。また、同時に、こうした国際的な危機に対応するには、リスボン条約を成立させ、EUの制度を改革しなければならない、と。

Fred Hiatt Who Made Russia Attack? WP Monday, August 18, 2008

これはアメリカの失敗である。特に、NATOを旧ソ連圏に拡大したのは致命的な間違いであった。モスクワはこの拡大を強く嫌っていたし、ワシントンはロシアが復活すれば回復を目指すことも知っていたはずだ。それは新加盟国にとって移行期の混乱を回避し、ロシアからの覇権を排除する狙いがあった。

アメリカは、それをロシア自身が利益であるとみなすように、将来はロシアをも含むことを期待していた。繁栄する民主的な諸国に囲まれて暮らす方が、軍事的な覇権を主張するよりも良いことは、現代のドイツが示している。しかし、プーチンはそう考えなかった。2000年に、彼が権力を握ったときから、ロシアはその周辺諸国が不安定であるほど、自国の安全を確信する国である、とStrobe Talbottを引用している。

プーチンの支配するロシアがより権威主義的で、攻撃的であれば、国際的な攻撃と西側との対立は激化する。

Dmitry Rogozin Washington's hypocrisy IHT Monday, August 18, 2008

ロシアのNATO代表による論説です。グルジアの軍事攻撃から住民を守るため、ロシアの侵攻はきわめて合理的に計画されていた、と主張します。そして、セルビアを攻撃したNATO軍に向けたクリントン大統領の言葉、また、現在のブッシュ大統領の言葉を引用し、アメリカの偽善を非難しています。

Nikolai Sokov Georgia through Russian eyes Asia Times Online, Aug 19, 2008

George Monbiot The US missile defence system is the magic pudding that will never run out The Guardian, Tuesday August 19 2008

Richard Cohen Is Ossetia Essential? WP Tuesday, August 19, 2008

Anne Applebaum Russia's Flashback To 1968 WP Tuesday, August 19, 2008

40年前のプラハの春にたとえることは表面的である、と批判します。少数民族の共存は長期的な目標として失われていないし、当時よりもはるかに強力で、EUを介して統一した姿勢を示すなら、ロシアはヨーロッパに包摂できるから。

H.D.S. Greenway America's role in the Russo-Georgian war BG August 19, 2008

Russian lesson for the 21st century The Japan Times: Tuesday, Aug. 19, 2008

MATTHEW KAMINSKI Russia Is Still a Hungry Empire WSJ August 19, 2008

Fred Hiatt Andrew Meier Andrew Meier Let Russia join NATO LAT August 20, 2008

反ロシア感情が高まって、アメリカとロシアとの新冷戦は避けられないように見えます。しかし、ロシアが最終的にヨーロッパや国際秩序の脅威でなくなるには、そしてロシア自身の安全保障を確信させるには、ロシアをNATOに加盟させる必要があるでしょう。

それは新しい考えではありません。例えば、1991年、エリツィンはNATO加盟を求めて書簡を送っています。

以前のように、アメリカはロシアの戦車を恐れるべきではないのです。なぜなら、ロシアはすでにここにいるから。10年前なら、ロシア政府の債務不履行が国際金融市場を脅かしました。今では石油の輸出で富を得たロシアの富豪たちがウォール街の企業を買収しています。

モスクワはグルジアを征服するだけではなく、ますます世界に影響力を拡大するでしょう。だから封じ込めるなど時代遅れなのです。

Muhammad Cohen Georgia on China's mind The Guardian, Wednesday August 20 2008

グルジアとロシアの戦争、欧米の対応によって、中国政府は台湾やチベットとの関係を再検討したでしょう。もちろん、ロシアの戦略を否定したかもしれませんが、アメリカがロシアを叩くには、さらに中国と協力して北朝鮮を抑える必要があります。

台湾の大統領は、サーカシビリの失敗から学ぶでしょう。そして、もしロシアがわずかなコストでグルジアの政治体制を転換できるなら、中国も台湾に侵攻する場合の好材料を得るでしょう。

John Palmer Unity, not division, should be the model The Guardian, Wednesday August 20 2008

Simon Jenkins In Europe, as in Asia, Nato leaves a trail of catastrophe The Guardian, Wednesday August 20 2008

Michael Gerson Inspiration And Danger In Georgia WP Wednesday, August 20, 2008

THOMAS L. FRIEDMAN What Did We Expect? NYT August 20, 2008

MIKHAIL GORBACHEV Russia Never Wanted a War NYT August 20, 2008

ロシアはこのような危機を望んでいなかった。逆に、サーカシビリが、国内政治の視点から、南オセチアへの軍事攻撃を望んでいた。今、アメリカはロシアを非難するのではなく、軍事力を使用しない、という約束を取るべきだ。

Kishore Mahbubani The west is strategically wrong on Georgia FT August 20 2008

Lee Kuan Yewの文章を読んだときに感じた合理的なリアリストの論理と同じものを、この鋭い論説にも感じます。グルジア戦争でロシアを非難する西側の主張は間違っている、というのです。なぜなら、西側には戦略が無い、と。

この小さな戦争で、単に冷戦の時代が戻ったのでなく、歴史が逆転したのである。ソ連崩壊で西側が信じたような、歴史の終焉、は無かった、とロシアは実証した。世界は西側文明に向けて収斂してなどいない。これまでの歴史と同じように、世界は大国とその周辺地域に分けられる。いずれの大国も、周辺地域の政治体制とその安定化に強い関心を持っており、他の大国に干渉されることを拒むだろう。

ブッシュやライスが期待するように、グルジアに侵攻したロシア軍を非難する世界的な連帯が起きるだろうか? 逆に、中国も、インドも、イランも、アメリカやヨーロッパがロシアの隣国に介入することを嫌うだろう。同じような事態は自国の周辺地域でも起きるからだ。ヨーロッパはロシアとの対立を避けたいし、イスラム世界の拡大を重視する。他方、アメリカは大西洋を隔てているから、むしろ中国の台頭を心配し、ロシアとも対立する。

アメリカやヨーロッパは、ソ連崩壊という好機を生かすのに必要な、戦略的思考、を欠いていた。安全保障に関しては、文化よりも地理が重要だ。In security, geography trumps culture.どの大国と戦い、そのためには、どの大国と同盟するのか? アメリカやヨーロッパはそれを見失っている。9・11以後、西側は二つの主要な挑戦を受けている。それは、ロシアではなく、イスラム原理主義と中国の台頭だ。どちらを主要な敵とするにしても、ロシアは長期的な同盟の相手であり、市場に取り込んで、その改革を支援することが重要である。

Victor Mallet Mutually assured destruction in cyberspace FT August 20 2008

ADAM MICHNIK From Prague Spring to the Velvet Revolution The Japan Times: Wednesday, Aug. 20, 2008

Hossein Askari Hostage Europe blind to Iran energy Asia Times Online, Aug 21, 2008

ヨーロッパのエネルギー供給をロシアが独占することで、グルジア戦争は重要な意味を持つ。ロシアが脅迫や軍事力行使の手段として利用するはずがない、というヨーロッパのボーイスカウト的な発想が粉砕された。ヨーロッパに他の選択肢がなければ、ロシアの捕囚となってしまう。この状況を抜け出すカギは、イランだ。

ロシアは、ウクライナへの石油供給を遮断したとき、それがヨーロッパへの脅威となることで非難されたことから学んだ。ヨーロッパへの供給は、その輸送経路も含めて、全面的に独占しなければならない、と。だから、グルジア経由のパイプライン建設には強く反対した。

なぜヨーロッパは他の選択肢を求めないのか? それはイラク戦争とイランへの経済制裁というアメリカの外交政策に従っているからだ。しかし制裁はイラン政府の方針転換に効果がない。イランは、むしろ、外国投資による開発を求めている。ところが制裁は、イランをますますロシアや中国、インドに向かわせるだけだった。ヨーロッパはアメリカ外交に従属するだけではロシアの囚人となってしまう。

他方、アメリカも学ぶべきだ。ロシアは多くの核兵器を持っているが、イランは持っていない。制裁で、イランが核の平和利用をあきらめはしないだろう。しかし、イランと包括的な核兵器の禁止を合意することは可能である。

Rosa Brooks The Cold War, reheated LAT August 21, 2008

あの懐かしい「冷戦の時代」が戻ってきたぞ・・・!

The Cold War was, as Defense Secretary Robert M. Gates mused in 2007, "a less complex time" for which he was "almost nostalgic." Historian Niall Ferguson shared the sentiment: "I miss the Cold War," he wrote in 2006 in the London Daily Telegraph. "Soviet wickedness made politics so much simpler."

「悪の帝国」が再来して、世界中の外交官や戦略家たちは安堵したでしょうか? 演説や外交方針の説明が容易になった? 「テロとの戦い」よりもずっと良い!

アメリカがポーランドにミサイル防衛網を建設し、アメリカの軍事顧問を送り込み、ロシアの核攻撃に対抗するミサイルを配備します。ロシアの将軍は、核による報復、を明言しました。さあ、われわれも核シェルターの準備を!

Chrystia Freeland The oligarchs could be Russia’s best bet FT August 21 2008

Openness, but not for long BG August 21, 2008

GREGORY CLARK World gives Russia an unfair rap The Japan Times: Thursday, Aug. 21, 2008

Neal Ascherson Moscow called West's bluff The Japan Times: Thursday, Aug. 21, 2008

GABRIEL SCHOENFELD Russia's Nuclear Threat Is More Than Words WSJ August 21, 2008

Helena Cobban The outlook on a triple-superpower world CSM August 22, 2008

最後に、Helena Cobbanは、アメリカ一極の世界から、中国とロシアも加わった三極世界を考えます。各国の指導者たちは同じテーブルに着いて、その国の強さ、弱さ、願望を並べ、交渉しなければなりません。


The Guardian, Friday August 15 2008

Beijing's new Forbidden City

Catherine Sampson

LAT August 16, 2008

In China, a pretty face wins

Meghan Daum

NYT August 17, 2008

Malcontents Need Not Apply

By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT August 19, 2008

Would-Be Protesters Detained in China

By ANDREW JACOBS

NYT August 21, 2008

China Rise Goes Beyond Gold Medals

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) かつての王朝が紫禁城へ入ることを禁じたように、共産党政府は北京市民をオリンピックの開催場所から排除しました。オリンピック・グリーンに集まる人は限られ、北京への外国人観光客は予想外に少なく、会場の周辺は警備偏執狂となっています。ボールペンの先が「鋭すぎる」と没収されたり、毒が投げ込まれると心配して井戸を終日見はったり・・・。

また、抗議活動はテロと同様に厳しく取り締まり、四川大地震で学校倒壊の犠牲になった子供の両親は北京に来ることを禁じられました。オリンピックの組織委員会は三か所を指定して自由な演説を認めているはずですが、誰もいません。申請は却下され、抑えられています。

わずかな入場券を得た幸運な市民を除けば、中国でも多くの人がテレビの映像でオリンピックを知ります。入場券をめぐって暴動まで起こったというのに、映像には多くの空席が目立ちます。団体や企業、政府関係者の正体に配られたチケットでしょう。そして、中国チームを励ますために確保された席です。

CCTVで見るオリンピックは編集されています。女子重量挙げの放送でした。外国の選手たちが失敗するシーンは繰り返し放映され、最後に、誰もできなかったことを中国人選手が成功します。中国政府にとって、市民たちが自宅でテレビを見るのは、警備のために好都合であり、また、中国の成功を印象付けるシーンを見せるためにも、非常に好都合です。

NICHOLAS D. KRISTOF は、“protest zones”の様子を伝えています。政府の指示に従って、ここで抗議をしたい、とBeijing Public Security Bureauに申請しました。しかし、申請者の半数以上は治安を理由に逮捕されるのです。

申請窓口の担当者は、彼が外国のジャーナリストであると知って、「抗議の取材ですか?」と尋ねます。「自分が申請者だ」と答えると彼の眉間にしわが寄り、「何を抗議するのか?」と尋ねました。「北京の歴史的な建造物の保護を訴えたい」とKRISTOF答えると、「政府の仕事に不満があるのか?」と厳しく問われ、「改善の余地があると思います」と、KRISTOF丁寧に主張したそうです。

上司が二人呼ばれ、電話でもやり取りし、その間も、NYTのビデオ取材担当者は録画し続けましたが、当局にもビデオを取られ続けました。結局、ここでは彼らがビデオを取っても良いが、NYTはビデオを取るのを禁じられている、と説明しました。

・・・それ以後は、NYTをインターネットで読んでみてください。これでも前進である、とKRISTOFは書きます。

Yet even though the process is a charade, it still represents progress in China, in that the law implicitly acknowledges the legitimacy of protest. Moreover, a trickle of Chinese have applied to hold protests, even though they know that they are more likely to end up in jail than in a “protest zone.” Fear of the government is ebbing.

1980年代の半ば、台湾で中産階級が育ち、政治的な自由を求めたころに似ている、と。中国政府のソフトウェアは、遅れているけれど、そのハードウェアに追い付くだろう。

WP Wednesday, August 20, 2008

The Real China Threat

By Robert J. Samuelson

Asia Times Online, Aug 21, 2008

New strategies for 'democratizing' China

By James Gomez

The Guardian, Thursday August 21 2008

A new Tang dynasty?

Vishakha N Desai

(コメント) メダルの数よりもアメリカ人が心配しているのは、中国経済がアメリカを超えるかどうか、である。しかし、心配することではない。それは、将来、確実に起きるだろう。

現時点では、中国経済はアメリカ経済の規模14兆ドルの4分の1である。しかし、Goldman Sachsの予想では、高い成長率を前提に、2020年代で追い付くだろう。それでも、アメリカの方がはるかに豊かである。2050年でも、平均所得は2倍である。

問題は、中国経済の拡大が世界経済を不安定化することである。そしてBergstenによって、アメリカと中国の政治経済システムや目標の違いをRobert J. Samuelsonは強調します。アメリカの覇権は自由な貿易や資本移動、技術移転を促し、同盟諸国を繁栄させたが、中国は自国内の雇用吸収や政治体制の維持を目的としている。世界市場はその手段でしかない、と。

その意味で、Global Support for Democratization in China and Asia (GSDCA)の第3回国際会議が東京で開かれた、というのは興味深いです。中国の民主化は、アジア全体にとって重要な課題です。もっとアジアでも、国際的な支援が組織されることをJames Gomez求めています。


LAT August 15, 2008

Is this any way to rebuild Iraq?

By Linda J. Bilmes and Joseph E. Stiglitz

(コメント) 石油価格の上昇でアラブ諸国でも景気がよく、雇用が増えています。しかし、イラクの再建は進まず、国民の4分の1は失業し、バクダッドの電力不足も続いています。その一方で、アメリカ国民は、イラク再建にも莫大な財源(この2年間で480億ドル)を失い続けています。

論説は、イラク政府の石油輸出の財源を委ねて、復興に自分たちで取り組む仕組みを作るべきだ、と訴えます。石油の富が公平に分配され、生産的な投資に向かうような仕組みです。


FT August 15 2008

A delicate balance: Two paths for a global economy on the brink

By Chris Giles

NYT August 17, 2008

Dr. Doom

BY STEPHEN MIHM

(コメント) 国際金融市場の危機は終わったのでしょうか? 決してそうではない、という論説が並びます。Chris Gilesの論説は悲観と楽観とを総括しています。悲観論を代表するNouriel Roubiniは、その悪化を様々な過程と結びつけます。金融市場の逼迫、住宅バブルの破裂、株価下落、石油価格・商品価格の高騰、アメリカへの輸出減少、ユーロ高、インフレ率の上昇に対する金融政策の警戒感、新興諸国の景気も輸出減やインフレ高進で悪化する恐れがあります。

しかし、石油など、国際商品市場の高騰は逆転したようです。新興諸国の景気は持続できる、というデカップリング論も復活しました。開発地域でも相違があり、次の投資に向けて整理の進む地域もあります。

STEPHEN MIHMの記事は、Nouriel Roubiniという研究者の人物や考え方を詳しく紹介しています。Roubiniはイラン系のユダヤ人として、トルコのイスタンブールに生まれました。彼が2歳のときに家族はテヘランへ移住し、その後も、テルアビブ、イタリアに住みます。彼はハーヴァード大学へ進み、国際経済学を学びました。4カ国語を話し、自ら世界的な遊牧民とみなします。

2006年にIMFで行ったRoubiniの予言は、悲観主義の狂人、とみなされました。しかし、今ではまじめに受け取られています。元財務長官のサマーズも、Roubiniと話し合って悲観論を取り入れるようになった、と述べます。彼が学んだ1990年代、世界中で金融危機が続発しました。彼はそれらを研究し、共通の特徴を見出します。そして、それらが示す次の危機は、アメリカで起きる、という結論でした。

アメリカ経済の特徴は、あたかも世界最大の新興経済なのです。その経常収支を支える資本流入は、外国投資家がアメリカ政府や消費者への融資を嫌えば、金融市場に危機を引き起こし、ドルも暴落します。それは将来、確実に起きるでしょう。そして、アメリカの帝国も終わるのです。

The Japan Times: Monday, Aug. 18, 2008

Heading for global recession

By NOURIEL ROUBINI

WP Monday, August 18, 2008

Five Ways to Wreck a Recovery

By Amity Shlaes

FT August 18 2008

The Fed can learn from history’s blunders

By Barry Eichengreen

(コメント) Roubiniの論説は、アメリカが不況になればBRICsも不況になる、と主張しています。そして、世界不況への条件がそろったことを示します。

Amity Shlaesは、多くの者が世界恐慌が再来すると心配しているが、それは今では起こり得ない大きな5つの失策によって起きた、と考えます。すなわち、1.保護主義。2.投資家への攻撃。3.増税による財政均衡化。4.大きな政府。5.政策の不整合性。・・・そして、これらの特徴は民主党やオバマの公約に見られる、と批判します。

Barry Eichengreenは、1930年代からの教訓として、金融危機が不況に向かうのを回避するには過度の金融引締政策を取らないことだ、と指摘します。しかし、今はインフレが生じており、むしろ1970年代のスタグフレーションに近い。その場合、正しい教訓は、金融緩和でインフレ期待を形成してはならない、ということです。

ところが、どちらの教訓も市場は意識しており、中央銀行の行動を予測します。だから、経済では同じことが二度と起きないのです。

1930年代、アメリカ連銀は「最後の貸し手」として責任を果たしませんでした。銀行が倒産し、物価が下落します。さらに、金本位制を介して外国の通貨はアメリカのデフレを輸入してしまいます。外国はデフレにもかかわらず金融を引き締めました。それはデフレを強め、アメリカにデフレを再輸出します。むしろ金本位制を離脱し、切り下げるべきだった、とEichengreenは主張します。

今、この歴史は繰り返しません。連銀は最後の貸し手を引き受けます。失敗としては、金融緩和が急速に行われたことです。もしもっと慎重に緩和しておけば、投資は選別され、インフレも起きなかったでしょう。

外国、特にアジア諸国は、ドルに為替レートを安定化しており、デフレではなくインフレを輸入しています。その結果、実質金利は低下し、インフレがさらに加速して、アメリカに再輸出されています。1930年代には国際商品価格が下落しました。今は逆に、世界の一次産品生産者が利益を得ています。

新興諸国、アジア諸国は、金融を引き締め、為替レートを切り上げてインフレを抑えることです。しかし、アメリカ連銀の政策は難しい、とEichengreenは認めます。金融政策を引き締めると不況に向かうし、引き締めないとドル暴落の恐れがあるからです。1930年代は金融緩和しながら、為替レートを日々決定しました。

WSJ August 18, 2008

We'll All Pay For the Fed's Loose Money Follies

By BENN STEIL

FT August 19 2008

Emerging markets must shift their focus inwards

By Raghuram Rajan

FT August 20 2008

No more need for Freddie and Fannie

Aug. 20 (Bloomberg)

America's Obsession With Housing Hobbles Growth

Amity Shlaes

NYT August 21, 2008

Prescriptions for Fannie and Freddie

By VIKAS BAJAJ

FT August 21 2008

A global approach is needed to beat inflation

By Adam Posen and Arvind Subramanian

(コメント) 住宅バブルに頼って景気を回復することはできません。

Raghuram Rajanは、新興市場の成長が持続して世界経済の減速を防ぐために、為替レートを増価させて、輸出よりも国内需要向け生産に資源をシフトさせるべきだ、と主張します。為替レートの増価は地域で協調することが望ましいでしょう。新興市場も労働市場は弾力化し、製品市場の規制を緩和して競争を促し、住宅や不動産の投資に向けて金融部門が発達し、政府は公共投資を増やしながら効率性と財政規律を守らねばなりません。

グローバリゼーションによってインフレを抑制していた先進工業諸国も、経常赤字を削減しなければならないアメリカも、それぞれの調整問題に取り組む必要があります。それらは、個別に努力しながらも、協力することが望ましいでしょう。

Adam Posen and Arvind Subramanianによれば、インフレの高進に、世界が金融引き締めを協調しなければならない。それは、自国が金融緩和を続けても、外国が金融を引き締めしてくれる、という「ただ乗り」の「チキン・ゲーム」が広まっているからです。このような個別の行動を許すのは、世界経済を自滅させる危険なゲームです。

協調が望ましい理由とは、1.各国の需要抑制は、インフレを抑える効果を他国にも波及させる。2.世界協定のように、集団的に約束する方が、その参加国に実行を促せる。3.それが信用されれば、市場の期待にも大きく影響する。4.協定があれば、摩擦や調整のコストを回避する財政支出が増えて、インフレを刺激するのを回避できる。5.国際協定によって、米中が争わず、むしろ協力して通貨政策を調整できるし、それはアジア諸国の競争力に対する心配を取り除く。

マクロ政策の国際協調に対する評価は分かれています。しかし、現時点で、金融引き締めのために協調したい、という各国中央銀行の関心は強く、実質的で、公平なものです。つまり、成功の条件があるわけです。


Tariq Ali Pakistan after Musharraf LAT August 16, 2008

Anatol Lieven Musharraf’s exit will not end Pakistan’s woe FT August 17 2008

Ahmed Rashid Beyond Musharraf WP Tuesday, August 19, 2008

Pakistan Without Musharraf NYT August 19, 2008

Goodbye to Pakistan's Musharraf LAT August 20, 2008

Kamal Siddiqi Fear and opportunity in Pakistan BG August 21, 2008

(コメント) パキスタンは、核兵器を保有した、イスラム原理主義の広がる、国内政治対立が繰り返している、軍事独裁国家です。ムシャラフ大統領は辞任の決意を示しました。これは、アメリカにとって、また「テロとの戦い」にとって、何を意味するのか?


WP Saturday, August 16, 2008

Latin America Needs Better Than a Wall

By Óscar Arias Sánchez

(コメント) ラテンアメリカ諸国はアメリカとの合意を歓迎しました。南北アメリカは麻薬や人身売買を取り締まるために協力し、アメリカは安全保障の定義を拡大しなければならない、とコスタリカのÓscar Arias Sánchez大統領は主張します。ラテンアメリカの多くの国で、市民たちがアメリカに来て働いています。彼らの安全も確保しなければなりません。「安全である」とは、何か?

no country can be safe while poverty, illiteracy, violence, preventable diseases and environmental destruction wreak havoc on others.


NEWSWEEK Aug 9, 2008

What Bush Got Right

Fareed Zakaria

CSM August 18, 2008

The critical pick: secretary of State

By John Hughes

Foreign Affairs, September/October 2008

The Next President Mastering a Daunting Agenda

By Richard Holbrooke

(コメント) Fareed Zakariaはブッシュ政権のやったことを振り返ります。そして根本的な方針転換を見ます。

アメリカの新しい大統領と、彼が指名する新しい国務長官は何を考え、世界に対して何をしなければならないのか?

John Hughes は、国務長官としての資格をすべて満たすのはGeorge Shultzである、と主張します。すなわち、忠誠、高潔、堅実で穏健、である。他にも、マッケインとオバマが選ぶ候補を挙げて論評します。次のように、シュルツのやり方を述べています。

When considering some major new foreign-policy move, he would gather four or five of his top advisers and ask all of them their views. The congressional aide would forecast likely congressional reaction. I would predict probable media response. Then he would look at us and say: "Now what is the RIGHT thing to do?"

オバマが検討する一人であるRichard Holbrookeは、論説で主張します。「新大統領は、内外の挑戦に対して想像力を駆使し、アメリカの外交政策を再構成しなければならない。」

同盟関係、経済再建、財政健全化、エネルギー政策、気候変動、核兵器の拡散、テロに対する安全保障、・・・ 飛ばし読みしかできませんでした。


WP Sunday, August 17, 2008

The Export of Jobs

NYT August 17, 2008

How Fuel Subsidies Drag Down a Nation

By ROBERT H. FRANK

(コメント) 海外に雇用を移転した企業には免税措置をやめるべきだ、とオバマは主張します。これをWPが批判しました。雇用の流出はそんなに単純ではない、と。工場や雇用が海外に移転されても、全体として国内の雇用を増やしているかもしれないから。

ROBERT H. FRANKは、燃料の補助金を批判します。価格高騰に対する補助金は、燃料を無駄使いし、補助金を得ていない人々を一層苦しめます。


FT August 18 2008

The key to happiness is freedom not income

By Roberto Foa

The Japan Times: Tuesday, Aug. 19, 2008

The hidden costs of thinking about money

By PETER SINGER

(コメント) 経済学は貨幣で示すかもしれませんが、答えになりません。「幸福とは何か?」 所得は増えたが家族が崩壊し、寿命は伸びたが犯罪も増えた。何が幸せか分からない。

90カ国で35万人に調査した結果、今の人々は幸せだと感じている、ということです。その理由は、人々がより自由になったからだ、と考えます。政府は民主的で、女性やマイノリティーの権利が守られ、財、資本、愛で、人々が国境を越える。平等で、可能性に満ちたライフスタイルが受け入れられているのです。

人々はしばしば、貨幣を「邪悪さの源」とみなします。マルクスが若いころに書いた経哲草稿は、貨幣を分離の手先であり、人間を他の何ものかに変えてしまう。疎外する、と批判しました。もちろんPETER SINGER、貨幣のない、物々交換や、自給自足に戻れ、というのではありません。しかし、貨幣経済に暮らすわれわれは、その役割を当然のこととして受け入れ、中立的なものと考えています。

子どもたちのために遊び場を作る。成績のよくない子に成績アップの報酬を約束する。それは金で片付くことであり、専門知識やコストを考えれば、人を雇う方が良いでしょう。しかし、それは答えになりません。人生のすべての側面を資金的なコストによって判断するのは間違いです。


The Japan Times: Monday, Aug. 18, 2008

Free trade system is in danger of extinction

By BJORN LOMBORG

FT August 19 2008

The selfish hegemon must offer a New Deal on trade

By Jagdish Bhagwati

(コメント) BJORN LOMBORGは、より自由な貿易はすべての人にとってコストを下げ、すべての問題に対する答えを容易にする、と主張します。たとえば、環境保護のもっともすぐれた答えは貿易を自由化することだ、とthe Copenhagen Consensusは主張しました。

Jagdish Bhagwatiは、1980年代に、アメリカでは日本がどれほどスーパーマンと殺人狂を合わせた怪物として憎まれていたか、を思い出します。アメリカは「巨人委縮症候群」を患っていたのです。アメリカは日本脅威論を克服しましたが、再び貿易を非難し始めました。そして、「利他的」な覇権国から「利己的」な覇権国に変わりました。

しかし、アメリカが推進した小国とのFTAは、「相手の利益だ」と言って、労働や環境など、様々な条件を押しつけました。それは、本当は、アメリカの労働組合など、政治的なロビー活動が原因です。そして労働組合は、そのような条件を付けなければ、貧しい国の労働者と競争して自分たちも貧しくなり、あるいは、雇用が失われる、と信じています。これは「輸出保護主義」です。

オバマが求めるように、変化はすでに起きています。アメリカ市場には世界中からの輸入品が氾濫しています。しかも競争は激化し、比較優位はすぐに失われてしまうのです。労働節約的な技術革新は急速で、組み立てラインを満たす未熟練労働者たちはいつでも雇用を失うかもしれません。こうした雇用不安に対して、政府は制度を改革しなければなりません。教育や失業保険、転職のための制度が変わるでしょう。

しかし、オバマはそれをまだ示せず、古い保護主義に近付いています。


FT August 19 2008

Foreign fields: Rich states look beyond their borders for fertile soil

By Javier Blas and Andrew England

Forbes, 19 August 2008

Shooting Ourselves in the Food

Ernesto Zedillo

(コメント) 食糧不足に対する解決策は? 農産物輸出を阻止するのではなく、世界中の農業に投資せよ!


The Guardian, Wednesday August 20 2008

Belgium's dilemma is real

Erik Jones

NYT August 21, 2008

Big Dreams for North Korean Industrial Park

By MARTIN FACKLER

(コメント) ベルギーも北朝鮮も、消滅の危機にある国家です。ベルギーは王制が、北朝鮮は工業開発区が、それを食い止める・・・か?


Asia Times Online, Aug 22, 2008

Asian economies meet gravity

By Chan Akya

(コメント) アジア経済が下降局面に向かっていることをChan Akyaは考察します。


The Guardian, Thursday August 21 2008

The digital war on poverty

Jeffrey Sachs

(コメント) Jeffrey Sachsは、世界の貧困解消が自由貿易だけでなく、例えば、標準化された通信技術と携帯電話の普及により急速に情報格差が解消されて、新しい自由な情報交換が実現するだろう、と考えます。情報や教育の普及が貧しい者に経済的・政治的な力を与えるのです。

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The Economist August 9th 2008

The credit crunch: The year of living dangerously

The credit crunch one year on: Mission creep at the Fed

Business in Japan: Take a leaf out of his book

Russia intellectuals: The hand that feeds them

China: Swifter, higher, weaker

Business in China: High seas, high prices

(コメント) 昨年の89日、ECBがアメリカのサブプライム・ローンに関連した欧州市場の危機に介入する意志を示して始まった金融危機は、その後も解消することはなく、多くの緊急融資や介入を繰り返しながら今に至っています。「銀行家のための社会主義」と批判されるような、逆立ちしたケインズ主義が復活したのはなぜか? 今後、中央銀行の介入とインフレ抑制のための金融政策はどうなるのか?

日本経済を救うのは現実の経営者ではなく、漫画の主人公、島耕作です。他方、ロシアを救うのはインテリゲンチャを撲滅したプーチン体制でしょうか? ふたつの異なった「収容所群島」だ、とThe Economistは揶揄しています。

オリンピック景気で沸くはずだった中国経済が、石油価格高騰やインフレ、人民元高、輸送費他賃金の上昇によって減速し始めています。北京の共産党政治局員たちは、金メダルの数より、輸出や雇用を心配しているのです。中国に向けて流入してきた世界の製造業が、輸送費の高騰によって逆流するかもしれません。昨年10月から続く株価下落により、中産階級の政治的な支持基盤が揺らぎます。リスクの高い投資に資金を集めてアメリカに逃げようとした業者に対して、憤慨した市民たちは政府に抗議した、と紹介されています。


The Economist August 9th 2008

Latin America: The bishop of democracy

Paraguay: The next leftist on the block

Bavaria: Old soldiers march into the unknown

Geopolitics (1): A bowl of thin alphabet soup

Geopolitics (2): Win today’s wars first

(コメント) パラグアイの独裁体制が崩壊し、ようやく始まった民主化と、貧民のための牧師から大統領になった指導者を迎える多くの難問が指摘されています。地球の反対側では、ドイツで最も保守的な政治風土と、先進的な投資や移民労働者を受け入れて繁栄してきたバヴァリアで、支配政党であり続けたCSU(キリスト教社会同盟)が衰退する苦悩します。

しかし、最も面白いのは、ロシアが主催する安全保障に関する国際会議の紹介記事と、アメリカ国防総省のゲイツ長官が示したアメリカの政策転換です。とても面白いので、断片を紹介しません。

日本がロシアの国際会議に呼ばれないのは不安です。しかし、ゲイツ長官が新大統領に継承してほしいと願う、戦闘よりも住民の支持を重視する「安全保障」体制では、日本も重要な役割を果たせるでしょう。