IPEの果樹園2008

今週のReview

8/18-8/23

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

グローバル・ガバナンス、 プーチンのグルジア懲罰戦争と企業いじめ、 フェア・トレード、 北京オリンピック、 エネルギー政策、 マクロ政策の協調、 コモンズ

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


YaleGlobal, 7 August 2008

Downsizing the IAEA Would be Dangerous

Ernesto Zedillo

The Japan Times: Thursday, Aug. 7, 2008

Say no to 'NPT' of climate change

By BRAHMA CHELLANEY

WP Sunday, August 10, 2008

'Sovereignty' That Risks Global Health

By Richard Holbrooke and Laurie Garrett

FT August 14 2008

Create a global authority for Arctic oil and gas

by Jeffrey Garten

(コメント) IAEA(the International Atomic Energy Agency)を格段に強化しなければ、原子力エネルギーの利用が核軍拡競争と切り離せなくなるでしょう。

京都議定書は、核武装に先行した諸国の権益を維持する形で核兵器の拡散を抑制したNPTの失敗を繰り返さないでしょうか? 気候変動の被害や予防コストは予想できません。気候変動を防止するには、同時に、地政学上の改善が必要です。

「主権」や国民国家がウィルスの侵入を防ぐ壁にはなりません。WHOは、人類に鳥インフルエンザH5N1が蔓延するのを防ぐために戦っています。他方で、殺人ウィルスの情報はインドネシア国家によって所有され、ワクチンの開発や販売に対する権利を主張します。SARSも、エイズも、口蹄疫も、・・・人や貨物の移動、渡り鳥などが世界的規模で広めます。

北極(や南極)の地下資源を開発するには、既存のルールを拡張するより、世界的な権威の主体と、所有権、開発のルールを合意、確立しなければなりません。Gartenはそれを、1951年のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体ECSCthe European Coal and Steel Community)にたとえます。

ドーハ・ラウンドが決裂し、国際金融市場の危機は安定化できないけれど、なお、ガバナンスの改善は多方面で模索されます。


Michael R. Sesit Russian Rogue Has No Place in G-8 Aug. 8 (Bloomberg)

Stopping Russia WP Saturday, August 9, 2008

Kevin Connolly No quick fix to S Ossetia conflict BBC 2008/08/09

Christian Neef and Matthias Schepp Is this the First War between Russia and a Former Soviet State? SPIEGEL ONLINE 08/09/2008

(コメント) ユコスとその石油王を破滅させ、ウクライナに対する石油供給を止め、ロシア・ナショナリズムを鼓舞する軍事的威嚇を繰り返したプーチンのロシアが、グルジアの挑発を座視せずに反撃しました。これは、冷戦の時代を再現する事件としてだけ理解すればよいのか、あるいは、もっと新しい事態をもたらすのか、将来に向けた論争が始まりました。

WPは、紛争の背景について、(WPから見た)要点を示しています。グルジアのサーカシビリMikheil Saakashvili大統領は、南オセチアの首都における衝突や砲撃を鎮圧するために軍隊を送りました。それがロシア側の謀略であったかどうか、わかりませんが、グルジア軍の介入に対して、ロシアも軍隊を送ったのです。

さらに紛争の背景には、ロシア政府がコーカサス地方に対する覇権を主張していることがあります。グルジアの民主的に選ばれた政府はアメリカからの援助を受け、イラクに派兵し、NATO加盟を求めています。ロシアは、たとえ470万人の小国グルジアでもそれを許さない、と考えたわけです。

NATOのヨーロッパ諸国はロシアに配慮して、アメリカが求めたグルジア加盟問題を先送りにしました。しかし、ロシアは1990年代からのソ連解体後にロシアがになった地域安全保障を主張し、グルジア内のアブカジアと南オセチアに対する関与を深めて、その住民たちにロシア政府のパスポートを配りました。

ロシアのメドヴェージェフ大統領は、戦争目的をサーカシビリへの懲罰だ、と述べました。理想的には、ロシア軍に代わって国連軍が治安維持にあたり、秩序を回復させるべきです。しかし、ロシアの拒否権がそれを阻むでしょう。その場合、国境や領土に対する原則を犯したロシアに対して、その代償を支払わせるべきだ、とWPは主張します。

世界のニュースや首相、外交官は夏休みにオリンピックを楽しんでいたとき、この戦争が起きたようです。そして、現実の「カリオストロの城」をどうするべきか、情報を集めています。

ソ連憲法下で自治を認められていたグルジア内の三つの自治区がトビリシ政府に反抗したのは、グルジア軍に圧倒的な軍事力も支配の政治的意志もなかったからであり、さらに、モスクワ政府が支援を表明し、影響圏維持のための介入を示唆したからでした。グルジアの独立自体が、常に、ロシアの動向に依存した不安定なものでした。

サーカシビリが言うように、このロシアの飛び地は犯罪と汚職の拠点であった、とBBCKevin Connollyも認めます。しかし、西側諸国が認めたEUNATOへも加盟できるという判断は時期尚早でした。経済危機を脱し、石油の富を吸収して復活したロシアが、帝国の記憶を再生し始めたからです。東欧、バルチック海沿岸、コーカサス、拡大するごとにロシアで反発を生じました。

紛争が軍事衝突に至り、しかも、収拾が長引くと予想される背景としては、モスクワがコーカサスの不安定な地域にNATOの介入を許さないこと、グルジアはロシアの影響圏のコアに分類されること(内堀)、サーカシビリのイデオロギーがロシアとの衝突を激化させていること、です。

アメリカもヨーロッパも、国際政治において、エネルギー供給において、ロシアとの協調が不可欠です。軍事衝突するつもりはありません。ところが、サーカシビリはロシアの軍事介入を1939年のナチによるポーランド侵攻、1968年のソ連軍によるプラハ侵攻、と同じであると主張します。そして、イラクに派遣したグルジア軍を米軍が直ちに帰還させるよう求めます。

欧米が提供するのは人道支援だけであり、即時停戦と長い交渉を望むだろう、と指摘します。

かつてのソ連指導者、スターリンJosef Stalinは、グルジア出身だと聞きましたが、南オセチア人であるとSpiegel紙は書いています。そして、現在の南オセチア「大統領」Eduard Kokoityは、元プロレスラーである、と。8月8日、金曜日の夜、騒乱に介入したグルジア軍の攻撃で1400名が死亡し、これはグルジア政府によるエスニック・クレンジングだ、と彼は非難していました。

南オセチア人の「保護」を自ら宣言していたロシア軍は直ちに反撃しました。戦車部隊を送って、首都Tskhinvaliからサーカシビリの軍隊を撤退させました。同時に、周辺のグルジア軍基地や、紛争とは遠く隔たった黒海沿岸の港Potiを空爆しました。そのころ、ブッシュ大統領とプーチン首相はオリンピックの開幕式のために北京にいました。戦争はヨーロッパの首都ブラッセルからわずかに3000キロしか離れていません。

この記事では、グルジア政府が南オセチアの民族独立を阻止するために介入を繰り返し、チェチェンのような惨状が発生したとも読めます。ロシア内の北オセチアに大量の難民を生じた結果、ロシア政府がその保護を主張し始めました。メドヴェージェフの国内評価が「軟弱」という非難を浴びないためにも、ロシア軍は強気のサーカシビリを痛めつけ、懲らしめるために、軍事介入を続けねばなりません。

EUNATO内部でも、東欧諸国はサーカシビリを強く支持しますが、フランスはグルジアへの関与を抑えようとします。アメリカは、コロンビア大学で学んだ若い指導者サーカシビリと、2003年の「バラ革命」により誕生したグルジアの民主主義を称賛してきました。ジョン・マッケインはトビリシを訪問して、サーカシビリの友人であると宣言し、ロシアをG8から追放すると主張しています。

Thomas de Waal Georgia's volatile risk-taker has gone over the brink The Observer, Sunday August 10 2008

Russia must prove its diplomatic maturity The Observer, Sunday August 10 2008

ANNE BARNARD Georgia and Russia Nearing All-Out War NYT August 10, 2008

JAMES TRAUB Battle Cry: Taunting the Bear NYT August 10, 2008

(コメント) 戦争は、当然、指導者の性格によって影響を受けます。欧米の政治家や外交官たちは、サーカシビリの行き過ぎた言動を抑制するのに苦労してきました。Thomas de Waal が次のように書いています。

Saakashvili is a famously volatile risk-taker, veering between warmonger and peacemaker, democrat and autocrat.

すでに戦争前から、フランスやドイツはサーカシビリの引き起こす問題にうんざりしていたようです。グルジア政府が反対派を弾圧した様子はテレビにも流れ、ヨーロッパ諸国の非難を浴びました。今は、グルジアのNATO加盟を遅らせたことは正しかった、と安堵しているかもしれない、と。今や、グルジアは自制するべきです。

そして、冷戦思考に戻らないためには、ロシアの外交が成熟した手腕を示すときです。北京にいたプーチン首相はただちにロシア・グルジア国境の町に移動し、直接、軍事介入の指揮をとりました。それはメドヴェージェフ大統領の権限を侵す疑いもあります。

サーカシビリは、ロシアのグルジア侵攻が石油パイプラインを狙ったものだ、と主張します。ヨーロッパへの石油供給を支配するためには、グルジアのパイプラインと港を支配しなければならないからだ、と。他方、ロシア政府高官は、アメリカがグルジアのNATO加盟をそそのかしたことを非難します。

グルジアを攻撃したロシア軍機は何機か撃墜されて、ニュースに飛行士の血で汚れたヘルメットが映されたそうです。すでに斬首された、と伝えました。

NYTJAMES TRAUBによる記事は、グルジアとロシアとの対立、サーカシビリとプーチンの衝突を詳しく述べています。NATO加盟をめぐって、その対立は爆発を待つばかりに加熱していました。中国が「平和的な台頭」を目標に掲げてオリンピックを主催しているときに、ロシアは影響力復活のための越境戦争を起こしたのは対照的です。

しかし、ブッシュ政権はロシアが安全保障上の関心を共有していると認め、サーカシビリのロシアに喧嘩を売るような行為を警戒していました。つまりアメリカは、両者が戦闘をやめて、各コーナーに戻ることを求めています。グルジアの中で高まったナショナリズムはアブカジアや南オセチアの独立を認めず、紛争が繰り返され、グルジア人の難民流出も続いていました。両者の和平合意は難民の帰還などを実現したものの、結局、強硬派の勢力拡大によって決裂します。

こうして積み上げられたダイナマイトの山に、サーカシビリとプーチンは火を付けたわけです。その前に、セルビアからのコソボ分割に反対していたプーチンは、コソボが国際合意によらない一方的な独立宣言を行い、英米がそれを承認したことに憤慨しました。そして、同様の事態がコーカサス地方にも波及する、と考えたかもしれません。そして、同じ原理からロシア寄りの独立派を集めて、Abkhazia, South Ossetia and Transnistriaの独立承認を示唆して、プーチンはサーカシビリを脅しました。

アブカジアや南オセチアがグルジアに対する非難は、グルジアがロシアに対する非難とそっくりです。スターリンの粛清や強制移住の被害にあった民族が、互いを憎しみます。この問題は当事者間で平和的に解決できないでしょう。ところが、ロシアは現状維持を求めているだけです。そして、コーカサスの紛争では、ロシアの同意を得る方が有利になることを示すのです。

西側の支援なしには、グルジアに何の勝算もありません。しかし、西側は何かするでしょうか? サーカシビリはロシアへの制裁を求めています。他の政府幹部は、ソ連の影響圏復活をロシアがあきらめるように求めます。これらの自治区と周辺における治安悪化には、得体のしれない犯罪集団が関わっていました。ライス国務長官の訪問時には、ロシア軍が南オセチア上空に戦闘機を飛ばしました。

コーカサスの治安は悪化し続けています。アメリカもEU主要国の外交官も、NATOや国連も、鎮静化を求めています。右派のキッシンジャーや左派のStephen Cohenが、ロシアとの外交政策における協調を選択肢として考慮するよう主張しました。しかし、この戦争は認識を変えるでしょう。そしてグルジアのNATO加盟も、プーチンが望むように、無期限に延長されたかもしれません。

HELENE COOPER In Georgia Clash, a Lesson on U.S. Need for Russia NYT August 10, 2008

Day-by-day: South Ossetia crisis BBC 2008/08/10

Matthew Collin Fear, anger, confusion in Tbilisi BBC 2008/08/10

James Rodgers Challenging situation for Moscow BBC 2008/08/10

Quentin Peel Wounded pride ignites an accidental war FT August 10 2008

(コメント) ロシアは一方的な軍事力の行使によって自分たちの意志を他国に押しつけました。西側諸国はそれをやめさせるための牽制・威嚇手段を何も持っていない(あるいは、むしろ自分たちが傷つく)ことを認めました。アメリカやEUからの外交的な呼びかけに対して、ロシア側は、コソボの例を挙げて、一方的な介入を主張したと言います。アメリカ政府も、優先順位を決めるべきだ、と考えます。グルジア、コソボ、イラン。ロシアと対立するか、協調するか。

James Rodgersは、ソ連崩壊の激震によって発生した亀裂が、再び火を吹き始めた、と考えます。これは凍結されていた戦火なのです。その意味で、ロシアにも介入後の秩序について計画があるわけではない、と。

Quentin Peeは、ロシアもグルジアもこの戦争を計画したわけではない、と考えます。サーカシビリも北京行きの航空券を用意していたそうです。しかし、双方が戦争の条件を積み上げてきました。問題は、すでに明白なロシアとグルジアとの敵対関係ではなく、アメリカやEUとの関係がどうなるかです。ロシアの庇護下にあることを明確に拒んだグルジアの行為に対して、ロシアは制裁を加えなければならない、と考えます。西側はそれを阻止するのか? かつてアメリカが軍事顧問を送ろうとしたとき、プーチンは威嚇しました。

プーチンはロシアのパスポートを持つ者はロシアが守る、と主張します。それは外国で支持されなくても、国民の歓声を受けるのです。

Russia's cold-war mentality CSM August 11, 2008

Charles King Russo-Georgian conflict is not all Russia's fault CSM August 11, 2008

Ronald D. Asmus and Richard Holbrooke Black Sea Watershed WP Monday, August 11, 2008

Robert Kagan Putin Makes His Move WP Monday, August 11, 2008

WILLIAM KRISTOL Will Russia Get Away With It? NYT August 11, 2008

MIKHEIL SAAKASHVILI The War in Georgia WSJ August 11, 2008

(コメント) Ronald D. Asmus and Richard Holbrookeは、この戦争が予想通りであったと考えます。体制転換を目指したサーカシビリが当選して以降、西側は強力にグルジアの改革を支持してきました。並行して、ロシアとの関係が問われています。

この戦争は、グルジア側の間違いもあったようだが、ロシアの計画による信仰である、と非難します。オリンピック開催を利用してメディアの関心を低めるのは昔からの常套手段である。プーチンは最初からサーカシビリの失脚を狙っている、と。スウェーデン外相が指摘したように、他国の市民にパスポートを発行して軍事介入の口実にするのは第二次世界大戦にナチスが利用したものです。

大国の影響圏という発想を離れて、各国が独自に自分たちの政策を決める時代は早くも終わったようです。メドヴェージェフの評価も変わります。欧米の一致した対応が重要です。

論説の主張は、1.グルジアを支援する。トビリシの復興を支援する。2.ロシアは中立ではない。当事者だ。3.ウクライナへの介入を阻止する。4.ロシアの行動は、欧米との関係悪化という代価をともなう。

Robert Kaganは、この戦争がサーカシビリ大統領の計算ミスで起きた、と考えます。この戦争は、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的な破局」として嘆いた人物、プーチンによって準備されてきました。グルジアの不幸は、ソ連帝国復活を願うプーチンが、石油や核を手にして、国内支配を確立したとき、その南側の不安定な地域に接して、影響を受け続けたことです。ロシアに敵対する、西側と親密な民主革命の代表国として、グルジアはプーチンに嫌われました。

プーチンはウクライナやグルジアを自分の意志に従う政府に変えようとしました。ところが、西側には、ロシアに対する要求が多すぎた、という反省が見られます。Robert Kaganはこの点を批判します。彼らは、ロシアの実情に合わせて、宥和することが必要だった、というわけです。真実は逆であって、いろいろな要求を繰り返したのはロシアでした。

グローバリゼーションや相互依存が現実に進んでも、大国間の競争、悪質なナショナリズム、資源の争奪はなくならないのです。

1921年以来、ソ連に制圧されていたグルジアは1924年蜂起します。しかし、弱体な国際連盟はそれを物質的に支援できず、それに対する説得もならず、独立は失敗しました。1991年まで、独立の日は来なかったのです。

ただ、幸いなことに、当時と違って、今はロシア、中国、スーダンのように、抑圧体制は分散している、とWILLIAM KRISTOLは世界を辛辣に描きます。

サーカシビリは、大西洋を超える自由と民主主義の共通の価値観に対して、ロシアは戦争を準備した、と訴えます。その理想主義を、WSJからアメリカに呼びかけています。そして、ロシアとの紛争にかかわらないよう、距離を取るヨーロッパの姿勢を批判します。ここにはヨーロッパの将来がかかっている、と。

Russian troops in Georgia advance BBC 2008/08/11

Paul Reynolds Early lessons from S Ossetia conflict BBC 2008/08/11

Luke Harding An exercise in collective punishment The Guardian, Monday August 11 2008

Dilip Hiro A line in the sand The Guardian, Monday August 11 2008

Alexandros Petersen Standing up to Russia The Guardian, Monday August 11 2008

David Clark The west can no longer stand idle while the Russian bully wreaks havoc The Guardian, Monday August 11 2008

Russia is forfeiting standing in world FT August 11 2008

Georgia, oil and gold FT August 11 2008

War in the Caucasus WSJ August 11, 2008

(コメント) 早期に学ぶべき教訓をPaul Reynolds9つ挙げました。

1.ロシアを刺激するな。ロシアをつなぐことはできない。2.ロシアは決定し、実行する。今のところ。3.コソボの屈辱を忘れない。4.グルジアのNATO加盟はない。5.プーチンが今も権力を握っている。6.ロシアに治安維持は頼れない。7.西側の対ロシア政策は固まらない。8.住民の合意によってもヨーロッパの国境は変えられない。9.敵対的な軍事同盟を拡大するな。

Dilip Hiroは、この戦争の目的はカスピ海の油田開発・パイプライン独占にある、と考えます。グルジアの紛争は、ロシアが軍事的影響力を誇示する口実を与えたのです。この地域では、ロシアの決定が平和か戦争かを決めるのです。

John Helmer Russia bids to rid Georgia of its folly Asia Times Online, Aug 12, 2008

Brian Whitmore Saakashvili overplays his hand Asia Times Online, Aug 12, 2008

MARTHA OLCOTT and JOHANNES LINN 'Turmoil in Central Asia' WSJ August 12, 2008

Message from Moscow LAT August 12, 2008

Max Boot Stand up to Russia LAT August 12, 2008

(コメント) サーカシビリの戦略は明白だ、とBrian Whitmoreは書きます。グルジアの軍隊がロシアに対抗できるはずはない。この戦闘で世界的な関心を集め、ヨーロッパやアメリカを巻き込むことだ、と。しかし、そのためには自国民の犠牲者が増えることを願い、世界戦争への拡大を促進しているわけです。

アブカジアや南オセチアの紛争は、サーカシビリが利用する前は、地域の問題にすぎませんでした。しかし、ロシアから西側に転換したグルジアの姿勢に対して、ロシア寄りの自治区をサーカシビリは弾圧し、今度はロシアがサーカシビリを牽制するために自治区を利用します。

ロシアが支援する武装した分離独立派による騒乱が続いた後、サーカシビリは軍を派遣しますが、これに対してロシアは軍隊を越境させました。サーカシビリの抗議を最も真剣に受け止めたのは、EUの中でもリトアニアやポーランドです。紛争がこの時期に始まったのは、サーカシビリはブッシュ政権がグルジアに対する積極的な関与を約束した、あるいは、そうさせたい、と考えたからだろう、と推測します。ところが、それは結果的に紛争激化を軍事的に利用するロシアの思うつぼでした。

同様に、西側は、1990年代の混乱で影響力を失ったロシアを無視したまま、EUを拡大し、NATOを拡大し、ミサイル防衛計画を描き、コソボを独立させたのです。プーチンがこれを黙認しなければならなかったのは、国内の支配体制確立や大統領選挙があったからでしょう。ロシアは不満を示し、繰り返し、威嚇してきました。今後、それは軍事衝突をともなう深刻な意味で解釈されるでしょう。

こうして、今もグローバリゼーションを切断する威嚇は有効なのです。Max Bootは、これをチェチェンで用いた作戦だと考えます。Moscow's ultimate goal remains unclear, but it may well be to topple the democratically elected government of President Mikheil Saakashvili and replace him with a pro-Kremlin stooge. That is what the Russians did in Chechnya in 1999-2000.

ただし、チェチェンは独立していませんが、グルジアは独立国家です。周辺地域の政府には、ロシアが認めた政治家しか入れない。サーカシビリは違うのです。

こうした行為を、欧米諸国は黙認してはなりません。今すぐ、ロシアを押し戻すべきである、と主張します。Today, Georgia; tomorrow, Ukraine; the day after, Estonia? ロシアへの制裁と、周辺諸国への経済・軍事援助です。ロシアとの友好関係を損なうのは望ましくない、という意見に対して、それは1930年代にも聞いた、と退けます。

Ian Traynor and Luke Harding Surrender or else, Russia tells Georgia The Guardian, Tuesday August 12 2008

Michael Williams How 'old' Europe let Georgia down The Guardian, Tuesday August 12 2008

David Hearst Nato stops here The Guardian, Tuesday August 12 2008

Christian Neef Putin Outmaneuvers the West SPIEGEL ONLINE 08/12/2008

George F. Will Russia's Power Play WP Tuesday, August 12, 2008

Richard Cohen Brutality to Make a Point WP Tuesday, August 12, 2008

Mikhail Gorbachev A Path to Peace in the Caucasus WP Tuesday, August 12, 2008

(コメント) Richard Cohenは、この戦争が帝政ロシアによる弾圧を引き継いだ見せしめと同じであり、それゆえ、広範かつ残酷に懲罰を示すことが目的である、と考えます。

ロシアの砲弾はグルジアに飛来しています。彼らを守るためにアメリカはロシアと戦争するのか? ありえません。しかし、NATOはそのために存在します。イギリス、フランス、ドイツは、ロシアと戦うのか? 辺境の紛争が大国を含む軍事同盟に拡大するのは、第一次世界大戦のシナリオです。

戦争は回避しても、現実が残ります。それは、ロシアの発展には西側との友好関係が不可欠だ、ということです。貿易、投資、技術。ロシア自身が西側同盟(中国のようにWTO)に入って、その利益を享受することもできます。

ゴルバチョフは、グルジアが自治区を認めて連邦制を取るように求めています。また、自分たちで問題を解決できない場合も、外部からの支援は公平に行われるべきである、と主張します。

Russia’s War of Ambition NYT August 12, 2008

SVANTE E. CORNELL Russia Blames the Victim NYT August 12, 2008

Sergei Lavrov Why Russia’s response to Georgia was right FT August 12 2008

Joseph Biden Russia has the most to lose in this costly conflict FT August 12 2008

Living with the Russian bear FT August 12 2008

(コメント) ロシア外相Sergei Lavrovの主張です。・・・これはグルジアが始めた戦争だ。ロシアは独立国家共同体の安全保障を担う役割を認められ、グルジアの自治区についても警備していた。グルジア軍がオリンピックの開幕を利用して和平協定を破り、軍事攻撃を行ったから、ロシア軍は当然反撃した。サーカシビリのように、明日は全ヨーロッパの首都にロシア軍が侵攻する、これはアメリカとの戦争だ、と主張するような好戦的指導者に、だれも自国民を犠牲にしたいとは思わないだろう。・・・

他方、アメリカのJoseph Biden上院議員(chairman of the US Senate Foreign Relations Committee)は、たとえ発端が何であれ、ロシア軍の報復は過剰であった、と考えます。民主的な選挙で選ばれた指導者を、モスクワが軍事攻撃によって失脚させるのは許されない。1956年のハンガリー動乱を思い出す。たとえ戦闘では勝利しても、モスクワの戦略上の地位は失われるだろう。ロシアの復権を望むなら、これは間違った道だ。

Charles Clover The message from Moscow: Resurgent Russia bids to establish a new status quo FT August 12 2008

War of the hotheads BG August 12, 2008

Timothy Snyder Grappling with an emboldened Russia BG August 12, 2008

Vladimir Bonaparte WSJ August 12, 2008; Page A20

GARY SCHMITT and MAURO DE LORENZO How the West Can Stand Up to Russia WSJ August 12, 2008

M K Bhadrakumar The end of the post-Cold War era Asia Times Online, Aug 13, 2008

F William Engdahl Russia marks its red lines Asia Times Online, Aug 13, 2008

Refresh Georgia's 'Rose Revolution' CSM August 13, 2008 edition

JOHN MARKOFF Cyberspace Barrage Preceded Russian Invasion of Georgia NYT August 13, 2008

US forces to deliver Georgia aid BBC 2008/08/13

Paul Reynolds Winners and losers after Georgia conflict BBC 2008/08/13

Matthew Lynn Russian Assault in Georgia Threatens New Cold War Aug. 13 (Bloomberg)

Thomas Meaney and Harris Mylonas The Pandora's box of sovereignty LAT August 13, 2008

(コメント) Paul Reynoldsによれば、この戦争の損益勘定はこうなります。

勝者(利益を得た): ロシア、プーチン首相、南オセチアの強硬派、EU旧加盟諸国。敗者(損失を被った):犠牲者たち、サーカシビリ、真実、西側。そして、ロシアとEUとの協定や、グルジアのNATO加盟、ロシアのWTO加盟は再考されるだろう。

Thomas Meaney and Harris Mylonasは、コソボの独立を認めたことで国際秩序に穴が開いた、世界各地の独立派が活性化するパンドラの箱を開けたのだ、と警告します。もしアメリカが各地で民族独立を支援するなら、他国もそれを利用するからです。そして、ロシアだけでなく、中国も、イランも、多くの大国が内部に独立派を抱えています。分離独立を決める住民投票を求めることは答えになりません。

彼らの独立を求めるより、各国政府が少数民族を正当に扱い、政府にも参加させるよう要求するべきだ、と主張しています。そして分離・独立は、関係する諸国がそれに合意した場合にだけ、国際秩序においても正当と認められます。歴史が示すように、少数民族への弾圧も、完全な分離独立も、大規模な暴力と難民をもたらします。

Robert Fox A reality check for Nato The Guardian, Wednesday August 13 2008

Ken Gude America's next move The Guardian, Wednesday August 13 2008

Matthew Collin Fear and loathing in Tblisi The Guardian, Wednesday August 13 2008

Eugene Rumer Another Hard Landing for Russia? WP Wednesday, August 13, 2008

Anatol Lieven The west shares the blame for Georgia FT August 13 2008

Gideon Rachman War in Georgia FT August 13 2008

Rajan Menon The grim realities of power IHT Wednesday, August 13, 2008

GWYNNE DYER Georgia's giant miscalculation The Japan Times: Wednesday, Aug. 13, 2008

HOLMAN W. JENKINS, JR. First Yukos, Then Georgia WSJ August 13, 2008

Bush and Georgia WSJ August 13, 2008

MELIK KAYLAN Welcome Back To the Great Game WSJ August 13, 2008

(コメント) Anatol Lievenは、アブカジアと南オセチアのグルジアへの統合はもはや諦めるしかないだろうし、最終的にはグルジアがEUに加盟することで安定化できるだろうが、この紛争でその時期はさらに延期された、と考えます。アメリカだけでなく、西側諸国は、サーカシビリにロシアとの戦争を避けるよう求めてきました。それが守られなかったことに憤慨しています。先の大統領選挙でも、サーカシビリのプロパガンダはアブカジアや南オセチアの問題を無視していました。

ウクライナやグルジアの民主主義を守るために支持を表明するとしても、アメリカやNATOがロシアと戦争することはできません。しかし、すでに加盟している東欧やバルト海諸国については、それが法的な義務となっています。このことをロシア政府に正しく伝え、その通り行動しなければなりません。

Gideon Rachmanが主張するように、グルジア政府は領土内の民族問題について、特にロシアは支援した分離独立派に対して、強硬策を取る権利があった。同時に、グルジア政府は、ロシア軍機を撃墜し、さらには南オセチアの首都で軍事力を行使したことが、ロシアに攻撃の理由を与えるという失敗を犯した。サーカシビリはロシアを過小評価したし、西側の支持を過大評価していた。

ロシアの主張する人道的な介入は、すでに激しい報復と戦域拡大をもたらして、その欺瞞性を明白にしました。西側は強く抗議し、団結するでしょう。グルジアも、ロシアも、この戦争によって多くの機会を失います。

MELIK KAYLANは、中央アジアの支配とカスピ海の石油をめぐる大国(ロシア、アメリカ、EU、イラン、トルコ、中国、インド)の関与した戦争が始まる、と警告します。

Brian Whitmore Russian halt leaves crucial questions Asia Times Online, Aug 14, 2008

Clifford J. Levy and James Traub Q & A on Georgia NYT July 14, 2008

Neil Arun Caucasus foes fight cyber war BBC 2008/08/14

Rosa Brooks Who got Georgia into this? LAT August 14, 2008

Seumas Milne This is a tale of US expansion not Russian aggression The Guardian, Thursday August 14 2008

Gerhard Spörl Russia Capitalizes on New World Disorder SPIEGEL ONLINE 08/14/2008

(コメント) NYTQ&Aは興味深いです。

Gerhard Spörlは、これを世界危機であると主張します。なぜなら、超大国であったロシアが、アメリカやNATOの拡大を阻止する決意と行動を示したからです。バルチック海沿岸諸国やポーランドがグルジアを支持し、ロシアが周辺の小国に何をしてきたか、ともに訴えました。

一極世界を利用したアメリカ政府のネオコン達はイラク戦争で国際秩序を損ない、その後、世界は多極化したように見えました。アメリカ、中国、インド、ロシア、など、大国が世界を好きなように改造する。しかし、多極化した世界の秩序はゆがんだままです。アメリカは国際秩序への関心を失い、中国も、インドも、適当にアメリカと組んで、自国の利益を主張するだけです。ロシアは他国との協調を求めません。

Andrew Curry Will Poland Split EU Over Russia Policy? SPIEGEL ONLINE 08/14/2008

Mikheil Saakashvili Russia's War Is The West's Challenge WP Thursday, August 14, 2008

Charles Krauthammer How to Stop Putin WP Thursday, August 14, 2008

Blaming Democracy WP Thursday, August 14, 2008

(コメント) サーカシビリ大統領の訴えは正しいでしょう。

Russia's invasion of Georgia strikes at the heart of Western values and our 21st-century system of security. If the international community allows Russia to crush our democratic, independent state, it will be giving carte blanche to authoritarian governments everywhere. Russia intends to destroy not just a country but an idea.

ロシアが破壊しているのはグルジアという小国だけではない。西側の価値、21世紀の安全保障、民主的な独立した国家も、自分たちの意志に反すれば軍事力で滅ぼしてよい、という思想が試されています。民主主義革命が成功した後、ロシアは様々な圧力を加え、介入を繰り返し、経済的な破壊、秩序のかく乱を図った末に、それでも従わないグルジアに軍事侵攻した、と。グルジアは、国内の自治区に対して21世紀型のヨーロッパという解決策を求めた。ロシアは、19世紀型の支配秩序を求めている。

ロシアの目的は、グルジアの軍隊を解体するだけでなく、グルジアをフィンランド化する・保護領にすることです。サーカシビリを廃し、ロシアの言いなりになる人物を大統領にする。サルコジがまとめた和平案は、すべての決定をロシアとグルジアの交渉に委ねている。しかしロシアはサーカシビリを相手にしないだろう、とCharles Krauthammerは指摘します。

ロシアに対してアメリカが軍事的な対応を取ることはない。しかし、ロシアの利益を減らし、コストを付加することはできる。その材料は多くある。NATOWTOG8、冬のオリンピック候補争い。何よりも、アメリカはサーカシビリを支持し、ロシアが失脚させるなら、彼を亡命政府として認めることを声明せよ、と。

Russia Takes Gori NYT August 14, 2008

Philip Stephens The vulnerabilities that lie behind Putin’s belligerence FT August 14 2008

DANIEL HENNINGER Putin's Rules, or Ours WSJ August 14, 2008

JOHN MCCAIN We Are All Georgians WSJ August 14, 2008

Charles Recknagel Georgian leader's future in doubt Asia Times Online, Aug 15, 2008

Brian M Downing An inevitable clash Asia Times Online, Aug 15, 2008

Europe's (dis)unity over Russia CSM August 15, 2008

(コメント) サーカシビリの友人である共和党の大統領候補、ジョン・マッケインは、自分もグルジア市民である、と主張します。しかし、決して好戦的な主張はしていません。グルジアに対する国際的な支援を描いています。


CSM August 8, 2008

Fair-trade coffee: not worth a hill of beans

By Gene Callahan

(コメント) フェア・トレード・コーヒーで問題を解決できるのか? 合同合宿のテーマでした。「その意図は高貴であるが、結末は悲劇的だ。」と、自由主義経済学のGene Callahanは批判します。債務や貧困から救い出すどころか、経済発展を損なってしまう。なぜなら、それは市場を無視しているから。


BG August 9, 2008

Chinese, Russian stall tactics on Iran

By Joshua Gleis

(コメント) これも多極化した世界の欠陥です。欧米によるイランへの制裁は、それに参加しないロシアや中国に大きな利益をもたらします。


LAT August 11, 2008

The other Olympic gold

Gregory Rodriguez

FT August 11 2008

The new age of authoritarianism

By Chrystia Freeland

WP Tuesday, August 12, 2008

When China Starved

By Anne Applebaum

NYT August 12, 2008

Harmony and the Dream

By DAVID BROOKS

FT August 12 2008

Olympic trickery

(コメント) オリンピックを動かしているのも、現代中国の二つのエンジン、すなわち、ナショナリズムと資本主義です。

1989年、ベルリンの壁は倒され、天安門事件が起きました。しかし今、北京はオリンピックを祝い、ロシアとグルジアは戦争を始めました。新しい権威主義国家の時代です。権威主義体制の指導者が国民に与えるものは、オリンピックに向けたナショナリズムや、勝利が確実な戦争、新しい帝国、インターネットなどの情報規制です。

開会式のショーは、まさに観客が見たいと思う中国でした。しかし、共産党が支配した中国の歴史は、膨大な餓死者に満たされています。1959年、政府の間違った指導により、3600万人が死にました。

アメリカの個人主義と、中国の集団主義。アメリカ人はカテゴリーを重視し、アジア人は関係を重視する。その違いは、ヨーロッパよりアジアの方が、細菌が多くて感染しやすく、社会システムとして伝染病を恐れたから・・・?

これまでは、ルネサンスや産業革命に効果的であった個人主義の社会が世界を動かしました。しかし、その地位が集団主義の社会に交代するかもしれません。

政府に管理されたオリンピックは、何もかも偽造されているのではないか、という疑いを招きます。

WP Wednesday, August 13, 2008

The Drums of Change

By Harold Meyerson

FT August 13 2008

A golden opportunity? How Chinese brands are betting on an Olympic boost

By Patti Waldmeir

The Japan Times: Wednesday, Aug. 13, 2008

Beijing Games focus U.S. attention on Asia

By TOM PLATE

NYT August 14, 2008

After the Games, Tibet

By NICHOLAS D. KRISTOF

The Japan Times: Thursday, Aug. 14, 2008

China's slow march toward a normal society

By FRANK CHING

Aug. 15 (Bloomberg)

China Goes Milli Vanilli as Japan Tries Old Ways

William Pesek

(コメント) Harold Meyersonは述べています。中国とロシアはわれわれに教えている。「過去の権力関係は再編されるのであり、著しい新興勢力は旧権力に挑戦するものだ。」 その直前に、ドーハ・ラウンドも決裂しました。2008年、北京オリンピックとグルジア戦争を含めて、西側の支配に拠らない、多極型の世界秩序が始まった年として、後世の世界歴史テキストには描かれるでしょう。

中国の労働力、中国の市場、中国の通貨に、西側の企業や銀行は魅入られています。オリンピック競技場が、中国の台頭を絶賛する西側のスポンサー企業で埋まっているのは当然です。そして、中国企業も世界に躍進します。

しかし、オリンピックは中国指導部にとって2番目に重要な事件だ、とNICHOLAS D. KRISTOFは考えます。もっとも重要な問題はチベットです。オリンピックが終われば、ダライ・ラマとの交渉を再開するでしょう。ダライ・ラマは北京に対して妥協の用意があることを示しています。独立派を抑えて、北京との和解を指導します。問題は、北京政府がそれに応えるか、です。

オリンピックに続いて、中国指導部が迎える最も画期的な事件が、彼らの決定によって中国の国際的な評価を変えるのです。そして、人権問題の運動家とも話し合うべきでしょう。

日本経済の停滞を、オリンピックにおける日本柔道の低調さと比べて、日本企業の年功序列雇用システムや世界基準に合わせることを嫌う姿勢を、William Pesek批判しています。


The Japan Times: Sunday, Aug. 10, 2008

Disturbing reasons to put a nation to death

By IAN BURUMA

(コメント) ベルギーが消滅する事情についての考察です。国家の成立は、ほとんどの場合、歴史的な偶然でした。しかし、いったん成立した国家は、国民にとっての共通の利益を育ててきました。しかし、この利益が失われるにつれて、住民たちはむしろ言語や信仰によって分離することを考えます。ヨーロッパのように、各国政府の役割が軽視される中では、それも当然です。

ただし、問題は分離がコストをともなうことです。エスニシティーによって分離された国家が、それほど良いものとは限りません。そのような試みを抑えるために戦後のヨーロッパは制度化されたはずです。


NYT August 10, 2008

Flush With Energy

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 水洗トイレの流し方から始まって、同じ石油危機に直面して以来、デンマークとアメリカのエネルギー政策がどれほど大きく異なっているか、その社会的影響も考察しています。

ブッシュ大統領は同意しないかもしれませんが、デンマーク首相は説明します。“The cure is not to reduce the price, but, on the contrary, to raise it even higher to break our addiction to oil. We are going to introduce a new tax reform in the direction of even higher taxation on energy and the revenue generated on that will be used to cut taxes on personal income — so we will improve incentives to work and improve incentives to save energy and develop renewable energy.”

北海油田を手に入れても、デンマーク政府はガソリンに課税して、経済の石油中毒を改めました。そして、クリーンなエネルギー源を開発しています。風力発電はエネルギー全体の20%を占め、アメリカの1%を大きく超えています。


ROBERT J. SHILLER Crisis Averted. What of the Next One? NYT August 10, 2008

Philip Purcell The five lessons bankers must relearn FT August 10 2008

A Darker Outlook at Fannie and Freddie NYT August 11, 2008

George Soros A Danish fix for the US mortgage crisis FT August 11 2008

Bill Emmott Crisis, what crisis? Enough kerfuffle, it's just a slowdown The Guardian, Tuesday August 12 2008

Caroline Baum It's Too Soon to Toast the End of Credit Crisis Aug. 13 (Bloomberg)

(コメント) ROBERT J. SHILLERは、破産法の見直しを求めています。Philip Purcellは金融市場の危機の教訓をまとめています。George Sorosは、デンマークの方式を勧めています。

Bill Emmottは、昨年9月以来の金融市場における危機を、大恐慌にたとえる主張を断罪します。われわれの生活はほとんど傷ついていません。銀行家やゴードン・ブラウン以外は、この危機を深刻にとらえることはないのです。それどころかイギリスの失業率は下がっています。普通の人たちは、金融市場よりもインフレが心配です。

世界経済が成長率を下げれば、石油や食糧の価格は下がり、庶民は喜ぶでしょう。嘆く必要はありません。1990年代の日本だけが、金融市場の危機を経済全体の不況と、金融システムの悪化に結びつけました。イギリスはそのコースに向かってはいないだろう、と。


FT August 10 2008

America’s decline will not be easily reversed

By Byron Wien

FT August 10 2008

More help needed for US economy

WP Monday, August 11, 2008

A Moment For Fiscal Courage

By Sebastian Mallaby

Aug. 11 (Bloomberg)

Greenspan's `Age of Froth' Is Over for Decade

John F. Wasik

(コメント) アメリカ経済の将来を悲観する声が増えています。長期的にも、短期的にも、アメリカの衰退や不況と、政策対応が議論されています。


FT August 11 2008

Growth risks will be Trichet’s biggest test

By David Mackie

FT August 14 2008

Testing the eurozone

(コメント) ECBの行動を理解するポイントは何か? David Mackieによれば、1.コア・インフレーションを目標にしている。2.リスクを管理する。3.二つの目標を、消費者物価指数の変化によってバランスさせる。4.潜在成長率を切ったり、消費者物価指数が超えたりすると明確に行動する。

FT August 12 2008

Policy is a matter for the world, not just a rich club

Jean Pisani-Ferry

(コメント) Jean Pisani-Ferryは、ドーハ・ラウンドだけでなく、マクロ政策の協調も脅かされるかもしれない、と警告します。1月には、ECBの政策が批判され、アメリカ連銀は称賛されていました。両市場で世界の金融資産の3分の2が取引されます。

ここでは、マクロ経済管理が難しくなると指摘します。石油の供給は制約があり、需要は将来も伸びるからです。また、労働力の追加的な供給がインフレを抑えた時期は終わりました。さらに、アジアショックのドル・ペッグ制は解体するでしょう。為替レートの調整問題が再現します。

今後の世界経済を管理する制度には、かつて主要諸国が行った変動レート制とレファレンス・ゾーンの合意があります。しかし、G7は世界GDPの半分しか占めておらず、新興諸国は変動制を嫌っています。さまざまな通貨・為替の合意を模索するでしょう。

グローバリゼーションへの反感が増す中で、もしマクロ経済管理が混乱し、あるいは、通貨市場に危機が頻発するなら、グローバリゼーションを支持することは非常に難しくなります。G7を超えて、政策協調を模索するしかありません。


The Japan Times: Monday, Aug. 11, 2008

Don't cry over Doha failure as the stakes were inflated

By DANI RODRIK

The Guardian, Thursday August 14 2008

Free trade breakdown

Björn Lomborg

(コメント) DANI RODRIKによれば、保護主義が強まり、アメリカは金融危機を深める、という警告にもかかわらず、ドーハ・ラウンドがあってもなくても、急激な変化はないのです。農産物貿易を自由化して改革を強いても、それで最も大きな利益を受けるのはアメリカでしょう。しかも、効率性の改善は各国内の問題です。工業製品については、新興諸国が抵抗しています。ドーハ・ラウンドが貧困解消のための「開発」ラウンドだ、というのはWTOの宣伝です。

自由化交渉を主張したWTOの官僚たちは、それが失敗したことで、世界に悲観論をばらまく結果となりました。現実には、歴史的に見て非常に開放的な世界システムが成長を実現しているのに。そして、本当に投資を減らしたり、国際ルールが帯びる正当性を損なってしまう危険があるのです。

Björn Lomborgは、環境問題を含めて、自由貿易はあらゆる問題を解くのに役立つ、と主張します。


Aug. 13 (Bloomberg)

Reaganomics Comes to Japan After Dying in U.S.

William Pesek

FT August 13 2008

Japan must acquire a taste for competition

By Michiyo Nakamoto

(コメント) 低成長を抜け出せない日本経済について。日本の政治家たちは、周回遅れのレーガノミクス信奉者なのでしょうか? 財政再建はやめて、減税によって景気を刺激すれば税収も増える? レーガンやサッチャーがやったように、むしろ規制緩和や民営化を進めるべきだ、とWilliam Pesekは考えます。日本の政治的な保護に拠る二重経済を解体しなければなりません。

あるいは、競争の促進こそ、それを実現します。例えば、日本農業は保護を廃止することでよみがえるだろう、と。

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The Economist August 2nd 2008

China’s dash for freedom

China before the Olympics: Welcome to a (rather dour) party

Gene doping: Fairly safe

Fun, games and money: A special report on the sports business

Business in Russia: Mechel bashing

Economics focus: Commons sense

(コメント) 北京オリンピックには厳しい評価です。中国は台頭するが、それはオリンピックと関係ない。オリンピックの成功は、むしろ共産党の支配を長引かせ、改革を遅らせる、と。治安維持が優先され、人権も、環境保護も、国際社会における責任ある行動も、目立った変化はないのです。

また、オリンピックのたびに話題になるドーピングについて、The Economistは容認します。技術革新の一部、という姿勢です。しかし、特集記事において、スポーツ・ビジネスは莫大な利益や選手の売買、薬物乱用、いかさま、買収、などの弊害をともなうことが指摘されています。ただし、グローバリゼーションと同様、究極のドラマを求める人々の欲求には逆らえない、という姿勢です。

グルジアと戦争する前にも、プーチン首相は国内企業に対して攻撃を始めています。プーチンは権力者であり、法律は彼によって曲げられるし、投資家に対する配慮もない。それがロシアというプーチンの国です。

面白いのは、「コモンズ・共有地の悲劇」です。それは、「共有地の管理」となり「統治」となります。レジーム論がそうであるように、「コモンズ」も裏から市場への規制や私的所有制の欠陥を是正する公的秩序の命題を招き入れたように感じます。すべての所有や売買には、コモンズの性格がともなう、とThe Economistも認めます。それは新しいコモンズ、すなわち、インターネットや知的所有権、国際環境汚染、地球温暖化、などについて、最初から適用されているわけです。