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IPEの風 8/18/08
100メートルの世界新記録、9秒69でボルトが金メダルを取りました。ソウル・オリンピックでは、カナダのベン・ジョンソンが9秒79で優勝した3日後、ドーピング検査で金メダルを剥奪されました。
21世紀のオリンピックは、ますます大規模な投資とインターネットによる商業主義、ナショナリズムの衝突とハイテク・遺伝子ドーピング、選手の売買や国籍移動が起きるのでしょうか?
夜空に浮かぶ足跡がCGによる合成映像であっても、私はそれほど失望しませんでした。しかし、開会式に中国の国旗を持って歩いた「少数民族」の多くの子供たちが、実際にはほとんど漢民族で、単に少数民族の衣裳を着ていただけだった、というのは醜悪です。理想主義をも悪用する権力の傲慢さを感じます。
オリンピックの競技に、野球やフェンシング、柔道、カヌー、などが入ったのはなぜでしょうか? 私の考えでは、オリンピックは陸上競技と水泳だけでよいのです。
原則として、1.ゲーム性のあるものは除外する。2.プロ競技がある分野は除外する。3.地域や民族に偏りのあるものは除外する。
他方、鳥人間コンテストや、ロボコンは、オリンピックにしても面白いな、と思いました。パラリンピックも素晴らしい試みです。
つまり、22世紀のオリンピックは、陸上と水泳、創意・工夫の競技、パラリンピック、という3分野に、三つの除外原則を適用して開催します。
それでは、開催国がインフラ投資や選手の要請費用をまかなえない? 小国の場合、オランダ病ならぬオリンピック不況も起きるでしょう。そうであれば、候補の選定は複数国(たとえば、大国2つと小国3つ)による協力体制で応募し、国際委員会が監督するのが良いでしょう。
貧しい諸国や、戦乱、飢饉などで疲弊した諸国には、国際基金が選手を選抜して育てる制度を設けることです。
オリンピックが国威高揚やナショナリズムの強制につながらないよう、選手たちは出身地の町や村、現在生活する土地に結び付けて紹介されます。国籍が変わった選手は、一定期間(たとえば5年間)、両方の国籍を示します。あるいは、出身国への移籍金を支払い、オリンピックへの国際基金にも拠出します。
The Economistの特集記事には、タイガー・ウッズが昨シーズン稼いだ収入を1億2790万ドル(約128億円)と示してあります。ニューヨーク・メッツの主要選手が外国生まれであることも書かれています。野球、サッカー、バスケットボール、あるいは、相撲。これほどのカネが動けば、能力のあるものはプロスポーツの盛んな国へ流れます。
スポーツは新聞やメディアと共棲し、企業は宣伝やブランドの売り込みに利用します。それは政治家も同じです。イギリスのプレミア・リーグのように、放映権やチームの所有権は主要な輸出品となります。
合法・非合法で賭博の対象になり、いかさまや選手への攻撃も起きるでしょう。スポーツ選手はボディーガードを雇い、世界的な富豪や政治家と付き合い、みずから大統領になります。試合に負ければ、暴動から戦争まで起きます。
こうしたスポーツ・ビジネスと異なる考え方で、将来もオリンピックが存在し続けるでしょうか? 北京オリンピックは、世界資本主義=競争型ナショナリズムによるスポーツ大宴会の最後です。
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