IPEの果樹園2008

今週のReview

7/7-7/12

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

サミット, ヨーロッパ理想, 移民・難民, ドバイの討論会, PTSD, ガソリン価格, 中東安全保障体制 アイスランドブータン, 

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


IHT Thursday, June 26, 2008

Break the deadlock

By Tony Blair

(コメント) イギリスの前首相、トニー・ブレアが地球温暖化の防止に向けた取り組みを支持しています。彼は政治の力を信じているのでしょう。

ブレアにとっては、温暖化そのものではなく、温暖化を防止しなければ取り返しがつかないような被害が将来に発生する、という認識を人々も政治家も持つようになった、という事実(認識や態度の変化、意識の共有)が出発点です。しかも技術はある、というのです。だから、地球規模の合意を作る必要があります。

特徴的であるのは、途上国の成長を妨げることはできない、ということ。そうであれば、炭素を固定化する技術の開発が重要ですし、地球規模のバランスを保つために先進工業諸国がさらに多くの二酸化炭素を削減しなければなりません。また、新しい枠組みには、すべての国が参加しなければなりません。特に、アメリカと中国、インドが参加することです。そのための各国の意識変化が生じつつある、という楽観を示しています。

The Japan Times: Tuesday, July 1, 2008

Fukuda's heart for G8 leadership

By KEVIN RAFFERTYmanaging editor at the World Bank

FT July 3 2008

Japan goes missing: invisible host at the summit

By Philip Stephens

(コメント) どれほど世界にとって重要なことでも、各国の相対的な負担の評価は合意を妨げるでしょう。得られた合意に、どのような強制力を持たせるのかも難しい問題です。

65億人に政治的合意をもたらすリーダーシップを持て、というのは日本の首相にとって無理な要求かもしれません。少なくともRAFFERTYはそう考えます。科学者の深刻な予想と、南極の氷河や北極海の氷が減っているという報告があっても、主要国の反応は鈍いからです。

もちろん、危機を喧伝し、緊急対策を連呼することがリーダーシップではないでしょう。だれも追随しなければ権威を損なわれます。しかし、既存の制度を十分に活用し、あるいは制度を改革できないとすれば、政治家の能力が足りないのです。RAFFERTYは、中国やインドの参加しないG8に依拠することで発言力を維持しようとする日本や福田首相を批判しています。

福田首相が本当に政治的な意欲を示すとすれば、中国とインドの参加した2025年までの削減目標を示すことです。

世界中の政治家やメディアが心配するのは、日本が消えてしまうことです。Where is Japan? 世界第二の経済規模を持つ日本が、国際政治においてはほとんど意味を持たない事実に、日本だけでなく世界が改めて驚く日々になるでしょう。サミットの主催国として世界中のメディアに登場した福田首相は、その数日を除いて、再び世界中のメディアから消滅します。

リーダーシップがなければ、サミットは各国指導者が自分の政治宣伝をする機会にすぎません。しかし、日本には国際政治に示す優先順位もありません。周知のごとく、日本は1980年代の経済ブームで世界の指導国になると予想され、特に日本企業の進出が恐れられました。しかし、その後のバブルと金融システムの危機により、忘れられるにいたったのです。

今でも世界の市場で日本製品は売れているだろうが、21世紀の秩序を考える際には、日本ではなく、中国がインドが話し合いの中心です。かつて日本はアメリカの同盟国であり、それ以外に有効な選択肢はありませんでした。しかしソ連が崩壊し、中国の改革が加速してから、日本の役割は変わったのです。ところが、実際には、中途半端なナショナリズム以外、何もありません。

Stephensは、日本の若い外交官の意見として、日本が間に立つ仲介者の役割を果たす、と考えます。アメリカと中国、先進諸国と途上諸国、その間にあって平和的な秩序を仲介する役割です。日本自身がアイデンティティーを明確にして、国際秩序に貢献しなければなりません。


FT June 27 2008

The ideology of teen pregnancy

By Christopher Caldwell

(コメント) 日本では子供が減って困っているのに、イギリスでは10代の妊娠が問題です。日本でもそうなるかもしれません。

貧しい、単身の少女たちが、妊娠することを喜ぶのは、孤独や貧困に耐える仲間を得ることや、公的な扶助があることに関係するのかもしれません。フェミニストたちが仮定するほど、少女たちは働く機会や恵まれた家庭を重視していないようです。

保守的で、単純労働者の所得が減少し、上昇する機会の乏しい社会で、底辺層が形成されることで、日本人の出生率が回復するとしたら、少子化対策などという「政策」はなくなるわけです。


The Japan Times: Friday, June 27, 2008

Unrelenting suicide toll

WSJ June 27, 2008

Tokyo Credit Crunch

Asia Times Online, Jun 28, 2008

A new wrinkle in Japan's porn boom

By William Sparrow

FT July 2 2008

Dividends to reap: Shareholder activists begin to make their mark in Japan

By Michiyo Nakamoto and Kate Burgess

(コメント) 日本に関する論説は、いつもそれほど多くないのですが、サミットのせいで増えたのかもしれません。

最初の論説のテーマは、日本の自殺者が10年連続で3万人を超えていることです。まるでソ連崩壊のように、バブルが破裂した1998年に8000人増加して3万人を超えてから、自殺者の水準は下がりません。

政府は国民の命を守ることに無関心ではありえない、と思います。北朝鮮に拉致された人たちを救出するのと同じくらい、あるいは、一層深い闇に引き込まれる人たちを救出することに、政府は強い関心を払うべきでしょう。

WSJは、政府によるグレー金利の規制強化で、消費者金融が窒息してしまったことを批判しています。借り手が苦しむのは貸し手が悪い、という思想である、とWSJは福田政権を批判します。シティバンクやGEも消費者金融への投資を撤退したようです。むしろ、もっと多くの消費者金融が必要であるはずだ、と。確かに融資を必要とする人がいるのであり、金利を規制するより、異なる対策が必要だったように思います。

Sparrowの記事は、日本における高齢者ポルノ産業の隆盛を紹介しています。全体の趣旨はほめているのですが、そんなものかな、と疑問です。若者も高齢者も、楽しくセックスし、子供を育てるより、ポルノ産業の利益増大に取り込まれて、正常な感覚がまひしていくように思います。

FTの記事は、日本の株式市場についてです。もっと投資家が積極的に経営に対して意見を述べて、効率性や配当を国際水準に引き上げるべきだ、と繰り返し主張されています。高齢化し、国際競争や国際投資が増大する中で、日本の経営者だけが旧来の合意形成メカニズムに守られていることはありえないでしょう。

もし、企業の長期的な利益や地域社会の代表を経営に参加させるために「日本的経営」は重要だ、というのであれば、それを明確に説明できるような制度を用意することです。その上に、日本への外国投資も誘致し、個人投資家の資産運用も改善できるでしょう。


Asia Times Online, Jun 28, 2008

FDI curbs threaten world growth

By Abid Aslam

(コメント) 直接投資にも、日本は避けられているかもしれません。論説は、政府系投資ファンドをけん制する先進諸国の株式市場規制が問題視されています。

資本市場の規制が広がれば、世界の直接投資FDIの流れが影響を受けます。日本とは逆に、アメリカ政府に世界のFDIを誘致する政策を採用するよう勧告して、外交評議会が報告書を発表しました。FDIは世界の市場自由化を実現し、アメリカの労働者を雇用し、先端産業で研究開発をけん引しています。

報告書は、外国投資家の審査は安全保障の分野に限り、また、それが民間取引の利益を妨げないように、投資家の信頼を損なわないように、特定産業の保護にかかわらないように、求めています。また、FDIやSWFについて、アメリカ政府が主要な投資国政府の財務大臣と毎年協議することや、OECDとIMFが積極的に関与して、投資行動の改善に努めるべきだ、と勧告しています。


The Guardian, Friday June 27, 2008

A matter of life and death

Karol Boudreaux

BG June 30, 2008

Immigration oasis

YaleGlobal, 1 July 2008

A Self-Inflicted Wound

Jacob F. Kirkegaard

The Japan Times: Friday, July 4, 2008

A wave of migrating brains and barbarians

By HANS-WERNER SINN

(コメント) 移民についても、私は、同じような「問題」の国際的処理や協議の制度化が望ましいと思います。

ジンバブエの独裁政権と経済崩壊は有名ですが、それから逃れるには隣国へ難民となって国境を超えるしかありません。しかし、南アフリカでは難民たちを迫害し、暴力と強制退去が彼らを待っています。推定で約300万人の難民が流入した、と言われます。彼らは地域経済を脅かし、失業者を増やしている、と責められます。そして、貧しい住民が難民たちを襲うようになりました。

Boudreauxは、南アフリカの労働市場が分割され、政府部門については硬直的で雇用を排除し、また貧しい労働者たちは激しく競争して難民たちを排除する、と批判しています。労働市場を弾力化し、国際援助を受け入れ、政府部門や輸出部門の雇用を増やし、難民たちを積極的に吸収する仕組みはありません。

たとえば、アメリカでも移民排斥を望む人々はいますが、他方で、マサチューセッツ州のボストンでは、ビジネス界や労働組合、市民やNGOsが集まって、移民たちへの英語教育を積極的に拡大し、雇用を増やそうとしています。移民の流入は災厄ではなく、ここでは、経済成長の源泉です。

また、技術者や高度な熟練労働者については、各国の移民政策で競争が生じています。

どの裕福な社会でも、戦後のベビーブーム世代は引退し、高齢化とともに労働者が不足し、特に、熟練労働者や技術革新に見合ったエンジニアの補充に企業は移民労働者を考えなければなりません。たとえ工業部門は海外に移転して製品を輸入できても、優秀な労働者や技術者が不十分であれば、アメリカの覇権や優位も崩壊します。

ところがアメリカの移民政策は制限的な性格を強めており、その影響は先端的な産業分野でも雇用をむしろ海外で拡大する結果に導いています。

SINNは、現代のヨーロッパに起きている大量移民を、歴史的には4世紀から6世紀に起きた民族大移動に匹敵する、と主張します。たとえば2007年にEU加盟を果たしたルーマニアから、最初の1年でおよそ100万人がイタリアやスペインに移民しました。過去4年間に、おもにポーランドから、イギリスに流入した東欧からの移民は80万人以上です。

他方、ドイツは今も移民を規制しているために、流入するのはむしろ労働者ではなく、個人営業や経済的に活動的でない移民が多いようです。それでも、東欧からの移民の37%がドイツに向かい、イタリアの22%より大きく、イギリスの3%を大きく超えています。EU拡大を決める前から予測されていましたが、それを超えるものです。

EUの労働市場も十分に弾力的でないため、調整は円滑に進まず、移民は双方の利益である、という予想通りには歓迎されていません。また熟練労働者の奪い合いや頭脳流出も問題です。教育条件や高所得、税制、社会保障などによって、EU市民は選択的に移動し始めています。この点で、アンゴロサクソン諸国が優位です。


The Guardian, Friday June 27, 2008

The WTO wants to talk - but who's listening?

Timothy Wise and Kevin Gallagher

IHT Thursday, July 3, 2008

The moment of truth

By Pascal Lamy

(コメント) 投資や移民が自由化をめぐって模索する以上に、貿易の自由化はどうなったのでしょうか? Timothy Wise and Kevin Gallagherは、途上諸国がドーハ・ラウンドを破棄するように求めています。なぜなら、この自由化は利益の多くを豊かな国に約束しており、途上国には農産物輸入などで国内市場を失うという負担を強いるものであるからです。また、韓国や中国のように国内産業が競争力を付けてから徐々に開放するのではなく、政策による産業の助成を禁じています。

「開発ラウンド」の名に恥じない、新しいラウンドを始めなければ、途上国には参加する意味はない、と主張します。

他方、WTO事務総長のラミーは、各国の代表たちにジュネーブでの一層の妥協を準備するよう呼びかけています。なぜなら代表たちは不安を共有しているからです。この合意案では、途上諸国への利益が足りないし、21世紀の新分野が扱われていないし、このままでは貿易自由化が頓挫し、世界経済の不安定性が増す中で、保護主義への動きが強まっていることに対抗できません。

ドーハ・ラウンドの成功は50%である、とラミーは考えます。もしその機会を失えば、市場開放による利益は得られず、各国の保護主義者は勢いを増し、アフリカ、アジア、ラテンアメリカにおける貧困を減らすためにわれわれのルールを変えることに失敗し、食糧危機や途上国の農民を苦しめる状況が続くことになる、と。だから、真剣に妥協できる条件を持って帰ってきてほしい。

FT June 30 2008

Trade has saved America from recession

By Fred Bergsten

(コメント) 世界市場の統合と多極化とは、その参加者のすべてに大きな利益をもたらしている、とバーグステンは主張します。アメリカもその主要参加国の一つにすぎません。グローバリゼーションを非難するより、アメリカが享受している輸出の伸びと景気後退への支えとして、世界市場の拡大を支持しなければならない、と。


The Guardian, Friday June 27, 2008

Be bold, Europe, or remain a fat, rich political pygmy

David Marquand

Foreign Affairs, July/August 2008

Rethinking the National Interest

By Condoleezza Rice

IHT Tuesday, July 1, 2008

Unconventional wisdom about Russia

By Henry A. Kissinger

(コメント) かつてキッシンジャーが疑問を呈したように、ヨーロッパには誰も電話に答えるべき人がいません。ソ連についてキッシンジャーが相談する相手を見いだせなかったように、今再び、国際秩序が多極化する中で、ヨーロッパは新しい秩序について発言する力を統一していません。

David Marquandは、リスボン条約が否決されたのは、それがEU官僚に対して市民の反感を示す機会だから、という解釈ではなく、むしろEU政治家が市民に正しく伝える勇気を欠いていたからだ、と考えます。今後、20年から30年でEUの中心部分、およそユーロ圏は連邦制を採用するだろう、と予想しています。なぜなら、国際秩序において発言力を持つには、そのような政治統一を求められるからです。キッシンジャーの問いに答えられないなら、温暖化であれ、安全保障であれ、ヨーロッパは次の秩序に参加できない。

われわれの子供や孫たちは、アメリカ人、中国人、インド人、そしておそらくロシア人が動かす世界に生きてほしいのか、それとも、キッシンジャーの問いに答えて、われわれが連邦制へと質的に飛躍する準備をして、少なくとも、われわれ自身が準覇権国になるのか?」

ヨーロッパが何であるかを模索しているように、Foreign Affairsに載ったライス国務長官の論文もアメリカの「国益」を再定義しています。ポスト冷戦の世界において、また9・11後の世界において、“What is the national interest?

真珠湾であれ、9・11であれ、大きなショックによって外交を転換する際には、大国との関係を調整する、とライスは明言します。今の場合に、アメリカにとっての大国とは、中国、ロシア、インド、ブラジル、と。そして、グローバリゼーションにもかかわらず、国家間のパワー配分が最も重要です。それと同時に、ライスが強調するのは、アメリカがその価値や長期的な利益にも従う、ということです。リアリズムとアイデアリズム=理想主義との融合こそが、アメリカの外交政策を形成しているのである、と。

ライスは大国の現状と対米関係を考察します。それと並んで、アジアの重要性や、そこにおける中国の支配的役割を認め、国際秩序への参加を促しながら、しかし、政治体制への不安と不信を主張します。アジアにおいては、民主的な国際秩序を維持するために、アメリカと同盟諸国との関係に十分な投資が見込まれています。

かつてヨーロッパとアジアで行ったように、アメリカは再び中東においても民主化を実現する、と主張しています。それはブッシュ大統領の持論ですが、ライス長官は保守派の思想に支持される形で、まるで国際派のリベラルと同じような主張を行っています。アメリカの国益とは、アメリカの価値を反映した国際秩序を築くことであり、アメリカの国益を守るような価値観を共有する諸国を増やすことである、と。それが「民主的な同盟・発展」であり「アイデアリズムを掲げたリアリズム」です。

この、オルブライトのような、ライスの外交方針が試されるのは、ブッシュの唱えた中東民主化よりも、アジアの民主化でしょう。

そしてキッシンジャーです。リアリストのキッシンジャーは、ライスのようにリベラルとの融合を呼びかけるような迷いを示さず、ロシアのプーチン=メドヴェージェフ体制と組みます。バーグステンが中国とのG2を主張したように、キッシンジャーはロシアとのG2を主張しています。


Evil no more The Guardian, Friday June 27, 2008

The North Korea Deal NYT June 27, 2008

A bend in the axis of evil BG June 27, 2008

JOHN R. BOLTON The Tragic End of Bush's North Korea Policy WSJ June 30, 2008

(コメント) ブッシュ政権が北朝鮮の対応に大きな褒美を与えたのはなぜか? これは勿論、ネオコンの発想ではないし、ボルトンのような強硬派の考えにもそむきます。ライスのリベラルな?方針転換でしょう。外交における飴と鞭の使い分け、に過ぎません。

問題は、その時期や成果です。6年もかけて、またか、というだけであれば、北朝鮮のゆすり勝ちです。アメリカ側が言うように、北朝鮮こそ援助に頼る状況へと追い詰められているのでしょうか? そして関係諸国を含めて、特に韓国は、北朝鮮の体制崩壊がもたらすコストを恐れて、こうした延命策に協力し続けるのでしょうか? ライスが考えるように、この新しい情報を得ることで非核化の進展が確実になるのでしょうか?

イラクへの軍事進攻や、イランとの交渉と、さまざまに比較されます。ブッシュ政権が交渉を拒んだ間に、北朝鮮は核物質を蓄積し、核爆弾の開発にも成功しました。一体、その何分の1が改善したのか、という不満が強い「成果」であり、制裁解除です。あるいは、中国、ロシア、韓国、日本の分裂状態は、それほどひどい、と言うべきでしょうか。

得をしたのは金正日だけだ、とボルトンは断言します。北朝鮮がテロ支援国家でないとしたら、他にどんな国家がこの制裁に値すると言うのか? これはブッシュ政権が完全な知的崩壊へと突き進んだからだ、と主張します。


Jonathan Steele The Milosevic medicine The Guardian, Saturday June 28, 2008

NICHOLAS D. KRISTOF If Only Mugabe Were White NYT June 29, 2008

Jeremy Kuper Trading with Mugabe The Guardian, Monday June 30, 2008

John Githongo and William Gumede Let the African Union set democratic standards FT June 30 2008

MARK Y. ROSENBERG Does Zimbabwe Need a President? NYT July 2, 2008

(コメント) ジンバブエのムガベ大統領が権力を手放さないことに対して、誰も何もできないのでしょうか? 選挙はだめ、軍事介入もだめ。他に方法は?

Jonathan Steeleは、軍・政党によるムガベの追放を提案します。ジンバブエは破たん国家ではなく、軍隊と支配政党が統治しています。それは実際、20008月に、旧ユーゴスラビアの首都、ベオグラードで起きた例があるからです。ミロシェビッチが権力を手放したのは、西側諸国による制裁でも、NATO軍による空爆でもなく、支配政党の不正な選挙に起こった民衆が政府に反対して抗議集会を開き、軍や警察と対峙したとき、ミロシェビッチが権力を手放す代わりに安全を保証する取引に応じた、と述べています。

しかし、取引が可能でしょうか? 民主化の活動家はムガベ支持者の殺し屋に狙われました。彼は家に帰らず、隠れましたが、暴漢がやってきて妻をとらえ、拷問にかけました。片腕と両足を切り落とし、最後には小屋に投げ込んで鍵を閉め、放火した、と言われます。反対派に対する警告として、その愛する者を奪い、苦しめます。

かつて1970年代に、人種差別主義者のIan Smithがジンバブエを支配していました。アフリカ諸国は政府に抗議し、南アフリカは電力の供給を止めました。今やムガベはスミスよりも冷酷な支配者です。かつてムガベが主張した白人植民地政府の打倒は、今その主張を繰り返すなら、ムガベの追放を意味するはずだ、とKRISTOFは考えます。違いは、たったひとつ。ムガベが白人ではないことです。

ジンバブエにもイギリスの多くの企業や銀行が進出しています。ジンバブエへの経済制裁について、南アフリカとの関係で保守党と労働党が論争したことが再現します。サッチャーは、制裁は貧しい黒人労働者たちを苦しめる、と反対しましたが、ツツ大司教は、制裁はアパルトヘイトより好ましい、と反論しました。

G7が政策を協議するように、AUも加盟諸国の民主主義を相互に監視し、改善するべきです。AUはムガベに権力の共有を求めましたが、ムガベは拒否しました。ROSENBERGは、大統領制より議会をもっと重視する方が良い、という意見です。


The Observer, Sunday June 29, 2008

As we suffer, City speculators are moving in for the kill

Will Hutton

FT July 1 2008

Lessons to be learnt from the financial crisis

By Martin Wolf

(コメント) Huttonは投機を強く非難します。金融市場の逼迫で行き場のない資金が商品市場に殺到し、ヘッジファンドの投機的な売買が価格を急速に押し上げて私たちの生活を脅かしている、という批判が強まっています。ヘッジファンドは自由な資金であり、いわば、1960年代のウッドストックやヒッピーと同じように、自由資本主義の象徴なのです。しかし、その規模はあまりにも巨大になって、すべての秩序を脅かしつつあります。1兆ドルを超えて、もうすぐ、さらに2兆ドルが加わるでしょう。

ヘッジファンドの規模とマネージャーたちの報酬こそが、これほどの毒を放つのです。Huttonはさまざまな数値を上げています。報酬につられて株主たちもヘッジファンドに株を貸し、投機的な売買に協力します。株式市場はバブルを生じ、また、ブラック・ホールにもなります。ヘッジファンドは株価の下落局面では、巨額の売りを注文して儲ける術を知っています。彼らは企業や銀行を投機的な売買で脅し、政府による情報の公開にも抵抗しています。それはスターリニスト国家であり、金融マフィアである、と。

ヘッジファンドが作るバブルとブラック・ホールで優秀な企業が死滅するのであれば、もはや資本市場は機能していません。ヨーロッパだけでなく、英米でさえ、政治家たちはヘッジファンドの規制に動いています。

他方、Wolfは繰り返されたバブルや危機についてBISの報告を称賛します。早くから金融緩和と資産市場バブルの関係を警告していたからです。さまざまな金融市場の変化やヘッジファンドを批判するより、ますます多くの怪しげな資産にますます信用で膨張した売買が行われたことを指摘します。金融政策が正しく引き締めを行っていたら、投機は続かず、大きなバブルは起きなかったでしょう。


WP Sunday, June 29, 2008

Why Not A Debate In Dubai?

By David Ignatius

(コメント) ワシントンDCから7000マイルも離れた中東の都市ドバイにおいて、オバマとマッケインが大統領候補の討論会を開催する、というのは奇妙な話です。しかし、ドバイを築いたアラブ首長国連邦(UAE)のSheik Mohammed bin Rashidは二人の候補を本当に討論会へ招待する用意があるのです。

多くの理由が挙げられます。・・・アメリカは外国における反米感情や、アメリカの傲慢さを嫌う人々に、候補者たちが直接答えるべきだ。中東政策と、イラク、イランとの交渉は次の大統領にとって最重要な課題だ。ドバイは、パレスチナとイスラエルの和平を支持し、テロリズムに反対する新しい中東、新しいアラブの指導者を代表する。ラクダや王族の宮殿ではなく、近代的な空中都市、リゾート開発によって反映する見本を示した。2006年のUAEによるアメリカ空港システムの買収問題が議会の偏狭なナショナリズムを示した。

アメリカ大統領選挙は、常に「変革」を求めます。そうであれば、なにより、ミドル・ネームがフセインであるアフリカ系アメリカ人が一方の候補であり、ベトナム戦争で拷問を受けた英雄が対立候補の討論会をドバイで開くことです。彼らがアラブ世界の民衆に直接応え、また、イラン国民に民主主義を実感してもらえる、アラブ世界でのテレビ討論を実現するべきだ、と主張します。

LAT July 2, 2008

What Latinos want from their president

By Alberto R. Gonzales

(コメント) ラティーノ(おもにメキシコ移民)たちにとって、この選挙は社会的平等を実現する機会です。平等な機会を重視し、経済的な上昇の機会を公平に与えてくれるアメリカを誇りとし、戦場にも行く覚悟がある、とラティーノを紹介します。


WP Sunday, June 29, 2008

Treating Wounds You Can't See

By Linda Blum

BG June 30, 2008

A blind eye on soldiers' suicides

By James Carroll

(コメント) 戦争は多くの破壊を行い、人々を苦しめ続けます。その一つとして、アメリカ兵自身が、PTSD心的外傷後ストレス障害に苦しんでいます。WPの記事は、そのような多くの兵士たちの状態を伝えます。

たとえば、多くの若い兵士を死なせてしまった指揮官や、多くのアメリカ兵とイラク人の死体を集め続けた医療班の女性は、理解できない不安や苦しみを抱えて、帰国しても家族と生活することができません。あまりにも大きなストレスをかけると、脳も破壊されてしまう、と医師は述べます。そして、脳のチャンネルは、テレビのリモート・コントロールのようなわけにいかない。

ある意味で、どうしても耐えられなくなった兵士たちは自殺します。'SUPPORT THE troops" is an American lie. アメリカ国民は苦しむ兵士たちを無視してきました。

160万人の、イラクもしくはアフガニスタンから帰還した兵士たちの5人に一人(30万人)がPTSDに苦しみ、多くが命を脅かすような精神障害に陥っています。コスモポリタンな市民を守る21世紀の戦場では、兵士たちがナショナリズムの情熱によって精神的に保護されることもないのです。他方で、その技術的な破壊力は堪えがたい規模で殺りくを実現します。

「自殺は常に悲劇である。しかも注意を集めなくても、常にメッセージをともなう。それは生き残った者が読み取らねばならない。兵士たちの自殺については、われわれアメリカ人がその親族である。彼らの絶望はわれわれに語りかける。・・・彼らは何を伝えたいのか?」


NYT June 29, 2008

Is Your Tank Half Empty or Half Full?

Fuel for Inequality By ROBERT B. REICH

What the Green Bubble Will Leave Behind By DANIEL GROSS

Ghosts of the Cul de Sac By ALLISON ARIEFF

The Japan Times: Monday, June 30, 2008

Best way to beat the oil barons

By THOMAS I. PALLEY

WSJ July 1, 2008

We Can Lower Oil Prices Now

By MARTIN FELDSTEIN

(コメント) ROBERT B. REICHによれば、ガソリン価格が高騰すれば、貧しい者が苦しみます。アメリカ労働者の半分は年収42000ドル以下であり、ガソリン価格は彼らに逆累進的な課税をもたらします。しかも、貧しい者ほど、効率の悪い古い自動車で、長距離を走って仕事に向かっています。今や裕福な者が都市の中心部に回帰し、貧しい者が郊外の住宅地に出ていくのです。

DANIEL GROSSは、石油価格の高騰がエネルギーの技術革新をもたらす、と考えます。バブルが、その精神的、物質的なインフラを残しているのですから。

ALLISON ARIEFFは、人々は自動車による移動をやめて、コミュニティーの範囲が狭くなり、すべてが徒歩と自転車に依拠した社会の誕生を期待します。そして生活の質をめぐる議論が隣人たちを結びつけます。

PALLEYは、石油の備蓄が減っているから、自動車を運転する者が満タンではなく、半分だけにすれば、需給は反転し、価格が下がると考えます。それが価格の上昇に投機した者を罰するでしょう。

FELDSTEINは、たとえ中国人やインド人の所得が増えたとしても、価格が年に100%も上昇する理由にはならない、と指摘します。その理由は、腐りやすい農産物の場合、需要と供給の価格弾力性が低いことにある、というわけです。なぜなら、インドや中国で需要が増えた分、もし供給が増えなければ、どこかで需要が減らなければ均衡しません。そのためには価格の大幅な上昇が必要だったのです。

しかし、解決策は時間です。需要も供給も、短期的には価格に反応しませんが、長期的には十分弾力的であるから、とFELDSTEIN主張します。しかし、石油の価格は異なります。それは長期的な需給の均衡とリスクを考慮して決まるからです。産油諸国は、石油価格の上昇率が金利より高いと、石油という資産を地下に貯蔵したくなります。逆に石油価格が下落する中では、早く売りたくなります。

将来の価格を予想することが、現在の売買を変化させ、価格に影響します。中国の成長が続くと思えば、石油価格の上昇は止まらず、そうであれば今売るよりも石油供給を減らして地下に蓄えておく方が良い。となると、現実に石油価格の上昇が止まらないのです。こうして新しい噂や発見、政治的な事件が、現在の石油価格を変化させます。

FELDSTEINの助言は、農産物の価格変化には我慢しろ、しかし石油の価格上昇には将来の需給を変化させる政策を採用して、現在の価格を抑えよ、ということでしょうか。こうして政府は、市場に影響を与えます。

WP Monday, June 30, 2008

Nixonian Fallacy

By Sebastian Mallaby

(コメント) 数年前に「サブプライム」が問題になったとき、エコノミストたちは1970年代との違いを自慢していました。中央銀行の金融政策は正しく決定され、政治家たちも価格を操作することは考えない、と。

しかし、ガソリン価格の上昇が続く中でインフレーションも復活し、そのような楽観は消滅します。政治家たちは再び価格統制を主張し始めました。ただし、今回非難されているのは、先物市場の投機です。

Mallabyは彼らの主張がニクソンと同じである、と指摘します。ニクソン大統領は、1970年代前半の価格統制政策で莫大な労力を費やし、違反者を処罰しただけでした。「ストーブで両手を焼きながら、バーベキューを楽しんだ」とMallabyは非難します。

先物市場で売買が成立するには、ペーパー・オイルの売り手と買い手がいるわけです。現実に需給の不均衡により価格が上昇する中で、将来の高価格を回避するために先物を買う企業や個人がいることを非難するのは間違いです。規制の強化は取引をやみ市場に累積させ、結局はより大きな崩壊を招きます。・・・

これが、投機や先物市場の伝統的な合理性を示すロジックです。


Wolfgang Münchau The options for a Europe without a script FT June 29 2008

A European crisis FT June 29 2008

FT July 1 2008

Europe is failing to restore idealism

By Larry Siedentop

(コメント) リスボン条約の否決による危機を、EUはさまざまな方法で回避できます。Münchauはその選択肢を比較しています。EUの実力者、フランスのサルコジ大統領が6カ月のEU議長を務める時期にこそ、リスボン条約を含む多くの懸案が解決できるでしょうか?

あるいは、OxfordSiedentop名誉教授が言うように、EUに足りないのは政治的な理想主義ではないでしょうか? フランス、オランダ、アイルランドの国民投票がEU拡大による連邦制の強化に反対したのは、ヨーロッパ議会に自分たちの声が代表できているとは考えなかったからでしょう。議会には権威がなく、EUの政策や制度を動かし、EU市民の声を代表する力がないのです。

各国の市民は、EUによって戦争回避や国際会議での発言力を強化するだけでなく、自分たちの民主主義を強化してほしいと願っています。Siedentopが強調するのは、自由民主主義が唱える理想として、基本的な権利の平等です。それは、自由市場や市民社会における結果としての不平等を回復する、強固な「自治政府」という理想をイメージしています。各国の国民が拒んだのは、これを失うことでした。

自由な市場は、富や権力、社会的地位について、大きな不平等をもたらすかもしれません。自由民主主義は、個人を強化し、社会的な移動性を助けることで、この不平等に応えます。政府が偏狭な民族主義や部族主義に依拠している限り、その理想は実現できません。EU統合は彼ら自身が認めるようなEU自治政府の理想を求めています。EUやヨーロッパ議会が失敗したのは、こうした理想を市民に広めることでした。

Siedentopは、アメリカ大統領候補の選出過程で、ヒラリー・クリントンとオバマが激しく争う過程で、アメリカの市民たちは自分たちの政府に対する理想主義を学ぶのだ、と理解します。EUも同じ過程を経て、市民たちが理想を共有できなければ、再生しないでしょう。


FT June 29 2008

What we can do in this dangerous moment

By Lawrence Summers

(コメント) 日本では停滞も危機も日常的な印象を持っていますが、アメリカでは違うのでしょう。金融市場が混乱しても、住宅価格が下落しても、アメリカには金融政策がある、と信じていたはずです。それゆえに、石油価格の上昇やインフレ懸念、ドル不安の中で、金融政策が使えないというのは、住宅価格のさらなる下落、消費の落ち込み、そして不況や金融不安の再発という、一層深刻な危機を初めて実感させたのかもしれません。タフで有名なSummersでさえ。

危機を回避するために、アメリカは4つの政策を実行します。1.連邦の住宅融資制度を強化し、住宅債務を維持してやること。2.財政支援策として、失業手当の期間延長や地方政府によるインフラ投資を行うこと。3.補助金や規制など、非貨幣的な要因によるインフレを抑えること。4.金融機関の破たんと整理を金融システム不安なしに行うこと。・・・なるほど。


One-way street in South Korea FT June 29 2008

Donald Kirk Seoul's summer of discontent Asia Times Online, Jul 3, 2008

FT July 3 2008

Stalled in Seoul: How protests have humbled South Korea’s ‘Bulldozer’

By Anna Fifield and Victor Mallet

(コメント) 韓国の反政府運動は予想もしない規模と期間をさらに更新しています。それはアメリカからの牛肉輸入に抗議することから始まり、首都ソウルに広がった強烈な排外主義、外国のものを憎み、グローバリゼーションを否定する議論によって、政権打倒から国際政治問題にまで向かいます。韓国国民はアメリカ軍を排除し、外国投資家を排除し、世界市場からの離脱と、中国経済圏への政治経済統合に向かう、というのでしょうか?

1997年の経済・金融危機により、韓国政府は外国資本を受け入れ、買収を認めました。今では、優良な韓国企業が自国を逃げ出し、アメリカや中国の企業に転身するかもしれません。そして、政府にとっても、グローバリゼーションは一方通行ではなく、逆転することを示しています。

これは韓国にとっての「暑い夏」となるのでしょうか? 一方で、石油危機や穀物価格の上昇によるインフレを抑制するために、政府は様々な協力を国民や経済界に求めなければなりません。他方で、李大統領の経済改革と景気刺激策は承認されないでしょう。Donald Kirkは、1997年のIMF融資を受け入れて以来、二大政党が互いを攻撃し合ってきたことに注意します。また、労働組合は、太平洋の両側で、米韓の自由貿易協定FTAに反対します。

新大統領の下で、世界市場統合や朝鮮半島の平和統一に積極的な状況が生まれる、と期待された韓国で、全く逆の条件が強まっていることを理解するカギは何でしょうか?

現代建設の重役からソウル市長となり、韓国経済再生のための経営者スタイルを売り物に当選した李明博(イ・ミョンバク)大統領は、「ブルドーザー」として国土改造を目指したはずですが、民主主義を通じて経済を改造することができませんでした。牛肉輸入を自由化して民営化し、学校教育を英語にする、という経営者の単純な発想を、韓国民衆は強く嫌ったのです。

抗議活動は2か月に及び、ますますエスカレートして、警察署が襲撃され、主な通りはバスによって封鎖されています。大統領は支持率の急落と政策の遅延に直面し、国民に対して政治スタイルを改め、対話を重視すると約束しました。この事態を収拾して、中国との経済競争に集中するなら、チャンスはまだある、とFTは考えます。


SPIEGEL ONLINE 06/30/2008

THE ALTERNATIVE TO WAR: Are Sanctions Working on Iran?

By SPIEGEL Staff

CSM July 2, 2008

The alternative to an Israeli attack on Iran

By Shlomo Ben-Ami and Trita Parsi

(コメント) イランへの軍事力行使が今も議論されています。軍事力ではない選択肢として、完全な経済封鎖によって、イランの核開発を中止させられるだろうか? しかし、制裁に参加しないであろう中国やロシアとの貿易が急速に増えています。あるいは、核保有を許しても、経済取引を重視することで軍事衝突を避けるべきだろうか?

Shlomo Ben-Ami vice president of the Toledo International Center for Peace and former foreign minister of Israel)とTrita Parsi president of the National Iranian American Council)が共同で書いた論説は興味深いです。イスラエルとイランの軍事衝突は避けられるし、軍事力はどちらの国にとっても解決策にならない、と主張しています。

イランの核施設を攻撃しても開発計画は止められず、逆に、イラン国内の民主化勢力を敗退させるでしょう。イランの影響力を受け入れても、アメリカとイスラエルは安全保障を確立できます。軍事衝突に代わる選択肢とは、中東の地域安全保障体制に、イスラエルとイランがともに参加することです。それはパレスチナの中東和平が進展しなければ成立しません。そして、中東安全保障体制がなければ、イスラエルは核兵器の独占をあきらめないのです。


NYT June 30, 2008

The Choice They Made

By WILLIAM KRISTOL

(コメント) アメリカ独立宣言なんて、いまさら当たり前のことじゃないか。何の影響もないよ。という批判に応えようとします。1826624日のジェファーソンのWeightman手紙を紹介しています。83歳のジェファーソンが、宣言は将来も人類に対する啓蒙主義の前進を呼びかけることをその手紙で予想しています。彼はその年の50回目の独立記念日に亡くなりました。

今でも、アメリカ独立宣言を読み上げるとき、人々は深い感動と(自分たちの政府に寄せる)愛国心に胸を打たれるでしょう。


NYT June 30, 2008

The Obama Agenda

By PAUL KRUGMAN

FT June 30 2008

How Obama can avoid the Carter trap

By Gideon Rachman

The Wall Street Journal, 30 June 2008

Big Issues for the Next President

David Wessel

CSM July 2, 2008 edition

High hopes abroad for a new U.S. president

(コメント) KRUGMANは考えます。バラク・オバマは、1980年と同じような、左派のレーガン政権をもたらすのか、それとも、1990年のクリントン政権を再現するのか? 変化への期待だけでなく、変化の中身が問題になってきました。

Rachman は、1976年のカーター政権と比べます。ワシントンの政治を全く知らない、ジミー・カーターが政治の在り方を変えようとしました。当時のベトナム戦争も、アメリカに対する信用を損ない、国民は変化を求めていました。オバマは新しいジミー・カーターか?

しかし、カーター政権の時代は歴史上最悪の弱いアメリカとして記憶されています。イランとアフガニスタンの外交政策で失敗しました。カーターの時代に国民が観た最悪の特徴とは、パニック、ペシミズム、ナイーブ(愚直さ)、でした。オバマは、その優れた政策にもかかわらず最悪の成果にとどまったカーター政権から多くを学ぶべきです。

イラク戦争と中東政策だけで、大統領の仕事は終わりません。財政赤字、医療保険制度、グローバリゼーション、不平等な所得分配、について新しい大統領は何をするのか、Wesselは具体的な内容を求めます。

外国における強い支持と期待感は、オバマの政策を制約するのでしょうか? 現実のアメリカ外交は、彼らが期待するほど変化しないでしょう。


NYT June 30, 2008

Thinking the Unthinkable: A World Without Nuclear Weapons

By CARLA ANNE ROBBINS

(コメント) ブッシュ政権の下で、当初、ラムズフェルドは核拡散防止体制を信用せず、アメリカはもっと利用しやすい核兵器の開発を目指すべきだ、と主張していました。結局、世界はベルリンの壁が崩壊してから19年も経ったのに、アメリカもロシアも20000個の核兵器を温存し、ブッシュの核政策は北朝鮮の核兵器保有や技術輸出を阻止することにさえ失敗したのです。

1986年、レイキャビクでの核軍縮計画をレーガン大統領がゴルバチョフと合意したことについて、ワシントンの安全保障関係者たちは憤慨し、政府のいい加減なユートピアニズムや、戦略性の不足を、シュレジンガーは代表してForeign Affairs非難しました。

しかし、現代は違います。元国務長官や専門家たちは、核全廃をアメリカの外交として主張したのです。世界中に核兵器が拡散してしまった状況では、かつてのような核による抑止戦略は意味を持ちません。アメリカとロシアが核全廃の合意によって指導し、安全保障体制を維持しなければならない、と考えます。


CSM July 1, 2008

Consider what happened with US occupation in Haiti, Nicaragua, and the Dominican Republic.

By Lawrence E. Harrison

(コメント) なぜドイツと日本は民主化できたのに、イラクやアラブ諸国では失敗したのか・・・? この論説は、アメリカが軍事介入や占領に関わった他の三つのケースをあげて考察します。すなわち、パナマ運河の安全を確保するためにカリブ海域で、1.タフト大統領が命じたニカラグアの占領、1912-33年。2.ウィルソン大統領が命じたハイチ占領、1915-34年、3.同じくドミニカ占領、1916-24年。

論説は、アメリカ政府がどれほど良い意図(!)を持って行った軍事介入と占領による民主化も、その地域の軍事的反抗をもたらし、占領を終えると民主的制度は崩壊した、と指摘します。民主的な制度と両立しないような<文化>に、制度だけを移植することは不可能だ、と考えます。

FT July 1 2008

Iceland pays price for financial excess

By Robert Wade

(コメント) 人口315000人の繁栄する小国、アイスランドはサブプライム・ローン危機を予言する「炭鉱のカナリア」でした。Wadeは、銀行の民営化と金融自由化、中央銀行の物価安定と短期金利のみに限定した金融政策、救済融資を約束された民間銀行の急速な企業買収と外資流入によるバブル拡大、その他、金融不安の完璧な箱庭が出来上がっていたわけです。

Wadeは、急速な金融部門の縮小と経済の縮小、支配政党の交代と北欧的な社会民主主義型の政策転換が起きることを予想し、歓迎しています。

BG July 1, 2008

Hopes for Bhutan

By H.D.S. Greenway

(コメント) ブータンの民主化について、面白い紹介記事です。王様が自ら王政を廃止し、立憲君主制に改めて、オックスフォードで学んだ息子による民主化を許し、ブータン史上初の民主的な選挙を行いました。こうして、ワシントンDCで踊りを披露し、無血革命と民主化の最新ケースとして宣伝するわけです。・・・なぜか?

インドと中国に挟まれたヒマラヤの秘境として、ブータンはイギリスに支配されていましたが王制として中世的な独立仏教国家になります。兵士よりも僧侶の数が多い国ですが、隣国のチベットやネパールで起きたことを見れば、決して安閑としていられなかったはずです。ネパールはフランス型の革命によって王政を廃止したが、ブータンはイギリス型を目指す、というわけです。

しかし、民主化すれば問題がなくなる、というのではありません。パキスタンがそうであるように、安定した民主国家への道は容易ではありません。急速な開放と市場化は文化を破壊し、腐敗と暴力的対立をもたらします。温暖化でヒマラヤの氷河が溶ければ、インドへの電力輸出ができなくなります。また、ネパールからの難民流入は土地問題を再燃します。

文化や自然を維持するために成長を意図的に抑制する、という福祉の基準による天上の理想国家は、21世紀にも生き残れるのか・・・誰にも分かりません。


FT July 2 2008

America’s president must back the Group of Twenty

By William Drozdiak

(コメント) 世界的な意思決定を行う正当な場を制度化するには、G8を廃止して、すべての大陸から代表を招いてG20とし、世界人口の3分の2、経済活動の90%を含める方が良い、という主張です。すなわち、G8に加えて、アジアから中国、インド、韓国、インドネシア、ラテンアメリカからブラジル、アルゼンチン、中東からサウジアラビア、アフリカから南アフリカ、です。


Rosa Brooks The founders' rights stuff LAT July 3, 2008

Patt Morrison Orwell, Wall-E and me LAT July 3, 2008

Sunny Hundal Marginal freedom The Guardian, Thursday July 3, 2008

George F. Will Independence Days WP Thursday, July 3, 2008

David S. Broder One Nation No More? WP Thursday, July 3, 2008

DAVID HACKETT FISCHER One New World, Two Big Ideas NYT July 3, 2008

(コメント) アメリカ独立記念日に寄せて。独立宣言やその理想にこれほど充実した論争ができるのは、アメリカが近代社会の理想を実現する試みであるからでしょう。それに比べて、日本の建国記念日や憲法記念日は、後ろ向きの評価に制約されていると思いました。

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The Economist June 21st 2008

The future of energy

The future of the European Union: Just bury it

Charlemagne: Democracy in Europe

Europe’s Roma: Bottom of the heap

(コメント) 未来。・・・エネルギーの未来。EUやアメリカの未来。ロマの未来。

石油価格の上昇に悲観ばかりせず、今度こそ新しいエネルギーの時代が開かれると確信すれば、これはブームの前兆です。しかし、特集記事には興味をひかれませんでした。

アイルランドの国民投票に関する考察です。EUの民主主義と、EUが抱える国家なきロマ民族。その貧困生活に驚きました。


The Economist June 21st 2008

Beijing Olympics: Limbering up for the game

Political segregation: The Big Sort

Mexico and the United States: A wary friendship

(コメント) 中国はオリンピックに向けた厳戒態勢を拡大し続けます。他方、アメリカ人が国内で政治的な分割によって移住しつつあるのは不安な兆候です。アメリカとメキシコの間でも、その歴史観には大きな齟齬があるわけです。


The Economist June 21st 2008

Vietnam’s economy: A funny way to beat inflation

Vietnam: Flu symptoms

Saudi Arabia: The puzzle of oil production

Short-selling: Nasty, brutish and short

The dollar: FEER of falling

(コメント) 絶好調のアジア経済を代表するはずのベトナム経済が、短期間に物価を急騰させ、さまざまな市場で暴落を引き起こしています。市場経済化による成果を維持するには、不安定化に耐え、市場を安定化する術も学ぶことです。サウジアラビア(だけ)が石油の供給を増やす理由は何か? 歴史や理念、政治情勢が重要です。

他方で、市場の変動をどう理解すればよいのでしょうか? 投機や売りに特化した業者が非難されますが、彼らの責任論を否定しています。他方、ドル安の水準は正しいのでしょうか? FEERは、最大にして最悪の市場である外国為替市場を理解する試みです。