IPEの果樹園2008

今週のReview

6/30-7/5

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

世界タウン・ミーティング、 米中共同覇権(G2)体制、 グローバル貧困対策、 北朝鮮イラン1,、 日本イギリスアメリカの指導者へ、 戦争するより子供のために学校を、 EUの漁船ストと、スウェーデンの学校改革

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


YaleGlobal, 19 June 2008

Time for a Global Town-Hall Meeting?

Jeffrey Garten

The Huffington Post, 23 June 2008

Waiting For Obama: The First Global Election

Derek Shearer

(コメント) 世界のさまざまな地域で、さまざまな問題に、影響を与えるアメリカ大統領の決定に、その影響によって生活が激変する人々が参加・発言できないことは、不当な政治的抑圧であると言えます。

アメリカの大統領候補は世界市民によるタウン・ミーティングを開くべきだ、というJeffrey Gartenの主張はこれに応えます。すでに、マッケインとオバマは114日の投票日までに10回のタウン・ホール・ディベートを行うと合意しています。例えば、その1回を、外国からのジャーナリストたちにも開放して、意見を聴くのが良い、というわけです。

二人は、実際にその問題に直面する諸外国からの参加者に対して、答えなければなりません。イラクの住民はアメリカの占領政策を質し、中国の新聞社はアメリカの保護主義を、メキシコからは移民の扱いについて、日本の記者は北朝鮮の核問題や拉致問題を尋ねるでしょう。他にも、キリバスやサモアは温暖化対策を、ジンバブエやミャンマーの人権団体は国際介入や選挙監視、国連軍について、エチオピアやソマリアは貧困と飢餓への取り組みを、パレスチナのジャーナリストは和平や独立、イスラエルの入植政策について、意見を求めるのです。

アメリカ政府が関与して、制裁措置を、あるいは支援策を採用する場合が、国際機関を介してでも、非常に多いわけです。たとえアメリカの有権者が新しい大統領を決めるにしても、諸国からの質問や意見に対する彼らの返答を聞いて、判断することは可能です。

世界主要メディア、たとえば、CNN,BBC,人民日報、アルジャジーラ、などの記者が参加し、世界に生中継するでしょう。ジュネーブやロンドン、シンガポールのような世界都市で開催し、主要な新聞社が記者を送るでしょうし、YouTubeを介して世界中から現地のビデオや意見が閲覧できるのです。

「指導者であることは支持者を従えることを意味し、指導者は支持者たちが何を考え、何のために協力しなければならないのか、理解していなければならない。」

あるいは逆に、Derek Shearerがしたように、アメリカ国務省は世界中の大学や町にスタッフを派遣して、新しい大統領となる候補者についての情報を伝え、彼らとの新しい関係を話し合うことができます。シリアの大学ではオバマのミドル・ネームがフセインであることや、母親がイスラム教徒であり、インドネシアに暮らしたことが人々を興奮させます。ペルーやボリビアでは、アメリカ外交に「進歩のための同盟」が再生すると期待します。彼は、カザフスタン、チリ、ニュージーランドにも行きました。

オバマを支える政治家や研究者の名前が列挙されています。そのメッセージは、進歩的なアメリカが再生する、ということです。しかし、さまざまな国際的関心を高め、意見を聞いたにもかかわらず、堕胎や同性婚をめぐる論争、銃規制の反対派によって新しい大統領が決まってしまえば、彼らの失望はさらに深まるでしょう。


Foreign Affairs , July/August 2008

A Partnership of Equals

By C. Fred Bergsten

(コメント) かつて日米経済の数値目標を主張して、世界経済の共同管理体制を唱えたBergstenは、日本の衰退と中国の台頭に応えて、その相手を中国に変えて、米中合作を考えます。

十分な規模と成長力を持っており、しかも、世界経済に密接に統合されていることで大きな影響を及ぼす国は、世界経済管理の主体として責任を自覚しなければなりません。それは、アメリカであり、EUであり、中国です。成長しないことや、直接投資を受け入れない点で、バーグステンやアメリカの指導者から見て、日本は重要な責任を担えません。貿易、通貨、成長、安全保障など、いくつかの基準を示して、この三つの主体が次の国際秩序を作ると主張します。

またインドについては、そのGDPが中国の半分しかなく、貿易額は中国の1年の増加分ほどでしかない、と、アジアの将来の秩序を決めるのは中国である、と指摘します。

ただし、中国はその重要性が明らかであるにもかかわらず、その政治経済体制が、発展途上国の、市場化も民主化もされていない状態にとどまっている、と強調します。これほど貧しく、市場が未成熟なまま、しかも非民主的な政治体制で、世界経済の管理を担う地位に就くというのは、歴史上、初めてのことです。それゆえ、中国が指導する秩序には、オランダやイギリスやアメリカが築いた国際秩序と異なり、現在の秩序を継承しながら修正できるか、市場の働きや主要国の民主主義を尊重するかどうか、強い不安があるわけです。

中国は、新興の強国として、既存の国際秩序に対するフリー・ライダーの利益を享受し続けて、まだ、その地位を続けようとしています。それは、かつて日本もそうであったように、たとえば、世界市場向けに輸出を伸ばすため為替レートを人為的に決めて、外貨準備を膨張させたまま外国に投資し、貿易自由化交渉や地球温暖化対策には後ろ向きで、貧しい国という立場を強調しています。国際秩序の維持に責任を果たすというより、国内改革を成功させるためには、国際秩序の利益だけを享受し、他方、国際的な制約を受けないようにする、という姿勢です。

バーグステンは、中国がその役割を引き受けるように促すには、アメリカがもっと積極的に中国を世界経済のガバナンスに迎え入れる姿勢が重要だ、と主張します。それが、米中のG2体制を支持することです。

もし積極的に中国を指導的な地位に就けなければ、中国はどうするでしょうか? ドイツや日本が国際秩序に進んで参加したのは、既存の国際秩序に近い国内体制があったからです。そうでない場合、たとえばロシアがその資源を利用して敵対的な形で国力の増大を目指しているように、中国も異なる国際秩序を、独自に、構築し始めるでしょう。「今はわれわれがあなたたちのルールで役割を演じなければならないことを知っている。しかし10年もたてば、われわれがルールを決めるのだ!」と、WTO加盟交渉の紛糾した場面で、中国側が発言したことを紹介しています。

少なくともアジアにおいて、中国は一方的な覇権体制を築く条件を備えています。その場合、貿易や金融、資源・エネルギーなど、国際秩序は地域的なブロックに分断されてしまう恐れがあります(世界の三極体制)。「アジア通貨基金」や「アジア共同市場」、という目標が、日本の外交政策を代表していた時代はすでに去って、アメリカから見るなら、今や中国によるアジア分割を意味する言葉です。

バーグステンは、既存のグローバル・ガバナンス(IMF,世銀、G7、など)が現実の変化を反映しておらず、改革を怠ってきたことに厳しい見方を示します。中国は、ガバナンスから排除されており、偽善的な合意形成や見せかけの発言を求められます。アメリカは、それを公然と唱えるなら、EUや日本と摩擦を招くでしょう。しかし、実質的に、米中間の合意で国際秩序を決め、米中政治経済圏を確立するのです。

それは「新しい大西洋憲章(太平洋憲章)」であり、新しいヤルタ会談です。(あるいは失敗に終われば、ミュンヘン会談です。)


New Statesman, 19 June 2008

Power v poverty

Duncan Green

(コメント) 民営化、自由貿易、市場メカニズム、・・・富裕な諸国と同じルールに従えば、貧しい諸国も豊かになれる、という主張が失敗した、とOxfamのDuncan Greenは考えます。最近の食料価格の高騰に対して、暴動が起きているハイチと、安定を維持するボツワナの比較を通じて、貧困解消には政治の在り方が重要である、と主張します。"Getting the prices right"よりも重要なのは"Getting the politics right"である、というのがボツワナや、改革に成功した諸国の教訓です。

ボツワナはダイヤモンドの産地であり、食糧を輸入できるのは当然だ、というのは間違いです。アフリカの多くの国は資源が豊富なために、いわゆる「石油の呪い」によって、政府が崩壊し、貧困に苦しみました。ボツワナは独立以来、一人当たりGDPが100倍になったという成功例です。

Greenによれば、ボツワナ政府はデビアスとの厳しい価格交渉を成功させ、その利益も正しく支出しました。ほぼ単一のエスニック集団が、合意形成を重視した政治体制を植民地時代から継承しました。それは民主主義ではなく、「穏やかな権威主義体制」と言われます。政府は「ワシントン・コンセンサス」を無視して、ダイヤモンドの採掘権を国有化し、6年ごとの開発計画を立てて経済を運営しています。

効果的な統治、有能な政府の条件とは、国民に教育を施し、領土を安全に維持し、投資や成長、貿易のための条件を整備することです。そして成長は、しばしば、土地や資産の再分配によって開始されました。そのような条件を満たす国家は限られていますが、マレーシアや韓国など、今は発展した経済を誇る国も、かつては政府がなかったと指摘します。国家は変わるし、そのカギは国民に権力を与えることである、と主張します。

1900年に成人男女が投票権を持つ国はニュージーランド一つでした。今では多くの国ですべての成人男女に投票権が認められています。貧困の解消も、同様に、政治改革をともなって広まっていくでしょう。スウェーデンやフィンランドのように、裕福な諸国でも政治・経済改革は必要です。食料や水が不足し、環境破壊が進む地球では、ますます無力な人々にも発言権を与え、改革できる国が成長します。

LAT June 22, 2008

Reinventing Rwanda

By Stephen Kinzer

(コメント) 政治改革が魔法の杖だとは思いませんが、しばしば無視される、重要な要因です。しかし、ルワンダの新政権が内戦を終結し、秩序と繁栄を回復する過程で、Paul Kagame大統領が行った支配体制は有名です。貧困から抜け出すためには、いわゆる人権を無視する必要があるのか? 歴史的な大虐殺のあった国が、わずか一世代で、アフリカのスイスと呼ばれる土地に変わりました。したがって貧しい国には、政治的自由と繁栄(欧米の理想)、あるいは、政治的腐敗・弾圧と貧困(欧米の描く失敗)、という二者択一だけがあるのではない、と考えます。

国民教育と最高級のインフラを整備し、人口制限、男女平等、保健医療制度、を実現しました。しかし、欧米の人権団体やEUはルワンダの政治体制を批判します。大統領選挙は行われても、対立候補がいません。オバマと同じように、しかし圧倒的な強権体制によって、カガメ大統領は「フツ族」や「ツチ族」を廃止し、一つの「ルワンダ国民」だけを認めました。今も、カガメの勢力が解放軍や政党を独占しています。

カガメは欧米の主張に反対します。彼らはわれわれが直面した問題の深刻さや広がりを理解していない。政治にとって人権問題はすべてである。部族間の抗争も含めて、人権抑圧によってできていた過去の植民地体制がおびただしい貧困をもたらした。われわれがそれを解決し、人権問題を解決するのだ。逆ではない、と。

LAT June 23, 2008

The price of hunger

(コメント) 世界の貧困解消にかかる費用はいくらか? LATは国連の推計を紹介しています。食糧危機に対して、発展途上諸国で生産性の改善に投資するなら、毎年300億ドルが必要です。栄養不良にある人口、8億6200万人の食糧支援には3000億ドルが必要です。300億ドルは大きな数字ですが、世界経済のGDPの1%の半分よりも少ない数字です。アメリカは210億ドルの援助を昨年行ったし、最近も1620億ドルをアフガニスタンとイラクの占領に費用として認めました。

あるいは、LATはこんな風に考えています。アメリカ政府は海外で反米感情を刺激してしまい、米兵へのテロ攻撃や米国人の誘拐、マクドナルドなど米系企業に被害が生じています。反米感情を和らげるために、米系企業は各国の貧困層や零細企業を支援しています。政府も、緊急援助だけでなく、長期的な食糧供給(そして分配・流通)の改善を目指します。そのことがアメリカの人道主義的な覇権国家というイメージを回復する方法になります。

企業は早くも高価格に対応して世界中の農地買収や長期契約に動いています。しかし、世界人口の半分が都市に住むようになった、と国連は報告しました。歴史上、貧困や飢餓は多くの人命を辺境において奪いました。彼らは黙って死ぬしかなかったのです。しかし、ますます彼らが都市に集まり、都市で飢えて死ぬようになっています。そのとき、彼らは黙って死ぬことはないでしょう。暴動を起こし、政府を転覆します。

将来の混乱を回避するために、300億ドルは決して多くないのです。

IHT Wednesday, June 25, 2008

Interconnected we prosper

By William J. Ameliothe chief executive of Lenovo

(コメント) 1990年から2004年に世界の「11ドル以下の生活水準」を示す人口が、中国で2億5000万人減少したという旧説を訂正し、4億700万人の減少であった、と世銀は発表しました。あるいは、ブルッキングズ研究所の推計では、2020年までに約10億人の中産階級が増える、というわけです。

裕福な諸国はそれを恐れ、国民を保護するべきでしょうか?

現代の、密接に市場統合し、インターネットで結ばれた、連結された世界を"Global 2.0"Amelio呼びます。工業力は世界中を移転し、結びつけています。優れた技術や知識も速やかに移動し、貿易であれ、投資であれ、技術であれ、移民であれ、それを規制する者はグローバリゼーションに取り残されるでしょう。その生産性の改善は、同時に、加速しています。

世界の富裕化や中産階級に対して、食糧や石油を奪い合う世界が来る、というマルサスの不安を、"Global 2.0"だけが克服できるとAmelioは主張します。


Charles Krauthammer McCain's Oil Epiphany WP Friday, June 20, 2008

JIMMY WANG For Chinese, the Reality of Higher Gas Prices NYT June 21, 2008

MICHAEL RICHARDSON Burden of subsidies grows The Japan Times: Friday, June 20, 2008

Ryan Avent A world less flat The Guardian, Wednesday June 25, 2008

Michael Gerson The Wrong Way to Kick An Oil Habit WP Wednesday, June 25, 2008

(コメント) 石油価格が上昇し、ロシアやベネズエラ、サウジアラビアに富が移転することについて、軍隊を派遣して外国からの石油供給を守るより、アメリカ国内の北極圏を採掘する方が良い、とマッケインは主張しています。しかし、そこは野生動物の保護区です。現代の最新技術による採掘は環境を汚染しないが、アメリカに輸出するナイジェリアの石油採掘は、政府が住民を強制的に立ち退かせ、多くの環境被害を出しています。安全保障、エネルギー、環境保護、人権問題、などがぶつかります。

補助金や政府規制によって石油価格を抑制していた中国政府により、石油供給企業は赤字を被り、国際的な圧力も高まっていました。その結果は、16%の価格引き上げです。しかし、石油価格の上昇は続いていますし、中国政府はインフレや国内社会不安を恐れています。中国は、日本を抜いて、アメリカに次ぐ世界第2位の石油輸入国になったと推測されています。

石油市場の安定化に様々な知恵を絞るG8にとって、消費や供給について協力する計画が進まない以上、価格上昇による消費抑制を妨げる各国の補助金削減は重要なテーマです。あるいは、石油価格の上昇がアメリカ都市社会の姿を変えるかもしれません。Aventの考察を参照。

莫大な富が移転されています。中東諸国の政府系投資信託は15000億ドルと推定されています。豊富な資金があるので食糧備蓄を増やし、そのせいで食糧生産国でも貧しい人々は食糧が買えなくなって暴動が起きています。産油諸国は、世界食糧基金やパレスチナ自治政府にも寄付しますが、自分たちの贅沢の一部でしかありません。アメリカや石油消費諸国をエネルギーを節約し、代替エネルギーの技術を開発しなければならないはずですが、協力して投資することは難しく、せいぜい国民の怒りを石油会社への臨時増税に向ける程度です。


The Wall Street Journal, 20 June 2008

Globalized Inflation

Joachim Fels

BG June 21, 2008

My dissent on the risk of inflation

By Robert Kuttner

FT June 25 2008

Fed cannot ignore global inflation

(コメント) 世界インフレーションが起きているのでしょうか? それは単に外国から輸入されるとか、国際商品価格が上昇している、というだけでなく。グローバリゼーションの一部として。

国際商品の供給条件が変わったのではなく、世界需要と世界貨幣供給が議論されています。アメリカ連銀だけでなく、日銀が登場することに驚きました。そういえば、銀行救済のために緊急融資を行っていたのはアメリカではなく、むしろ日本でした。他方で、ECBのように自国のインフレ目標を守るだけで、本当に正しい金融政策は実現できるのか?

1970年代との比較、投機への関心、インフレを抑えるには急激な金利引き上げで不況を起こすしかないのか? 必要なことはもっと別のことです。石油やエネルギーの節約。食糧生産の増加。さまざまな技術やインフラに投資するべきです。しかし、それがちっとも決まらない。その間に価格は上昇し続けて、賃金引き上げと物価上昇が循環するようになった。そして、中央銀行には貨幣しか手段がない。

あるいは、個々の不均衡から主要通貨の貨幣供給によって、世界インフレになってしまったのであれば、極端な危機を回避するために世界金融政策が必要なのです。世界中央銀行(そして世界通貨)がない現状では、主要黒字諸国と主要国際通貨の中央銀行が集まって、たがいの政策目標を調整しなければなりません。かつて為替レートの協調介入から金融政策の間欠的な協力が模索されたように、今や、世界金融政策としての中央銀行間協力が模索されます。

アジア諸国の通貨がドルから切り離されて増価するとき、ドルからの資本流出を招きます。協調体制は、金融危機ではなく、調整過程としてそれを支持するわけです。


IHT Friday, June 20, 2008

'What's wrong with selling kidneys?'

By Sally Satel and Nadey Hakim

(コメント) 臓器の国際売買を自由化するべきか? それは自由に売買されてもよいのか(合法化)? それは自由貿易によって相互に利益をもたらすものか?

もし臓器の疾患で命を落とす、あるいは、著しい生活上の苦痛を味わっている人が、十分な代償を支払って、健全な臓器を買収できるなら(つまり、売ってもよいという人がいるなら)、それは双方の利益ではないか? 国内の需給はあまりにも食い違っており、当然、それは結果的に国際間の所得格差、経済的な機会の格差を利用して合意されます。自分の臓器を売るしか、まとまった収入を得る見込みのない人々が、世界にはまだ多くいるでしょう。

それを禁止し、非合法化しても、それを阻止することはできないでしょう。そうであれば、国際管理型の売買を公認する方が良いかもしれません。


BBC 2008/06/26

Why N Korea has handed its data over

By John Sudworth

(コメント) アメリカ政府はなぜ北朝鮮と合意したのか? いわば、東アジアの秩序を米中二極で決める最初のステージが始まったのかもしれません。FEERの記事も、米中がこの「成果」を誇大に見せ過ぎていると批判します。過去の核爆弾も、ジンバブエやスーダン、ミャンマーに勝るとも劣らないと思われる北朝鮮の人権を無視した支配体制も、そのままです。アメリカはブッシュ政権の外交の失敗を償い、政権末期の帳尻を合わせるのではなく、同盟諸国と一致した東アジアの安全保障体制について、明確な目標と実現プロセスを示さなければなりません。

記録文書は、現地調査や残留物、関係者による詳しいインタビューがなければ検証できません。そのような過程を無視したり、アメリカだけが秘密裏に検証を終えたなら、東アジアの核拡散を加速させ、アメリカを中心とした安全保障体制、あるいは6カ国協議の意味も消滅するでしょう。

FT June 26 2008

A very small step

WSJ June 26, 2008

Diplomacy Is Working on North Korea

By CONDOLEEZZA RICE

(コメント) ブッシュ政権の激しい北朝鮮批判は何だったのか? これがイラク戦争を経てたどり着いた北朝鮮外交の成果でしょうか? 1万8000ページの記録と、冷却塔の爆破処理中継。FTも、これは直接の軍事衝突よりはましであり、制裁によって疲弊しつくした経済に縛られる人々にとって援助はいくらかの幸いかもしれないが、外交的成果とはほど遠い、と判断しています。

もちろん、そんなはずはない、というライス国務長官の論説も読んでください。北朝鮮は非核化することで安全保障と援助を得られる、あるいは、多角的な監視と制裁が行える、という主張は繰り返されてきました。それに従う気配がなかったのは、金正日体制を守りたいからです。ライス女史は答えていません。


Threats to and from Iran BG June 21, 2008

H.D.S. Greenway Obsessing about Iran BG June 24, 2008

David Miliband Diplomacy must work IHT Tuesday, June 24, 2008

Jonathan Freedland The west has to tackle Tehran - before Israel sends in the bombers The Guardian, Wednesday June 25, 2008

(コメント) イランとの交渉はどうでしょうか? ブッシュ政権末期に、イスラエルと協力して核施設への空爆を行うのでしょうか? オバマもマッケインも、イスラエルがそれを望むなら、むしろブッシュに責任を取ってもらう方が良い?

しかし、イランは北朝鮮と違って、民間の経済活動が行われ、反政府勢力も存在します。そして、イラクも含めた地域安全保障の交渉に応じる意欲があるようです。軍事力や制裁ではない多くの選択肢があるのではないか、と思います。たとえ、ライス国務長官やゲイツCIA長官がそう考えても、チェイニー副大統領が政権内部の駆け引きでイラクを攻撃する承認を得るかもしれません。

パキスタン核兵器開発の英雄、カーンAbdul Qadeer Khan博士が、世界各地のコンピューターに小型核兵器開発の設計図を送った、というのですから、北朝鮮やイランは序章に過ぎません。


BG June 21, 2008

Awaiting Japan's global vision

By Richard J. Samuels

(コメント) 日本の指導者たちが何をしなければならないかを知っていた時代があった。Richard J. Samuelsの厳しい批判は、全くその通りです。これはアメリカから見た、日本待望論であり、日本消滅論です。(絶滅危惧種、などと書くと、死神みたいかな?)

・・・日本の指導者たちは混乱し、アジアや世界が日本の役割を期待しているときに、何も積極的な意見や行動を示さない。アメリカは日本の自衛隊が協力することを期待し、中国は四川大地震に自衛隊の救援機を示唆した、というのに、日本では国会が紛糾し、裁判所が違憲判決を出し、アメリカに安全保障を依存した状態から抜け出すという議論をしながら、防衛支出は大きく減少してしまった。今では、誰も日本が重要な国であるとみなしていない。

FT June 25 2008

Japan wants it both ways on tax

By David Pilling

Asia Times Online, Jun 26, 2008

Japan, through the US looking glass

By Gavan McCormack

(コメント) 日本の政府が国家としての役割を果たせないように思うのは、安全保障だけでなく、医療・年金問題でも解決策を示せない点で明らかです。教育制度や若者の意欲でもそうです。唯一、インフラ整備や地方の雇用確保を仕事にしていたはずですが、これも大幅な失策の山を見過ごせない時代になりました。

Pillingは、日本人が税負担に不満を抱いているけれど、税負担は総所得の30%以下と、OECDでは最も低い水準に近く、アメリカにほぼ等しい、と指摘します。日本は、アメリカ型の税制と、スウェーデン型の社会福祉を目指して破たんした、と言われますが、日本の社会福祉や行政サービスは国際比較で見て貧弱です。急速な高齢化に向けた準備はどうなったのでしょうか?

消費税を引き上げることを議論できないまま、財政赤字を理由に給付を減らすばかりであった、と批判されます。自民党は支持者たちから、75歳以上の後期高齢者医療制度をめぐって強い反発を受けました。官僚たちは消費税の引き上げを求めており、また、好況にもかかわらず企業の支払う税金は少な過ぎた、と言われます。単に増税するよりも、むしろ家計の支出を促し、雇用を増やすような方策が望まれます。それが低利による公債の発行と社会福祉の充実だ、というのは、何か物足りませんが。

アメリカの「リベラル」は意味がねじれていますが、日本の「保守派」や「ナショナリスト」も意味が変です。McCormackは、日本の戦後秩序を民主化し、大きく転換したのが「保守派」であり、日本をアメリカの従属的な地位に抑えるのが「ナショナリスト」であった、と考えます。アメリカは、小泉=安倍の「保守派」「ナショナリスト」を支援することによって、日本を東アジアのイギリスに変えよう、と望んだのです。

FT June 25 2008

There is no global mercy for Brown

By David Runciman

(コメント) 地方選挙に敗北したイギリスのブラウン首相が打ちのめされた様子について、政治学者のDavid Runcimanは考察します。

フランスもサルコジ大統領も、日本の福田首相も、同様に、太刀打ちできない世界的な変化に対して無力さを示し、支持率の急落に打ちのめされています。彼らは自分たちが対処できないような課題について成果を求め、当然、無能さを露呈し、有権者が求める改革の失敗について責任を問われています。

全員が同じように非難されているのではありません。スコットランドやオーストラリアの新しい指導者たちは、支持を持続しています。彼らは有権者に対して、大きな課題に対する制御能力を自国が持っていないことについて、了解されています。その状況においても、一定の政治的な発言や成果を上げてきたのです。

ブラウン首相は、自分がイギリスにふさわしい指導者であることを受け入れられるように、アメリカやEUに対して発言・行動しなければなりません。しかしそれは必ずしも、さまざまな国際サミットに出席して大きな課題に挑戦し、新しい敗北を重ねることではないわけです。

FT June 26 2008

A new world for America’s next president

By Robert Hormats and Jim O’Neill

(コメント) Robert Hormats and Jim O’Neillは、アメリカがグローバリゼーションとBRICsの台頭に応じる政策を求めています。グローバリゼーションがアメリカの競争力や所得を高めるように、またその犠牲になったものに社会保障や雇用機会を与えるように求めています。同時に、アメリカは内外の不均衡を修復し、自律した、健全な経済を回復しなければなりません。将来の成長のためには、教育や研究開発にもっと投資し、インフラを充実させなければなりません。そして、BRICsが台頭した新しい国際秩序を安定化するために、国際機関や制度の見直しに積極的に取り組みます。

何度となく紹介してきた考え方です。これがアメリカの指導層に広がるアイデアです。


Asia Times Online, Jun 21, 2008

No longer just goodies for the top 1%

Julian Delasantellis

Asia Times Online, Jun 25, 2008

US regulator needs regulation

By Hossein Askari and Noureddine Krichene

(コメント) The Trillion Dollar Meltdown - Easy Money, High Rollers and Great Credit Crash by Charles R Morris の書評です。Delasantellisは、ケインズ主義がその輝きを失ったのは、1970年代半ばのニューヨーク市の財政破たんであった、と書いています。そして、1979年にサッチャー、レーガンと、ポール・ボルカーが登場します。

ボルカーとフリードマンがインフレ抑制と反ケインズ主義革命を成功させたのと同じように、今や証券化とリスクの分散についての信仰は金融危機を生じて、富裕層と保守派が広めた反ケインズ主義革命を終わらせました。

アメリカの金融制度は、再び規制を強めるのでしょうか? なぜなら、世界中を恐れさせているインフレの脅威はアメリカが救済融資のために注ぎ込んだドルと金融緩和政策によって実現したからです。金融危機を回避するためにドルを供給し、またバブルを生じて危機を発生させる、という悪循環を逃れるためには、市場を通じた調整だけでなく、有効な金融規制が必要です。

中央銀行に独立性を与え、インフレ目標でその行動に規律を与えれば、市場はインフレを起きないものとして行動するはずでした。しかし、金融市場が投機とバブルに毒されてしまえば、中央銀行の示す金利や預金準備率では効果的な金融調整を促せなくなります。また、アメリカの金融危機を回避するために世界インフレが放置されます。

金融市場と中央銀行の健全な規律を回復する規制が必要です。

NYT June 22, 2008

Can the Fed Answer All the Alarms?

By BEN STEIN

(コメント) 1970年代の失敗を繰り返すことはない、とバーナンキはハーヴァード大学で講演しました。BEN STEINには異論があります。1.ポール・ボルカーは大統領の信任が篤く、インフレ退治の成果で市場に重視された。バーナンキは? 2.イスラエルはイランを空爆する。石油価格の上昇と不況が起きる中で、金融緩和の政治的圧力が強まる。3.政治家は皆、ポピュリストであり、メディアは事件が好きだ。バーナンキも新聞やテレビを見る。


WP Saturday, June 21, 2008

Getting Past Mugabe

By Mark Bellamy and J. Stephen Morrison

LAT June 24, 2008

Getting Mugabe out

BG June 25, 2008

Who will have the courage to save Zimbabwe?

By Robert I. Rotberg

LAT June 26, 2008

Playing God with Mugabe

By Timothy Garton Ash

(コメント) ハイパー・インフレーションと失業率80%。

ジンバブエのムガベ体制崩壊を促す欧米の要求は続いています。ムガベ大統領は再選を目指していますが、それは28年間にわたって経済を破滅させ、憲法や法律を無視した支配者の延命策でしかなく、ジンバブエだけでなく、アフリカ全体を不安定化する、と反対派は主張します。どのようにムガベを権力から遠ざけるのか? 南アフリカのムベキ大統領がムガベの支持を改めることだ、と考えます。

アフリカには過去にも独裁者の支配する国が存在し、目に余る破壊や腐敗、虐待、窮乏化を長年にわたって維持しました。国連安保理やアフリカ統一機構を前提に、アフリカの民主的な指導者たちがこうした「伝統」を不可能にしなければなりません。

あるいは、タンザニアのニエレレが軍隊を送って、最終的に、ウガンダの独裁者イディ・アミンを失脚させたように、誰かが国際的な軍事介入を組織しなければならないのでしょうか? しかし、南アフリカが反対すれば、他の隣国も軍事介入はできません。アメリカやイギリスは介入する意思をもつけれど、アフリカ諸国を無視した一方的介入は行えません。

Timothy Garton Ashは、軍事力以外の方法を考えます。もし可能であれば、それは国民が投票でムガベ再選を否認することです。また、南アフリカのANCがようやくムガベを批判しました。野党の指導者は、アフリカ連合や国連が選挙を監視し、政権移行を助けるように求めています。しかし、ムガベは再選を確信しています。「神に祈るか、銃を取るか。」「投票か、銃弾か。」

ジンバブエの外からできることは、国連安保理による制裁を強めること、新政権を承認しないこと、イギリス王室がムガベの爵位を否定する、地域に普及している新聞においてインターネットで投票する、ハイド・パークで開かれるマンデラ90歳の誕生パーティーに参加し、ムガベ退陣を求める演説を支持する。


NYT June 22, 2008

India Growth Outstrips Crops

By SOMINI SENGUPTA

(コメント) 「技術と正しい政策が行われていればインドは世界を養える。しかし、現実には世界からの食糧輸入に頼っている。」

「緑の革命」とその後の変化について考察し、「第二の緑の革命」を求める論説です。


NYT June 22, 2008

What Happens if Wee Wrong?

By Peter L. Bernstein

The Observer, Sunday June 22, 2008

If we rely on free markets, we are looking disaster in the face

Will Hutton

(コメント) 住宅価格の異常な上昇に対して、金融市場は価格予想が間違っている場合のリスク管理に失敗しました。

イギリスでも住宅市場は機能しなくなっているようです。買い手はさらに下落することを予想し、売り手は下落した価格で、債務を残したまま売ることができません。金融市場や住宅市場を自由化してきた人々の熱気は失われました。「競争は効率を改善し、経済的利益を広める。しかし、銀行間の競争はそうではない」と、Huttonは批判します。銀行や住宅貯蓄組合が競争して融資を増やすと住宅価格は上昇し、融資の健全性を維持したように見えながら、現実には、融資対象の質が悪化していました。

住宅バブル破裂後の処理について公的介入を求め、Huttonはアメリカを称賛します。すなわち、金利を下げて、公的な保証機関を通じて住宅融資を増やしたことです。イギリスと違って、住宅市場の調整機能が維持された、というわけです。


WP Sunday, June 22, 2008

A New Social Contract

By Michael Kazin and Julian E. Zelizer

(コメント) 民主党も、国民との新しい社会契約を目指すべきだ、と論説は主張します。その要点は、アメリカの中産階級を守り、生活を改善する、ということです。それと同時に、共和党と異なる、外交政策の方針を示すこと、です。民主党の政策が信用を損なったのは、ベトナム戦争と経済運営の混乱、インフレでした。内外においてリベラルな目標を掲げても、国民の生活改善と外国における戦争は両立しません。国民に最も支持されたF・D・ルーズベルトの社会契約を手本として。


FT June 22 2008

How the food crisis could solve the Doha round

By Jagdish Bhagwati and Arvind Panagariya

The Japan Times: Monday, June 23, 2008

The global food crisis: It's time to empower the world's have-nots

By KEVIN RAFFERTY

(コメント) 世界市場は食糧危機の原因なのか、あるいは、解決策なのか? Bhagwati and Panagariyaは、貿易自由化交渉が解決策になる、という主張を検討します。

ロバート・ゼーリック世銀総裁の発言や、スーザン・シュワブ米国通商代表の消極姿勢にもかかわらず、Bhagwatiたちが支持するのは、食糧価格の高騰が欧米の農業補助金を貿易自由化交渉の障害から取り除くことだけです。アルカイダとの戦いによって支持される理由も、食料価格の引き下げにつながると言って支持する理由もありません。

KEVIN RAFFERTYは、短期的要因、オーストラリアの旱魃や中国・インドの需要増から、長期的要因、世界人口増と水や石油の不足まで、食糧危機をもたらしている重層的な構造を見ます。その上で、解決策が「持つ者」と「持たざる者」との政治対立にかかっている、と主張します。他の分野よりも農業では、より多くの既得権が改良を阻んでおり、政治的介入や制度的障害、補助金によって供給が決められています。

中間的な商人や国際取引における搾取や、独裁者の腐敗した政治構造を改革しなければ、本当に貧しい者にとって食糧危機は解消されません。


BG June 22, 2008

A world without children

By Jeff Jacoby, Globe Columnist

NYT June 26, 2008

Books, Not Bombs

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) 1965年、イタリアの人口5200万人のうち460万人、9%が、5歳以下の子供でした。10年後、その数は430万人、7.8%に減少し、1985年には300万人、5.3%、そして今日、子供は250万人、4.2%です。2050年には130万人まで減少すると予測されています。日本の少子化現象がそれに劣るとは思えません。

女性たちはますます子供を産まなくなっています。出産や育児は、労働の機会や自立した所得、自由なセックスに比べて、重要ではなくなったからです。離婚率は急上昇し、多くの子供を育てる家庭など見られなくなりました。

子供が減って労働者が不足すれば、失業率は低下し、賃金が上昇して、多くの子供を育てようとするか? と言えば、そうではない、という例として日本が言及されます。高齢化する社会は若者の雇用を生み出すことなく、税負担を増やします。子供たちの消えてゆく社会を「人口学的な冬」として描くドキュメンタリーが作られました。

イラクは、戦争と殺りくによって、急激な人口減少を続けています。子供のいない国の促成栽培です。イラク人はどこに行ったのか? ダマスカスの売春宿や、東アンマンの貧民窟です。21世紀の民族流出、新しいパレスチナ人が生まれつつある、とKRISTOFは訴えます。子供たちは学校に行くこともできず、売春宿や貧民窟に滞留します。

もし本当にイスラム原理主義と闘うのであれば、保守強硬派が言うようなイラクの恒久的軍事基地を建設するより、子供たちのための学校や図書館を建設するべきだ、と。アメリカ政府には、自分たちが決めて侵攻し、破壊した人々の暮らしを再建する責任があります。しかし、難民が増えて、永住化することを恐れる受け入れ国の政府は、彼らを助けません。人口の8%、600万人が流出したと言われますが、アメリカが受け入れた数は1608人です。

「ブラックホーク攻撃用ヘリコプターを与えるのではなく、学校を建設して、給与を支払うことだ。」 本当は、子供のいない社会から貧しい人々の子供たちのために、爆弾を降らせるのではなく図書館を建設する方が良いのです。子供の住めない国から子供のいない国に、避難し移住する方が良いのです。


NYT June 23, 2008

Treaty on Ice

By JOHN B. BELLINGER

(コメント) 無法社会においては、力だけが法である。占領したものが所有を宣言する。略奪することも止められない。熱帯のジャングルか、広大な砂漠の真ん中、峻嶮な山岳地帯の彼方、あるいは・・・北極圏。だから国家が分割する方が良い。

周辺の5カ国が資源を奪い合っているのですが、莫大な地代を得るのが彼らでなくてもよいはずです。当然、南極大陸と同様に、土地が無く、しかも無人の北極圏に、<独立国>の地位を認めて、国際的な代表統治機関が民間との開発契約を代行すればよい、と考える研究者たちもいるわけです。

周辺諸国の会議が求めるのは、当然、そのような解決策ではありません。


BG June 23, 2008

If poison gas can go, why not nukes?

By James Carroll

FT June 24 2008

America looks to a nuclear-free world

By John Kerry

(コメント) 毒ガスが国際条約によって使用を禁止された(そして主要国は守った)のに、核兵器がいまだに禁止されていないのはなぜでしょうか? 第二次世界大戦で、ドイツの強制収容所や日本がアジアの戦場で利用した、という例外を指摘しつつも、人道主義より報復の恐怖によって、毒ガスは兵器として使用されなかった、と主張します。 化学兵器も禁止され、廃棄されました。核廃絶が理想主義者の夢ではなく、リアリストの戦略として認められるには何が必要でしょうか?

ひとつは、もちろん、主要な核保有諸国の国民が、広島と長崎の原爆資料や平和教育に、毎年、大規模に参加することでしょう。アメリカ政府はその加害者であることから、戦後の核廃絶にも消極的であったと思います。

民主党の大統領候補としてブッシュと争ったJohn Kerryが、第44代のアメリカ大統領に向けて、超党派的な課題として核廃絶を取り上げるよう唱えているのは興味深いです。安全保障担当の大統領補佐官を指名し、核廃絶を実現する「逆・マンハッタン計画」を実行します。それは外交政策の行き詰まりや、アメリカ国内政治の党派対立を解消する、新しいテーマになります。


FT June 24 2008

How to see world economy through two crises

By Martin Wolf

(コメント) 主要国間で世界経済の基本的な政策調整について合意が得られないのは、二つの困難な問題に直面しているからです。一つは、国際金融市場の危機(住宅市場の価格下落)によるデフレの脅威。もう一つは、石油や食糧の価格高騰がもたらすインフレの脅威。

本当にグローバリゼーションが世界市場を統合しているのであれば、これらの不均衡は市場に媒介されて調整を加速するはずです。実際には、それが国境や通貨建の異なる資産市場を超えた、投資や貯蓄の再分配をもたらします。そのためには、地域によって異なった金融政策と、それに対応した為替レートの調整が必要です。また、貧困層に対するショックを緩和する措置が必要です。

Wolfは、資源制約の方が長期的に重要な調整課題である、と主張します。金融市場の危機は回避できるし、短期的なショックです。デフレ回避を重視して、エネルギー危機の長期的課題を見失うことは重大な失敗です。


WSJ June 24, 2008

Watch Out for Sovereign Debt Risk

By CARMEN M. REINHART and KENNETH ROGOFF

(コメント) 外貨建て債務への依存や、インフレによる競争力の喪失、資本逃避やドル化が抑えられれば、新興諸国の経済は安定するのでしょうか? 自国通貨建のインフレ調整される国債によって、財政赤字を賄うようになったから、新興諸国に債務危機は再発しないだろう、という主張を批判しています。激しインフレになれば、国内債務もデフォルトされ、返済条件が変更されます。


WP Thursday, June 26, 2008

Coalition Of the Ineffectual

By Richard Perle

(コメント) 他方、アメリカのネオコンは何を主張し、何を目指すのでしょうか? イランや北朝鮮との交渉を優先するライス国務長官に対して、多角的な協力は失敗する、と断言します。

ブッシュ政権に対して、国際条約を拒んで、多角主義を否定した、という非難が繰り返されました。しかしパールは反論します。多角主義は目的ではない、と。多角主義を取ることが、それだけで美しいわけではなく、何らかの目的を実現するための手段として役に立つかどうか判断するべきである。そして、イランの核兵器開発は多角主義では止められなかった。

ロシアも、ドイツも、中国も、イランの核兵器開発を本気で止める気などない。交渉の傍らで、彼らはイランと貿易し、武器を輸出し、核開発を支援してきた。多角主義は核兵器を阻止する枠組みとして失敗したから、ブッシュ政権は拒否したのである。


FT June 26 2008

Bridging the gap

(コメント) イギリスの男女間賃金格差をなくす法律the Equal Pay Actについて、格差が残る現状を改善するため、政府は雇用主に賃金を説明する多くの情報を公開するように求めました。昇進に関する格差や、産後の復職機会についても同様に、彼女たちが交渉するための情報が必要です。そして、法律によって争うと同時に、不平等な企業からは優れた女性労働者たちが流出し、より平等な企業に移動することが望まれています。

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The Economist May 14th 2008

The Federal Reserve and the European Central Bank: Hawk alert

Iraq starts to fix itself

Populist politics in China: Why Grandpa Wen has to care

Ethiopia: Will it ever be able to starve off starvation?

(コメント) アメリカ連銀とヨーロッパ中央銀行が金融政策の方針で不確実さを増しています。新興諸国のインフレとともに、欧米間で発言がインフレ抑制強硬派に向かい、競って引き締め過ぎるかもしれない、という不安が市場を動かします。

イラクも、中国も、エチオピアも、その抱える問題は異なりますが、政治の責任と変化に期待されるものは大きいのです。


The Economist May 14th 2008

Charlemagne: Fishy tales

Private education: The Swedish model

(コメント) 面白い記事はこの二つです。

石油価格の上昇と過剰な漁獲を規制する介入が漁師たちの不満を強めてストライキです。結局、より悪い解決策を政治家たちが取るかもしれません。すなわち、1.燃料価格の上昇分を補助金で補償せよ。2.EUの漁獲割当上限を引き上げよ(撤廃しろ)。3.魚の輸入を規制せよ。

どれも当然の要求に思いますが、論説は否定します。要するに石油価格の上昇は価格調整として受け入れなければならず、漁業技術が向上してしまったから過剰な漁獲量を規制しなければならず、長期的には漁船が減るべきであり、また、市場を分割・規制しても解決策にならない。獲りすぎで魚が減ったから、ますます遠くの漁場に移り、多くの燃料を使っているのです。

スウェーデンの学校に自由市場を導入する、というのは、いかにも興味を引きます。基準を設けて自由化し、利潤を上げることも認めたが、せいぜい語学学校などであろう、と考えていた政治家は、民間の学校チェーンが成長するのに驚いています。IKEAかマクドナルドのように、Kunskapsporten (“Knowledge Portal”) 社は200年に4つの学校を開校し、すでに30校を運営します。

ウェブ上に完全なシラバスを示して、毎週15分教師は生徒と個人面談し、学習計画を立てます。講義形式もあれば、さまざまな小規模クラスもあり、一人ひとりのレベルと時間に合わせて自由に学習することを許しています。各科目は35段階に分かれ、25段階を超えた者は合格です。教師の労働条件や報酬についても、民間企業の効率性が適用されます。

親たちがこの学校を支持するのは、子供に関する情報量が多いことのようです。