今週のReview
6/16-6/21
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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******* 感嘆キー・ワード **********************
ドル安への関心、 アメリカの覇権後、 世界インフレーション、 グローバリゼーションの擁護、 ドイツ経済の復活、 祝オバマ候補1,2、 日本企業のガバナンス問題
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor, WSJ:Wall Street Journal Asia
FT June 5 2008
Dollar not a dirty word for Bernanke
June 6 (Bloomberg)
Dollar Policy for Dummies, Dimwits and Dolts
Caroline Baum
June 6 (Bloomberg)
Dollar Peg Should Be Buried to Beat Inflation
Michael R. Sesit
WP Friday, June 6, 2008
Dollar Sense
(コメント) 為替レートについてバーナンキ議長が発言したことについて、これほどショックを受けなければならないのは、アメリカの金融政策や国際通貨システムの原則にかかわることだからでしょう。しかし、「ビナイン・ネグレクト」の時代ははるか昔です。
FTは、(インフレ目標論者の)バーナンキがドル安の水準に言及しても悪いことではない、と弁護しています。しかし、もちろん、為替レートは金融政策の目標にならない、と繰り返します。では、クリントン政権下のドル安誘導が引き起こした混乱後、ルービン財務長官が主張した「強いドル」政策とは、いったい、何だったのか?
むしろ、発展途上国や日本ほどではないけれど、アメリカも為替レートを重視しなければならないのは当然です。ドルが国際通貨として通用しているから、アメリカは為替レートによる調整政策を取れない、取るべきではない、と考える条件は失われたのです。金準備、工業生産、世界貿易、GDP、外貨準備、外為市場の取引額など、しばしば議論されます。かつて、かつて世界の非植民地化が重要なテーマであったように、今では世界の非ドル化が重要になるわけです。
Caroline Baumは、「金利は、穏やかな成長と安定した物価とをバランスした適当な水準にある」というバーナンキの吐く呪文に辟易します。連銀議長も、さすがに、もはやインフレ・ターゲット論者ではないのです。金融システムが崩壊する危機、しかも国際的に波及する危機を経験し、国内の景気が悪化し、失業者の増加を食い止める圧力が金融政策にかかり、しかも、ユーロに対するドルの暴落を阻止して、産油諸国や中国からの投資を持続させなければなりません。
アメリカも、日本やイギリス、韓国、ブラジル、などと同じように、ドルは安い方が輸出が伸びて景気を維持するとか、ドルは強い方がインフレそして賃金を抑えるとか、考えるわけです。何が悪いのか? ・・・そして、誰が、どうやって世界の通貨供給を決めるのか?
バーナンキ発言の背景には、為替レートや不均衡の調整問題、世界金融政策をめぐる欧米間の長い論争があるわけです。アメリカは最後の手段としてだけ、欧日との国際政策協調や共同監視体制・市場介入を話題にします。世界のドル残高やドル投機・短期資本移動について、一時的なグローバル・ガバナンスを受容するのです。
しかし、為替レートのために、あるいは、世界インフレのために、バーナンキが金利を変えるでしょうか? それが肝心な点であり、あり得ない、それゆえ、為替レートに言及することはない、となります。・・・ルービンが認めたような、ドルからの資本逃避が起きて、債券価格が暴落しない限り。
Michael R. Sesit は、世界の新興市場諸国が再建ブレトンウッズ体制Bretton Woods IIから離脱するときだ、と主張します。ただし、もちろん混乱しない形で。それは世界の石油・食糧価格高騰と金融危機に対する新興市場からの答えにもなります。
確かに新興諸国は、Bretton Woods IIの下で、アメリカの金融政策を輸入し、為替レートを安定させたまま金融緩和や直接投資の誘致、輸出増大を実現してきました。それは世界に失業やデフレを輸出すると言われましたが、今ではインフレを輸出しています。アメリカが金利を下げ、ドル安を進めているときに、新興諸国がその政策を輸入し続けることはできません。
世界の各地域は、ドル本位制によって満足できるわけではなく、それを補償する財政移転のメカニズムもありません。ユーロ圏が拡大するとき、金融政策決定への参加と財政移転メカニズムも合意されます。他方、ドル化は一方的に行われ、また、破棄されます。
バーナンキが言及したのはこの点でしょう。ドルの水準については、ドル圏とも関心を分ち合いたい、心配していますよ・・・と。
Asia Times Online, Jun 7, 2008
It's not a dollar crisis, it's a gold crisis
By Antal E Fekete
June 9 (Bloomberg)
Fed Not in It to Back a `Strong Dollar' Policy
John M. Berry
WSJ June 9, 2008
The Weak-Dollar Threat to World Order
By JUDY SHELTON
(コメント) ドル危機について、Antal E Feketeは考察しています。ドル建の債務を金によって保証していたはずのアメリカが、金との交換を停止し、金を廃貨した。それはアメリカ自身がデフォルトして、借金を棒引きする交渉を開始するための爆弾であり、茶番でした。今回も同じです。
しかし、Feketeの考えでは、アメリカの一方的な外国へのコスト転嫁も、時間がたてば失敗であったと分かったわけです。変動レート制が不均衡を解消する、というM.フリードマンの神託は間違っていたし、アメリカ産業は競争力を失って衰退してしまいました。特に、価値のない債務を膨らませて利益を上げる銀行業の退廃はひどかった、と。
現代の危機も、アメリカのFRBによる世界金融管理が生じた危機です。それは石油・食糧危機ではなく、ドル危機ですらない。ゴールド・クライシスである、とFeketeは主張します。紙きれの債務で投機的なゲームを楽しみ、破たんする金融機関を紙きれのドルで救済し続けることを許すのは、その価値を保証するもの、金準備がないからです。
アメリカが、第二次大戦後のイギリスのように、ドルの対外価値を大いに気にするのはいつからか? もう始まっているのかもしれません。
変動レート制なのですから、しかも、資本移動を自由化しているのですから、不況を回避するためにも金融緩和でドル安が起きるのは当然です。問題は、ドル建資産からの逃避が起きる可能性でしょう。だからこそ、ECBの金融政策(そして中国の分散投資)が気になるわけです。
JUDY SHELTONによれば、議論は混乱しています。アメリカ人はヨーロッパが自分たちに税金をかけていると感じ、不満を示します。ヨーロッパの製品がユーロ高の影響で高価になり、ヨーロッパ旅行の費用も高い、というわけです。もちろん、消費者ならそうです。しかし、ヨーロッパ企業はアメリカ企業に比べて競争力を失い、不満を感じているわけです。アメリカ企業は不当に競争力を得ている、と思うでしょう。
また、同じ自由な資本主義体制を守る費用を正しく分担していない、という不満をアメリカ人は強調します。自由な市場と、安全保障をめぐる軍事的なパートナー。こうした問題を完結するには、R.マンデルが主張するように、EMUと同じような、アメリカ、EU,日本が、一つの通貨・軍事同盟に参加する合意を形成するしかない、と結論します。
Foreign Affairs , May/June 2008
By Fareed Zakaria(Editor of Newsweek International)
(コメント) Foreign Affairs に載ったFareed Zakariaの論説です。
1897年、ヴィクトリア女王が在位60周年を祝ったとき、大英帝国は頂点にありました。そして、その後の帝国解体の歴史を、現在と将来のアメリカに重ねて解釈することが、しばしば注目されるわけです。
「抜け目ない戦略的な選択、洗練された外交を駆使して、イギリスは何十年もその影響力を維持し、拡大した。しかし結局、経済的・技術的なダイナミズムにおいて、そのパワーが急速に失われる事実を変えることはできなかった。イギリスは華麗に、しかし容赦なく、衰退した。アメリカは、今日、全く異なる問題に直面している。アメリカ経済は(現在の危機にも関わらず)、他国と比べて、基本的に活力に満ちている。アメリカ社会には活気がある。機能不全に陥っているのは、アメリカの政治システムだ。将来に向けてアメリカの非常に堅固な足場を築くであろう、比較的簡単な改革も行えない。ワシントンは、その周りに興隆する新しい世界を概ね意識していないし、新しい時代に合わせて政策を転換する気配もない。」
イギリスはボーア戦争によって、アメリカはイラクとアフガニスタンの戦争によって、衰退の道をたどり始めた、と多くの者は感じているでしょう。しかし、論説のポイントはそれを否定することにあります。しかし、Fareed Zakariaは、イギリスが特異な歴史的条件を生かして、政治的な管理能力を最大限に生かした帝国に依拠したこと、他方、経済力の衰退には歯止めがかからなかったことを指摘し、現代のアメリカはそうではない、と考えます。
「アメリカは、新興諸国を迎え入れ、そのパワーや特権を譲歩することで、また多様な見解や世界観を受け入れることで、誕生しつつある世界秩序を安定化することができる。あるいは、世界の他の地域でナショナリズムが高まり、分裂や分散、アメリカが過去60年間築いてきた世界秩序の崩壊を見守ることもできる。・・・世界が変化するとき、アメリカが前者の道を取れば、新興世界は市場を受け入れ、民主的な政府を受け入れ、より大きな開放性と透明性を受け入れるだろう。」
・・・日本はどうでしょうか?
FT June 8 2008
Europe must build an alliance with China
By Charles Grant
(コメント) ‘Can Europe and China shape a new world order?’という本を書いたそうです。Robert Kaganが新著The End of Dreams and the Return of Historyで描いたような、ロシア・中国の専制国家同盟とアメリカ・ヨーロッパ・日本・インドの民主国家同盟とが対抗する世界秩序に代わって、Charles Grantは、ヨーロッパが中国と結び付くことを提案します。
なぜなら、ヨーロッパこそが歴史によって大国間の勢力均衡から多角主義を目指す指導的勢力であるからです。また、中国とロシアの同盟は成功しません。ロシアは中国の経済力を恐れており、中国はアメリカの方を重視しているからです。
他方、中国と組むことで、ヨーロッパは世界秩序を設計することができます。なぜなら、中国との貿易額は交渉力を意味し、中国と協力してビルマやチベットの問題を含めて、さまざまな国際問題を解決できます。エネルギーや安全保障に関しても、周辺地域も含めて、安定化できるでしょう。中国にとっても、ヨーロッパの多角主義と組むことで、真に世界の指導国になれるのです。
・・・日本はどこにいるのでしょうか?
FT June 5 2008
Act now to prick the oil price bubble
By Meghnad Desai
WP Friday, June 6, 2008
At $4, Everybody Gets Rational
By Charles Krauthammer
FT June 10 2008
Let the markets solve the energy crisis
By Tony Hayward(chief executive of BP)
CSM June 11, 2008 edition
Subsidies: a big culprit in high gas prices
(コメント) この急速な石油価格の上昇を説明するようなファンダメンタルズの変化はない、とMeghnad Desaiは考えます。むしろニューヨークの商品先物市場における金融機関の投機である、と。
そうであれば、アラブの石油王に増産をお願いしたり、国際石油資本の莫大な利潤に課税したりするのではなく、商品先物市場に証拠金を積み増すよう求めればよい、と。それはG8の政治的な決定によってできることです。
石油価格の上昇は、問題でなく、市場による解決である、という主張も繰り返し見られます。長期の国民休暇中、ガソリン税を免除しよう、という提案にかかわって多くの批判がありました。ますます安価なガソリンを消耗してアラブの石油王たちに支払いを増やし、中東政策を混乱させるだけだ、というわけです。
Foreign PolicyでKenneth Rogoffが主張していたように、アメリカはむしろ環境政策として、ガソリン税の引き上げを提唱すべきでしょう。KrauthammerやBP会長のTony Haywardは、ガソリン価格の上昇を支持しています。それは石油の消費を節約し、輸入を減らし、資本流入へのアメリカの依存を減らします。また、石油の節約だけでなく、代替燃料など、新技術の開発にも投資が促されます。
ややこしい上に不透明で腐敗を招くような排出量の制限や取引を整備するより、ガソリン税による高価格によって、たとえば燃費の良い自動車の購入を促せば良いです。Haywardは、需要側と供給側のファンダメンタルズから高価格を説明できると主張し、投機説を否定します。しかし、石油の産出が枯渇するとか、他の低炭素燃料に移行できる、という主張も否定します。
価格に従って、さまざまな改革を進めるしかないわけです。それは同時に、補助金や禁輸措置によって、燃料価格を不当に安く維持している(多くの新興諸国)諸政府について、国際機関が監視・勧告することを求めるでしょう。
現実の価格はしばしば政治的に決められ、市場は機能しないのです。
NYT June 5, 2008
The Food Chain
By DIANA B. HENRIQUES
NYT June 9, 2008
Politics and Hunger
WSJ June 10, 2008
The Fed and the Price of Rice
By STEVE H. HANKE and DAVID RANSON
The Guardian, Wednesday June 11 2008
It's the war, stupid!
Aijaz Zaka Syed
LAT June 12, 2008
Fill your tank with foreign policy
Rosa Brooks
(コメント) 農産物の先物市場にも投機的な資本流入が増えている、と伝えられます。農場が、住宅の次の投機市場となって、次のバブルと崩壊をもたらすのでしょうか? 農産物や農場に投資するファンドが急速に増大します。
世界の豊かな諸国が食糧を購入することで、あるいは間違った農産物補助金(そして耕作地の制限)やバイオ燃料推進の政策で、貧しい諸国から食糧が消えてしまいます。国連の会議は、9・11以後の、貧困、疎外、テロの関連を重視し、食料価格の高騰を放置することは間違いだ、豊かな諸国も分担せよ、と主張します。
高価格の原因を投機に求めるより、右派は高価格を助長している貨幣供給の緩和を続けたアメリカ連銀、左派は、世界の供給ラインを混乱させ、増税なしに戦争を繰り返しているブッシュ政権を、食糧暴動の背景として批判します。
FT June 5 2008
England should embrace its rural economy
By Neil Ward
(コメント) 日本では考えられないほど、イギリス人は田舎の生活を大切にし、愛着を持っているようです。そして、実際、農業人口は減少しても、田舎に住む人は増えています。企業家や専門職、研究者など、裕福な中産階級が田舎に移住するからです。それにともなって、田舎の経済活動も急速に変化しました。情報環境と消費文化の利用範囲が拡大するにともなって、個人の居住パターンが変化しつつあるのです。先進的な工場や高級な商店も田舎に移転し、女性の労働機会や起業も可能になります。
他方、急速な発展は田舎の良さを破壊する、という声も強まります。環境保護の政治運動や伝統的生活に対する住民の価値観が、新しい産業立地と対立することもあります。しかし、それもかつてのような煙突型の巨大工場ではなく、現代の消費・サービス・ハイテク企業には解決可能な問題です。
WSJ June 6, 2008
Sovereign Wealth and Politics
By PETER MANDELSON
(コメント) EUの貿易代表であるPETER MANDELSONは、政府系投資ファンド(SWF)を擁護します。マンデルソンは、ロシアや中国のSWFが自国の優良企業を買収してしまう、という危惧、政治的な売買への不安について、直接、彼らに情報と行動基準を求めるわけです。
日本政府がどうしているのか、わかりません。しかし、アメリカやEUは、SWFの投資行動に関する情報自主的な開示や、IMFを介した共通の行動基準作成を要求し、それと相互的に、OECD側の情報開示や投資対象に関する障害を除去する用意を進めています。
Analysis: Growing talk of Iran attack BBC 2008/06/06
Graham Allison Sitting down at the nuclear table with Iran BG June 7, 2008
Gareth Porter Pentagon blocked Cheney's attack on Iran Asia Times Online, Jun 10, 2008
Jim Lobe Hawks still circling on Iran Asia Times Online, Jun 10, 2008
(コメント) ブッシュ政権は、その末期において、イラン核施設への空爆を行うのでしょうか? アメリカ政府はその情報収集と分析により、イランがもうすぐ核兵器を保有する段階に達する、と考えるにいたったのでしょうか? 最近、軍事攻撃説が再燃したのは、民主党の大統領候補となったオバマが、繰り返し、イスラエルを強く支持し、イランが核兵器を保有するのを阻止するために「あらゆる手段」を行使する、と演説したことが一つの理由になっています。
オルメルト首相がワシントンを訪問し、ブッシュ大統領とイスラエル防衛の意思を確認したこともあります。二人とも、国内政治で不人気に苦しんでいます。イランとの交渉を担ってきたドイツのフィッシャー外相も、中東が混乱を深めることに歯止めをかけたいと願います。
こうした空爆説が止まらないのは、ブッシュ(そしてマッケイン)によるおばま批判があったからです。チェンバレンのヒトラーに対する宥和政策について、Graham Allisonは、交渉が問題ではなく、行動しなかったことが問題だった、と主張します。合意が破られれば、対抗しなければなりません。ブッシュ政権は、何年も交渉を拒み、イランが核物質を蓄積するのを放置してきました。EUの交渉や安保理の制裁は効果がなかったのです。
チェイニーの強硬発言でも、アメリカの姿勢は変わりません。好ましくない相手とは、交渉するより攻撃せよ、です。チェイニーの娘が中東問題の元国務次官補として、ライス国務長官の中東安全保障構想を批判する急先鋒だ、とJim Lobeは伝えます。強硬派の攻撃は、北朝鮮との交渉を進めるクリストファー・ヒルにも向かっています。
FT June 6 2008
China’s earthquake
(コメント) 多大の人命と社会資本を失った四川大地震は、その後の経過から何を考えるべきでしょうか? たとえば、中国経済が変調して、SARSによるショックやインフレ加速と同様、世界に波及することもあるでしょうか? 日本の自衛隊が援助物資を届ける案は見送られました。
四川省の生産や経済規模は中国経済にとって小さなものでした。しかし、市場による経済改革が始まって30年を経ても、企業の3分の2は国家が所有している、と記事は指摘します。地震の復興に協力するだけでなく、価格の引き上げや金利の上昇には政治的な圧力が、今のところ、有効のようです。
The Japan Times: Friday, June 6, 2008
Japan sidelined on Taiwan
By GREGORY CLARK
(コメント) 台湾は経済的に成功し、その犠牲となった、と論説は書きます。工場の多くは大陸に移転し、今では、大陸からの観光客と投資を誘致しなければなりません。台湾の指導者が中国との関係を改善し、同時に、政治的な独立を維持したい、と願うのは理解できます。その場合、日本はどのような役割を担えるのでしょうか? 何もない、としたら、日本の外交とは何か、疑問を感じます。
NYT June 7, 2008
By BOB HERBERT
NYT June 8, 2008
One Historic Night, Two Americas
By FRANK RICH
(コメント) J.F.ケネディーの死から40周年です。その当時、アメリカの大統領に黒人と女性が候補として最後まで争うことなど、想像もできなかったようです。共和党の候補としてニクソンに敗れたGeorge Wallaceは、人種隔離を永久に維持する、と訴えていました。
オバマが、ヒラリーが、大統領を目指したことを、アメリカ国民の多くが誇りに思い、心から祝福したことを、BOB HERBERTは感動的に描いています。彼らの戦いは、その勝敗にかかわらず、アメリカ社会を再生する戦いだ、と。
その意味では、と私は苦い気持ちです。日本社会は再生しないのではないか?
FRANK RICHは、オバマとマッケインを詳しく比較しています。オバマの特徴は、その包括性です。あるいは、社会性、社交性、というべきかもしれません。さまざまな形でアメリカを分断し、世界を分断する政治の言説を、オバマは転換しようとします。マッケインがいくら素人だと馬鹿にしても、オバマならテヘランに行くでしょう。
オバマは世界と交流できます。「私もベルリン子だ」と、かつてケネディーが述べたように。もちろん、ニクソンも「私もケインジアンだ」と述べたし、必要ならマッケインだって変身するでしょうが。
NYT June 9, 2008
It’s a Different Country
By PAUL KRUGMAN
(コメント) もし人種の分割がなければ、今までの共和党候補の勝利は難しかったでしょう。アメリカ人の多くは社会保障や医療保険を望んでいます。しかし、これに人種問題が重ねられると、増税や大きな政府を嫌うという共和党のスローガンが支持されるのです。つまり、それは黒人を助けるだけだ、と。
選挙はしばしば、社会福祉の負担に関して争われ、都市の暴力や犯罪について争われ、また、黒人であれ、9・11であれ、移民であれ、アメリカ人の恐怖を煽ることで共和党を有利にしました。
NYT June 7, 2008
Europe Fears a Post-Bush Unilateralism, This Time on Trade
By EDUARDO PORTER
(コメント) 共和党のネオコン、単独先制攻撃に代わって、民主党の保護主義、経済ナショナリズムが、ヨーロッパの恐れる次のユニラテラリズムなのでしょうか? アメリカが失業した労働者に対して行う救済策はGDPの17%に過ぎず、これはドイツの半分です。保護主義に頼るより、自由貿易の苦痛を減らす方が政治家の優先課題です。
BBC 2008/06/08
Battle mounts over Irish EU vote
The Guardian, Thursday June 12 2008
Today Ireland has a chance to change Europe's direction
Seumas Milne
(コメント) EU内部の財政負担や補助金の配分をめぐって、新加盟諸国への再分配に対する不満があるようです。WTO交渉へのEU代表であるマンデルソンへの不満も。アイルランド国民はリスボン条約を承認するか? これは、一種の、ヨーロッパ的なアメリカ大統領選挙です。
そして、実際に否決され、EMS崩壊の危機(1992年、デンマークによる否決)や、ヨーロッパ憲章否決のショック(2005年、フランス、オランダが否決)に並ぶ、新しい危機を呼ぶかもしれません。しかし、4億9000万人の民主政治に向けて、こうした危機を何度も乗り越えることでしか、制度や政治意識を鍛えられないのでしょう。
アジアにも、危機を乗り越える国境を越えた制度や意識を鼓舞できる政治家がいるでしょうか? たとえば、いっそ日本人は学校で、アジア諸言語を三つ選択して勉強してはどうでしょうか?
FT June 8 2008
Asia’s new export: rampant inflation
June 11 (Bloomberg)
Paulson, Bernanke Meet Chinese Inflation Wall
William Pesek
June 12 (Bloomberg)
China Is Nowhere Close to Victory on Inflation
Andy Mukherjee
FT June 12 2008
The new stagflation: an Asian export
Stephen Roach
(コメント) 中国や新興諸国のインフレ抑制が世界経済にとって重要になっています。あるいは、世界的なインフレは、グローバリゼーションの結果として、アメリカの景気刺激策や金融機関の救済がもたらした反響効果なのでしょう。アジアのインフレ吸収力は限界を超えたようです。ポールソンたちは繰り返し中国に為替レートをもっと強くするべきだと訴えていました。しかし、今度は自分たちがドル安をもっと心配するべきだ、と警告されています。
中国人民銀行とECBとがアメリカに不満を示した以上、アメリカのドル安による景気刺激策はもはや終わったのです。・・・あるいは、今こそ中国政府は人民元をいったん15%切り上げ、その後、数年かけて6〜8%を増価させる、というMorris Goldstein and Nicholas Lardyの提言を受け入れるべきでしょうか?
これは1970年代の賃金・物価のスパイラルによるインフレーションではなく、アジア発の世界インフレーションである、とRoachは確認します。対策は? 1970年代のような金融緩和を避けるだけでは済みません。
FT June 11 2008
Inflation targeting
(コメント) 世界に輸出された「インフレ目標」という政策モデルは自滅したのでしょうか? 世界インフレになれば、各国がますます世界不況を促進する、という意味で。あるいは、次々にインフレ目標を高めに設定し始める、という意味で。石油や食糧の価格を除いて物価を判断するという主張も、信頼性や透明性によってインフレ期待にインフレ目標が影響するという主張も、色褪せてしまいます。
世界の成長が減速する中で、各国ごとに金利を引き上げるのは矛盾します。世界インフレ目標をだれが、どうやって反映するのでしょうか? 結局、インフレ目標論は、低インフレ時代の金融政策過信を表現した呪文に終わりそうです。
The Guardian, Monday June 9 2008
Peter Mandelson
WP Wednesday, June 11, 2008
Saving Doha
Asia Times Online, Jun 11, 2008
A less-free world dawns
By Martin Hutchinson
(コメント) イギリス人のマンデルソンはEUのために市場自由化を推進し、他方、WTOはフランス人のパスカル・ラミーが率います。グローバリゼーションへの不満を彼らの説得で吸収できるでしょうか?
マンデルソンは、保護主義的なルールを示唆するオバマもマッケインも、世界経済の重心が大西洋ではなく、もっと南に移動したことを理解していない、と批判します。市場競争も雇用も食糧や資源も、安定的で協力的な国際的ルールによって解決できるのです。「アメリカはグローバリゼーションを必要とするし、グローバリゼーションはアメリカを必要とする。」 ニューディール政策を再生しよう、と呼びかけます。
農産物自由化や工業製品の市場開放について、欧米に地の立場や、新興諸国の立場は、急速に変化している、ということです。指導的な立場から妥協案を示し、各国に一括交渉する政治家の手腕が、ますます重要になっています。
保守主義者として、Martin Hutchinsonは、自由市場型の政策コンセンサスが後退した後の世界秩序を憂えます。「政府は至る所で勢力を拡大し、2010年代の環境保護主義は1940年代に社会主義が果たしたような役割を果たすだろう。すなわち、より大きな国家管理である。」
NYT June 10, 2008
New York Fed Chief Calls for Regulatory Shake-Up
By MICHAEL M. GRYNBAUM
(コメント) ニューヨーク連銀総裁で、90年代から主要な国際金融危機を処理し、最近ではベアスターンズ救済をアレンジした人物、Timothy Geithnerが述べた意見であれば、注意しなければならないのは当然です。・・・投資銀行を主要な民間金融部門とおなじ単一の規制体制に組み入れ、危機に対するショックの吸収力を制度の内部で高めるために準備金を増やし、あまりにも複雑に膨張した規制の網の目を単純化する、など。
危機を経て、デリバティブやスワップなどの高度な取引を標準化し、革新を妨げない形で、危機を吸収できる体制を整備したい、と考えます。
WP Tuesday, June 10, 2008
By Anne Applebaum
NYT June 11, 2008
Obama on the Nile
By THOMAS L. FRIEDMAN
FT June 11 2008
American candidates ignore Asia at their peril
By Victor Mallet
Thursday, June 12, 2008
Obama's Economic Challenge
By David Ignatius
NYT June 12, 2008
Union Critical of Obama痴 Top Economics Aide
By LOUIS UCHITELLE
(コメント) アメリカ大統領候補としてのオバマは、外国でどのように評価されるのでしょうか? 例えば、ヨーロッパやアジア、アラブ世界は、本当に人種差別を免れているか? 黒人への不安やアメリカへの不満を人種差別によって強めるのではないか? あるいは、その父親にイスラム教徒、そのミドル・ネームにフセインを持つ黒人のオバマが登場したことで、アメリカのイメージが一新される。エジプトでは考えられない変化の速さに圧倒されるでしょう。そして、世界各地で「アメリカ寄り」と非難されてきた改革派が政治的な影響力を回復・強化するでしょう。
アメリカには世界を驚かせる力があります。
アメリカは中東で紛争を繰り返しただけでなく、アジアでは日本と戦い、北朝鮮や中国と戦い、ベトナムと戦ったのです。しかし、大統領候補たちの論争に、アジアの問題はほとんど登場しません。中東ではなく、アジアとの関係こそが将来の国際秩序にとって重要なはずです。
オバマの経済政策はだれが決めるのか? グローバリゼーションの時代に、新しい社会契約を、新しいニューディールを発見できるでしょうか?
LAT June 12, 2008
Justice Hillary Clinton?
By David A. Nichols
(コメント) そして、ヒラリー・クリントンの政治的野心を中立化し、その経験や能力を生かすには、副大統領、上院議長、閣僚よりも、最高裁判事に指名するのが良い、という話です。アイゼンハワーの例が紹介されています。
FT June 10 2008
March to the middle: Merkel celebrates Germany’s social market model
By Lionel Barber, Bertrand Benoit and Hugh Williamson
(コメント) ヨーロッパの病人となっていたドイツが、急速なユーロ高(そしてEU拡大、移民問題)の中で、中国を超えるような輸出を行う成長国に復活しました。かつて、ドイツの社会的市場モデルは非難されましたが、英米の自由市場モデルが危機に落ち込む中で、その活力が再発見されました。サルコジ大統領やゴードン・ブラウン首相より、メルケル首相が関心を集めます。
グローバリゼーションへの疑問が叫ばれる一方で、実際には、ドイツ企業がグローバリゼーションから最大の利益を受けたようです。しかし、メルケル首相へのインタビューは、その成功の秘密?について具体的に解明してくれません。
特に印象的なこととして、輸出と失業率を示す図表があります。大まかに見ると、2000年の輸出額は、アメリカ8000億ドル、ドイツ6000億ドル、日本5000億ドル、そして中国2000億ドル、程度でした。しかし2008年には、ドイツ、中国、アメリカが1兆3000億ドル前後で競っているのに対して、日本はまだ7000億ドルです。
ドイツの失業率はこの間、2005年の5.0%をピークに、2008年には3.3%まで低下しました。メルケル首相は、この雇用の増加こそが財政赤字を減らし、社会保障(年金、失業手当)を破たんさせなかった。かつて戦後の復興を目指したK.アデナウアーが中間の道を描いたことを、東ドイツの自由市場派であったメルケルも今では重視します。ドイツ統一に国民は1.5兆ユーロ(2兆3000億ドル)を負担したのです。社会的結束を重視するヨーロッパやユーロの金融システムが、社会の分裂と金融危機をもたらした英米の自由市場に代わって、世界のモデルになる、と主張します。
・・・グローバリゼーションから取り残されていることに、日本人も無関心ではいられません。
FT June 10 2008
Sustaining growth is the century’s big challenge
By Martin Wolf
(コメント) 人類が達成した文化的・技術的な水準からみて、世界の貧困は大幅に改善できるはずだ、と私も思いました。Martin Wolfは、Jeffrey Sachsの新著(Common Wealth: Economics for a Crowded Planet)を取り上げて考察します。
そのアメリカ的な楽観主義を最大限に発揮して、2050年までに生活水準を4.5倍にできる。そして、世界の貧困を減らし、人口を安定化し、地球環境にとっても持続可能な成長を実現する、とサックスは主張します。イギリス人のウルフは、経済学者の本能として成長を支持しつつも、サックスのビッグ・プッシュ型成長と地球環境の維持については悲観的です。
解決策を示せない地球環境派と、問題を感じない自由市場派との間で、少なくとも二人は、今や人類が地球の管理者である、という自覚を求めているようです。
スタンフォード大学のPeter Vitousekによれば、人類は生物種の絶滅だけでなく、地球の光合成や炭素、窒素の固定化、河川や大気の成分にまで、多大の影響を及ぼしているのです。
Businessworld, 10 June 2008
Distance Does Matter
Nayan Chanda
(コメント) 距離の絶滅や、エネルギーの確保は、グローバリゼーションの時代にも経済活動に必要な絶対条件です。世界の立地や産業パターンは変化し続けています。スエズ危機からイラク戦争まで、メキシコから中国まで。
The Guardian, Wednesday June 11 2008
As China's power grows, the diaspora starts to flex its worldwide muscle
Martin Jacques
NYT June 11, 2008
Paulson痴 Path to China: Progress, but Miles to Go
By STEVEN R. WEISMAN
(コメント) 現在の世界を作ったのはヨーロッパとその世界的な支流でした。中国がますます世界のパワーを実現すれば、その支流である華僑が次の世界を作るでしょう。
米中間で、経済官僚や議会関係者が情報や意見を交換しています。こうした二つの支流がまじりあう試みは、多くの困難を経ながら、続けられそうです。
SPIEGEL ONLINE 06/11/2008
Germany to Introduce Controversial New Citizenship Test
FT June 11 2008
Europe’s big test: why the euro will not help
By Václav Klaus(president of the Czech Republic)
(コメント) もちろんこれは、テスト、という言葉が共通するだけです。しかし面白いので並べました。ドイツは国籍を求める外国人にテストをします。ドイツの歴史、政治、社会について、知っていますか? そしてヨーロッパ(市民や政府、官僚と政治家)は、ユーロ圏として共通テストを受けており、その答えはECBだけでなく、各国が独自に出さねばなりません。
NYT June 11, 2008
The End of Intervention
By MADELEINE K. ALBRIGHT
(コメント) クリントン政権の国務長官であったオルブライトは、人道主義的な国際介入の後退を憂えます。国家主権が国際秩序においては絶対であり、内政不干渉の原則を常に守るべきなのか? その考え方は、国境を越えて人名や人権を守るべきだ、という国際社会の要請によって変化し始めていたはずです。
ソマリア、イラクのクルド人地区、ハイチ、ボスニア、コソボ、シエラレオネ、東チモール。ところが、ブッシュ政権のイラク侵攻が「先制攻撃」の主張によって混乱させました。
これは世界政府を目指すものではない、とオルブライトは考えます。しかし、国際システムがその重要な価値を実現するために行動することを示したものでした。貧困を解消し、民主主義や人権を尊重するように。しかし、ミャンマー、スーダン、ジンバブエの独裁政府は、旧式の国際システムによって守られています。
「国際システムとは、政府が政府を守るために、法的なクズやガラクタを集めただけのものなのか? それとも、世界をもっと人間的な場所に変えるために、組み立てられるルールなのか?」
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The Economist May 31st 2008
Corporate Governance in Japan: Bring it on
Corporate Governance in Japan: Power struggles
Chief executives: How to get to the top
Stock exchanges: the battle of the bourses
(コメント) 日本企業への国際投資は減ってしまう、という記事が並びます。欧米間の資本市場の統合化に比べて、日本は企業が外国人だけでなく投資家全体に対して十分な説明責任を果たしていない、と厳しく批判します。買収防衛策を準備するばかりで、国内の安定投資家や個人投資家に対する長期的な信頼関係を大切にする、という姿勢も見られないのであれば、何のための株式市場なのか、と思います。もし多くの日本企業が、短期的な配当や資産売却を狙った突然の買収を恐れるのであれば、法律として明確な方針を示す方が良い、と感じます。
また、日本では経営者の交代も少ないことが示されています。アメリカよりもEUの方が経営者はより短い時間で昇進し、交代する、というのも面白いです。
The Economist May 31st 2008
Enlarging the European Union: Chicken or Kiev?
In the nick of time: A special report on EU enlargement
America’s suburbs: An age of transformation
Peacekeeping and sex abuse: Who will watch the watchmen?
(コメント) EUの拡大について、われわれは保護区に住むインディアンになってしまう、という旧加盟諸国の反対派が示すポスターが強烈です。また、新規加盟諸国でもナショナリズムやポピュリズムが盛んです。EU拡大は早すぎた、という世論に対して、特集記事は反対しています。
アメリカの郊外住宅地が今ではどうなっているか、国連平和維持軍が派遣された地域で現地の少年少女に売春を広めても罰せられないことをどうするか、という記事に注目します。
The Economist May 31st 2008
Recoil
Oil prices: Double, double, oil and trouble
Economics focus: The Doha dilemma
(コメント) 石油や食糧の高価格に関する記事です。The Economistは、投機を非難する声に加わりません。むしろ自由化や価格メカニズムの支持者です。もう一歩、踏み込んでほしいですが。食糧安全保障論については明確な反対です。貧困への影響については、世銀の立場も検討しつつ、より複雑な議論を展開しています。