今週のReview
6/2-6/7
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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金融ビジネスに課税せよ、 ガバナンスと成長1,2、 H・キッシンジャー、 民主主義国の同盟? 副大統領の指名、 Z・ブレジンスキー、 A・セン、 J・バグワッティ、 F・カストロ
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor, WSJ:Wall Street Journal Asia
SPIEGEL ONLINE 05/22/2008
A Multicultural Model for Europe
By Helene Zuber in Granada, Spain
(コメント) スペインは、イスラム文化圏との融合が歴史的過程で生じており、多文化的なモデルを示しています。 “Today's Granada is a cultural melting pot.”
キリスト教徒もイスラム教徒も互いの信仰を尊重し、共存しています。現在スペインには、永住権を持つ65万人のモロッコ人を含む、約150万人のイスラム教徒がいます。2004年、左派政権が外国人労働者の合法化を進めて、約50万人のイスラム教徒の女性が夫と一緒に暮らすためにスペインにやってきました。
さらに、政治や文化、そして9・11による変化、などが述べられます。
May 23 (Bloomberg)
Tax Bankers' Bonuses to Fund New Regulations
Michael R. Sesit
(コメント) 金融ビジネスの給与は高すぎるのではないか? それは「スキャンダラスで、社会的な災厄」、自分たちのポケットに富をかき込んで、優秀な人材を他の経済分野から奪ってしまう、・・・ その挙句、世界経済に対して3810億ドルの損失をもたらしたのです。不満を解消しなければなりません。彼らのボーナスに課税する案が議論されています。それによって社会的な目的を達成するために。たとえば、金融規制、独立した格付け機関、レバレッジやリスクの抑制、複雑かつ特殊な金融商品の抑制、などです。
1.個人のボーナスに課税する。2.すべての企業、銀行、金融機関に、独立の格付け機関の運営資金を負担させる。3.一定額(たとえば100万ドル)以上の退職金に課税する。4.「最後の貸し手」にかかる費用を徴収する。5.レバレッジに課税する。6.金融ビジネスの損失が税控除になる上限を課す。
それによってブームと破たんを少しでも回避できれば、昨年だけで、金融ビジネスに関わる人びとにとっても望ましいことです。世界の主要銀行・証券会社が8万2000人を解雇したことを考えれば、彼らにとっても必要な改革です。
The Guardian, Friday May 23 2008
A new cold war? We're yet to adjust to the old one ending
Jonathan Steele
(コメント) EUには、ロシアに対して不安や不満を感じている東欧からの新加盟国が増えています。しかし、EUとロシアが新しい冷戦を回避するためには、相互の利益をもたらすロードマップや長期的な共有利益の領域を明示したPartnership and Co-operation Agreementを更新することが重要である、と主張しています。
The Guardian, Friday May 23 2008
Dani Rodrik
(コメント) かつて開発論は貿易に注目し、援助に注目し、インフラ投資に注目しました。さらに、工業化を強調し、自由化を強調し、インフレ抑制などの安定化を強調するようにもなりました。そして、結局、いろいろな政策を取っても、政府がうまく機能しなければ成長は持続しない、成長の成果は国民に行き渡らない、と考えるようになりました。今では「統治・ガバナンスの改善」が重視されるわけです。「ゲームのルール」を変えなければならない、と。
Dani Rodrikは、ガバナンスは目的ではなく手段である、と指摘します。ガバナンスを改善しても、成長しないかもしれません。逆にガバナンスが悪くても、急速な成長を実現している国はあるのです。成長の条件は、その具体的な障害を取り除くことであって、ガバナンスの改善ではない、と主張します。債務を減らしたり、インフレを抑えたり、為替レートを輸出部門に競争力が維持されるような水準に決めたり、それらは重要ですが、各国で実際にどのような影響を及ぼすか、経済学者はたいてい知りません。
もっと適当な制度を実現するには、経済学の知識だけでなく、現地の情報や伝統を生かして、創造しなければなりません。IMFや世銀やNGOは、しばしば最も望ましいガバナンスの基準を一般化して要求しますが、それでは役に立たないのです。貧しい諸国で、「市場自由化」や「中央銀行の独立性」が望ましいとは限りません。もっと現実に密着した、成長を阻害している要因を取り除くことに努力するべきだ、と考えます。
BBC 2008/05/23
Russian-Chinese message to US
By Jonathan Marcus
(コメント) ロシアと中国は、アメリカのミサイル防衛システムに対する共同の反対声明を出しました。それはロシアの石油外交の一環でしょうか。あるいはまた、ポーランドチェコにおける政治的なムードが変化しつつあることを利用するものでしょうか。
コソボ、グルジア、チェチェンにおいて、ロシアの考えは国際社会の支持を得ていません。これらの問題についても、新大統領は石油を利用した外交戦略を展開するでしょう。中国との連携はその中心です。他方、中国のパワーは、より緊密にアメリカ市場と結びついています。その意味で慎重な姿勢を好むでしょう。
FT May 23 2008
Lunch with the FT: Henry Kissinger
By Stephen Graubard
(コメント) 85歳。必ずネクタイを締めてランチを摂る世代。アッパー・イーストサイドのレストランで話し合う。悲しむことはないし、目的を失うこともない。彼の助言は、まだ、必要とされているから。彼の情熱は「歴史」に向かう。
1963年11月、ケネディーが暗殺された日も、二人は一緒にランチを摂っていました。ケネディーがもし生きていたら、という話をしたそうです。そのときは、1964年の大統領候補に民主党はケネディー。共和党は、バリー・ゴールドウォーターではなく、ネルソン・ロックフェラー(当時はNY州知事)がなっていただろう、と。そしてケネディーが勝利しただろうが、キッシンジャー1969年のニクソン政権を待たず、外交顧問として政治の世界に入ったはずだ、と。
ケネディーとロックフェラーの外国政策は基本的に同じであって、イデオロギー的な違いもなかった、と言います。それが本当かどうか、わかりませんが、キッシンジャーは、1960年代の大きな転換点はジョンソン大統領がベトナム戦争を拡大したことだ、と主張します。そして、ベトナム反戦の学生たちをヒーローにしてしまった。キッシンジャーは今でも、彼らはアメリカの敗北を願ったおろか者たちだ、と確信しています。
レーガン政権についての評価は複雑です。なぜなら、レーガン政権の人々は、キッシンジャーの外交を「道徳性に欠ける」と考えて拒否したからです。キッシンジャーのレーガン評価も、時機を得た、というだけです。そして、ベトナム戦争やイラン大使館人質事件で傷ついたアメリカ人の誇りを取り戻したことが良かった、と。外交政策としての成果ではなく。
2008年の大統領選挙について、外交の課題を聞いています。しかし、優先課題というのは決まっておらず、重要なことはアメリカの基本的な「価値」を実現すること、です。それぞれの問題について、必要な時間をかけて、必要な解決策を実現できるでしょう。その過程を「管理」することが問題なのです。この「価値」と「管理」が対話において頻出したそうです。
キッシンジャーは、イランを攻撃するべきだ、などと主張しません。新大統領に全面的な交渉を求めています。互いの戦略を確認し、国際関係を合意できるなら、中東地域の重要国家としてアメリカと関係を結べるでしょう。核開発についても、有効な監視体制と国際社会が受け入れ可能な核管理を合意できるかどうか、なのです。
イラクについては、アメリカ軍の撤退で、その原理主義勢力が周辺アラブ諸国に広がること、アフガニスタンやパキスタンにおけるアメリカの地位低下、を重視しています。また例えば、インドにおけるイスラム強硬派も心配です。
筆者はキッシンジャーに質問します。世界は民主主義諸国の陣営と非民主主義諸国の陣営、あるいは、地域や伝統によるグループに分かれるのか? と。キッシンジャーは、これまで世界のいろいろな分割について最も多くの論説を書いた人物です。彼の返答は、・・・アメリカが国際情勢に関わることです。
IHT sday, May 29, 2008
Globalization and its discontents
By Henry A. Kissinger
(コメント) 史上初めて世界が深く結び付いているときに、各地でナショナリズムやグローバリゼーションへの不満が高まっています。それは競争を通じて成長をもたらし、勝者とともに敗者を生む過程であり、そのコストを超える富をもたらすことは、政治においても十分に知られています。しかし競争的であるために、各国は社会制度の改革を必要としており、政治家たちはグローバリゼーションの軋轢を利用します。
アメリカの通商政策でも、国内では失業の増大を理由にグローバリゼーションを責め、雇用の流出や移民流入が強調され、文明の衝突やナショナリズムが叫ばれています。多国籍企業と多くの国内企業とは、異なった経済的機会に直面し、異なった程度で国民経済に依存します。世界中で、金融危機はこの対立を強めてきました。ラテンアメリカでも、アジアでも、ロシアでも、そしてアメリカやヨーロッパでも。投機的な資本移動、資本逃避は、その共通した原因でした。
それゆえキッシンジャーは安全保障にかかわる産業への国際投資を問題にします。より広くは、グローバリゼーションの政治的な管理を求めます。そのために、大統領候補たちはグローバリゼーションへの攻撃を控えるべきだ。それは保護主義を強め、1930年代を再現する。圧力団体や特殊な利害によってではなく、国益によって安全保障を考慮する。そして、世界的な供給システムを利用して競争力を高めるために、教育システムをもっと改善する方が良い。
G8などの国際的制度化を重視する。その目標は、最初から、長期的な世界経済の成長であったし、今では、中国やインド、ブラジルなどにも参加を促すことです。そうすることで、グローバリゼーションにともなう内外の社会的軋轢を解決するために協力できるでしょう。
しかし、金融危機に対して、キッシンジャーの評価は極端な否定的で常識的です。IMFは時代遅れであり、金融機関は救済されただけでモラル・ハザードが起きている。この点で、政治システムは経済システムとの関係を調整できず、たがいの機能を損なっているのです。グローバリゼーションへの不満が高まる理由です。
FT May 23 2008
Network power that works too well
By Christopher Caldwell
(コメント) グローバリゼーションが進む過程で、ますます多くの選択肢が自由になるはずですが、個人は多くの不満を抱えています。この矛盾を説明するには“network power”を見なければならない、論説はと指摘します。
人々の選択は、グローバル化するネットワークに参加するために、自分の意志とは関係なく、一定の条件を受け入れるしかないのです。携帯電話でも、DVDでも、会計基準でも、医療保険制度でも。民主的な決定や、国家主権まで、知らないうちに失われて行きます。
The New Yorker, April 21, 2008
Iceland’s Deep Freeze
by James Surowiecki
(コメント) アイスランド経済はグローバリゼーションによって利益を受け、また、世界のどこからでも危機を呼び込みます。それはどの国にも共通しますが、アメリカはわずかに金利を引き上げれば中国や日本の資本を招き寄せますが、アイスランドにはできません。結局、香港は主権を中国に吸収され、アイルランドは独自の通貨を捨てたのです。
The Japan Times: Saturday, May 24, 2008
Cross-strait opportunity
By RALPH COSSA
(コメント) 台湾の新大統領は関係改善に熱心です。しかし、中国政府は台湾を国際社会で孤立させる政策を転換し、その呼びかけに応える用意があるのでしょうか? 独立派の陳水扁を敗北させたのであれば、国民党の権力を安定させ、長期的な経済的繁栄と政治的信頼を分かち合う方向に合意を見出すチャンスです。あるいは、北京オリンピックさえ無事に終われば、チベットでも、台湾でも、香港でも、思いのままに弾圧できる、と考えるのでしょうか?
NYT May 25, 2008
The Invisible Hand Is Shaking
By ROBERT H. FRANK
(コメント) ガソリン税を免除して安くすれば、アダム・スミスの「見えざる手」はどのように働くでしょうか? 本当に、利己心だけで社会は改善できるのか?
ガソリン価格を引き上げた方が、社会にとって環境破壊のコストを抑制できるなら、課税することは正しいでしょう。ヒラリーやマッケインのガソリン税免除案は、間違った影響を及ぼします。ガソリン価格の上昇に苦しむ貧しい人々だけでなく、裕福な人々にもガソリンが安くなり、彼らは夏休みにドライブするよう奨励されます。それはアメリカでエネルギー不足を悪化させるだけでなく、騒音や混雑など、社会的な無駄となるでしょう。
むしろ貧しい者に減税し、そうすることで政府より人々の支出によって、経済の効率を改善できるでしょう。
WP Saturday, May 24, 2008
America's Other Housing Crisis
By Michael Kelly
NYT 26, 2008
Affordable Housing, at a Price
(コメント) アメリカの住宅問題といえば、今はサブプライムローンや価格下落の問題ですが、以前はホームレスでした。職場の近くに、低所得でも安心して住める住宅が不足しています。公共住宅はそのためにあるはずですが、財政赤字などの影響で減っています。
コミュニティーや雇用の問題は、住宅や金融とおなじようにアメリカの社会・政治システムの中軸をなす問題です。市場と並行して、有効な公共住宅の供給システムが確立させる可能性はあるのでしょうか? 住宅市場が介入を要するなら、さまざまな模索を期待します。
NYT May 25, 2008
Where Breathing Is Deadly
By NICHOLAS D. KRISTOF
(コメント) 四川大地震よりも深刻な災害は、中国の大気汚染です。地震の犠牲は6万人を超えるかもしれませんが、大気汚染による早期の死亡は毎年30万人から40万人にも及ぶようです。
中国政府は大気や河川の汚染に、アメリカ以上に熱心に取り組むようになりました。しかし貧しい村の多くは、まだまだ経済成長を止めることはできないし、そのためには汚染がまだまだ進むという不安が強いのです。
FT May 25 2008
So much for a new kind of US politics
By Clive Crook
(コメント) オバマとマッケインの論争点はどこにあるのか? オバマ陣営は、マッケインをブッシュにあと4年もやらせるのか、と非難します。他方、マッケイン陣営は、オバマの宥和政策、外交音痴を非難します。
しかし、そのようなスローガンではなく、本当の論争点は、イラク、貿易、社会保障、税金です。しかもイラクに関しては大きな違いはないのです。むしろ他の3つについて、論争を深めるべきでしょう。
FT May 25 2008
Inflation and the lessons of the 1970s
By Wolfgang Münchau
FT May 28 2008
More to it than ‘leaning against the wind’
By Lars Heikensten
(コメント) 金融政策は、1930年代の再現を回避するべきか、あるいは、1970年代の再現を回避するべきか? 石油価格の上昇に対しても、不況を恐れる金融当局は金融緩和で応じています。危機は必ず終わるが、インフレを残してはいけない、と。
スウェーデンのRiksbankがインフレ目標ではなく、実物経済の変化を注意深く観察して金融危機やインフレを回避する方法を追求します。株価の変動やそのリスクにも注意を怠りませんでした。中央銀行は、市場の変動に対して逆らう必要があるのです。
FT May 25 2008
Ten years on, a seasoned ECB takes pride in its predictability
By Ralph Atkins in Frankfurt
FT May 25 2008
A happy 10th anniversary, Emu
FT May 25 2008
German unification
FT May 27 2008
Emu’s second 10 years may be tougher
By Martin Wolf
(コメント) ユーロの誕生から10年が経ちました。そのころ、多くの者は信じていなかった、とトリシェ総裁は振り返ります。早いものです。ECBは最近の金融市場不安でも鎮静化に成功しました。フンデス・バンクから引き継いで、金利の変更を中心的な金融政策にしたことはECBの信用を高めたようです。この10年で、ドルに負けない金融市場の信頼を得たようです。
しかし、加盟諸国の構造調整に対する苦しみと不満は、デフレ的な調整を難しくしているでしょう。石油価格上昇や新加盟国は、その意味で、厳しい試練です。ドイツの銀行業は、多いところでは、3分の2まで公的もしくは協同組合的な小規模金融です。金融ビジネスにおける吸収合併が進んでいます。しかし、その際、組織の内部に生じる利益相反が指摘されています。
インフレ率は低くなり、財政赤字が減り、金融市場の統合も進みました。ハーヴァード大学のジェフリー・フランケルが「10年以内にユーロがドルにとって代わるだろう」と予測したことは話題になっています。もちろん、英語圏では信じられていません。しかし、成長率はイギリスやスウェーデンより低く、生産性上昇率もアメリカより低いのです。
通貨統合は進んだけれど、経済統合は遅れている、とWolfは評価します。ユーロ圏内の経済条件は多様であり、一つの金利だけで満足できません。市場の統合化や財政的な支援が必要になります。しかし、それに見合う政治的な統一性はないのです。輸出部門の競争力や賃金上昇膣において、スペインやイタリアとドイツとの差は明らかです。ドイツがEMUによって苦しんだような過程を、各国はまだ経験しなければなりません。ドルに勝利したと言うのはそのあとです。
IHT Monday, May 26, 2008
New rules for the Middle East
By Rami G. Khouri
The Japan Times: Sunday, May 25, 2008
Recognizing the limits of American influence
By SHLOMO AVINERI
The Japan Times: Monday, May 26, 2008
Israel eyes post-American multipolar world
By DOMINIQUE MOISI
LAT 26, 2008
A homemade peace in the Mideast
By Barbara Slavin
(コメント) イラク戦争とその後のアメリカの占領政策が与えた、あるいは、冷戦後の世界がもたらした条件により、中東の新しい秩序を模索します。
それは新しい勢力による均衡です。トルコ、イスラエル、イラン、ヒズボラ、ハマス、シリア、サウジアラビア、など。これまでのようなヨーロッパ大国の介入、米ソ冷戦、アメリカとイスラエルとの同盟が突出した軍事的支配力などが、次の交渉条件を決める時代は終わったのです。アラブ・イスラム・ナショナリズムの底流が秩序の再編を促します。
イスラエルのオルメルト首相は、スエズ動乱でも、6日間戦争でもなく、現代の国際秩序に従って行動します。それは、中国、インド、ロシア、ブラジル、(合意を形成できれば)EUと並んで、アメリカが決める多極型の秩序(戦略的な合意によって追求する安定性をもたらす国際秩序)です。しかし、さらに未来は、インドの鉄鋼王、ミッタルのような人物にかかっています。
NYT 26, 2008
Nuclear Gold Rush
(コメント) 石油を大量に埋蔵し、世界に輸出しているサウジアラビアが、原子力発電所を建設する理由は何でしょうか? もちろん、地球環境問題への対応や、資源が枯渇した後の準備かもしれません。しかし、いつでも核武装できる、ということであれば、中東地域の核軍拡競争はすでに始まっているわけです。
他方、核兵器を取り締まる協定は、平和利用を妨げません。核保有諸国(そして日本)は原発ビジネスにも熱心です。
BG May 27, 2008
The ghost of Neville Chamberlain
By H.D.S. Greenway
(コメント) 宥和を目指してチェンバレンがヒトラーに会ったこと。チャーチルの批判。ベルリンの壁とキューバ危機。ケネディーがフルシチョフと交渉したこと。マッケインがオバマを批判したこと。オバマの反論。・・・アメリカは権力の正統性を示すべきであり、頑固さと無思慮なタフさを示すのがアメリカ大統領の資格ではない。
The Guardian, Tuesday May 27 2008
This mini-league of nations would cause only division
Shashi Tharoor
FT May 28 2008
America needs the United Nations
By Mark Mazower
(コメント) マッケインとオバマは、それぞれ、「民主主義国の同盟」を唱えています。マッケインは、ネオコンのRobert Kaganに従い、ロシアや中国による安保理の拒否権を無視して国際的な軍事力行使の協力と正当性を得たいのです。オバマは21世紀にふさわしいリベラルな国際主義を実行する国際的基盤がほしいのです。
どちらの提案も、国連の影響力低下を顕著に示し、安保理を無視するものです。しかし、世界の民主主義国がそのような同盟にすすんで参加するでしょうか? インド、イギリス、フランスが、国連以上に独自の同盟を必要とするでしょうか? そのような機関があれば、ダルフールなどへの国際軍事介入に積極的に合意できるでしょうか? 主権や領土を守るために、本当に、それが望ましい?
むしろ、世界の(ほとんど)すべての国が加盟する国連の場で、そのような議論を展開し、正当性を争えばよいのです。安保理改革は緊急に必要ですが、国連以外に国際的な軍事同盟を築くことは国際平和に反します。こうした主張は、第2次大戦、あるいは第1次大戦以前の世界に戻ることを意味します。当時、大国は勝手に同盟を呼びかけ、それを組み替えて、戦争と平和を選択しようとしました。
アメリカでもヨーロッパでもない地域のパワーが支持する国再秩序を実現するために、新しい原則を示さなければなりません。真に多極化した世界では、国際機関が特定の価値によって支配されることはないでしょう。国連に代えて新しい機関を作ることは不可能です。だから、たとえ困難でも、国連を改革していくことがです。
The Guardian, Tuesday May 27 2008
We have gone mad, Your Majesty, and only you can cure our affliction
George Monbiot
(コメント) サウジアラビアのアブドラ国王に嘆願します。イギリスの首相が、他の西側諸国の指導者とともに、愚かにも、石油の増産を求めているが、また、アメリカの議員には、石油をもっと供給しなければ武器を売ってやらないぞ、と脅す者もいますが、そんな言葉は無視してほしい、と訴えます。なぜなら、石油価格を上げることこそ、地球温暖化を防ぐ非常に有効な手段ですから。
しかし、同時に、西側の政府は景気を悪化させたくないのです。石油価格の高騰はインフレや消費の抑制、貿易赤字、金融引き締め、などをもたらします。もちろん、世界不況は地球温暖化の効果的な抑制策のはずですが、自分たちだけは免れたい、と思うのです。
NYT May 27, 2008
By DAVID BROOKS
(コメント) 副大統領を誰にするか、その指名は選挙対策ではなく、大統領候補者たちが自分の政権運営に対する真剣な考慮を示す機会です。
もし当選するためだけなら、オバマは、白人で年上の軍隊経験者を選ぶでしょうし、マッケインは自分より若々しい人物にするでしょう。しかし、オバマが当選すれば、彼が理想とする新しい政治スタイルを、それが全く通用しないワシントンの政治力学で実現しなければなりません。それゆえ、副大統領は権力を行使する無数の方法を熟知した、ワシントンの裏の事情にも通じた人物が必要です。他方、マッケインは民主党が支配する議会と協力しなければなりません。それゆえイデオロギーを強調して大きな戦略を決定することなどできず、むしろ超党派の同盟を築ける人物が必要です。
もしそのような人物を指名しないのであれば、彼らは政権を担えない、と見るべきです。ヒラリー・クリントンの名は出てきません。
WP Tuesday, May 27, 2008
By Zbigniew Brzezinski and William Odom
(コメント) Brzezinskiらによれば、軍事力の行使を示唆してイランに体制転換を要求するような現政権の政策は非常に愚かなものです。それは嘆かわしいことに、ロバ(愚か者)に対する政策であって、国家に対する真剣な考慮に値しません。軍事的に威嚇され、国際的に孤立させられたイラン政府は、ますます核武装を必要と感じたでしょう。
ブラジル、アルゼンチン、南アフリカは威嚇されたからではなく、それぞれの事情で核兵器開発を放棄しました。他方、インドとパキスタンは核保有し、結局、アメリカは友好関係を維持するためにそれを認めました。
「もし中国が」と、ブレジンスキーは考えます。「核拡散防止条約に加盟し、ロシアやアメリカとの核軍拡を慎重に回避している中国が、アメリカの核兵器保有を着実に削減しなければ体制転換をするぞと脅してきたら、どうだろうか? その要求には一定の法的な根拠がある。はるか以前から、すべての締約国は核兵器を削減し、最終的には廃止することに合意しているのだから。しかしもちろん、アメリカの反応はそのような要求に対する国民大衆の憤慨に支配されるだろう。アメリカの指導者たちは、イランのアフマディネジャド大統領が示した素敵な表現を真似るかもしれない。」すなわち、われわれが中国をこの地上から消してやる、と。
(中国ではなく、日本がイランやアメリカに核兵器の廃棄を求めるべきですが。)
では、どうしろ、というのでしょうか? ブレジンスキーは、イランとアメリカは安全保障上の合意を形成できる、と考えます。アメリカやイスラエルがイランの各施設を空爆しても、イランの核武装をしばらく遅らせることしかできません。逆に、それがもたらす報復や経済的コストは甚大です。逆に、イランによる核の平和利用と安全保障上の合意をアメリカと共有できれば、長期的には、イラク及び中東地域の安定化、イスラエルとアラブ諸国の和平、アルカイダとの戦いにおいて、アメリカとイランが協力する可能性もあります。
Asia Times Online, May 28, 2008
Bush 'plans Iran air strike by August'
By Muhammad Cohen
FT May 27 2008
US is unwise to deny Iran’s key role in Gulf
By Ethan Chorin
BG May 28, 2008
Reining in Iran
(コメント) ブッシュ政権が最後の瞬間にイランを攻撃するという深刻な噂があります。他方、BGはIAEAによる核施設の査察を高く評価しています。国連安保理の常任理事国とドイツを加えた6カ国(英仏独米中ロ)がIAEAの査察に加わることを主張しています。(もし日本が核廃絶を主張する真剣な国であるという評価を得ていたら、この査察に加わったでしょう。)
FT May 27 2008
Oil has reached a turning point
By Daniel Yergin
The Guardian, Wednesday May 28 2008
Gordon Brown: We must all act together
Gordon Brown
(コメント) 核兵器の拡散阻止と廃棄に並んで、石油資源の国際管理と価格安定化が、政治指導者たちにとっての真剣な話題となります。石油価格が上昇し続けることは、核兵器が増え続けることよりも着実に、世界の姿を変えるでしょう。
Yerginは、供給が容易に増加しない事情や、輸送エネルギーに占める石油利用の減少などを考察しています。
10年間で、1バレルが10ドルから135ドルに上昇し、自動車の運転にも、暖房にも、食費にまで影響している石油価格を、何とか世界の政治指導者たちで抑制する方法はないか、とゴードン・ブラウンは考えます。福田首相も同じでしょう。将来はもっと深刻です。例えば、中国の自動車は2020年までに今の3倍以上になる、と予測されています。
ブラウン首相が求めるのは、石油供給の増加を妨げるような技術・金融・政治上の障害を取り除くことです。そしてエネルギー供給を円滑に、しかも多様な形に、変えていく必要があります。イギリスにできることは、北海油田を除けば、日本にできることと似ていますが、エネルギー利用の効率化です。イギリスは低炭素経済を目指します。
また、産油諸国は石油埋蔵量のデータを隠さず、市場の価格変動を円滑にしなければなりません。石油の生産国と消費国は、価格の安定化に共通の利益を持っています。
The Guardian, Wednesday May 28 2008
Britain should be leading the search for life on Mars
Colin Pillinger
(コメント) もっと将来は、低炭素経済ではなく、USとEUが競争して、火星の開発と植民を目指すのかもしれません。
NYT May 28, 2008
By AMARTYA SEN
(コメント) 食糧危機は、多くの人々を不幸にするのか、幸せにするのか? その答えは両方とも正しい、とセンは主張します。何らかの理由で、しばしば政治が関係しますが、食糧の価格が上昇します。それでも、豊かな人々はより高価な食糧を購入できます。他方、貧しい人々は食糧を得られず、戦争に劣らず、多くの人が餓死します。
1943年のベンガル飢饉が紹介されています。それは日本との戦争が関わっている点で印象的です。当時、イギリス政府は植民地のインドを支配し、日本との戦争を続けていました。戦争は食糧価格を上昇させます。しかし都市の住民が反抗することを恐れて、イギリス人支配者たちは農村の食糧を奪って、多額の補助金による安価な供給を都市で続けたのです。その結果、農村の食糧価格はさらに上昇し、貧しい農民は食糧が手に入らなくなりました。200万人から300万人が餓死した、と言います。
現在の食糧危機も、食糧生産が減少して起きたのではありません。中国やインドなどが成長して豊かになるとともに、貧しい農村から食糧を奪うようになっています。貧しい国でも、その内部に飢餓が広がるのです。さらに、豊かな国がバイオ燃料に補助金を与えるような間違いを犯しており、それは直ちにやめるべきです。さらにセンは、貧しい農民たちが追加の所得を必要としていることを強調します。
FT May 29 2008
A 10-point plan for tackling the food crisis
By Robert Zoellick
(コメント) どこかで聞いた言葉ですが、This is a 21st century food-for-oil crisis. ゼーリックはこう呼びます。食料・石油の複合危機です。(メキシコ・ペソ危機は21世紀型金融危機と呼ばれました。)
世銀は、ローマの国連サミットで、G8に向けて、危機回避の協調に向けた10カ条の改革を要求しました。小規模農家への融資や化学肥料の供給から、アグリビジネスや政府の協力、WTOの自由化交渉など、危機を理由に何もかも盛り込んだ改革案・・・にも見えます。
WP Wednesday, May 28, 2008
By Robert J. Samuelson
(コメント) 人類が最も緊急に取り組むべき道義的な債務を負う課題は何か? それは温暖化でも、核兵器廃絶でもなく、貧困解消である、とSamuelsonは考えます。なぜ政府は解決策に取り組まないのか?
ノーベル経済学賞の受賞者、韓国やペルーの元首相、メキシコの元大統領など、21名の委員会が報告書を出しました。長期の成長加速には共通の特徴があったのです。1.貿易を自由化し、外資を求めた。2.政治的な安定と有能な政府(必ずしも民主主義ではない)。3.高貯蓄率、高投資率。4.経済の安定と、財政黒字、インフレ抑制、そして生産水準が広い範囲で落ち込まない。5.市場による資源配分を歓迎する(政府が経済活動に直接介入しない)。
Samuelsonは、これらを解釈して、グローバリゼーションは正しい、と考えます。しかし、貧しい国を外から介入して豊かにすることはできない、とも考えます。ではなぜ、貧しい国は次々に学んで、この特徴を発揮しないのか? それは既得権による政治が支配していることと、文化が邪魔している、と主張します。
アメリカであれ、世界であれ、グローバリゼーションが貧困を解消するには、政治と文化が改革されるべきである。そうでなければ、アメリカの貧しい労働者と彼らの不満を代弁する「進歩派」が世界の貧困解消という希望を奪ってしまう、と。
WP Wednesday, May 28, 2008
An Unwanted League
By Thomas Carothers
(コメント) コミュニケーションの発達する世界で、アメリカ政府が自分たちの期待した反応を得られずに失望を繰り返すとしたら、他の国や企業はどうすればよいのでしょうか? それはしかし、ますますアメリカに関心が集まり、多くの者が利益を守り、新しく得たり、失ったりすることについて、アメリカを責めるからです。
ジョン・マッケインの唱える「民主主義の同盟」はどうでしょうか? 民主主義であるということで、それほどグローバリゼーションから共通の影響を受けるのでしょうか? この論説は、アメリカなら何でもやれるはずだ、という「ワシントン・バブル」を破裂させる方が良い、と考えます。
FT May 29 2008
Uncomfortable truths for a new world of them and us
By Philip Stephens
Peterson Institute, 30 May 2008
Perceptions and Realities of Globalization
Jacob Funk Kirkegaard
(コメント) Stephensも、グローバリゼーションにおける政治と経済との乖離を強調します。(The trouble is that the politics of globalisation lags ever further behind the economics.) しかも、危機の多くは「ワシントン・コンセンサス」の結果であった、と主張します。旧勢力や旧秩序は新しい現実に対応していないのです。それにもかかわらず、グローバリゼーションを実現する過程で、教育さえ重視しておけば、豊かな諸国にも十分な富の増加が「滴り落ちる(トリクル・ダウン)」と信じているのです。
新しい国際秩序をもたらす過程は、これまで200年以上も政治経済統合の最善の地位を占めてきた欧米諸国による抵抗にあって容易に実現しないでしょう。つまり、権力の配分は、新しい富や安定性をもたらす条件と矛盾するかもしれないのです。
Kirkegaardは、グローバリゼーションへの不満を吸収するために、アメリカは教育システムと医療保険制度を改革しようとすることを指摘します。
FT: Comments
Responses to “Preserving the open economy at times of stress”
(コメント) ローレンス・サマーズの論説に関するFTにおけるコメントです。
Kevin H. O’Rourke: グローバリゼーションは累進課税や労働規制と矛盾しない、ということを歴史から考察しています。・・・自由貿易が進む過程で、ヨーロッパ諸国、とくに小国は、こうした制度を実現しました。それは国際競争によって阻まれるのではなく、むしろ求められたわけです。
Jagdish Bhagwati: サマーズの主張に条件をつけます。・・・貿易はアメリカ労働者の賃金を低下させていない。むしろ技術革新による賃金低下を抑制している。だから、サマーズの主張の前提を受け入れられない。政治家やメディアがもっと真実を伝えなければならない。
それにもかかわらず、貿易によって労働の不安定性・不確実さが増している。これは比較優位があまりにも小さく、頻繁に変化しうること、労働節約的な技術革新が起きること、が原因である。保護主義でない対策が必要だ。
Jon Stern: グローバリゼーションが労働者たちの利益を損なわないことを合意するためには、新しい労働契約の形態が求められる。戦後の自由主義が生き延びるには、市場統合による痛みを緩和する政策が各国でとれるような余地が十分に認められていたからだ。
The Guardian, Thursday May 29 2008
Fidel Castro
(コメント) 不正義、抑圧、自由も民主主義もない、という理由で、キューバに対する禁輸措置を継続する、という演説をしたオバマに対して、カストロ首相は我慢できない、黙っておれない、と感じたようです。
・・・アメリカが、隣国であるというだけで、われわれのような小国に対して行ってきた数々の犯罪行為を忘れたのか? この場合、禁輸とはジェノサイドに等しいのだ。それに耐えて暮らす英雄的な国民に対する侮辱である。アメリカは、われわれから優秀な科学者や医者を奪い続けてきた。アメリカのように、大量の人々を殺す武器を開発し、製造することが正気の、誇りある国のすることか? 自由や民主主義や人権に対して敬意を払っていると言えるのか?
・・・キューバは世界中で、教育、医療、スポーツ、文化、科学研究により、貧しい諸国を支援してきた。キューバはイデオロギーに屈したことはない。ハリケーン・カトリーナの被害にあったニュー・オーリンズにも支援を申し出た。人民の善意と決意こそ、尽きない資源である。
ワシントンに新しい政治を実現したい、という信念があるなら、オバマが大統領になったとき、イランとも、キューバとも、対話によって新しい関係が結ばれると期待します。
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The Economist May 17th 2008
Barbarians at the vault
Disasters in China and Myanmar
Travel and tourism: Asia, beware Benidorm
Travel and tourism: A new itinerary
Lexington: Why not both?
Paradise lost: A special report on international banking
The UN and humanitarian intervention: To protect sovereignty, or to protect lives?
(コメント) 今号の特集記事は注目したにもかかわらず、不満な内容でした。一般記事にも、欧米の銀行が失敗したせいで、アジア(中国、日本、韓国)の銀行がうまくいっているような誤解を与えてはならない、と主張しています。特集記事全体もそうでした。欧米の金融ビジネスは失敗したが、それでも最高だ、という矛盾した主張です。
公的な規制も解決策ではない,と。・・・あえて言えば、バグワッティが自由貿易で主張したような、金融ビジネスにおける「ドラキュラ効果」を強調することです。
面白い記事は観光業についてです。ドバイの奇跡的な観光業開発はNHK特集でも楽しみましたが、The Economistの以前の特集や混合の記事が興味深いです。そして,なぜオバマはヒラリーを副大統領候補に指名できないか,という解説記事がおもしろいです.
他方、感心したのは、四川大地震に対する中国政府の変化や、援助を拒むミャンマー政府に対する人道主義的な国際介入の可能性を考察した記事です。