IPEの果樹園2008

今週のReview

5/5-5/9

IPEの風

*****************************

世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

*****************************

******* 感嘆キー・ワード **********************

アメリカの金融政策, 中国の政府と人権, サーカシビリ大統領, 食糧1 と石油1, サマーズのグローバリゼーション政策

******************************

ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


WP Thursday, April 24, 2008

The Fed Walks a Tightrope

By Jagadeesh Gokhale and Thomas Firey: From the Cato Insititute

(コメント) アメリカの金融政策(そしてバーナンキ議長)が信頼を失いつつあります.インフレ(や次のバブル)を招くのではないか? ドル安が行き過ぎではないか? 金融ビジネスを救済するために金融緩和して大丈夫か?

日銀もそうですが,アメリカ連銀も(条件次第では)矛盾した使命が与えられています.成長率を高めて雇用を維持したいが,インフレを抑制しなければならない,と.WPの論説はこの点を強調し,「宴会の最中にお酒を取り上げる "take away the punchbowl before the party really gets going."」仕事であるという慣用句を指摘します.

Gokhale and Fireyはさらに,1970年代の石油ショックなど,供給側に要因で起きたインフレーションは金融引き締めで対処することができたけれど,インフレの記憶が薄れた今では,それが難しい.1980年代,90年代のショックは,住宅市場や金融市場,不良債権の増大を介して,支出を減らす影響が大きくなっている.そこで,デフレの心配が以前よりも強い,と言うわけです.

その意味では,バーナンキの積極的な金融緩和を支持するのですが,それは矛盾した要求の間の綱渡りです.そこで,これ以上の金融緩和はしない方が良い,という理由を挙げています.すなわち,1.金融市場は民間部門が増資しなければ解決しない.金融政策の問題ではない.2.構造調整は避けられず,一定の需要の減少は覚悟しなければならない.住宅市場からエネルギー開発に投資が転換する必要がある.

そのような調整を金融政策は引き延ばすのではなく,円滑に促進するべきなのです.そうでなければ,金融緩和を重ねて,インフレとインフレ期待が生じ,インフレ抑制の信頼性を失い,投資の転換が遅れて,成長を損なうでしょう.

Forbes 04.25.08

Rethinking Fed Policy

Peter Morici

SPIEGEL ONLINE 04/29/2008

What the Fed Could Learn from Europe's Central Bank

By Christian Reiermann

FT April 29 2008

The Fed should hold rates for now

NYT April 30, 2008

Fed Cuts Rates by a Quarter Point, and It Signals a Pause

By STEVEN R. WEISMAN

FT April 30 2008

The dovish Fed

WSJ May 1, 2008

The Big Easy

(コメント) Forbes誌が載せたPeter Moriciの論説は,バーナンキが金利を下げているのは,低金利が金融市場を回復できるからではなく,ドル安が対外赤字を減らす均衡回復過程だからである,と主張しているようです.オープン・マクロ経済学の教えるように,金利の低下は資本流出と通貨の減価,それゆえ,純輸出の増加によって内的な均衡を回復させるのでしょうか?

ただし,もし小国であれば,そうなるでしょう.アメリカは小国ではないのです.むしろアジア諸国との通貨対立が懸念されます.

そこで,ECBとの対比が注目されます.なぜこれほど対照的な行動を取るのか? SPIEGELの記事は,冒頭に,トリシェJean-Claude TrichetとバーナンキBen Bernankeの服装の好みが対照的に描かれています.それが服装やスポーツの趣味なら好きなようにしてかまわないけれど,金融政策や危機への対応となると,全く異なっているのは不信を生むでしょう.為替レートの傾向はそれを示しています.

バーナンキが新しい議長に指名されたとき,FRBはインフレ・ターゲットという近代的なルール(そして市場との明瞭な情報交換)を採用し,通貨供給とインフレとの関係にこだわるECBを時代遅れにしてしまうはずでした.

昨年末まで,バーナンキは冷静な対応を取っていましたが,サブプライム・モーゲージを使った金融商品に投資したウォール街の混乱によって正気を失い,「自ら株価の奴隷になった」と金融政策の専門家Willem Buiterthe London School of Economics.)は指摘します.それは,あつものに懲りてなますを吹く,グリーンスパンの失敗を繰り返すものでしょうか?

ECBは銀行を助けるが,経済全体には手を加えないようにする.それがインフレをもたらすことを心配するから.ヨーロッパから見れば,グリーンスパンやバーナンキは,1930年代の大恐慌の(そして日本のバブル破裂後に日銀が処理を失敗した)経験によって受けたトラウマに苦しんでいるのです.バーナンキは研究者として,その分野の愛好家でした."I am a fan of the Great Depression."

ECBとトリシェは,もっと有利です.物価の安定が唯一の目標であり,それはECB(もちろん,特にドイツ)が1920年代のハイパーインフレーション,第二次大戦後の通貨秩序の崩壊を経験したトラウマを残しているからです.FRBと違って,ECBは金融市場のひっ迫に断固とした姿勢で臨み,しかし,物価の目標は変えない,という姿勢を市場は信じています.

両者の異なった考え方は,異なった政策変更をもたらし,その影響で経済状態もヨーロッパよりアメリカで振幅を強めます.アメリカのジェットコースター経済をヨーロッパは好みません.

FTは連銀に次の金利下げを見送るように求めます.いくら金利を下げても消費は削られ,不況へのリスクはなくならない.他方,インフレのリスクは増すばかりだ,と.

結局,アメリカの金融政策は追加の利下げを決定しました.NYTの記事は,二人の理事がインフレを心配して利下げに反対投票した,と伝えています.この金利下げが急激なインフレやドル暴落を呼ぶとは言えませんが,家計や企業の支出を刺激して不況を緩和する効果も疑わしいでしょう.M.フェルドスタインの弱い反対意見とアラン・H・メルツァーの厳しい批判が紹介されています.

いよいよ「ヘリコプター・ベン」の本領発揮か,とFTは辛辣です.短期的には,石油など,国際商品価格の上昇にますます資金を供給する姿に,WSJの論説も(なぜか?)批判的です.

FT April 24 2008

Why this crisis is still far from finished

By Mohamed El-Erian

FT April 27 2008

Global adjustment will be long and painful

By Wolfgang Münchau

FT May 1 2008

No quick end to the credit squeeze

(コメント) 価格下落の底が見えて,金融市場の不安が解消されるのではないか,という楽観論に対して,それは期待できない,とFTは悲観しています.金融市場の増資や新しい規制について,見通しは立っていません.FRBはますますインフレと不況のジレンマ(しかもグローバルな対立)に向かうでしょう.

Wolfgang Münchauは「多重危機multiple crises」と呼びます.住宅市場,信用,銀行,食糧,石油,などが一斉に危機を発生しているからです.その理由は何か? 世界的な規模のマクロ調整が起きているからであり,「危機」とはギリシャ語の語源で「転換点」を意味している,と紹介します.

このショック(a huge global macroeconomic shock)の意味をどう理解するべきか? Münchauの理解では,10年前の金融緩和に始まり,それは「ブレトン・ウッズU」といういかさま金融によって世界を無謀な好景気に舞い上げてまったようです.さまざまな不均衡がバブルを伴って維持されていました.

まるで日本の狂騒が世界規模で再現したような話です.過剰な流動性が供給されて,世界各地で株価だけでなく,不動産や住宅にもバブルを生じます.これらが破裂した今,新しい均衡を求めて調整されるでしょう.重要なことは,アメリカの不況がいつ始まる(始まった)かではなく,それがどのくらい長引くのか,です.日本やドイツは回復まで10年を要しました.

世界インフレが高まると金融政策の動きを制約し,財政政策にもすでに限界があるから,為替レートに調整の負担が偏るだろう,と指摘します.インフレは調整過程を長引かせる,と主張しますが,日本のケースはそれが逆であるように思います.いずれにせよ,アメリカで一層のドル安が容認(要請)されるなら,国際貿易・通貨・経済摩擦や政治不安を惹起するわけです.

FTは,イングランド銀行の副総裁が描く,債券市場の底値による買い戻し,という楽観的な回復についても否定的です.

WSJ April 29, 2008

The Fed Must Strengthen the Dollar

JOHN L. CHAPMAN

BG April 30, 2008

How Europe avoided our mess

Robert Kuttner

May 1 (Bloomberg)

Committee to Save the World Plans 10th Reunion

Caroline Baum

FT May 1 2008

Regulators must reform Wall Street

William Cohan

(コメント) WSJはウォール街の意見として,金融機関を守ってくれるバーナンキの積極的な金融緩和と救済融資に感謝しているのではないか? と思いましたが,そうでもないのです.その理由とは,一つにはインフレやドル安(どちらも資産市場への投資を妨げる)が嫌いであること.そして,繰り返し言及されたような連銀の不況回避とインフレ抑制を矛盾してとらえる姿勢に不満があること.

いつからフィリップス曲線がよみがえったのか? という感覚を私も持ちました.この論説がM.フリードマンとE.フェルプスを指摘して,1980年代のマネタリスト革命を再現するまでもなく,長期的には二つの目標は矛盾しません.価値の安定した通貨を維持することが,金融危機を回避し,不況も抑えるでしょう.

ウォール街としては,バーナンキにその立場を守ってほしいのです.ケインズ的なジレンマで間違いを犯すことなく,つまり,不況を恐れず,通貨価値の安定化を優先せよ.その方がウォール街の利益にもなる.

Robert Kuttnerは,米欧の比較から,全く異なる考察を示します.上記の論説と同じく,連銀の金融緩和は消費を刺激しません.なぜなら,ドル安が輸入品の価格を引き上げて,長期のインフレ予想と金利を高くしたからです.アメリカが金融緩和の神話に耽らなければ,そして,中国からの輸入と資本流入にこれほど深く頼らなければ,深刻な金融逼迫と危機は起きなかったでしょう.すなわち,ヨーロッパを見よ,と.

EU委員会の副委員長,ドイツ人のGunter Verheugenは述べます.「強いサービス経済を作るために,われわれは強い,競争力のある産業基盤を必要とする.安くすることではなく,品質の改善を目指せ.社会水準を低下する競争に頼ってはならない.」 アメリカが金融的なやりくりで裕福に暮らしている間,ヨーロッパは健全な経済の均衡を追求したのである.ヨーロッパでは革新と社会的な保護とのバランスが主要な論争となっている,と.

10年ほど前には,世界を救うチームとして雑誌Timesの表紙を飾った3人(Alan Greenspan, Robert Rubin and Lawrence Summers)は,今,どうしているのか? Caroline Baumは,アメリカが不況になれば,彼らに相談する政府も銀行もなくなった,と指摘します.

そこで表紙をデザインしたPaul McCrae Montgomeryの意見を聞いたそうです.すると,同様に絶頂にあった3人が並んだ,19931219日の表紙を教えてくれました.ただし,それは自動車産業の3人です.アメリカ自動車産業のビッグ・スリーがどうなったかは,今や明白です.一人が表紙に選ばれるのは特異な,持続する天才によるでしょう.しかし,3人が並ぶのは,彼らの背後に上げ潮があったからである,と.

William Cohanは,史上初の英米統一金融市場規制・監督が動き出すことを紹介します.しかし,すべてのカルテルと同じように,金融業界はこのような改革を好みません.


Bubble trouble FT April 24 2008

China’s build up of FX reserves FT April 24 2008

Howard W. French The Need for Unanimity in China Exacts a Hidden Price The International Herald Tribune, 24 April 2008

Kishore Mahbubani China's view of Tibet LAT April 25, 2008

SERGE SCHMEMANN Olympic Protests, Then and Now NYT April 28, 2008

Pranab Bardhan Virulence of nationalism – of China and others like India – does not bode well YaleGlobal, 28 April 2008

Jason Dean & Andrew Batson Games Tensions on Slippery Track The Wall Street Journal, 28 April 2008

(コメント) 北京オリンピックまで,あるいは上海万博まで,中国の株価は上昇するに違いない,という俗説を信じて購入した投資家たちは憤慨し,絶望していることでしょう.上海の株価指数は半減しました.

市場に任せると主張してきた中国政府も,規制や税制,資本流入規制を変えて,株価の回復と安定化を図ります.他の記事は,資本流入によって人民元の増価抑制が難しくなっている,と指摘します.

ある意味では同様に,西側の人権に対する不満はボイコットの要求を強め,他方,中国人には愛国心から西側への不満と不買・愛国運動を強めています.双方の政府が市民に波及するインターネットや携帯電話に翻弄され,人々が政府への不満や不信に向かうことを心配して,積極的な打開策を示そうとしません.

世界市場への参加と成長,グローバリゼーションがもたらす愛国心やナショナリズムについて,各国政府・政治家たちは正しい対応を学ぶ必要があるでしょう.おそらくもっと協力して.ナショナリズムには国家の政治的統一を促す役割があります.しかし危機を利用して権力を強め,保身を図るだけでは,金融不安であれ,民族対立であれ,事態を改善する力を得られません.

Pranab Bardhanは,インドでも,日本でも,同様の現象が起きていることを注意します.超国家主義に至る西欧の歴史を,アジア諸国が学ぶべきです.

Jason Dean & Andrew Batsonも対立の緩和を求めます.中国の国民はチベットが,古来,中国の一部であり,西側政府は分離独立主義の運動に手を貸している,と憤慨します.ここには深刻な情報のずれがあるのです.

人権や外国投資を巡って,中国側には急速な前進を経てきた,という自信があります.それに対する西側の不満や非難は,何かイデオロギー的な,ソ連との対決姿勢を連想させます.西側の多国籍企業は,この対立によって莫大な利益を失うでしょう.また,共産党もナショナリズムを弾圧する側に回りたくないのです.中国語のインターネット空間では米中冷戦が始まっています.

多数の貧しい中国人が,西側の主張に理解を示す都市の知識人や富裕層を非難する機会と口実を得たことに興奮し始めています.政治が機能しなければ,オリンピックは内外の衝突を加速します.

Francis Fukuyama China's powerful weakness LAT April 29, 2008

Andy Mukherjee MIT Economist Cracks Big Puzzle of China's Rise April 30 (Bloomberg)

GEOFFREY CROTHALL Workers' Rights in China WSJ May 1, 2008

William Pesek India Is Still the Tortoise, China Is the Hare May 1 (Bloomberg)

China's 'rational' nationalism CSM May 2, 2008 edition

Da Wei China's pride versus Western prejudice Asia Times Online, May 2, 2008

(コメント) Francis Fukuyamaは,人権問題が起きるのは,中国政府や共産党の支配が強すぎることが原因ではなく,むしろ弱すぎるのだ,と主張します.1978年の改革によって,中国は地方政府の企業設立が認められ(郷鎮企業),富と権力の配分を大きく変えました.それは社会的混乱と不満の源泉にもなっています.

欧米諸国の歴史を引いて,Fukuyamaは中央政府が弱体である時期には地方の紛争が激化した,と注意します.地方に割拠する豪族たちが中央の独裁者を必要とするのであり,連邦制度は弱体なまま,法や人権は無視されてしまいます.人民に責任を負った中央政府を強化することで,人々は自由を回復できる,と.

Andy Mukherjeeは,上記の論説と対照的です.個人の所有権を確立し,企業や銀行が政府・権力から解放されて,民間取引を自由に行えるようになることが,近代的な成長の条件であった,と考えます.もしそのような条件(近代的な法・社会制度)が無くても中国が成功したとすれば,それを正しく理解することは,これから発展する世界(例えばジンバブエ)にとって非常に重要です.

MITのYasheng Huangは,まだ所有権が確立されていないにもかかわらず,郷鎮企業が叢生した1980年代前半を,中央政府・共産党による支配が地方に及ばなくなった時期,としてプラスに評価します.もちろん,それはケ小平が毛沢東の死後,その影響力を回復したからです.その伝統を継承しつつも,中国の所有権と資本主義革命は,まだ,これから達成されるのです.

GEOFFREY CROTHALLは,労働法や労働市場の整備を主張しています.他方,中国の成長に比べて,インフラの不足や官僚制の非効率により,インドの成長は減速する,とWilliam Pesekは考えます.

最後の二つの論説が扱うのは,再び,ナショナリズム(あるいは,漢民族主義Han nationalism)です.外国と中国政府との論争は,次第に草の根のナショナリズム,インターネット型の暴動に向かっています.それは中央政府の支配が弱まることを意味します.オリンピックの聖火を迎えて,政府の唱える「平和的な台頭」や「責任ある国際国家」という理想は,彼らの望むことではなくなりつつあるのです.

Da Wei New wave of Chinese nationalismと注目する最近の現象は,西側の言論や市民社会の中国批判(反・中国イデオロギー)に対応して,新しいナショナリズムが社会運動の質を拡大していることを示します.それは,偏見と威信の問題,として理解されます.

この状態では,すべての関係する社会を貧しくするでしょう.すなわち,チベットも,中国も,西側社会も,その目標を失うのです.国家建設と言う意味では共通しているチベットと中国が,この危機をチャンスに変えるとしたら,西側社会も学んだように,彼らが多民族・多文化の統一と自治を尊重した国家建設に向けて深く協力し,それを西側諸国も認めて支援することでしょう.

チベットは中国の一部か? という問いに,単純な答えはないのです.

Amitai Etzioni For the good of all its people, Israel must pursue diversity The Guardian, Wednesday April 30 2008

(コメント) イスラエルはユダヤ教の国家であるべきか? パレスチナは,チベット(ダライ・ラマ?)は,また,日本(靖国?)はどうか? ・・・フランスやイギリス(British-ness?),ドイツ(ネオナチ?),・・・ソ連からロシア(チェチェン?),アメリカ合衆国(ネオコン?)はどうか?

確かに国家には社会を保護することで正当性を維持し,社会は一定のコミュニティーを前提している(あるいは常に再生し,将来に向けて創造する)ために,共感を高め,重要な価値を共有し,歴史的な記憶やアイデンティティーを強化しようとします.しかし,単一の国家宗教や単一民族・エスニシティーを強制し,マイノリティーを完全に同化してしまう政策(つまり,文化的なジェノサイド)が正しいのではない,とAmitai Etzioniは考えます.

無色透明な,中立国家を目指して,社会を何ものでもない合成物・アマルガムに変えること,あるいは,国家によるナショナリズム運動や愛国心教育がもたらす幻想に頼ることは,危険で,不幸な計画です.むしろ,現実の社会は多様な価値や必要に依拠していて,それぞれが他者を攻撃することがないように,互いの価値を認め合い,さまざまな共有できる価値や必要な機能を支持するように,国家の姿を変えていく柔軟性が必要です.


WP Friday, April 25, 2008

America's Power Paradox

By Michael Gerson

(コメント) ブッシュ政権を批判して,すべての大統領候補たちは多角主義を称えます.次の戦争は単独で行わない.国際的に分担する,と.

しかし,今ほど国際機関が必要とされているときはないのに,国際機関が効果的でないことも明らかです.コソボ,ルワンダ,ダルフール,ビルマ,そしてイランの核問題.現政権の外交を失敗と非難することは容易だが,次の大統領に外交的な魔法が唱えられるわけでもない.中国やイランが,突然,優等生に変わることなどない,と.外交政策は基本的に同じものとなるでしょう.

国際的な犯罪や脅威に対して次の大統領が行うことは,1.国連の改革(中国とロシアを抑えるために,日本やインド,ドイツ,ブラジル,などを常任理事国に加える),2.NATOなど,他の国際機関の活用,3.国連に代る「民主主義国家連盟」の創設,4.有志連合(つまりブッシュ方式),です.

結局,最後の選択しかできないでしょう.これからも危機に際しては,アメリカの影響力が欠かせません.しかし,アメリカが望むことを行えるとは限りません.

FT April 25 2008

The curious Syrian nuclear affair

BG April 26, 2008

Bush gets real on North Korea

(コメント) 大量破壊兵器やテロと結び付けられるシリアと北朝鮮(そして協力関係)について,アメリカやイスラエルは何を知っているのか? 何をするのか? それがどこまで正しいのか,あるいは,間違っているのか?


JGBs sell off FT April 25 2008

Inflation is good news for Japan FT April 28 2008

Japan’s economy FT April 30 2008

WSJ May 2, 2008

Running on Empty

(コメント) 日本と言えば,その国債市場(規模と不安)だけが関心を引くようです.世界がインフレに向かっているとしたら,長期資本市場では混乱が生じるかもしれません.特に,永久に金利が低いように見える日本で? ・・・否,永久にデフレで苦しむかに見えた日本だから,これは幸運の始まりでしょうか? 株価が下落し,国債価格も上昇するより下落すれば,どうなるのか?

これに加えてWSJは,政治的な混乱が続く日本で,1990年代が再現されている,と考えます.税金を減らすなら分かるが,せっかく下がった税率を復活させて道路や橋を作る,という説明に憤慨します.しかも,日本の法人税は高すぎる,と.


FT April 25 2008

Lunch with the FT: Mikheil Saakashvili

By Gideon Rachman

(コメント) 話題のグルジア大統領,サーカシビリです.

自慢のヘリコプターで昼食に現れ,ロシア系住民の独立運動や億万長者について冗談を飛ばし,グルジアに何人くらい億万長者がいるのか? という記者の問いに,10人,と答えます.そのすべてがあなたを支持するのか? と訊かれて,一人は反対していたが,数か月前,ロンドンで死んだ,と答えて,にやり,と笑ったそうです.・・・自然死らしいですが.

人口470万人.1991年,ソビエト連邦が滅び,グルジアが再生したとき,彼は23歳でした.フランスのストラスブールと,アメリカ,ニューヨークのコロンビア大学で法律や人権を学び,シュワルナゼ政権に入って内務大臣を務めているときに辞任します.あのとき,国は犯罪組織に乗っ取られる危機に直面していた,と言います.

2003年の「バラ革命」で権力の頂点に登りつめ,大統領選挙では97%の支持を得て,36歳の大統領になります.しかし,今では彼の政策に抗議するデモやストライキに直面します.批判的な民間テレビ局を閉鎖し,52%の支持で再選されますが,投票を操作したと反対派は主張しています.

彼の理想は,グルジアをオランダのような小国として繁栄させること,黒海の端,ヨーロッパとアメリカの先端に位置することです.

その激しいエネルギー,高度な知性,強烈な自由主義の理想が,記者を圧倒します.しかし,と考えたそうです.このような男が,あと何年,誇大妄想に侵されずに権力にとどまれるものだろうか・・・? 彼はまだ40歳です.


IHT Friday, April 25, 2008

Trade agreement needed now

By Angel Gurría

WSJ April 25, 2008

Food and Free Trade

By NANCY BIRDSALL and ARVIND SUBRAMANIAN

NYT April 26, 2008

Stem Rust Never Sleeps

By NORMAN E. BORLAUG

The Observer, Sunday April 27 2008

As the world begins to starve it's time to take GM seriously

Robin McKie

The Guardian, Tuesday April 29 2008

Keeping the crop in hand

Peter Mandelson

FT April 29 2008

Food crisis is a chance to reform global agriculture

Martin Wolf

TYLER COWEN Freer Trade Could Fill the World Rice Bowl NYT April 27, 2008

James Carroll Hunger affects us all BG April 28, 2008

Ian Williams Picky feeders The Guardian, Tuesday April 29 2008

THOMAS FULLER 5 Asian Nations Are Weighing a Rice Cartel NYT May 1, 2008

(コメント) 石油価格が上昇し,食糧価格が上昇するとき,人々は市場と自由貿易の原理を信じることで,価格が新しい均衡を見出すだろう,と安心できるのでしょうか? 逆に,各国が資源確保や農産物保護に向かっても,世界の分裂や対立や資源の浪費は深刻でない,と主張すれば良いのでしょうか?

Angel GurríaBIRDSALL and SUBRAMANIANは,ドーハ・ラウンドの完成を主張します.石油であれ,食糧であれ,高価格であることは問題の解決を促すのです.生活を脅かされる層には財政的な支援が必要です.しかし,高価格によって高まる自由化の機会を逃して,自国に閉じこもることは間違いです.

さらに長期的な解決のためには,農産物の輸入を制限して自給を促す補助金ではなく,遺伝子組み換えによる品種改良や,より安全な原子量発電所の建設など,技術革新のために,もっと財政支援するべきでしょうか? Peter Mandelsonは,ヨーロッパも独自の厳しい基準を設けて,遺伝子組み換えによる農産物の品種改良に取り組むよう求めています.

Martin Wolfは食糧危機と金融危機との関係を考察します.

NYT April 30, 2008

The Food Chain: Shortages Threaten Farmers’ Key Tool: Fertilizer

By KEITH BRADSHER and ANDREW MARTIN

(コメント) 食糧危機の世界情勢を図で一覧してくれます.また,化学肥料の優れた効果と,石油価格の上昇や生産能力の限界が化学肥料の入手困難から食糧危機につながります.しかし,世界人口に合わせて化学肥料に頼ることは,結局,自然環境を破壊しないのでしょうか?

Asia Times Online, Apr 30, 2008

Oil in 2012: $200 or $50?

By Martin Hutchinson

WP Wednesday, April 30, 2008

Start Drilling

By Robert J. Samuelson

(コメント) 2012年までに,石油価格は1バレル200ドルを超える,という予想もあれば,50ドルに低下する,という主張もあります.その需要(主要国の景気)やドルの価値(インフレ)が分らないからです.Martin Hutchinsonは下落する,と予想します.株でも,住宅でも,価格が永久に上がることはないのです.

Robert J. Samuelsonは,われわれが10年前,20年前に正しい行動を取らなかったせいで,石油価格に対する影響力を失ってしまった,と考えます.驚くべきことに,アメリカは世界第三位(サウジアラビア,ロシアに次ぐ)の埋蔵量を持つ産油国なのです.だから,まずアメリカが石油を採掘して自律性を回復し,世界市場の需給を均衡するように求めています.


LAT April 27, 2008

The IMF's dwindling fortunes

By Mark Weisbrot

WSJ May 2, 2008

ADB Adrift

(コメント) IMFやADB(アジア開発銀行)に対する一定の期待は今もあるはずですが,その実情は悲観的な変化が目立つようです.

IMFは財政が破たんし,赤字を削るために自らに対して(かつて貧しい赤字国に押し付けた)「構造調整」を課して,スタッフや事務部門を縮小しつつある,というわけです.その理由は,融資額が1050億ドルから100億ドル以下に減少したことです.赤字国政府はIMFの融資(厳しい政策変更の条件を付く)を求めず,国際通貨制度の維持管理においてIMFは重要な役割を果たせなくなったのです.

IMFの意思決定はアメリカが支配的で,多くの場合,融資される発展途上諸国の意見が反映されませんでした.また,ラテンアメリカやアジア,ロシアへの融資条件は批判を招き,その後の成果も広く支持されない,厳しいものでした.IMFは一部の債権国によるカルテル,偏ったイデオロギー,特殊利益を代表する,と批判されたのです.

また,今週末,マドリードで開かれたADBの理事会は,その存在を脅かす内容であったようです.なぜなら,アジアは世界でも有数の成長と外貨準備を保有する地域として急激に変化し,1966年,ADB創立時の条件とかけ離れているからです.発展途上諸国は資本が調達できず,共産主義圏は資本主義を拒み,成長を開始することが最大の課題でした.

もはや民間銀行に代って,中国やインドにゼロ金利で融資する必要はありません.ADBは縮小して,貧しい国への援助機関に模様替えするべきだ,とWSJやアメリカは考えます.


FT April 27 2008

America needs to make a new case for trade

By Lawrence Summers

(コメント) Lawrence Summersは,自由化と世界市場統合を維持するための主張を整理しつつ,さらに,グローバリゼーションの政治的な基礎を再生するための議論が必要だ,と考えます.

アメリカの国際主義が後退する傾向はますます強まっています.これについては,1.貿易の利益を否定する者には,消費者や経済全体を視野に入れて啓蒙する.2.アメリカの関税率は低く,FTA交渉が盛んになる中では,重商主義的な視点でも自由化が重要だ.3.アメリカ経済の分配が不平等化しているのは,貿易よりも新しい技術のせいだ.4.貿易はすべての利益にはならないが,所得の不平等や不確実性を抑える対策を取るべきだ.

こうして,新しい国際主義を再生したうえで,サマーズはさらに問題を掘り下げます.すなわち,国民の間に対外経済政策の目標を疑う気持ちがある,と.すなわち,世界経済が繁栄することは,本当に,自分たち(アメリカの,たとえば,下層労働者)の利益なのか?

確かに,賃金を引き下げる圧力が加えられ,資源をめぐる新興諸国との競争が激しくなり,何よりも,経済活動が国家を超越してしまい,そのような分野の富を蓄積する富裕層は国家の役割を否定し,規制や増税にことごとく反対する.国家は,彼らのために役立つような若者を育てるだけで良いのです.

しかし,雇用や所得の不平等や不確実性を増すグローバリゼーションに対して政治的な支持を国家が与え続けるためには,累進課税や労働組合,厳格な規制,公共財の供給が絶対に必要です.一握りの超国家的富裕層ではなく,労働者や中産階級が支持するようなグローバリゼーションを実現するための政策が求められる,と.

それは,次回(55日),ということです.


LAT April 28, 2008

The U.S. and China are over a barrel

By Michael T. Klare

Asia Times Online, Apr 29, 2008

India, China hold G8 options

By Sreeram Chaulia

(コメント) アメリカと中国が世界の石油資源を奪い合うのは正しいことか? アメリカは中東や中央アジア,アフリカの油田地帯で,政治的・軍事的な関与を強め,それに対抗して,中国も同様のアプローチを展開しつつあります.

しかし,それでは需要の増加に対して石油の供給が増えることはないし,価格は上昇し,さらに政治対立や軍事支出が増えるでしょう.Michael T. Klareは米中の協力を主張します.特に,価格が上昇する中で,それが変動することを抑制して石油市場に協調介入し,戦略備蓄を形成します.価格水準が安定することで,新油田の採掘や代替エネルギーや節約の技術開発が促されるでしょう.(F.C.バーグステンも同様の主張をしました.)

国連安保理の改革に加えて,G8の拡大(G15)も提案されています.次第に現実味を帯びている,と思います.平和と経済的繁栄を実現する国際協調の制度化は,それらが一緒に議論され,実現することで,一層の推進力と新しい実効性を得るかもしれません.


NYT April 28, 2008

Pariah Diplomacy

By JIMMY CARTER

(コメント) 孤立させるのではなく交渉を重ねることで,ネパールの毛派が武装闘争を放棄して選挙に参加したように,ハマスもイスラエルとパレスチナの和平に参加する(少なくとも,その可能性はある),とカーターは考えます.


CSM April 28, 2008 edition

Rwanda's comeback

By Gerard DeGroot

(コメント) この論説は,部族間の大量虐殺から14年を経て,復興したルワンダの姿を紹介します.1994年,ツチ族の約83%がフツ族によって殺された,と述べています.生き残った者も精神的・肉体的な傷を負い,女性たちはレイプのトラウマに苦しみ,HIVの感染が広まった,と.

しかし,その後のルワンダは憐みよりも称賛に値します.キガリに建つ虐殺の記念館は,ツチ族とフツ族とが言語や文化を共有する同じルワンダ人である,と説明しています.植民地支配や土地の分配において,この社会的な差別が部族対立にまで強められたのです.

ルワンダの復興は,国内の平和と協調を確立することにかかっていました.憲法が書き改められて,人々は政府や政治家だけでなく,裁判所や軍隊,警察に対して,驚くほどの信頼を示します.改革の重要な要素は,女性の権利を高めることでした.議会に占める女性の割合は47%であり,今や世界でも最高水準です.

首都キガリはアフリカでも最も安全な都市になり,観光や外国資本を集めて,ルワンダはアフリカのモデルになりました.


FT April 28 2008

Do not panic over foreign wealth

By Gideon Rachman

(コメント) 政府系投資信託(SWF)が政治的に利用される可能性はある.その意味で,戦略的な重要分野への投資は制限する必要がある.しかし,SWFの投資はむしろアメリカやイギリス,ヨーロッパの資本主義が繁栄することに彼らの利益を一致させる点でプラスになる.


BG April 29, 2008

Averting an energy crisis

By Graham Allison and Robbie Diamond

(コメント) 「アメリカは世界の石油の25%を消費する.すなわち,たった一日で2100万バレルだ.自動車だけでなく,トラックやジェット機など,商品やサービスの輸送に欠かせない交通システムが石油生産物の97%を必要としている.さらに悪いことに,アメリカの需要は2030年までに30%増加し,一日当たり2700万バレルになると予想される.」

そうであれば,アメリカは外国(特に,不安定で非民主的な諸国)からの石油輸入に依存し続けるのであり,これについて放置していることは自国の安全保障や経済の安定性を損なうことである,と主張します.世界的な規模の石油供給システムに,どこかで,小さな障害が発生すれば,それがアメリカにまで波及する.アメリカが世界供給システムを支配していない以上,次のことをしなければならない.すなわち,石油への依存を減らし,自立性を高める.突然の供給停止に備えて,対応力を高める.それは,節約,代替的なエネルギーの開発・利用,国内の供給源確保,主要消費国と協力した戦略備蓄,です.

NYT April 30, 2008

Dumb as We Wanna Be

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) ガソリン価格が下がったことで日本の政治が前進したようには見えませんが,アメリカでもヒラリーとマッケインが夏季休暇にガソリン税の休止を求めているそうです.THOMAS L. FRIEDMANは,それはエネルギー政策ではない.中東からの借金で財政をやりくりする政治家たちの資金洗浄(マネー・ロンダリング)である,と批判します.彼が求めるような,太陽エネルギーの利用拡大は政治おいて無視されたままです.


Charles Krauthammer Obama's 'Distractions'? WP Friday, April 25, 2008

Harold Meyerson Landing the White Whale WP Wednesday, April 30, 2008

Rosa Brooks Rev. Wright deserves some attention LAT May 1, 2008

(コメント) オバマへの支持が失われつつあります.なぜか? 回復するでしょうか? 結局,民主党の大統領候補が負ける?


FT April 30 2008

How Europe can shape the global system

By Zaki Laïdi

FT April 30 2008

A profitable Union: enlarged Europe finds new ways to work

By Quentin Peel

FT April 30 2008

A deal for Serbia

FT April 30 2008

Eurozone is strong but not immune

May 1 (Bloomberg)

ECB Sketches a Line in Currency Sands at $1.60

Mark Gilbert

(コメント) 多極化する世界でヨーロッパが果たす役割とは何か? 経済的な影響力が拡大するだけで,政治的な領土を求めない? それに代えて,Zaki Laïdiは,「規範的権力」を提唱します.国際システムの動きを規定する新しい規範を示すのです.特に,1.環境保護,2.多角的貿易の交渉とルール,3.人権,です.

Quentin Peelは,200410カ国(そして,2007年に2カ国)のEU拡大について,その経済的・政治的な評価(そして将来への予想)を試みています.

また,バルカン半島における軍事介入と最近のコソボ独立,そしてセルビアとのEU加盟交渉が,もう一つの重要な試金石です.

ユーロの導入とECBの金融政策,最近のドルに対する急速な増価は,いつまで興奮と称賛を呼べるでしょうか? 金利も為替レートも,さまざまな基準で見て異なった評価をされます.特に,EUのような合成国家の場合.

******************************

The Economist April 19th 2008

The silent tsunami

Food and the poor: The new face of hunger

Brazil: An economic superpower, and now oil too

Brazil: The delights of dullness

Derivatives: Taming the beast

Economics focus: Krugman’s connundrum

(コメント) 短期的には極端に貧しい人びとが餓死するか暴動を起こすような状態を回避するために,豊かな諸国が食糧援助に融資しなければなりません.また中期的に,政府は食糧の禁輸措置や食糧価格の補助,貿易への介入を止めるべきです.貿易自由化は食糧危機を緩和する,と.しかし長期的には,世界の食糧供給が人口増加や富裕化に応じる余地を持っている貧しい地域に,十分な農業技術や化学肥料を普及させ,農業の技術革新に有利な条件を維持することだ,と主張しています.(・・・農産物だけでなく,ヒトの遺伝子も組み替えて,火星を耕せ!)

中国,ロシア,インドと異なる,ブラジルの優秀さについて.デリバティブの規制について.グローバリゼーションは労働者の利益を脅かさない,という主張を撤回したクルーグマン.