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IPEの風 5/5/08

金曜日の夜は,末っ子と宮崎駿監督の『カリオストロの城』を観て大いに楽しみました.

休日は,お金と時間を消耗するより,読書です.『惑星カレスの魔女』は楽しかったし,『希望―行動する人々』を読めば,どの話も面白いでしょう.しかし,ボストン・テランには,やはり手を焼いています.これがアメリカを描く一種の時代小説であるとすれば(つまり,山本周五郎や池波正太郎,藤沢周平),・・・とんでもない世界です.

アメリカ社会について想うとき,内部の犯罪や狂信のドラマと並行して,(たとえ娯楽小説でも)アメリカの軍隊を知りたいです.トマス・E・リックスの『派兵の代償』(ハヤカワ文庫)を読んでいます.9・11の前に書かれた小説ですが,アフガニスタン派兵失敗に関するアメリカ軍の内部反乱をテーマにしています.それは同時に,冷戦時代のスパイ情報戦が,組織内部の反乱やサイバー・テロに変わった様子を伝えています.

「今月,中央ヨーロッパ国防当局者の訪問を受けたのは,これで3度目だ.どこの国もNATOの一員になりたがっていた.国防長官はどこの国との会見でも,機械的にほぼ同じことをいった.下士官を職業化し,一部の将校に英語を教え,配備のさい,われわれと作戦行動が取れるように無線機をそろえなさい,と.」

そして弱小国の国防長官をアメリカの巨大なリムジンが迎えます.この小説の核心はマスコミ対策,あるいは,情報とマスコミを利用して世論を誘導し操作することにあります.実際,リックスはワシントン・ポストの現役ペンタゴン担当記者,ピュリッツァー賞の受賞者です.

京都の古本市に行きました.何か気楽な読み物を探したのですが,めぼしいものは見つからず,W・フィッシャーの『ヴァイマルからナチズムへ』を買いました.昨年(?),古本市で買ったのは,ジョセフ・ナイの書いた小説『ダーティー・ハンズ』でした.著者はクリントン政権の安全保障政策を担った国防長官で,現在,ハーヴァード大学教授です.

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日曜日には,神戸大学へ移った佐藤さんの研究室を訪ねました.いろいろな話を聞きました.研究者に特有の粘着的思考の重要性,貨幣論(金属貨幣説批判)や,国際通貨システムに関する多様な理論の整理,イマジナリー・マネーに関する社会学,古代文明と貨幣の歴史的起源,商業手形・民間信用市場の発展と,国家・政府の公債や徴税をめぐる「国民貨幣」の普及,中央銀行制度と国家との関係(それゆえ,国際通貨の将来),など,難解かつ刺激的な議論を聞かせてもらいました.

最後に聞いた神野さんの研究も立派でした.外国為替市場に国際通貨の根源を求め(単に,N−1問題,ではなく),その外為市場はどのように変化しているか,という問題に取り組んでおられます.1970年代,80年代,ロンドン=ニューヨークに為替取引が集中し,各国の金融機関が吸い寄せられてくる様子をデータで示し,金融の技術革新や競争を考慮して「国際通貨」の変容を具体的に解釈する姿勢は,実に説得力があります.

自分が何のために来たのか分りませんでしたが,佐藤さんが帰りの列車で「調整コスト論」に言及してくれました.私の理解する国際通貨システムは,各国が調整コストに関して合意した国際調整メカニズムを内外に確立する制度です.・・・そう,そう,確かに,「埋め込まれた自由主義」を国際通貨・金融のイメージに持ち込めば,ちょうどそんな感じですね.

柴田さんが報告してくれた「外貨準備政策」も,何とさまざまな切り口や異なった時代の「対外国家戦略」を集約していることか! まるで,一国=世界中央銀行です.

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A.エチオーニの論説に,宗教,エスニシティー,社会,国家,が出てきます.なぜか,テレビを観ている家族が笑い転げているのを発見しました.どうしたのか? ・・・と思えば,大阪人は,突然,誰かに(指で)撃たれると反応する(してしまう),というのを映像で示していたのです.全く知らない通行人でも,バンッ! と撃たれたら,ウッ! とか,ギャー! と反応してしまう.なるほど,これが大阪人です.

全然知らないおじさんを,バサッ,とか,ズバッ,と(何も持たず,擬音と擬態だけで)斬りつけたらどうなるか? もちろん,大阪人は必ずそれを受けてしまう.バタッ,と倒れたり,グェー! と胸をかきむしったりする.風呂上りでも,携帯電話で話し中でも,彼らは楽しそうに反応する.ある人は路上に倒れて,そのまま死んでしまった・・・ (もちろんこれは幼児の反応です.TVカメラがあるからでしょう.しかし,顕著な違いがありそうです.)

・・・エチオーニにも見せてやりたい.

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