今週のReview
4/7-4/12
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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******* 感嘆キー・ワード **********************
ドル暴落と為替市場介入, あるいはユーロへの移行, アメリカの貧困, エモットの「日本になるな」, 北京とジンバブエ, コモンズの争奪戦, ポールソンのエイプリル・フール, アメリカ金融覇権の再編, 指導者の判断, ウォール街のメルト・ダウン
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
FT March 27 2008
The dollar is falling at the right time
Martin Feldstein
(コメント) 1995年以来の1ドル=100円! ドル暴落,円高に歯止めがなくなる? という話から,為替市場への介入論が強まることに対して,Martin Feldsteinは明快に反対します.
まず,名目的な円高は正しい実質的価値の安定化なのです.日本でインフレはほとんど無いのに対して,アメリカでは1995年以来,37%も消費者物価が上昇しました.
また,為替レートは資産市場の価格変動を追いますが,長期的には非常に安定しています.インフレを調整して,貿易取引に応じた通貨のバスケットに対するドルの価値は,20年間でたった7%(年0.5%)安くなっただけだ,と指摘します.
むしろ,アメリカの大幅な貿易赤字を見れば,ドルは強すぎるのです.ドル安は対外不均衡を調整する正しい動きです.他方,日本には巨額の黒字が累積しています.日本に対しては1000億ドルの貿易不均衡です.
ドル安は,海外投資家がアメリカの赤字を維持するほど投資する意欲が失われていることを示します.それゆえ,もっとドル安が進む(そしてドル建資産が十分に安くなる)か,もっと金利が上がるか,それによって均衡するのです.アメリカは不況を回避するためにも,高金利よりドル安を歓迎しなければなりません.
では,日本はどうするのか? Martin Feldsteinは為替レートを市場が決めることを,日本政府も受け入れるようになった,と指摘しますが,円高を受け入れる理由は書いていません.輸出に頼らず,景気を刺激せよ,ということでしょう.
Asia Times Online, Mar 28, 2008
What's up with Asian currencies?
By Axel Merk
March 28 (Bloomberg)
Comedians Diss Dollar as It Weakens
William Pesek
FT March 31 2008
Looming dangers for the dollar
(コメント) アジア通貨危機の時の議論が蘇ります.円高だけが進んでも,人民元はドルに対して安定したままではないか? アジア諸国の通貨は,人民元を意識して,通貨が増価するのを抑えるのではないか?
中国自身が人民元を緩やかに増価させているので,アジア諸国全体も為替レートの決定を市場に委ねる傾向が強まっているようです.アメリカはドル安の歯止めをアジア諸国の内需拡大に求めるでしょう.しかし,各国でも,世界的なインフレの懸念がある中で,アジア経済が成長を加速させるのも問題があります.
アメリカのドルを受け取る諸外国の輸出業者は,それがますます紙くずに見えてくる,とWilliam Pesekが注意しています.ドルではなく,アメリカ・ペソだ.それはアメリカ市場への輸出に頼ってきた日本企業にとって大きなショックである,と.ドル安によって,日本の大企業の利益が確実に吹き飛ばされます.あるいは,アメリカに投資してきた日本の貯蓄が着実に紙くずになるのです.
円高で輸出できない,という悲鳴より,ドル安を止めろ,という不満が生じるはずです.道路特定財源や暫定税率に比べて,外貨準備が価値を失うことについて,国内での議論は全くありません.東京で開催されたG7は,ドル安・円高を抑える介入に関して,何も発言しませんでした.
ドルの資産から逃げ出すか,それもできないなら,サブプライム問題で資本不足が懸念される金融機関の増資に応じるのでしょうか? 日本政府自身が投資ファンドSWF(sovereign wealth fund)を運営したい,と考えるわけです.日銀が金利を上げずに,むしろ下げる,という話にもなります.日米経済=共同覇権の夢は遠い過去です.
昨年11月にアブダビの政府投資がシティ・グループに対して行われ,その後,進んだドル安で,25億ドルもの損失が生じています.シンガポールのテマセックが行ったメリルリンチへの投資は6億ドル,アメリカではないですが,スイスのUBSに対するサウジアラビアの投資は55億ドルの損失です.
ドルの価値喪失は,資本市場だけでなく,貿易取引や準備の面でもドルを受け取らない傾向を強めます.たとえ慣性があるとしても,バーナンキ議長が金融緩和することに投資家が反応する危険は急速に強まります.
FT April 2 2008
Why the euro is unlikely to eclipse the dollar
By Barry Eichengreen and Marc Flandreau
(コメント) Barry Eichengreenたちは,ドルの国際通貨としての廃位,ユーロへの交代を誇張する意見に反対します.その理由は,国際準備の必要を説明する前提が間違っている,ということです.国際通貨の理論によれば,貿易,投資,安全保障,・・・ そして,ドルが国際通貨として保有されるかどうかを決めているのは,その「ネットワーク効果」による,というわけです.
比較されるのはパソコンのソフトです.ネットワークに入ると,他人が使っているのと同じソフトを使わないと話ができません.国際収支の不均衡を安定的に維持するにも,こうした通貨が必要です.イギリスの経済や軍事が世界の優位を失ってからも,その通貨,ポンド・スターリングはネットワーク外部効果を保持し,20世紀の後半も主要な準備通貨でした.
この論説が強調するのは,ドルが早くから国際通貨となっていたことです.彼らが資料を集めて実証した点は,ポンド・スターリングよりもドルが1924-25年には準備通貨の首位に就いていた,ということです.なるほど,これは驚きです.
アメリカは大恐慌とその後の金融システムの破たんによって,ポンドを延命してしまいました.第二次大戦後,アメリカ以外の国は通貨の交換性を回復できず,ドルが国際通貨の地位を確立しました.莫大な債務と経済の不調によって,イギリスは他の中央銀行から見放されました.
さまざまな通貨が併存する状態は長く続くし,国際通貨の地位を決定するのは金融危機に対する適切な対応を取ることができるかどうか,という点なのです.単に,アメリカ・ドルは転換点を超えて廃位に向かう,という予測を当てにしてはいけません.
The Guardian, March 28, 2008
Who's talking about poverty?
Sasha Abramsky
FT April 3 2008
America’s poor are forced to the periphery
By Daniel Pimlott in Washington
(コメント) 日本とは違った意味で,アメリカにも中産階級(あるいは,アメリカン・ドリーム)の没落を批判する主張があります.アメリカには社会的な移動性の高さを信じる伝統があります.また人々は,もし隣人が豊かになれるなら,自分にも実現できるはずだ,と考えます.
中産階級の没落は,アメリカの税制や,リスクと生活保障,住宅の差し押さえ,など,さまざまな議論に影響します.構造的な貧困を重視したジョン・エドワードは候補者争いから消えましたが,その後も各候補がアメリカの景気を超えて広がる貧困の深刻さを問題にしています.
40年前,1968年の4月4日に,マーチン・ルーサー・キング,Jr.の暗殺に対して憤慨した群衆がホワイトハウスの地区にも破壊に及んだ,とDaniel Pimlottは回想します.暴動は4日間続き,12人の死者,数千人の負傷者,そして数百の建物が放火された,と.キング牧師は10年にわたって人々に訴えていました.白人を憎んではいけない.彼らを殺すな.暴力に訴えるな,と.彼は誰も傷つける意図がなかったのに,奴らは彼を殺した.その怒りがアメリカに充満したのです.100以上の都市で暴力的な衝突が起きました.
第二次世界大戦後に進んだ「郊外化」の傾向は,「白人の逃避」として加速し,都市中心部では貧困が増大します.最近では都市の再開発が盛んに投資を集めて,ワシントンの40年前の姿を思い出すことは困難です.1990年代半ばから,教育のある上昇志向の若者たちとベビー・ブーマーたちが都市に戻ってきました.
ところが,都心の若返りは,目立たぬ形で郊外に貧困の急速な集積を生みました.低所得の住民と新しい移民たちが住みついたのです.彼らは今もアメリカン・ドリームを求めていますが,非常に遅れてやって来ました.郊外の住宅が老朽化し,また,郊外には十分な税源がなく,富裕層が流出すればインフラの更新もできません.大都市の郊外であるために貧困が注目されることも少なく,研究者は「社会政策の孤児」と呼びます.
貧困に対する社会的な隔離は今もあり,静かな暴動が広まっている,と.
FRANK CHING Bridge just got started across the strait The Japan Times: Friday, March 28, 2008
John R. Bolton What's good for Taiwan LAT March 29, 2008
Taiwan's message for Beijing BG March 30, 2008
Humphrey Hawksley Taiwan’s Success Could Show the Way for Tibet YaleGlobal, 31 March 2008
Elliot Sperling The Dalai Lama as dupe LAT April 3, 2008
(コメント) 台湾の民主化は二つ目のハードルを超えたようです.複数政党の自由な選挙を行って,国民党が独立を唱える民進党に政権を明け渡したことが一つ目のハードルでした.今度は,独立派の政権を退けて大陸との経済統合を優先し,政治的な自律を大陸と平和的に話し合うと主張した政権が勝利しました.これに対して,中国政府は台湾を標的にした数千発のミサイルを取り除くことで応えるべきでしょう.
国連大使として保守強硬派の主張を明確にしていたJohn R. Boltonは,台湾の選挙結果を受けて,特に国民党の勝利を単純に大陸との政治的統合と解釈する西側の人々を批判します.国際法上の定義から見て,台湾は明らかに国家である,すなわち,責任ある政府,明確な領土,安定した人民,がすでにあるからです.
国民党の馬候補が主張したのは,政治的な統一を認めて経済的な繁栄を選択した,ということではありません.むしろ台湾国民が中国によって国際社会から孤立させられることを懸念している点で,政治的自律性確保の交渉のテコにするため,大陸にとって最も重要な経済的繁栄を,台湾こそが率先して実現するのだ,ということでした.
そのためにも,アメリカは台湾民衆の意見を一層強く支持しなければなりません.Boltonは,今までのような曖昧な関係を続けるのではなく,台湾を国家として認めることが重要だ,と主張します.強化された民主主義政府を持つ台湾に対して,アメリカはヨーロッパや日本とともに,「一つの中国」を否定し,明確に台湾を承認・支援せよ,と.
BGも,国民党の勝利は,中国との統一を支持したからではない,と指摘します.台湾民衆は,チベットの反体制派に対する中国政府の弾圧を観て,そのような政治体制の下で生きたくない,と主張しました.
世界的規模の供給ラインにおいて,中国と台湾はともに重要なリンクを持っています.多くの関係者にとって,台湾海峡の現状維持がもっとも好ましかった,と考える論説もあります.YaleGlobalが載せたHumphrey Hawksleyの論説は,チベットと台湾を比べています.中国の増大する経済力と安保理の常任理事国・拒否権を考慮して,西側各国はチベットに対する政治支配を事実上受け入れ,台湾の独立には反対しています.
しかし,チベット民衆は宗教的・文化的な違いを政治的な支配体制からの自律・独立によって示そうとします.独立派も弾圧も,成功しないでしょう.他方,台湾の民衆は経済的な繁栄を政治的な自立と融和の中で実現しようとしています.それゆえチベットも,政治的な植民地化ではなく,インドと中国とが成長する過程で,台湾のように,活発な経済成長を政治統合への刺激に利用することです.そこにこそ,互いの利益をもたらす道があるはずです.
今後も,中国からの資本と移民が続く限り,チベット・ナショナリズムは強まるでしょう.しかし,ダライ・ラマは政治的に素朴な民衆の信仰心と政治的な信頼によって支持されています.彼の独立反対の発言を中国政府が利用している,という批判があります.
WP Friday, March 28, 2008
Lessons From Japan's Malaise
By Bill Emmott
(コメント) とても優れた論説です.Emmott!
ヒラリー・クリントンが「日本のような状況を避けるべきだ」と発言したことを取り上げて,Bill Emmottはアメリカの政治家たちが日本の金融危機から何を学ぶべきか,警告しています.
クリントンが考えたのは,日本は金融緩和に頼って金融危機を長引かせた,もっと政府が財政支出で直接に救済するべきだった,という議論です.Emmottはその逆が正しい,と主張します.1990年に株価が暴落し,地価もそれに続きますが,金融政策は緩和しなかったのです.日本は財政支出を使って銀行・建設業界と景気の維持に努めました.その結果は,市場が需給の均衡を見出すことを妨げた,と考えます.
日本の教訓とは,財政支出によって急激な下落を緩和するとしても,それは長期に及ぶ経済停滞という代償がともなう,ということです.しかも,金融システムの改革は遅れ,政治家たちへの莫大な献金が流れて,政治システムの改革も進みませんでした.それは今も日本を苦しめている,とEmmottは考えます.
日本の経験から学ぶべきは,データが示すことには慎重であれ,です.日本でもバブル崩壊の程度は軽視されていました.なぜなら,それは金融部門にかかわる損失であって,実物経済は変わらない,と主張されたからです.日本の企業や経営,輸出に対する過信がありました.しかし,資産を失ったことは時間とともに消費を抑え,融資や投資も減ってしまいます.アメリカの金融危機がどうなるかは,まだ今のデータで判断できません.
第二に,市場が新しい価格で均衡するのを妨げることは,将来に,より大きな問題が残るだろう,ということです.
アメリカが日本よりも優れている面は,弾力的で,透明で,迅速な調整を実行する,という点です.日本は市場における損失を補てんし,隠ぺいしますが,アメリカは市場価格によって勝負を決めます.だから政治家たちは,損失を社会化することで,アメリカを日本のように停滞させるべきではない,と主張します.
FT March 30 2008
Japan’s ‘lost decade’ offers dire pointers for the Fed
By Gillian Tett and Krishna Guha
(コメント) 10年前に日本が金融危機を解決しようと動くとき,その意見を聞いたのはアメリカの政策担当者や学者たちでした.公的資金を投入せよ,と命じたサマーズLarry Summers財務長官のように.彼らが正解を知っている(少なくとも日本の同様の人々より),と思ったからですが,今は彼らが試されています.たとえばTimothy GeithnerはNY連銀総裁となってベア・スターンズ買収に救済融資しています.
ワシントンの混乱に,日本の関係者たちは隠れて苦笑いし,公的資金を投入してはどうか,と控えめに(外国政府に命令するほど愚かではないが)助言している,と記事は紹介します.しかし,日本のようにデフレを生じることはないし,GDPに対する損失の規模も小さいから,アメリカは日本と異なる,と言われます.
アメリカは市場価格による会計基準が徹底しており,迅速な調整が進むし,その一方で,日本のような事態を避けるために,銀行やその他の金融機関の破たんは回避する,というわけです.問題は,それが住宅市場や銀行それ自体の資産を回復させるために公的資金の投入にまで進むべきか,という点です.ベア・スターンズ救済が示したように?
日本の経験から見ると,政治家たちは公的資金の利用に強く反対し,その間,日銀が破たん銀行を救済融資をする中で銀行危機が広がって,ようやく60兆円の公的資金を用意して銀行の優先株を購入しました.アメリカ政府も同じような経過をたどるのではないか?
FT March 28 2008
Not yet time for a bail-out of banks
WP Monday, March 31, 2008
Piercing This Bubble For Good
By Roger C. Altman
WP Wednesday, April 2, 2008
How Not To Save Housing
By Robert J. Samuelson
BG April 3, 2008
Regulating the free-market free fall
By Robert Kuttner
(コメント) FTは,市場価格が均衡を見出すまでは損失額は決められないから,救済や公的資金投入によって問題を処理するのはまだ早い,と主張します.今は中央銀行が金融システムの安定化を図り,その中でも融資が破たんする銀行は破産処理するべきだ,と.
Roger C. Altmanは,バブルの再発を防ぐべきだ,と論点を示します.1.金融機関やオフ・バランス・シートの規制を広げる.2.新しい金融手段にも準備や規制を求める.3.バランス・シートの透明性,4.格付け機関への監視,5.モーゲージのブローカーを免許制にする.
Robert J. Samuelsonは,議会の一部が進めている住宅差し押さえを防ぐ補助金について反対しています.誰でも住宅ローンを軽減してほしいけれど,もし一律に融資額に応じて返済を軽減すれば,最も慎重な者を罰し,無思慮な高い買い物をした者を称賛することになる.また,これから住宅を購入する者に不利益を与え,返済条件の交渉を考えている者を延期させることになる.
Robert Kuttnerは,ポールソン財務長官とオバマの主張を比べます.ポールソンは金融危機を市場の常として,以前の政策失敗を批判しませんし,それを規制することも考えません.彼が唱えたのは,金融市場の拡大に応じたFRBの拡大と強化です.しかし,実際は金融市場の自由化を継続することでしょう.規制の強化は間違いです.
オバマは違います.誰でも,政府から資金を提供された以上,その基準に従い,精査されるべきだ,と主張します.支払い準備や自己資本を充実しなければならないし,金融機関は情報を公開して透明性を高めなければなりません.たとえ大恐慌の現実があっても,金融制度を改革するにはルーズベルト並の政治指導力が必要だ,と.
Jim Hoagland NATO's Middling Agenda WP Friday, March 28, 2008
Martin Kettle A Euro-army is fantasy land. We need our American ally The Guardian, Saturday March 29 2008
Nato can wait, but not for ever FT March 30 2008
Karl F. Inderfurth Afghanistan, Pakistan, and NATO summit BG April 1, 2008
GWYNNE DYER A respectful Russian bluff The Japan Times: Tuesday, April 1, 2008
Once and Future NATO NYT April 1, 2008
Putin has a point LAT April 2, 2008
Rosa Brooks Making up with Vladimir LAT April 3, 2008
(コメント) ブカレストにおけるNATOの会合は,ウクライナとグルジアの加盟について議論し,それに反対するロシアへの対応と,同様に難しい問題として,アメリカの主張するミサイル防衛システムの構築や,アフガニスタンにおける戦争があります.
EU内部の意見がまとまらない中で,ドイツのメルケル首相が新加盟問題を議論することについてブッシュ大統領に反対し,先送りになりました.ミサイル防衛システムについてはブッシュとプーチンの直接会談で打開策を探っています.アフガニスタンの兵力増強は,フランスのサルコジ大統領が応じた,ということです.
Martin Kettleの論説に,国家が提供するにもかかわらず,それが危機になるまで政治家の注意を集めないのは年金と安全保障だ,と書いてあります.なるほど.誰も国家から逃げ出せないし,誰もなかなか良いアイデアを示せない.NATOは加盟諸国にGDPの2%を防衛予算として組むように求めていますが,まだ多くの国がそれを満たせていません.NATOが時代遅れだ,というEUの国を,おとぎ話,と批判します.
Karl F. Inderfurthは,アフガニスタンの安定化がパキスタンと切り離せないことに注意します.この地域の開発と安定化を構想するため,欧米諸国がNATOで話し合います.
台湾も,日本も,もちろん,ユーロを採用することはないし,NATOに加盟することも,ないわけです.しかし,それに代わるものとして何があるでしょうか?
ロシアが第二次世界大戦で支払った2600万人の戦死者は軽視されるべきでないし,国連憲章の下ですべての国が国境を侵してはならず,多くの少数民族を閉じ込めたけれど,大国間の戦争は起きませんでした.ロシアがコソボの独立や隣国のNATO加盟を認めない,という強硬な意見も,無視することはできない,とLATの論説は認めます.
アルバニア,クロアチア,マケドニアという新加盟国にとって,NATOは冷戦終結の成果です.しかし,加盟国が増えることはNATOの問題を解決しません.むしろ逆です.安全保障の負担は増し,その意思決定や分担の合意は混乱し,アメリカに偏ったままです.プーチンが威嚇しただけでなく,ウクライナやグルジアの国内政治それ自身が,冷戦後の安定した秩序をまだ確立していません.
Rosa Brooksは,ブッシュとプーチンの会談を支持します.イデオロギーではなく,事実に基づいて,双方の利益になるような外交と合意を積み上げることで,ロシアとの関係を改善できる,と主張します.たとえ相手がプーチンでも.
FT March 28 2008
China will not be cowed
By Christopher Caldwell
LAT March 29, 2008
Politicizing the Olympics
FT March 30 2008
Should I stay or should I go?
FT March 31 2008
Olympic torch threatens to scorch China
By Gideon Rachman
(コメント) 女優のミア・ファローが昨年から北京オリンピックのボイコットを主張していたのは,スーダンのダルフール問題の解決でした.また,ビルマの軍事政権が僧侶たちの平和的な抗議活動を粉砕したことについても,中国政府に非難が向けられていました.地下資源や水を確保するために中国帝国が植民地化し,中国人の大量流入が「文化的大虐殺」と指摘されているチベットに対して,今回の弾圧がオリンピック・ボイコットへのヨーロッパ政治における意思統一をもたらすなら,こうしたすべての問題に共通の答えが見つかります.
しかし,南アフリカのアパルトヘイトと違って,その影響が中国政府を変心させることなどないでしょう.中国政府は国民に対してチベットが内政問題であると主張しています.またブッシュの電話に対して,Christopher Caldwellは,胡錦涛主席が北朝鮮の核問題や,アメリカの対外債務,ドルと金融市場の安定化を議論することもできるだろう,と指摘します.
西側政府は,せいぜい開会式をボイコットして,中国に抗議の意思表示を行い,それでも安価な中国製品を輸入し,西側企業はこぞって中国に投資し続けるのです.ボイコットや制裁が有効であるためには,それを拒む条件が必要です.
LATの論説は,中国政府のシナリオからますます外れる北京オリンピックこそ,冷戦終結後,これまでで最も政治的な企画として「成功する」かもしれない,と考えます.FTの論説では,むしろ開会式ボイコットのみ,しかも主要国による統一した対応が考えられる有効な選択肢です.
政府を批判する者に何と応えるべきか? 「人の顔をかぶった,獣の心しかない,怪物である」というダライ・ラマに対する中国政府の激しい非難の言葉は,民主的な文明諸国によって仲間とみなされる政治や発言の水準を無視しています.
中国政府はオリンピック開催に名乗りを上げたことを後悔するのかもしれません.1964年の東京オリンピックや1988年のソウル・オリンピックのように,経済成長の実績によって中国が国際的な舞台で認められるのか,あるいは,1930年代,ナチスのベルリン・オリンピックにますます似てくるのか?
FT March 31 2008
Tibet untamed: why growth is not enough at China’s restive frontier
By Geoff Dyer and Richard McGregor
NYT April 3, 2008
A Not-So-Fine Romance
By NICHOLAS D. KRISTOF
Alec Russell Pretoria’s silence betrays Zimbabwe FT March 28 2008
HEIDI HOLLAND Make Peace With Mugabe NYT April 1, 2008
Michael Holman A rescue package for the stricken of Zimbabwe FT April 1 2008
The Zimbabwe solution LAT April 2, 2008
How to restore the future in Zimbabwe FT April 3 2008
(コメント) 10万%から40万%ものインフレーションによって経済を破壊しつくしたジンバブエ政府は,成長志向の中国政府と比べ物になりません.しかし,ここでも想起されるのはドイツです.ワイマール共和国の崩壊に向かう時期に,ハイパー・インフレーションが起きました.あるいは,ソ連崩壊後の価格自由化と政治混乱が続いた1990年代のロシアでしょうか?
それでも同じ人物が28年間も権力を保持し続けるのは異常であり,圧政です.それでも大統領選挙をする? しかも,勝利する,と断言するのは異常です.過去3回の選挙がそうであったように,投票は操作されてしまうからです.それゆえ,選挙過程を監視し,結果を承認するのかどうか,この地域で重要な安定化の役割を果たすことのできる,唯一の国は南アフリカです.南アの対応が重要です.
前回の選挙でも南アは不正選挙が行われた証拠をつかんでいました.しかし,これまで南アは隣国の政治に不満を述べるだけで,積極的な介入をしていません.イギリスの「どら声外交」も南アの「静寂外交」も,ともに効果がなかった,と南アの指導者も認めています.しかも,ムガベには今でも,西側の帝国主義を打倒した英雄として,支持があります.
NYTに載ったHEIDI HOLLANDの論説は,昨年,ムガベにインタビューした印象と,ムガベの主張を伝えます.独裁者は今もとくにイギリスが自分を理解していないことに不満であり,独立時に白人の農場を黒人に再分配することは合意されたことであった,と主張します.その際,イギリス政府は援助を与える約束をして,穏健な土地改革の実現を求めたのですが,援助が浪費されてしまうことに憤慨したサッチャー首相がこれを止めました(メイジャーは再開しようとしましたが,その後,ブレアが阻止します).ムガベによる経済破壊はイギリス政府との紛争事項なのです.
HEIDI HOLLANDは,84歳になってもムガベは権力を維持するつもりですが,不死身でもない(権力を失うことを恐れている),と感じます.西側諸国はムガベを孤立させ,制裁を繰り返してきましたが,効果はなく,ジンバブエを更に破滅的な状況に追い込むでしょう.むしろ話し合い,関与することで,事態の収拾を模索できる,と考えます.
再びムガベは選挙結果を偽り,当選したと宣言するでしょう.それに対して国際社会は何をするべきか? とMichael Holmanは考えます.制裁は無駄である.軍事介入か? 誰がそれを担うのか? 南アフリカ? これまでアフリカでの介入事例は多くが失敗しています.
ムチが使えないのであれば,イランや北朝鮮と同様,アメを示すしかありません.ムガベが辞任すれば,経済復興のための多国間合意による援助が可能です.そして,ムガベには免責を与えて,国外の安穏な引退生活を保障します.それでも国民の多くが救われるでしょう.
YaleGlobal, 28 March 2008
Regulating the Global Commons – Part II
Michael Richardson
The Observer, Sunday March 30 2008
Those who control oil and water will control the world
John Gray
(コメント) グローバル・コモンとして,水と空を保護しなければならない,というYale Center for the Study of Globalizationの議論です.この論説は,化石燃料による地球環境の破壊に対して,特に,航空機のジェット燃料による飛行や船舶による輸送を,国際規制しようと主張します.
The Great Gameは,かつてイギリスとロシアが中央アジアの石油をめぐって争った際の表現です.多くのアクターを加え,多くの希少な資源をめぐって,19世紀の後半から第一次世界大戦に至る激しい資源争奪戦が,再び,21世紀を支配するのでしょうか? John Grayが注目するのは石油と水です.
チベットも含めて,アメリカ,イギリスなどの西側諸国と,ロシア,中国,インドが,多国籍企業も介在して,中央アジア,あるいは,南極大陸や北極圏,南シナ海などの資源を目指します.ハイテク軍隊も,経済発展も,資源の安定供給に依存しています.ITによる知識経済への移行,景気循環も軍事衝突も起きない世界,というのは,おとぎ話でした.
21世紀のthe Great Gameでは,資源の枯渇と地球温暖化が相互に強め合って世界秩序の崩壊を促します.国際紛争と軍事衝突は,むしろ増えるでしょう.
NYT March 30, 2008
In Treasury Plan, a Reluctant Eye Over Wall Street
By NELSON D. SCHWARTZ and FLOYD NORRIS
NYT March 30, 2008
Toward New Rules for Wall Street
FT March 30 2008
Financial markets need more than a patch-up
By Clive Crook
FT March 30 2008
Steps that can safeguard America’s economy
By Lawrence Summers
(コメント) 金融危機が起きた以上,政治家たちが金融制度の改革や姿勢を強化するように求めるのは時間の問題です.ポールソン財務長官は,逆に,ウォール街や共和党が伝統的にそうであるように,政府の規制や介入が危機を悪化させると考えます.市場による規律がもっとも好ましいのです.
ヘッジ・ファンドやプライヴェート・イクイティ・ファンドの規制,消費者の保護,をはじめて取り上げましたが,基本的に情報の収集だけで,危機のときを除いて何もしません.より厳格な規制を要求する意見には反対します.ポールソン財務長官はウォール街の長い経歴の末に得たその確信を変えることはないでしょう.
これは,連銀によるベア・スターンズ救済合併への融資を正当化するためかもしれません.買い手のつかないデリバティブにも中央銀行が融資するなら,これまでと同じ制度を前提に,同じ説明はできません.あるいは,今後もこのような緊急事態が続く,という情報をすでに得ているのかもしれません.
実際,具体的な改革の中身は決まっていないのです.公的な介入に対する規制強化の議論を抑えるために先手を打っただけです.金融革新が進むと,個人的な利益の追求が社会的には損失をもたらす場合が起きるでしょう.部分的な手直しや情報収集ではなく,新しい金融モデル(理解)に依拠した制度を模索します.
Lawrence Summersは,FRBによる流動性供給は十分だ,と考えます.また,すでに政府系機関(GSEs,すなわち,Federal Home Loan Banks: FHLB, Fannie Mae, and Freddie Mac)を通じて潤沢な新規住宅融資への支援も行われました.今は「夜明け前のもっとも暗い時」であって,回復は近い,と主張します.金融・財政政策とドル安による輸出増という刺激が加わって,アメリカの景気後退は軽く済むだろう,と.
問題は,損失が予想される金融機関に追加の資本を得ることです.そして,公的資金で支えているという印象を与えないためにも,公的機関が介入して,金融機関が配当するより自己資本の充実を行うよう,集合行為問題を回避する(自己資本比率を無視して多く配当する金融機関が得をしない)ことです.
NYT March 31, 2008
The Dilbert Strategy
By PAUL KRUGMAN
FT March 31 2008
Paulson’s gamble
FT March 31 2008
Wall Street regulation
STEPHEN LABATON Obstacles Seen as Treasury Rolls Out New Financial Rules NYT March 31, 2008
US plans finance system overhaul BBC 2008/03/31
(コメント) PAUL KRUGMAN は,ポールソンによる金融改革の提案が風刺漫画“Dilbert”でおなじみのthe “org chart” strategyだ,と批判します.ブッシュ政権の考え方は,実際には何も重要なことをしないけれど,危機には対応しているフリだけしておけばよい,です.そして,実際は,「金融サービス部門の競争力を削いだり,金融革新の流れを阻止したりする」のはよろしくない,と主張します.
「市場の規律」が最も優れているのだ,と主張するだけで,ポールソンが唱えているのは組織の略号を並べて報告の仕方を再編するthe “org chart” strategyなのです.今の危機に比べたら,10年前のLTCM危機でさえ「小さな危機」でしかない,と.当時,もっぱら国際金融システムについて改革が唱えられ,新しい金融アーキテクチャーが(しばらく)論争になりましたが.
アメリカの金融システムが規制や監督のパッチワークであることは有名です.それを統一して整理するのであれば歓迎する,というFTは様子を見ています.自由化論者がいつも言うように,将来の革新がいつも規制の結果を予想とは異なったものにしてしまう,と.
Susan Antilla Paulson's April Fool's Joke Is Wall Street Gift April 1 (Bloomberg)
Mr. Paulson's Starting Point WP Wednesday, April 2, 2008
Howard Davies Sharks circle Paulson’s Aussie plan FT April 1 2008
FT April 2 2008
False ideology at the heart of the financial crisis
By George Soros
(コメント) Howard Daviesは,世界の金融規制を三つのモデルに分けています.ひとつは,部門や業態に分けて規制する.金融市場が統合する中で難しくなっています.二つ目は,北欧がはじめてイギリスで有名になり,日本やドイツも追随した統一した規制です.三つ目のモデルは,人気TVドラマをもじって「ツイン・ピークス型」と呼ばれ,二人の主人公が対話して事件を説きます.
ペンギンが空を飛んでブラジルまで渡っている,というBBCの映像と同じように,ポールソンの会見もエイプリル・フールのいたずらか? 金融部門の業界団体はポールソンの提案を支持しました.彼は味方です.
他方,George Sorosはアメリカ的な市場崇拝の厳しい批判者です.デリバティブなどの金融革新が野放しにされたのは,金融当局が「市場には自己是正する力がある」と確信していたからです.この考え方は間違いです.市場参加者は「合理的な期待」に依拠して取引するのではなく,現実の変化と参加者たちの偏見を反映して判断するのです.
Sorosが唱える具体的な改善策は,credit default swapsによる債務の相殺を制度化すること,また,住宅の差し押さえを減らすために税金を投入すること,です.住宅価格の下落が続く限り,他の政策も効果的ではないでしょう.
Don't discount Paulson LAT April 3, 2008
Fear of Regulating NYT April 3, 2008
New cats for Wall Street's mice CSM the April 3, 2008
FT April 3 2008
Think globally on financial regulation
By Jeffrey Garten
(コメント) アメリカに新しい金融規制の波が来る,とJeffrey Gartenは指摘します.Gartenは,アメリカのユニラテラルな金融政策や規制の変更が他国に及ぼす影響を重視するグローバリストです.今回の金融危機は,アメリカ政府や金融関係者がその傲慢な態度を改めて,諸外国の経験や知識を学び,国際金融市場の理解と管理能力を高める機会である,と解釈します.
ブレトン・ウッズ体制は戦争によって可能になったものであり,現在はまだ世界的な金融改革のときではないでしょう.しかし,ポールソンの提案はアメリカの金融市場に偏っており,「透明性のマントラ」を唱えるばかりです.金融市場の革新がどれほど破壊的な影響を世界に撒き散らしたか,ドル安を放置する態度も含めて,アメリカの指導力に深刻な疑問が湧くだろう,とも書いています.アメリカ政府が国際的な合意の形成に努めることを求めています.
LAT March 30, 2008
Is Bush our Woodrow Wilson?
By Joseph S. Nye Jr.
LAT March 30, 2008
Why LBJ bowed out
By James R. Jones
FT March 31 2008
Good leadership is deciding how to decide
By Joseph Nye
The Guardian, Thursday April 3 2008
Europe owes a huge thank you to skilful, patient President George Bush
Timothy Garton Ash
(コメント) ブッシュ大統領はイラク開戦5周年の記念日を,自分の確信が正しかった,という演説で飾りました.朝鮮戦争によって国民から支持されなくなったが,後に,歴史的には高く評価されているハリー・トルーマンと同じだ,というわけです.
Joseph S. Nye Jr.は,トルーマンではなく,むしろウィルソンと比較します.両者とも非常に頑固でした.ウィルソンも自分の決定を変えることを嫌い,国際連盟の提案に上院が修正を求めたことを,妻の訴えにも耳を貸すことなく,拒みました.Nyeはこんなことまで書いています.
「皮肉なことに,もし爆発が彼の(体の自由ではなく)命を奪っていたら,上院はほぼ確実に彼の国際連盟案を承認していただろうし,彼は(死後に)英雄として職を退いたことだろう.その代わりに,彼の頑固さは外交における多角的なアプローチを拒否することにつながり,それに続く孤立主義がアメリカの影響力を少なくとも20年は矮小化してしまった.」
ウィルソンが第二次世界大戦の勃発と戦後の国際連合によって評価を高めたような幸運が,ブッシュ大統領にもあるとは思えません.ブッシュ氏はその判断に失敗し,多大な犠牲を強いて,中東地域の自由や民主主義を後退させただけでした.
1968年,リンドン・ジョンソン大統領が再選を目指さないことを発表します.大統領のスピーチ・ライターであったJames R. Jonesが大統領の意図や背景を述べています.その数日後,キング牧師は暗殺されました.
FTに載った論説では,同じJoseph Nye が優れた大統領の意思決定について,“contextual intelligence”や“emotional intelligence”という基準を示します.ブッシュ大統領は「決断」するのが好きだが,こうした知性には欠けていた,と批判します.優れた指導者たちはそれを学び,有権者はそれを判断します.
Timothy Garton Ashはブッシュ父子を比べています.父のブッシュ大統領は東西ドイツの統一を支持してヨーロッパの統一を助け,湾岸戦争においても国際協力を組織しました.NATOサミットに参加したその息子は,4年間で彼の父親が成したことがいかに素晴らしく,また,その息子の8年に及ぶ成果がいかに乏しいかをよく示している,と批判しています.
Wolfgang Münchau Do not be alarmed by Icelandic whispers FT March 30 2008
William Pesek Greenspan, Macfarlane Exposure Gap Says It All April 2 (Bloomberg)
Peter Smith and Richard McGregor Good days: Australia prospers from China’s resource needs FT April 2 2008
(コメント) もし人口が数千万人,数百万人でも繁栄する国家を維持できるのであれば,日本もたとえば10〜20グループに分けて,独自に政策を決定し,統治することができるのだろうか,と私は思いました.
これらは,アイスランド(人口30万人,経済規模はアメリカの0.1%)とオーストラリア(人口2100万人)の話です.彼らはもちろん,大国の政策変化や世界市場(特に通貨投機や中国)に翻弄されます.
March 31 (Bloomberg)
Stock Markets Call Bluff of Asian `Decoupling'
Andy Mukherjee
NYT April 2, 2008
To See a Stock Market Bubble Bursting, Look at Shanghai
By DAVID BARBOZA
(コメント) 「デカップリング」の議論も消えてしまうのでしょうか? アメリカの金融市場が危機を世界に輸出し,アジアの株価もその例外ではありません.
北京オリンピックまでは株価が上昇し続ける,という宣伝もデタラメでした.日本だけでなく,アジアの主要な株式市場が急落し,社会不安や政治への不満が蓄積されています.
IHT Monday, March 31, 2008
Race and the social contract
By Eduardo Porter
The Guardian, Tuesday April 1 2008
The £6bn fallacy
John Wakeham
FT April 3 2008
Four falsehoods on UK immigration
By Martin Wolf
(コメント) アメリカの人種と社会政策について,またイギリスの移民政策について,常に論争があります.アメリカは移民国として,労働組合が異なる人種の要求を統一するのは難しく,社会保障(医療保険・年金)制度が整備されず,公立学校の質を改善することも難しい.しかし,オバマの演説が強調したように,人種を超えてコミュニティーや子どもたちの未来に投資することは,グローバリゼーションの中でますます必要になります.
移民を受け入れることはどうでしょうか? イギリスの論説は,それが必ずしも大きな利益ではない,と考えています.
NYT March 31, 2008
The Baton Passes to Asia
By ROGER COHEN
(コメント) 世界中のニュースが境界線の薄れた,流動化しながら,激しい部族主義に侵されるグローバリゼーションの姿を伝えています.
しかし世界の大きな均衡がシフトしていることは確実です.すなわち,「白人の時代が終わった.」
アメリカの家族が住宅を追い出されているニュースの横で,アラブ世界やアジアでは裕福になった人々が巨大ショッピングモールに押し寄せています.いくらバーナンキやポールソンが尽力しても,この流れは変わりません.アメリカの金融危機がアジアに及ぶとしたら,・・・それは成長率を11%から8%に下げるのか? 中国では携帯電話が4億5000万台も普及していることを知っているか?
何よりもその心情が熱いことです.アジアに来れば,人々は自信にあふれ,成功への意欲を隠しません.ビジネス界の指導者はロックスター並みに人々の熱狂を呼ぶのです.教育と成果への情熱において,中国はアメリカを凌駕するでしょう.そのほとばしるエネルギーと希望の大きさにおいて,白人の時代は終わったのです.
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The Economist March 22nd 2008
Tibet: A colonial uprising
A week in Tibet: Trashing the Beijing Road
Zimbabwe: Time for the rescue
Nepal: A Maoist on the hustings
Diamonds in Africa: Keeping the sparkle at home
(コメント) チベットの不満は,北京からの援助や漢民族と投資の流入では解決しません.ダライ・ラマは危機の原因ではなく,むしろ,対話による解決の一部なのです.ジンバブエにおいても,国内の反対派や国際援助の在り方が問われています.
ネパールの毛派ゲリラから大統領を目指す指導者,ボツワナのダイヤモンド加工・流通における国際センターへの挑戦,が興味深いです.
The Economist March 22nd 2008
Wall Street’s crisis
The financial system: What went wrong
Investment banks: The $2 bail-out
Central banks: A dangerous divergence
Commodities: A bit tarnished
Derivatives: Caveat counterparty
Foreign exchange: The yen also rises
China’s stockmarket: Earnings up, prices down
Economics focus: History lesson
(コメント) ウォール街の混乱について,その起源(1980年代の成長と金融自由化)や金融システムのゆがみ,ベア・スターンズ救済の背景,そして中央銀行の行動について,解説が読めます.システム不安を重視して金融緩和を続けるか,インフレ再燃やドル暴落を懸念して金融を引き締めるか? 商品市場,デリバティブ,外国為替市場,中国の株式市場,も紹介されています.
現状についての見通しを得るために,既存の理論が信頼できないとき,歴史が注目されます.この解説は,日本のバブル処理と比較するより,世界中の事例を参照しています.1980年代前半のアルゼンチン銀行危機が最悪で,その救済コストはGDPの55%であった,というのに驚きます.スウェーデン,イギリス,ノルウェー,フィンランドも挙げています.ノルウェーには,大銀行の破たんを迅速に公表し,危機の前に資本規制しておく,という賢者たちの指導力がありました.
住宅市場や債券市場に民間の買い手がいなくなれば,政府が市場価格の下限を示すために購入する可能性も示唆しています.アジアや日本の危機では,彼らがそれを非難していたはずです.