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IPEの風 4/7/08
4月になって,本当にガソリンの値段は大きく下がりました.セルフのガソリンスタンドで給油した際,レギュラー124円/リッターを実感しました.
民主党は,国民の利益より,自民党政権の打倒だけを目指しているのではないか? という不満に対して,日曜日の朝,報道2008に出演した小沢党首は民主党の政策と主張を説得的に示しました.もっと政治家の主張を聞きたいです.また,道路族の代表や財務省OBなどを出してください.誰もが公共の場で受け入れ可能な議論に依拠して論争するなら,さまざまな反対派や抵抗勢力にも重要な役割があるはずです.
リンドン・ジョンソンは二期目の大統領選出馬を辞退し,その4日後,マーチン・ルーサー・キング,Jr.が暗殺されて,アメリカ中の都市が内戦状態の様相を示したそうです.日本の政治家や政党も,政治システムを成熟化して,制度や社会資本をもっと充実させる具体的な論争を始めるときです.あるいは,まだ危機が足りない? 若者が絶望するだけで良いのですか?
朝日新聞の耕論「『大人』になる若者へ」(4月6日)を読みました.作家・石田衣良と精神科医・斎藤環の対談形式です.斎藤氏の指摘がおもしろい.若い人にはっきり表れている傾向として「非社会性」を挙げます.・・・「反社会」に走る元気はなく,徹底的に社会にコミットしないという「反抗の身ぶり」を示したがる.反抗の対象が見えにくく,いつの間にか弱い方に押しやられていくことに苛立つ.あるいは,意欲さえも奪われて,ただ「非社会的」になっていく.
また,思春期の意識が変わってきた,とも指摘します.若さや無知はハンディであるが,これから成長する可能性を無限に主張できるはずです.ところが,「自分はこのまま変わらないだろうという恐怖,確信が広がっている」と書きます.
「大人」の定義が書いてあります.・・・精神医学では,二つの条件で「大人である」と判断する.一つは,欲求不満耐性.大人は,不満なことがあっても解決まで待つか,あるいは,諦めることができる.もう一つは,コミュニケーション能力.今の若者の特質として,他者への「寛容度」が下がったことも挙げています.そして,彼らは簡単に絶望する.
斎藤氏は,個人的意見として,自分の意志で変化を起こせる人が「大人」である,と言います.そして,若者は思考のタイムスパンが短く,「大人」は長い.3年とか5年とかでも変えていく気持ちを持てる(他方,子どもは周りの影響を受けて意志が変わってしまう).確かに,子どもを観ていると,私も良く思いました.子供の視野は時間も空間も非常に狭い.しかし大人は,長い時間を計画するし,影響や関係の広がりを想像します.
私個人の意見では,「大人」とは,「子ども」を育てる人のことです.子供は弱く,傷つきやすい.不安定で,簡単にだまされる.たとえば,風邪をひくとすぐに悪化して,高い熱を出す.しかし治るのも早い.こうした子どもを育てる者は,自分が強く,傷つかず,彼らにとって安定の基盤でなければならない,だまされてはならない,と自覚します.熱を出した,けがをした,と言う子どもを連れて病院に走る.それが「大人」であることの証明です.
私たちは「子ども」によって大人になるよう鍛えられます.人は年齢に応じて思春期を迎え,老化します.しかし,「大人」になるのは難しい.斎藤氏は,親が子離れできない,永遠に「未成熟化」を生きる先進諸国の姿にも言及しています.
それにもかかわらず,なぜ私たちは「子ども」を育てるのか? 子供は喜びや楽しみを全身で感じ,表現します.彼らは希望や善意を信じ,体や心がどんどん成長することで,将来の可能性も大きく開かれると実感します.大人は子どもを育て,子供とともに多くの楽しみを得ます.人類の開拓した希望や善意のすべてが輝く瞬間を,子どもたちの中に見るのです.
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