IPEの果樹園2008

今週のReview

3/24-3/29

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

日本の不在, チベットの暴動, ベア・スターンズ救済アメリカ発の金融危機, 新しい金本位制, イラク侵攻5周年, オバマとヒラリーの文化戦争

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


NYT March 13, 2008

The Road to Dystopia

(コメント) 移民規制を強化するという政治家たちの主張は,その犠牲が何であるかを理解していません.大規模な国外退去を行う,という脅しも,すべての職場に労働者が働く資格のあることを確認させる,という法律の強制も,実際には,市民生活を不可能にするほどわずらわしく,不愉快なことであり,コストを要します.そして,アメリカの自意識を損なうでしょう.

移民たち(そして国民の一部)をますます苦しめるだけではないか? アメリカ国民の状態が改善できるのか? 移民たちをこれほど強く拒むことに,恐怖を感じる,とNYTは指摘します.

・・・もちろん,これは日本にもっと当てはまります.


NYT March 13, 2008

The Global Rose as Social Tool

By ROGER COHEN

(コメント) 独裁者となったムガベ大統領から逃れて,ケニアでバラを栽培する農園主Harry Milbankの話を紹介しています.そこで栽培されたバラは2日間でヨーロッパ,多くはロンドンにとどいて買われています.バラの花も今や世界商品です.

豊かな諸国は,グローバリゼーションに反対し,公正貿易を主張し,地球温暖化に反対しています.しかし,ケニアの貧困を減らして雇用をもたらせたら,その方が内戦を防ぐことができただろう,と考えます.


March 14 (Bloomberg)

BOJ Is Hamstrung as Stupidity Reigns in Tokyo

William Pesek

(コメント) 日銀総裁が決まらないことは,日本の政治が自民党の一党支配から抜け出せないまま,機能不全になってしまったことの宣言にしかなっていない,と嘆きます.

民主党が武藤総裁を拒んだ理由は,日銀の政治的な独立性を侵すからですが,日本の政治家はいつも金融政策に注文をつけてきました.これは政治的な得点のためのショーに過ぎません.

本当は,誰が日銀総裁にふさわしいのか? 日本企業の対応は硬直的で,輸出に頼りすぎる?自民党を超えるような民主党の発想は見られない?


Deaths reported in Tibet protests BBC Friday, 14 March 2008

Andreas Lorenz Protests in Lhasa Become Violent SPIEGEL ONLINE 03/14/2008

チベットの首都,ラサで,数名?の死者を出すような反政府抗議の暴動や鎮圧部隊の活動があったようです.市の中心部を占拠した市民に対して,鎮圧部隊が出動し,彼らを排除,連行しました.中国人の商店やレストランが襲撃されている,とBBCの記者は伝えています.略奪や放火,暴行が広まりました.自動車が転覆し,燃えています.

中国の支配に激しく抗議し,多くの犠牲者を出した1959年の反中国蜂起記念日の後,チベットの僧侶たちが中国の警察に逮捕された,とBBCは伝えます.彼らの釈放を求める数百名の僧侶たちが街に出て抗議を始めていました.これに一般の民衆が加わったようです.

インドに亡命中のダライ・ラマは,中国政府に民衆との対話を求めています.同時に,彼の故郷であるチベットが急速に中国文化に同化させられることを恐れているのではないか,とSpiegelの記者は指摘します.

1989年に中国の天安門事件のとき,ラサでも反中国暴動が起きました.そのとき以来の大規模な暴動です.胡錦涛国家主席は,当時,チベットの共産党書記長として暴動鎮圧に責任を負っていました.

中国政府はダライ・ラマが独立運動と暴動を指導していると非難しています.西側諸国は北京オリンピックへの参加を問題にするでしょう.たとえば,灯火がチベットを通ってエベレストに至るのは510日です.中国政府は安定化を急ぐでしょう.オリンピックになれば,世界中のメディアが中国に殺到します.

Michael Bristow Tense times at Tibetan monastery BBC 2008/03/15

Trouble in Tibet WP Saturday, March 15, 2008; A12

China's contradiction in Tibet BG March 15, 2008

およそ1500人の僧侶たちを中国の治安警察が催涙弾で中心街から掃討しました.彼らが唱和して要求したのは,"Free Tibet"

チベットの近隣地区,チベット人が多く住むけれどチベットとして認められず,中国の州となっている地域に抗議活動が広がる心配もあります.逆に,中国から暴動鎮圧部隊のトラック隊が移動しつつあるようです.

WPは,中国政府がもっとも嫌うのは社会不安である,と断言します.そのため,最初,中国の警察は暴力を行使しないような抑制を示したけれど,その後,完全に制圧する方針へと変わった,と推測します.チベットに限らず,中国の人権抑圧に苦しむ人々,反対する団体は十分に知っています.オリンピックが近づく今は,中国政府にとって,抗議への集中回答日なのです.

主要国政府も,ダライ・ラマも,中国政府の対応に求めていることは共通します.暴力を抑制するように.民衆の文化的な自立を尊重するように.皆が憲法に従うように.そのすべてを否定されたチベット民衆が抗議を続けているのだから.

BGは,中国政府はヒョウの柄ように,表現の自由や信仰の自由など,人権に関する問題になると影が鮮明になり,その姿勢に改善は見られない,と厳しく批判します.

1989年にダライ・ラマがノーベル平和賞を受賞したことを黙殺し,その後もチベットは中国の一部として経済援助を受けて繁栄していると宣伝してきました.同時に,鉄道建設を機に大量の漢人が流入し,中国の支配を強めています.

中国の増大する富も政府の強権支配を変えることはなく,警察国家の内部矛盾は強まっている,と.中国政府がその評価を改善する最善の方法は,一つです.ダライ・ラマに助けを求め,民衆との対話を始めることです.

Jonathan Watts in Xining Beijing sends in tanks as Tibet erupts The Guardian, Sunday March 16 2008

Ed Douglas Whatever China does, Tibet will still demand its freedom The Observer, Sunday March 16 2008

Richard McGregor, Jamil Anderlini and Tom Mitchell China seals off Tibetan capital FT March 16 2008

Trouble in Tibet FT March 16 2008

抗議活動の末に鎮圧部隊が殺害した犠牲者は100名を超えている,という意見も伝えられます.北京オリンピックの象徴である多民族の調和はどこにもありません.

貧しい地域への開発や援助が,単なる安定化や発展ではなく,政治的な支配綾文化的な同化,定住化の促進,経済的な自律性の喪失,移住や入植,植民地化,などを意味することが分ります.流入する漢人が商工業の支配を確立してしまったようです.ダライ・ラマは,チベット人の文化的・政治的な象徴,アイデンティティーとして,中国政府の攻撃を受けます.

主要な都市を封鎖して,報道関係者を締め出します.そのあと,侵攻する戦車や武装警官が何をするのか,・・・世界中で繰り返されてきた惨劇です.

Tibet's nonviolent path CSM March 17, 2008

Martin Jacques Spotlight on grievance The Guardian, Monday March 17 2008

Philip Bowring China and its minorities IHT Monday, March 17, 2008

Wei Jingsheng No time to close our eyes IHT Monday, March 17, 2008

Jürgen Kremb Tibet -- China's Gaza Strip SPIEGEL ONLINE 03/17/2008

中国のチベット侵略は清王朝から続く歴史があります.アメリカやインド,インドネシアと異なって,中国は13億の人口の92%が漢族だけで占められる,多文化を正当としない特殊な国家です.圧倒的な漢人の支配は,そのまま他の少数民族を抑圧し,同化を強制し続けるでしょう.しかし,チベットには,それを拒む条件と歴史がありました.少なくとも最近までは.

ナチスはユダヤ人を迫害・虐殺したことで,民族差別に関心を持つドイツのSpeigel紙は,中国によるチベット弾圧を,パレスチナ人の「ガザ地区」,にたとえました.そして,問題は中国政府の言うような「分離独立主義」ではなく,「拡大・同化政策」の失敗である,と主張します.特に文化大革命の際には,仏教を弾圧する過程で,多くのチベット人が漢族に虐殺されました.1959年にダライ・ラマが亡命して以来,犠牲者は推定120万人におよぶ,と書いています.

中国の警察が人々を住宅から引きずり出し,残酷な刑罰や拷問にかける日々が続くのです.オリンピック開催の陰で,こうした人権蹂躙がその「安定」や「繁栄」を支えていることに,世界の人々は黙っていないでしょう.「環境」や「多民族の調和」を称える北京オリンピックが「政治と関わらない」から問題ない,というのは,怒りや嘆き,そして笑いを招きます.

オリンピックとともに,中国政府に対する各地の反抗は広がるでしょう.北京に届くのは聖火だけではないようです.

M K Bhadrakumar India wakes to a Tibetan headache Asia Times Online, Mar 18, 2008

H.D.S. Greenway Seeds of a resistance remain in Tibet BG March 18, 2008

Jonathan Fenby The wrong side of history The Guardian, Tuesday March 18 2008

Simon Tisdall The three monkeys policy The Guardian, Tuesday March 18 2008

China Terrorizes Tibet NYT March 18, 2008

チベットの歴史は,一方から見れば封建的で抑圧された社会の開発,富と文明をもたらす過程であり,他方から見れば軍事的な制圧と嫌がらせ,漢人の流入と利益を独占でした.

ダライ・ラマは「文化的なジェノサイド」と呼んで批判しました.チベットでも,パレスチナにおけるインティファーダ,北アイルランドにおける武装闘争を始めるときが来たのでしょうか? 帝国の周辺は不安定化し,それを完全に安定化することも,放棄することも,非常に困難です.

John Ng Now the Tibet blame game begins Asia Times Online, Mar 19, 2008

China's Tibet spin LAT March 19, 2008

Wei Jingsheng China's True Face WP Wednesday, March 19, 2008

Tibet and the Olympics WP Wednesday, March 19, 2008

中国が今回の暴動を解釈する姿勢はすでに示されました.ダライ・ラマ派の分離独立を煽る暴力事件です.中国政府は鎮圧と復興に全力を尽くします.外国からの干渉はそれを妨げる行為です.オリンピックに結び付けることもありません.

中国政府の関係者は述べたそうです.中国はセルビアではないし,チベットはコソボではない.チベット問題は主権にかかわる問題であり,それを国際的に議論することや,中国に外国の軍隊を介入させることなどあり得ない,と.

しかし,アメリカの大統領選挙や,亡命チベット政府を認めるインドと中国との関係は,今後,難しくなるでしょう.

Jonathan Power Beijing's other problem IHT Thursday, March 20, 2008

KEITH BRADSHER China Tensions Could Sway Vote in Taiwan NYT March 21, 2008

台湾の総統選挙がチベット暴動の影響を受けています.台湾はチベットのように占領されているわけでも,文化的な同化を強いられているわけでもありません.しかし,1000基のミサイルによって標的にされ,経済的な統合化が進んでいます.分離独立が政治的に主張できないような脅迫を受けているのは同じです.


Q&A: Bear Stearns banking crisis BBC Friday, 14 March 2008

ベア・スターンズ・・・何ですか? というQ&Aが便利でしょう.1923年に設立されたアメリカの投資銀行で,ウォール街を牛耳ってきた支配的銀行の一つです.政府,企業,その他の金融機関が発行する証券の卸売りを支配するのですから,それが倒産するようなら影響は絶大です.

今回の危機直前の水準で,資本総額は600億ドル,世界中で15000人を雇用し,3500億ドルの資産を運営していたということです.サブプライム・モーゲージに関連したリスクの高い投資にも深くかかわっていました.関連するヘッジ・ファンドを閉じたために,とうとうベア・スターンズ自身の資金も足りなくなった,というわけです.

ベア・スターンズが倒産してその資産を市場でただちに処分すると,資産の価格がさらに急落して,他の銀行も破産する連鎖が始まることを誰もが恐れています.それゆえNYFRBが救済融資を始めました.

ところがFRBは制度的に商業融資にしか関われないために,商業銀行のJPモルガン・チェースが投資銀行のベア・スターンズに融資します.これは迂回させているだけだ,というのです.まさに綱渡り(掟破り?の裏ワザ)です.

ベア・スターンズはどうなるのか? (ノーザンロックのように政府が所有することはないでしょうから)どこかの銀行が買収するのか? 誰もいないときは,JPモルガン・チェースが引き取るしかない? 株主は納得するのか? 政府は損失が出ないように資産の評価損を補償するのか?

Andrew Clark Bear Stearns shares plummet as it seeks emergency funding The Guardian, Friday March 14 2008

Larry Elliott This crisis has a life of its own The Guardian, Friday March 14 2008

ソフト・ランディングを云々する時期は終わったのです.アメリカの金融危機はアメリカの金融監督者たちの予想や管理手段の範囲を超えてしまいました.イギリス人が,ノーザンロックの取り付け騒ぎで知ったように.

逆に,バーナンキがなぜ今まで異常に積極的な(たとえば,直前,証券も含めて割り引く,2000億ドルの)金融緩和を続けたのか,世界中が納得したかもしれません.アメリカの資産市場はこれほど弱っているのだ,と.

アメリカの大幅金利引き下げは続くでしょう.世界の中央銀行は協調を求められます.今後も,ドルの下落は止まりません.Larry Elliottは,それでも住宅市場の底が見えるまで,アメリカの市場は回復を見込めない,と述べています.

Richard Adams When BS hits the Fed The Guardian, Friday March 14 2008

LANDON THOMAS Jr.JPMorgan and Fed Move to Bail Out Bear Stearns NYT March 14, 2008

Francesco Guerrera, Ben White and Krishna Guha Fed leads Bear Stearns rescue FT March 14 2008

Bear Stearns funding FT March 14 2008

Regulation to the Rescue WP Saturday, March 15, 2008

JENNY ANDERSON and VIKAS BAJAJ A Wall Street Domino Theory NYT March 15, 2008

証券の売買では信頼関係がすべてです.電話の相手に信頼を持てないなら,取引は止まってしまいます.すでに,ベア・スターンズ救済はそれを広めました.

ヘッジ・ファンドは資産が集中しており,もし倒産すれば全ての資産が流動性を失います.人々は裁判所が決定するまで資産を一部でも受け取れません.そうとなれば,今のうちに現金化する投資家が増えるのは確実です.売り手ばかりで買い手がつきません.全盛を謳歌していたプライヴェート・イクイティ・ファンドの一つ,カーライル・グループのヘッジ・ファンドも,その評価損を償却すれば資本不足を指摘されています.

FLOYD NORRIS F.D.R. Safety Net Gets a Big Stretch NYT March 15, 2008

Richard Adams When BS hits the Fed The Guardian, Sunday March 16 2008

GRETCHEN MORGENSON Rescue Me: A Fed Bailout Crosses a Line NYT March 16, 2008

EDMUND L. ANDREWS Fed Chief Shifts Path, Inventing Policy in Crisis NYT March 16, 2008

James Grant A Bear Stearns Market WP Sunday, March 16, 2008

グリーンスパンがバブルを仕込み,バーナンキは救済に奔走する.われわれはベイル・アウト国家に住んでいる,と公言する者もいます.ベア・スターンズも直前まで危機など知られていませんでした.情報の透明性はどうなったのか? 納税者の負担で,もっと多くの救済が必要になるでしょう.

バーナンキが強く非難してきたような,その場に合わせた都合よい解釈や政策の発明でしか生き延びることができない状況が始まったのです.経済政策は一貫したルールに従うべきだ,という主張が,経済危機にルールなど存在しない,という主張に交代しました.自分の身になれば,「モラル・ハザード」論なども配慮する余地はありません.

商業銀行を仲介して投資銀行を救済する手段は,NYFRBTimothy F. Geithner総裁と相談して準備していたようです.それが本当に始まった.

Richard Adams Moral hazard The Guardian, Monday March 17 2008

Phillip Inman Carry on banking The Guardian, Monday March 17 2008

PAUL KRUGMAN The B Word NYT March 17, 2008

前財務長官のルービン,IMFのJohn Lipsky,ポールソン財務長官,誰もが金融危機を脱するために公的資金投入が必要になることを語り始めていました.Bの言葉はタブーであり,「ベイル・アウト(救済融資)」と言わないだけです.

「市場は弾力的で,開かれた競争を行っているから,経済の破たんが累積するようなことはなく,信頼できる安全弁が備わっている」というのがグリーンスパンの信念でした.それが数兆ドルに及ぶ経済損失をもたらす聖なる誤謬であると漸く分かったのです.

信用が破壊されるとしても,ほおっておけば良いさ,というのは間違いです.経済そのものが破壊されるからです.LTCMでもベア・スターンズでも,救済するのは良くないことです.しかし,もっと悪いことが起きるのを防ぐために,中央銀行が介入するしかありません.ただし,金融システムを救済して,関係者を厳しく罰すること,です.

Buying Bear FT March 17 2008

Lehman Brothers FT March 17 2008

Bear and bank runs FT March 17 2008

Caroline Baum Ask Bear Stearns Stockholders About Moral Hazard March 18 (Bloomberg)

John M. Berry Fed Takes Bold Steps to Protect the U.S. Economy March 18 (Bloomberg)

Backed into a bailout BG March 18, 2008

Bill Emmott The US economy is about to suffer a painful dose of reality. About time, too The Guardian, Tuesday March 18

1970年代前半のイギリス,1980年代後半のアメリカ,1990年代初めの日本,など,どの金融危機にも決定的な瞬間がある,とエモットは言います.それは今まで思い描いてきたことと異なる現実に直面する瞬間です.ベア・スターンズの破たんは,まさにその瞬間でした.

昨年4月には158ドルであったベア・スターンズの株価が,先週金曜日には38ドルしかなく,JPモルガン・チェースによる救済時には2ドルになってしまった,と.

インフレの警戒感は去らず,長期金利は下がらないまま,FRBは金融緩和して資金供給を続けています.投資も消費も減って,不況は避けられず,失業が増加しつつあります.アメリカの政治家は外国を非難し始めます.ヨーロッパはアメリカの危機が波及することを心配します.しかしエモットは,危機の行方が中国やインドにかかっている,と考えます.

特に,インフレに苦しむ中国が人民元を切り上げると決めたとき,もしかすると,ドル暴落の開始となるからです.

ただしエモットは,これまで世界が求めてきた二つの調整がようやく始まるのだ,と悲観も楽観もしていません.まずはウォール街の株価水準です.その次が,アジア通貨の過小評価です.世界にとって,これまで考えてきたことと異なる現実に異なる瞬間です.

Dean Baker Fed up with Wall Street The Guardian, Tuesday March 18 2008

The Bear Stearns deal LAT March 18, 2008

Who Will Come to the Rescue? NYT March 18, 2008

Mr. Bernanke's Bet WP Tuesday, March 18, 2008

ALEX TABARROK Home Sweet Investment NYT March 18, 2008

Krishna Guha and Michael Mackenzie Fed cuts rates by 75 basis points FT March 18 2008

EDMUND L. ANDREWS Rescue Tests the Fed Credibility NYT March 18, 2008

Chris Giles An economy undermined? Experts assess the real costs of a financial crisis FT March 18 2008

The Fed risks doing too much FT March 18 2008

Martin Wolf Why today’s hedge fund industry may not survive FT March 18

(コメント) 大幅金利引き下げに関する考察です.もちろん,ベア・スターンズ救済と連動した政策です.しかし,当然,インフレを放置し,ドル下落を加速します.それは累積的に破壊的な影響を広げ,国際的な報復や政治対立を招くかもしれません.

FRBによる救済が必ずしも効果的でないのは,危機の大きさが予測できていないからです.まだ大きな破たんが続くのか? 市場には取引を持ち込めないのか? FRBも含めて信認を失う危険があります.そして,この問題に関わる限り,モラル・ハザードとインフレは無視されてしまいます.

FTは,救済する仕事を政府に代ってFRBが引き受けるべきではない,と警告します.

Scot Lehigh A government cure to the sliding economy BG March 19, 2008

Caroline Baum Bernanke Wrote the Book on Inflation, Depression March 20 (Bloomberg)

David Ignatius What if The Fed Fails? WP Wednesday, March 19, 2008

John Gapper How Bear aided its own demise FT March 19 2008

Robert D. Novak The Fed on a Limb WP Thursday, March 20, 2008


WP Friday, March 14, 2008

A 1930s Loan Rescue Lesson

By Alex J. Pollock

NYT March 14, 2008

Betting the Bank

By PAUL KRUGMAN

FT March 16 2008

We will never have a perfect model of risk

By Alan Greenspan

FT March 17 2008

Why the Fed must act in unfamiliar ways

By Mohamed El-Erian

(コメント) Alex J. Pollock1930年代のThe Home Owners' Loan Corporation (HOLC)を再生する提案を検討します.しかし,当時の市場に比べると今は条件が異なります.

その規模は2億ドルでしたが,購買力とGDPの変化を考慮して,現在の200億ドルと計算しています.デフォルトのモーゲージと住宅を買い取って,その条件を返済可能な水準に変更し,新しい住宅の買い手に貸し付けます.買い取る住宅の上限が決めてありました.そして市場が回復して,目的を達成したときに生産され,財務省は1400万ドルの黒字を得たそうです.

バーナンキが従う新しい金融政策,すなわち,住宅債権に対する資金供給,債務の現金化,についてPAUL KRUGMANが批判します.その規模が4000億ドルというのは,FRBでもリスクが大き過ぎないか? しかも,それでも市場を回復させるには規模が小さ過ぎる!

必要な規模の介入ができるとしたら,それはイラク戦争のように,国家だけが行える,と.

Alan Greenspanは,住宅市場の需給が再び均衡することで危機は終息する,と考えます.住宅バブルのピークは2006年初めでした.今は調整が進む過程です.その過程で,市場の自動的な均衡や世界的な金融バランスが犠牲にならないように,と求めています.

グリーンスパンは危機の原因を自己資本の基準となる危機の評価モデルが間違っていたことに求めています.危機があるとき(悲観)と,無いとき(楽観・ユーフォリア)では,市場のダイナミズムが全く異なるからです.リスク管理は完全なものではなく,説明できない要因があり,二つのモデルは不連続だ,と認めています.だから,グリーンスパンによれば,市場から学び続けるしかないわけです.

El-Erianは,アメリカで起きていることは,まるでこれまで繰り返されてきた危機の再現でしかない,と感じています.ただし,これまでの危機は主に新興市場でしたが,今回は,アメリカの金融市場です.これまでの多くの議論をアメリカ自身が学ぶ(そしてルールを書き換える)わけです.

IHT Tuesday, March 18, 2008

Fending off a long, long slump

By Paul A. Samuelson

WP Tuesday, March 18, 2008

The Fed Can't Do It Alone

By Alan S. Blinder

WP Tuesday, March 18, 2008

How This Crisis Is Different

By Robert J. Samuelson

FT March 19 2008

Act now to stop the markets’ vicious circle

By Paul De Grauwe

(コメント) ケインズ以後の時代において,金融危機は不況回避を主要な目的に緩和されてきたわけです.Paul A. Samuelsonは,1930年代のアメリカや1990年代以後の日本と比較して,危機回避における公的介入の重要性を説きます.またAlan S. Blinderとともに,自由放任,政府介入嫌いの共和党政権が終わることを歓迎しています.

ただし,Blinderが強調するのは金融市場の心理です.信頼が失われること,それを回復することが問題です.ベア・スターンズはベイル・アウトされたのではない,と考えます.捨て値でJPモルガンに買収されたのです.また,その際,連銀は「最後の貸し手」としてJPモルガンを守ると約束したのです.危機を恐れるな,ということを学ぶことだけが市場の課題である?

Robert J. Samuelsonは,80年代のS&L危機や9798年のアジア通貨危機などと比較しており,金融システムの外部("subprime""securitization";"leverage")が拡大して危機を手に負えなくしています.Paul De Grauweは「市場の失敗」という言葉で,これまでの指摘を含めて,問題を要約します.そうであれば,危機を阻止する介入は政府・中央銀行によって行われるべきです.そして,危機が終わったら,グリーンスパンの願いとは逆に,市場の規制や制度を見直すべきだと考えます.


SPIEGEL ONLINE 03/14/2008

Planned Chinatown Raises Hackles in Rural Germany

By Markus Feldenkirchen in Oranienburg, Germany

(コメント) ドイツにおける中国人コミュニティーの建設が進んでいます.誰が来るのかはわからないけれど,中国のレストランと文化がいっぱい準備されます.市との対話で,中国人にはドイツにある様々な社会的規制が不満です.さまざまな文化的象徴が記事に紹介されています.中国人の投資家は不満ですが,役所は慎重です.民主主義には時間がかかる.東西ドイツ統一の火傷に懲りた.・・・


WP Friday, March 14, 2008

Adventures In Identity Politics

By Charles Krauthammer

FT March 14 2008

Birth of a ‘creedal’ nation

By Christopher Caldwell

The Guardian, Saturday March 15 2008

Britishness? It's a case of mistaken identification

Marina Hyde

FT March 17 2008

Spain, Italy and identity politics

By Gideon Rachman

(コメント) 欧米においてもアイデンティティーが政治の中心です.


FT March 14 2008

Currencies and governments

(コメント) FTは,もちろん,政府介入を嫌い,信用していません.

・・・ドル安は歓迎されている,アメリカは輸出を増やし,ユーロ圏はインフレを抑え,日本の円高はまだ最近のことだから.人民元が調整するときに問題になるかもしれないが,金融政策の協調が必要であり,それはアメリカとともに世界が不況を恐れるときには実現するかもしれない.


YaleGlobal, 14 March 2008

Time to Bury a Dangerous Legacy – Part I

Graham Allison

(コメント) 9・11の1ヶ月後,CIA長官George Tenetはブッシュ大統領に秘密報告“Dragonfire”を伝えました.アルカイダが10キロトンの核兵器を入手し,ニューヨークのタイムズ・スクエアを狙っている,というのです.アルカイダには,報復も,交渉も,連絡もできません.

その警告は間違っていましたが,それを否定する科学的な根拠はなかった,とAllisonは考えます.そして,アメリカは今のような対策しかとらない場合,核兵器によるテロ攻撃が先進諸国のどこかの都市に対して2014年までになされる可能性は,それがない可能性よりも高い,と主張するのです.

もちろん,それを防ぐ対策を示しています.世界で統一した厳格な核管理体制です.これを「新しい金本位制」と呼ぶわけです.no new national enrichment, no nuclear tests, no first use of a nuclear bomb and no new nuclear weapons・・・ “a world free of nuclear weapons.”


The Guardian, Sunday March 16 2008

Morals and markets

Robert Skidelsky

(コメント) 倫理なき市場について,さまざまな議論が行われています.資本主義と市場システムは,富を増やし,欲求を満たす点で,これまで最も成功してきました.しかし,貧困から抜け出してからは,何であれ欲求を満たすことが正しいとは限りません.

資本主義は人々により多くの貨幣そのものを欲求させ,それゆえ無限の欠乏と競争を創りだします.その中では伝統的な価値観は破壊されてしまうのです.

Skidelskyの議論を詳しく理解する余裕がありませんでした.美徳や正義について,CEOの報酬について,論じています.結論だけ紹介すれば,資本主義や市場を破壊するより,欲求を再道徳化することを求めています.端的には,広告の規制です.


LAT March 16, 2008

War's price tag

Linda J. Bilmes

NYT March 16, 2008

Reflections on the Invasion of Iraq

BBC 2008/03/16

Toxic world fallout from Iraq invasion

By Paul Reynolds

The Guardian, Monday March 17 2008

Iraq: five years on

Max Hastings

FT March 18 2008

The high cost of fighting a losing battle

By Linda Bilmes and Joseph Stiglitz

FT March 19 2008

Today’s task is to mend broken Iraq

(コメント) アメリカ軍のイラク侵攻5周年を記念した論説が各紙に並びました.特にNYTです.

2008年末までに,アメリカ連邦政府はイラクとアフガニスタンにおける戦闘に8000億ドル(80兆円)以上を支出した.将来のコストとして重要なものには,退役軍人への給付(これまでに160万人以上が軍人として展開した),軍備の更新,軍事費のために増えた債務への利払い,がある.その総額は容易に3兆ドルに達するだろう,とLinda J. Bilmesは推定します.

RICHARD PERLEは,ブッシュ政権に加わって信念を共有した,と述べています.イラクのサダム・フセインは大量破壊兵器を生産できるし,それを大規模に保有している.100万人以上が犠牲になった戦争に責任があり,テロ集団や自爆テロを支援し,生物・化学兵器を保有し,使用した.9・11以上に破壊的なテロを計画しているかもしれない,と.

フセインを打倒する決断は正しく,勝利の後の占領政策で政権内部の対立が間違いを犯した.

ANNE-MARIE SLAUGHTERは,アメリカ軍が占領したバクダッドに広まったイラク人による略奪行為を重視します.優先順位が間違っており,兵士が少なすぎたのです.イラクの文化も歴史も無視した再建計画は機能しませんでした.

KENNETH M. POLLACKは,侵攻作戦だけがあり,撤退は考えていなかった,と批判します.WMDやアルカイダとのつながりを強調するだけで,どのようなイラク,どのような中東の秩序を残すべきか,何も準備していなかった.ブッシュ政権の途方もない傲慢さである,と.

FREDERICK KAGANは,ハイテク戦争の幻想を批判します.そして,この戦争を介して,アメリカは最大の反テロ軍隊を構築しました.

BBCが伝えます.大統領選挙では論争になっていますが,英米の国民はイラクの現状よりも自分たちの金融危機を恐れている.イギリスの軍事史という視点から,ワシントンを牛耳ったネオコンの薄っぺらな普遍的思想を押し付ける戦略が失敗だった,と主張します.地域の実情に応じた安定した秩序が必要です.

宗派や部族に分裂した社会を再統一する課題は,まだ続くのです.


NYT March 16, 2008

Beyond the Noise on Free Trade

By N. GREGORY MANKIW

(コメント) アメリカ経済学会のPh.D会員の87.5%がアメリカの貿易障壁撤廃を支持した,と書いています.逆に言うと,22.5%は反対したわけです.他方,世論調査では,グローバリゼーションを支持する人が28%でしかなく,58%は反対しました.

しかし,政治的選択は経済学者には分りません.単一の論点で投票することはなく,何を重視するかは異なるからです.


March 17 (Bloomberg)

Ethiopian Marathoner Puts Smoggy Beijing on Spot

William Pesek

(コメント) スーダン,ダルフールの人権問題だけでなく,チベットが加わりました.しかも,大気汚染や食品の安全性が北京オリンピックを脅かします.


March 19 (Bloomberg)

Plaza Hotel Reopens as Yen, Dollar Need Accord

William Pesek

March 20 (Bloomberg)

Why Asia Can't Imitate Fed's Inflation Amnesia

Andy Mukherjee

(コメント) 金融危機が広まっているのに,G7は何をしているのか? プラザ合意を忘れたのか? 株価下落や不況を怖がる中で通貨価値が高まる,日本は不思議の国だ,William Pesek は考えます.

中国やインドは参加しておらず,金融市場は金融当局の管理を超えてしまいました.中国はドル安に注目しています.

債券市場を心配するアメリカの金融緩和につられて,アジアでも実質金利が下がりすぎ,在庫投資を刺激している.それが国際商品の価格を上昇させている,と指摘されます.

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The Economist March th 2008

Conservation: Use them or lose them

The credit crunch: Mark it and weep

Economics focus: When the rivers run dry

Japan’s regions* The puzzle of power

Japan’s Mittelstand: Under pressure

Lexington: Obamaworld versus Hillaryland

(コメント) 野生動物の保護は,それが成功すると個体数が増えて,その売買を認める制度が必要になります.逆に,売買を完全に禁止すれば,住民にとって価値を失い,増えすぎて粗末にされるでしょう.また,保護のコストが賄えず,自然のバランスも破壊します.

金融危機に対して,会計基準は何に依拠するべきか? 買った時の価値か,それとも市場の変化に従う時価か? 時価は危機を拡大するように見えます.しかし,時価で償却を強いるから危機を脱する(そして回避する)圧力になる,と主張します.また,流動性に関するバンク・オブ・フランスの発行した特集号が紹介されています.流動性とは何か? そして,中央銀行の金融危機に対する介入についても論じます.

日本に関する悲観論は再び盛んですが,記事は,その背景を日本の通説に求めています.ひとつは地方財政を中央からの交付金で支配しており,その支配権が政府にあること.もう一つは,中小企業が大企業の業績を支えているのに,彼らの利潤や賃金が厳しく抑制されていること.

何と言っても面白いのは,オバマ・ワールドとヒラリー・ランドの激突です.二つのアメリカを嘆く前に,二つの民主党をなんとかしなければなりません.オバマとヒラリーの支持者たちは,文化戦争を始めてしまいました?