IPEの果樹園2008

今週のReview

2/18-2/23

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

イランの核武装, NATO, 世界中産階級の増大, アメリカの景気後退, ケニアの部族対立, 呪いを解く, シンガポール, 学校, プーチン, 中国の軍備拡大

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT February 7 2008

Europe can limit Iran’s nuclear ambitions

By Karl-Theodor zu Guttenberg

(コメント) イランの核武装を阻止できるか? 再び欧米が議論しています.

EU,アメリカ,石油,核の平和利用,エネルギー産業,体制転換,軍事攻撃,アラブの穏健派,イスラエルの核,パレスチナ問題,イラク,テロ,などが関係しています.

イランが核武装すれば,中東地域に核兵器が拡散するでしょう.その政治的な不安定化と軍事衝突,難民や経済危機は,間違いなく,アメリカよりもヨーロッパにとって深刻です.そして,日本への影響も.しかし,イランが核兵器の開発を止めるためには,より明確な懲罰と褒賞が示されるべきであり,EUだけでなく,むしろアメリカがそれらの条件を握っています.

それどころか,もしイランも含めて中東地域が核武装を完全にあきらめ,平和利用に向けて核エネルギーの技術協力や原子炉の建設をビジネスとして外国から受け入れるなら,その需要はアメリカよりもヨーロッパへ向かうでしょう.

イランが核武装にこだわるのは,アメリカのブッシュ政権が武力の行使を明言し,イランの政治体制を強制的に転換する発言を繰り返したことが重要な理由でした.さらに,アメリカの方針を支持する穏健派と違って,イスラエルの存在を認めず,武力対立も辞さない姿勢は,イスラエルが公言しない形で核武装したことに反発し,対抗しなければならない,と考えるわけです.

アメリカはイラク戦争と占領政策によって中東地域における民衆の反感を買いました.イラクの平和的な秩序を再建して,アメリカ軍が撤退するためにも,イランとの関係改善はアメリカにとって重要です.イスラエルの政権が,パレスチナの軍事強硬派と和解できず,自爆テロやロケット攻撃に侵攻や占領を繰り返す現状は,双方の犠牲と政治的な不安定性を増すばかりです.

それゆえアメリカの協力と支持を得て,EUが内部の意見統一を図れば,イランの核武装は阻止できるし,経済協力や地域の安定化に向けて,大きく舵を切るチャンスにもなるのです.こうした多角的な関係を築くことで,ヨーロッパはロシアや中東へのエネルギー依存を政治不安から切り離し,地球規模の温暖化防止にも成功するのです.

・・・それはちょうど,日本が北朝鮮の核やミサイル,朝鮮半島の再統一,中国の台頭,日中の経済的な相互浸透について,真剣に検討しなければならない事情と似ています.


The Guardian Friday February 8, 2008

Talk of time to turn and flee is wrong - as long as Nato is given a boost

Polly Toynbee in Kabul

WP Sunday, February 10, 2008

Learning to Fight a War

By David Ignatius

FT February 11 2008

Too soon to give up in Afghanistan

By Gideon Rachman

(コメント) イラクとアフガニスタンでアメリカが行った政治介入,その極限の手段である武力介入と占領政策は,中期的に見て,十分な効果を示しませんでした.

NATOは分裂し,アフガニスタンはアヘンとイスラム原理主義に支配されるのでしょうか? それを認めてしむことは,あまりにも大きな失敗であり,むしろここから国際秩序は立ち直るべきだ,と主張されています.

LAT February 11, 2008

NATO at twilight

By Andrew J. Bacevich

北大西洋条約機構(NATO)は,かつて軍隊と考えられた.冷戦中,それは恐るべき兵力と結束を保持していた.もはやそうではない.真剣な軍事的存在として,同盟は存在していない.「別の」NATO,すなわち,劇場所有者国民協会(the National Assn. of Theatre Owners )の方が有力だ.

1949年に12カ国で結成されたとき,NATOには重大な使命があった.西欧を防衛し,第三次世界大戦を防ぐことである.アメリカを参加させ,ドイツを抑え込み,ロシアを排除することが,この目的を達成する枠組みであった.40年にわたって,それは見事に機能した.

しかしソ連の脅威が消滅すると,同盟の中核をなすヨーロッパ諸国は平和の配当を要求するのに待とうとはしなかった.彼らは防衛予算を削り,軍備を解除した.たとえば,ドイツ陸軍は1989年に12個師団を擁したが,現在は,同等の3個師団でしかない.

他方で,NATO本部は,官僚たちが自己保存を図るという鉄の法則にしたがった.同盟が存続する口実をさがすことが小さな産業になり,軍隊が縮小しているのに,新しい使命は膨張した.

新しい使命の一つに,NATOの拡大があった.現在,加盟国は26カ国に達し,アルバニア,クロアチア,マケドニアが加盟を求めている.さらに加盟国は増えるだろう.セルビア,モンテネグロ,さらにグルジアやウクライナまで,加盟を打診している.加盟異国の増加は,東欧であった諸国や旧ソビエト連邦であった諸国さえもヨーロッパ本体に組み込むメカニズムを提供する.しかし加盟国の拡大はNATOが自己防衛する能力を分散させた.集団的な防衛組織であるより,何か政治クラブに近い同盟,戦争のために組織するより会議の招集に熱心な団体になった.

ワシントン(アメリカ政府)に駆り立てられて,同盟国の指導者たちは同時に「地域の外へ」目を向け始めた.NATOの境界線を越えて安全保障を高める軍事力を計画したのだ.この考え方の背後には,世界の超大国が保安官として世界の法律や秩序を強制するとき,それを助ける保安部隊のようなものを提供する同盟が漠然と考えられていた.

1990年代のバルカン戦争はこの考えを試す準備機会となった.その結果は考え方を確立するものではなかった.1999年に,ミロシェビッチの二つの小部隊をコソボから追い出すのに,強力なNATO軍は11週間も空爆を強化するだけだった.接近戦をともなうどのような作戦も同盟諸国が嫌ったのは明らかであった.

アルカイダとタリバンに対するアフガニスタンの戦争はまだ続いているが,それは今や二度目の,一層厳しいテストである.このテストはまさに同盟軍の戦闘能力と団結がどれほど衰えているかを示した.

アフガニスタンでは,NATOが失敗しつつある.数字的に,26の同盟諸国が戦争に参加して,およそ4万3000人の兵士が展開している.しかし実際は,アメリカ,イギリス,カナダの提供した軍隊を除くと,わずか2万人に過ぎない.それでイラクより50%も大きな国土を平定するのだ.多くの国が条件をつけているが,ドイツの条件は最も顕著であり,比較的安定した地域でしか彼らはいることができないという制限の下で展開した.

アメリカのスタッフは同盟諸国にもっと多くのことをするよう求めた.もっと条件のつかない多くの軍隊を送れ,ということだ.しかしヨーロッパは訓練を受けた兵士が不足していたし,軍備の十分な貯えもなかった.何より,政治的な意志が欠けていた.ヨーロッパの大衆は,世界の他の地域で,反乱軍を追跡するために自分たちの国の市民たちを送り込むことを特に好まなかった.ヨーロッパの諸政府は,再びドイツがよい例であるが,その国民の意思を反映していた.

アメリカのロバート・M・ゲイツ国防長官は,NATOが二重化する危険を警告しているが,その警鐘は遅すぎた.すなわち,第1層は公平な分担を引き受ける意思のある加盟諸国,第2層はフリー・ライダーたちである.第2層の枠組みは既に存在しており,多くの加盟国がその下層にとどまることに満足している.

NATOはもはや戦争の組織ではない.アメリカ人を参加させ,ドイツ人を抑え,ロシア人を排除することは,半世紀前ほど機能しなくなった.もし同盟に何かの価値があるとすれば,それはヨーロッパの統合と繁栄を確立する制度であることだ.

アメリカがいくら非難しても,それを変えることはできない.ブッシュ政権がヨーロッパ人にアフガニスタンを救済するよう期待したのであれば,それは妄想だった.NATOを重要な同盟関係を思うのは,ピッツバーグが鉄の都とか,デトロイトが自動車の世界の中心地と思うのと同じことだ.それはとんでもないノスタルジーである.


The Japan Times: Friday, Feb. 8, 2008

Breaking the monopoly on econ theory

By THOMAS I. PALLEY

(コメント) 「ワシントン・コンセンサス」に関する論評です.この言葉は2002年にウィリアムソンJohn Williamsonが用いて(原義を離れて)広まったのですが,THOMAS I. PALLEYは,開発論における対抗思想が現れたと考えます.特に,ロドリクDani Rodrikです.

経済学は一つでも,開発の成功例は多様である,とロドリクは考えます.経済学者が推奨する最善の政策ではなく,その地域の条件に合致したさまざまな工夫によって,開発は成果を上げています.民営化,規制緩和,自由化,市場統合,マクロ安定化,低インフレ,などは,一般に,好ましい条件かもしれません.しかし,新古典派経済学は現実に対して非常に限定した条件しか考慮していません.

現実には,市場は完全競争ではなく,市場で評価されないさまざまな価値がある.・・・ところが論説は,ロドリクを批判します.経済学は一つではない,と考えるからです.

たとえば,新古典派を革新し,政府による市場の是正策を断固として拒むシカゴ派と,政府による市場(グローバリゼーション)の是正策を主張するMITのエコノミストたちは異なります.その違いを,市場で評価される以外の価値を実現することで説明するようです.また双方とも「一つの経済学」として新古典派を認めていますが,制度学派を紹介して,今でも,経済学の意見の違いを認めるべきだ,と議論します.


LAT February 8, 2008

Can the world afford a middle class?

By Moisés Naímeditor in chief of Foreign Policy magazine

貧しい諸国の中産階級は世界人口の中でもっとも急速に増加している.人口全体は12年間で10億人増えるが,中産階級は18億人,中国だけで6億人増える.

Homi Kharasthe Brookings Institution)の推定では,2020年までに,世界人口に占める中産階級の割合は現在の30%から何と52%にまで上昇する.貧しい諸国の中産階級はほぼ倍増し,経済成長を持続して貧困線以下の人口を急速に減らすからだ.

これはもちろん良いことであるが,人類はかつてない調整圧力にさらされる.それはすでに影響を示し始めた.1月には,ジャカルタで1万人が大豆価格の上昇に抗議の街頭活動を行った.食料品の価格上昇に怒っているのはインドネシアの貧しい人びとだけではない.2007年には,パスタ価格の上昇にミラノで街頭の抗議が起きた.メキシコではトルティーヤ価格だ.セネガルのコメ価格,インドの玉ねぎ価格.アルゼンチン,中国,エジプト,ベネズエラ,ロシアでは,大衆の反発を抑えるために,価格統制が始まった.

こうした抗議活動は世界変化のもっとも顕著な声明である.パンに,ミルクやチョコレートに,われわれは多く支払っているぞ,と.新しく加わった世界中産階級は世界食糧価格を引き上げる.1845年から続く食糧価格指数(the Economist)は,現在,今までで最も高くなっているが,2007年だけで30%も上昇した.小麦と大豆の価格は,それぞれ,約80%,90%も上昇した.その他の多くの作物が記録的な高値である.

食糧が減ったからではなく(2007年の世界収穫量は過去最高であった),いくつかの穀物が燃料に使用され,より多くの人々がより多く食べるから,価格が上昇している.中国の平均食肉消費量は,1980年代半ばと比べて,2倍以上になった.

急速な中産階級の増加は,その他の資源価格にも表れている.結局,中産階級というのはより多くの衣服,冷蔵庫,おもちゃ,薬を買い,最終的には,自動車や住宅を買うのである.中国とインドは,世界人口の約40%であるが,その多くがまだ非常に貧しい.それでも世界に供給される石炭,鉄鉱石,聖鉄の半分以上を消費している.彼らが急成長し,またブラジル,インドネシア,トルコ,ベトナムのような国が成長することで,これらの需要が膨張している.

さらに,発展途上国の中産階級は,たとえ質素であっても,その生活スタイルがエネルギーを大量に消費する裕福な諸国の生活スタイルと共通してくる.2006年,中国の電力供給は,フランスの全電力供給に等しい大きさで増えた.それでもまだ中国人の多くが頼りになる電力供給を得ていない.インドでは4億人も電気やガスを欠いたまま暮らしている.インドではエネルギー需要が今後25年間で5倍になるだろう.

そして石油価格だ.石油が空前のバレル当たり100ドルに達したのは,供給が制約されたからではなく,貧しい諸国でかつてない需要が起きたからだ.中国だけで近年の世界消費増加分の3分の1におよぶ.

世界消費ブームがもたらす結果を議論すれば,環境問題に焦点が当てられてきた.しかし,経済・政治的な影響も重要である.既存の中産階級の生活スタイルも,新しい中産階級が現れることで劇的に変わるだろう.アメリカ,フランス,スウェーデンの家庭の消費パターンは,いやおうなく,より高価になるだろう.たとえば,いつでもどこでも自動車を運転することは,禁止されるほどの高価な出費になる.それは悪いことばかりではない.水の汚染や環境破壊のコストはより正確に反映されるだろう.

しかし,他の面ではより苦痛であり,予測が難しい.移民や都市化,所得分配の変化は広範におよぶ.良い住宅,医療,教育,そして必然的に,政治参加,が求められる.

人口増加が食糧供給を超えてしまう,という地球の「成長の限界」に関する議論は,旧く,トマス・マルサスにまでさかのぼる.過去において,悲観論は間違いだった.高価格と技術進歩が供給を増やし,緑の革命のように,いつでも問題を解決した.同じことかもしれない.しかし,世界が経験した中産階級の調整圧力はまだ始まったばかりだ.

インドネシアとメキシコの抗議活動は,それが安くないことを示している.さらに,静穏でもない.


NYT February 8, 2008

A Long Story

By PAUL KRUGMAN

The Guardian, February 8, 2008

The debt delusion

Thomas Palley

(コメント) PAUL KRUGMANは,アメリカは不況に入る可能性が高まっており,しかもそれは長期に続くだろう,と考えます.すなわち,二つの不況,1990年(ITバブル崩壊)と2001年(クレジット・クランチ)の混合型になる,と.

もしそうであれば,財政支出によってインフラを整備するような時間の価格政策も,十分に,成功するでしょう.そのためにも,新しい大統領は,減税(反政府)のイデオロギーから解放され,自ら正しい政策を判断しなければなりません.

Thomas Palleyは,金融緩和や減税といった刺激策が根本問題に反している,と考えます.それは,資産価格が持続可能な水準を大きく超えていることと,債務に依存して成長を続けてきたこと,です.資産価格を再び上昇させるなら,将来の激しい暴落を準備することになります.

この問題は世界的な影響を含意しています.多くの論説が示してきたように,世界経済はアメリカの輸入によって刺激されてきました.それ(経常収支不均衡)はアメリカへの資本流入が続くことで維持されているのです.変動レート制や国際資本移動を信頼する新しい経済学は,(成長の限界としての)経常収支赤字を無視するようになりました.こうして,追加的に,資産価格がさらに上昇してきたわけです.

また,新しい経済学は金融政策を失業や賃金から切り離し,物価,さらには(事実上は)資産価格に注目するよう求めました.連銀は投資家を救済することに奔走した(そしてバブルを再生した)のです.その経済ブームが終わるとき,資産価格の暴落や資本流出に直面して,新しい経済学・経済政策は何を主張するのか?

アメリカ連銀や財務省はサブプライム危機を準備し,サブプライム・ブームを煽ってきただけではないか? 彼らの発想や政策からは,不況に向かう経済を再生する見通しは得られないのです.その見通しとは何か? 「支出と雇用を奪う貿易赤字をなくすこと,賃金と生産性との結びつきを回復することである.そうやって,借金や資産価格の膨張ではなく,賃金所得が,再び,需要増加のエンジンになるのだ.」

NYT February 9, 2008

Japan’s Crisis of ’90s Offers Harsh Lessons for U.S.

By STEVE LOHR

WP Saturday, February 9, 2008

Easy Stimulus

(コメント) STEVE LOHRは,アメリカ経済が「日本病」にかかることを心配します.資産価格が暴落し,銀行は不良資産を抱えて融資を抑止しました.消費や投資は減り,賃金も抑えられて,長期の不況と物価下落が,ますます不良資産を処理できなくしたのです.金融政策も金利がゼロに近づき,効果を失いました.

失われた10年と言われるように,停滞が続きました.勤勉で,良い製品を輸出し,経済成長のモデルとして賞賛され,恐れられた,日本経済が崩壊していったのです.

アメリカも日本と同じような心理的な転換の危険が強い,というClyde V. Prestowitzや,バーナンキは日本の例をよく理解しているから,政策の失敗を犯さないだろうという意見,また,アメリカの政策は素早い,というCharles Yuji Horioka,しかし,報告されている銀行の不良債権額はすぐに10倍に増加する,というNouriel Roubiniもあります.

しかし,日本の政策担当者たちは住宅価格や株価,主要銀行の保護,特に円高に過剰に反応し,介入し続けたせいで,暴落と不況を長引かせた,とアメリカ人は考えているようです.また政策の失敗として,消費税を3%から5%に引き上げたことを指摘したAdam S. Posenの意見が紹介されています.

日本の系列企業や政府との癒着が産業の整理と回復を遅らせた,というEdward J. Lincolnの意見もあれば,中国の台頭と関わって,世界市場における国際競争力や産業のシフトが重要な役割を果たした,とKenneth S. Rogoffは考えています.こうした様々な指摘がある中で,アメリカがどの程度,「日本病」を免れるかは,今後の推移を見守るしか答えはないようです.

財政刺激策が「超党派」の支持を受けて迅速に実現した,と政府や議会を称賛するのは時期尚早だ,とWPの論説が批判しています.

NYT February 13, 2008

Totally Spent

By ROBERT B. REICH

(コメント) 景気刺激策として,ブッシュ政権とは対照的に,中産階級と低所得者層に対する恒久的な減税を主張しています.

既存の納税額を基に富裕層に多くの減税をしても,既存の債務を基に企業に多くの利子を免除しても,それは現状で景気を刺激しないでしょう.彼らが消費や投資に向かわないからです.なぜなら,彼らは今まで散々,政策的に支出を肥大化させて,持続不可能な水準に引き上げられた末に,それが市場で拒まれたことを知っているからです.

女性は労働市場に参加し,労働者は時間当たり賃金を抑えられて長時間働きましたが,この方法も限界です.

労働者の家庭により多くの可処分所得を残すこと,労働組合を育て,企業の労働組合つぶしに厳罰を科すこと,こうしてより平等な分配関係が回復することで,景気も持続的に回復するだろう,と.


NYT February 8, 2008

Veiled Democracy?

By NOAH FELDMAN

FT February 8 2008

Muddled response to multiculturalism

(コメント) トルコの民主主義や,イギリスにおけるシャリア(イスラムの宗教法)に関する論争は,宗教と政治の関係を考える材料です.トルコがEUに加盟するとき,またアメリカでもイスラム教徒が活躍する(もしくは弾圧される)とき,繰り返し問題になるでしょう.


WP Friday, February 8, 2008

Creating a Path To Peace in Kenya

By Wangari Maathai

分裂か,あるいは統合か,ケニアは重要な分岐点にある.昨年1227日の大統領選挙後,Mwai Kibaki Raila Odingaの双方が勝利を宣言したが,交渉に入った.アナン元国連事務総長の仲裁で,双方が和平に合意した.「真実と和解委員会」が要請され,今回の暴力事件に関する責任を明らかにする.アフリカ連合はケニア危機を重視し,EU,アメリカ議会が選挙違反に関する聴取を始める.

私の国に打開策と平和が見出されることを,注意深く,楽観している.しかし,暴力の背後にある原因を明らかにし,過去の政治指導者たちのようにそれを広めないようにしなければならない.

最近の6週間,ケニアは内戦状態であった.残何なことに,戦闘は部族に罪を着せた.ケニア人はこうした「部族衝突」が政治家たちによって,特に総選挙中に刺激されたことを知っている.1992年の選挙の前後,短期間,the Rift Valleyでコミュニティーが暴力によって破壊された.数100人か,多分,それ以上が殺され,数千人が土地を負われた.その多くはまだ帰宅できていない.

たとえ今回の危機を解決するためだけにも,われわれはこの種の衝突が再発する理由を知る必要がある.それによってはじめて,傷をいやし,人々が希望を持って将来に目を向けるのだ.一つの主要な引き金は,ケニアにおける天然資源,特に土地,の不平等な分配である.植民地政府は入植者のために,強制的に,大量のケニア人を移住させた.独立によって,土地の持ち主は変わったが,所有と分配の問題は続いている.ケニアでは非常に競争的な政治情勢があり,土地問題が論争になる.

市民たちは,投票することで土地を与えるという候補者に,簡単に説得されてしまう.もし同じケニア人を立ち退かせることが唯一の土地を得る方法であれば,隣人たちが犠牲になる.そのような犯罪が罰せられないだろうと知っているから,人々は攻撃に向かう.彼らは周到に,犠牲者たちを悪魔だと主張し,彼らが帰ってこないように心理的な傷を負わせた.偏見やステレオタイプは部族ごとに異なるが,それにも長い歴史があり,怨嗟や憎悪を呼び起こした.

近代のアフリカ国家は,本質的に,部族の生まれた土地,もしくは「ミクロ部族」が緩やかに集められたものである.ケニアには42部族がある.最大のもので数100万人.最小のものは数1,000人である.政治権力はその数によって決まる.ケニアや,アフリカのどこかで,部族衝突があると,それはアフリカの国民国家が表面的なものであることを示す.ほとんどのアフリカ国家は,撤退したヨーロッパの植民地権力が,ミクロ部族を集めたり分割したりして創った.その結果,国家は名前,国旗,国家でしかなく,西側の教育を受けた一握りのエリートたちが継承した.彼らの多くは植民地政府に同情的であった.

ほとんどのアフリカ人には新しい国民国家が理解できないし,その忠誠や愛着はミクロ部族のナショナリティーでしかない.支配的エリートたちは,と言えば,彼らにとって関係のない上層の人びとだ.彼らは外国語を話し,外国の文化に染まり,独立前に抱いた希望に挫折し,あるいは,それを汚していた.

今日でも,ふつうのアフリカ人にとって,ミクロ・ナショナリティーへの脅威,あるいは彼らが指導者と認める人々への脅威は,国家への脅威と共振する.部族衝突が貧困や汚職によって激化し,国家の資源を平等に分配していないという認識が衝突をもたらす.彼らの部族から大統領を出すことで,コミュニティーは生き延びることができる.

もっとまとまりのある国民国家を創るために,支配エリートがもっと多くの時間とエネルギーと資源をかけて,普遍的な自由,安全,資源の公平な分配を実現しなければならない.そしてミクロ・ナショナリティーを破壊するのでは決してなく,アフリカ人はその異なった文化や言語,価値を祝福するべきだ.最も優れたミクロ・ナショナリティーを取り込むことで,それは全体を豊かにする.

考えてみてほしい.ミクロ・ナショナリティーが多様性の中で統一の利益を意味し始めるだろう.誰も部族衝突を隣人への攻撃にすることはない.指導者たちはその能力と約束によって選ばれ,どの部族から多くの投票を得るかによって決まらない.自分たちのコミュニティーを代表して強硬な姿勢を示すことで無条件に支持されることはない.こうしてアフリカ人は,矮小な政治を抜け出し,その国だけでなく,アフリカ同盟の夢,統一アフリカを歓迎するのである.

それには指導力が必要だ.エリートだけでなく,われわれのすべてに.これこそが,唯一,ケニアの危機を脱し,持続する平和に至る道である.

BG February 10, 2008

A chance for change in Burma

By John Virgoe

(コメント) 僧侶たちが行進したビルマについて,その改革を促す勢力,国際的なメカニズム,それを阻む要因とは,何でしょうか?


FT February 8 2008

United G7 line on credit crisis sought

By Gillian Tett in London

FT February 8 2008

The G7 and fiscal intervention

(コメント) 各国は独自に問題処理や金融改革に取り組むより,統一した基準で協力しながら進める方がよい,と認めています.取引は国境を超えて錯綜しており,金融機関や取引額は非常に巨大化しているからです.しかし,いかなる合意も各国な自国やその銀行・企業への影響を考慮します.FSF(the Financial Stability Forum)のような国際機関が強化される,という方向に進むでしょうか?


FT February 8 2008

Australia revels in fizzing economy

By Peter Smith

(コメント) アジア,特に中国経済の離陸と拡大はオーストラリアに歴史的な利益をもたらしています.17年間連続の成長は,供給体制のボトルネックを生じています.ラニーニャ現象による干ばつと農産物の輸出減が問題になっています.インドなど,アジア系の非合法移民や東欧,アフリカからの労働者を引き寄せます.インフレ抑制も難しくなるでしょう.地域格差や労働力・熟練の不足,政治問題も生じそうです.


FT February 8 2008

Sumo match-fixing

Feb. 11 (Bloomberg)

Drama Over Next BOJ Governor Is a Waste of Time

William Pesek

FT February 14 2008

Japan’s GDP surprise

(コメント) 相撲には八百長の噂が絶えません.しかし,検察が捜査に入るという話も聞きません.今回の相撲部屋における傷害致死事件も,それ以外の噂を一掃するきっかけになるとは思えません.FTの記事は,相撲が最終日に勝ち星を調整する八百長である可能性を強く示唆する研究を紹介しています.

その報酬のシステムは,不正に向かう銀行のトレーダーたちと同じだ,と.

日銀総裁の指名には八百長はなくても政治介入があり,GDPの統計が大幅な成長を示しても,まったく信用できない,という雰囲気です.


YaleGlobal, 8 February 2008

Natural Resources, Often a Curse, Can Also Serve the Public

Susan Ariel Aaronson

FT February 14 2008

Norway’s sovereign fund sets an ethical example

By Kristin Halvorsen

(コメント) 石油の富が政府を腐敗させ,資源の豊富な土地ほど戦争を招き,国民を貧しくさせる例は多くあります.「石油の呪い」と呼ばれています.

2003年にイギリス政府が提案した新しい仕組み,the Extractive Industry Transparency Initiative (EITI)は画期的です.なぜなら,政府は自発的に資源の収入を国際委員会に監視させるからです.政府も石油企業も収賄や贈賄の誘惑を免れ,国民の利益を図ることに専念できます.ガバナンスを改善する国際的な制度の設計に,たとえわずかでも成功したように思います.

そんなことを,わざわざ認める政府なんてないだろう,と思うのは間違いです.20079月までに26カ国がこのシステムの参加している,ということです.ただし,多くは名目的な参加のようですが.他方,世界の主要な資源採取企業,38社も参加しています.

論説は,産油国の政府と国民,多国籍企業と消費者が,相互の利益を一致させる枠組みを工夫することが成功のカギである,と指摘します.

Kristin Halvorsenはノルウェーの財務大臣です.この論説は,政府系投資ファンドとして,透明で,公的な目的に従い運用されるファンドの例を示して,国際社会にモデルを示し,金融市場にも理解を求めています.


BG February 9, 2008

Growth vs. order? Try both

(コメント) シンガポールがマレーシアから独立したのは1965年だ,ということに驚きます.人口420万人の,高層ビルが林立する都市国家は,成長することを使命としたLee Hsien Loongの政府によって管理されています.裕福で,勤勉で,組織的な,シンガポールは都市計画家たちの楽園です.

85%の住民が政府の支援した公共住宅に住んでいることは驚異です.アメリカ人から見れば少し小さくても,市場価格の3分の1,政府による融資制度や強制貯蓄が整備されています.すべての資源は外から輸入されるのであって,特に水を外部に依存しています.政府は2002年に水の再利用工場"NEWater"を開設しました.飲むことさえできるようです.労働者たちを運ぶ公共輸送システムもあります.

シンガポールは「美しい街」だ,と皮肉で言われます.チューインガムを履いたり,捨てたり,噛んでいると罰金です.ガムもプレイボーイも売っていません.同性愛は非合法だし,売春婦もほとんどいない.しかし,観光ビジネスのために,警察国家の印象は緩和されています.また,新しい貿易を繁栄させるためにも,権威主義的国家にばかり頼らず,美術館や学校に投資し,教育を重視しています.

自由と権威とのバランスは非常に難しい,と政府は認めます.シンガポールはその双方を手放さず,秩序と繁栄を模索します.


NYT February 9, 2008

The Case of the Poisoned Pet Food


FT February 10 2008

A repeat of the Great Depression is unlikely

By Wolfgang Munchau

FT February 11 2008

Lessons of the credit crunch

By Chris Giles and Gillian Tett

(コメント) 世界がデフレに落ち込む危険はあるか? とWolfgang Munchauは問います.アメリカ連銀が緊急切り下げを行ったにも関わらず,イングランド銀行もECBもそれに同調しませんでした.それで良いのでしょうか?

デフレは購入と消費を先延ばしにして,債務の返済を重くし,銀行の不良債権を増やします.それは容易に実物経済の悪循環をもたらすのです.しかし,アメリカは1990年代の日本ではないし,1930年代のアメリカにもどることもない,と考えます.日本の停滞は生産性の上昇が落ちたことによるものだが,アメリカの生産性上昇ははるかに高い水準にある,と指摘します.

アメリカの支配は資本主義への信頼に基づいており,将来への不安が強まらなければ,日本のように急速なデフレにはならない,と.しかし,インフレが高まり,将来の金融危機にリスクが残るという意味で,債券価格が下落するだろう,とWolfgang Munchauは考えます.

金融市場を監督する政治家や官僚がG7で談合し,the Financial Stability Forumは警戒を強めているが,誰にも市場の安定化はアレンジできません.金融政策で短期金利を固定することにも失敗し,流動性を供給して傷ついた金融機関を救済することにも失敗し,民間部門は公的な支援を敬遠しています.中央銀行はモラル・ハザードを回避しようと苦心します.

アメリカのイギリスもヨーロッパも,中央銀行はこうした問題を解決できると考えていましたが,それは期待外れでした.ノーザン・ロックの救済を強いられて莫大な損失を穴埋めし続けるイングランド銀行に限らず,アメリカ連銀も,ECBも,自分たちが描いた市場の回復シナリオは挫折してしまったのです.むしろ,比較的静穏な日本の資産市場に資本家が逃げ込むことで,予想外に円高が起きたほどです.金融危機の先達として評価された,とさえFTは指摘しています.

各国の金融市場をよく知っていなければ金融機関も中央銀行も正しい判断が出来ない.その意味では金融市場や規制を一致させる努力が必要です.また,資産の期間構造にも危機に対する正しい判断が求められるでしょう.誰にもまだ正しいバランスが分らないのです.


NYT February 10, 2008

When Self-Interest Isn’t Everything

By ROBERT H. FRANK

(コメント) もし人々が完全に経済的な利益だけを合理的に追求するとしたら,誰も政治家に寄付などしないし,投票にも行かないだろう,とROBERT H. FRANKは考えます.経済学は「フリー・ライダー問題」を重視しますが,その解決策にも経済的な人間が仮定されています.むしろ,その仮定が必ずしも正しくないから,人々は政治にもボランティアで参加するし,寄付金を喜んで出すのです.そこで,A.O.ハーシュマンに従って,人々の関心が経済的な利益から公的な関与に転換する局面やメカニズムを私たちはもっと重視しなければなりません.

オバマが大統領候補の指名争いで活躍する様子を説明するには,利己心だけによる経済学を忘れた方がよいのです.


The Observer, Sunday February 10 2008

We'll use our schools to break down class barriers

Gordon Brown

FT February 10 2008

Hard work ahead to promote apprenticeships

By Richard Layard and Iain Vallance

(コメント) 世界の軍備拡大競争を心配した時代から,世界の産業競争を心配する時代に変わった,とイギリスのゴードン・ブラウン首相は書きます.我々に必要なのは軍需産業や軍隊ではなく,優れた教育システムなのです.学校の改革が,グローバリゼーションの最も重要な政策になっています.

かつては,戦争や帝国主義が国内の階級対立激化を回避する社会的な安全弁であったかもしれません.今では,優れた学校と社会保障制度が,階級間の分断や対立を克服する,そして移民や輸入品との競争に積極的に立ち向かう社会的な手段なのです.

Richard Layard and Iain Vallanceは,イギリスの「徒弟制」や「職業訓練制度」,「the on-the-job training」の公的補助,について述べています.まずます多くの若者が異なった教育システムによって職場と生活を改善する必要を示している,というのは日本でも見習う点ではないでしょうか? もちろん,すでに行われていることかもしれませんが,視点が重要です.


The Guardian, February 10, 2008

The poverty of nations

Jeremy Seabrook

YaleGlobal, 13 February 2008

Developing Countries Worse Off Than Once Thought – Part II

Devesh Kapur


WP Sunday, February 10, 2008

Promises They Can't Keep

By Jim Hoagland

NYT February 11, 2008

Hate Springs Eternal

By PAUL KRUGMAN

WP Monday, February 11, 2008

A Malaise Election

By Sebastian Mallaby

LAT February 12, 2008

Obama's rhetoric, American realities

Jonah Goldberg

Feb. 13 (Bloomberg)

Clinton, McCain, Obama Needn't Fear Asia's Rise

William Pesek

(コメント) 民主党の大統領候補,ヒラリー・クリントンもオバマも,アメリカ軍のイラクからの撤退を主張しています.しかしJim Hoaglandは,それが守れない約束であり,大統領選挙を誤らせる,と警告します.

PAUL KRUGMAN は指摘します.“Nixonland,” ・・・“Clinton rules” ・・・beyond the Clintons, あるいは,オバマは隠れイスラム教徒である,という中傷を止めるよう求めたユダヤ教指導者の公開書簡.対立候補でも互いにもっと敬意を示し,選挙運動全体を支持しなければなりません.

アメリカはKennedy momentに直面する,とSebastian Mallabyは述べています.ケネディー家ではなく,歴史家のポール・ケネディーですが.帝国の過剰拡大とその財政負担を問題にした大著がレーガンの政策や金融危機の責任論,ビル・クリントンの選挙運動に影響を及ぼしました.「冷戦は終わった.勝利したのは(アメリカではなく)ドイツと日本だ.」

アメリカ大統領選挙に際して,再び金融危機が広まり,新しい冷戦や中国の台頭,政府系投資ファンドのウォール街進出が懸念されています.アメリカの国益とは何か? アメリカの国際的な関与は何を意味するのか? 利己的な国からなる世界で,誰が秩序を築くのか? それこそがマッケイン陣営の核心です.

アメリカの結束を実現し,アメリカのアジアとの連携を実現できるのは誰か?

William Pesek は彼ら3名にKishore Mahbubaniの新著“The New Asian Hemisphere: The Irresistible Shift of Global Power to the East”を読むように求めます.「西側の支配する世界史は終わった.」 しかし,西側は危険ではなく機会を見るべきだ,と.

WP Wednesday, February 13, 2008

What We Need Next in Iraq

By Condoleezza Rice and Robert Gates


NYT February 11, 2008

Nafta Is a Sweet Deal, So Why Are They So Sour?

By EDUARDO PORTER

(コメント) NAFTAについてでさえ,アメリカ人はまだその利益を確信できません.


Edward Lucas Putin's playground The Guardian, Monday February 11 2008

Martin Wolf Why Putin’s rule threatens both Russia and the west FT February 12 2008

The afterlife of Putinism BG February 13, 2008

Cathy Young Freedom and fear: a Russian paradox BG February 13, 2008

Putin Strengthens His Legacy NYT February 13, 2008

Kremlin celebrates Gazprom’s power FT February 12 2008

(コメント) プーチンの築いたロシアの政治体制は,その比較的安定した状態がいつまで続くのか? エネルギーと新興財閥による経済的繁栄を持続することに成功するか?

Edward Lucas「資本主義は倫理を欠き,不道徳になるものである.それを我慢できるものにしているのは,抑制と矯正である.有権者,消費者,株主,公的機関,弁護士,立法府,ジャーナリスト,圧力団体が,無慈悲で,限定された私的な利益の追求に対抗する.それは西側で完全に機能しているが,プーチンのロシアでは機能しない.そこでは政治的・経済的な権力が完全に支配する.」

Martin Wolfの紹介は冴えています.ムッソリーニと同じように,プーチンは称賛できるでしょう.「少なくとも彼は鉄道を時刻表通りに走らせた.」 経済を復興し,国家機構を固め,世界におけるロシアの地位を高めたのです.

しかし,旧ソ連圏の諸国と比べて,ロシアの成果は劣っています.通貨の切り下げも,市場改革も,エネルギー市場の活況も,プーチンがもたらしたわけではありません.プーチンがやったことは,改革を逆転し,市場における国家の役割を再強化したことです.しかも,プーチンが描く「強い国家」とは,法律にも,自由な選挙にも,制約されないものでした.そして近隣諸国の鋭い脅威となり,世界中の「無法国家」や独裁者と友好関係を結んだのです.

1991-92年,西側諸国はロシアの債務不履行を心配するあまり,その自由化や民主的な移行を放棄したのです.プーチンのロシアは,その危険な失敗の見本である,と.

Wolfが考えるように,西側の指導者たちはロシアへの支持を変え,ロシアも民衆が支持する民主的な政治を助け,ロシアが見氏側の価値観を共有し,NATOに参加することも支持するかもしれません.新しい冷戦を恐れて軍備拡大に焦るよりも.


Asia Times Online, Feb 12, 2008

China threat. What threat?

By Henry Rosemont (from Foreign Policy in Focus

(コメント) 中国の防衛予算は年率二桁の増加を続けている,と日米の防衛関係者や政治家は強調します.それに対抗して日本も軍備拡張を始めるべきでしょうか?

Henry Rosemontは,中国の軍事力を分析し,アメリカよりもはるかに劣っているし,攻撃的でもない,と結論します.アメリカが中国を恐れる理由はなく,中国がアメリカを恐れる十分な理由があるのです.だからアメリカ政府は中国に平和的な協力関係を呼びかけ,アメリカが主導権を取って軍備の抑制や経済関係の充実に努めるべきなのです.

中国が東南アジア諸国に対してFTAを呼びかけるのも,日本や韓国との関係,インドとの関係を悪化させたくないと考えるのも,国民生活の改善を政治基盤とする現政権にとっては決定的な方針です.アメリカの方が,中国にとって脅威を感じさせるような政策を改めることが重要です.

FT February 13 2008

A deepening chill in US-China ties

Asia Times Online, Feb 14, 2008

Asian arms race gathers speed

By John Feffer

The Guardian, February 14, 2008

Why blame China?

Jonathan Steele

The Japan Times: Thursday, Feb. 14, 2008

Crises cast light on China's problems

By FRANK CHING

(コメント) スピルバーグが中国の北京オリンピックに関する芸術顧問を辞めたことで,米中関係の悪化が議論されています.人権問題でも,貿易や技術の分野でも,米中関係は悪化しています.John Fefferは,アジアにおける軍備拡大競争を心配します.

他方,Jonathan Steeleは,中国の協力がスーダンの人権問題解決に向けた国連やアフリカ同盟の成功のカギである,と考えます.アジアの軍備拡大競争も,貿易・技術問題も,中国を非難するより,協力する仕組みを必要としているのです.

たとえ吹雪に対しても,共産党は正当性を奪われないために必死で戦います.


Foreign Policy, 14 February 2008

Europe’s Philosophy of Failure

Stefan Theil

(コメント) フランスやドイツの教育システム・教育内容にある歪みを厳しく批判した論説です.資本主義を不道徳だと熱心に教えるような学校が,子どもたちの将来の経済活動を歪めることを心配します.経営者は日教組を心配し,中国や韓国は日本の歴史教科書を心配します.

しかし,どの国も自分たちの歴史や価値観を維持しようとしますし,自分たちの社会制度を市場に最も適していると主張するのではないでしょうか? 教育の内容を精査する必要があるのはその通りでしょう.しかし,テロリストを育てるパキスタンのイスラム教学校と比較するのは間違いだ,と思います.

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The Economist February 2nd 2008

The death of Suharto: Epitaph on a crook and a tyrant

Financial regulation: Repairs begin at home

Failed banks: Avoiding the next Northern Rock

Vietnam’s economy: Grappling with success

Lexington: George Bush’s last grandstand

The internet in China: Alternative reality

Cocoa farming: Fair enough?

(コメント) 国を安定させて,経済的な繁栄をもたらしたのであれば,その独裁や弾圧は許されるのではないか? 良くも悪くも,インドネシアの歴史を支えた真の権力者であった.・・・などと称賛する声に,冒頭記事は強く反対しています.

国際金融市場の不治の病をなくすには,根本的な制度改革しかない,というのは10年前にも聞いたけれど,実際的な成果は乏しい.むしろ金融市場の改革は各国の国内から行うべきだ,と主張します.たとえば,新興市場なら,為替レートの変動をより大きく認め,短期の資本流入を抑制し,外貨準備を増やします.また,ノーザン・ロック銀行の救済で七転八倒したイングランド銀行とイギリス大蔵省は,同じような金融破たんを起こさないような改革に必死で取り組みます.

ジョージ・ブッシュ大統領の年頭教書がたどってきた変遷も面白いけれど,中国で2億人を超えて,なお,急速に普及するインターネットの新しい利用形態や社会現象,ココアやコーヒーを栽培する農民が流出してしまうことを防ぐために,裕福な国の世界企業が「社会起業家」となって彼らの生活改善に取り組むようになった,と言う話も面白いです.