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IPEの風 2/18/08
東京マラソンのニュースを観て驚きました.3万人余りの参加者がいて,98%近くが完走した,ということに驚いたのです.42キロ余りを走り抜く体力と,日頃の鍛錬,精神力を持った人が,こんなに集まるものか,と思いました.・・・豪華ホテルで目覚めても,ビジネスホテルや友人のアパートで目覚めても,走るときは独りです.
かつて,マルクス主義者なんてアルコール中毒がアルコーリストと呼ばれるのと同じマルクス中毒なんだ,と言う人がいました.アラビア語が話せる人はアラビスト,ルービック・キューブを短時間に完成できる人はルービック・キュービスト,・・・マラソンを完走する人ならマラソニストでしょう.いずれも,ある種の高揚した精神を感じます.
都民銀行と同じく,石原都知事の政治宣伝ではないのか,・・・などと疑わずに,さまざまな参加者や協力するボランティアの姿を観れば,こんなお祭がある都市はすばらしいな,と思いました.新しい都市には新しい都市文化が育ち,世界都市を担う政治家たちを鍛え,そこに住む人々の精神を高揚させて,新しい社会的な協調・協力を呼びかけます.
仮設トイレを用意して,バナナを切って配り,一人ずつ荷物を預かって,参加者の記録時間を瞬時に告げるためのICチップを渡し,・・・最後に荷物を手際よく返す.沿道には応援の家族や友人が出て声援し,あるいは並走し,記念写真を撮って,10キロ,20キロ,・・・40キロと,その声援に応えようと彼らは走り続けたのでしょう.
沿道のお店は大繁盛.これだったら商店街やホテル・旅館はマラソン大会大歓迎でしょう.むしろ,もっと地方でも(例えば予選会を)開催してほしい,と思いました.しかし,不便を感じる人も多いはずですから,大会の運営は試行錯誤と改善策との繰り返しのようです.それを実行する人々がいることに感心します.交通規制やバス,地下鉄の運行から,会場整理やテロ対策まで.
日頃,自動車が占拠している幹線道路を,自分たちの足で走りぬくのは爽快だろう,ボランティアの参加もお祭りのようで楽しい,と司会者が述べていました.東京という,多分,孤独で雑多な人々からなる異国のような街が,突然,人情味のある現代の下町に感じられます.若者たちも気付くべきです.インターネットで暴力やセックスの情報を収集し,パソコンの技術変化に取り残された年長者を軽蔑するより,また,ゲームの対戦に没頭したり,子どもを殺すと脅迫して,学校で銃を乱射したりするより,・・・東京の街でマラソンを完走し,自分の足で駆け抜けたこの世界を,皆で取り戻す方がはるかに楽しい,ということを.
トム・マクナブの小説,『遥かなるセントラルパーク』(文春文庫)を読んだとき,とても楽しく,満足したことを思い出します.それ以来,機会あるごとに,私はアジア(そして諸大陸)の長距離ランナー大会や自転車レースなどをしてほしいと願い,ここにも何度か書きました.東京大会も,北京大会も,協力して開催してほしいです.アジア各地のマラソン大会を支援し,国際チームで主要都市を回ってはどうでしょうか? あるいは,東京から大阪までとか,知床から桜島まで,完走する自転車レースを企画してはどうでしょうか? きっと地方の苦しみを知り,その良さや問題を発見するでしょう.
私はマラソンを完走できません.研究に見通しが立たず,さっぱり気力を失ったら,机の端にある時代小説を読みます.そして,次の小説を古本屋さんで買うために,片道30分から40分かけて,私は走るのです.せいぜい片道3キロ程度でしょうか? だから42キロを完走する人たち(マラソニストたち)を,無条件で尊敬したくなります.
もしも,彼らのすばらしい意志と体力,輝く時間を集めて,社会を改善する仕事に結びつけることができたら,日本はもっと良い国になるでしょう.それはたった1日の大衆参加,直接行動主義です.しかし,来年もそんな時間を過ごすために,彼らは友人を誘って,毎日,走るのでしょう.
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