IPEの果樹園2008

今週のReview

2/4-2/9

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

福田首相とブラウン首相, 金融ビジネスの発狂1, 世界不況?  資本主義の転換1, 財政刺激策と金融緩和

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT January 24 2008

How we can take firm action to cut carbon

By Yasuo Fukuda

FT January 24 2008

Ways to fix the world’s financial system

By Gordon Brown

(コメント) 地球温暖化の防止と,アフリカへの経済援助を,福田首相はダヴォスの世界経済会議に向けた挨拶で強調しています.京都議定書とアフリカ援助のための金融メカニズム,というのが主たる解決策のようですが,どちらも説得力は今一つです.

アルゼンチンで,日本政府の方針はアフリカの援助に向いている,という,居心地の悪いインタビューをしたことがあります.日本政府は,ダヴォスへ行く前に,それを国民にどの程度説得しているのでしょうか? 国際金融危機や日本の株価下落によって関心が薄れてはならない,という主張は,何か,火星の地図を見るような気分です.

福田氏はダヴォスを“a forum for the planet’s most innovative ideas”である,と称えます.本当にそうであると思うなら,まず自分たちが,自国の改革として示すべきではないでしょうか?

イギリスのブラウン首相は,この10年間で最大の国際金融市場における不安に対して,ダヴォスの会合が改革の指針を求めている,と主張します.今こそ,国際金融システムの根本問題を改革しようではないか,と.経済運営の改善,金融規制,インフレ抑制,こうしたことによって将来の危機を予防するのです.

融資のリスクが複雑なデリバティブによって分離され,それらの仕組みを全く理解できないような個人投資家たちに押し付けられている.こうした基礎に立つ金融制度は間違っている,というわけです.

リスクを再評価しなければなりません.それが過小評価されたのは情報の透明性が不十分だったからだ,と考えます.また国際機関を強化し,国際政策協調を進めることです.IMF改革はその中心であり,中央銀行と同じ独立性を持って世界経済を監視し,情報開示や教育を行い,市場の透明性を高めます.財政の健全化や保護主義の抑制も重要です.

しかし,結びの文句が気になりました.

I will redouble my efforts with the US, the European Union, China, India, South Africa and Brazil to make possible a fair World Trade Organisation settlement on trade. Our prosperity, the credibility of the multilateral system and a chance for millions of poor people to break out of poverty are at stake.” イギリスの首相は,国際機関の改革を進める仲間として,日本を思いつかないのです.日本は改革の指導者ではなく,いつだって改革の重荷だったから!?

FT January 27 2008

Japanese inflation

Jan. 28 (Bloomberg)

Japan's Economy Needs a Sovereign Wealth Fund

William Pesek

FT January 28 2008

Five ways to reform Asia’s regional bank

By Paul Speltz and Linda Tsao Yang

FT January 30 2008

Japanese earnings

The Japan Times: Thursday, Jan. 31, 2008

Japan-China relations: Building a creative partnership requires creative approaches

By FAN LI and QINGHONG WANG

(コメント) 実際,世界の主要国がインフレを心配しているのに,日本はまだデフレ解消を議論しています.欧米の金融市場が政府系投資ファンドSWFを恐れているのに,日本はむしろSWFを創ろう,と相談しています.SWFは,未成熟な資本主義が示す病状でしかないのに,日本の政治家たちには魔法の杖に見えるわけです.

Paul Speltz and Linda Tsao Yangは,アジア開発銀行の改革を唱えています.私は,昨年の国際経済学会に併設されたシンポジウムで聞いた,黒田東彦氏(現ADB総裁)の取りとめない,何か朦朧とした,アジア通貨危機10周年の記念講演を思い出しました.(IPEの風 10/8/2007

この論説は,アメリカに視点から改革論を唱えています.その内容は,逆に,アメリカのスタッフがADBの人事や運営方法に強い不満を持っていることを示しています.幹部たちは名誉職に過ぎず,民間部門の優れたスタッフには大きく劣っている.融資するプロジェクトには腐敗が濃厚で,重要な民間部門への対応が不十分だ.意思決定は不透明で,効率的でもない.・・・

要するに,日本の政治家や官僚が閑職で名誉と資産を得るためのポストとして利用している,と言いたいのかもしれません.

サブプライム・ローン問題で落ち込むアメリカ市場への輸出や,中国企業との資源争奪戦,海外生産拠点のコスト競争,など,日本は韓国と同じように,独自の経済成長力を奪われてしまうのか? とFTは問います.

FAN LI and QINGHONG WANGは,もし福田首相が本当に日中関係を「創造的な関係」として,政府間の,経済だけに関心を向けるものではなく,もっと市民社会に根差したものに変えようと思うなら,日本のNGOsが中国の必要とする分野で協力する方がよい,と提案しています.すなわち,環境問題や,人権,中国のNGOsに知識や情報,そして財政的な支援を与えることです.


FT January 24 2008

Future shocks

FT January 25 2008

SocGen postmortem

FT January 25 2008

The start of the great unwinding

Feb. 1 (Bloomberg)

Kerviel Is More Angel Than Bogeyman for Asia

William Pesek

(コメント) Société GénéraleJérôme Kervielが一人で国際金融市場を動揺させたことには,多くの歴史的な先例があります.ナポレオンの時代に誕生し,二つの世界戦争を生き抜いて,フランス産業への投資を先導してきた銀行も,ウォール街の金融革新に焦り,コンピューターの利用に圧倒されて,いくつかのパスワードに運命をもてあそばれるわけです.

あるいは,“monoline”です.国際金融市場のネジや歯車が一つずつ壊れていく感覚です.その起源は,2001-2002年のITバブル崩壊を金融緩和で乗り切ったグリーンスパンの手法にあった,とFTも考えています.アジア通貨危機や日本のバブル崩壊から学んだことは,迅速に,勝つ,思い切って金融緩和する,というだけだったのか?

あるいは,その起源は,あまりにも複雑化した国際金融市場の仕組みや手法にあるのでしょうか? そして金融業者は,ババ抜きのように,劣悪なローンを素人の投資家に押し付けた? 複雑な仕組みが誰にとっても相手の信用を受け入れられなくしました.それゆえ,こうした融資契約とデリバティブを膨張させた,金融規制の失敗です.

The Observer Sunday January 27, 2008

This reckless greed of the few harms the future of the many

Will Hutton

WP Monday, January 28, 2008

Good and Bad Capitalists

By Sebastian Mallaby

LAT January 31, 2008

A gentler capitalism

By David Callahan

(コメント) Will Huttonのアングロ・サクソン型資本主義に対する批判は痛烈です.信用を供与するビジネスは,資本主義にとってだけでなく,すべての社会にとって重要です.アングロ・サクソン型資本主義は,これを自由市場に委ねました.

しかし,ノーザンロックでもそうですが,金融ビジネスは社会的な利益を私物化し,その損失を中央銀行や政府が救済するしかない,その意味で市場原理主義とは矛盾した似非ビジネスなのです.彼らの報酬を正当化するような社会的利益は,今や,まったくありません.しかも,その極端な報酬システムが彼らを短期的な投機行為や,一般投資家たちを犠牲にする冷酷な仕組みに向かわせるのです.

バフェットのような,生産的投資を探して育てる投資活動は,全く異なる種類の人々が担います.こうした二つの金融ビジネスについて,社会が正しい報酬や規制を提供しなければなりません.金融の規制緩和は失敗だった,とHuttonは考えます.

これは,国際金融システムについて,ブラウン首相やキング総裁が強調するような「透明性」の問題ではありません.社会を害するような報酬システムや金権体質の富豪たちを取り締まるべきだ,というわけです.

Sebastian Mallabyは,「資本主義の敵は資本家だ」というRobert J. Samuelsonの主張に同意します.ただし,資本化にも二つある,と.大統領選挙の年に,候補者たちがこぞってウォール街を批判しないように,資本家にも区別をしておくべきだ,と考えます.すなわち,安定化に向かう資本家と,不安定化を煽る資本家です.

ヘッジファンドは,サブプライム・ローンについてもリスクの管理に成功している,ということから,銀行にもヘッジファンドのような行動を求めています.

ウォルマートのCEOであるスコットJr.H. Lee Scott Jr.やマイクロソフトの会長を引退したビル・ゲイツBill Gatesが,ダヴォスで資本主義の転換を示唆しました.かつてアンドリュー・カーネギーが唱えたように,資本主義の富を貧しい者の救済,より幸運に恵まれなかった人々のために使おう,というのです.「より穏やかな資本主義a gentler form of capitalism」が求められます.

それは兆富裕層の詭弁でしょうか? 所詮,彼らは貧困を利用し,富を独占して増やすことに熱心なだけで,こうした宣伝を真に受けることは間違いでしょうか? もし彼らが社会のシステムを改革するなら,多くの機会や可能性が人々に与えられることは確かです.彼らが何をするか,観ておきたい,と思います.


Jan. 25 (Bloomberg)

Forget Stagflation. Stagdeflation Sounds Scarier

William Pesek

(コメント) Nouriel Roubini が使った``stagdeflation'' というのは聞きなれない言葉です.スタグフレーションなら分りますが,不況でデフレというのは当たり前ではないか? しかし,William Pesekが指摘する日本の状況は,株価が上昇し,経済が拡大しても続くデフレのことを指しています.これは新しい経済条件です.

数年の好景気や石油価格の上昇によっても,日本の物価はなかなか上昇しませんでした.日本だけなら,日本病ですが,もしアメリカも同じ経過をたどるとしたら,新しい呼び名が必要です.アメリカが急激に不況へ落ち込むという意見には反対しますが,世界の需要が減少して,低成長と低インフレが続くかもしれない,というのです.

アメリカは混乱の原因を取り除くより,金融緩和や刺激策で価格を引き上げることを試みています.アジアがそれに従わないとすれば,国際金融不安が次の段階に進むでしょう.George Sorosが警告したような,60年間のドルによる信用拡大が逆転し始める恐れです.

The Guardian Friday January 25, 2008

World economy: Go East

The Guardian Friday January 25, 2008

We must not ignore the wild gyrations of Asia's traders

Bill Emmott

FT January 27 2008

When a slowdown is a welcome relief

(コメント) たとえアメリカが不況になっても,アジア(中国とインド)が好況を続けるから問題ない,という世界中の期待は正しいのか? ・・・半分は正しく,半分は間違っている.

確かに,アジアの株価もウォール街の動揺を受けて下落しています.しかしアジアの活発に投資による成長は,たとえアメリカが不況になっても続くでしょう.しかし,アジアがアメリカに代って,世界経済の成長を引っ張るエンジンになるという期待は早すぎる,というわけです.

Bill Emmottは,このアジアには日本が含まれない,と断っています.日本の成長率は低く,アメリカへの輸出が減少すれば不況になるかもしれません.また,インドも経常収支赤字国であり,中国と違って資本輸入を必要としています.

特に,Emmottはアジアの成長が抱える問題として,インフレを主張します.為替レートの安定化が,欧米の金融緩和でますます超金融緩和を強いられるのであれば,極端なインフレやバブル,資本移動の危険が強まるでしょう.これこそ日本が経験した失敗なのです.

「現在の中国と最も比較するべきは1970年の日本である.その頃,日本は安価な縁を使って輸出を伸ばし,安価な資本を使って投資ブームを続け,環境破壊は大衆抗議を引き起こしていた(水俣病を覚えているだろうか? あれはまさに水銀による毒であった).そして1971年,日本はリチャード・ニクソンに強いられて円を切り上げ,1973年にはオイル・ショックでインフレに突入した.その結果どうなったか? 実際,それは日本を破滅させたのではなかった.しかし,変化は加速した.切り上げと生産コストの上昇は,経済をオートバイの時代からマイクロチップの時代に移行させたのだ.

中国は今,同じ圧力に直面している.通貨の切り上げ,インフレ,環境破壊.その経済を急激に高級市場に移行させる必要がある.1970年代に日本が示したように,それは実行可能である.しかし,簡単ではないだろう.それゆえ,アジアの株価はまさしく動揺し,今週,情緒的に反応したのだ.」

FTは,中国にとって減速はむしろ大いに歓迎される,と指摘します.中国の銀行がサブプライム・ローン問題に苦しむ可能性はないし,アメリカ市場に依存している分野は限られており,財政状態は健全で十分に刺激策を採ることもできます.

だから,中国が過熱状態を脱して,住宅や株式のバブルを抑え,資源や環境問題にも対処する余裕を見出し,アメリカ向けの輸出が減って,アメリカ議会や大統領候補たちが選挙の年に強める中国の経常黒字に対する非難を免れる状況になるでしょう.

NYT January 25, 2008

Stimulus Gone Bad

By PAUL KRUGMAN

WP Sunday, January 27, 2008

A Better Way to Deal With Downturns

By Andrew A. Samwick

FT January 27 2008

Beyond fiscal stimulus, further action is needed

By Lawrence Summers

LAT January 29, 2008

Keynesian trillions

NYT January 29, 2008

Investing in America

By BOB HERBERT

(コメント) アメリカ議会が決めた財政刺激策ですが,PAUL KRUGMANはその効果を批判します.民主党員たちはブッシュ政権の硬直的なイデオロギーに譲歩し,刺激策採択の名目に満足したようです.ブッシュ大統領の,減税以外には署名しない,という強硬な姿勢に負けたのです.それは,不況を回避するために経済学が求める理性には反するものです.

ブッシュ政権の経済諮問会議議長を務めたAndrew Samwickも,この財政刺激策が短期的に正当化できないし,長期的には有害である,と批判しています.赤字財政を拡大すれば刺激はあるでしょう.しかし,すでに間違った政策によって膨張した住宅投資や消費が崩壊する過程に投げ入れても,追加の刺激は生じないのです.

この刺激策は期待されたほどではなく,最も苦しむ者にとって不十分なものでしかない,と分かるはずです.こうしたやり方ではなく,景気循環に応じて財政を均衡化することこそ,長期的な経済の成長をもたらすのです.

Lawrence Summersは,悲観と融資の減少が悪循環をなすことを指摘して,マクロ政策以上の対策を求めます.市場(投資家たち)の信頼をどうすれば回復できるのか? 金融機関は本当の価格を市場に決めてもらわなければなりません.しかし,市場が混乱しているときには,その条件を正しく反映した買い手が見つからないのです.

日本は政府が関与しました.アメリカも同じことだ(公的介入!),と思う反面,Summersは「透明性」や「自己資本の増大(SWF!)」,「既存金融機関への資本注入」,「保険における民間(バフェット!)の新規参入」,などを指摘しています.問題ははるかに複雑であるから,LTCMのときのような政治的関与は難しい,と認めています.しかし政府が正しい方針を示すことで,市場の信頼を回復できる,という主張は(日本と違って)実行を伴うでしょうか?

ブッシュ政権の財政赤字は,むしろ,イランやアフガニスタンでの軍事介入の失敗を隠すために続けられている,と批判されるわけです.「なぜ減税策に加えて,すでに1兆ドルの軍事支出を行った政府が,景気刺激策として,今更,1500億ドルを追加するのか?」 ・・・「この3兆ドルにも及ぶ軍事支出を,ケインズは支持するだろうか?」

むしろ,政府は21世紀の世界経済における競争的な地位を維持するために,インフラ整備に投資するべきだ,という主張が当然示されています.

FT January 28 2008

Cushioning the cost of the right decision

By Adam Posen

(コメント) Adam Posenは,バーナンキの行った0.75%の緊急金利引き下げを強く支持しています.しかし同時に,そのコストを抑える努力を強調します.金利引き下げのコストとは,ひとつはインフレ加速であり,もう一つはモラル・ハザードです.モラル・ハザードは,この場合,株価が下がればバーナンキが金融緩和して助けてくれる,という思い込みです.

「日銀は1990年代後半に,そのような(金融政策が株価や政治家からの圧力に影響される)印象をもたれることを心配し過ぎて,金融緩和を避けて経済を犠牲にした.たとえ日銀がモラル・ハザードを退け,市場の信認を得たとしても,それは間違いだった.」

連銀の緊急緩和は正しかったけれど,意思決定が株価や政治に影響されると思わせてはなりません.そのためには,バーナンキが,インフレと不況のバランス,などと説くのではなく,中期の見通しを明確にして,インフレを重視する姿勢を示すべきだ,と考えます.また,モラル・ハザードを防ぐためにも,民間金融機関の損失処理や規制の改革を強調し,株価の変動を明確に無視する(2008-09年に株価の暴落が再発することも許す)べきだ,と主張しています.

WP Tuesday, January 29, 2008

The Fed In the Echo Chamber

By Robert J. Samuelson

FT January 29 2008

Bernanke’s reflation gamble may work too well

By Martin Wolf

Jan. 30 (Bloomberg)

India Resists Bernanke's Move to Calm Markets

Andy Mukherjee

NYT January 30, 2008

Bernanke Midterm Tests

By DAVID LEONHARDT

WP Thursday, January 31, 2008

It's the Housing Market Deflation

By William H. Gross

FT January 31 2008

Fed attacks in the face of uncertainty

Asia Times Online, Feb 1, 2008

Bernanke hits the joy button

By Julian Delasantellis

(コメント) 金融政策に関する「ポピュリズム」が議論されています.日銀がそうであったように,いよいよアメリカ連銀も政治家や世論を敵にするのでしょうか? アメリカのテレビ局が流す辛辣なバーナンキ批判は,すでに激しい罵声を連銀に浴びせています.彼らは市場の心理を操り,自分たちの予言を信じないバーナンキを責めるのです.

Martin Wolf は問います.So what are the US monetary and fiscal authorities trying to do? Will it work? What are the risks? Should others follow suit?

まず,これは「リスク・マネージメントである」と考えます.今のように不確実さが増すときには,金融政策は時機を逸してはならず,断固として揺るがず,しかも,状況に即して弾力的に行われなければならない,とバーナンキたちは考えているのです.

それは機能するだろうか? この場合も,比較されるのは日本の先例です.連銀が目指すのは,日本型のデフレに落ち込むのを避ける,ということです.しかし比較するにも,日本のバブルはさらに大きく,金融政策は遅れていました.インフレの心配がなければ,中央銀行は赤字財政を無限に融資することもできるのです.

実際,大幅な金融緩和は住宅(そして株式)市場の価格支持,リフレ政策ではないか,と指摘します.そのリスクは,貯蓄がさらに減り,インフレやドル安で通貨の価値が失われる,と.また将来,バブルが繰り返されて,危機を招くのです.

このコストは海外にも波及しており,アメリカの低金利,経常赤字の再現は,諸外国の(世界的不均衡を調整する)政策転換や経済調整を妨げ,延期させるでしょう.それは,もし世界経済の減速が懸念されるほど大きなものでなければ,過剰な政策である,と批判します.Wolfは,連銀が正しければ,危機を回避するだろうが,長期的な停滞を招くかもしれない,とどちらに転んでも苦しい選択を嘆きます.

それは世界経済の均衡や成長力が失われ,国際金融市場が損なわれているからです.何を優先するべきか? と言えば,アメリカの経常収支赤字削減を世界が不況にならない形で進めることだ,とWolfは考えます.

FT January 29 2008

Back to ‘the economy, stupid’:

How a slowdown will influence America’s presidential contest

By Edward Luce

(コメント) アメリカ大統領選挙の争点はイラク政策であると思われていましたが,金融不安や不況対策に変わりました.不況の年には民主党候補が勝つ可能性は高まります.


The Guardian Friday January 25, 2008

Wall comes tumbling down

Seumas Milne

NYT January 25, 2008

Turning the Triple Play

By DAVID FRUM

BBC 2008/01/25

Gazans make new border wall hole

Asia Times Online, Jan 26, 2008

The Gaza 'tea party'

By Sami Moubayed

BG January 26, 2008

Ending the stranglehold on Gaza

By Eyad al-Sarraj and Sara Roy

NYT January 27, 2008

Israel’s Experimental Pressure Backfires

By STEVEN ERLANGER

(コメント) ガザ地区とエジプトとの境界線をふさぐ壁が爆破されたことは,中東地域の政治について,何を意味しているのか?


FT January 25 2008

Slow but sure

By Niall Ferguson

LAT January 27, 2008

Why the right loves a disaster

By Naomi Klein

The Guardian Monday January 28, 2008

Our model dictator

John Pilger

NYT January 30, 2008

Kicking Democracy Corpse in Russia

(コメント) 1989年から始まる世界的な民主化は,諸大陸に広まり,そして,終わったのか? 所得水準,成長の持続,信仰や文化,秩序の性格,・・・ 民主化や経済崩壊について,再び議論が活発に行われ,各地の独裁者や政治家に関する評価が動揺しています.


The Clintons get down and dirty FT January 25 2008

Sean Wilentz Obama's misuse of history LAT January 26, 2008

GARRY WILLS Two Presidents Are Worse Than One NYT January 26, 2008

CAROLINE KENNEDY A President Like My Father NYT January 27, 2008

DAVID BROOKS The Kennedy Mystique NYT January 29, 2008

Richard Cohen The Race Turns to Race WP Tuesday, January 29, 2008

NYT January 28, 2008

Lessons of 1992

By PAUL KRUGMAN

NYT February 1, 2008

The Edwards Effect

By PAUL KRUGMAN

これは1992年の再現だ,とPAUL KRUGMANは考えます.ブッシュ政権に対して,16年前,ビル・クリントンが大統領候補として選挙運動を進めていました.その当時を振り返って,今の民主党候補者指名争いは政策論争が足りない,と批判します.クリントンにもオバマにも責任があります.エドワーズが支援したような,明確な政策を掲げるべきだ,と.

エドワーズは選挙運動においては敗北しましたが,その運動が依拠したアイデアは残った二人の候補よりも優れていた,とKRUGMANは考えます.特にエドワーズが示した健康保険制度の改革は,それまでのあいまいな改革案を一新して,クリントンとオバマにも追随させる結果になりました.そのせいで候補者たちの違いはわかりにくくなり,資金量とメディアの関心が高い二人に比べて,エドワーズへの支持は伸びなかったのです.

改革案の障害は,全国民に健康保険を適用したいが,制度の維持に膨大なコストがかかるという批判でした.おそらく健康保険の民間企業が強く反対するのです(年金制度に株式市場関係者が反対するように).エドワーズは,全国民に選択権を与えよう,と提案したようです.

またKRUGMANは,エドワーズのように制裁を提案した選挙を戦わなければ,クリントンやオバマのような個人の特徴に焦点を当てる選挙運動は共和党の激しい中傷を浴びるだろう,と警告します.クリントンはすでに共和党の中傷によって人物像を汚されてしまいました.今後,オバマが勝利するにつれて,彼のあらさがしと中傷が強まるでしょう.民主党は,ケリーの失敗を繰り返すのです.


NYT January 27, 2008

To Build Confidence, Try Better Bricks

By ROBERT J. SHILLER

(コメント) ROBERT J. SHILLERが指摘するように(そして,誰であれそう思うでしょうが),株式市場が正しく機能することに対して人々が信頼するのは,株式でいつも儲かっていることとは違うわけです.ところが,株式で損をすれば,自分の投資判断や企業の経営が間違っていたというより,政府や中央銀行の政策を責める気持ちも強まります.株価が全体に上昇するときには,株式市場や政府への信頼感が強まる,というのも当然です.

そこで,“a set of tools that improved confidence by truly improving market security”とは,大恐慌の経験を経て作られた預金保険機構や証券取引委員会のことです.情報を扱い,人間心理や行動の特性を把握し,既存の制度を使って,市場が機能するのを助ける仕事とは,真に,その市場に合った創意工夫を要するわけです.

今また,そのような工夫が求められています.金融市場が自己実現的な危機に陥るのではないか,実物経済の回復を妨げ,むしろ障害となっているのではないか,と人々は疑っています.それはインフレを抑制するだけにとどまらない彼らの課題です.

FT January 30 2008

How to avoid the next crash

By Charles Goodhart and Avinash Persaud

FT January 30 2008

Stop behaving as whiner of first resort

By Ricardo Hausmann

FT January 31 2008

High time for all of us to ‘buck up’

By Samuel Brittan

(コメント) Charles Goodhart and Avinash Persaudは,民間銀行のリスク管理を真似たIMFや中央銀行のリスク管理は間違っている,と批判します.そもそも市場価格がいつも正しいのであれば,金融危機やパニックなど起きないのです.

その意味で,危機が起きたことで,ただちに,(国内・国際)金融規制や制度改革を主張するのは間違いなのです.筆者たちによれば,危機は融資の循環に即しておきます.融資が膨張しすぎた後で,大きな危機が発生するのであれば,その膨張と破裂を防ぐことが重要です.市場価格や民間のリスク管理,たとえばBISの求める自己資本規制は,むしろ好況における融資の膨張を正当化し,加速します.

自己資本の規制はもっと単純なものにして,むしろ信用の供与が膨張するスピードを規制するべきだ,と考えます.そして,融資の期間構造と組み合わせるのです.

Ricardo Hausmannの論説も説得的です.サマーズなどの不況回避論を批判して,今のアメリカの消費水準は持続不可能であるから,それが抑制されるのは正しいことだ,と考えます.どのようなコストを支払ってもバブルの水準を維持して,2008年の不況を回避するべきだ,というのは間違いです.

財政政策や金融政策でバブルを維持するよりも,銀行は損失処理のために増資し,融資や消費は抑制されて,あえて不況になるとしても受け入れ,アメリカの輸入が減って世界経済が減速するのは,国際協調と,新興市場が投資や消費を増やすことである程度回避するでしょう.もし政府が財政支出で何かしたいなら,設備の償却を加速して企業の新規投資を助け,危機後の成長を維持するべきです.バブルによる信用膨張で消費者が味わった生活は改めるしかありません.

発展途上諸国が通貨・金融危機に苦しむときには,もっと厳しい条件を呑ませるではないか? というわけです.

「現在,世界にとって理想の刺激策は,129日のFTリーダーが概略を示した.すなわち,主要な需要の追加がアジアとユーロ圏から生じる.アメリカはわずかな刺激策で良い.残念なことに,そのような(世界)刺激策は各地域の政策担当者が持つ確信や偏見に反している.アメリカは今なお1930年代の大恐慌と戦っているし,ECBは金融の健全さを守るために他の事情を犠牲にする.中国の政府当局は国内の安定性に関わるリスクを取るなんて恐ろしくてできない.」

ときに,世界の正しい景気刺激策を取るには,世界金融政策局・世界中央銀行があればよい,と思うけれど,それは一緒に大きな間違いを犯す危険もある,と.現状の妥協的な景気刺激策は,意外と,正しいかもしれない?


The Japan Times: Sunday, Jan. 27, 2008

China isn't blazing a path for anybody

By TOM PLATE

FT January 31 2008

China wishes its manufacturing masses a happy new year at work

By Richard McGregor in Beijing and Tom Mitchell in Guangzhou


WP Monday, January 28, 2008

A Better Way to Grow NATO

By Ronald D. Asmus

Asia Times Online, Jan 29, 2008

A China base in Iran?

By Kaveh L Afrasiabi

(コメント) アフガニスタンをめぐってNATOが,イランをめぐってはロシアと中国が議論されています.安全保障とエネルギーが国際秩序の基本であることを思い出します.もちろん,食糧や輸送,伝染病,環境,など,秩序の性格を決める他の要因もあります.たとえば,・・・

FT January 28 2008

The battle for food, oil and water

By Gideon Rachman

The Guardian Tuesday January 29, 2008

Population growth is a threat. But it pales against the greed of the rich

George Monbiot

WP Tuesday, January 29, 2008

Beauty and the East

By Anne Applebaum

BBC 2008/01/29

Jobs for the children of globalisation

By Tim Weber

(コメント) 飲料水の不足,人口,女性,子供,が議論されています.


FT January 29 2008

America’s middle classes are no longer coping

By Robert Reich

(コメント) 景気刺激策は効果を示さない,とRobert Reichは警告します.なぜなら不況の原因はもっと深いものだから.それは,労働者の賃金が減ってしまったこと,アメリカの中産階級が没落したことに原因があるのです.家族の生活は長時間の労働と融資の借り換え,母親が仕事に出ることで維持してきました.

こうした中産階級の生活が,金融不安によって悪化しています.彼らは消費を削るでしょう.それは短期的な景気刺激策によっても解決しません.倒産や破産が増え,外国からの投資は減少しています.

技術革新と生産性上昇にもかかわらず,企業重役たちや富裕層の投資利益にしか配慮しなかった政策が破たんしたのです.彼らは今回の選挙によって発言し,新しい大統領を介してアメリカを変えようとするはずです.


The Guardian Thursday January 31, 2008

The migrants' almanac

Khaled Diab

(コメント) 多くの外来語が私たちの言葉に加わり,その生活や食事,文化を豊かにしたことを示しています.時間とともに,人々も一緒に暮らすようになるでしょう.恐れるばかりでは,未来を逃げるようなものです.


FT January 31 2008

Kremlin economics

FT January 31 2008

Copy China and invest abroad, says Medvedev

By Catherine Belton in Moscow

(コメント) ロシアの政財官エリート2人が,同じ日に,クレムリンの強硬な外交姿勢を批判しました.KGB関係者による権力のネットワーク(the siloviki faction)に,投資家や政財界のエリートたちが挑戦しつつあるのかもしれません.ロシアはもっと貿易や投資によって国際的な地位を高めるべきだ,というわけです.

もっと中国の貿易や投資政策をまねて,西側企業の技術に従属する状態も脱することを目指します.プーチンの後継者に指名されたメドヴェージェフDmitry Medvedevも,財界指導者たちに同様の演説をしています.

WP Friday, February 1, 2008

In North Korea, Process Over Progress

By Michael Gerson

Asia Times Online, Feb 2, 2008

North Korea: The Columbus complex

By Aidan Foster-Carter

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The Economist January 19th 2008

The invasion of the sovereign-wealth funds

Sovereign-wealth funds: Asset-backed insecurity

Ethical capitalism: How good should your business be?

Just good business: A special report on corporate social responsibility

Depopulation: The Great Plains drain

Economics focus: Selling sex

(コメント) このところ,資本主義の性格を議論することが流行です.政府系投資ファンドも,サブプライム・ローンも,社会起業家も,これまでの資本主義システムが前提していた「資本家」や「投資・利潤」の概念とずれているからでしょう.新興市場各国の国旗を描いた大型ヘリコプターが,大量の金塊を積んで(ウォール街に)緊急空輸する表紙のイラストが痛快です.

セックスの値段,という経済学の報告は,それを実証的に示した点で興味深いかもしれませんが,経済学の合理的な醜さを描いたようにも思います.

私がおもしろく読んだのは,アメリカ中部の大平原から人口が流出していることを考察した記事です.ますます都市化するのは,ますます機械化する農業と,人口が減少した地域にも快適に暮らす人々の保守的スタイルに拠る,という話です.