IPEの果樹園2008

今週のReview

1/21-1/26

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

アメリカの不況対策, ブッシュの中東和平, ヨーロッパの復活1何か2, 小国の時代?:ブータン,ポーランド,台湾,・・・イギリス?  国家資本主義の時代, アジア政治, 移民労働者

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


Jan. 11 (Bloomberg)

Central Banks Dance in Denial on Stagflation

Michael R. Sesit

WP Friday, January 11, 2008

To Blunt a Recession

NYT January 14, 2008

Responding to Recession

By Paul Krugman

(コメント) 不況を回避するために金利を下げるより,インフレを抑えるために金利を引き上げて維持するべきだ,という意見もあります.しかし,中央銀行は二つに配慮し,いずれにも勝てません.そしてスタグフレーションを招くのです.

問題を難しくするのは,インフレがますます世界的な現象になっているからです.もしかすると,国内の需要を抑えても,インフレは終わりません.中央銀行は悪化する事態に対する先手を打って,金利を引き下げて景気を刺激し,それから金融引き締めに転じてインフレを抑えようとしています.

クリントン政権の財務長官を務めたサマーズLawrence Summersや,レーガン大統領の経済顧問であったフェルドスタインMartin Feldsteinが不況について警告しています.バーナンキ連銀議長は金利を引き下げ,さらに緩和する意向ですが,議会にも景気刺激策が求められています.

大統領選挙の年であり,景気に対する配慮は政治的な意味でも重要ですが,不況の証拠はまだ何もありません.そこで,フェルドスタインが示唆するように,3か月連続して雇用が減少するというような明確な証拠があれば,実行されるような財政刺激策を明示する,といった対策が優れているわけです.

Paul Krugmanは,大統領候補者たちの景気対策を比較します.たとえば,マッケインは経済について大統領が言うことは何もない,と考えます.「私はグリーンスパンの本を読んだ.それで十分だ.」といった調子です.しかし,Krugmanはその冗談を打ち消します.グリーンスパンこそ,サブプライム・ローンの育て親ではないか?

ジュリアーニは恒久減税,ハッカビーはポピュリストの演説と中産階級への増税,そして富裕層への減税です.ロムニーは景気後退への不安を表明し,ブッシュ政権でも減税だけでは足りないという雰囲気ですが,共和党の基本はビジネス界への配慮なのです.

民主党の候補者たちの中では,ジョン・エドワーズがここでも先行しました.失業者への支援,財政困窮の州政府や地方政府へ支援,代替エネルギー,を明確にしています.クリントンは同様に政策についてよく知っており,オバマは遅れて,しかも曖昧な提案をしました.

Jan. 16 (Bloomberg)

Stop Bush, Democrats Before They Save Our Economy

Amity Shlaes

WP Wednesday, January 16, 2008

Lollipop Economics

By Robert J. Samuelson

FT January 17 2008

We have defences against a slump

By Samuel Brittan

(コメント) Amity Shlaesは,大統領に助言するエコノミストたちの自信が,大統領たちを動かすとしても,その後の大失敗を説明するわけではないことを指摘します.たとえばクリントン政権時に,大統領はささやかな景気刺激策を取ろうとして議会につぶされましたが,日本政府に対して巨額の財政刺激策を押しつけました.宮沢や小渕のときに1000億ドルを超える刺激策を取って,それでもデフレは解決できず,むしろ長引いたのです.

Shlaesは,要するに,政治家がふんだんに刺激策の財源を得てしまえば,それを得た銀行は調整を延期し,問題がますます解決できなくなる,改革の必要性が見失われる,と警告します.ニクソンが実践した1970年代のケインズ主義も同じでした.Paul McCracken, Arthur Burns (then Fed chairman), George Shultz and Herbert Steinが助言して行われた1970年代の景気刺激策は大失敗だった,を批判します.

Robert J. Samuelson は,「戦争とは他の手段を用いた政治の継続である」というクラウゼヴィッツの有名な言葉を指摘します.経済政策も同じである,と.それは経済学よりも,政治や世論の形成に重要な関係があるのです.

不況になるかもしれない,もうなっている,さあ減税だ,政府支出だ,と.これを「キャンディー経済学Lollipop Economics」と呼ぶわけです.なぜなら,14兆ドルの経済規模に比べて,750億ドルや1000億ドルの刺激策は何ももたらさないし,本当に不況になったらそんな程度ではないからだ.つまり,今の支出は政治的な「シンボル操作」でしかない.

不況には時間のかかる解決しかないのです.住宅価格は需給ギャップが続く限り低下するでしょう.それは住宅の差し押さえもともないます.しかし,こうして住宅市場は回復に向かうのです.インフレーションの懸念も,不況によってやわらぐでしょう.それにもかかわらず政治的な支出を増やす結果,次第にそれが膨張して化け物になってしまう,と.

Samuel Brittanは,政策手段が足りない,という不満を批判します.政府が何をするべきか,という論争はあり得ても,政策手段が不足しているわけではない.大恐慌は起こらない,と.

WP Wednesday, January 16, 2008

A Different Recession

By Harold Meyerson

通常の不況であれば,やるべきことは明らかだ.ケインズの本を開けて,連銀は金利を下げ,大統領と議会は減税し,支出を増やす.時とともに,購入,生産,融資が増え,ケインズを書棚に戻す.大きな違いはない,ときには事故もあるが,経済状態は基本的に健全だから.

第二次世界大戦以来,不況のたびにこうしてきた.

共和党と民主党は誰の税金を減らすし,どのプロジェクトに支出するか,を議論する.世論の圧力で何かしなければならないのだ.彼らは妥協点を見つけて刺激策を実施する.政党に支配されたワシントンでも,こうした取引になるだろう.

しかし今回は,そんな風に終わらない.なぜなら不況が普通ではないし,われわれの経済が基本的に健全ではないからだ.今度は,フランクリン・ルーズベルトが大恐慌から抜け出すために創ったいくつかの改革を刷新しなければならないだろう.大きな不況が来るというのではなく,われわれの経済がFDRの時代から二つの発展により変貌したからだ.

ひとつは,ふつうのアメリカ人の所得が停滞していることだ.この現象は1970年代にさかのぼるが,アメリカの家族は妻が働き,住宅価格が上昇することでそれを相殺してきた.住宅の価値が下がって,妻がこれ以上職を見つけられないと,ガス料金,大学授業料,健康保険のコスト上昇とともに,消費者は買うのを止めた.

心配なことに,購買力のこの減少は単に循環的なものではない.賃金の上昇がない,平たんな時期は長く続いてきたし,住宅バブルが再現するような見込みは当分ない.石油価格の上昇はますます強まるだけだ.ルーズベルトの時代と同じように,われわれは所得を増やし,エネルギーの必要を満たす新しい解決策に至る政策を必要としている.

FDRは長期の所得について,社会保障,ワグナー法(多くの労働者が組合に参加した),公共事業,それにはアメリカ全土の電化も含まれていた,という対策を示した.現代の同様の解決策には,被雇用者自由選択法(サービス部門の労働者が,解雇の心配なく組合に参加できる)案の通過が含まれるだろう.また,大規模なアメリカのインフラ更新に連邦が出資したり,数百万人分の「グリーン・ジョブ(環境関連の雇用)」を創出する計画もある.

こうした問題について,両党は意見が大きく食い違う.民主党のオバマ,クリントン,エドワーズはこうした政策を支持し,共和党候補は反対する.

共和党が好むのは減税策だ.それは分配問題やエネルギー問題に答えない.

大恐慌に似た二つ目の側面は,規制緩和された金融部門の果たした役割である.指導的な銀行やその他の融資期間が土台から腐っていたのだ.当時と同様に,そのニュースは消費者だけでなく,多くの銀行自身を仰天させた.彼らは複雑な,曖昧な金融取引を積み重ねて,さまざまな証券を交換し,その本当の価値など求めなかった.

ルーズベルトは,その当時,証券取引法その他,法律によって銀行に慎重さと透明性を強制した.しかし30年たって,ウォール街は,新しい,規制されない顧客(プライヴェート・エクイティなど)を見つけ,金融手段(住宅抵当証券を集めて巨額の投資プールにして,証券化する)を見出した.今や,こうした他人の金でギャンブルに耽る金融機関を考慮して,慎重さと透明性を強制するときである.

しかし,ウォール街のことになると,民主党も共和党と同じく何もしない.それは大統領候補者たちが莫大な寄付を集めるからである.しかしウォール街に頼らず,この秋の論争で問題にするべきである.次の危機を避けるべきだ.


The Japan Times: Friday, Jan. 11, 2008

China's top-heavy showcase

By IAN BURUMA

FT January 15 2008

China’s slowdown

(コメント) 中国経済の成功は西側の自由民主主義と異なるモデルの魅力を示して,今も重要な脅威である,と論説は指摘します.その環境破壊を無視すれば,成長と雇用を求める貧しい人びとだけでなく,民主化なしの経済発展を求める独裁者にも好評です.近代思想は,ナショナリズムとその合理化に向かいました.1930年代のファシズムによる挑戦以来,中国モデルは自由民主主義に対する最も深刻な挑戦だ,とIAN BURUMAは考えます

中国も政治・経済モデルとは何か? それは言われるような19世紀のヨーロッパ資本主義によって理解するより,毛沢東主義が失われた今でも市民社会が存在しない,とBURUMAは指摘します.それはもっと伝統的な政治形態に戻ったのであり,儒教的支配体制の復活です.ところが,その支配の下で資本主義システムを導入し,急速な富の蓄積を始めたのです.これは「ファウスト的な取引」でしたが,これまでは大成功を示しました.

では,物質的な成功を続けられないとき,不況が起きたら,この体制はどうなるのか? 歴史を見れば,それは19世紀のドイツに似ている,とBURUMAは考えます.中産階級の政治的な不満は攻撃的なナショナリズムによって吸収され,対外的な拡大・侵略行為に駆り立てたのです.

言い換えれば,中国は日本の軍国主義復活の危険を叫ぶうちに,自ら日本軍国主義の歴史を真似るのかもしれません.

FTは,中国の成長モデルをthe panglossian scenarioと呼びます.パングロスは『カンディード』に出てくる楽天家です.私たちにとっての問題は,アメリカと世界経済が減速する時期に中国もブレーキをかけようとしていることです.

中国が急激に減速したりせず,政府が望むような産業構造の転換とインフレ抑制を実現して,成長自体は持続する,という長楽天的なシナリオの成功を,今は世界中が祈っているわけです.


The Guardian Friday January 11, 2008

Welcome, Mr President, to the misery you've created

Jonathan Steele

NYT January 16, 2008

Faith, Freedom and Bling in the Middle East

By MAUREEN DOWD

(コメント) イスラエルが入植地の拡大と建設を続けている限り,パレスチナ人は誰もブッシュ大統領の公平な仲裁と信用できません.ブッシュはこれまでの大統領に比べても最もイスラエル寄りの発言を繰り返してきたのです.だからパレスチナ人は,ブッシュの訪問より予備選の結果を注目するのです.

ブッシュの最終年における中東訪問とは何なのか? MAUREEN DOWDは考えます.彼が述べたことは,「私はユダヤ人だけをひいきにしていない.要するに,イランはだめ.イスラエルが良い.イラクはだんだん良くなる.」・・・それだけです.王族や皇太子,大統領などにキスし,抱擁し,その国の現在や未来を称賛する.そして,イスラエルには軍事援助,アラブには精密誘導爆弾.狙うのはテロリストだけですよ,・・・エヘヘ.

「自由と民主主義を世界に広める」という教義を一向に変える気はないのです.イランは原爆を準備しており,アメリカはイランとの戦争も辞さない.

ブッシュの訪問中にイスラエルはパレスチナ人を少なくとも18人殺害した.そのうち13人は兵士だったそうですが,報復に? ベイルートのアメリカ大使館前やカブールの高級ホテルで自爆テロがありました.ようこそブッシュ! これがあなたのキスだ.

ガザの子どもたちは,イスラエルによる封鎖にため,食糧や医薬品もない.他方,石油にまたがった王族たちとはブッシュが歓談し,宝石だらけのネックレスを堪能し,豪華な会食や乗馬に興ずる.シャンデリア,バラの花,泉水 ・・・だから? イラクには少なくとも2018年までアメリカ軍が駐留しなければならない.

ライス国務長官が繰り返した「人権」はどこに行ったのか? 彼の父親が解放したクウェートでさえ,女性たちへの抑圧は終わっていない.イランを支配も民主化もできないのであれば,アラブ諸国の隣国の一つとして,アメリカがイランを悪魔として非難するのは聞きたくない.ハマスやヒズボラ,ムスリム同胞団が選挙で勝利する土地で,民主主義を説くのは意味がない.

ブッシュ大統領は聖書の物語る土地に立って,ますますその言葉が真実であったと感じるわけです.つまり,ブッシュが中東世界を変えるというのでは・・・「奇跡」を信じるしかない.


NYT January 11, 2008

The Comeback Continent

By PAUL KRUGMAN

FT January 13 2008

Why America needs a little less laissez-faire

Barney Frank

FT January 15 2008

Europe is caught mid-river in labour reforms

By Tito Boeri

(コメント) PAUL KRUGMANは,政府を非難するイデオロギーの前提になっている,アメリカはヨーロッパより優れている,という偏見を事実に即して改める時だ,と主張します.

ヒラリーの社会保障案を「ヨーロッパの考え方」だと非難し,アメリカの企業重役たちが得る途方もない報酬を「だからアメリカは日本やヨーロッパよりも成長できる」と自慢するような感覚は,間違っているのです.仕事に就かないで社会保障を当てにする怠惰な人々,というイメージを払しょくするべきです.

ヨーロッパ経済は,確かに今も高率の税金で社会保障を維持していますが,アメリカと同様に,あるいはそれ以上に雇用をもたらし,成長しています.ハイテク投資も急速に青いあげました.アメリカの資本主義ではないけれど,決して劣っていないことを示したのです.

アメリカの民主党下院議員で金融サービス委員会の議長であるBarney Frankは,同様に,共和党的なイデオロギーの見直しを説明しています.市場の不安定性と不平等な所得分配に対して,過度の市場諸力を放任する姿勢を改めるよう,アメリカ国民は求めている,と.

The Guardian Tuesday January 15, 2008

The world according to Wall Street

Ian Williams

Tito Boeriは,ヨーロッパの改革が成果を上げながら,その中間点でとどまっている限り,労働者や政治家たちの共謀で古いシステムに戻ろうとする間違った政策を採りかねない,と危惧します.すなわち,労働市場の制度的な制約を外して社会保障の給付を労働市場の参加に義務付けることで,多くの雇用が生まれました.しかし,労働者の解雇については制約が多く,移民の積極的な貢献も十分に評価されていません.

こうした問題を解決するより,政治家たちは労働組合の要求を受けて各国ごとの団体交渉や財政的な支援を増やそうとしています.しかし,それは労働市場改革を挫折させ,各国の財政規律を失わせて通貨統合に反する,と考えます.むしろ,労働市場の改革を完成させて,移民の受け入れにも積極的になることで,雇用と成長を回復する,というわけです.

FT January 16 2008

Smooth New Europe’s entry to the euro

By Marek Belka

(コメント) EU新加盟諸国にユーロの採用基準を考えています.インフレや公的債務について,マーストリヒト条約の定めた基準よりも緩和したものでユーロの採用を認めることが望ましいでしょう.なぜなら,彼らは社会主義圏の制約によって長い間成長を抑制してきたのであり,高い成長率とインフレ率を経験することは自然だからです.

EU加盟後,もし政治的な意志があれば,彼らはユーロを採用するでしょう.実質的な収斂には,最も低いインフレ率や公的債務比率の国を基準にすべきではないし,好況時に財政黒字を出すように求めればよい,と考えます.


NYT January 11, 2008

Middle-Class Capitalists

By DAVID BROOKS

1974年,エコノミストとジャーナリストの集団がサプライ・サイド経済学に走った.それはスタグフレーションに対応した政治・経済パーッケージであった.その政策関心は明確であった.すなわち,限界課税率.その政策が魅力的に示す人物像も明確であった.すなわち,リスクを取る起業家.過去の富裕層ではない,成長志向の共和党であった.

サプライ・サイド経済学は成功したが,減税を共和党の主要政策にし続けることは難しい.人口変化が重要だ.アメリカは高齢化している.高齢者への公約にはお金がかかる.この課税率では実行できない.大幅な,中産階級も含めた減税政策の時代は終わった,とDavid Frumは書く.

政治状況も変わった.共和党は経済政策によって投資家を,価値観や犯罪,福祉で労働者階級を投票させた.しかし,この公式は壊れた.労働者たちは共和党から去った.彼らの経済的関心が強まったからだ.

結果的に,共和党員は新しい経済モデルと経済政策を目指している.企業家は王様ではなく,賃金生活者が王様だ.ミシガンの予備選挙では,共和党候補者たちがいっせいに中産階級に支持を訴えた.

それでも,共和党と民主党の違いは明確だ.アメリカの労働者を犠牲者とは呼ばない.グローバリゼーションは害悪をもたらすものではない.個人は,労働と教育で運命を動かせる.自由貿易を捨てて,ヨーロッパ的な高税率を採用することはアメリカを破滅させる.

しかし,1980年代に共和党が考えた以上の役割を,彼らは政府に認める.アメリカ人はグローバリゼーションで競争することを恐れない.政府が自分たちの側に立つことを求めるだけだ.

四つの主要な政策転換が見られる.1.人的資本の改善を促すこと.より多くの熟練や技術を必要としている.教育に関連した減税を検討している.

2.社会保障を受け入れる.ただし,そのコストを管理すること.この点では,政府ではなく,民間部門が優れている.3.失業したり,賃金が減っても,市場への回復力を支援すること.4.減税ではなく,財政的な清廉さを主張すること.政府が財政的に放漫で,無責任であってはならない.

共和党はこうした政策転換を急ぐことだ.


The new Model-T FT January 11 2008

Anne Applebaum Tiny Car, Tough Questions WP Tuesday, January 15, 2008

John Gapper Detroit looks uneasily to the east FT January 16 2008

(コメント) 1000ルピー,約2000ドル,20万円の自動車を,インドのタタが生産します.その名は「ナノ」.これで新しく,貧しい数億人が自動車に乗れるでしょう.インドも,都市も,地球の環境も,ナノに食いつくされる,と警告する声が高まっています.これは,T型フォードが築いた時代を再現するでしょうか?

環境に優しい技術や有機栽培の農産物に高い代金を支払う人々がいるとしても,多くの貧しい人びとはなのに乗ります.貧しくても良い,という主張は難しいでしょう.自動車産業の国際競争や国家間の競争も,たとえ環境破壊を加速すると分かっていても,一層,多くの自動車を走らせる結果になります.


The International Herald Tribune, 11 January 2008

In Singapore, A Local Switzerland for Asia's Wealthy

Wayne Arnold

(コメント) シンガポールは理想の開発モデルでしょうか? それともアジア富裕層のための独裁国家,金融資本のパラダイス? つまり,東洋のスイスでしょうか? テロリストからも,政府からも自由な,富の保全と蓄積に対して,最大の便宜を払ってくれるはずです.すなわち,新しいシンガポールの特産品とは,金融の秘密保持,税金の免除,です.

アジア,中東に膨張する富,ヨーロッパや日本の税金を嫌った富が,スイスの銀行口座を満たしています.これをシンガポールが狙うのは当然です.華僑だけでなく,中国が急速に富裕層を増しており,政府が税制を整備する過程ですから.


Asia Times Online, Jan 12, 2008

In Bhutan, China and India collide

By Mohan Balaji

(コメント) ヒマラヤの仏教国家,ブータンは世界で最新の民主化を,しかも上から行ったケースです.最近の変革とは,聡明な王様King Jigme Singye Wangchukが自ら権力を切り離し,王制から複数政党の民主制に転換するとともに,オックスフォードで学んだ若い息子に平和と繁栄の未来を託したというものです.

しかし,天上の王国が平和的な民主化に訴えた本当の理由は,中国とインド,というアジアの二大国に対する国民の意識を高めるためであったかもしれません.ブータンは両国に対する等距離外交を目指しますが,中国とインドの国境紛争が再燃し,ブータンを緩衝国家として認めなくなることを恐れているのです.

BG January 12, 2008

Poland takes up for Poland

(コメント) ポーランドは外交・安全保障・エネルギー政策について,ロシアとアメリカ,EUに挟まれています.ポーランドの政権交代はミサイル防衛システムの建設問題を振り出しに戻しました.

「ブッシュ大統領の間違ったミサイル防衛システム計画は,最近,後退を余儀なくされた.ポーランドで政権に就いた新しい中道右派政府がポーランドに10基のミサイル迎撃システムを設置することに疑義を示したからだ.ポーランドの方針転換は,ブッシュにとって当惑させるものかもしれないが,長期的には,アメリカやヨーロッパの安全保障に有益であるし,アメリカ・ロシア関係,ポーランド・ロシア関係そして新旧のヨーロッパ関係にも有益であろう.」

アメリカを守るためのミサイル基地が真っ先に攻撃を受けるとしたら,ポーランド政府が拒むのは当然です.同時に,ポーランドは,そのロシアに対する安全保障を,アメリカの軍隊ではなく,EUとの経済統合に見出すようになりました.

IHT Monday, January 14, 2008

What's next for Taiwan?

By Philip Bowring

FT January 14 2008

Taiwan elections

The Japan Times: Tuesday, Jan. 15, 2008

Taiwan votes for change

(コメント) 台湾では,中国の立場に近い国民党が選挙に勝ちました.海外の関心は,これで独立と軍事衝突の危機は去った,ということでしょうが,民進党敗北の理由はそれほど単純ではない,とPhilip Bowringは考えます.民進党は陳水扁の汚職事件などで支持を失い,投票率が低下しました.もし投票率が高くなれば,勝敗は分りません.経済問題に論争を挑まず,アイデンティティーばかりを強調しました.元来は台湾支持であるアメリカとの関係を悪化させたのも失敗です.4-5%という成長率も低くないけれど,政府がもっと本土との貿易や投資を自由化していたら,成長できたはずです.金融部門改革の立法化も進みませんでした.

国民党はもっとプラグマチックであり,北京政府との交渉も柔軟です.しかし,北京との関係を改善するだけでなく,あまりに中国本土の経済に取り込まれると,国民が反発するかもしれません.彼らの警戒感は決して失われていないのです.

「誰が権力を握っても,商業の活力と躍動する民主主義が,中国との気の進まない統合を拒む最大の防壁なのです.それはイギリス人がアメリカに感じるのと同様,台湾人が中国を外国と感じるからです.」

FTは,選挙結果をもっと端的に解釈します.世界のどこよりも,台湾の選挙結果は株価に反応する,と.成長率も株式市場もアジアの中では低迷しています.台湾の株価は先が読めません.つまり,322日の大統領選挙がどうなるか,まだわからないのです.

民進党は敗北の理由をアメリカ政府に見ています.ブッシュ政権は北朝鮮の非核化やイランへの制裁決議のために,北京政府に取り入ったからです.支持されるべき台湾独立問題はその犠牲になりました.しかし,有権者は対米関係の悪化を民進党政府の失敗と考えました.


LAT January 14, 2008

Financial forces run amok

By Al Meyerhoff

FT January 15 2008

Why regulators should intervene in bankers’ pay

By Martin Wolf

FT January 17 2008

Silence not golden for sovereign funds

By Henny Sender in New York

(コメント) 規制緩和の行き着く先とは,今回のモーゲージ危機であった,とAl Meyerhoffは批判します.証券取引委員会はウォール街の飼い犬ではなく,公共の利益に奉仕しなければなりません.21世紀の泥棒貴族たちを一掃するのです.

Martin Wolfは,銀行を好きになれない,と述べます.銀行は社会に必要であると自覚しており,それゆえに,傲慢や不正に冒されやすいからです.銀行が繰り返してきた腐敗と危機はそのことを顕著に示しています.利益は自分たちのもの,しかし,大きく失敗したとき,損失は社会が負担する.発展途上諸国の債務危機も,貯蓄信用組合の危機も,同じでした.

解決策はないのか? 市場を信じる者は銀行を自由に競争させて,失敗した銀行を破たん処理するべきだ,と考えます.しかし,歴史が示すように,その過程を国民は経験したがりません.それに代わる提案は,“narrow banking”です.この場合,銀行は決済システムと安全な預金だけを提供し,資産は政府証券だけに投資します.しかし,規制されない分野の銀行は非常に危険ですし,政府が失敗することもあるわけです.

もっと単純に提案すれば,短期のパフォーマンスを重視して莫大なボーナスを支払う銀行を処罰することです.木星のように,12年を1年として評価すれば,銀行危機は容易に起きないでしょう.

政府系投資ファンド(SWF)からの資金でアメリカの主要銀行が自己資本を増やすことについて,Henny Senderは懐疑的です.SWPは傷ついた銀行にとって理想の投資家なのでしょうか? 「彼らは巨大で,受動的で,辛抱強い.“they are massive, passive and patient”」 逆に,この受動性がアメリカ経済にとっては良くない,という意見があります.なぜなら,問題の所在をあいまいにしたまま,法的・制度的な改革の機会を失わせるからです.

FT January 14 2008

The unsettling zeitgeist of state capitalism

By Jeffrey Garten

(コメント) 1980年代のサッチャー&レーガンが推進したフリー・マーケットの時代は去って,今や,国家資本主義の時代です.その意味で,アメリカの主要銀行が次々に政府系投資ファンドの資本で再建策を示したことを理解できます.

他にも,製品や食品などの規制が国際的に行われて,アメリカ,EU,中国,WTO,が交渉し続けています.エネルギーや環境の規制にとどまらず,最近のサブプライム・ローン問題は金融規制を一気に中心テーマにしてしまいました.石油は,政府による支配が80%にも達するわけです.中国とロシアは,アルミニウムや製鉄などでも政府による世界市場支配を強めています.金融市場も同様です.

世界的な規模で市場が不安定化すれば,国家規制のDNAを持つ諸国では,自然に政府の役割が復活してしまいます.この傾向が強まれば,経済はますます生産性を失い,革新を嫌い,成長できなくなるであろう,とJeffrey Gartenは懸念します.貿易や金融が政治問題になり,不均衡が国際対立を生じます.

IMFやWTOによる政府系投資ファンドの情報開示や監視が有効にそれらを抑制でいるか?

18世紀後半には資本主義が封建制に変わった.20世紀には自由市場が時代を支配した.しかし今,世界は新しい転換を迎えている.世界商業のルールや哲学が変化している.過去の変化と違い,これは進歩をもたらさない.」


FT January 15 2008

A nation of shopkeepers and world beaters

By Luke Johnson

(コメント) The writer is chairman of Channel 4 and runs Risk Capital Partners, a private equity firm. なるほど,Luke Johnsonはイギリスの革新を唱えるにふさわしい人物です.

イギリス人は,株式市場や近代資本主義を発明した.イギリス人は1914年の海外投資の半分を支配し,1950年でも世界の工業製品輸出の4分の1を支配した.イギリス帝国は政治よりも交易を拡大したかったのであり,アメリカ植民地を世界最大で最も裕福な国に変えた.ノーベル化学賞,組織管理,議会制民主主義,行政官,移民に対する寛容さ,これらの点でイギリス人は優れている.

「アイルランドを真似るべきだ.税率を下げ,政府支出を縮小する.そうすれば成長率が高まる.社会を福祉の権利から切り離し,自立精神と責任感を強化するべきだ.われわれは自身と冒険心を取り戻し,「この王位に就いた島」がビジネスの本当の沃土であることを理解する必要がある.」


The Guardian Tuesday January 15, 2008

Nation-state politics can only fail the problems of the modern world

Ulrich Beck

ヨーロッパは現実に存在する最後のユートピアだ.しかし,ヨーロッパとは何か,まだ理解されていないし,概念化されていない.国際社会は歴史的に独自の形態を取っており,伝統的な政治や国家の概念では説明できない.それは方法論としてナショナリズムの制約に妨げられる.現代のヨーロッパを理解するには,伝統的な社会や政治の分析カテゴリーをラディカルに再考しなければならない.

ウェストファリア条約が教会と国家を分離して17世紀の宗教戦争を終わらせたように,20世紀の恐怖に対する正しい反応は国家と民族とを分離することである.世俗の支配権を握った国家が異なる信仰を可能にしたように,コスモポリタンなヨーロッパが異なるエスニック,宗教,政治形態の,コスモポリタンな寛容さという原則に基づく,国境を超えた共存を保証しなければならない.

しばしばこんな問いが発せられる.もしイギリスがそんなに嫌なら,EUを辞めたらどうか? イギリスは国益に従う.では,反ヨーロッパの,EUを抜けたイギリスはどうなるか? ヨーロッパは良いが,イギリスは荒海に残された島に戻るだろう.イギリスであれ,どこであれ,EUを疑う者たちは間違っている.世界における位置を誤解している.

コスモポリタン・ヨーロッパは第二次世界大戦後にナショナリスティック・ヨーロッパに対する政治的なアンチテーゼとして始まった.それは1946年に破壊された大陸に立ったチャーチルの精神であった.「もしヨーロッパが団結すれば,・・・数百万の民を無限の幸福と繁栄と栄光で満たすことができるだろうに.」

ヨーロッパのコスモポリタニズムは,戦争の記憶がまだ生々しいときに,ニュルンベルグ裁判所で書かれた文書が基礎となっている.その裁判は,国民国家の主権を超えた法の概念と裁判手続きを創り出した.それは新しい法律や法的原則ではなく,以前の国民国家による国際法と全く異なる,新しい法のロジックを導入したのだ.人道に反する犯罪という概念は,革命的である.その定義は条文6cにある.「人道に反する犯罪.すなわち,いかなる市民に対しても,戦争中であれ,戦争前であれ行使された,殺人,絶滅,奴隷化,強制移住,その他の非人間的な行為.また,たとえその犯罪に及んだ国が国内法を犯していなくても,裁判所の支配権において,政治的,民族的,宗教的な理由で行使したこと,また,いかなるものであれ犯罪と関わる行為.」

第一に重要であるのは,「戦争中であれ,戦争前であれ」という文句だ.それは戦争犯罪ではない.戦争がなくても成立する.第二に,この犯罪は「その犯罪に及んだ国が国内法を犯していなくても」存在する.国家による法概念からのこうした飛躍が必要であったのは,ナチス・ドイツの法律においてはユダヤ人の告発が合法的で,戦争前から行われていたからだ.この二つの規定はすべてを変化させた.諸民族のコミュニティーにおいては,国家の法を超えて,すべての犯罪者に個別の責任が負わされる.もし国家が犯罪を犯すなら,それに奉仕した個人も訴追され,国際裁判所においてその行為に対する判決を受ける.

植民地的,ナショナリズム的,大量虐殺的な暴力の伝統は明らかにヨーロッパのものであった.しかし,こうした行為に対する非難を示し,世界中の注目を集めた新しい法律の基準もヨーロッパのものであった.歴史の転換点で,ヨーロッパはその伝統を動かし,新しいものを創り出した.それは他者のすべてに人間性を認め,歴史的に新しい反論の基礎を形成したのだ.それは特に,エスニックを悪用するヨーロッパの伝統に反対する論理であり,ヨーロッパの近代が民族を基礎に犯した恐るべき責任を免れない.それはヨーロッパに対するヨーロッパ的な解毒剤を抽出する試みであった.

民族の概念はヨーロッパを考えられなくする.民族の視点は現代ヨーロッパの政治と統合化を二つの仕方だけで理解するからだ.一方は連邦主義であり,連邦制の超国家に至る.他方は政府間主義で,諸国家の連合に至る.どちらも経験的に見て不十分だ.現在のヨーロッパ,それを形成する民族を見ていない.それは深い意味で反ヨーロッパ的である.どちらも,多様性に富んだヨーロッパ,その繁栄を促すヨーロッパを達成できない.

両者とも異なる視点から見たゼロサム・ゲームである.連邦主義では加盟国が消えてしまう.政府間主義ではヨーロッパでなくなる.ヨーロッパの利益は各民族の損失だ.国民国家という制約の中で,どちらもヨーロッパではないものを選択するように求められる.

国民国家の衰退は,民族という意味での国家の衰退であるが,コスモポリタン国家システムを創り出す機会である.それは今日の世界ですべての民族が直面する問題によりよい答えを示せる.経済のグローバリゼーション,国際テロ,地球温暖化,・・・うんざりするほど祈祷が繰り返されている.こうした問題は,国民国家の古い秩序では対応する力を超えたものだ.世界的な問題の答えには,国民国家システムからコスモポリタン国家システムへの政治の飛躍が必要だ.本物の解決策を示すためには,その信用を政治が回復する必要がある.

世界のどこよりも,ヨーロッパはこの段階に立っている.近代の世界に国家の発展と国家システムを教えたヨーロッパはそれで終わるのではない.民族の権力政治は,ヨーロッパだけでなく世界中で終わるだろう.それはルーズ・ルーズ・ゲームになりつつある.

ヨーロッパ化は新しい政治の出現だ.メタ・パワー・ゲームの主体として,世界秩序のルールを形成する闘争に参加せよ.将来のキャッチフレーズはこうだ.「アメリカを超えて進め.ヨーロッパが帰ってきたぞ.」


Rock unresolved FT January 15 2008

Northern Rock The Guardian Wednesday January 16, 2008

A brief history of nationalisation FT January 16 2008

Seumas Milne Northern Rock has exposed the reality of the free market The Guardian Thursday January 17, 2008

(コメント) ノーザンロック銀行はイギリス政府によって塩漬けにされたまま,一向に最終的な解決策が決まりません.小株主や被雇用者が抗議の集会を開きました.

FTは最初処理について三つの問題を指摘します.1.民間部門から資本は補充されるのか? 2.銀行システムに損害を与えないか? 3.国有化する場合,株主に政府はいくら支払うのか?

また,プライヴェート・ファンドに資産を売却して損失をできる限り抑える,という案は経営陣に対して,他の関係者が拒んでいます.

イングランド銀行が200億ポンドを融資し,政府が預金を全額保証したので,株主は利益を法的に要求できるけれど,その道義性を疑われます.民間が扱えないなら国有化しかないとしても,株主に支払う代金が決まりません.

フランスやスウェーデンで国有化された例をFTが紹介します.

Seumas Milneは,イギリスが国有化に就いて持っている過去の劣等感を払拭して,市場への過信を改める時だ,と考えます.フリー・マーケットとは,決して自由ではなく,透明でもない,無責任な体制である,と.・・・公的な監視とルールがなければ,それは泥棒の一族だ,とまでは書いてないですが.


The Japan Times: Tuesday, Jan. 15, 2008

Recurring dream about Asia's prospects

By TOM PLATE

(コメント) アジアについて希望することを,TOM PLATEは描きます.もし神が舞い降りるか,歴史的な英雄がよみがえったら,アジアでこの夢を実現してくれるでしょう.

北朝鮮: 金正日が軍隊ではなく人民を幸せにするように.そのためにも,彼の国が救済される道は6カ国協議の合意を実行して,それと同時に彼らが約束する援助を得ることだ.権力は好戦的でない外相に委ねてリビアに亡命し,国連の委任統治領にしてもらいなさい.

日本: 小泉純一郎のクローンをいっぱい作ってもらうことだ.ただし,フーディニ的な政治的才覚は残すけれど,ウルトラ・ナショナリズムの遺伝子を抜いてしまい,近隣諸国にも喜ばれるように.

スリランカ: 25年間も内戦を続けたこの島に,the Nordic Sri Lanka Monitoring Commissionの関与によって,平和が訪れた.彼らがノーベル平和賞を得たのは当然だ.

パキスタン: 軍事独裁者から大統領になったムシャラフは,国民に対してその支持を得られなかったことを後悔して辞任し,ブット女史の暗殺者たちを逮捕することに使命を見出す.2月の選挙で民主的な政府が登場する.

台湾: 国民党が勝利することで北京との関係が改善し,双方が一方的な独立宣言や軍事侵攻はしないと約束する.両者は時間をかけて交渉し,並行して大陸の政治改革も進んで,戦後の日本と似た,一党による長期政権を維持した,しかし国民党のように汚職に染まらない民主主義へと変化する.

BG January 17, 2008

New wisdom from Asia's giants

Jan. 16 (Bloomberg)

It's Scary We Know Nothing About Chindia Prices

Andy Mukherjee

The Jakarta Post, 16 January 2008

Southeast Asian Democratization in the Era of Globalization

Roy Voragen

WP Wednesday, January 16, 2008

A Prosperity Dilemma

By Michael Gerson

(コメント) インドのシン首相が北京を訪問しました.ここに人類の3分の1を代表する頂上会談が実現したわけです.両国間には国境紛争があり,政治哲学の違いがあります.双方が相手の戦略的な意図を疑っている,とBGは書きます.

北京での講演で,新首相は明確に北京政府の疑念に答えました.インドはアメリカに対しても,中国に対しても,戦略的な自律性を求めている.アメリカとの核技術の協力は中国に敵対するためではなく,同様の協力を中国とも結んで良い,と.

外交関係もゼロサム・ゲームではなく,協力して平和と繁栄を実現することができる,というインドの姿勢を,アメリカの新しい大統領も学ぶべきだ,と主張します.

Andy Mukherjeeは,インドや中国に対する評価(成長も,貧困も,物価も)がPPP(購買力平価)の示し方で大きく異なってしまうことを指摘します.またRoy Voragenは,グローバリゼーションがアジア諸国に与える影響を振り返っています.

意志決定はますます世界都市の金融資本家たちに集中し,その影響は世界中に及んで貧しい人びとに惨禍をもたらし,政府の正当性を失わせる.アジアはこの政治経済問題を1997-98年に味わったけれど,今も解決していません.

また,Michael Gersonが主張するように,世界は数十億の人々が急速に裕福になれば,環境問題や資源問題が深刻になって,国際秩序の崩壊に直面するのでしょうか? 世界的な貧困よりも解決の道はある,と信じて良いか?


Asia Times Online, Jan 16, 2008

Sundown for Seoul's Korean policy?

By Donald Kirk

YaleGlobal, 16 January 2008

A New Day for a Divided Peninsula

Shim Jae Hoon

The Guardian Thursday January 17, 2008

Beyond the shock value

Mark Seddon

(コメント) 北朝鮮との交渉という意味では,日本政府にとって今ほど好条件が与えられている時期はないでしょう.韓国では保守党の大統領が当選し,北の核廃絶や人権問題を,援助の条件にしそうです.他方,ブッシュ大統領は任期の最後に,軍事力の行使ではなく,朝鮮半島や中東問題の外交交渉で歴史的成果を残したいと願っています.中国やロシアは朝鮮半島が経済的な繁栄を妨げるのではなく,新しい取引の機会であると見るでしょう.日本も拉致問題と並行して,北への賠償金問題など,朝鮮半島統一に向けた積極的な関与に存在感を示すときです.


The Guardian Wednesday January 16, 2008

Two degrees of misrepresentation

Björn Lomborg

(コメント) 環境保護に対する理性的な批判を繰り返しているBjörn Lomborgの論説です.目標に応じて,環境保護にはコストがかかる,ということです.


FT January 16 2008

A route back to potency for central banks

By Mohamed El-Erian

(コメント) 世界金融の構造変化が中央銀行の役割を奪ってしまった,とMohamed El-Erianはバーナンキ議長に同情します.金融的な錬金術によって,今では流動性が市場によって変化し,中央銀行による支配は一部にしか及びません.特にアメリカ連銀のように,インフレ抑制と雇用や成長の二重の責務を負う場合には難しいでしょう.

その結果,中央銀行は対処療法やご都合主義に流されます.それを避けるには,1.金融錬金術を理解する,2.金融政策と金融監督とを分離する,3.金融活動を詳しく監視する,4.金利にだけ頼らないで,介入手段を増やす,5.期待形成と市場とのコミュニケーションに力を注ぐ.


The Guardian Thursday January 17, 2008

I have a nightmare

Jonathan Farley

(コメント) マーチン・ルーサー・キングは「私には夢がある」と言いましたが,非暴力主義は間違いだ,とJonathan Farleyは主張しています.あるいは,逆説でしょうか?


The Japan Times: Thursday, Jan. 17, 2008

Hypocrisy weakens West's whaling protests

By PETER SINGER

(コメント) ブタであれ,牛であれ,鶏であれ,機械化された飼育の実態は改善されていません.白人の捕鯨反対派に対して,日本人が感じる反発は正しい,という論説です.あるいは,これも逆説?

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The Economist January 5th 2008

The world’s most dangerous place

Kenya: A very African coup

Rudy Giuliani and Michael Bloomberg: A tale of two mayors

Lexington: The 40-year itch

Employment in Japan: Sayonara, salaryman

Economics focus: An old Chinese myth

(コメント) パキスタンとケニヤの政治混乱と暴力に驚きます.アメリカの政治を解釈するうえで,ジュリアーニとブルームバーグの大統領候補に関する指摘が参考になります.また,1968年の開設によって,クリントンとオバマの対比も分かります.

1968年.マーチン・ルーサー・キングとケネディーが暗殺され,ベトナム戦争が激しくなって反戦運動に火を付け,都市暴動が相次いだ年,と紹介されます.

日本のサラリーマンについて,正しい指摘ですが,常識的で,The Economistは日本に関する独自の分析力を持っているのか,不満です.中国が輸出によって成長してきたとしても,それは昔の話だ,と知りました.


The Economist January 5th 2008

Global migration: Keep the borders open

Open up: A special report on migration

(コメント) この特集記事には,重要な論点が網羅されています.移民の労働力は必要だし,有益であり,世界中で今後も増えるだろう,とThe Economistは考えます.

世界中に反発が強まることの背景や対策についても,適切な論点を挙げて考察しています.

さまざまな可能性がありますが,世界政治経済の構造変化において移民たちの重要な役割を評価し,受け入れる社会が世界各地に出てくると思います.