******************************

IPEの風 1/21/08

The Economistの特集記事は,移民,でした.自由貿易を支持し,資本移動の自由も支持するThe Economistが,国境を開放せよ,と主張するのは当然です.

ニュースを観ていると,福田首相はアジア・太平洋フォーラムの水サミットであいさつし,「水」,「環境」,「生態系」,「経済活動」,「資源」,「国際協力」,などと話したことが報道されていました.私が違和感を覚えたのは,それが間違っているというのではなく,真実,真剣さ,が欠けているのではないか,と思ったからです.

あるいは,小沢・民主党が国会論戦の焦点に取り上げるのは「ガソリン税」です.これは景気対策を考えているのでしょうか? 原油価格上昇,温暖化ガス排出量削減,自衛隊インド洋派遣,北朝鮮非核化,という世界情勢や,年金問題,所得格差,派遣労働者,賃金交渉,その他,多くの国内問題から,まるで切り離された形であれば,この論点を取り上げる意味とは何でしょうか?

もしThe Economistの記事が指摘するような論点を日本の政治家たちが真剣に考えて,日本も移民労働者を積極的に受け入れるような仕組みを作りたい,と演説すれば,それが福田首相であれ,小沢代表であれ,日本と世界を変えるようなイニシアティブを発揮できると思います.

そのためには,もちろん日本が高い成長率を実現しなければなりません.海外ではなく,日本企業は国内に投資して移民労働者を雇用できます.また,中国企業,ベトナム,タイ,台湾,韓国,アメリカ,イギリス,ドイツ,スウェーデン,などの企業が日本に投資します.なぜなら,日本がアジアで最も大きな市場だからです.特に新興の日本企業は彼らと連携するでしょう.

能力の高いフリーターは,日本における国際企業の展開によって急速に雇用され,昇進します.日本の過疎地域,農場や山村は,移民労働者を受け入れて積極的に国内資源を活用し,移民たちを介して新興市場へ輸出も増大します.日本の地方経済や農家,山村に若者や子供たちの歓声があふれるでしょう.

福祉や介護,医療などの分野でも,移民労働者たちが大規模に参加し,先端的な医療から地域の老人介護まで,さまざまなビジネスと社会福祉の制度が,彼らの力で新しくなります.日本が東京への一極集中から解放され,学歴社会から解放されるだけでなく,グローバリゼーションの所得格差拡大や外国人排斥に向かわない,治安のよい,友好的な社会関係を大切にした社会である,と評価されて,移民たちの出身国にもその影響を広げます.

もちろん,すべてうまく行けば,です.そんな「夢」みたいな話を誰が信用するか? ・・・というだけであれば,私たちは成長率の低い,高齢化する,若者の高い失業率と,拡大する所得格差,東京にあふれる富裕層の虚飾と地方の貧困,政治家たちのわけのわからない国会論戦に,何十年たっても苦渋を飲まされているのです.

黒人の村や,イスラム寺院が並ぶ街に住みたいか? インド人の運転するタクシーや,キューバ人の医療スタッフをそろえた病院,ベトナム人の建設会社やスウェーデン人の醸造所が販売する酒,ラトビアからの大工たち,韓国人のインターネット・ショップ,メキシコ人やポーランド人の働く農場,・・・・ そんな日本に暮らしたいのか? ・・・ たぶん.それも楽しいのではないでしょうか? 私たちも彼らと一緒に暮らす能力を高め,日本の法律や社会制度が,彼らの参加を得て積極的に整備されるなら,大いに楽しく暮らせるでしょう.

あなた方が,国の将来を想う本当の政治家であれば,新しいことを始めてほしいです.

******************************